特許第6434218号(P6434218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434218
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】アイライナー化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20181126BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   A61K8/87
   A61Q1/10
   A61K8/25
   A61K8/81
   A61K8/41
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-71198(P2014-71198)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193543(P2015-193543A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英美
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−330539(JP,A)
【文献】 特表2002−502867(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02708564(EP,A1)
【文献】 特開昭61−012606(JP,A)
【文献】 特開平06−279232(JP,A)
【文献】 特開2010−254670(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/020060(WO,A1)
【文献】 特開2001−342342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)以下の工程(1)〜(4);
(1)エステル基含有(メタ)アクリル酸単量体を含有する重合性単量体であって、これを重合させて得られる重合体のガラス転移温度が95℃以上、105℃以下となる重合性単量体((b)成分)の存在下で、ポリプロピレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートとを反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー((a)成分)を生成させ、(a)成分及び(b)成分の混合液を得る工程、
(2)(1)で得られた(a)成分及び(b)成分の混合液中の(a)成分が含有するカルボキシル基を当量のトリエタノールアミンを用いて中和して、(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を得る工程、
(3)(2)で得られた(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を、水性媒体中に乳化分散させて乳化液を得る工程、
(4)(3)で得られた乳化液中の(b)成分を重合させて、複合樹脂エマルションを得る工程
の各工程を順次行うことにより得られ、工程(1)において、ポリプロピレングリコールとして、数平均分子量1000のポリプロピレングリコールと数平均分子量2000のポリプロピレングリコールの2種を94:6〜92:8(質量比)の割合で使用し、混合液中の(a)成分と(b)成分との割合が、(a)成分:(b)成分(純分質量比)=50:50〜60:40である複合樹脂エマルション
(B)アルカリ増粘型エマルションポリマー
(C)アルカリ剤
(D)無水ケイ酸
を含有するアイライナー化粧料。
【請求項2】
成分(A)の配合量が固形分換算で1〜40質量%である請求項1記載のアイライナー化粧料。
【請求項3】
成分(B)の配合量が固形分換算で0.1〜4質量%である請求項1または2記載のアイライナー化粧料。
【請求項4】
成分(D)の配合量が0.1〜7質量%である請求項1〜3のいずれかの項記載のアイライナー化粧料。
【請求項5】
成分(D)の平均粒径が1〜10μmであり、比表面積が100〜1000m/gである請求項1〜4のいずれかの項記載のアイライナー化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に滑らかに伸び広がり、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちがなく、化粧膜の乾燥速度に優れ、また化粧膜が柔軟であるため、化粧部位に違和感が無く、更に化粧膜のツヤ感に優れたアイライナー化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイライナー化粧料は、目の際に塗布し、目の輪郭を強調することで目元の印象を強める目的で広く使用されるものであり、このような化粧効果を得るために、ツヤや発色に優れることが必要である。一方、使用部位が目の際と限られた狭い範囲であるため、使用時に滑らかに伸び広がり、塗布しやすく使用性に優れることも求められる。またアイライナー化粧料は、目の際という繊細な場所に使用するものであるため、化粧部位に違和感を感じないことが重要になる。さらに塗布した後、ほかの部分への色移りを防ぐため、速やかに乾燥することを要し、また涙や汗、皮脂等と接触してもにじみにくく、まばたきなどの動きによっても化粧膜が部分的に欠落しない化粧持続性を備えていることが望まれている。
【0003】
そこで、これらの課題を解決するために様々な検討が行われている。例えば、特定のシリコーン系球状粉体と板状粉体及び水性エマルジョンを併用することで、なめらかな使用感と化粧効果の持続性を演出する技術(特許文献1参照)が検討されている。また、光輝性顔料とカーボンブラック、植物由来多糖類、揮発性アルコール、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを併用することで滑らかな描き心地を有し、鮮やかな発色、耐摩擦性に優れた液状アイライナーの技術(特許文献2参照)が開示されている。一方、特許文献3には、特定のウレタン系複合樹脂の水性エマルジョンを含有する化粧料用水性エマルジョン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−302126号公報
【特許文献2】特開2007−153744号公報
【特許文献3】特開2007−001969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、付着性が乏しい上、十分なツヤ感が得られず、また化粧膜が硬いため、化粧部位に違和感を生じてしまうといった欠点があった。また、特許文献2に記載された液状アイライナーは、滑らかさやツヤ感、化粧持ちに優れたものであるが、化粧膜が燐片状にポロポロ落ちるため落とすのに手間がかかり、また光輝性顔料を用いていることからツヤが不自然になるという問題があった。また、特許文献3に開示された水性エマルジョンをアイライナー化粧料に使用すると、化粧膜が柔軟で違和感のないものが得られるが、化粧膜が柔らかすぎるため、使用部位に固定化できず化粧膜が部分的に欠落するポロ落ちを生じてしまい、さらに乾燥速度が遅く瞼のほかの部分に色移りしてしまうなどの欠点がある。このように従来技術では、要求される品質を兼ね備えたアイライナー化粧料を実現することは困難であるのが実情であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用性が良好で、塗布後は速やかに乾燥して色移りが抑制されるとともに、柔軟でありながら一定の塗膜強度を備え、追従性、密着性の高い化粧膜が形成されるため、違和感がなく、化粧持続性に優れ、更にツヤ感も良好なアイライナー化粧料を提供することを課題とする。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリマーを含有する皮膜形成性エマルションポリマーに、アルカリ増粘型エマルションポリマー、アルカリ剤及び無水ケイ酸を組み合わせることにより、使用時に滑らかに伸び広がり、塗布後は速やかに乾燥し、柔軟で密着性が高く一定の塗膜強度を備えた化粧膜が形成されるため、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちが抑制され、また色移りや化粧部位における違和感もなく、ツヤ感にも優れたアイライナー化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)以下の工程(1)〜(4);
(1)エステル基含有(メタ)アクリル酸単量体を含有する重合性単量体であって、これを重合させて得られる重合体のガラス転移温度が95℃以上、105℃以下となる重合性単量体((b)成分)の存在下で、ポリプロピレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートとを反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー((a)成分)を生成させ、(a)成分及び(b)成分の混合液を得る工程、
(2)(1)で得られた混合液中の(a)成分が含有するカルボキシル基を当量のトリエタノールアミンを用いて中和して、(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を得る工程、
(3)(2)で得られた混合液を、水性媒体中に乳化分散させて乳化液を得る工程、
(4)(3)で得られた乳化液中の(b)成分を重合させて、複合樹脂エマルションを得る工程
の各工程を順次行うことにより得られ、工程(1)において、ポリプロピレングリコールとして、数平均分子量1000のポリプロピレングリコールと数平均分子量2000のポリプロピレングリコールの2種を94:6〜92:8(質量比)の割合で使用し、混合液中の(a)成分と(b)成分との割合が、(a)成分:(b)成分(純分質量比)=50:50〜60:40である複合樹脂エマルション
(B)アルカリ増粘型エマルションポリマー
(C)アルカリ剤
(D)無水ケイ酸
を含有するアイライナー化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアイライナー化粧料は、滑らかに伸び広がり使用感が良好で、塗布後は乾燥速度が速いため、塗布部位以外の部分への色移りが抑制される。また形成された化粧膜は、柔軟性、密着性が高く、十分な塗膜強度も備えるため、にじみや部分的に欠落するポロ落ちがなく、化粧持続性に優れるとともに、化粧部位における違和感も無く、更にツヤ感にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる成分(A)は、ウレタン系ポリマーとアクリル系ポリマーがブレンドされた複合化ポリマーエマルションである。この複合樹脂エマルションは、イソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)(以下、「(a)成分」ということがある)と、特定の重合性単量体(b)(以下、「(b)成分」ということがある)との混合液を水性媒体中に乳化分散し、この乳化液中の(b)成分を重合させて得られる水性エマルションである。
【0011】
成分(A)は、以下の工程(1)〜(4)の工程を順次行うことによって得られる。
(1)エステル基含有(メタ)アクリル酸単量体を含有する重合性単量体であって、これを重合させて得られる重合体のガラス転移温度が95℃以上、105℃以下となる重合性単量体((b)成分)の存在下で、ポリプロピレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートとを反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー((a)成分)を生成させ、(a)成分及び(b)成分の混合液を得る工程、
(2)(1)で得られた混合液中の(a)成分が含有するカルボキシル基を当量のトリエタノールアミンを用いて中和して、(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を得る工程、
(3)(2)で得られた混合液を、水性媒体中に乳化分散させて乳化液を得る工程、
(4)(3)で得られた乳化液中の(b)成分を重合させて、複合樹脂エマルションを得る工程
【0012】
以下各工程について説明する。まず、工程(1)において得られる(a)成分のカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーとは、イソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマーであり、ポリプロピレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートとを反応させた重合体である。
【0013】
ポリプロピレングリコールとして、数平均分子量約1000のポリプロピレングリコール(PPG1000)と数平均分子量約2000のポリプロピレングリコール(PPG2000)の2種をPPG1000:PPG2000=94:6〜92:8(質量比)の割合で使用する。
【0014】
脂肪族又は脂環式多価イソシアネート化合物とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するものであり、具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート等が例示できる。
【0015】
この(a)成分の酸価は15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。15mgKOH/g未満であると、水性溶媒への分散状態が悪くなる場合がある。一方で、その上限は70mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g以下であるとより好ましい。ジメチロールプロピオン酸の使用量は、重合により形成される(a)成分の酸価が上記した範囲となるように調整すればよい。
【0016】
ジメチロールプロピオン酸の望ましい使用割合としては、ポリプロピレングリコールとジメチロールプロピオン酸との合計中30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。一方で、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。この範囲内とすることで、上記の酸価の範囲を満たすことができる。
【0017】
一方、ポリプロピレングリコール及びジメチロールプロピオン酸と、脂肪族又は脂環式多価イソシアネート化合物との使用割合は、当量比で、ポリプロピレングリコール及びジメチロールプロピオン酸:多価イソシアネート化合物=1:1.2〜2が好ましく、1:1.5〜1.9がより好ましい。このように、ジオール成分であるポリプロピレングリコール及びジメチロールプロピオン酸に対して、脂肪族又は脂環式多価イソシアネート化合物が化学量論的に過剰となる割合で反応させることにより、(a)成分にイソシアネート基が導入される。
【0018】
(a)成分を製造するためのウレタン生成反応は、(b)成分の存在下で行う。この(b)成分によって反応系が希釈されて反応を均一に行うことができる。
【0019】
(b)成分である重合性単量体は、エステル基含有(メタ)アクリル酸単量体を含有する重合性二重結合を有する単量体であり、中でも、イソシアネート基に対して反応性のない重合性単量体、すなわち、活性水素基を含まない重合性単量体が好ましい。
【0020】
このような(b)成分、特に活性水素基を含まない重合性単量体の例としては、炭素原子数が1〜24の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エステル基含有ビニル単量体、スチレン誘導体、ビニルエーテル系単量体等が挙げられる。
【0021】
上記炭素原子数が1〜24の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸s−ペンチル、(メタ)アクリル酸1−エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸t−ペンチル、(メタ)アクリル酸3−メチルブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−ヘプチル、(メタ)アクリル酸3−ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル等が例示される。これらの中でも、炭素原子数1〜24の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、とりわけ炭素原子数1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0022】
上記エステル基含有ビニル単量体の具体例としては、酢酸ビニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸ビニル等の疎水性ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル、ラジカル重合性不飽和基含有シリコンマクロモノマー等の不飽和基含有マクロモノマー等が例示される。
【0023】
また、上記スチレン誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン等があげられる。上記ビニルエーテル系単量体の具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が例示される。
【0024】
これらの(b)成分は、一種類のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。一種類からなる場合はその単独重合体の、複数種類からなる場合は、その組成比における共重合体のガラス転移温度が、95℃以上、105℃以下である。95℃未満であると、塗膜強度が不足してにじみが生じたり、乾燥速度が遅くなり色移りが生じる場合がある。一方、105℃を超えると、最低造膜温度が高くなり、均一な皮膜が形成されないことがある。
【0025】
なお、共重合体である場合、そのガラス転移温度の算出方法は下記式(1)によるものである。ここで、Tgは共重合体のガラス転移温度(K)、Tga、Tgb、Tgc等は各々の単量体a、b、c等の単独重合体のガラス転移温度(K)であり、Wa、Wb、Wc等は各々の単量体a、b、cの、共重合体中の重量分率を示す。
【数1】
各単独重合体のガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK(ポリマーハンドブック)等に記載されている。
【0026】
上記(b)成分の存在下、ポリプロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、脂肪族又は脂環式多価イソシアネートをウレタン化反応させることにより、(a)成分が生成する。ウレタン化反応は、50〜100℃程度で、0.5〜20時間程度行えばよい。これにより、カルボキシル基及び末端にイソシアネート基を含有する(a)成分を得ることができる。
【0027】
(a)成分の製造に使用される触媒としては、一般にウレタン化反応に使用される触媒が使用できる。具体例としては、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
【0028】
(a)成分の数平均分子量は800〜10,000であることが好ましく、1000〜9000がより好ましい。数平均分子量が800より小さいと、得られる皮膜が硬くなり、化粧料として用いる際に、ごわつき感等の問題が生じる可能性がある。一方10,000より大きいと、プレポリマーそのものの粘度が高くなり、ゲル化したり、安定なエマルションが得られなくなったりする場合がある。
【0029】
ウレタン化反応後、生成した(a)成分と(b)成分との混合液が得られる。混合液中の(a)成分と(b)成分との混合割合は、純分重量比で(a):(b)=50:50〜60:40である。(b)成分の割合がこれよりも多いと化粧膜が硬くなり、部分的に欠落するポロ落ちが生じやすくなる。一方、(b)成分が少ないと、化粧膜が柔らかすぎるため、にじみを生じやすくなる。
【0030】
工程(2)においては、上記工程(1)で得られた(a)成分及び(b)成分の混合液中の(a)成分が含有するカルボキシル基を当量のトリエタノールアミンを用いて中和して、(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を得る。このように、(a)成分が含有するカルボキシル基を中和させることにより、(a)成分の水性媒体中での分散性を向上させることができる。
【0031】
次いで工程(3)では、工程(2)で得られた(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液を、水性媒体中に乳化分散させて乳化液を得る。(a)成分の中和物及び(b)成分の混合液に水性媒体を加える方法としては、混合液に水性媒体を滴下して分散させる方法、混合液を水性媒体中に滴下して分散させる方法のどちらを用いてもよい。水性媒体としては、水や、水とメタノール、エタノール等の水と相溶可能な有機溶媒との混合溶液等が挙げられる。この中でも、環境的な側面から、水が好ましい。乳化分散時の温度は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。一方で80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。温度が高過ぎると(a)成分が変性するおそれがある。
【0032】
さらに工程(4)において、工程(3)で得られた乳化液中の(b)成分を重合させて、複合樹脂エマルションを得る。この(b)成分の重合を行う際の重合反応は、(b)成分に合わせた一般的な重合方法で行うことができ、例えば、上記混合液にラジカル重合開始剤を添加して行うことができる。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、慣用のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、t−ブチルハイドロパーオキサイドやジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物系開始剤を用いることができる。また、有機過酸化物系開始剤や過硫酸塩系開始剤と、アスコルビン酸、ロンガリット又は亜硫酸金属塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤も好ましく用いられる。上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性単量体(b)に対して、0.1〜5質量%程度、好ましくは0.5〜2質量%程度とすればよい。
【0034】
上記(b)成分の重合は、重合温度10〜80℃で行うことが好ましく、30〜60℃で行うことがより好ましい。重合は、通常、発熱が終了した後、40〜90℃程度に30分〜3時間程度維持することによって、ほぼ完了する。これにより、成分(A)複合樹脂エマルションが得られる。この複合樹脂は、ウレタン系ポリマーをコア、アクリル系ポリマーをシェルとした構造を有していると考えられる。
【0035】
成分(A)複合樹脂エマルションの最低造膜温度は+20℃以下であることが好ましく、+15℃以下であることがより好ましい。+20℃を超えると、得られる皮膜にクラック等の不良が生じやすくなる。また一方で、最低造膜温度は−10℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましい。−10℃未満では得られる皮膜の耐水性が悪化することがある。
【0036】
かくして得られる成分(A)複合樹脂エマルションの固形分濃度は、特に制限されるものではないが、20〜50質量%であることが好ましい。なお、この成分(A)複合樹脂エマルションは、特開2007−001969号公報に記載の製造方法に従って製造することができる。
【0037】
本発明のアイライナー化粧料における成分(A)の配合量は、固形分換算で1〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。このような範囲であれば、化粧膜が柔軟なものとなるため、化粧部位に違和感が無く、ツヤ感にも優れたものが得られる。
【0038】
成分(B)アルカリ増粘型エマルションポリマーは、水中にポリマー粒子が分散安定化したエマルションであり、アルカリ添加前は、乳白色のエマルションであるが、アルカリを添加して中和することにより増粘するものである。なお本発明においてアルカリ増粘型とは、ポリマーエマルションを固形分換算で濃度0.3質量%に水で希釈したものに、アルカリとしてトリエタノールアミンをpHが7.5になるまで添加したものの粘度が、アルカリを添加する前の粘度と比較して、100倍以上になるものをいう。ここで、粘度は、芝浦システム社製単一円筒型回転粘度計ビストロンVS−A1で測定した値である。
【0039】
成分(B)アルカリ増粘型エマルションポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸エマルションポリマー、アクリル酸とアクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸ポリエチレングリコールエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びイタコン酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション等が挙げられる。前記アクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキルのアルキル基については、炭素数1〜12の1種でも、また2種以上であっても良い。
【0040】
成分(B)アルカリ増粘型エマルションポリマーは、前記したようにアルカリ増粘型であるため、ポリマーを構成するモノマーとして、アクリル酸やメタクリル酸を必須に含有することが好ましい。アクリル酸やメタクリル酸がポリマーの構成モノマーに含まれると、カルボキシル基がアルカリにより中和され、水中でのポリマーが構造変化し、粘度が増加する。具体的には、(メタ)アクリル酸エマルションポリマー、アクリル酸とアクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルションなどが好適に用いられる。
【0041】
成分(B)アルカリ増粘型エマルションポリマーの市販品としては、「プライマルASE−60」(固形分28%)(ポリマーラテックス社製)、「SALCARE SC81」(固形分30%)(チバスペシャリティケミカルズ社製)、「ACULYN22」(固形分30%)、「ACULYN28」(固形分20%)、「ACULYN33A」(固形分28%)(いずれもローム&ハース社製)等が挙げられ、これらは必要に応じ、一種又は二種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明のアイライナー化粧料における成分(B)の配合量は、固形分換算で、0.1〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2質量%である。このような範囲であれば、化粧料に適度な粘度を付与することによる伸び広がりのなめらかさを演出できるとともに、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちを防止する効果や化粧膜のツヤ感に優れたものが得られる。
【0043】
本発明に用いられる成分(C)アルカリ剤は、前記成分(B)の中和剤として用いられる。このような、アルカリ剤は、通常化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ、L−アルギニン等の塩基性アミノ酸、トリエタノールアミン、アンモニア、アミノメチルプロパノール等の有機アルカリが挙げられる。
【0044】
本発明のアイライナー化粧料における成分(C)の配合量は、成分(B)を中和するのに十分な量であり、成分(B)及び(C)の組合せによって異なる。
【0045】
本発明に用いられる成分(D)無水ケイ酸は、通常化粧料に配合されるものであれば特に制限されることなく使用できるが、平均粒径が1〜10μmの範囲にあると、化粧膜のにじみを防止し、化粧膜の乾燥速度を速めて化粧部位以外への色移りを防止する効果に優れるため好適である。平均粒径はレーザ回折式粒子径分布測定装置など公知の装置、方法によって測定することができる。また比表面積が100〜1000m/gのものを用いると、同様に化粧膜の乾燥速度を速め、化粧部位以外への色移りを防止する効果に優れるため好ましい。形状は、板状、紡錘状、針状、球状等いずれのものも使用できる。このような無水ケイ酸の市販品としては、サイリシア 250、350、550(以上、富士シリシア化学社製)、SUNSPHERE H−31、H−51(以上、AGCエスアイテック社製)、NIPSIL E−220(東ソー・シリカ社製)等が挙げられる。また、無水ケイ酸は本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施してもよい。
【0046】
本発明のアイライナー化粧料における成分(D)無水ケイ酸の配合量は、0.1〜7質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。この範囲であれば、化粧膜のにじみを防止し、また化粧膜の乾燥速度を速め、化粧部位以外への色移りを防止する効果に優れたものが得られる。
【0047】
本発明のアイライナー化粧料は、上記記載の成分の他に、通常化粧料に使用される成分、例えば、成分(D)以外の粉体成分、油性成分、成分(A)及び成分(B)以外のエマルションポリマー、粉体分散や感触調整としての界面活性剤、保湿としての水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0048】
成分(D)以外の粉体成分に関しては、化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、カーボンブラック、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、無水ケイ酸被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種または2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0049】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、油溶性樹脂、揮発性油剤等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、特定のアクリル酸アルキルメチルポリシロキサンエステル等の油溶性樹脂、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、低重合度ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類等の揮発性油剤等が挙げられる。
【0050】
成分(A)及び(B)以外のエマルションポリマーとしては、例えば、アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、オルガノポリシロキサンのポリマーエマルション、ポリ酢酸ビニルポリマーエマルション等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0051】
粉体分散や感触調整を目的で配合される界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0052】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の他の保湿剤を含有する事もできる。
【0053】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2―ペンタンジオール等が挙げられる。
【0054】
本発明のアイライナー化粧料の剤形としては、水性成分を含有する水性、水中油型、油中水型が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0056】
製造例1
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、反応溶媒として重合性単量体(b)である、メチルメタクリレート7.1重量部及びn−ブチルアクリレート13.4重量部を入れ、ポリプロピレングリコール(数平均分子量1000(*1)を7.7重量部と数平均分子量2000(*2)を0.6重量部)及びジメチロールプロピオン酸2.0重量部を加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネート10.2重量部を加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.3重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基を中和した。次いで、この溶液に精製水56.6重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒として、t−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.15重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.05重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、目的の複合樹脂エマルションを得た。
(複合樹脂エマルション1は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
*1:ポリプロピレングリコール,ジオール型,1000(和光純薬工業社製 水酸基価:111mgKOH/g)
*2:ポリプロピレングリコール,ジオール型,2000(和光純薬工業社製 水酸基価:56mgKOH/g)
【0057】
製造例2
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート20.2重量部及びn−ブチルアクリレートを0.2重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を7.2重量部、前記*2を0.58重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.6重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを10.1重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.8重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体56.3重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.14重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.06重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン2を得た。
(複合樹脂エマルション2は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約102℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
【0058】
製造例3
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート19.6重量部及びn−ブチルアクリレートを0.8重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を8.7重量部、前記*2を0.6重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.3重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを8.9重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.6重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体56.5重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.07重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.02重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン3を得た。
(複合樹脂エマルション3は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
【0059】
製造例4
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート14.8重量部及びn−ブチルアクリレートを0.6重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を9.8重量部、前記*2を0.7重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.6重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを10.1重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.9重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体53.2重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.11重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.04重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン4を得た。
(複合樹脂エマルション4は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が60:40である。)
【0060】
実施例1〜7及び比較例1〜3:水系アイライナー化粧料(液状)
下記表1に示す処方のアイライナー化粧料を調製し、a.化粧持ち(ポロ落ちのなさ)、b.化粧持ち(にじみのなさ)、c.乾きの速さ、d.化粧膜の柔軟性、e.化粧膜のツヤ感を下記の評価方法により評価した。結果も併せて表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
※1:製造例1の複合樹脂エマルション((a)成分:(b)成分の質量比=50:50、(b)成分の理論Tg95℃、固形分40%)
※2:リカボンドSU−U0609−SS(中央理化工業社製、(a)成分:(b)成分の質量比=50:50、(b)成分の理論Tg6℃、固形分30%)
※3:DYNAMX(アクゾノーベル社製、ポリウレタン−14:アクリレーツコポリマーの質量比=70:30の混合エタノール水溶液、固形分28%)
※4:YODOSOL GH800F(固形分45%)(アクゾノーベル社製)
※5:プライマルASE−60(固形分28%)(ポリマーラテックス社製)
※6:NIPSIL E−220(東ソー・シリカ社製)(平均粒径1.5μm、比表面積220m/g)
【0063】
(製造方法)
A.成分(1)〜(11)を均一に混合し、成分(12)〜(15)を加え均一に混合する。
B.Aを容器に充填してアイライナー化粧料を得た。
【0064】
(評価方法)
下記の項目について、専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を1回瞼の際に塗布し、パネル各人がc〜eについては塗布時及び塗布直後、a、bについては塗布後約8時間通常の生活をした後の化粧膜の状態を、下記絶対評価基準にて7段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点の合計から、その平均値を算出し、下記の判定基準により判定した。
<評価項目>
a.化粧持ち(ポロ落ちのなさ)
b.化粧持ち(にじみのなさ)
c.乾きの速さ
d.化粧膜の柔軟性
e.化粧膜のツヤ感
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超え4.5点未満 :良好
△ :1点を超え3.5点未満 :やや不良
× :1点未満 :不良
【0065】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1〜7のアイライナー化粧料は、比較例1〜3のアイライナー化粧料に比べ、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちがなく、化粧膜の乾燥速度に優れ、また化粧膜が柔軟であるため、化粧部位に違和感が無く、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
これに対して、(b)成分の理論Tgが低い複合樹脂エマルションを用いた比較例1では、アクリル部分の塗膜強度が不足し、化粧膜が柔らかくなることからにじみを生じてしまい、また乾燥速度が著しく低下するため化粧部位以外に色移りしてしまうといった点で満足のいくものが得られなかった。また、成分(A)の複合樹脂エマルションの代わりにウレタン・アクリル混合ポリマーを用いた比較例2では、もともと水性のポリマーであるため、化粧膜の耐水性に乏しく、汗、皮脂でのにじみが見られた。また成分(A)の複合樹脂エマルションの代わりにアクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマーを用いた比較例3では、化粧膜が硬く柔軟性に欠け、部分的に欠落するポロ落ちが見られた。
【0066】
実施例8:水系アイライナー化粧料(液状)
(成分) (%)
(1)ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸 3.5
(2)グリセリン 2
(3)精製水 残量
(4)L−アルギニン 0.4
(5)フェノキシエタノール 0.5
(6)ジプロピレングリコール 7
(7)1,2−ペンタンジオール 1
(8)複合樹脂エマルション※7 5
(9)アクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマー※8 1
(10)チタンブラック 0.3
(11)ベンガラ※9 1
(12)雲母チタン※10 10
(13)無水ケイ酸※11 2
(14)シリル化処理無水ケイ酸※12 0.1
(15)オリーブ油 0.1
(16)ポリ酢酸ビニルエマルションポリマー※13 0.1
(17)メチルシロキサン網状重合体※14 1
(18)香料 0.3
※7:製造例2の複合樹脂エマルション((a)成分と(b)成分の質量比50:50、(b)成分の理論Tg102℃、固形分40%)
※8:ACURYN 33A(固形分28%)(ロームアンドハースジャパン社製)
※9:パーフルオロアルキルリン酸エステル2%処理
※10:FLAMENCO RED(BASF社製)ジメチルポリシロキサン2%処理
※11:サイリシア550(富士シリシア社製)(平均粒径3.85μm、比表面積470m/g)
※12:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)(平均粒径16nm、比表面積110m/g)
※13:ビニブランGV−5651(日信化学工業社製)
※14:TOSPEARL 2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
【0067】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を均一に混合し、成分(10)〜(18)を均一に混合する。
B.Aを容器に充填してアイライナー化粧料を得た。
【0068】
以上のようにして得られたアイライナー化粧料は、使用時に滑らかに伸び広がり、また化粧膜の乾燥速度に優れるため色移りがなく、さらに化粧膜の柔軟性、密着性が高いため、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちが抑制され、化粧部位に違和感が無く、化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
【0069】
実施例9:O/W乳化型アイライナー化粧料
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2
(2)流動パラフィン 2
(3)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5
(4)ミツロウ 1
(5)精製水 残量
(6)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O) 1
(7)トリエタノールアミン 1.8
(8)複合樹脂エマルション※1 60
(9)アクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマー※8 1
(10)黒酸化鉄 3
(11)黒色401号 0.5
(12)ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末※15 2
(13)無水ケイ酸※16 7
(14)ホウケイ酸(Ca/Al)※17 1
(15)酢酸トコフェロール 0.1
(16)ホホバ油 0.1
(17)エタノール 5
(18)パラオキシ安息香酸メチル 0.5
※15:アルミフレークレッド0.15mm(角八魚燐箔社製)
※16:ゴッドボールD11−796C(鈴木油脂工業(株)製)(平均粒径3.5μm、比表面積500m/g)
※17:マイクログラスメタシャインMT1080RR(日本板硝子(株)製)
【0070】
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を90℃で加熱溶解する。
B.成分(5)〜(9)を90℃で加熱混合する。
C.AにBを加え乳化する。その後、成分(10)〜(18)を加え均一に混合する。
D.Cを容器に充填してアイライナー化粧料を得た。
【0071】
以上のようにして得られたアイライナー化粧料は、使用時に滑らかに伸び広がり、また化粧膜の乾燥速度に優れるため色移りがなく、さらに化粧膜の柔軟性、密着性が高いため、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちが抑制され、化粧部位に違和感が無く、化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
【0072】
実施例10:W/O乳化型アイライナー化粧料
(成分) (%)
(1)イソドデカン 40
(2)キャンデリラワックス 4
(3)ロジン酸ペンタエリスリット 3
(4)2−エチルヘキサン酸セチル 5
(5)トリメチルシロキシケイ酸※18 10
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(7)セスキオレイン酸ソルビタン 2
(8)精製水 残量
(9)複合樹脂エマルション※19 1
(10)アクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマー※8 0.2
(11)トリエタノールアミン 0.2
(12)黒酸化鉄 5
(13)無水ケイ酸※19 0.3
(14)タルク 2
(15)天然ビタミンE 0.1
(16)香料 0.5
※18:シリコンKF−7312J(信越化学工業社製)50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
※19:製造例4の複合樹脂エマルション((a)成分と(b)成分の質量比60:40、(b)成分の理論Tg95℃、固形分40%)
※20:AEROSIL380S(日本アエロジル社製)(平均粒径7nm、比表面積380m/g)
【0073】
(製造方法)
A.成分(1)〜(7)を90℃で加熱溶解する。
B.成分(8)〜(11)を90℃で加熱混合する。
C.AにBを加え乳化する。その後、成分(12)〜(16)を加え均一に混合する。
D.Cを容器に充填してアイライナー化粧料を得た。
【0074】
以上のようにして得られたアイライナー化粧料は、使用時に滑らかに伸び広がり、また化粧膜の乾燥速度に優れるため色移りがなく、さらに化粧膜の柔軟性、密着性が高いため、化粧膜のにじみや部分的に欠落するポロ落ちが抑制され、化粧部位に違和感が無く、化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、滑らかに伸び広がり使用感が良好で、塗布後は乾燥速度が速いため、塗布部位以外の部分への色移りが生じにくく、また形成された化粧膜は、柔軟性、密着性が高く、十分な塗膜強度も備えるため、にじみや部分的に欠落するポロ落ちがなく、化粧持続性に優れるとともに、化粧部位における違和感も無く、ツヤ感にも優れたアイライナー化粧料として有用なものである。