特許第6434269号(P6434269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434269
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20181126BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H01L23/50 K
   H01L23/50 G
   H01L23/50 R
   H01L23/28 A
   H01L23/30 R
   H01L21/56 T
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-202018(P2014-202018)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72503(P2016-72503A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 真
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−086752(JP,A)
【文献】 特開平03−097236(JP,A)
【文献】 特開平11−074439(JP,A)
【文献】 特開2001−015667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 21/56
H01L 23/28
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを接着剤を介して固定するダイパッドと、
前記ダイパッドの辺に向かって延在する複数のリードと、
前記半導体チップと前記リードとを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップを封止する樹脂とを備えた半導体装置において、
前記半導体チップを搭載するダイパッドは前記半導体チップに対し凹状に湾曲したダイパッドであって、前記半導体チップの中央は前記ダイパッドから離間しており、前記湾曲したダイパッドの裏面の一部が前記封止樹脂から露出し、前記湾曲したダイパッドの上面には、前記半導体チップの底面の4隅と対応する水平台が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記湾曲したダイパッドが球面の一部を成していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記湾曲したダイパッドの底面と前記半導体チップの最大離間距離が前記半導体チップの厚さの1/5以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における電子デバイスは、電力消費の削減や環境負荷低減の為の低消費電流動作が要求されている。さらに、車載に代表される高温環境下での安定した高信頼動作が要求されている。電子デバイスの主たる構成を担う半導体デバイスも一種の抵抗と見なすことができ、電流が流れると、オン抵抗(電気を流したときの内部抵抗)に応じた熱を発生することになる。発生した熱は、半導体デバイスそのものに対してはもちろん、それを組み込んだ電子機器にもさまざまな悪影響を及ぼすことから、こうした熱による悪影響を回避するために、半導体パッケージの熱対策が不可欠となっている。半導体デバイスにおける熱は熱源となる半導体チップから最終的な熱の放出先となる空気へ放熱されるが、放熱される熱の大半は外部端子からプリント基板に熱伝導し、空気へと伝達する経路である。従って、半導体デバイスからプリント基板への放熱を促す構造が重要である。放熱性の高い半導体装置として、ダイパッドの裏面を封止樹脂から露出したものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−199639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示したダイパッドの裏面を露出した半導体装置では、樹脂封止する際にダイパッドと金型との間に樹脂が流れ込みフラッシュバリとも呼ばれる薄バリが形成されることになる。
【0005】
図8は、従来構造の半導体装置の樹脂封止工程を図示している。図8(a)は樹脂封止前の図である。平面のダイパッド3に載置された半導体チップ2はボンディングワイヤ7を介してリード6と電気的に接続された状態で上下の金型13,14に収納される。その後、上下金型13、14で形成されるキャビティに樹脂が充填され、樹脂封止される。このとき、ダイパッド3の下面と下金型14の上面との隙間に封止樹脂が入り込むことになる。図8(b)は樹脂封止後の図であるが、平面のダイパッドの裏面にはフラッシュバリ15が付着形成されている。このフラッシュバリが放熱性を低下させることになるが、これを除去するためには電解バリ浮かしやアルカリ無電解浸漬など技術的に高度な工程を付加する必要がある。
本発明は、上記課題に鑑み成されたもので、放熱性の高い半導体装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための手段は以下の通りである。
まず、半導体チップと、接着剤を介して前記半導体チップを固定するダイパッドと、前記ダイパッドの辺に向かって延在する複数のリードと、前記半導体チップと前記リードとを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップを封止する樹脂とを備えた半導体装置において、前記半導体チップを搭載するダイパッドが前記半導体チップに対し凹状に湾曲したダイパッドであって、前記湾曲したダイパッドの一部が前記封止樹脂から露出していることを特徴とする半導体装置とした。
【0007】
そして、リードフレームを成形する工程と、半導体チップをダイパッドに固定するダイボンド工程と、前記半導体チップと前記リードとをワイヤを介して接続するワイヤボンド工程と、前記半導体チップを樹脂封止する工程と、を備える半導体装置の製造方法において、前記リードフレームを成形する工程は平板の金属板から湾曲したダイパッドを成形する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いた。
【発明の効果】
【0008】
上記手段を用いることで、半導体装置のダイパッド裏面にはフラッシュバリが付着せず、良好な放熱性を有する半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の半導体装置の平面図である。
図2】本発明の半導体装置の断面図である。
図3】本発明の半導体装置の要部拡大断面図である。
図4】本発明の半導体装置を基板実装させた状態を示す断面図である。
図5】本発明の半導体装置の変形例の断面図である。
図6】本発明の半導体装置の工程途中における断面図である。
図7】本発明の半導体装置の製造フローである。
図8】従来構造の半導体装置の工程途中における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図を用いて説明する。
図1に示すように、樹脂封止型の半導体装置1は、半導体チップ2と、半導体チップ2を固定するダイパッド3と、ダイパッド3の両側に延びるリード4とを備えている。半導体チップ2は、例えば、半導体基板と、半導体基板上に設けられた配線層などから構成されるものであり、ダイパッド3に接着固定されている。ダイパッド3及びリード部4は、導電性を有するものであり、例えば、Fe−Ni合金やCu合金等の金属で形成されている。
【0011】
ダイパッドの周囲には複数のリード4があり、本実施形態においては、ダイパッド3の一辺側に2本、対向する他辺側に2本、計4本配置されている。そして、これらのリード4の内の1本であるリードは、吊りリード5であり、吊りリード5の基部5aがダイパッド3に固定されている。他の3本はダイパッド3から離間したリード6であり、そのインナー部6aが導電性を有するボンディングワイヤ7を介して半導体チップ2上のパッドと電気的に接続されている。なお、ボンディングワイヤ7には、金線や銅線が用いられる。
【0012】
図2は、図1のA−A‘における断面構造を示している。半導体チップ2は、ボンディングワイヤ7を介してリード6のリードインナー部6aと電気的に接続され、リードインナー部6aから延伸されたリードアウター部6bは封止樹脂8の底面および側面に露出している。
【0013】
ダイパッド3は、円弧状に湾曲し、半導体チップ対し凹形状を有している。ダイパッド3の上にはダイボンディングペースト11(接着剤)を介して半導体チップ2が接着固定されている。そして、ダイボンディングペースト11は半導体チップ2の底面だけではなく、側面にも這い上がってフィレット22を形成する構造となっている。ダイパッド3もリード6同様、裏面の一部が封止樹脂8から部分的に露出する構造となっており、裏面からの放熱機能を有している。なお、本実施例においては、ダイパッドは紙面の左右方向に湾曲した形状としており、紙面の奥行き方向には湾曲してなく、円柱の一部を切り出したような形状としている。
【0014】
図3は、本発明の半導体装置の要部拡大断面図であり、湾曲したダイパッド3および半導体チップ2を示している。半導体チップ2の底面2aは平面であるのに対し、ダイパッド3の上面3aは曲面である。したがって、両者の距離は一定ではなく、半導体チップ2の中央で半導体チップの底面2aとダイパッド3の上面3aが最も離れ、底面端部の四隅においてダイパッド3と最も近い位置になる。最も離れた箇所の隙間23が半導体チップの総厚2bの1/5以下であれば、ダイボンディングペースト11が半導体チップ2の側面にフィレット22を形成しやすく、半導体チップが確実に固定されることになる。
【0015】
図4には、本発明の半導体装置をプリント基板に実装した際の断面図を示す。
半導体装置1の封止樹脂から露出したダイパッドやリードは、プリント基板19上の接続端子20と半田ペースト21により実装接続される。この際にダイパッド3には半田ペースト21が湾曲形状に沿う様に濡れ拡がり、フィレット22を形成して、より確実にプリント基板に実装される。また、ダイパッド3が湾曲しているために半田ペースト21が他の領域に無駄に拡がらないという特徴も有する。
【0016】
図5には、本発明の半導体装置におけるダイパッドの湾曲形状を変更した際の断面図を示す。湾曲形状の度合いを変更することによって、半導体チップ底面とダイパッド底面の隙間とダイパッドの封止樹脂8の底面から露出する面積が変化するが、これらは半導体装置に求められる各種特性に応じて対応すれば良い。図5(a)は湾曲が小さく、曲率半径が大きい場合である。図5(b)は湾曲が大きく、曲率半径が小さい場合である。
【0017】
なお、これまで図示されたダイパッドは紙面の左右方向に湾曲した状態を示しているが、紙面の奥行き方向に湾曲した構造でも構わない。また、全方向に湾曲した球面形状のダイパッドとしても良い。
【0018】
また、図示していないが、半導体チップの底面端部の4隅を支えるように、4隅と対応するダイパッド上面に部分的に水平台を設けることで、ダイパッド上の半導体チップの固定をより確実なものとしても良い。
【0019】
図6は、本発明の半導体装置の樹脂封止工程を図示している。図6(a)は樹脂封止前の図である。リードフレームを成形する工程において、平板の金属板から湾曲して成形されたダイパッド3に載置された半導体チップ2はボンディングワイヤ7を介してリード6と電気的に接続された状態で上下の金型13,14に収納される。上金型13が下降して下金型14と接触すると、ダイパッド3は下金型14に強く押さえ付けられ、ダイパッド3の底面の一部は下金型14の上面に沿った平面となる。上下の矢印はダイパッドにかかる力の向きを表したものである。その後、上下金型13、14で形成されるキャビティに樹脂が充填され、樹脂封止される。このとき、ダイパッド3の下面は下金型14の上面を樹脂充填圧よりも強く押すため、ダイパッド3と下金型14との間に樹脂が入り込むことはない。
【0020】
図6(b)は樹脂封止後の図であるが、上下金型が離れると、歪んでいたダイパッドの湾曲は復帰し、元に戻ることになる。このようにして完成した半導体装置の湾曲したダイパッドの裏面にはフラッシュバリは確認できない。このように、湾曲したダイパッドを有する本発明の半導体装置ではフラッシュバリの付着もなく、放熱性の良好な半導体装置とすることが可能となる。
【0021】
図7には、本発明の半導体装置の製造フローを示した。まず、Fe−Ni合金やCu合金からなる平板の金属板を準備し、これを打ち抜き及びプレス加工を施して湾曲したダイパッドとアップセットされたリードを有するリードフレームを成形する。なお、湾曲したダイパッドは湾曲した台の上でリードフレームをプレス加工することによって成形できる(S1)。次いで、ダイパッド上にダイボンディングペーストを介して半導体チップを載置する(S2)。
【0022】
続くワイヤボンド工程S3は半導体チップ上の電極とリードフレームのリードとをワイヤで接続する工程である。組立検査工程S4にて外観検査をした後、ダイパッド上の半導体チップを樹脂で被覆(S5)し、その後、余分な樹脂バリ取りを行う(S6)。従来の半導体装置であれば、この後にフラッシュバリを除去する工程になるが、本発明の半導体装置の製造工程においてはその工程は不要であり、リードメッキ工程S7とリード切断工程S8を経て本発明の半導体装置が完成する。
【0023】
なお、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1 半導体装置
2 半導体チップ
2a 半導体チップ底面
2b 半導体チップ総厚
3 ダイパッド
3a ダイパッド底面
4 リード
5 吊りリード
5a 吊りリード基部
5b 吊りリードアウター部
6 リード
6a リードインナー部
6b リードアウター部
7 ボンディングワイヤ
8 封止樹脂
11 ダイボンディングペースト
13 上金型
14 下金型
15 フラッシュバリ
19 プリント基板
20 接続端子
21 半田ペースト
23 隙間
S1 リードフレーム成形工程
S2 ダイボンド工程
S3 ワイヤボンド工程
S4 組立検査工程
S5 樹脂封止工程
S6 樹脂バリ取り工程
S7 リードメッキ工程
S8 リード切断工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8