【文献】
Christopher M.Bates,"Polarity-Switching Top Coats Enable Orientation of Sub-10-nm Block Copolymer Domains",SCIENCE,2012年11月 9日,Vol. 338,pp.775-779,URL,https//doi.org/10.1126/science.1226046
【文献】
Hiroshi Yoshida, et al.,"Topcoat Approaches for Directed Self-Assembly of Strongly Segregating Block Copolymer Thin Films",Journal of Photopolymer Science and Technology,2013年 5月10日,Vol.26,pp.55-58,URL,https://doi.org/10.2494/photopolymer.26.55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の共重合体が、配向制御層を前記組成物の表面に形成するように、かつ前記組成物が配置されている前記基板の表面に垂直なミクロドメインの、前記第1のブロック共重合体における形成を促進するように働く、請求項1に記載の方法。
前記表面自由エネルギー低下部分が、前記第1のセグメントを構成する複数の同じモノマーと、及び/又は、前記第2のセグメントを構成する同じモノマーと、共有結合されている、請求項1に記載の方法。
前記第2の共重合体が、共重合体のブレンドを含み、その各々が、前記第1のセグメントを構成する複数の同じモノマーと、及び/又は、前記第2のセグメントを構成する同じモノマーと、共有結合されている表面自由エネルギー低下部分を含む、請求項1に記載の方法。
第1のブロック共重合体を含む第1の層であって;前記第1のブロック共重合体が、互いに共有結合しかつ互いに化学的に異なる第1のセグメントおよび第2のセグメントを含み;前記第1のセグメントが第1の表面自由エネルギーを有し、かつ前記第2のセグメントが第2の表面自由エネルギーを有する、第1の層と;
前記第1のブロック共重合体の自由表面の上に配置された第2の共重合体を含む第2の層であって;前記第2の共重合体が表面自由エネルギー低下部分を含み;前記表面自由エネルギー低下部分が前記第1の表面自由エネルギーおよび前記第2の表面自由エネルギーよりも低い表面自由エネルギーを有し;前記第2の層が前記第1のブロック共重合体に含有される前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントとのその相互作用において中性であるように、前記第2の共重合体が、前記第1のブロック共重合体に対する親和性を有する1以上の部分をさらに含み;前記表面自由エネルギー低下部分が、前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントとは化学的に異なる、第2の層と
を含む、多層物品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、その上に第2の共重合体を含む配向制御層が配置された第1のブロック共重合体を含む第1の組成物が開示される。第2の共重合体は、第2の組成物に含まれ、第1のブロック共重合体の上に配置されて配向制御層を形成する。一実施形態では、第1の組成物は、ブロック共重合体に加えて第2の共重合体も含むことができる。第2の共重合体は、ポリマー性の表面自由エネルギー低下部分、および第1のブロック共重合体に含まれている少なくとも1つのポリマー性の実体(polymeric entity)または第1のブロック共重合体に含まれていないが第1のブロック共重合体に含まれている少なくとも1つのポリマー性の実体と適合性のポリマー性の実体を含む。しかし、第1のブロック共重合体および第2の共重合体は互いに共有結合していない。
【0015】
ポリマー性の表面自由エネルギー低下部分は、第1の組成物が基板の上に、またはそれ自体が基板の上に配置されている随意の中性層(以降、「表面改質」層)の上に配置された場合に、トップコート−ブロック共重合体界面(以降、「自由表面」)での第1の配向制御層の形成を許容する。第2の共重合体は、単一の共重合体を含んでもよいし、その各々が表面エネルギー低下部分を含む共重合体のブレンドを含んでもよい。共重合体のブレンドにおいて、表面自由エネルギー低下部分は、各々の独立した共重合体に関して同じであってもよいし、異なっていてもよい(すなわち、各々の第2の共重合体は、異なる表面エネルギー低下部分を有し得る)。
【0016】
第2の共重合体は、第1のブロック共重合体の自由表面の上に配置され、トップコート−ブロック共重合体界面に、その上に第1のブロック共重合体が配置されている基板の表面に対して垂直なミクロドメインの形成を第1のブロック共重合体において促進する配向制御層を形成する。上層は、第1のブロック共重合体のミクロドメインの各々とのその相互作用において中性であり、そのため、「配向制御層」と呼ばれる。「配向制御層」は、第1のブロック共重合体のいずれのドメインとも優先的な相互作用を示さない。そのため、基板に垂直なミクロドメインの形成を促進する。
【0017】
一実施形態では、第2の共重合体は、コーティングの形態で基板の上に配置されるよりも前に第1のブロック共重合体と均質に混合されてよい。次に、第2の共重合体の別のトップコートをコーティングの上に配置して、配向制御層の形成を促進する。そのため、配向制御層は、基板上のコーティングからだけでなく、トップコートからの第2の共重合体を含有する。つまり、第2の共重合体は、組成物中に第1のブロック共重合体とともに存在してよいし、また、それが基板の上に配置された後に、組成物(第1のブロック共重合体かまたは第1のブロック共重合体と第2の共重合体との組合せのいずれかを含む)の表面の上に別々に配置されてもよい。なお、第2の共重合体は第1の組成物中で使用されてもよいが(すなわち、第1のブロック共重合体を含む組成物)、第2の共重合体は更にトップコートとして第1のブロック共重合体の上にも配置される。表面自由エネルギー低下部分は、ケイ素原子、フッ素原子、置換もしくは非置換C
1−12ヒドロカルビル基、またはその組合せを含む。
【0018】
「ポリマー性の表面自由エネルギー低下部分」と少なくとも「1つのポリマー性の実体」は、ポリマー性であるかポリマーの一部であり、それゆえに「ポリマー性の」という接頭辞を使用する。第2の共重合体はまた、配向制御層であるとして理解されてもよく、配向制御層は、実際の配向制御層を自由表面に形成するために第2の組成物を第1の組成物の上にキャストした後に相分離するが、第1のブロック共重合体のそれぞれのミクロドメインを基板に垂直に配向することを可能にし、そのためそれらは半導体をパターニングするためのフォトレジストまたは鋳型を形成するために最終的に使用されるナノ構造を形成するために使用され得る。代替実施形態では、第2の共重合体は、第1のブロック共重合体を含む第1の組成物または第1のブロック共重合体および第2の共重合体を含む組成物の上に配置された後に配向制御層を形成する。
【0019】
もう一つの実施形態では、第1の組成物は、互いに共有結合し、かつ互いに化学的に異なる第1のポリマーセグメント(以降、第1のセグメント)および第2のポリマーセグメント(以降、第2のセグメント)を含む第1のブロック共重合体を含む。第1のセグメントは、第1の表面自由エネルギーを有し、第2のセグメントは第2の表面自由エネルギーを有する。
【0020】
表面自由エネルギー低下部分は、第1の表面自由エネルギーおよび第2の表面自由エネルギーよりも低い表面自由エネルギーを有する。上記のように、第2の共重合体は、第1のブロック共重合体に対する親和性を有する1以上の部分さらに含む。第2の共重合体は、第2の組成物の一部である。第2の組成物は、第1のブロック共重合体を溶媒和しない溶媒をさらに含んでよい。第2の組成物に含まれる溶媒は、通常、第2の共重合体よりも高い表面自由エネルギーを有する。
【0021】
第2の共重合体は、第1のブロック共重合体と共有結合しておらず、第1のブロック共重合体においてミクロドメインの形成を促進する配向制御層を、第1のブロック共重合体の表面に形成するように働く。これらのミクロドメインは、その上に第1の組成物が配置されている基板の表面に対して垂直である。言い換えれば、その上に第1のブロック共重合体が配置されている基板の表面に対して垂直なミクロドメインである。上記のように、配向制御層は、第1のブロック共重合体が基板の上に配置された後に、第2の共重合体をトップコートの形で第1のブロック共重合体の上に配置することにより形成することができる。一実施形態では、第2の共重合体は界面活性剤ではない。
【0022】
本明細書において、第1のブロック共重合体を含む第1の組成物を基板の上に配置し、第2の共重合体を含む第2の組成物を第1のブロック共重合体の上に配置することを含む方法も開示される。本方法は、第1のブロック共重合体を含む第1の層および第2のブロック共重合体を含む第2の層を含有する層状物品の形成をもたらす。本方法は、室温から第1のブロック共重合体の最大ガラス転移温度まで(第1のブロック共重合体中のすべてのポリマーが非晶質の場合)または第1のブロック共重合体の最大融点まで(第1のブロック共重合体中のポリマーの少なくとも1つが半結晶性である場合)の温度で層状物品をアニーリングすることをさらに含む。
【0023】
本方法は、ブロック共重合体の最大ガラス転移温度よりも高い温度で(ブロック共重合体中のすべてのポリマーが非晶質の場合)、または、ブロック共重合体の最大融点よりも高いが(ブロック共重合体中のポリマーの少なくとも1つが半結晶性である場合)ブロック共重合体の秩序無秩序転移温度よりも低い温度で層状物品をアニーリングすることをさらに含む。
【0024】
本明細書において、第1のブロック共重合体および第2の共重合体を含む第1の組成物を、基板の上、または基板に配置された随意の中性層の上に配置すること、および、第2の共重合体を含む第2の組成物の層を第1のブロック共重合体の自由表面の上に(例、トップコートの形で)配置することを含む方法が開示される。本方法は、上に詳述される層状物品をアニーリングすることをさらに含む。
【0025】
アニーリングは、第1のブロック共重合体の自由表面での配向制御層の形成および基板での垂直のミクロドメインの形成を許容する。次に、配向制御層を処理して基板上のブロック共重合体の垂直のミクロドメインを露出させる。
【0026】
第1のブロック共重合体は、2以上のポリマー性のセグメント、つまり、互いに化学的に似ておらず、互いに共有結合し、かつ、基板に配置される際にミクロドメインに相分離する第1のセグメントおよび第2のセグメント、を含むことができる。第1のセグメント及び/又は第2のセグメントは、表面エネルギー低下部分を含んでもよいし含まなくてもよい。好ましい実施形態では、第1のセグメント及び/又は第2のセグメントは、表面エネルギー低下部分を含んでもよいし含まなくてもよい。言い換えれば、表面自由エネルギー低下部分は、第1のセグメントの化学組成または第2のセグメントの化学組成とは異なる化学組成を有する。例となる実施形態では、第1のブロック共重合体は、表面自由エネルギー低下部分を含まない。
【0027】
第1のブロック共重合体は、基板の上にまたは表面改質層の上に配置された場合に、基板の表面に対して垂直なミクロドメインを生成する。言い換えれば、第1のブロック共重合体の各々のドメインの縦軸は、アニーリングの後にその上に第1のブロック共重合体が配置されている基板の表面に対して垂直である。ミクロドメインは、100ナノメートル以下、具体的には70ナノメートル以下、具体的には50ナノメートル以下、より具体的には20ナノメートル以下の平均幅を有することが望ましい。例となる実施形態では、ミクロドメインの平均幅は20ナノメートル未満であることが望ましい。この幅は、基板の表面に対して平行に測定される(すなわち、上に詳述される
図1(A)のy軸およびz軸に平行な方向に測定される)。また、平均ドメイン間周期が100ナノメートル以下、具体的には70ナノメートル以下、具体的には50ナノメートル以下、より具体的には20ナノメートル以下であることも望ましい。例となる実施形態では、ミクロドメインの平均ドメイン間周期が20ナノメートル以下であることが望ましい。
【0028】
上に詳述されるように、第1のブロック共重合体は、基板の上に、または表面改質層の上に配置されて、基板の表面に対して垂直なミクロドメインを生成する。その表面エネルギーが表面改質層の表面エネルギーと可能な限り最小に異なる第1のブロック共重合体を選択することにより、ドメインのサイズ、ドメインの幾何学形状およびドメイン間の間隔を注意深く制御することができる。ブロック共重合体の膜に、その上に第1のブロック共重合体が配置されている基板の表面に対して垂直の配向を有するラメラ状またはシリンダ状のミクロドメインを形成させることを可能にする、数平均分子量を各ブロックに有する、第1のブロック共重合体を選択することが望ましい。
【0029】
ブロック共重合体は、2以上の異なるモノマーから合成されるポリマーであり、化学的に異なるがなお互いに共有結合されている2以上のポリマー鎖セグメントを示す。ジブロック共重合体は、2つの異なるモノマー(例、AおよびB)に由来し、B残基のポリマーブロック(例、Bセグメント)に共有結合したA残基のポリマーブロック(例、Aセグメント)(例、AAAAA−BBBBB)を含む構造を有する、ブロック共重合体の特殊なクラスである。第1のブロック共重合体は、ジ−ブロック共重合体、トリ−ブロック共重合体、星型ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、勾配ブロック共重合体、またはその組合せを含み得る。
【0030】
本明細書において、第1のブロック共重合体または第2の共重合体に関して、用語「セグメント」は、ポリマーセグメントまたはポリマーブロックを含む。ポリマーセグメントまたはブロックは、それが別のポリマーセグメントと共重合して約2,000グラム/モル以上の分子量を有する共重合体を形成する限り、少数の繰り返し単位(例、1、2、3、4、…50まで)を含むことができる。
【0031】
セグメントは、通常、別の化学的に似ていないセグメントと共有結合することのできる任意の適切なドメインを形成するセグメントであってよい。「化学的に似ていない」は、その2つのセグメントが異なる化学構造を有することを暗に意味する。異なる構造は、化学的に異なっていてもよいし(すなわち、異なる分子を有する)、またはラセミ的に異なって(racemically different)(すなわち、キラル分子の左手型および右手型鏡像異性体を有する)いてもよいし、同位体的に異なっていてもよい。セグメントは、異なる重合可能なモノマーに由来するものであってよく、セグメントには、ポリジエンを含むポリオレフィン、ポリ(アルキレンオキシド)例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリ(酸化プロピレン)、ポリ(ブチレンオキシド)などを含むポリエーテル、ポリ((メタ)アクリレート)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、またはポリオルガノゲルマンが含まれ得る。
【0032】
一実施形態では、第1のブロック共重合体のセグメントは、モノマーとしてC
2−30オレフィンモノマー、C
1−30アルコール由来の(メタ)アクリレートモノマー、鉄、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム、チタンに基づくものを含む無機含有モノマー、または前述のモノマーの少なくとも1つを含む組合せを含む。セグメントで用いるための例となるモノマーには、C
2−30オレフィンモノマーとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ジヒドロピラン、ノルボルネン、無水マレイン酸、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メチルスチレン、またはa−メチルスチレンを挙げることができ;さらに、(メタ)アクリレートモノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーの2以上の組合せを使用することができる。
【0033】
ホモポリマーである例となるセグメントには、スチレンを用いて調製されたセグメント(すなわち、ポリスチレンブロック)、ポリ(メチルメタクリレート)などの(メタ)アクリレートホモポリマーセグメント、2−ビニルピリジン(すなわち、ポリ(2−ビニルピリジンブロック)、またはジアルキルシロキサン(すなわち、ポリ(ジメチルシロキサンセグメント)を挙げることができ;例となるランダムセグメントには、例えば、ランダムに共重合したスチレンとメチルメタクリレートのセグメント(例、ポリ(スチレン−コ−メチルメタクリレート))を挙げることができ;かつ、例となる交互共重合体ブロックには、大部分の条件下で無水マレイン酸がホモポリマー化できないこと(例、ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸))に起因してこれはスチレン−無水マレイン酸ダイアッド繰り返し構造を形成することが公知の、スチレンと無水マレイン酸のセグメントを挙げることができる。そのようなセグメントは例であり、制限とみなされるべきでないことは当然理解される。
【0034】
使用のために企図される例となる第1のブロック共重合体には、ジブロックもしくはトリブロック共重合体、例えばポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−t−メタクリル酸ブチル)、ポリ(エチレンオキシド−b−酸化プロピレン)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(スチレン−b−トリメチルシリルメチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−トリメチルシリルメチルメタクリレート)、または同類のもの、あるいは前述のブロック共重合体の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0035】
第1のブロック共重合体は、組成物中に、組成物の総重量に基づいて25〜95重量パーセントの量で存在する。好ましい実施形態では、第1のブロック共重合体は、第1の組成物中に、組成物の総重量に基づいて50〜90重量パーセントの量で存在する。第1の組成物の残りは、第1のブロック共重合体を溶媒和する溶媒であり得る。
【0036】
表面改質層は、随意の層であり、その使用は基板の組成物に依存する。基板が、第1のブロック共重合体における垂直のミクロドメインの形成を促進するための適切な特徴を有する場合、表面改質層は望ましくないものであり得る。一方、基板が垂直のミクロドメインの形成を促進するための好ましい特徴を有していない場合、表面改質層を使用することが望ましいものであり得る。表面改質層は、表面改質層と、第1のブロック共重合体のブロックを含むそれぞれのポリマーとの間に類似した表面張力を有するとして特徴づけられ得る。一実施形態では、表面改質層は、0.01〜10ミリニュートン/メートル(mN/m)、具体的には0.03〜3mN/m、より具体的には0.04〜1.5mN/mの表面エネルギーの差を有する2以上のホモポリマー繰り返し単位を含むランダム共重合体を含む。例えば、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートの配向制御層は通常ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートを含むが、それはそれぞれのブロックから0.04mN/mの表面エネルギーの差しか有していない。
【0037】
一実施形態では、配向制御層は、膜の上面および底面の両方で(底面の配向制御層は表面改質層である)、AブロックとBブロックとの間にバランスの取れた表面張力を有することが望ましい。表面張力が等しいと良好な結果を達成することができる。これが唯一の必要条件であり、いくつかの材料がこの最終結果を達成することができる。例えば、2つのセグメントを含むランダム共重合体、例えば、ポリメチルメタクリレートとランダムに共重合したポリスチレン(P(S−r−MMA))は、ポリスチレン(PS)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む第1のブロック共重合体の配向制御層として有用である。同様の方法で、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートの2つのセグメント間に正確に表面エネルギーを有することになるホモポリマーは、配向制御層を形成するために使用され得る。
【0038】
各々の繰り返し単位は、ランダム共重合体中の他の繰り返し単位と化学的に及び/又は構造的に異なる。ランダム共重合体は、35〜50ミリニュートン/メートル(mN/m)の表面エネルギーを有する第1のホモポリマー繰り返し単位および15〜30mN/mの表面エネルギーを有する第2の繰り返し単位を含む。ランダム共重合体の総表面エネルギーは、15〜40mN/mである。表面エネルギーは、静滴法により接触角ゴニオメータで測定される水(18オーム脱イオン水)およびヨウ化メチレン(CH
2I
2)およびジエチレングリコールの接触角からOwens−Wendt法を用いて計算される。
【0039】
一実施形態では、表面改質層は、基板の上に配置されるとすぐ架橋され得るランダム共重合体を含む。ランダム共重合体は、少なくとも2つの繰り返し単位を含み、その少なくとも1つは、それが基板の上に配置された後にランダム共重合体を架橋するために使用することのできる反応性の置換基を主鎖骨格に沿って含有する。このように架橋された表面改質層は、その結果基板の表面でマットのような膜の形態であると評される。
【0040】
もう一つの実施形態では、表面改質層は、基板の表面に配置された官能基と反応して基板上にブラシを形成することのできる反応性末端基を含むランダム共重合体を含む。このように基板の上に配置された表面改質層は、その結果基板の表面でブラシの形態であると評される。
【0041】
さらに別の実施形態では、表面改質層は、少なくとも1つの反応性置換基を主鎖骨格に沿って含み、加えて、基板の表面に配置された官能基と反応して基板上にブラシを形成することのできる反応性末端基を含むランダム共重合体を含む。両方の反応性官能基を含有する共重合体は、従って反応の速度に応じてマットかまたはブラシのいずれかを形成する。例えば、末端基が最初に基板と反応し、その後置換基と反応する場合、表面改質膜はマット状よりもブラシ状の特徴を有すると見込まれる。しかし、架橋反応が最初に起こり、その後に表面の基の反応が続く場合、表面膜は高マット状で低ブラシ状の特徴を有する。反応条件、反応体、反応体を分散させるために用いる溶媒、基板の化学的性質、ならびにランダム共重合体の構造および化学的性質はすべてこのように表面改質膜に望ましい、そして結果的に第1のブロック共重合体に望ましい表面の特徴の種類を調製するよう合わせることができる。
【0042】
第2の共重合体(第2の組成物中に存在し、配向制御層を生成するために使用される)は、ポリマー性の表面自由エネルギー低下部分、および、少なくとも1つのポリマー性の実体(第1のブロック共重合体にも含まれているか、または第1のブロック共重合体に含まれている少なくとも1つのポリマー性の実体と適合性である)を含む。第2の共重合体は第1のブロック共重合体と共有結合されていない。第2の共重合体の表面自由エネルギー低下部分は、第1のセグメントを
構成する複数の同じモノマーに、及び/又は、第2のセグメントを
構成する同じモノマーに共有結合されている。言い換えれば、第2の共重合体の表面自由エネルギー低下部分は、第1のセグメントと化学的に類似し、及び/又は第2のセグメントと化学的に類似しているセグメントに共有結合されている。しかし、表面自由エネルギー低下部分は、ブロック共重合体の第1のセグメントに、または第2のセグメントに共有結合されていない。
【0043】
第2の共重合体は、第1のブロック共重合体の自由表面の上に配置された後、第1のブロック共重合体から相分離して、実際の配向制御層を第1のブロック共重合体の表面に形成する能力を有する。配向制御層はまた、第1のブロック共重合体のセグメントに、基板の上に配置されるとすぐ(基板に垂直な)ミクロドメインを形成することを許容する。表面自由エネルギー低下部分が配向制御層を上面に固定する働きをし、第2の共重合体層(第2の層)と第1のブロック共重合体層(すなわち第1の層)の混合を最小化するので、配向制御層は、第1のブロック共重合体がブロック共重合体のガラス転移温度より高くアニールされることをさらに許容する。
【0044】
ポリマー性の表面自由エネルギー低下部分(以降、「表面エネルギー低下部分」)は、通常、ケイ素原子、フッ素原子、非置換もしくは置換C
1−C
12ヒドロカルビル、またはケイ素原子、フッ素原子及び/又は非置換もしくは置換C
1−C
12ヒドロカルビルの組合せを含む。表面自由エネルギー低下部分は、第2の共重合体が第1のブロック共重合体の上に配置された後に、ブロック共重合体からの配向制御層の分離を促進する。表面自由エネルギー低下部分は、第1のブロック共重合体に含まれている部分に類似する少なくとも1つの部分に共有結合されてよい。例えば、ブロック共重合体が2つのセグメント−第1のセグメントAおよび第2のセグメントB−を含有する場合、第2の共重合体は、反応してセグメントAを形成する1以上のモノマー部分、反応してセグメントBを形成する1以上のモノマー部分、または反応してセグメントAを形成する1以上のモノマー部分と反応してセグメントBを形成する1以上のモノマー部分の組合せを、表面エネルギー低下部分に加えて含み得る。第2の共重合体のセグメントを形成するために使用することのできるモノマーの例は、第1のブロック共重合体に提供される詳細において上に列挙される(例、C
2−30オレフィンモノマー、C
1−30アルコール由来の(メタ)アクリレートモノマー、および同類のもの)。
【0045】
2つのセグメント、つまりセグメントAおよびセグメントB(セグメントAが例となる単位Aの繰り返し単位を含み、セグメントBが例となる単位Bの繰り返し単位を含む)、を含む第1のブロック共重合体に関して、第2の共重合体は、1以上の単位A、1以上の単位B、または単位AおよびBの両方を、表面自由エネルギー低下部分Xに加えて含み得る。もう一つの実施形態では、第2の共重合体は、A’およびB’がそれぞれAおよびBと完全にまたは部分的に混和性であるように、1以上の単位A’、1以上の単位B’、または単位A’およびB’の両方を、表面自由エネルギー低下部分Xに加えて含み得る。一実施形態では、AはA’と化学的に同一であっても異なっていてもよく、一方BはB’と化学的に同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
以下の例となる構造は、最終的に第1のブロック共重合体から相分離して配向制御層を形成する第2の共重合体を形成するために使用することができる。第1のブロック共重合体は、2つのセグメントAおよびBを含むと仮定される。一実施形態では、第2の共重合体は、ランダム共重合体、あるいは、繰り返し単位A、B、またはXを含み、式(1)の構造を有するブロック共重合体であり、
【数1】
ここで、単位AおよびBは第1のブロック共重合体中の単位AおよびBに類似し、Xは表面エネルギー低下部分であり、nは、0〜50、具体的には1〜45であり、mは、0〜50、具体的には1〜45であり、pは、1〜50、具体的には5〜40であり、n、mおよびpは独立しているかまたは互いであり、nおよびmは両方ともに同時に0に等しくない。そのため、表面自由エネルギー低下部分Xは、単一の単位または複数の単位であり得る。言い換えれば、それは反応したモノマー単位、オリゴマー単位(2〜10の間の繰り返し単位を有する)またはポリマー単位(10よりも多くの繰り返し単位を有する)であり得る。式(1)の第2の共重合体がランダム共重合体である場合、A、BおよびXの位置はランダムに入れ替えられ得る。一実施形態では、Aは、第2の共重合体の総モル数に基づいて、0〜50モルパーセント、具体的には1〜40モルパーセントの量で存在し、Bは、第2の共重合体の総モル数に基づいて、0〜50モルパーセント、具体的には1〜40モルパーセントの量で存在し、Xは、第2の共重合体の総モル数に基づいて、1〜50モルパーセント、具体的には2〜40モルパーセントの量で存在する。
【0047】
一実施形態では、第2の共重合体は、ランダム共重合体、あるいは、繰り返し単位A、C、またはXを含み、式(2)の構造を有するブロック共重合体であり
【数2】
ここで、Cは、単位AまたはBと組み合わせて第2の共重合体について中性を実現することのできる交互単位であり;n、mおよびpは、上記式(1)に所述される通りである。第2の共重合体中のAおよびXの含有モル量は上に詳述されるが、Cの含有モル量は、上に詳述されるBのものに類似する。
【0048】
もう一つの実施形態では、第2の共重合体は、式(3)の構造により示されるような単位AおよびBからなるブロックおよびXからなるブロックを含むブロック共重合体を含むことができる。
【数3】
ここで、AおよびBの単位は、互いに交互に配置されて第1のブロックを形成し、一方、表面自由エネルギー低下部分Xは第2のブロックを形成する;oは1〜50の値であり、pは、1〜50の値を有し;oおよびpは互いに独立している。第2の共重合体の総モル数に基づくA、BおよびXの含有モル量は、上に詳述される。
【0049】
さらに別の実施形態では、第2の共重合体は、下の式(4)および(5)に示されるようなAおよびXならびにBおよびXの共重合体のブレンド、または、式(4)および(6)に示されるようなAおよびXならびにCおよびXの共重合体のブレンドを含んでよく、
【数4】
ここで、A、BおよびCは上記の通りであり、oは、1〜50の値を有し、pは、1〜50の値を有し;oおよびpは互いに独立している。AおよびX、BおよびX、ならびにCおよびXの共重合体は、交互共重合体、ジ−ブロック共重合体、またはランダム共重合体であり得る。
【0050】
AおよびXの共重合体と、BおよびXの共重合体は、1:99〜99:1、具体的には10:90〜90:10、より具体的には30:7〜70:30の重量比で使用されてよい。AおよびXの共重合体と、BおよびXの共重合体の例となる重量比は50:50である。AおよびXの共重合体と、CおよびXの共重合体は、1:99〜99:1、具体的には10:90〜90:10、より具体的には30:7〜70:30の重量比で使用されてよい。AおよびXの共重合体と、CおよびXの共重合体の例となる重量比は50:50である。
【0051】
一実施形態では、第2の共重合体は、勾配重合ポリマーまたは勾配重合ポリマーのブレンドであってよい。勾配重合ポリマーは、共重合鎖が一端から他端へと横切るにつれて、1つの成分(例、A、BまたはC)の割合がもう一方の成分(例、X)の割合に対して増加するポリマーである。一実施形態では、式(7)に見られるように、勾配重合鎖は、共重合鎖が一端から他端へと横切るにつれて、Xが増加する、A、BおよびXの勾配ランダムポリマーであってよく:
【数5】
ここで、A、BおよびXは、上記のようなモノマー単位であり、n、mおよびpは、各々、1〜50の値を有し得、互いに同じであっても、異なっていても、独立していてもよい。一実施形態では、式(7)において、各々のセグメントに関してn=mである。言い換えれば、第1のセグメントにおいてn=m=1である場合、それは共重合鎖が一端から他端へと横切る後続のセグメントの各々にも同じである。また、この値は、共重合鎖が一端から他端へと横切る各々の後続のセグメントについて同じままでもある。式(7)の勾配重合ポリマーは、ランダム共重合体であってよい。式(7)中のA、BおよびXのモル比は、上の式(1)の構造に関して記載されるものと同じである。
【0052】
もう一つの実施形態では、n、mおよびpは、各々のセグメントにおいて互いに独立し得るが、重合鎖が一端から他端へと横切るあらゆる後続のセグメントについて同じである。言い換えれば、例えば、各々のセグメントについてn=1、m=4およびp=3である場合、それは共重合鎖が一端から他端へと横切る各々の後続のセグメントについて同じままでもある。
【0053】
もう一つの実施形態では、式(7)中の単位Aまたは単位Bは、単位Cで置き換えることができ、Cは上に定義される。
【0054】
もう一つの実施形態では、第2の共重合体は、式(8)に示されるように、共重合鎖が一端から他端へと横切るにつれてXを増加させることによるAおよびBのブロック共重合体であり得、
【数6】
ここで、A、BおよびXは、上記のようなモノマー単位であり、n、mおよびpは、各々、1〜50の値を有し得、互いに同じであっても、異なっていても、独立していてもよい。一実施形態では、式(7)において、各々のセグメントについてn=mである。言い換えれば、第1のセグメントにおいてn=m=1である場合、それは共重合鎖が一端から他端へと横切る各々の後続のセグメントについて同じである。また、この値は、共重合鎖が一端から他端へと横切る各々の後続のセグメントについても同じままである。もう一つの実施形態では、n、mおよびpは、各々のセグメントにおいて互いに独立していてよいが、ポリマー鎖が一端から他端へと横切るあらゆる後続のセグメントについて同じである。言い換えれば、例えば、各々のセグメントについてn=1、m=4およびp=3である場合、それは共重合鎖が一端から他端へと横切る各々の後続のセグメントについて同じである。式(8)中のA、BおよびXのモル比は、上の式(1)の構造に関して記載されるものと同じである。式(8)において、単位Aまたは単位Bは、Cで置き換えられ得る。
【0055】
もう一つの実施形態では、第2の共重合体は、式(9)に見られるように、Xのブロックへのランダム組み込みを含むブロック共重合体であり得る。
【数7】
ここで、式(9)において、A、BおよびXは、上に詳述される意味を有し、「r」は、AおよびXが第1のセグメントにおいてランダムに共重合されていることを示す。第1のセグメントは、k個の繰り返し単位を有する。この第1のセグメントは、これもランダムに共重合されているBおよびXを含む第2のセグメントと共重合されている。第2のセグメントは、h個の繰り返し単位を有する。一実施形態では、kおよびhは、同じであっても異なっていてもよく、1〜50であり得る。式(9)中の文字「b」は、第1のセグメントおよび第2のセグメントがブロック共重合体の形態であることを示す。式(9)中のA、BおよびXのモル比は、上の式(1)の構造に関して記載されるものと同じである。式(9)中の単位Aまたは単位Bは、単位Cで置き換えられ得る。
【0056】
もう一つの実施形態では、ブロック共重合体は、ランダムに共重合されているBおよびXを含むセグメントで共重合されているAの繰り返し単位を含む。
【数8】
ここで、A、b、B、r、k、hおよびXは、上でそれらに認められる意味を有する。式(7)中のA、BおよびXのモル比は、上の式(1)の構造に関して記載されるものと同じである。式(10)中の単位Aまたは単位Bは、単位Cで置き換えられ得る。式(1)〜(10)の第2の共重合体は、必要に応じて星型ブロックの形状に配置され得る点に注意される。
【0057】
もう一つの実施形態では、(配向制御層の形成を促進する)第2の共重合体は、グラフトポリマーであってよい。例えば、第2の共重合体は、櫛型のトポロジーを有してよく、または、ボトルブラシ型共重合体を含むことができる。
図3(A)に示されるように、櫛型のトポロジーは、共重合体主鎖がほぼ同等の数の繰り返し単位のいくつかの分岐をそれにグラフトさせたものである。
図3(A)で分かるように、主鎖骨格の上にグラフトされた分岐は、骨格から一方向だけに伸びる。ボトルブラシ型共重合体では、一部のポリマー主鎖骨格は、すべての方向に放射状に伸びるそれにグラフトさせた分岐を有する。これは
図3(B)に示される。
【0058】
櫛型ポリマーと「ボトルブラシ」ポリマーの間の差の一つは、分岐の密度である。通常、櫛型のほうがグラフトが少なく、そのため共重合体の骨格はなおランダムコイルであり得る。ボトルブラシでは、分枝密度が高く、骨格がぎっしり詰まっているので分枝はコイルすることができず、そのため完全に伸びている。
【0059】
第2の共重合体は、式(11)、(12)および(13)に示される構造を含むことができ、その各々は、櫛型のトポロジーにおいて、またはボトルブラシ型のトポロジーにおいて用いられ得る。
【0060】
式(11)において、Dの繰り返し単位は、第2の共重合体主鎖を形成するが、A、BおよびXの繰り返し単位は骨格にグラフトされている。式(11)の構造に見られるように、A、BおよびXを含むグラフトは側鎖と呼ばれ、第2の共重合体の骨格にグラフトされている。
【数9】
ここで、Dの繰り返し単位は主鎖骨格を形成し、A、BおよびXの繰り返し単位は骨格にグラフトされている。A、BおよびXは、上に定義される通りである。繰り返し単位e、fおよびgの数は、互いに同じであっても異なっていてもよく、繰り返し単位x、yおよびzの数も同様に互いに同じであっても異なっていてもよい。例となる実施形態では、e、fおよびgの各々は、1〜50、具体的には5〜40の量であり得、一方、x、yおよびzの各々も、1〜50、具体的には5〜40の量であり得る。式(11)の第2の共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
【0061】
もう一つの実施形態では、第2の共重合体の骨格にグラフトされている側鎖は、それら自体が式(12)の構造に示されるようなブロック共重合体であり得る。
【数10】
ここで、D、A、B、X、e、f、g、x、y、およびzは上記の通りである。式(12)において、一部のグラフトはブロック共重合体であるが、その他はそうでないことが分かる。繰り返し単位「a」および「b」の数は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立に、1〜50、具体的には5〜40の量であり得る。繰り返し単位aおよびbの数はまた、xおよびyと同じであっても異なっていてもよい。式(12)の第2の共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
【0062】
さらに別の実施形態では、式(13)を有する構造に見られるように、第2の共重合体の骨格にグラフトされている側鎖は、各々、A、BおよびXの繰り返し単位を有するブロック共重合体を含む。
【数11】
ここで、D、A、B、X、e、f、g、x、y、およびzは上記の通りである。式(13)において、一部のグラフトはブロック共重合体であるが、その他はそうでないことが分かる。繰り返し単位「a」、「b」および「c」の数は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立に、1〜50、具体的には5〜40の量であり得る。繰り返し単位「a’」、「b’」および「c’」の数は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立に、1〜50、具体的には5〜40の量であり得る。繰り返し単位a、bおよびcの数はまた、x、yおよびzと同じであっても異なっていてもよい。繰り返し単位a’、b’およびc’の数もまた、x、yおよびzと同じであっても異なっていてもよい。式(13)の第2の共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。式(11)、(12)及び/又は(13)の第2の共重合体のブレンドを使用することができる。
【0063】
上の式(1)〜(13)のいずれかにおいて、単位Aは、単位Aとは化学的に異なるがそれと完全にまたは部分的に混和性である単位A’で置き換えられてよい点に注意される。同様の方法で、単位Bは、単位Aとは化学的に異なるがそれと完全にまたは部分的に混和性である別の単位B’で置き換えられてよい。この参照において、A’およびB’は、それぞれ第3のポリマーおよび第4のブロックポリマーと呼ばれる。
【0064】
一実施形態では、第3のセグメントA’は、第1のセグメントAと同じであっても異なっていてもよく、第4のセグメントB’は、第2のセグメントBと同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
表面自由エネルギー低下部分は、フッ素原子、ケイ素原子、非置換もしくは置換C
1−C
12ヒドロカルビル、またはその組合せを含む分子であり得る。
【0066】
表面自由エネルギー低下部分は、単一の単位(すなわち、反応したモノマー単位)、オリゴマー単位(すなわち、2〜10個の繰り返し単位を有する)またはポリマー単位(10個を超える繰り返し単位を有する)であってよく、反応性官能基を含む。反応性官能基は、上に詳述される式(1)〜(13)に列挙される繰り返し単位A、B、CまたはDとの反応を促進する。これらの反応性官能基の例は、アルケニル基(例、ビニル基)、アルキニル基、エポキシド基、ベンジル基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、チオール基、ハロゲン官能基、および同類のものである。
【0067】
例となる表面エネルギー低下部分は、
図4に示される。
【0068】
第2の共重合体が組成物中に存在する場合、それは組成物の総重量に基づいて1〜20重量パーセント、具体的には2〜14重量パーセント、より具体的には3〜10重量パーセントの量で存在する。
【0069】
一実施形態では、第2の共重合体を生成する一方法において、反応体は、適切な触媒および溶媒とともに反応容器に装入される。この溶媒は、極性溶媒、非極性溶媒またはその組合せであり得る。例となる溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、乳酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ジアセトンアルコール、トルエン、トリフルオロトルエン、または前述の少なくとも1つを含む組合せを挙げることができる。
【0070】
例となる一態様では、二溶媒系が本発明の組成物において使用され得る。この溶媒系には、例えば、主溶媒および添加溶媒が含まれ得る。さらなる例となる態様は、三溶媒系を使用し、それには、例えば、主溶媒、添加溶媒および希釈溶媒が含まれ得る。1以上のさらなる主溶媒、希釈溶媒、添加溶媒及び/又はその他の溶媒を用いてよい。
【0071】
主溶媒は、トップコート組成物の非溶媒成分に関して優れた溶解度特性を提示する。主溶媒の望ましい沸点は、溶媒系のその他の成分によって決まるが、沸点は、一般に添加溶媒のものよりも低く(添加溶媒よりも蒸発速度が高い)、沸点は120〜140℃、例えば約130℃が典型的である。適した主溶媒としては、例えば、C4−C8 n−アルコール、例えばn−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソヘキサノールおよびイソヘプタノールなど、その異性体およびその混合物が挙げられる。主溶媒は、溶媒系に対して30〜97重量%の量で存在する。
【0072】
添加溶媒は、組成物中の添加剤共重合体とその他の樹脂(類)との間の相分離を促進するために存在する。その上、添加溶媒の低い蒸発速度は、コーティングの間の先端の乾燥作用を減らすことができる。添加溶媒が溶媒系のその他の成分よりも高い沸点(低い蒸発速度)を有することは一般的である。添加溶媒の望ましい蒸発速度は、溶媒系のその他の成分によって決まる。適した添加溶媒としては、例えば、ヒドロキシアルキルエーテル、例えば式:
R
1−O−R
2−O−R
3−OH
(式中、R
1は、場合により置換されているC1−C2アルキル基であり、R
2およびR
3は、独立に、場合により置換されているC2−C4アルキル基から選択される)のもの、ならびに、異性体混合物を含むかかるヒドロキシアルキルエーテルの混合物が挙げられる。添加溶媒は、一般に、溶媒系に基づいて3〜15重量%の量で存在する。
【0073】
希釈溶媒は、存在する場合、粘度を低下させることができ、低い分配量でコーティング適用範囲を改善することができる。希釈溶媒は、一般に、主溶媒に対して組成物の非溶媒成分の乏しい溶媒である。希釈溶媒の望ましい沸点は溶媒系のその他の成分によって決まるが、沸点は一般に主溶媒のものよりも高い(主溶媒よりも蒸発速度が低い)。適した希釈溶媒としては、例えば、C8−C12 n−アルカンなどのアルカン、例えば、n−オクタン、n−デカンおよびドデカンなど、その異性体およびその異性体の混合物;及び/又は式R
1−O−R
2のものなどのアルキルエーテル(式中、R
1およびR
2は、独立に、C
2−C
8アルキル、C
2−C
6アルキルおよびC
2−C
4アルキルから選択される)が挙げられる。アルキルエーテル基は、線状であっても分枝状であってもよく、対称であっても非対称であってもよい。希釈溶媒は、存在する場合、一般に、溶媒系に基づいて10〜70重量%の量で存在する。
【0074】
反応容器中の反応体は、温度および圧力の適切な条件に供される。反応体はまた、反応の間にかき混ぜられてもよい。反応は、反応体の望ましくない酸化を防ぐために不活性ガスブランケット下で行われてもよい。反応が適切な程度まで進行したらクエンチング剤を反応容器に添加して、さらなる反応を阻害してよい。次に、生成物は未反応の反応体とともに反応容器から取り出され、精製されてよい。精製は、濾過、デカンテーションデカンテーション、遠心分離、蒸留、結晶化、またはその組合せにより行われてよい。
【0075】
一実施形態では、ナノ構造コーティングを生成する一方法において、第1のブロック共重合体かまたは第1のブロック共重合体および第2の共重合体の組合せを含む組成物は、適した溶媒とブレンドされる。ブレンディングは、多様なミキサーおよびブレンダーで行うことができ、そこでは、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、あるいは前述の力またはエネルギー形態の少なくとも1つを含む組合せが用いられる。ブレンディングは、上述の力またはエネルギー形態が、単軸スクリュー、多軸スクリュー、噛み合い型同方向もしくは異方向回転スクリュー、非噛み合い型同方向もしくは異方向回転スクリュー、往復スクリュー、ピンを備えたスクリュー、ピンを備えたバレル、ロール、ラム、ヘリカルローター、または前述の少なくとも1つを含む組合せによって発揮される加工装置で行われる。
【0076】
上述の力を伴うブレンディングは、単軸もしくは多軸スクリュー押出機、バス・ニーダー、ヘンシェルミキサー、ヘリコーン、ロスミキサー、バンバリー、ロールミル、成形機、例えば射出成形機、真空成形機、ブロー成形機、または同類のものなどの機械、あるいは前述の機械の少なくとも1つを含む組合せにおいて行われてよい。
【0077】
ブレンディングに続いて、組成物は、基板の上に配置される。基板は、その上に表面改質層を配置していてもしていなくてもよい。組成物は、基板の上に5〜1000nm、具体的には10〜750nm、より具体的には15〜500nmの厚さを有するコーティングの形態で配置されてよい。コーティングは、スピンコーティング、浸漬被覆、吹付塗、またはドクターブレードによる適用によるものを含む方法により形成される。
【0078】
図5および6は、トップコートが第1のブロック共重合体において垂直のミクロドメインの形成を促進する機構を示す。
図5において、組成物は、それが接触する基板の上に直接配置されるが、
図6では、表面改質層(中性の下層)が基板表面の上に配置される。組成物は表面全体にわたって広げられ、溶媒を除去し、第1のブロック共重合体(BCP)においてドメイン形成を促進するためのアニーリングに供され得る。アニーリングの間、第2の共重合体中に存在する表面自由エネルギー低下部分は、トップコートを自由表面に固定し、それがブロック共重合体と混合することを防ぐ働きをする。トップコートは、第1のブロック共重合体においてドメイン(すなわち、ミクロドメインまたはナノドメイン)の形成を促進するための適切な界面張力を提供する;ここで、ミクロドメインは基板に対して垂直である。トップコートは、第2の共重合体を含む。
【0079】
次に、第1のブロック共重合体の表面の上のトップコートを処理してそれを除去することができる。それは反応的にイオンエッチングされ、溶媒への溶解により溶解され、化学平坦化によって化学的に除去されるかまたは機械的に研磨され得る。次に、そのミクロドメインが基板に対して垂直に配向された第1のブロック共重合体は物品として使用されてよく、鋳型またはフォトレジストを形成するために処理され、半導体チップ、またはその他の電子物品の製造において使用される。
【0080】
本明細書に開示される組成物および方法は、以下の非限定的な例によって例証される。
【実施例】
【0081】
実施例1
この実施例は、第1のブロック共重合体の表面での中性の表面層の形成を導くことのできるトップコートに存在する第2の共重合体の成分間の表面張力を実証する。上に詳述されるように、第2の共重合体は、第1のブロック共重合体に添加されて開示される組成物を形成してもよいし、または第1のブロック共重合体を含む組成物の上に直接配置されてもよい。下の実施例に詳述される第2の共重合体が第1のブロック共重合体に添加されるか、または第1のブロック共重合体の上に配置される場合、それは第1のブロック共重合体が配置された基板の表面に対して垂直な、(組成物中の第1のブロックポリマーの)セグメントの形成を許容する。第2の共重合体相は、第1のブロック共重合体から分離するか、または、第1のブロック共重合体の上面に固定されたまま残って、第1のブロック共重合体の表面で配向制御層を形成する。
【0082】
第1のブロック共重合体の配向制御層とブロックとの間にバランスの取れた表面張力を有するために、第1のブロック共重合体の膜の上面および底面の両方に配向制御層を形成することが望ましい。この実施例では、第1のブロック共重合体がAおよびBのホモポリマーを含む場合、ブロックAおよびBと配向制御層との間の表面張力を測定する。材料はそれ自体とブロックAおよびBとの間の表面張力の差がほぼ等しい場合に、中性とみなされる。
【0083】
下の表1は、基板の表面に対して垂直なブロックの形成を促進するために、組成物中で使用することができるか、または組成物に配置されることができる、第1のブロック共重合体および第2の共重合体を示す。
【0084】
表1において、第1のブロック共重合体は、最初に特定の化学を有するセグメントを有すると想定される。例えばサンプル1番の例では、第1のブロック共重合体のブロック(セグメント)の1つは、ポリスチレン(PS)であり、2つ目のブロックはポリジメチルシロキサン(PDMS)であると想定される。第3のポリマーは、最初に、PSおよびPDMSの極性および分散力を用いて、PSと第3のポリマーおよびPDMSと第3のポリマーとの間の表面張力を計算することにより、それ自体と、PSと、PDMSとの間にバランスの取れた表面張力を有することが見出され得る。ここで、2つのポリマー(iおよびj)間の表面張力(γ)は、次式(I)により定義され、式(I)において、σ
i,Totalは、総表面エネルギーであり、σ
dおよびσ
pは、それぞれ分散性および極性成分である:
【数12】
材料は、第3のポリマーとPSとの間、および第3のポリマーとPDMSとの間のこれらの表面張力の差(|γ
x−γ
y|として定義される)が、0に等しい場合に中性と考えることができる。すなわち、それが0と等しいはずがない場合には、それは最少化されるべきである。第3のポリマーの望ましい表面エネルギーは、表面張力の差が0に等しくなるまで値を調節することによって計算される。これは、表1において「最適」値と呼ばれる。
【0085】
同様の方法で、式(I)および既知の表面エネルギーを用いて、ブロック共重合体のそれぞれの成分ポリマーと同様の表面張力を有するポリマーを見出すことできる。下の表1に列挙されるのは、PS−PDMS、PMMA−PDMS、およびPS−P2VPジブロックの一部の見込みのある材料である。第1の数値セットにおいて、表面張力の最小差|γ
x−γ
y|を与える表面エネルギーの値が計算され、従って表面張力の最小差によって「最適な」第3のポリマーを表す。この後、最適例に合う表面エネルギーをもつポリマー材料を見出した。例えば、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)(PHMA)とポリスチレンとの間の表面張力は、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)とポリジメチルシロキサンとの間の表面張力に非常に類似している。そのため、PHMAは、表面改質層として、かつブロック共重合体ドメインの垂直の配向を促進するためのトップコートの成分として効果的である。また、第2の共重合体は、PSかPDMSのいずれかよりも低い表面自由エネルギーをもつ表面自由エネルギー低下部分、例えば、σ
i,Total=15.3mN/mを有する、ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)ポリマーセグメントなども含有する。有用なトップコートまたは添加剤共重合体は、PHMAおよびポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)ブロックを含むブロック共重合体である。
【0086】
ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)は、それ自体とポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)とポリジメチルシロキサンとの間の表面張力の最小差をもたらす。そのため、PBMAは、トップコートまたは添加剤共重合体において表面改質層または中性成分として効果的であり、かつ、PBMAおよびポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)ブロックを含むブロック共重合体は、材料がその上に配置されている基板の表面に対して垂直なPSおよびPDMSのブロックの形成を促進するために効果的なトップコートまたは添加剤共重合体である。
【0087】
同様に、ポリ(5および6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロ−メチル)プロピル]ビシクロ−[2.2.1]ヘプタ−2−イルメタクリレート)(PMABTHBNB)は、それ自体とポリスチレンとポリ(2−ビニルピリジン)との間の表面張力の最小差をもたらす。そのため、PMABTHBNBは、ブロック共重合体に対して親和性をもつ、トップコートまたは添加剤共重合体中の効果的な表面改質層または中性成分として役立つ。PS−ブロック−P2VPのためのトップコートまたは添加剤共重合体には、PMABTHBNBブロック、例えばPMABTHBNB−ブロック−PHMA、PMABTHBNB−ブロック−ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)、およびPMABTHBNB−ブロック−PDMSなどを有するブロック共重合体が含まれる。
【0088】
【表1】
【0089】
表1から、第1のブロック共重合体の配向制御層とそれぞれのブロックとの間の表面エネルギーのバランスを保つことにより、ブロックがその上にキャストされている基板の表面に対して垂直なミクロドメインを生成するために、第1のブロック共重合体のそれぞれのブロックを選択することができることが分かるであろう。
【0090】
実施例2
この実施例は、配向制御層を形成するためのトップコートのブロック共重合体への適用を実証するために実施された。この実施例では、第1のブロック共重合体は、ポリスチレンブロックポリ(2−ビニルピリジン)PS−ブロック−P2VPである。第2の共重合体は、a)ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)−ブロック−ポリ(5および6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ(bicycro)−[2.2.1]ヘプタ−2−イルメタクリレート)(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNB)かまたはb)ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)−ブロック−ポリ(1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−イルメタクリレート)(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBOH)のいずれかであった。後に詳述されるように、PS−ブロック−P2VPは、ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)−ポリヘキシルエチルメタクリレート(PS−P2VP−PHEMA)ブラシを表面改質層として有する基板の上にコーティングされるが、PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNBかまたはPHFiPMA−ブロック−PMABTHBOHのいずれかは、配向制御層を形成するためにトップコートとして適用された。この実験の詳細は下に提供され、考察される。
【0091】
すべての材料は、特に言及する場合を除いてAldrichから購入し、そのまま使用したか、または下に考察されるように精製した。スチレンを活性化中性アルミナに通した。2−ビニルピリジン(2VP)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFiPMA)、1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−イルメタクリレート(MABTHBOH)(セントラル硝子より入手)、ならびに5および6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ(bicycro)−[2.2.1]ヘプタ−2−イルメタクリレート(MABTHBNB)(Central Glassより入手)を、活性化塩基性アルミナに通した。無水トルエン、トリフルオロトルエン、2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオエート(CPBT)、および2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、そのまま使用した。重合用のモノマーおよび溶媒も、3回の連続する凍結−ポンプ−融解サイクルの乾燥アルゴンによるパージのいずれかにより脱酸素化した。
【0092】
シリンダを形成するPS−ブロック−P2VPブロック共重合体、31重量%P2VP、Mn=58kg/mol、Mw/Mn=1.07は、Polymer Sourceより購入した;PS−ブロック−P2VPは、AFMにより測定されるシリンダ間の間隔、L
0が44.0nmであるよう特徴づけた。29重量%の2VP、1.5%のHEMA、Mn=18kg/mol、Mw/Mn=1.4のポリ(スチレン−コ−2ビニルピリジン−コ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ランダム共重合体(PS−P2VP−PHEMA)を、Ji et al.、Macromolecules 2008,41,9098−9103に記載される方法に従って合成した。ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)(PHFiPMA)は、56℃の報告されたガラス転移温度(T
g)を有する(http://www.safcglobal.com)。ポリ(1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−イルメタクリレート)(PMABTHBOH)およびポリ(5および6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ(bicycro)−[2.2.1]ヘプタ−2−イルメタクリレート)(PMABTHBNB)は、それぞれ89℃および159℃のT
gを有する(Sanders et al、 “Hexafluoroalcohol−functionalized Methacrylate Monomers for Lithographic/Nanopatterning Materials,” Sigma−Aldrich’s Material Matters, Volume 6, Article 1に記載)。
【0093】
PMABTHBNBマクロ−RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)剤の合成
MAMTHBNB(5.704g、15.8mmol)、CPBT(0.126g、0.570mmol)、AIBN(0.0205g、0.143mol)、および4.7mLのトリフルオロトルエンを、電磁撹拌棒を装備したシュレンク管に添加した。溶液を窒素で15分間スパージした後、予熱した70℃の油浴に19.5時間入れた。反応混合物をTHFで希釈し、シクロヘキサンから沈殿させ、60℃のオーブンで一晩乾燥させた(転換率99%;収率74%;M
n=10.9kg/mol;M
w=13.0kg/mol;Mw/Mn=1.2)。
【0094】
PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNB(トップコート1)の合成
HFiPMA(5.357g、22.7mmol)、PMABTHBNBマクロRAFT剤(3.75g、0.349mmol)、AIBN(0.0125g、0.087mmol)、および9mLのトリフルオロトルエンを、電磁撹拌棒を装備したシュレンク管に添加した。溶液を窒素で15分間スパージした後、予熱した70℃の油浴に23時間入れた。反応混合物をTHFで希釈し、シクロヘキサンから沈殿させ、6℃のオーブンで一晩乾燥させた(転換率63%;収率95%)。この材料は、
13C NMRにより51重量%のHFiPMAおよび49重量%のPMABTHBNBを含有し、GPCにより測定されるMn=18kg/molおよびMw/Mn=1.2を有した。
【0095】
PMABTHBOHマクロ−RAFT剤の合成
1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−イルメタクリレート(MAMTHBOH、6.54g、26.2mmol)、2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオエート(CPBT、0.145g、0.654mmol)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.0234、0.163mol)、および11mLのトリフルオロトルエンを、電磁撹拌棒を装備したシュレンク管に添加した。溶液を窒素で15分間スパージした後、予熱した70℃の油浴に19.5時間入れた。反応混合物をTHFで希釈し、シクロヘキサンから沈殿させ、60℃のオーブンで一晩乾燥させた(転換率96%;収率80%;M
n=10.7kg/mol;M
w=12.4kg/mol;M
w/M
n=1.2)。
【0096】
PHFiPMA−ブロック−PMABTHBOH(トップコート2)の合成
PMAMTHBOHマクロRAFT剤(3.75g、0.349mmol)、HFiPMA(5.357g、22.7mmol)、AIBN(0.0125g、0.087mmol)、および9mLのトリフルオロトルエンを、電磁撹拌棒を装備したシュレンク管に添加した。溶液を窒素で15分間スパージした後、予熱した70℃の油浴に23時間入れた。反応混合物をTHFで希釈し、シクロヘキサンから沈殿させ、60℃のオーブンで一晩乾燥させた(転換率63%;収率95%)。この材料は、
13C NMRにより52重量%のHFiPMAおよび48重量%のPMAMTHBOHを含有し、GPCにより測定されるMn=18kg/molおよびMw/Mn=1.3を有した。
【0097】
PS−P2VP−PHEMAブラシを含む基板の調製
シリコンウエハを、Harrick PDC−001プラズマクリーナーでArおよびO
2プラズマによって洗浄した。PS−P2VP−PHEMAランダム共重合体ブラシを、PS−P2VP−PHEMAのトルエン中0.5重量%溶液を3000rpmでスピンーティングすることによりウエハにコーティングした。ウエハを真空下オーブンで60分間230℃でアニールした。ウエハを室温まで冷却し、過剰なトルエンですすいで、厚さ7.2nmのグラフトされたブラシ層を得た。
【0098】
特徴づけ
分子量および多分散性値は、Agilent 1100シリーズ屈折率計およびMiniDAWN光散乱検出器(Wyatt Technology Co.)を装備したAgilent 1100シリーズLCシステムでゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。サンプルをHPCLグレードのTHFに約1mg/mLの濃度で溶解し、0.20μmシリンジフィルタで濾過した後、2本のPLGel300×7.5mm Mixed Cカラム(5mm、Polymer Laboratories,Inc.)によって注入した。1mL/分の流速および35℃の温度を維持した。カラムを、狭分子量のPS標準(EasiCal PS−2、Polymer Laboratories,Inc.)で較正した。
【0099】
プロトンNMR分光測定は、Varian INOVA 400MHz NMR分光計で実施した。重水素化テトラヒドロフランをすべてのNMRスペクトルに使用した。定量的積分のために10秒の遅延時間を使用してプロトンの完全な緩和を確保した。化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)に対して報告した。
【0100】
逆ゲート付き
13C NMR分光測定は、クライオプローブを装備したBruker Avance 400MHz NMR分光計で実施した。ポリマーを、10mmのNMR管中、室温でCDCl
3に溶解した。0.02Mクロムアセチルアセトナート(Cr(acac)
3)を添加して取得時間を短くした。典型的なサンプル濃度は、0.35g/2.8mLであった。すべての測定値は、25℃でサンプルスピニングなしで、4000〜8000回の走査の取得、5秒の緩和遅延、12.1μsの90°パルス長、CDCl
3に対して77.27ppmのスペクトル基準、100ppmのスペクトル中心、および300ppmのスペクトル幅で得た。
【0101】
膜厚は、JA Woollam ESM 300楕円偏光計で測定した。データは3つの異なる入射角:65、70および75度で収集した。すべての膜およびブラシは、非吸収性のCauchy膜としてモデル化した。ブラシの厚さは、ブロック共重合体膜をコーティングする前に各々の基板で測定した。ブロック共重合体の膜厚は、ブラシ層の厚さが既に測定した値に固定されている、2層モデル(ブラシの上にブロック共重合体)を用いて測定した。トップコートの厚さは、ブロック共重合体膜およびブラシ層の厚さが既に測定した値に固定されている、3層モデル(ブラシの上のブロック共重合体の上にトップコート)を用いて測定した。
【0102】
原子間力顕微鏡(AFM)画像は、両面カーボンテープを用いてAFMステージにウエハを載せることにより収集し、分析の前にエアガンで洗浄した。トポグラフィーおよび位相画像は、NanoScope IVコントローラーを装備したDigital Instruments(現Veeco)Multi−Mode AFMで周囲温度で取り込んだ。ばね定数55N/mおよび167kHz前後の共振周波数をもつナノセンサープローブを位相画像形成に使用した。サンプルは、0.5〜2Hzの周波数および約0.8のセットポイント比で画像形成した。
【0103】
DataPhysics Instruments GmBH製、モデルOCA20ゴニオメータを、すべての接触角測定に使用した。各々のサンプルは、さらなる加工を行わずに受取ったままで分析した。添付書類中の表1は、使用した4種類の試験液およびそれぞれの表面張力を詳述する。液滴の動きの動画を各測定に対して最低10秒間記録した。針が完全に除去された時の動画の最初の液滴画像を用いて接触角を決定した。接触角は、OCAソフトウェアの円形モデルを用いて評価した。接触角測定値の典型的な標準偏差は、2度であるが、0.2度と同程度であってもよい。表面エネルギーは、Owens Wendt理論を用いて接触角データから計算した。
【0104】
表1.表面エネルギー評価に使用した試験液、極性および分散成分。σ
pおよびσ
dは、それぞれ、液体表面張力の極性および分散成分である。
【表2】
【0105】
X線光電子分光(XPS)分析は、Kratos HSI XPS分光計で、単色Al Ka 225ワット(14kV、15mA)のX線源、80eV(サーベイスペクトル)または20eV(高分解スペクトル)アナライザーパスエネルギー、90°のテイクオフ角、ハイブリッドレンズモード、17.05回転(3×10mm)のアパーチャ(aperature)、22.5mm(ハイブリッドモード)アイリス、1150×700m(ハイブリッド)分析面積(シグナルレベル16〜84%)、ならびに、1.7Aフィラメント電流、−2.75V荷電平衡、および−1.0Vバイアスを含むフラッド条件(flood condition)を用いて実施した。XPSは結合エネルギーについてAu 4fに対して較正し、スパンはAu 4fおよびCu 2pを用いて較正した。XPSの検出限界は、0.1原子%であることが一般に許容されている。絶縁サンプルは、285.0eVでC 1sを基準とする。スペクトルデータは、Kratos計測器に対するRSF値を用いてCasaXPS 2.3.15を用いて加工した。
【0106】
トップコート1(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNB)によるPS−ブロック−P2VP薄膜
PS−ブロック−P2VP膜を、トルエン溶液から、PS−P2VP−PHEMAブラシで処理した基板の上にスピンキャストした。膜を67nm(1.75L
0にほぼ等しい)の厚さでコーティングした(L
0=44nmがPS−ブロック−P2VPのシリンダ間の間隔である)。次に、2−メチル−1−ブタノール/イソブチルイソブチレートの75/25(v/v)ブレンドを、トップコート膜のキャスティング溶媒として使用した。この溶媒ブレンドは、この実験に用いたコーティング条件下でPS−ブロック−P2VP膜の厚さに大きな変化を引き起こさなかったことが確認された。トップコート1、PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNBを、2−メチル−1−ブタノール/イソブチルイソブチレートの75/25(v/v)ブレンドに溶解し、膜をキャストして10nmのトップコート膜厚を得た。膜の表面エネルギーおよび表面フッ素含有量を測定した。膜は、19.9mN/mの表面エネルギーおよびXPSにより測定される31原子%の表面フッ素含有量を有した。
【0107】
結合された膜を、N
2下、250℃で4時間アニールした。このアニーリング温度は、PS−P2VPならびにトップコートの最高Tg成分のTg(159℃)よりも高かった。アニーリングの後、膜の表面エネルギーおよび表面フッ素含有量を再び測定した。アニールした膜は、PSかまたはP2VPのいずれかの表面エネルギーよりもはるかに低い13.8mN/mの表面エネルギー、および、XPSにより測定される31原子%の表面フッ素含有量を有した。トップコートがPS−ブロック−P2VP層の上部に固定されたさらなる証拠は、異なる深さにエッチングされた膜においてXPSによりフッ素含有量を測定することによって得られた。トップコート層およびPS−P2VP膜の一部を、Trion Sirus T2計測器で反応性イオンエッチング(RIE)により除去した。Ar/O
2の15/5(sccm)混合物を使用した。エッチングは、様々な時間長に対して50Wおよび50mTで行って、PS−ブロック−P2VPを約5nmの深さならびにPS−ブロック−P2VP層の中央までPS−ブロック−P2VP膜の上面を露出させた。XPS分析により、PS−ブロック−P2VP層の上面および中央で1.6および1.1原子%のフッ素含有量が示された。対照実験により、経時的にRIEチャンバに堆積されたフッ素化種からの汚染によって、これらの材料のエッチング中に3原子%までのフッ素が膜の上に再付着することがあり得ることが示された。低い表面エネルギー、上面での高いフッ素含有量、およびPS−ブロック−P2VP層中に認識できるフッ素含有量がないことは、トップコートが上面に固定され、アニーリング中にPS−ブロック−P2VP層に移動していないことを示す。
【0108】
アニールした膜もAFMにより分析した。代表的な画像を
図7に示す。
図7は、250℃で4時間アニールしたPS−P2VP膜において、(a)トップコートのない場合と、(b)トップコート1(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBNB)の存在下でアニールした場合と、(c)トップコート2(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBOH)(下に詳述される)の存在下でアニールした場合と、の上面の高さの変化を示すAFM高さ画像を示す。画像の上に引かれた白線にわたる高さの変化が各画像の下に図で示される。像は、トップコートがない場合に観察したものとは非常に異なるモルフォロジーを明らかにする。39nmのステップ高さをもつ大きく明確な「アイランド−ホール(island−holes)」の代わりに、膜はわずか約6〜8nmというはるかに低い高さの変化を示した(
図7(b)参照)。著しいデウェッティングはPS−ブロック−P2VP膜において起こらなかった、これはトップコート1がPSとP2VPとの間の大きな表面エネルギー差を軽減し、それらの軸が基板に対して垂直に配向されたP2VPシリンダの場合に形成を安定化させたことを示した。
【0109】
トップコート2(PHFiPMA−ブロック−PMABTHBOH)によるPS−ブロック−P2VP薄膜
PS−ブロック−P2VP膜を、トルエン溶液から、PS−P2VP−PHEMAブラシで処理した基板の上にスピンキャストした。膜を67nm(1.75L
0にほぼ等しい)の厚さでコーティングした(L
0=44nmがPS−ブロック−P2VPのシリンダ間の間隔である)。次に、2−メチル−1−ブタノール/イソブチルイソブチレートの75/25(v/v)ブレンドを、トップコート膜のキャスティング溶媒として使用した。この溶媒ブレンドは、この実験に用いたコーティング条件下でPS−ブロック−P2VP膜の厚さに大きな変化を引き起こさなかったことが確認された。トップコート2、PHFiPMA−ブロック−PMABTHBOHを、2−メチル−1−ブタノール/イソブチルイソブチレートの75/25(v/v)ブレンドに溶解し、膜をキャストして10nmのトップコート膜厚を得た。膜の表面エネルギーおよび表面フッ素含有量を測定した。膜は、17.6mN/mの表面エネルギーおよびXPSにより測定される33%の表面フッ素含有量を有した。
【0110】
膜を、N
2下、250℃で4時間アニールした。このアニーリング温度は、PS−P2VPならびにトップコートの最高Tg成分のTg(89℃)よりも高かった。アニーリングの後、膜の表面エネルギーおよび表面フッ素含有量を再び測定した。アニールした膜は、PSかまたはP2VPのいずれかの表面エネルギーよりもはるかに低い13.8mN/mの表面エネルギー、および、XPSにより測定される31%の表面フッ素含有量を有した。低い表面エネルギーおよび上面での高いフッ素含有量は、トップコートが上面に固定され、アニーリング中にPS−ブロック−P2VP層に移動していないことを示す。
【0111】
アニールした膜もAFMにより分析した。代表的な画像を
図7(C)に示す。像は、トップコートがない場合に観察したものとは非常に異なるモルフォロジーを明らかにした。39nmのステップ高さをもつ大きく明確な「アイランド−ホール(island−holes)」の代わりに、膜はわずか約6〜8nmというはるかに低い高さの変化を示した。著しいデウェッティングはPS−ブロック−P2VP膜において起こらなかった、これはトップコート2がPSとP2VPとの間の大きな表面エネルギー差を軽減し、それらの軸が基板に対して垂直に配向されたP2VPシリンダの場合に形成を安定化させたことを示した。