(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空気清浄手段は、前記第1作業室の上流側に設けられた第1空気清浄部と、前記第2作業室の下流側でかつ前記第1空気清浄部より上流側に設けられた第2空気清浄部とを備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の安全キャビネット。
【背景技術】
【0002】
安全キャビネットは、その内部に作業用開口部を除き準密閉状態の作業室を形成するとともに、当該作業室内で発生する汚染エアロゾルを吸引し、作業者側に流出させないようにする一方、吸引回収した汚染空気はHEPAフィルターで無菌・清浄化して排気する機能を備えており、取り扱える病原体のレベルによって、クラスI、II、IIIに分類されている。
【0003】
このような安全キャビネットの一例として特許文献1に記載のものが知られている。このような従来の安全キャビネットとしては、例えば
図4および
図5に示すように、作業台1の上側に作業室2が設けられ、この作業室2は、前面下部に作業用開口部3を有し、シャッター4により開閉可能となっている。
また、作業台1の前端縁および後端縁に沿って、それぞれスリット状の吸込口5が設けられ、この吸込口5から吸い込まれた空気は、送風機6によって空気流路7を流通し、その一部はHEPAフィルター等の空気清浄部8によって清浄化されて、再び作業室2に供給され、残りはHEPAフィルター等の空気清浄部9によって清浄化されて、排出口17から外部に排出される。なお、
図4において空気の流れ(気流)を矢印で示している。
【0004】
このような安全キャビネットKでは、作業室2に供給される流入気流と、作業室2の前端縁および後端縁に設けられた吸込口5から吸い込まれて空気流路7を流通する循環気流と、外部に排出される気流とのバランスにより、作業用開口部3にエアーバリアーBが形成され、作業室2内の空気の封じ込めと無菌環境を維持している。
【0005】
ところで、再生医療に使用される皮膚、軟骨や角膜などの細胞加工品は人に移植されるが、この細胞加工は外因性の微生物汚染を防止するために重要区域、すなわちグレードAの清浄度空間でかつ無菌操作で行う必要がある。
一方、取り扱われる自己細胞由来の細胞加工品(以後細胞と略す)は必ずしも無菌ではないため加工操作により発生するエアロゾルにより重要区域、例えば前記安全キャビネットKの作業室2を汚染させる可能性がある。このため、同一設備(安全キャビネットK)で細胞加工操作を行うに当たり、予め定められたチェンジオーバー手順にしたがって除染、消毒を行い、相互汚染防止を図っている。
【0006】
ここで、チェンジオーバーとは、ある患者の細胞・組織を用いた加工工程が終了した後に、異なる患者の細胞・組織を用いる工程に切り替えることを意味する。
また、チェンジオーバー手順とは、ある患者の細胞加工作業時にエアロゾルや液滴が付着した可能性のある表面を除染・消毒する手順であり、室内や安全キャビネットの作業台等の環境、培養容器やピペット等の細胞に直接接触している器具、作業者の手袋等を一連の手順にしたがって除染・消毒することを意味する。
【0007】
前記従来の安全キャビネットKを使用した培養液の交換作業では、
図5に示すように、交差汚染を防止するために、安全キャビネットKの外で、培養容器収納ケース10を開放し、個別に培養容器11を取り出し、安全キャビネットKの作業室2にて培養容器11の蓋を開放し培養液の交換作業を行う。
培養液の交換作業後は、別の患者の細胞を操作するために、安全キャビネットKの作業台1全体を含めて、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒し、細胞間の交差汚染を防止する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来の安全キャビネットKを使用した場合、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒するには、現在のところ30〜120分間要している。
細胞加工の特徴として、多患者、小ロット(細胞)であることよりチェンジオーバー手順を頻繁に行う必要があり、実細胞加工操作時間に対し、チェンジオーバー手順に多大な時間がかかる問題があった。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、チェンジオーバー手順等の除染・消毒作業を大幅に短時間で行える安全キャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の安全キャビネットは、
作業台と、
この作業台の上側に設けられ、清浄空気が供給される第1作業室と、
この第1作業室と外部とを連通する第1作業用開口部と、
前記第1作業室の底部に設けられて、当該第1作業室に供給された清浄空気および前記第1作業用開口部を通して外部から流入する空気を吸い込む第1吸込口とを備えた安全キャビネットであって、
前記第1作業室に設けられて、清浄空気が供給される第2作業室と、
この第2作業室の底部に設けられて、当該第2作業室内の空気および前記第1作業室内の空気の一部を吸い込む第2吸込口と、
前記第1作業用開口部に対向して設けられ、前記第2作業室と前記第1作業室とを連通する第2作業用開口部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、第2作業室は、前面側に第2作業用開口部が第1作業用開口部と対向して設けられていれば、両側面や背面は開放していてもよいし、壁によって閉塞してもよいが、開放していた方が細胞加工の操作性の点で有利である。
【0013】
本発明においては、外部から第1作業用開口部および第2作業用開口部を通して、細胞が入った培養容器を第2作業室に持ち込み、この第2作業室で当該培養容器を開放し、加工した後に培養容器を閉じる。つまりこのような一連の加工操作を第2作業室で行う。
この第2作業室には清浄空気が供給され、この第2作業室内の空気および第1作業室に供給される清浄空気の一部は第2吸込口から吸い込まれる。したがって、第2吸込口に吸い込まれる空気によって、第2作業室にはエアーバリアーが形成され、このエアーバリアーにより加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴が第1作業室へ漏洩するのを防止できる。
また、第1作業室には清浄空気が供給され、この第1作業室内の空気および第1作業用開口部を通して外部から流入する空気は第1吸込口から吸い込まれる。したがって、第1吸込口に吸い込まれる空気によって、第1作業室にはエアーバリアーが形成される。
このように、第1作業室と第2作業室との双方に、それぞれエアーバリアーが形成されるので、つまり、安全キャビネットの外部に対して封じ込め気流(エアーバリアー)が二重となるので、安全キャビネット内を第1作業室と第2作業室とにゾーニングでき、さらに強化された気流制御的隔離を実現できる。
【0014】
したがって、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒する場合、第2作業室を集中的に除染・消毒すればよく、第1作業室はその必要が殆どない。
よって、チェンジオーバー手順等の除染・消毒作業を大幅に短時間で行える。例えば、従来では、チェンジオーバー手順に30〜120分間要していたが、本発明では、5分以内に短縮することができる。
【0015】
本発明の前記構成において、前記第2作業室の底面に作業テーブルが載置されていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、外部から第1作業用開口部および第2作業用開口部を通して、第2作業室に持ち込まれた培養容器を作業テーブルに載置したうえで、当該培養容器を開放し、加工した後に培養容器を閉じる。この培養容器は作業テーブルのみに接するので、チェンジオーバー時は、この作業テーブルを、事前に除染・消毒された新たな作業テーブルと交換することによって、第2作業室の除染・消毒作業が殆ど不要となり、手袋のみの交換作業で済むので、さらにチェンジオーバー手順等の除染・消毒作業にかかる時間を短縮できる。
【0017】
また、本発明の前記構成において、前記第2作業室の底面は、前記第1作業室の底面より下方に位置しており、これら両底面間に前記第2吸込口が設けられているのが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、第2吸込口が第1作業室の底面と第2作業室の底面との間に設けられているので、第2吸込口に吸い込まれる空気によって、第2作業室には第1作業室の底面より低い位置までエアーバリアーが形成される。したがって、第2作業室で培養容器に対して細胞加工操作を行う際に、このエアーバリアーにより細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴が第1作業室へ漏洩するのをより確実に防止できる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記第1吸込口および第2吸込口から吸い込まれた空気を前記第1作業室および第2作業室に循環させる循環流路を備え、この循環流路に空気清浄手段が設けられているのが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、循環流路に空気清浄手段が設けられているので、第2作業室で細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴を空気清浄手段によって除去して清浄化するとともに、第1作業室内の空気および外部から第1作業用開口部を通して流入する空気を同空気清浄手段によって清浄化したうえで、再び循環流路によって第1作業室および第2作業室に供給することができる。このため、第1作業室および第2作業室を常にグレードAの清浄度空間とすることができる。
【0021】
また、本発明の前記構成において、前記空気清浄手段は、前記第1作業室の上流側に設けられた第1空気清浄部と、前記第2作業室の下流側でかつ前記第1空気清浄部より上流側に設けられた第2空気清浄部とを備えているのが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、第1作業室の第1吸込口および第2作業室の第2吸込口から循環流路に流入した空気を第2空気清浄部によって清浄化して、当該空気の一部を第2作業室に供給し、残りの空気を第1空気清浄部によってさらに清浄化して第1作業室に供給することができる。したがって、第1作業室をより確実にグレードAの清浄化空間とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1作業室と第2作業室との双方に、それぞれエアーバリアーが形成される、つまり、安全キャビネットの外部に対して封じ込め気流(エアーバリアー)が二重となるので、安全キャビネット内を第1作業室と第2作業室とにゾーニングでき、さらに強化された気流制御的隔離を実現できる。
したがって、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒する場合、第2作業室を集中的に除染・消毒すればよく、第1作業室はその必要が殆どないので、チェンジオーバー手順等の除染・消毒作業を大幅に短時間で行える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および
図2は実施の形態に係る安全キャビネットK1の概略構成を示す断面図、
図2は安全キャビネットK1の要部の概略構成を示す斜視図である。なお、
図1において空気の流れ(気流)を矢印で示している。
【0026】
安全キャビネットK1は、従来の安全キャビネット1と同様に、作業台1、第1作業室2、第1作業用開口部3、シャッター4、第1吸込口5、送風機6、空気清浄部8,9等を備えている。また、作業台1の下部には後述する送風機28やチャンバ23,26を設けるための下部ボックス1Aが設けられている。
第1作業室2は、作業台1の上側に設けられており、その前面には強化ガラス製のシャッター4が設けられている。このシャッター4は上下にスライドすることによって、第1作業室2の前面開口を開閉できるようになっている。
シャッター4を閉鎖状態から上方にスライドさせて所定の位置で保持することによって、当該シャッター4の下方に第1作業用開口部3が形成されるようになっている。
【0027】
また、作業台1の前端縁と後端縁とにそれぞれ吸込口5(5a,5b)が設けられている。前端縁の吸込口5aは、作業台1の前端縁に沿って設けられた横長の孔に、多数の小孔が形成された空気吸込板を設けた構成となっている。また、後端縁の吸込口5bは縦長のスリットを後端縁の長手方向に沿って所定間隔で多数形成した構成となっている。
送風機6は、安全キャビネットK1内の上部でかつ、空気流路7Aの上部に設けられており、空気流路7Aを流れる空気(気流)を空気清浄部8,9側に吹き出すようになっている。空気流路7Aは、第1作業室2の背面側に上下方向に延在して設けられている。
空気清浄部8,9はそれぞれHEPAフィルターによって構成されており、当該空気清浄部8,9の間の空間12に送風機6から空気が吹き出されるようになっている。送風機6から吹き出された空気の一部は第1空気清浄部8によって清浄化されて、再び第1作業室2に供給され、残りは空気清浄部9によって清浄化されて、排出口17から外部に排出されるようになっている。
【0028】
また、第1作業室2の略中央部には、第2作業室20が設けられている。この第2作業室20は、例えば図示しない4本の柱を第2作業室20の平面視における四隅部に配置し、この4本の柱の内側の空間となっている。
第2作業室20の上部には、吹出し部21が設けられており、この吹出し部21は前記4本の柱の上端部によって支持されている。吹出し部21の背面には、第2の空気流路22が接続されている。この第2の空気流路22は例えば円筒状のパイプで構成され、一端部(下端部)が前記空気流路7Aの下部に設けられたチャンバ23に開口し、他端部が吹出し部21に接続されている。
【0029】
空気流路7Aの下部には、略水平に配置された隔壁24が設けられ、この隔壁24に第2の空気流路22の他端部が接続され、隔壁24より下方の前記チャンバ23に開口している。また、隔壁24には、孔25が設けられており、この孔25によって、空気流路7Aとチャンバ23とが連通している。
また、前記第1作業室2および第2作業室20の下方には、チャンバ26が設けられており、このチャンバ26に隣接して前記チャンバ23が隔壁27を介して設けられている。隔壁27には、送風機28が設けられており、この送風機28によってチャンバ26の空気をチャンバ23に吹き出すようになっている。このような送風機28、チャンバ23,26は前記下部ボックス1A内に設けられている。
【0030】
前記第2作業室20の前後左右のそれぞれ側面は開放されており、前面の開放されている開口が第2作業用開口部30とされている。この第2作業用開口部30は、第2作業室20と第1作業室2とを連通して、培養容器等を外部から第2作業室20に持ち込み、かつ細胞加工等の操作作業を可能とするものである。
【0031】
また、第2作業室20の底部には、当該第2作業室20に前記吹出し部21から吹き出されて供給される清浄空気と第1作業空間2に供給される清浄空気の一部を吸い込む第2吸込口31が設けられている。この第2吸込口31は、第2作業室20の底部の四周に沿って、当該底部を囲むようにして設けられている。具体的には、第2作業室20の底面20aが、第1作業室2の底面2aより下方に位置して設けられており、これら底面20a,2a間に設けられた開口に、スリットが多数形成された空気吸込板32を設けることによって、第2吸込口31が構成されている。空気吸込板32は、第1作業室2の底面2aから第2作業室20の底面20aに向けて内側に傾斜するように配置されている。
【0032】
このような第2吸込口31の下方空間は、第2作業室20の底面20aの下方空間と連通し、この下方空間と前記チャンバ26が連通している。チャンバ26内は、送風機28によって陰圧とされるので、第2吸込口31から空気がチャンバ26に吸い込まれ、さらに、送風機28によってチャンバ23に吹き出されるようになっている。
また、前記第1吸込口5の下方空間は、チャンバ26とは連通しておらず、空気流路7Aに連通している。したがって、第1吸込口5から吸い込まれた空気は空気流路7Aに流入するようになっている。
【0033】
前記チャンバ26,23、空気流路7A、空間12、第2の空気流路22が、第1吸込口5および第2吸込口31から吸い込まれた空気を第1作業室2および第2作業室20に循環させる循環流路35を構成し、この循環流路35に空気清浄手段36が設けられている。
具体的には、空気清浄手段36は前記第1空気清浄部8と、第2空気清浄部38とによって構成されている。第1空気清浄部8は、第1作業室2の上流側に設けられている。つまり、前記空間12に面して、第1作業室2の天井部に設けられている。
第2空気清浄部38は、第1空気清浄部8と同様にHEPAフィルターによって構成されており、第2作業室20の下流側でかつ第1空気清浄部8より上流側に設けられている。具体的には、第2空気清浄部38は、チャンバ26,23間の隔壁27に、チャンバ23側に向けて、かつ、送風機28の吹出し口を覆うようにして取り付けられている。
【0034】
また、
図2に示すように、第2作業室20の底面20aには、作業テーブル40が載置されている。この作業テーブル40は、
図3に示すように、円板状のテーブル本体41と、このテーブル本体41の下面に設けられて、当該テーブル本体41を支持する4本の脚部42とを備えている。
テーブル本体41はその外周部に環状の周壁部41aを有しており、この周壁部41aの内側に培養容器11を挿入することで、当該培養容器11が作業テーブル40に載置されるようになっている。なお、周壁部41aは培養容器11より低くなっている。
脚部42は内部に雌ねじが形成された筒部42aと、この筒部42aにその下端開口からねじ込まれた雄ねじ部42bとによって構成されており、雄ねじ部42bを回して、その筒部42aの下端からの突出長さを調整できるようになっている。
【0035】
このような構成の作業テーブル40は、第2作業室20の底面20aに脚部42によって載置される。したがって、底面20aには、脚部42の雄ねじ部42bの下端のみが接するようになっている。
また、予め2本の雄ねじ部42bの突出長さを短くすることによって、作業テーブル40を第2作業室20の底面20aに載置した際に、当該作業テーブル40を水平面に対して傾斜させることができるようになっている。
【0036】
以上のような本実施の形態の安全キャビネットK1は、グレードBの清浄度空間内に設置されて使用される。安全キャビネットK1内、つまり第1作業室2および第2作業室20内はグレードAの清浄度空間となる。
【0037】
このような安全キャビネットK1にて、培養液の交換作業を行う場合、まず、第2作業室20に培養容器11を持ち込む前に、送風機6,28を起動する。
すると、送風機6,28によって安全キャビネットK1内に気流が生じる。すなわち、送風機6によって空気流路7Aが第1吸込口5(5a,5b)の下方空間より陰圧となるので、第1作業室2の第1吸込口5(5a,5b)から空気が吸い込まれて空気流路7Aに流入する。第1吸込口5aに吸い込まれる空気は、外部から第1作業用開口部3を通して流入する空気と、送風機6によって第1作業室2の天井部から下方に向けて吹き出される清浄空気である。したがって、この空気によって第1作業用開口部3にはエアーバリアーが形成されるので、外部から第1作業室2に細菌や微生物等の異物が侵入することもなく、また、第1作業空間2から外部に同様の異物が持ち出されることもない。なお、第1吸込口5bから吸い込まれる空気は、第1作業室2の天井部から下方に向けて吹き出される清浄空気である。
空気流路7Aに流入した空気は、送風機6によって空間12に吹き出される。この空間12に吹き出された清浄空気の一部は第1空気清浄部8によって清浄化されて、第1作業室2の天井部から下方に向けて吹き出される。
【0038】
また、送風機28によってチャンバ26内が陰圧となるので、第2作業室20の第2吸込口31から空気がチャンバ26に吸い込まれる。
チャンバ26に吸い込まれた空気は、送風機28によってチャンバ23に吹き出されるが、この際に第2空気清浄部38によって異物が除去されて空気が清浄化される。この清浄化された空気のうちの一部は第2の空気流路22を通って、第2作業室20の天井部にある吹出し部21から下方に向けて吹き出される。したがって、第2作業室20は清浄化された空気(清浄空気)で満たされるので、グレードAの清浄度空間となる。
一方、前記清浄化された空気の残りは、孔25から空気流路7Aを通り、送風機6によって空間12に吹き出される。この空間12に吹き出された清浄空気の一部は第1空気清浄部8によってさらに清浄化されて、第1作業室2の天井部から下方に向けて吹き出される。したがって、第1作業室2はさらに清浄化された空気で満たされるので、グレードAの清浄度空間となる。
【0039】
また、第1作業室2の清浄空気の一部と、第2作業室20の清浄空気が第2吸込口31にからチャンバ26に吸い込まれる。この空気によって第2作業用開口部30にはエアーバリアーが形成されるので、外部から細菌や微生物等の異物が侵入することもなく、また、第2作業室20から第1作業室2や外部に同様の異物が持ち出されることもない。
【0040】
このように、第1作業室2の第1作業用開口部3と、第2作業室20の第2作業用開口部30とにそれぞれエアーバリアーが形成された状態、つまり二重にエアーバリアーが形成された状態で、第1作業用開口部3および第2作業用開口部30を通して外部から培養容器11を第2作業室20に持ち込む。二重のエアーバリアーは、外部から第1作業用開口部3から流入する空気、第1吸込口5および第2吸込口31から吸い込まれる空気、循環流路35を流れる空気、第1作業室2と第2作業室20に吹き出される空気、排出口17から外部に排出される空気のバランスにより形成され、第1作業室2および第2作業室20を無菌環境に維持している。
【0041】
第2作業室20の底面20aには、予め、前記作業テーブル40がその脚部42によって載置されているので、この作業テーブル40の周壁部41aの内側に培養容器11を挿入することで、当該培養容器11が作業テーブル40に載置される。
【0042】
その後、第2作業室20にて培養容器11の蓋を開放し培養液の交換作業を行う。培養液の交換作業はピペット等を使用して行うが、作業テーブル40が水平面に対して傾いているので、交換すべき培養液が培養容器11の低所側に集まる。したがって、この培養液を容易にピペット等によって吸い出すことができる。また、ピペットによって新たな培養液を培養容器11に供給した後、蓋を取り付けたうえで、第2作業用開口部30および第1作業用開口部3を通して安全キャビネットK1の外部に取り出す。また、作業テーブル40も取り扱う細胞ごとに交換し、所定容器内に入れ、纏めて除染・消毒作業を行う。
【0043】
なお、培養容器11を第2作業室20に出し入れする場合、作業者の手や、ロボットアーム等によって培養容器11を保持し、第2作業室20の底面20aに作業テーブル40を設置しないで、出し入れし、さらに培養容器11を第2作業室20の底面20aに載置することなく、培養液の交換作業等を行ってもよい。作業者による手作業の場合、ディスポーザブル(使い捨て)のグローブ等を着用して作業を行うのが好ましい。また、ロボットアームでの作業の場合、培養容器11との接触部にディスポーザブルのカバーを設けるか、もしくは適切で短時間の除染を行うのが好ましい。
さらに、第2作業室20での培養液交換作業後、培養液およびピペットの先端部に取り付けられた使用済のチップを第2作業室20で回収または廃棄するように構成するのが好ましい。この場合、例えば、第2作業室20の底面20aに蓋付きの回収ケースを設けたり、当該底面20aに廃棄用の開口部を設け、この開口部から別途設けられた廃棄ボックスに廃棄すればよい。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、外部から第1作業用開口部3および第2作業用開口部30を通して、細胞が入った培養容器11を第2作業室20に持ち込み、この第2作業室20で当該培養容器11の蓋を外して開放し、加工した後に容器を閉じる。つまりこのような一連の加工操作を第2作業室20で行う。
この第2作業室20には、天井部にある吹出し部21から清浄空気が供給され、この清浄空気は第2吸込口31から吸い込まれ、第1作業室2に供給された清浄空気の一部も第2吸込口31から吸い込まれる。したがって、第2吸込口31に吸い込まれる空気によって、第2作業室20にはエアーバリアーが形成され、このエアーバリアーにより培養液交換作業等の細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴が第1作業室2へ漏洩するのを防止できる。
また、第1作業室2には、上方から清浄空気が供給され、この清浄空気は第1吸込口5aから吸い込まれ、また、外部から流入した空気も第1吸込口5aから吸い込まれる。したがって、第1吸込口5aに吸い込まれる空気によって、第1作業室2にはエアーバリアーが形成される。
このように、第1作業室2と第2作業室20との双方に、それぞれエアーバリアーが形成されるので、つまり、安全キャビネットK1の外部に対して封じ込め気流(エアーバリアー)が二重となるので、安全キャビネットK1内を第1作業室2と第2作業室20とにゾーニングでき、さらに強化された気流制御的隔離を実現できる。
【0045】
したがって、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒する場合、第2作業室20を集中的に除染・消毒すればよく、第1作業室2はその必要が殆どない。
よって、チェンジオーバー手順を従来に比して大幅に短時間で行える。例えば、従来では、チェンジオーバー手順に30〜120分間要していたが、本発明では、5分以内に短縮することができる。
【0046】
また、安全キャビネットK1内を第1作業室2と第2作業室20とにゾーニングできるので、
図2に示すように、第1作業室2に、培養容器11を収納した培養容器収納ケース10を持ち込んで、この培養容器収納ケース10を第1作業室2で開放することができる。このため、第1作業室2から次の培養容器11を第2作業室20に容易に持ち込むことができる。
【0047】
また、第2作業室20の底面20aに作業テーブル40が載置されているので、第2作業室20に持ち込まれた培養容器11を作業テーブル40に載置したうえで、当該当該培養容器11を開放し、加工した後に当該容器を閉じるが、この培養容器11は作業テーブル40のみに接するので、チェンジオーバー時は、この作業テーブル40を、事前に除染・消毒された新たな作業テーブル40と交換することによって、第2作業室20の除染・消毒作業が殆ど不要になるので、さらにチェンジオーバー手順にかかる時間を短縮できる。
【0048】
また、第2吸込口31が第1作業室2の底面2aと第2作業室20の底面20aとの間に設けられているので、第2吸込口31に吸い込まれる空気によって、第2作業室20には第1作業室2の底面2aより低い位置までエアーバリアーが形成される。したがって、第2作業室20で培養容器11に対して細胞加工操作を行う際に、このエアーバリアーにより加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴が第1作業室2へ漏洩するのをより確実に防止できる。
【0049】
さらに、第1吸込口5および第2吸込口31から吸い込まれた空気を第1作業室2および第2作業室20に循環させる循環流路35を備え、この循環流路35に空気清浄手段36(第1空気清浄部8および第2空気清浄部38)が設けられているので、第2作業室20で細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾル、液滴を空気清浄手段36によって除去して清浄化するとともに、第1作業室2の空気を同空気清浄手段36によって清浄化したうえで、再び循環流路35によって第1作業室2および第2作業室20に供給することができる。このため、第1作業室2および第2作業室20を常にグレードAの清浄度空間とすることができる。
【0050】
また、空気清浄手段36は、第1作業室2の上流側に設けられた第1空気清浄部8と、第2作業室20の下流側でかつ第1空気清浄部8より上流側に設けられた第2空気清浄部38とを備えているので、第1作業室2の第1吸込口5および第2作業室20の第2吸込口31から循環流路35に流入した空気を第2空気清浄部38によって清浄化して、当該空気の一部を第2作業室20に供給し、残りの空気を第1空気清浄部8によってさらに清浄化して第1作業室2に供給することができる。したがって、第1作業室2をより確実にグレードAの清浄化空間とすることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、第1吸込口5の下方空間を空気流路7Aに連通したが、これに代えて、第1吸込口5の下方空間を空気流路7Aに連通させないで、チャンバ26に連通させてもよい。この場合、第1吸込口5から吸い込まれた空気は、第2吸込口31から吸い込まれた空気とともに、チャンバ26、第2空気清浄部38、チャンバ23、空気流路7Aおよび空気流路22を順次流通することになる。
また、本実施の形態における第2作業室20、第2吸込口31、チャンバ26,23、送風機28、第2空気清浄部38および空気流路22等で構成される空気循環システムをアイソレーター等の封じ込め装置に設けてもよい。