特許第6434251号(P6434251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧 ▶ 関東産業株式会社の特許一覧

特許6434251引出しおよび該引出しを備えたキャビネット
<>
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000002
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000003
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000004
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000005
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000006
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000007
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000008
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000009
  • 特許6434251-引出しおよび該引出しを備えたキャビネット 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434251
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】引出しおよび該引出しを備えたキャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/00 20170101AFI20181126BHJP
【FI】
   A47B88/00 P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-164647(P2014-164647)
(22)【出願日】2014年8月13日
(65)【公開番号】特開2016-39875(P2016-39875A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(73)【特許権者】
【識別番号】511053078
【氏名又は名称】関東産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110179
【弁理士】
【氏名又は名称】光田 敦
(72)【発明者】
【氏名】北川 輝久
(72)【発明者】
【氏名】花岡 和紀
(72)【発明者】
【氏名】新井 智大
(72)【発明者】
【氏名】堀田 つかさ
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−092227(JP,A)
【文献】 特開2008−000156(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3039221(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0219730(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010017132(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが前壁部、後壁部、両側壁部、底壁部を有する主引出しおよび内引出しを、連結部材によって連結させて引出すことが可能な引出しであって、
前記主引出しは、主引出し連結部を備え、
前記内引出しは、内引出し連結部を備え、
前記主引出し連結部と前記内引出し連結部と、により前記連結部材を構成するものにおいて、
前記主引出し連結部および前記内引出し連結部の少なくとも一方には、位置調整機構を備えており、
前記主引出し連結部は、前記主引出しの後壁部に設けられ、前記内引出し連結部は、前記内引出しの底壁部に設けられており、
前記位置調整機構は、前記内引出し連結部に埋設されたマグネットと、前記内引出し連結部に形成され、かつ引出し方向に沿った長軸を有する長穴と、前記内引出し連結部を引出し方向にスライド可能に前記内引出しの底壁部に取り付けるビスと、により構成されていることを特徴とする引出し。
【請求項2】
主引出しと内引出しとを連動させて引出すことができる引出しを備えたキャビネットであって、引出しとして請求項1に記載のものが用いられていることを特徴とするキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン等に用いられる内引出し付き引出しおよびこれを備えたキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン等に用いられる内引出し付き引出しを備えたキャビネットが知られている。例えば、外引出しにはオス型嵌合部材が設置されており、内引出しにはメス型嵌合部材が設置されており、外引出しを引き出すと、オス型嵌合部材とメス型嵌合部材が嵌合状態となって外引出しおよび内引出しは連動して移動して引き出され、所定量を超えて外引出しを引き出すと、 これらの嵌合状態が所定方向に解除されるという構成が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、キャビネットに配設された引出しと、 引出しの上部空間内に配設された内引出しと、を備え、内引出しは、引出しの例えば後端部にマグネット等からなる係止手段により係止されて、 引出しの引出し動作に連動して引出し可能に配設されると共に、 係止手段の係止状態が解除された際に引出しとは別体で引出し可能に配設された構成が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−092227号公報
【特許文献2】特開2008−000156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2等に記載の上記従来のキャビネットの引出しは、主引出しを引出すことにより内引出しを連動させて引出すことができるが、主引出しと内引出しを確実に連動させるためには、主引出しと内引出しをキャビネット内に取り付ける際、予め設計された適正な位置にそれぞれ配置する必要がある。このために、引出し製造および組立てにおける精度が求められ、しかも微調整作業が発生する等、作業効率が悪いという問題があった。
【0006】
このような問題を、図9においてさらに分かり易く説明する。図9(a)に示す従来のキャビネット50は、図9(b)に示すように、主引出し6の後壁部11に金属板22を備え、内引出し7の底壁部27の下面30にビス51でマグネット52が移動不能に固定されている。
【0007】
このような構成の従来のキャビネット50では、主引出し6および内引出し7が、それぞれキャビネット50内に押し込まれて閉じられている状態において、図9(b)に示すように、主引出し6の金属板22の後面と内引出し7のマグネット52の前面の位置が同じとなり、互いに当接する状態となるように、設計通りに精度良く組立てられることが望ましい。
【0008】
このように設計通りに精度良く組立てられた場合は、主引出し6および内引出し7が閉じられた状態から、主引出し6を前方に引出すことにより、金属板22とマグネット52が互いに吸着し、主引出し6と共に内引出し7を連動させて引出すことができる。
【0009】
しかしながら、主引出し6および内引出し7が、キャビネット50内にそれぞれの最奥位置に押し込まれて閉じられている状態において、図9(c)に示すように、主引出し6の金属板22の後面と内引出しのマグネット52の前面の位置の間が離れて組立てられた場合は、両者の間に吸着するだけの磁力が及ばない。
【0010】
仮に、両者の間に磁力が及ぶとしても、内引出し7とともにマグネット52が移動する程度の吸着力が生じない可能性がある。そのために、主引出し6および内引出し7が閉じられた状態から、主引出し6を前方に引出すことにより内引出し7を連動させて引出すことができない。
【0011】
図9(c)に示す場合とは逆に、図9(d)に示すように、主引出し6は、2点鎖線(想像線)の位置までキャビネット50内に押し込めば、最も奥に押し込まれて完全に閉じられた状態となる。
【0012】
しかし、製造または組立ての際に生じる位置ずれによって、閉じられている状態の内引出し7のマグネット52が邪魔となって、主引出し6は、2点鎖線(想像線)の位置まで押し込むことができず、完全に閉じることができない状態となる。
【0013】
このような問題が生じないようするためには、図9(a)に示す従来のキャビネット50では、主引出し6および内引出し7が、キャビネット50内に、それぞれ最奥位置に押し込まれて閉じられている状態において、図9(b)に示すような位置となるように、精度良く組立てる必要があるが、そのためには調整作業等を含め、面倒な作業が必要であった。
【0014】
本発明は、従来のキャビネットの上記のような問題を解決することを課題とするものであり、キャビネットおよび引出しの組立ての際に、作業効率に優れ、組立て時の引出し取り付け位置の微調整が必要ない、内引出し付きの引出しおよびこれを備えたキャビネットを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、それぞれが前壁部、後壁部、両側壁部、底壁部を有する主引出しおよび内引出しを、連結部材によって連結させて引出すことが可能な引出しであって、前記主引出しは、主引出し連結部を備え、前記内引出しは、内引出し連結部を備え、前記主引出し連結部と前記内引出し連結部と、により前記連結部材を構成するものにおいて、前記主引出し連結部および前記内引出し連結部の少なくとも一方には、位置調整機構を備えており、前記主引出し連結部は、前記主引出しの後壁部に設けられ、前記内引出し連結部は、前記内引出しの底壁部に設けられており、前記位置調整機構は、前記内引出し連結部に埋設されたマグネットと、前記内引出し連結部に形成され、かつ引出し方向に沿った長軸を有する長穴と、前記内引出し連結部を引出し方向にスライド可能に前記内引出しの底壁部に取り付けるビスと、により構成されていることを特徴とする引出しを提供する。
【0018】
本発明は、上記構成の主引出しと内引出しとを連動させて引出すことができる引出しを備えたキャビネットを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、主引出しの連結部または内引出しの連結部に位置調整機構を設けたので、組立て時の引出し取り付け位置の微調整が必要ないので、引出しおよびキャビネットの組立ての際に、作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る引出しおよびキャビネットの全体構成を示す図であり、(a)は主引出しと内引出しが共にキャビネット内に収納されて閉じられた状態を示し、(b)は主引出しと内引出しが連結されて前方に引き出されて開く状態を示す。
図2】上記実施例の引出しの平面図を示し、(a)は主引出しを示し、(b)は内引出しを示す。
図3】上記実施例の主引出しおよび内引出しの連結部材の構成を示す図であり、(a)は主引出しおよび内引出しの連結部の関係的構成を示す要部断面図であり、(b)は内引出しの連結部のスライド体の構成および台座の構成を示す下方から見た斜視図である。
図4】上記実施例の内引出しの連結部の構成を示す図であり、(a)は断面図を示し、(b)は(a)のB−B断面図である。
図5】(a)は上記実施例の引出しの変形例の引出しおよびキャビネットの全体構成を示し、(b)は(a)の要部拡大図である。
図6】(a)〜(c)は、上記実施例の引出しの作用を説明する図である。
図7】(a)〜(c)は、上記実施例の引出しの作用を説明する図である。
図8】(a)、(b)は、上記実施例の引出しの作用を説明する図である。
図9】(a)は、従来の引出しおよびキャビネットの全体構成を示す図であり、(b)はその要部を示し、(c)、(d)は従来例の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る引出しおよびキャビネットを実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。本明細書では、引出しおよびキャビネットを正面視したときに、手前側を前方とし、奥側を後方とし、左右方向を横幅方向とする。
【実施例】
【0022】
本発明に係る引出しおよびキャビネットの実施例を図1〜8を参照して説明する。本発明の実施例の引出し1は、図1(a)、(b)に示すように、キャビネット2から引出しと収納が可能に設けられている。本発明の引出し1は、連結部材3によって互いに連結させて引出すことが可能な主引出し6と内引出し7を有する。
【0023】
主引出し6は、図1(a)および図2(a)に示すように、前壁部10、後壁部11、左右の両側壁部12および底壁部13を有する。そして、主引出し6は、図3(a)に示すように、その後壁部11の後面16に、連結部材3の構成要素である主引出し連結部17がビス18で固定されている。本実施例では、主引出し連結部17は、後で詳記するマグネット21で吸着される金属板22である。
【0024】
内引出し7は、図1(a)および図2(b)に示すように、前壁部24、後壁部25、左右の両側壁部26および底壁部27を有する。そして、内引出し7は、図3(a)および図4(a)に示すように、その下面30に台座28がビス19(図4(a)参照)で固定されている。
【0025】
本実施例ではこの台座28を介して、内引出し7の底壁部27の下面30に連結部材3の構成要素である内引出し連結部31が取り付けられている。内引出し連結部31は、図3(a)、(b)および図4に(a)、(b)示すように、台座28の下面35を摺動するスライド体29を備え、樹脂で形成されている。
【0026】
スライド体29は、その本体にマグネット21を埋設(モールドまたはカバー)して備えており、左右に張り出したフランジ34には、上下方向に貫通し前後方向に長軸を有する左右の長穴36が互いに平行に形成されている。この左右の長穴36を通して左右のビス32が台座28の下面に螺着されている。
【0027】
ビス32は、長穴36内をその長手方向に相対的に移動可能なように、その直径は長穴36の幅(正確には長穴36の横幅)より小さく形成されている(図4(a)、(b)参照)。また、スライド体29の上面の四隅には、台座28の下面35に対してスライド可能な半球状の突起37が形成されている。
【0028】
この突起37は、スライド体29の台座28の下面35に対するすべり性を良くする効果があるが、必須の構成ではなく、スライド体29と台座28の下面35自体の表面が平滑であれば、それ自体でスライドが可能である。
【0029】
このような構成であるから、スライド体29は、左右のビス32が左右の長穴36にガイドされて前後方向(引出し方向)に案内され、しかも四隅の突起37が台座28の下面35をスライドして、前後方向に移動可能である。
【0030】
このため、スライド体29に埋設されたマグネット21は、スライド体29と一体で金属板22に向かって磁力によって、または金属板22で押されて、反引出し方向(収納方向)に移動する。その移動可能範囲は、ビス32が長穴36で移動できる前後方向の範囲内である。
【0031】
このように、マグネット21と、内引出し連結部31のスライド体29に形成され、かつ前後方向に沿った長軸を有する長穴36と、長穴36内に可動に挿通され、スライド体29を引出し方向にスライド可能に台座28の下面35に取り付けるビス32と、により構成され、マグネット21を埋設したスライド体29を、内引出し7の下面30に対して移動可能にする機構を、本発明では位置調整機構という。
【0032】
なお、本実施例では、上記のとおり内引出し7の下面30に台座28がビス19で固定され、この台座28を介して、内引出し7の底壁部27の下面30に内引出し連結部31が取り付けられている。しかし、図示はしないが、内引出し7の下面30に台座28を固定することなく、内引出し7の底壁部27の下面30にビス32を固定し、内引出し連結部31のスライド体29を、直接、底壁部27の下面30にスライド可能に取り付ける構成としてもよい。
【0033】
図1(a)は、主引出し6および内引出し7が、それぞれキャビネット2内に収まって閉じられており、それぞれの最奥収納位置にある状態を示す。この状態では、図3(a)に示すように、主引出し連結部17である金属板22は、内引出し連結部31のマグネット21の前面に当接し互いに吸着されている。
【0034】
ビス32が、スライド体29の長穴36の前後方向の中心にある(図3(a)、図4(b)参照)ように、スライド体29をビス32で台座28の下面35に取り付けられる構成が望ましく、主引出し6、主引出し連結部17、内引出し7および内引出し連結部31の寸法、位置関係が設計される。
【0035】
なお、本実施例では、主引出し連結部17を金属板22とし、内引出し連結部31をマグネット21を埋設し位置調整機構を有するスライド体29を備えた構成としたが、これとは逆に、図5に変形例に示すように、主引出し連結部17として、マグネット21を埋設し位置調整機構を有するスライド体29を備え、内引出し連結部31を金属板22としてもよい。この変形例では、主引出し6の後壁部11の上面に、台座28を介して位置調整機構を備えたスライド体29を設ける構成とすればよい。
【0036】
(作用)
以上の構成から成る実施例の引出し1およびキャビネット2の作用について説明する。本発明の引出し1およびキャビネット2の特徴は、主引出し6および内引出し7の製造または組立時の作業において、寸法、組立てが設計値どおりとならず、主引出し6および内引出し7のそれぞれの寸法およびキャビネットの組立ての際に位置ずれが生じても、引出し1の動作に従来の引出しのような問題が生じることなくスムースに動作させることが可能となる点である。
【0037】
位置ずれがない場合:
図1(a)、図3(a)は、主引出し6および内引出し7が、それぞれキャビネット2内に収納され、引出し1が完全に閉じられた状態を示す。この状態は、主引出し6および内引出し7の製造または組立が設計値通り理想的に行われ、位置ずれがなく、主引出し6および内引出し7が閉じられた状態で、主引出連結部17である金属板22と内引出し連結部31のマグネット21が丁度、当接した状態にある。
【0038】
この状態から、図1(b)に示すように主引出し6を前方に引いて開けると、金属板22とマグネット21は、互いに吸着された状態で前方に移動し、スライド体29の長穴36の後端にビス32が当接し、ビス32が固定された台座28を介して内引出し7も主引出し6に連動して前方に移動する。
【0039】
位置ずれがある場合1:
しかしながら、通常は、主引出し6および内引出し7の製造または組立において位置ずれが生じ易い。例えば、図6(a)、(b)は、主引出し6および内引出し7が、それぞれ後壁部11、25の後面が、最奥収納位置X1、Y1までキャビネット2内に収納されて完全に閉じられた状態を示す。
【0040】
このように主引出し6および内引出し7が閉じた状態で、例えば、主引出し6の前後方向の長さが設計値より短い等の位置ずれがあると、主キャビネット2の金属板22が内引出し7のマグネット21まで到達せず、図6(b)に示すように、両者の間に間隔d1が生じてしまう。
【0041】
このように位置ずれがある場合でも、内引出し連結部31のスライド体29に埋設されたマグネット21の磁力によって、主キャビネット2の金属板22に向けてスライド体29と一体でマグネット21が前方に移動し、図6(c)に示すように、主キャビネット2の金属板22と内引出し7のマグネット21は、互いに吸着する。
【0042】
従って、図7(a)、(b)に示すように、主引出し6を前方に引き出すと、金属板22、マグネット21、スライド体29、ビス32および台座28を介して、内引出し7も前方に引き出される。このような引出しの過程では、図7(b)に示すように、ビス32はスライド体29の長孔36の後面38に当接して前方に押され、内引出し7が前方に引き出されることとなる。
【0043】
図示はしないが、主引出し6および内引出し7が共に開いた状態から、主引出し6を後方に押して閉じると、主引出し6の金属板22が内引出し7のマグネット21およびスライド体29を押して、ビス32および台座28を介して内引出し7を後方に押すので、主引出し6および内引出し7が共に後方に移動してキャビネット2内に収納されて閉じる。
【0044】
なお、主引出し6および内引出し7が共に開いた状態から、主引出し6から離して内引出し7のみを後方に押して閉じる過程では、ビス32はスライド体29の長孔36の後面38に当接し、スライド体29を後方に押しながら移動し、その最奥収納位置Y1まで移動する。その後、主引出し6を後方に押して閉じて、主引出し6を最奥収納位置X1まで移動すると、図7(c)の状態となる。
【0045】
この図7(c)に示す状態では、マグネット21が図6(b)の状態に比べると、主引出し6の金属板22に対して右側に寄っており、間隔d2がより開いている(間隔d2>間隔d1)が、このような場合でも、マグネット21の磁力により、マグネット21が主引出し6の金属板22の方向に移動して、図6(c)に示すような吸着状態となるので、主引出し6を前方に引くことによって、主引出し6と内引出し7を連動して共に開くことができる。
【0046】
位置ずれがある場合2
図6(a)、(b)は、主引出し6の前後方向の長さが設計値より短い等の位置ずれがあるために、主引出し6を閉じた際に主引出し6の金属板22がマグネット21まで到達しない場合であるが、逆に、図8(a)に想像線で示すように、主引出し6の前後方向の長さが設計値より長い等の位置ずれがあるために、主引出し6を完全に閉じた際に、主引出し6の金属板22がマグネット21の前端より後方の位置X1’まで移動する場合がある。
【0047】
図8(a)に示すような場合は、仮にマグネット21が従来のキャビネット50(図9参照)のように内引出し7に移動不能に固定されていると、主引出し6の金属板22がマグネット21に当接して停止し、想像線X1’の位置まで移動させることはできない。従って、主引出し6をキャビネット2内に完全に収納することができず、前方に僅かに開いた状態となってしまう。
【0048】
しかしながら、本発明の引出し1は、スライド体29およびマグネット21が内引出し7に対して長孔36の範囲内で前後方向に可動であるために、図8(b)に示すように、主引出し6の金属板22がマグネット21に当接してからスライド体29をその長孔36の範囲内で後方に押し込んで移動させることができる。そのために、主引出し6は、図8(b)に示すように、図8(a)の想像線で示す最奥位置X1’の位置まで移動可能となり、主引出し6も完全に閉じることが可能となる。
【0049】
以上、本発明に係る引出しおよびキャビネットを実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る引出しおよびキャビネットは上記のような構成であるから、キッチンの引出しおよびキャビネットだけでなく、その他各種の引出しおよびキャビネットにも適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 引出し
2 キャビネット
3 連結部材
6 主引出し
7 内引出し
10 主引出しの前壁部
11 主引出しの後壁部
12 主引出しの両側壁部
13 主引出しの底壁部
16 後壁部の後面
17 主引出し連結部
18 主引出し連結部の取付け用ビス
19 台座の取付け用ビス
21 マグネット
22 金属板
24 内引出しの前壁部
25 内引出しの後壁部
26 内引出しの両側壁部
27 内引出しの底壁部
28 台座
29 スライド体
30 内引出しの底壁部の下面
31 内引出し連結部
32 スライド体の取付け用のビス
34 スライド体のフランジ
35 台座の下面
36 スライド体の長孔
37 スライド体スライド用の突起
38 スライド体の長孔の後面
39 スライド体の長孔の前面
50 従来のキャビネット
51 ビス
52 マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9