(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434246
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】機械異常履歴の解析支援機能を有する数値制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20181126BHJP
G05B 19/4063 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/4063 L
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-153791(P2014-153791)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-31643(P2016-31643A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 恵和
(72)【発明者】
【氏名】前田 英朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和生
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−176559(JP,A)
【文献】
特開2009−175793(JP,A)
【文献】
特開2003−223205(JP,A)
【文献】
国際公開第2000/010769(WO,A1)
【文献】
特開2011−060076(JP,A)
【文献】
特開2011−069405(JP,A)
【文献】
特開平05−011832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
G05B 19/405−19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも工具を備えた主軸を有する工作機械を加工プログラムに基づいて制御する数値制御装置において、
前記主軸の制御時に発生した異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出した時点における、少なくとも前記主軸の座標値を含む前記工作機械の運転状況情報と、前記検出した異常に係る情報とを関連付けて構成されるCNC情報を記憶するデータ記憶手段と、
前記CNC情報に基づいて工具画像を生成し、前記座標値に基づいて前記工具画像を座標空間上に配置して描画する描画手段と、
前記CNC情報の項目に関する強調条件を設定する強調条件設定手段と、
を有し、
前記データ記憶手段は、複数の前記CNC情報を記憶し、
前記描画手段は、前記複数のCNC情報に基づいて生成される複数の前記工具画像を座標空間上に描画し、前記CNC情報が前記設定された強調条件を満たすと判定した場合、前記強調条件を満たした前記CNC情報に基づいて生成される前記工具画像を座標空間上に強調して描画する、
ことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記強調条件は、(1)主軸が回転していないのに衝撃値がある場合、(2)主軸に負荷が無いのに送り軸に負荷がある場合、(3)主軸の指令速度または残移動量が0ではないのに実速度が0の場合、(4)早送りなのに主軸の負荷が高い場合、の少なくともいずれか1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記異常に係る情報は、前記異常検出手段が検出した前記主軸の衝撃値を含み、
前記描画手段は、前記衝撃値に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記運転状況情報は、前記加工プログラムにより指令された前記主軸の指令速度と、前記主軸の実速度とを含み、
前記描画手段は、前記指令速度と前記実速度とに基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記運転状況情報は、前記主軸の工具オフセット値を含み、
前記描画手段は、前記工具オフセット値に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記運転状況情報は、前記主軸の移動方向を含み、
前記描画手段は、前記移動方向に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記運転状況情報は、前記主軸に備えられた前記工具の姿勢を含み、
前記描画手段は、前記工具の姿勢に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特に機械異常履歴の解析支援機能を有する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置により制御される工作機械において、当該工作機械の主軸に異常負荷などが発生したことを検出した場合に、当該工作機械の主軸の座標値、実速度、当該加工において数値制御装置から設定された工具オフセットや、動作中の加工プログラムなどの、いわゆるCNC情報を数値制御装置が備える記憶装置内に保存して利用する技術がある(例えば、特許文献1)。
工作機械を操作するオペレータは、ワークに対する加工精度が低下するなど、機械に異常が発生した場合、保存されていたCNC情報を解析することにより、過去に主軸衝突などの加工精度の低下に繋がる問題が発生していないかを判断することができる。
【0003】
CNC情報を解析することで機械異常に繋がる主軸衝突などの原因が発生していたことが判断できた場合、更に、主軸衝突と同じ契機で保存された工具オフセット、加工プログラムなどを確認することにより、工具オフセットの入力ミスや加工プログラムのプログラムミスなど、その主軸衝突の原因を特定することもできる。
【0004】
このような技術においては、最近に発生した問題に関するCNC情報のみならず、ワークの加工中に問題が発生した時のCNC情報を履歴として複数件保存することができるため、過去に遡って主軸衝突などが発生していないか調査することも可能であるが、機械による自動解析により重切削や主軸衝突を確実に判別することはできないため、
図7に示すように各機械メーカにより設定された条件に基づいて主軸衝突した可能性が高いCNC情報を自動的に保存し、後で蓄積したCNC情報をオペレータが解析することにより、主軸衝突が発生したか否かを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/10769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来技術では、工作機械に問題が発生したと推定される状況になった場合、問題が軽微なものであってもCNC情報を保存するため、
図8に示すように1台の数値制御装置に大量のCNC情報が保存される。そして、このような大量のCNC情報の中から主軸衝突など機械異常に繋がる件のCNC情報を抽出するには、オペレータが各CNC情報を1件ずつ解析する必要があるため、調査に時間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、保存された大量のCNC情報の中から問題のあるCNC情報をオペレータが一目して把握することを可能とする数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、少なくとも工具を備えた主軸を有する工作機械を加工プログラムに基づいて制御する数値制御装置において、前記主軸の制御時に発生した異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段が異常を検出した時点における、少なくとも前記主軸の座標値を含む前記工作機械の運転状況情報と、前記検出した異常に係る情報とを関連付けて構成されるCNC情報を記憶するデータ記憶手段と、前記CNC情報に基づいて工具画像を生成し、前記座標値に基づいて前記工具画像を座標空間上に配置して描画する描画手段と、
前記CNC情報の項目に関する強調条件を設定する強調条件設定手段と、を有し、前記データ記憶手段は、複数の前記CNC情報を記憶し、前記描画手段は、前記複数のCNC情報に基づいて生成される複数の前記工具画像を座標空間上に描画し、前記CNC情報が前記設定された強調条件を満たすと判定した場合、前記強調条件を満たした前記CNC情報に基づいて生成される前記工具画像を座標空間上に強調して描画する、を有することを特徴とする数値制御装置である。
【0011】
本願の請求項
2に係る発明は、前記強調条件は、(1)主軸が回転していないのに衝撃値がある場合、(2)主軸に負荷が無いのに送り軸に負荷がある場合、(3)主軸の指令速度または残移動量が0ではないのに実速度が0の場合、(4)早送りなのに主軸の負荷が高い場合、の少なくともいずれか1つである、ことを特徴とする請求項
1に記載の数値制御装置である。
【0012】
本願の請求項
3に係る発明は、前記異常に係る情報は、前記異常検出手段が検出した前記主軸の衝撃値を含み、前記描画手段は、前記衝撃値に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の数値制御装置である。
【0013】
本願の請求項
4に係る発明は、前記運転状況情報は、前記加工プログラムにより指令された前記主軸の指令速度と、前記主軸の実速度とを含み、前記描画手段は、前記指令速度と前記実速度とに基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の数値制御装置である。
【0014】
本願の請求項
5に係る発明は、前記運転状況情報は、前記主軸の工具オフセット値を含み、前記描画手段は、前記工具オフセット値に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の数値制御装置である。
【0015】
本願の請求項
6に係る発明は、前記運転状況情報は、前記主軸の移動方向を含み、前記描画手段は、前記移動方向に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の数値制御装置である。
【0016】
本願の請求項
7に係る発明は、前記運転状況情報は、前記主軸に備えられた前記工具の姿勢を含み、前記描画手段は、前記工具の姿勢に基づいて、前記工具画像の外観を変化させる、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、複数のCNC情報が画面上にグラフィカルに表示され、主軸衝突した可能性の高いデータを一目で判断できるため、オペレータによる主軸衝突などの機械異常を解析する時間を短縮することができ、工作機械の加工精度が低下した場合などにおいては、過去の主軸衝突の有無の調査を短時間で行うことができるようになるため、工作機械の保全に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における数値制御装置の要部ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態における数値制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるCNC情報データベースを説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態における工具画像の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるCNC情報の表示例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における工具画像描画処理のフローチャートである。
【
図7】従来技術におけるCNC情報保存機能の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の数値制御装置の要部ブロック図である。数値制御装置10のプロセッサ(CPU)11は、数値制御装置10を全体的に制御するプロセッサである。プロセッサ11は、ROM12に格納されたシステムプログラムをバス21を介して読み出し、このシステムプログラムに従って数値制御装置10を全体的に制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ及びLCD/MDIユニット70を介してオペレータが入力した各種データ等が格納される。
【0020】
SRAM14は図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置10の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成され、インタフェース15を介して読み込まれた後述する加工プログラム、LCD/MDIユニット70を介して入力された加工プログラム等が記憶されるようになっている。また、ROM12には、CNC情報を表示するために必要とされるグラフィカル表示用プログラムや加工プログラムの作成及び編集のために必要とされる編集モードの処理、自動運転のための処理を実施するための各種のシステムプログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0021】
インタフェース15は数値制御装置10に接続可能な外部機器のためのインタフェースであり、外部記憶装置などの外部機器72が接続される。外部記憶装置からは加工プログラムなどが読み込まれる。PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、数値制御装置10に内蔵されたシーケンスプログラムで工作機械側の補助装置等を制御する。すなわち、加工プログラムで指令されたM機能、S機能及びT機能に従って、これらシーケンスプログラムにより補助装置側で必要な信号を変換し、I/Oユニット17から補助装置側に出力する。この出力信号により各種アクチュエータ等の補助装置が作動する。また、工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチ等の信号を受け、必要な処理をしてプロセッサ11に渡す。
【0022】
工作機械の各軸の現在位置、アラーム、パラメータ、画像データ等の画像信号はLCD/MDIユニット70に送られ、そのディスプレイに表示される。LCD/MDIユニット70はディスプレイやキーボード等を備えた手動データ入力装置であり、インタフェース18はLCD/MDIユニット70のキーボードからデータを受けてプロセッサ11に渡す。
インタフェース19は手動パルス発生器71に接続され、手動パルス発生器71は工作機械の操作盤に実装され、手動操作に基づく分配パルスによる各軸制御で工作機械の可動部を精密に位置決めするために使用される。
【0023】
工作機械のテーブルを移動させるX,Y軸の軸制御回路及びZ軸の制御回路30〜32はプロセッサ11からの各軸の移動指令を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40〜42に出力する。サーボアンプ40〜42はこの指令を受けて工作機械の各軸のサーボモータ50〜52を駆動する。各軸のサーボモータ50〜52には位置検出用のパルスコーダが内蔵されており、このパルスコーダからの位置信号がパルス列としてフィードバックされる。
【0024】
スピンドル制御回路60は、工作機械への主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61はこのスピンドル速度信号を受けて、工作機械の主軸モータ62を指令された回転速度で回転させ、工具を駆動する。
【0025】
主軸モータ62には歯車あるいはベルト等でポジションコーダ63が結合され、ポジションコーダ63が主軸の回転に同期して帰還パルスを出力し、その帰還パルスはインタフェース20を経由してプロセッサ11によって読み取られる。65は現在時刻に同期するように調整された時計回路である。
また、工作機械には、例えば主軸モータに位置センサや速度センサ、衝撃センサなどの状態検出のための各種センサ(図示せず)が備え付けられており、当該センサからの検出信号がインタフェース(図示せず)を介してプロセッサ11に読み取られるように構成されている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態における数値制御装置10の機能ブロック図である。数値制御装置10は、運転実行部110、異常検出部120、データ記憶部130、描画判定/描画用計算部140を備えている。
運転実行部110はSRAM14などから読み込んだ加工プログラム200のプログラム指令や、システムプログラムなどによる指令に基づいて、各軸制御回路、スピンドル制御回路などに指令を出力し、工作機械の運転制御を実行すると共に、当該運転制御において用いられている主軸に対する指令速度や設定されている工具オフセットなどの各種パラメータを異常検出部120に対して出力する。
【0027】
異常検出部120は、工作機械に備え付けられたセンサにより検出された信号を解析し、あらかじめ数値制御装置10のSRAM14などに設定されている工作機械の異常発生条件が成立したと判断する度に、運転実行部110から取得したパラメータと、工作機械に備え付けらえたセンサから出力される信号に基づいて、工具オフセット、機械座標値、回転軸の位置、残移動量、指令速度、実速度、衝撃値などのCNC情報を、現在時刻と関連付けてデータ記憶部130へと記憶する。
【0028】
データ記憶部130は、SRAM14などのメモリ上に設けられた記憶領域であり、内部にCNC情報データベースを備えている。
図3は、CNC情報データベースの一例を示す図である。なお、
図3はCNC情報データベースの項目の一部を記載したものであるが、CNC情報データベースにどのような項目を設けるのかについては、制御対象の工作機械の種類や特性、工作機械の設置環境などに基づいて、後述する描画処理が可能となるように必要な項目を設定するようにすればよい。
【0029】
描画判定/描画用計算部140は、オペレータが保守作業を行う際にLCD/MDIユニット70を操作してCNC情報描画指令を数値制御装置10に対して指示すると、データ記憶部130に記憶されたCNC情報を読み出して、それぞれCNC情報に基づいた複数の工具画像を生成し、生成した工具画像を3次元座標空間系に配置した画像をLCD/MDIユニット70の画面上に描画処理する。
【0030】
以下で、本実施の形態の描画判定/描画用計算部140が実行する描画処理の概要について説明する。
図4は、描画判定/描画用計算部140が生成する、CNC情報に基づいた工具画像の一例を示す図である。本実施の形態において、工具画像の形状および外観により、CNC情報が記録された時点、すなわち現象発生時における工作機械の運転状況と主軸の状態を、オペレータが直感的に把握できるように表現している。本実施の形態では、
図4に示すように、工具画像を主として主軸の先端と主軸の先端に取り付けられた工具の模式図により表現している。
図4の工具画像では、工具の色は主軸に発生した負荷を表し、例えば現象発生時に検出された負荷が大きな値を示している場合は工具を赤色で表示する。工具の傾きは工具の姿勢を表し、現象発生時に工具がいずれの方向を向いていたのかを確認できる。工具の長さは工具長(工具オフセット値)を表し、正しい工具オフセット値が設定されていたかどうかを確認できる。工具の先に表示するベクトルの大きさは、現象発生時の指令速度と実速度の差を元に表し、衝撃等により、指令された分工具が移動できなかった量を確認できる。工具の先に表示するベクトルの向きは、現象発生時の残移動量を元に表し、工具の移動方向を確認できる。
【0031】
図5は、CNC情報に基づいて生成した複数の工具画像を3次元座標空間系に配置してLCD/MDIユニット70の画面上に描画した一例を示す図である。
図5に示すように、座標空間上に表示される工具の位置は、現象発生時の座標値を元に定めており、不正な位置に工具がなかったかどうかを確認できる。
また、CNC情報に関する所定の条件を設定しておき、当該条件を満たしたCNC情報については正常な軸移動ではないと推定し、当該CNC情報に基づく工具画像を、他の工具画像に対して前面に表示し、強調表示するようにしている。所定の条件については、SRAM14などにあらかじめ設定しておいてもよいし、オペレータが保守作業において描画判定/描画用計算部140を利用する際に、LCD/MDIユニットを介して入力するように構成してもよい。なお、着目するべき工具画像を強調表示する際には、前面に表示する、工具画像の大きさを変えるようにする、他の条件を満たしていないCNC情報に基づく工具画像を薄いグレーで目立たないように表示する、など、所定の条件を満たしたCNC情報に基づく工具画像がオペレータの目を引くように表示できるのであれば、どのような表示手法を採用してもよい。
【0032】
図5の例では、4つの工具画像が他の工具画像よりも強調して前面に表示され、他の工具は薄く目立たないように表示されており、注目するべきなのは当該4つの工具画像であることが容易に理解できる。そして、4つの工具画像から、それぞれ、A.工具長が短いことから、現象発生時に工具オフセットの入力ミスがあったこと、B.工具画像の位置から、現象発生時に切削とは関係ない位置に工具が移動したこと、C.工具先端ベクトルの向きから、現象発生時に工具がワークの方向に移動していなかったこと、D.工具先端ベクトルの長さおよび工具の色から、現象発生時に主軸に高い負荷がかかったこと、が一見して把握できる。
【0033】
図6は、本実施の形態の描画判定/描画用計算部140が実行する描画処理のフローチャートである。
●[S601]オペレータが、LCD/MDIユニット70を操作して、CNC情報描画指令を、CNC情報のソート条件と共に数値制御装置10に対して指示する。ソート条件としては、発生日、工具の移動方向、衝撃値、などが指定できる。
●[S602]異常検出部120が異常検出しデータ記憶部130のCNC情報データベースへと記録した複数のCNC情報を、S601で指示されたソート条件に基づいてソート(並び替え)処理を行う。
●[S603]LCD/MDIユニット70の画面上に座標空間画像を描画する。
●[S604]CNC情報データベースに蓄積されているCNC情報を順次読み出し、すべてのCNC情報についてS605〜S607の処理を繰り返し実行する。
●[S605]読み出したCNC情報が、強調表示の条件を満たすか判定する。強調表示の条件を満たす場合にはS606へ進み、強調表示の条件を満たさない場合にはS607へ進む。なお、強調表示する条件としては、(1)主軸が回転していないのに衝撃値がある場合、(2)主軸に負荷が無いのに送り軸に負荷がある場合、(3)主軸の指令速度または残移動量が0ではないのに実速度が0の場合、(4)早送りなのに主軸の負荷が高い場合、などが考えられるが、これ以外にも、制御対象の工作機械の種類や特性などにより適宜設定することができる。
●[S606]読み出したCNC情報に基づいて工具画像を生成し、LCD/MDIユニット70上に描画された座標空間画像上へ当該工具画像を強調表示する。
●[S607]読み出したCNC情報に基づいて工具画像を生成し、LCD/MDIユニット70上に描画された座標空間画像上へ当該工具画像を通常表示する。
【0034】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより、その他の態様で実施することができる。例えば、上述した実施の形態では、描画判定/描画用計算部140を数値制御装置10内に実装した例を示したが、描画判定/描画用計算部140を数値制御装置10以外のコンピュータ上に実装し、数値制御装置10が記録しているCNC情報データベースを外部から読み出して当該コンピュータ上の画面に表示するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
10 数値制御装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 SRAM
15,18,19,20 インタフェース
16 PMC
17 I/Oユニット
21 バス
30,31,32 軸制御回路
40,41,42 サーボアンプ
50,51,52 サーボモータ
60 スピンドル制御回路
61 スピンドルアンプ
62 主軸モータ
63 ポジションコーダ
70 LCD/MDIユニット
71 手動パルス発生器
72 外部機器
110 運転実行部
120 異常検出部
130 データ記憶部
140 描画判定/描画用計算部