特許第6434240号(P6434240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434240
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ベルトスリング
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/18 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
   B66C1/18 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-146024(P2014-146024)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23006(P2016-23006A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】506072468
【氏名又は名称】J−ロジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美幸
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−015283(JP,U)
【文献】 特開2008−144292(JP,A)
【文献】 特開昭52−049399(JP,A)
【文献】 実開昭59−127085(JP,U)
【文献】 実開昭54−054084(JP,U)
【文献】 実開昭51−102236(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3055777(JP,U)
【文献】 特開2011−201685(JP,A)
【文献】 米国特許第05688011(US,A)
【文献】 実開昭59−091277(JP,U)
【文献】 実開昭60−187186(JP,U)
【文献】 特開平10−033703(JP,A)
【文献】 特開平09−058783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00─ 3/20
A62B 1/00─ 5/00
A62B 35/00─99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物をトレーラの荷台に固定するためのベルトスリングであって、
繊維フィラメント糸を用いた細幅織物を環状に重畳させて両端部に1対の第1吊り環部を形成するように中間部を縫製した本体と、
繊維フィラメント糸を用いた細幅織物で環状を形成し、前記中間部に複数固定された第2吊り環部とを有し、
第2吊り環部は、前記本体に縫製される縫製部と前記本体に対して非縫製の環状部分とを有し、該環状部分が、引っ張る向きを第1吊り環部の一方と同じ向きとなるように、それぞれの前記縫製部が2層に重畳された前記中間部と共に縫製されて固定され
第2吊り環部のそれぞれの端部を重畳させて第2吊り環部を前記中間部に固定した、又は、第2吊り環部のそれぞれの端部を前記本体の長手方向に沿って並べて第2吊り環部を前記中間部に固定したことを特徴とするベルトスリング。
【請求項2】
第2吊り環部が、前記本体の長手方向に沿ってZ字状に前記中間部に縫製され、
前記Z字状は、前記長手方向に直交する方向に沿う複数の部分と、それらの一端同士を結ぶ部分とを含む請求項1に記載のベルトスリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラなどの荷台に載置される重量物を固定するために用いられる繊維製のベルトスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、玉掛け作業として、クレーン等で重量物を吊上げ、持ち運び、吊下げる際には、ワイヤーロープやチェーンなどの帯状体が用いられていた。しかし、ワイヤーロープやチェーンなどの帯状体は、重量も重く、吊り下げ対象や積み荷の大きさによって長さの異なる帯状体を用意する必要があった。
そこで、特許文献1に開示されるような繊維製の帯状体(ベルトスリング)が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたベルトスリングは、図4に示すように、長さ方向の一端側には吊り下げ機のフックへの引っかけアイ105が備わっているとともに、他端側に、一方が偶数個、他方が奇数個の連結用のアイ111,113が幅方向に等間隔で形成された2本のスリング部102,103から形成される。前記連結用の各アイ111,113が互いに櫛歯を噛み合わせるようにして入れ込まれ、各アイ111,113を貫いて連結ピン117が挿通されて、両スリング部102,103を一本のスリング1に形成する。
【0004】
特許文献1に開示されたベルトスリングによれば布製のため、従来のワイヤーなどに比べて軽量化がなされ、利便性や収納性に優れた帯状体を提供することができるとしている。また、連結アイや引っかけアイ間に別の引っかけアイを複数設けたため、様々な大きさの吊り下げ対象(船舶)に対応することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3055777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のベルトスリングは、アイ(吊り環部)の両端部を長手方向と直交する方向に並べてスリング本体に固定されているため、鋼板コイルなどの重量物をトレーラの荷台に固定する際に用いられるベルトスリングに適用するには、引っ張り強度の点で検討の余地があった。
よって、鋼板コイルなどの重量物をトレーラの荷台に固定する際に用いられるベルトスリングにあっては、引っ張り強度を更に向上させたベルトスリングが求められる。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、引っ張り強度を向上させたベルトスリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のある実施形態のベルトスリングは、重量物をトレーラの荷台に固定するためのベルトスリングであって、繊維フィラメント糸を用いた細幅織物を環状に重畳させて両端部に1対の第1吊り環部を形成するように中間部を縫製した本体と、
繊維フィラメント糸を用いた細幅織物で環状を形成し、上記中間部に複数固定された第2吊り環部とを有し、
第2吊り環部は、前記本体に縫製される縫製部と前記本体に対して非縫製の環状部分とを有し、該環状部分が、引っ張る向きを第1吊り環部の一方と同じ向きとなるように、それぞれの前記縫製部が2層に重畳された上記中間部と共に縫製されて固定され
第2吊り環部のそれぞれの端部を重畳させて第2吊り環部を前記中間部に固定した、又は、第2吊り環部のそれぞれの端部を前記本体の長手方向に沿って並べて第2吊り環部を前記中間部に固定している。
【0011】
また、上記ベルトスリングにおいては、第2吊り環部が、上記本体の長手方向に沿ってZ字状に上記中間部に縫製され、前記Z字状は、前記長手方向に直交する方向に沿う複数の部分と、それらの一端同士を結ぶ部分とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のある実施形態のベルトスリングによれば、引っ張り強度を向上させたベルトスリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ベルトスリングの第1実施形態の構成を示す平面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】ベルトスリングの第2実施形態の構成を示す平面図である。
図4】ベルトスリングの従来の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るベルトスリングの実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、ベルトスリングの第1実施形態の構成を示す平面図である。また、図2は、図1の要部拡大図である。図1に示すように、本実施形態のベルトスリング1は、本体2と第2吊り環部5とを有する。本体2及び第2吊り環部5は、いずれも、繊維フィラメント糸を用いた細幅織物からなる。
【0015】
本体2は、細幅織物を環状に重畳させて両端部2a,2bに1対の第1吊り環部4,4を形成するように縫製した縫製部6A(6)を有し、この縫製部6を含んだ中間部3が両端部2a,2b間に設定される。すなわち、この中間部3は、細幅織物を2層に重畳させた態様となる。
【0016】
第2吊り環部5は、細幅織物で環状を形成するようにしてそれぞれの端部5a,5bが2層に重畳された中間部3,3に複数固定される。本実施形態では、第2吊り環部5のそれぞれの端部5a,5bを重畳させて、第2吊り環部5を中間部3に固定している。すなわち、本実施形態では、縫製部6Bは、端部5a,5b、及び2層に重畳された中間部3,3の4層を縫製する態様としたものである。
このような態様とすることで、縫製部6Bのスペースも少なく、本体2に対する第2吊り環部5の強固な固定を実現することができる。
【0017】
ここで、縫製部6(6A,6B)による縫製は、第2吊り環部5と本体2(中間部3)とを強固に固定する縫製がなされていれば特に制限はないが、図2に示すように、第2吊り環部5と本体2(中間部3)とを、本体2の長手方向に沿ってZ字状に縫製してなることが好ましい。すなわち、縫製部6A及び縫製部6Bの少なくとも何れか一方が本体2の長手方向に沿ってZ字状に縫製されていることが好ましい。
【0018】
(第2実施形態)
次に、ベルトスリングの第2実施形態について図3を参照して説明する。なお、本実施形態は、第2吊り環部5の本体2に対する設置態様が第1実施形態と異なるだけであるので、上述の実施形態と同じ符号を付した同様の構成については説明を省略することがある。図3は、ベルトスリングの第2実施形態の構成を示す平面図である。なお、図3に示す本実施形態のベルトスリング1は、第1実施形態で設けられた第2吊り環部5Aと、本実施形態で設けられる第2吊り環部5Bとを有するものとして説明する。また、本体2に対して第2吊り環部5Bを固定するために縫製した部分を縫製部6Cとして説明する。
【0019】
図3に示すように、本実施形態のベルトスリング1においては、第2吊り環部5Bのそれぞれの端部5a,5bを本体2の長手方向に沿って並べて、第2吊り環部5Bが2層に重畳された中間部3,3に固定されている。すなわち、本実施形態では、縫製部6Cは、2層に重畳された中間部3,3、及び第2吊り環部5Bの一方の端部5aによる3層を縫製する部分と、2層に重畳された中間部3,3、及び第2吊り環部5Bの環状部分を構成する他方の端部5bによる3層を縫製する部分とで構成される。
このような態様とすることで、縫製部6Cの縫製が3層で手間も掛からず、本体2に対する第2吊り環部5の強固な固定を実現することができる。
【実施例】
【0020】
以下、ベルトスリングの実施例について説明する。
<ベルトスリングの作製>
まず、図1に示すベルトスリング1について、強度が7cN/dtex,伸度15%のポリエステル繊維(ユニチカ株式会社製)を3層織りにした細幅織物を環状に重畳させて両端部2a,2bに1対の第1吊り環部4,4を形成するように縫製して本体2を作製した。
【0021】
次に、ポリエステル繊維(強度7cN/dtex,伸度15%,ユニチカ株式会社製)で織成した第2吊り環部5を第1実施形態のように中間部2に固定(縫製)した。このとき、第2吊り環部5を、本体2の長手方向に沿ってZ字状をなすように中間部3に縫製してベルトスリング1を作製した。作製されたベルトスリング1の第1吊り環部4の長手方向の寸法(以下、寸法という)dは350mm、縫製部6A(3層)の寸法dは200mm、第2吊り環部5の環状部分の寸法dは200mm、縫製部6B(4層)の寸法dは350mmとした。また、縫製部6BのZ字の縫製パターンの寸法d図2参照)は30mmとした。
【0022】
<引っ張り強度の測定>
次に、JIS B8818に基づいて、引っ張り強度の測定を実施した。引っ張り強度の測定としては、第1吊り環部4と第2吊り環部5とを引っ張る実施例1と、第1吊り環部4と第2吊り環部5とを2tの荷重を負荷して引っ張り、さらに第2吊り環部5を捻る実施例2とを破断するまでおこなった。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、実施例1,2共に、負荷荷重(2t)の6倍以上の耐久性を有していることがわかった。特に、実施例2のように、第2吊り環部5が捻られるような状態になっても、実施例1の破断荷重から約6%下がるだけで、負荷荷重(2t)の6倍以上の耐久性を十分有していることがわかった。
【0025】
このように、本発明によれば、第2吊り環部5の縫製の態様を上記実施形態のように規定することによって、引っ張り強度を向上させたベルトスリングを提供することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ベルトスリング
2 本体
3 中間部
4 第1吊り環部
5 第2吊り環部
6 縫製部
図1
図2
図3
図4