(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッドにタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道を含むトレッドセンター部からタイヤ回転方向と反対側へ延びてトレッド端に到達し、タイヤ幅方向に対する角度がタイヤ赤道側よりも前記トレッド端側で小さい主溝と、
前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ回転方向と反対側へ前記主溝の法線方向に延びてタイヤ赤道を横切り、前記トレッドセンター部で終端する第一副溝と、
前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ赤道に向かってタイヤ回転方向側へ延び、タイヤ幅方向に対する角度が前記主溝よりも大きく、前記トレッドセンター部で終端する第二副溝と、
前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部と前記トレッド端との中間部分からタイヤ回転方向側における前記主溝の法線方向に延び、タイヤ回転方向に隣接する前記主溝に到達せずに終端すると共に、前記主溝の側よりも前記終端となる側がタイヤ幅方向外側に位置する分岐溝と、
を有し、回転方向が指定された雪上用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイヤでは、傾斜溝と横断溝によってウエット性能と雪上性能を確保できるが、雪上性能については未だ改良の余地がある。
【0005】
本発明は、雪上性能を向上させた
雪上用空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の
第1態様に係る雪上用空気入りタイヤは、回転方向が指定された
雪上用空気入りタイヤであって、トレッドにタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道を含むトレッドセンター部からタイヤ回転方向と反対側へ延びてトレッド端に到達し、タイヤ幅方向に対する角度がタイヤ赤道側よりも前記トレッド端側で小さい主溝と、前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ回転方向と反対側へ前記主溝の法線方向に延びてタイヤ赤道を横切り、前記トレッドセンター部で終端する第一副溝と、を有している。
【0007】
第1態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、主溝をトレッドセンター部からタイヤ回転方向と反対側へ延ばしてトレッド端に到達させていることから、例えば、主溝がトレッド端に到達しないものと比べて、主溝の長さが長くなるため、雪上路面走行時に主溝によって形成される雪柱の長さを長くできる。このように雪柱の長さが長くなることで、雪柱のせん断力(以下、適宜「雪柱せん断力」と記載する。)が向上し、雪柱せん断力を利用するタイヤの雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
また、主溝の長さが長くなるため、主溝のエッジ(開口縁部)によるエッジ効果が向上し、タイヤの雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
【0008】
また、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第一副溝を主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ回転方向と反対側へ延ばしてトレッドセンター部で終端させていることから、雪上路面走行時に第一副溝内に雪を留めることができるため、第一副溝によって形成される雪柱のせん断力によって雪上加速性能が向上する。特に、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第一副溝がタイヤ赤道を横切るため、トレッドの中で最も接地長が長くなるタイヤ赤道付近において効果的に雪柱せん断力とエッジ効果を得ることができる。
【0009】
さらに、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第一副溝を主溝の法線方向に延ばしていることから、主溝と第一副溝との間に形成される陸部の角部の剛性が確保される。これにより、主溝と第一副溝とで一部が形成される陸部の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
なお、ここでいう「主溝の法線方向」には、主溝の溝中心線の法線に沿った方向及び該法線に対して±30度の範囲内で傾斜する方向が含まれる。
【0010】
以上のことから、
第1態様に係る雪上用空気入りタイヤによれば、雪上性能(雪上加速性能、雪上制動性能及び雪上操縦安定性)を向上させることができる。
【0011】
本発明の
第2態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第1態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ赤道に向かってタイヤ回転方向側へ延び、タイヤ幅方向に対する角度が前記主溝よりも大きく、前記トレッドセンター部で終端する第二副溝、を有している。
【0012】
第2態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、主溝のタイヤ赤道側の端部において第一副溝と第二副溝とが合流するため、この合流部分では第一副溝、第二副溝及び主溝に跨る大きな雪柱を形成することができ、雪柱せん断力が向上する。これによりタイヤの雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
また、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第二副溝を主溝のタイヤ赤道側の端部からタイヤ赤道に向かってタイヤ回転方向側へ延ばしてトレッドセンター部で終端させていることから、雪上制動時に第二副溝内に雪を留めることができるため、第二副溝によって形成される雪柱のせん断力によって雪上制動性能が向上する。特に、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第二副溝をタイヤ赤道に向かって延ばしているため、タイヤ赤道付近において効果的に雪柱せん断力とエッジ効果を得ることができる。
【0013】
本発明の
第3態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第1態様又は
第2態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記トレッドに設けられ、前記主溝のタイヤ赤道側の端部と前記トレッド端との中間部分からタイヤ回転方向側へ延び、タイヤ回転方向に隣接する前記主溝に到達せずに終端する分岐溝、を有している。
【0014】
第3態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、分岐溝を主溝のタイヤ赤道側の端部とトレッド端との中間部分からタイヤ回転方向側へ延ばしてタイヤ回転方向に隣接する主溝に到達させずに終端させることから、雪上制動時に、分岐溝内に雪を留めることができるため、分岐溝によって形成される雪柱のせん断力によって雪上制動性能が向上する。一方、雪上加速時には、分岐溝と主溝との合流部分で、主溝内の雪と分岐溝内の雪とが押し付け合って強固な雪柱が形成されるため、タイヤの雪上加速性能が向上する。
【0015】
本発明の
第4態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第3態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記分岐溝は、前記主溝の法線方向に延びている。
【0016】
第4態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、分岐溝を主溝の法線方向に延ばしていることから、主溝と分岐溝との間に形成される陸部角部の剛性が確保される。これにより、主溝と分岐溝とで形成される陸部の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
【0017】
本発明の
第5態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第1態様から第4態様のいずれか1
態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記主溝は、タイヤ赤道を挟んでタイヤ幅方向両側にタイヤ周方向にずれてそれぞれ配置され、前記トレッドには、タイヤ幅方向両側の前記主溝間にタイヤ周方向に連続する第一陸部が形成されている。
【0018】
第5態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、トレッドのタイヤ幅方向両側の主溝間にタイヤ周方向に連続する第一陸部を形成することから、トレッドの中で最も接地長が長くなるタイヤ赤道付近の接地面積が増え、雪上操縦安定性が向上する。また、上記
雪上用空気入りタイヤでは、第一陸部をタイヤ周方向に連続させていることから、第一陸部の剛性が向上し、第一副溝のエッジ効果が向上する。
【0019】
本発明の
第6態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第5態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記トレッドには、タイヤ周方向に隣接する前記主溝間にタイヤ幅方向に連続する第二陸部が形成されている。
【0020】
第6態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、トレッドのタイヤ周方向に隣接する主溝間にタイヤ幅方向に連続する第二陸部を形成することから、第二陸部の剛性が向上し、主溝のエッジ効果及び、分岐溝のエッジ効果がそれぞれ向上する。
【0021】
本発明の
第7態様に係る雪上用空気入りタイヤは、
第6態様に係る雪上用空気入りタイヤにおいて、前記第一陸部と前記第二陸部はタイヤ幅方向に連続している。
【0022】
第7態様に係る雪上用空気入りタイヤでは、第一陸部と第二陸部がタイヤ幅方向に連続していることから、例えば、第一陸部と第二陸部がタイヤ幅方向に連続しないものと比べて、第一陸部と第二陸部の剛性が向上するため、主溝、第一副溝、第二副溝及び分岐溝のエッジ効果がそれぞれ向上する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の
雪上用空気入りタイヤは、雪上性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る
雪上用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載する。)10について説明する。本実施形態のタイヤ10は、回転方向が指定されたタイヤであり、主に乗用車用に用いられるタイヤである。なお、本発明はこの構成に限定されるものではなく、その他の用途の空気入りタイヤに用いてもよい。例えば、ライトトラック用、航空機用、及び、建築車両用などの空気入りタイヤとして用いてもよい。また、本実施形態のタイヤ10は、内部構造として従来公知の空気入りタイヤの内部構造と同様のものを用いることができる。このため、タイヤ10の内部構造に関しては、説明を省略する。
【0026】
図1には、タイヤ10のトレッド12の展開図が示されている。なお、
図1中の矢印Xはタイヤ10の軸(回転軸)と平行な方向であるタイヤ幅方向を示し、矢印Yはタイヤ10の周方向(以下、適宜「タイヤ周方向」と記載する。)を示している。また、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Rはタイヤ10の回転方向を示している。本実施形態では、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」、その反対側、すなわち、タイヤ赤道CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。また、
図1中の符号12Eは、トレッド12のトレッド幅TWの端部(タイヤ幅方向の端部)であるトレッド端を示している。
【0027】
また、本実施形態のタイヤ10では、トレッド12において、タイヤ赤道CLを中心にしてタイヤ幅方向両側に1/2×TWの範囲をトレッドセンター部12C、トレッドセンター部12Cからトレッド端12Eまでの範囲をトレッドショルダー部12Sとしている。
【0028】
図1に示されるように、タイヤ10の路面との接触部位を構成するトレッド12には、タイヤ周方向に間隔(本実施形態では一定間隔)をあけて複数の主溝14が設けられている。この主溝14は、タイヤ赤道CLを含むトレッドセンター部12Cからタイヤ回転方向と反対側へ延びてトレッド端12Eに到達している。具体的には、主溝14は、トレッドセンター部12Cからトレッド端12Eに向かってタイヤ幅方向に対する鋭角側の角度θ1が次第に小さくなるように湾曲しながら延びている。なお、角度θ1は、タイヤ幅方向に延びる直線(
図1及び
図2では破線で示す)と、主溝14の溝幅の中心を通る線(以下、適宜「溝中心線」と記載する。)14CLとの間の鋭角側の角度である。上記構成により、主溝14は、タイヤ赤道CL側よりもトレッド端12E側で角度θ1が小さくなる。
なお、本実施形態では、主溝14がトレッドセンター部12Cからトレッド端12Eに向かって角度θ1が次第に小さくなるように湾曲しながら延びる構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、主溝14がトレッドセンター部12Cからトレッド端12Eに向かって角度θ1が段階的に小さくなるように階段状に折れ曲がりながら延びてもよい。
【0029】
また、主溝14は、角度θ1がタイヤ赤道CL側の端部(以下、適宜「内側端部」と記載する。)14A側で60〜90度、トレッド端12E側で0〜20度となるように湾曲させることが好ましい。このように構成することで、主溝14の開口縁部(エッジ)14B、14Cは、内側端部14A側においてタイヤ幅方向のエッジ効果を得つつ、トレッド端12E側においてタイヤ周方向のエッジ効果を得ることができる。なお、主溝14のエッジ14Bはタイヤ回転方向側の開口縁部であり、エッジ14Cはタイヤ回転方向と反対側の開口縁部である。また、主溝14のエッジ14Bは後述する第二陸部26の蹴り出し側の縁部と同じ部分を指し、エッジ14Cは後述する第二陸部26の踏み込み側の縁部と同じ部分を指す。
【0030】
また、主溝14は、溝幅が内側端部14A側よりもトレッド端12E側で広くなっている。これにより、ウエット路面走行時における主溝14の排水性能が向上する。
【0031】
図1に示されるように、トレッド12には、主溝14の内側端部14Aからタイヤ回転方向と反対側へ主溝14の法線方向に延びてタイヤ赤道CLを横切り、トレッドセンター部12Cで終端する第一副溝16が形成されている。具体的には、第一副溝16は、タイヤ赤道CL上に形成される第一陸部22内で終端している。なお、第一陸部22については、後述する。なお、ここでいう「主溝14の法線方向」には、主溝14の溝中心線14CLの法線14NLに沿った方向及び法線14NLに対して±30度の範囲内で傾斜する方向が含まれる(
図2参照)。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態では、第一副溝16の溝中心線16CLが主溝14の法線14NLに対して角度θ2で傾斜している。なお、第一副溝16の溝中心線16CLは、第一副溝16の溝幅の中心を通る線である。また、角度θ2は、−30度〜30度の範囲内に設定されている。
【0033】
図1に示されるように、トレッド12には、主溝14の内側端部14Aからタイヤ赤道CLに向かってタイヤ回転方向側へ延びてトレッドセンター部12Cで終端する第二副溝18が形成されている。具体的には、第二副溝18は、タイヤ赤道CL上に形成される第一陸部22内においてタイヤ赤道CLに到達する手前で終端している。また、第二副溝18は、タイヤ幅方向に対する鋭角側の角度θ3が主溝よりも大きくされている。この角度θ3は、タイヤ幅方向に延びる直線(
図1及び
図2では破線で示す)と、第二副溝18の溝中心線18CLとの間の鋭角側の角度である。なお、第二副溝18の溝中心線18CLは、第二副溝18の溝幅の中心を通る線である。
【0034】
また、トレッド12には、主溝14の内側端部14Aとトレッド端12Eとの中間部分からタイヤ回転方向側へ延びて、タイヤ回転方向に隣接する主溝14に到達せずに終端する分岐溝20が形成されている。具体的には、分岐溝20は、タイヤ周方向に隣接する主溝14間に形成される第二陸部26内で終端している。なお、第二陸部26については、後述する。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態では、分岐溝20の溝中心線20CLが主溝14の法線14NLに対して角度θ4で傾斜している。なお、分岐溝20の溝中心線20CLは、分岐溝20の溝幅の中心を通る線である。また、角度θ4は、−30度〜30度の範囲内に設定されている。
【0036】
図1に示されるように、主溝14、第一副溝16、第二副溝18及び分岐溝20は、タイヤ赤道CLを挟んでタイヤ幅方向両側にそれぞれ設けられている。また、本実施形態では、タイヤ赤道CLを挟んでタイヤ幅方向一方側の主溝14と、タイヤ幅方向他方側の主溝14とがタイヤ周方向に半ピッチずれて配置されている。なお、ここでいう「半ピッチ」とは、タイヤ周方向に隣接する主溝14間の距離を1ピッチとしたとき、この半分を指す。
【0037】
また、本実施形態のトレッド12には、接地時に閉じない溝(溝壁面同士が接触しない溝)として、主溝14、第一副溝16、第二副溝18及び分岐溝20のみが形成されている。なお、本発明は上記構成に限定されず、トレッド12に主溝14、第一副溝16、第二副溝18及び分岐溝20以外に別の溝を形成してもよい。
【0038】
トレッド12には、タイヤ幅方向両側の主溝14間に第一陸部22が形成されている。この第一陸部22は、タイヤ赤道CL上に位置し、タイヤ周方向に連続している。なお、ここでいう「タイヤ周方向に連続」とは、接地面内において第一陸部22がタイヤ周方向に連続している状態を含む。
【0039】
図1に示されるように、第一陸部22には、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ幅方向)にジグザグ状に延びるサイプ24がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、ここでいう「サイプ」は、接地時に溝壁面同士が接触して閉じる程度の溝幅に設定された細溝を指している。
【0040】
また、トレッド12には、タイヤ周方向に隣り合う主溝14の間で且つ第二副溝18のタイヤ幅方向外側にタイヤ幅方向に連続する第二陸部26が形成されている。この第二陸部26は、第一陸部22のタイヤ幅方向外側に隣接している。なお、ここでいう「タイヤ幅方向に連続」とは、接地面内において第二陸部26がタイヤ幅方向に連続している状態を含む。
【0041】
図1に示されるように、第二陸部26は、第二副溝18と分岐溝20との間の擬似的なブロック部26Aと、分岐溝20とトレッド端12Eとの間の擬似的なブロック部26Bと、を含んで構成されている。なお、ここでいう「擬似的なブロック部」とは、溝によって完全に分断されていないがブロック状とされた陸部の部分を指す。
【0042】
ブロック部26Aには、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ周方向に対して斜め方向)にジグザグ状に延びるサイプ28がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0043】
ブロック部26Bには、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ周方向に対して斜め方向)であり、サイプ24及びサイプ28とそれぞれ交差する方向にジグザグ状に延びるサイプ30がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0044】
また、第一陸部22と第二陸部26はタイヤ幅方向に連続している。具体的には、
図2に示されるように、主溝14の内側端部14Aからタイヤ回転方向に延びた第二副溝18がタイヤ回転方向に隣接する主溝14からタイヤ回転方向と反対側へ延びた第一副溝16に到達せずにトレッドセンター部12Cで終端するため、主溝14の第二副溝18とタイヤ回転方向に隣接する主溝14の第一副溝16との間の部分(以下、適宜「連結陸部」と記載する。)32を介して第一陸部22と第二陸部26とがタイヤ幅方向に連続している。
【0045】
次に、タイヤ10の作用効果について説明する。
タイヤ10では、主溝14をトレッドセンター部12Cからタイヤ回転方向と反対側へ延ばしてトレッド端12Eに到達させていることから、例えば主溝がトレッド端12Eまで到達していないものと比べて、主溝14の長さ(主溝14の延在方向に沿った長さ)が長くなるため、雪上路面走行時に主溝14によって形成される雪柱の長さを長くできる。このように雪柱の長さが長くなることで、雪柱のせん断力が向上し、雪柱せん断力を利用するタイヤ10の雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
【0046】
また、主溝14の長さが長くなるため、主溝14のエッジ14B及びエッジ14Cによるエッジ効果が向上し、タイヤ10の雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
特に、タイヤ10では、主溝14の角度θ1を内側端部14A側よりもトレッド端12E側で小さくしていることから、エッジ14B及びエッジ14Cがタイヤ周方向及びタイヤ幅方向の広い範囲でエッジ効果を発揮するため、雪上加速性能及び雪上制動性能に加えて、横滑りを抑える効果が向上し、雪上操縦安定性が向上する。また、ウエット路面走行時におけるエッジ14Bによる水切り効果(路面上の排水を掃く効果)と、ウエット路面制動時におけるエッジ14Cによる水切り効果が得られるため、排水性能が向上する。
【0047】
また、タイヤ10では、主溝14をトレッドセンター部12Cからトレッド端12Eに向かって角度θ1が次第に小さくなるように湾曲しながら延ばしていることから、ウエット路面走行時に主溝14の内側端部14A側からトレッド端12Eに向かって排水がスムーズに流れる。このため、タイヤ10の排水性能が向上する。
【0048】
さらに、タイヤ10では、主溝14の溝幅をタイヤ赤道CL側よりもトレッド端12E側で広くしていることから、トレッド端12E側で形成される雪柱が太くなり、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0049】
また、タイヤ10では、第一副溝16を主溝14の内側端部14Aからタイヤ回転方向と反対側へ主溝14の法線方向に延ばしてトレッドセンター部12Cで終端させていることから、雪上路面走行時に第一副溝16内に雪を留めることができるため、第一副溝16によって形成される雪柱のせん断力を効果的に利用することができ、タイヤ10の雪上加速性能がより向上する。
特に、タイヤ10では、第一副溝16を延ばしてタイヤ赤道を横切らせるため、トレッド12の中で最も接地長が長くなるタイヤ赤道付近において効果的に雪柱せん断力とエッジ効果を得ることができる。すなわち、タイヤ10の接地面の中で接地長が最も長くなるタイヤ赤道CL上に多数の第一副溝16が配置されるため、雪上路面走行時にタイヤ赤道CLを横切る多数の雪柱が形成され、雪柱せん断力が向上する。同様に、接地面のタイヤ赤道CL上に多数の第一副溝16が配置されるため、雪上路面走行時におけるエッジ効果が向上する。
【0050】
また、タイヤ10では、第一副溝16を主溝14の法線方向に延ばしていることから、主溝14と第一副溝16との間に形成される連結陸部32の角部の剛性が確保される。これにより、主溝14と第一副溝16とで一部が形成される連結陸部32の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。ここで、連結陸部32の接地性が向上すると、この連結陸部32で連結された第一陸部22と第二陸部26の接地性も向上するため、より雪上操縦安定性が向上する。
【0051】
タイヤ10では、主溝14の内側端部14Aにおいて第一副溝16と第二副溝18とが合流するため、この合流部分では第一副溝16、第二副溝18及び主溝14に跨る大きな雪柱を形成することができ、雪柱せん断力が向上する。これによりタイヤ10の雪上性能(主に雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
【0052】
また、第二副溝18を主溝14の内側端部14Aからタイヤ赤道CLに向かってタイヤ回転方向側へ延ばしてトレッドセンター部12Cで終端させていることから、雪上制動時に第二副溝18内に雪を留めることができるため、第二副溝18によって形成される雪柱のせん断力によって雪上制動性能が向上する。特に、タイヤ10では、第二副溝18をタイヤ赤道CLに向かって延ばしているため、タイヤ赤道CL付近において効果的に雪柱せん断力とエッジ効果を得ることができる。すなわち、タイヤ10の接地面のタイヤ赤道CL付近に多数の第二副溝18が配置されるため、雪上路面走行時にタイヤ赤道CL付近に多数の雪柱が形成され、雪柱せん断力が向上する。同様に、接地面のタイヤ赤道CL付近に多数の第二副溝18が配置されるため、雪上路面走行時におけるエッジ効果が向上する。
【0053】
また、タイヤ10では、分岐溝20を主溝14の内側端部14Aとトレッド端12Eとの中間部分からタイヤ回転方向側へ延ばしてタイヤ回転方向に隣接する主溝14に到達させずに終端させることから、雪上制動時に、分岐溝20内に雪を留めることができるため、分岐溝20によって形成される雪柱のせん断力によって雪上制動性能が向上する。一方、雪上加速時には、分岐溝20と主溝14との合流部分で、主溝14内の雪と分岐溝20内の雪が押し付け合って強固な雪柱が形成されるため、雪上加速性能が向上する。
【0054】
さらにタイヤ10では、分岐溝20を主溝14の法線方向に延ばしていることから、主溝14と分岐溝20との間に形成されるブロック部26Aの角部及びブロック部26Bの角部の剛性がそれぞれ確保される。これにより、主溝14と分岐溝20とで形成される第二陸部26を構成するブロック部26A及びブロック部26Bの接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
【0055】
またタイヤ10では、トレッド12のタイヤ幅方向両側の主溝14間にタイヤ周方向に連続する第一陸部22を形成することから、トレッド12の中で最も接地長が長くなるタイヤ赤道付近の接地面積が増え、雪上操縦安定性が向上する。また、第一陸部22をタイヤ周方向に連続させていることから、第一陸部22の剛性が向上し、第一副溝16のエッジ効果及び、サイプ24のエッジ効果が向上する。これによりドライ路面及びウエット路面における走行性能も向上する。一例としては、第一陸部22の剛性向上により接地面積が増大し、加速性能及び制動性能が向上する。第一陸部22の剛性向上により溝やサイプによるエッジ効果が向上し、排水性能が向上する。
【0056】
さらにタイヤ10では、トレッド12のタイヤ周方向に隣接する主溝14間にタイヤ幅方向に連続する第二陸部26を形成することから、第二陸部26の剛性が向上し、主溝14のエッジ効果、分岐溝20のエッジ効果、サイプ28のエッジ効果及びサイプ30のエッジ効果が向上する。特に主溝14のエッジ14Bは、第二副溝18から分岐溝20までの間と、分岐溝20からトレッド端12Eまでの間がそれぞれ連続しているため、エッジ効果を効果的に発揮することができ、雪上制動性能をより向上させることができる。一方、主溝14のエッジ14Cは、第一副溝16からトレッド端12Eまで連続しているため、エッジ効果をより効果的に発揮することができ、雪上加速性能をより向上させることができる。これによりドライ路面及びウエット路面における走行性能も向上する。一例としては、第二陸部26の剛性向上により接地面積が増大し、加速性能及び制動性能が向上する。第二陸部26の剛性向上により溝やサイプによるエッジ効果が向上し、排水性能が向上する。
【0057】
またさらにタイヤ10では、第一陸部22と第二陸部26がタイヤ幅方向に連続していることから、第一陸部22と第二陸部26の剛性が向上するため、主溝14、第一副溝16、第二副溝18及び分岐溝20の各々のエッジ効果が向上する。
【0058】
そして、タイヤ10では、タイヤ幅方向の一方側の主溝14と他方側の主溝14をタイヤ周方向に半ピッチずらして配置していることから、タイヤ赤道CLを挟んで両側の主溝14によるエッジ効果をバランスよく発生させることができる。
【0059】
以上のことから、タイヤ10によれば、雪上性能(雪上加速性能、雪上制動性能及び雪上操縦安定性)を向上させることができる。
【0060】
第1実施形態のタイヤ10では、
図2に示されるように、第二副溝18をタイヤ赤道CLに到達する前にトレッドセンター部12Cで終端させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。第一陸部22がタイヤ周方向に連続すれば、例えば、第二副溝18がタイヤ赤道CLを横切ってトレッドセンター部12Cで終端する構成としてもよい。
【0061】
また第1実施形態のタイヤ10では、主溝14の内側端部14Aとトレッド端12Eとの中間部分に分岐溝20を一つ配置しているが、本発明はこの構成に限定されず、分岐溝20を複数配置してもよい。
【0062】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。