(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の塩化ビニル系樹脂組成物は、平均重合度700〜1500の塩化ビニル系樹脂と、分子量350〜3000の可塑剤とを含有し、前記可塑剤の配合量が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜30重量部である、請求項1に記載の加飾成形用積層体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
まずは、本発明の加飾成形用積層体について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の加飾成形用積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の加飾成形用積層体100は、加飾フィルム10と、加飾フィルム10上に積層されたアプリケーションフィルム20とを備える。
加飾フィルム10は、セパレータ14上に、接着剤層12、第1基材フィルム11及び印刷層13がこの順で積層されている。
アプリケーションフィルム20は、加飾フィルム10側から順に粘着剤層22と第2基材フィルム21とが積層されている。
【0018】
加飾フィルム10を構成する第1基材フィルム11は、第1の塩化ビニル系樹脂組成物からなるものである。
上記第1の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含有する。
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体を挙げることができる。
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフイン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記共重合体における上記共重合可能な他の単量体の含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。50重量%を超えると、加飾フィルムの耐屈曲性が低下し、例えば、芯材への貼り付けに適さなくなるおそれがある。
上記塩化ビニル系樹脂のなかでも、印刷適性及び視認性に優れ、更には寸法安定性に優れる点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0020】
上記塩化ビニル系樹脂は、その平均重合度が700〜1400である。
この場合、溶剤系インクを用いて印刷層を形成した際の印刷適性(例えば、印刷時の発色性やインクの定着性等)に優れる。これに対して、上記平均重合度が700未満では、溶剤系インクを吸収し過ぎてしまい、フィルム中で膨潤した状態でインクが滲んでしまうため、印刷時の発色性や鮮明性が不充分となる。一方、上記平均重合度が1400を超えると、溶剤系インクの吸収力が低く、インクがフィルムに染み込みにくく、フィルムの表面に付着するため、インクがアプリケーションフィルムに移行し、印刷層の画像の鮮明性が損なわれることとなる。
本発明において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K−6721「塩化ビニル系樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0021】
上記可塑剤は、その分子量が350〜3000である。
上記分子量が350未満では、第1基材フィルムからブリードしやすく、可塑剤がブリードすると、接着剤層に移行して接着剤層の接着力を低下させたり、上記基材フィルムの表面に移行して印刷層を形成した際に、印刷ムラを引き起こしたりすることがある。
一方、上記分子量が3000を超えると、可塑剤がインクを吸収しすぎてしまい、印刷層に形成された画像に滲みが生じ、印刷層の鮮明性に劣ることがある。
【0022】
なお、上記可塑剤が高分子化合物からなる場合、その分子量は数平均分子量である。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。
上記GPC測定は定法に従って行われる。例えば、測定対象となる可塑剤の希薄テトラヒドロフラン溶液を調製し、流量条件0.6ml/minで東ソー社製GPC測定装置「HLC−8220GPC」を用いて測定する。カラムには、昭和電工社製「KF606M」と「KF603」を使用する。
【0023】
上記可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸オクチル(ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP))、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル等のフタル酸ジエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル、トリクレジルホスフエート、トリオクチルホスフエート等のリン酸トリエステル、エポキシ化大豆油やエポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤、高分子ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
上記高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルや、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記可塑剤の配合量は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5〜40重量部である。
上記可塑剤の配合量が5重量部未満では、基材フィルムの溶剤系インクの吸収性が不充分となるため滲みが生じ、溶剤系インクの印刷適正に劣る場合がある。一方、40重量部を超えると、基材フィルムが軟らかすぎ、真空成形や真空・圧空成形の工程で加熱した際に自重により垂れ下がりやすく、アプリケーションフィルムがあっても画像に歪みが発生してしまうことがある。
【0025】
上記第1の塩化ビニル系樹脂組成物は、必要に応じて塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に使用される、安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、改質剤、無機粒子や無機繊維等の充填剤、希釈剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0026】
第1基材フィルム11の厚さは、50〜500μmが好ましい。
第1基材フィルム11の厚さが50μm未満では、フィルムの強度が不充分で、加飾成形性に劣ることがある。一方、500μmを超えると、芯材の表面形状に追従することができない場合がある。より好ましくは、80〜200μmである。
【0027】
印刷層13は、任意の模様や文字、図柄等の画像からなる。
印刷層13は、第1基材フィルム11の表面に溶剤系インクを用いて形成されていることが好ましい。
溶剤系インクを用いて形成された印刷層13は第1基材フィルム11に染み込んだ状態で基材フィルムの表面に定着する。そのため、画像の鮮明性、堅牢性に優れる。
【0028】
上記溶剤系インクとしては、主に溶剤、顔料、ビヒクル、及び、更に必要に応じて配合される補助剤からなる従来公知の溶剤系インクを使用することができる。
なかでもビヒクルとして、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合系樹脂等のビニル系樹脂、又は、アクリル系樹脂を含有する溶剤系インクが、上記基材フィルムとの密着性に優れる点で好ましい。上記ビヒクルは2種以上を併用しても良い。
【0029】
上記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、低沸点芳香族ナフサ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
上記顔料としては、カーボンブラック(ブラック)、銅フタロシアニン(シアン)、ジメチルキナクリドン(マゼンタ)、ピグメント・イエロー(イエロー)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ニッケル化合物等が挙げられる。上記顔料としては、他にも種々の顔料が既に知られており、上記したものに限定されるわけではない。
【0030】
このような溶剤系インクの具体例としては、例えば、SS21インク、ES3インク(共にMimaki社製)、Eco−Sol MAX(Roland社製)等が挙げられる。
【0031】
印刷層13を形成する方法としては特に限定されず、直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の従来公知の印刷方法を用いることができる。これらのなかでは、インクジェット印刷が好ましい。この理由は、多品種、小ロット生産への対応が容易だからである。
上記インクジェット印刷で使用するインクジェット装置は特に限定されないが、例えば、CJV−30、TPC−1000(共にMimaki社製)、XC−540、SP−300(共にRoland社製)等が挙げられる。
【0032】
接着剤層12は、ホットメルト接着剤からなる層(ホットメルト接着剤層)が好ましい。
上記ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリエステル系ホットメルト接着剤、アクリル系ホットメルト接着剤、ゴム系ホットメルト接着剤、シリコーン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。
ホットメルト接着剤層は、溶剤を含有しないため、加飾フィルムを用いた加飾を真空成形や真空・圧空成形により行うのに好適である。
【0033】
接着剤層12の厚さは、25〜50μmが好ましい。
接着剤層12の厚さが、25μm未満では、芯材との間で充分な接着力を確保することができない場合がある。一方、50μmを超えると、接着剤層において凝集破壊が発生しやすくなったり、接着剤層をその表面が平滑になるように塗工する事が困難になったりすることがある。
【0034】
図1に示したように、接着剤層13の第1基材フィルム11側と反対側にはセパレータ14が積層されている。上記セパレータは、本発明において必要に応じて設ける任意の層である。
セパレータ14としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、シリコーン樹脂で表面処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0035】
また、加飾フィルム10では、第1基材フィルム11や印刷層13の表面に、必要に応じて、エンボス加工等の表面加工が施されていてもよい。
【0036】
アプリケーションフィルム20を構成する第2基材フィルム21は、第2の塩化ビニル系樹脂組成物からなるものである。
上記第2の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含有する。
ここで、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤の具体例としては、上記第1の塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる塩化ビニル系樹脂や可塑剤と同様のものが挙げられる。
【0037】
上記第2の塩化ビニル系樹脂組成物は、平均重合度が700〜1500の塩化ビニル系樹脂と、分子量(又は数平均分子量)350〜3000の可塑剤とを含有することが好ましい。
このような組成の第2の塩化ビニル系樹脂組成物からなる第2基材フィルムは、加熱時に上記第1基材フィルムと同程度の温度で、軟化し始めるからである。
一方、軟化温度の大きく異なるフィルムを第2基材フィルムに用いた場合、真空成形や真空・圧空成形の工程で加熱した際に、第1基材フィルムとの間で溶融状態に差異が生じ、第1基材フィルムと第2基材フィルム間に浮きが発生して、成形性を損なわれることがある。
【0038】
上記第2の塩化ビニル系樹脂組成物において、上記可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5〜30重量部が好ましい。
上記可塑剤の配合量が5重量部未満では、真空成形時や真空・圧空成形時にアプリケーションフィルムが破損し、成形性(加飾性)が損なわれるおそれがあり、一方、30重量部を超えると、アプリケーションフィルムが軟らかすぎ、真空成形や真空・圧空成形の工程で加熱した際に加飾フィルムが垂れ下がることを防止することができないおそれがある。
【0039】
上記第2の塩化ビニル系樹脂組成物は、必要に応じて塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に使用される、安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、改質剤、無機粒子や無機繊維等の充填剤、希釈剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0040】
上記第2基材フィルムの厚さは、50〜300μmが好ましい。
上記第2基材フィルムの厚さが50μm未満では、アプリケーションフィルムの耐熱性が不充分で、真空成形や真空・圧空成形の工程で加熱した際に加飾フィルムが垂れ下がることを防止することができないおそれがある。一方、300μmを超えると、芯材の被加飾面の形状に対する追従性が低下する。また、加飾フィルムに熱が伝わりにくくなるため、加飾フィルムの軟化に時間が掛かり、生産性の低下につながることがある。
【0041】
粘着剤層22は、例えば、アクリル系重合体を含むアクリル系粘着剤を用いて形成されるもの等である。
上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はこれらの共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性単量体等が挙げられる。これらのなかでは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体が好ましい。
【0042】
上記アクリル系重合体の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートと2−メトキシエチルアクリレートと酢酸ビニルとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートと2−メトキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとアクリル酸とからなる共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記粘着剤層は、更に、硬化剤、粘着付与剤、公知の添加剤等を含んでいてもよい。
上記硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が挙げられる。
【0044】
加飾成形用積層体100では、第2基材フィルム21の100℃における破断伸びが、第1基材フィルム11の100℃における破断伸びよりも小さいことが重要である。
このような要件を充足することにより、真空成形や真空・圧空成形の工程で加熱した際に加飾フィルム(加飾成形用積層体)が垂れ下がることを防止することができる。
上記100℃のおける破断伸びは、以下の方法で測定する。
即ち、引張試験機を使用し、JIS K 7162に準拠して試験を行い、破断時のフィルムの伸率を算出する。なお、引張時の雰囲気温度は100℃とする。
なお、ここで設定した測定温度(100℃)は、真空成形や真空・圧空成形で本発明の加飾成形用積層体を加熱する際に採用する代表的な温度の一つである。
【0045】
アプリケーションフィルム20を構成する第2基材フィルム21の100℃における破断伸びは、100〜150%が好ましい。加飾フィルムに対する追従性に優れるからである。一方、上記破断伸びが100%未満では、芯材の形状によっては成形することができない場合がある。また、上記破断伸びが150%を超えると、加熱時の加飾フィルムの垂れ下がりを防止することができないことがある。
【0046】
一方、加飾フィルム10を構成する第1基材フィルム11の100℃における破断伸びは、130〜180%が好ましい。上記破断伸びが130%未満では、芯材の形状によっては成形することができない場合がある。一方、上記破断伸びが180%を超えると、成形性は充分に確保することができるものの、基材フィルムとして柔らかすぎるため、上記アプリケーションフィルムを積層したとしても、加熱時の加飾フィルムの垂れ下がり(ドローダウン)による印刷画像の歪みを回避することが困難となる。
【0047】
加飾成形用積層体100において、アプリケーションフィルム20の加飾フィルム10に対する粘着力は、0.5〜10(N/25mm)が好ましい。
上記粘着力が0.5N/25mm未満では、芯材に加飾成形用積層体を貼り付ける一連の工程において、加飾フィルムを保持できないことがあり、一方、10N/25mmを超えると、芯材への貼り付けが完了した後、アプリケーションフィルムを加飾フィルムから剥がす際に、スムーズに剥離できず、印刷層に破損が生じたり、アプリケーションフィルムを剥離した後、加飾フィルムの表面に糊残りが生じたりすることがある。
上記粘着力は、0.9〜7(N/25mm)がより好ましい。
【0048】
上記アプリケーションフィルムの上記加飾フィルムに対する粘着力は、JIS Z 0237に準拠した方法により測定する。
ここで、試験板(被着体)としてはアルミ板に加飾フィルムを積層したものを使用する。このとき、アプリケーションフィルムの幅は25mmとし、剥離距離は50mm、剥離速度は300mm/minとする。
【0049】
本発明の加飾成形用積層体の構成は、
図1に示した加飾成形用積層体100に限定されず、例えば、
図2に示したような構成を備えていてもよい。
図2は、本発明の加飾成形用積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【0050】
図2に示す加飾成形用積層体110は、加飾フィルム10′と、加飾フィルム10′上に積層されたアプリケーションフィルム20′とを備える。
加飾フィルム10′は、セパレータ14上に、接着剤層12、第1基材フィルム11、印刷層13、接着剤層16及び表面保護層15がこの順で積層されている。
アプリケーションフィルム20′は、加飾フィルム10′側から順に粘着剤層22と第2基材フィルム21とが積層されている。
【0051】
即ち、加飾フィルム10′の印刷層13上に、接着剤層16を介して表面保護層15が積層されている点で、加飾成形用積層体100と相違する。
このような加飾成形用積層体110を用いて、作製した加飾成形品では、加飾面の表面が表面保護層15で保護されることとなる。
【0052】
表面保護層15は、例えば、塩化ビニル系樹脂組成物やアクリル系樹脂組成物等を用いて形成された層であり、透明である。
表面保護層15は、市販の塩化ビニル系樹脂フィルムやアクリル系樹脂フィルムを用いたものであってもよい。
【0053】
上記塩化ビニル系樹脂組成物を用いて形成された表面保護層としては、例えば、塩化ビニル系樹脂に、可塑剤及び安定剤を配合した塩化ビニル系樹脂組成物からなる層が挙げられる。
ここで、上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700〜1500が好ましい。上記可塑剤としては、フタル酸ジエチルヘキシル(DOP)等の平均分子量が350〜3000の可塑剤が好ましい。
更に、上記可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜30重量部が好ましい。
【0054】
上記アクリル系樹脂組成物を用いて形成された表面保護層としては、例えば、アクリライト、アクリプレン(ともに三菱レーヨン社製)、サンデュレン(カネカ社製)等が挙げられる。
表面保護層15は、透明性に優れる点から、アクリル系樹脂組成物を用いて形成された層であることが好ましい。
【0055】
接着剤層16は、例えば、アクリル系接着剤や、ゴム系接着剤、ポリエステル系接着剤を用いて形成された層であり、透明である。
上記アクリル系接着剤としては、例えば、アクリル成分の組成として、C1/C4系アクリルエステル共重合体、C4系アクリルエステル共重合体、C8系アクリルエステル共重合体等を含有するものが挙げられ、粘着性や耐熱性などの用途に合わせて、アクリル成分の組成と硬化剤との組合せを適宜選択すればよい。
上記アクリル系接着剤の具体例としては、例えば、SKダイン1506(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0056】
上記加飾フィルムが表面保護層を備える場合、上記表面保護層は必ずしも接着剤層を介して積層されている必要は無く、印刷層が形成された第1基材フィルム上に直接積層されていても良い。
【0057】
また、
図2に示す加飾フィルム10′のように、加飾フィルムが表面保護層を備える場合、第1基材フィルム11、印刷層13、接着剤層16及び表面保護層15からなる積層体は、積層体全体の破断伸びがアプリケーションフィルムの破断伸びより大きいことが好ましい。この場合、アプリケーションフィルムが確実にその目的を達成することができるからである。
【0058】
次に、上記加飾成形用積層体を製造する方法について説明する。
上記加飾成形用積層体は、例えば、加飾フィルムとアプリケーションフィルムとを別々に作製した後、両者を貼りあわせればよい。
(1)加飾フィルムの作製。
(1−1)まず、第1の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その後、得られた第1の塩化ビニル系樹脂組成物を製膜し、第1基材フィルムを作製する。
上記第1の塩化ビニル系樹脂組成物の調製は、所定量の各配合成分を、連続混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて溶融混練することにより行うことができる。
上記製膜は、カレンダー成形、押出成形、射出成形等によって行うことができる。
上記製膜は、カレンダー成形によって行うことが好ましい。カレンダー成形は、基材フィルムの厚さを均一にし易く、塩化ビニル系樹脂組成物の組成を問わず製膜することができ、更に大きいサイズ等種々のサイズの基材を製膜するのにも適しており、加えて小ロットへの対応も容易だからである。
上記カレンダー成形に用いられるカレンダー形式としては、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等が挙げられる。
また、カレンダー成形時のロール温度は、第1の塩化ビニル系樹脂組成物の組成に応じて適宜選択すれば良いが、通常、140〜190℃であり、好ましくは160〜180℃である。
【0059】
(1−2)次に、上記第1基材フィルムの片面に接着剤層を形成する。
上記接着剤層がホットメルト接着剤からなる場合、上記接着剤層の形成は、従来公知の方法により形成すれば良く、第1基材フィルムに直接ホットメルトアプリケータ等を用いて塗布して形成しても良いし、別途用意した支持体に一旦塗布した後、転写して形成して良い。また、上記支持体としてセパレータを用いれば、ホットメルト接着剤層を形成すると同時にセパレータも積層することができる。
【0060】
(1−3)次に、上記第1基材フィルムの接着剤層を形成した側と反対側の面に印刷層を形成する。上記印刷層は、上述したように溶剤系インク等を用いて形成する。
上記印刷層を形成する方法については、上述した通りである。
なお、上記接着剤層の形成、及び、上記印刷層の形成の順序は逆であってもよい。
【0061】
(1−4)その後、必要に応じて、上記印刷層の上に表面保護層を積層する。
例えば、表面保護層となる透明フィルムをカレンダー成形などによって作製した後、この透明フィルムの片面に接着剤を塗布し、これを第1基材フィルムに印刷層を形成した面に貼り付けて、接着剤層を介して表面保護層を積層する。
また、例えば、上記透明フィルムを作製した後、この透明フィルムを上記印刷層上に熱ラミネート法により直接貼り付けて表面保護層を積層してもよい。
これらの方法は、上記印刷層のデザインがパターン柄やベタ印刷柄である場合は、いずれの方法であっても好適に使用することができるが、上記デザインがロゴや写真画像である場合には、接着剤層を介して表面保護層を積層する方法が好ましい。熱ラミネート法により積層する場合、熱ラミネート時に第1基材フィルムに伸びが生じ、印刷層のデザインに歪みが生じることがあるからである。
このような工程を経ることにより、加飾フィルムを製造することができる。
【0062】
(2)アプリケーションフィルムの作製。
(2−1)まず、第2基材フィルムを作製する。
第2基材フィルムは、第1基材フィルムの作製と同様の方法で作製することができ、第2の塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、これをカレンダー成形等によって製膜すればよい。
【0063】
(2−2)次に、上記第2基材フィルムの片面に粘着剤層を形成する。
上記粘着剤層の形成は、例えば、支持体の片面に予め溶剤型又はエマルジョン型の粘着剤からなる粘着剤層を形成し、この粘着剤層の上に第2基材フィルムを貼り合わせて、粘着剤層を第2基材フィルムに転写する所謂転写法により行うことができる。
このような工程を経ることにより、アプリケーションフィルムを製造することができる。
【0064】
(3)加飾成形用積層体の作製
上述した工程を経て作製したアプリケーションフィルムを、上記加飾フィルムの印刷層(又は表面保護層)を形成した面に、従来公知の方法を用いて貼り付け、加飾成形用積層体とする。
このような工程を経ることに本発明の加飾成形用積層体を製造することができる。
【0065】
次に、本発明の加飾成形品の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図3A及び
図3Bに示した(a)〜(f)は、本発明の加飾成形品の製造方法を説明するための模式図である。
図4は、従来の加飾成形品の製造方法の一部を説明するための模式図である。
【0066】
本発明の加飾成形品の製造方法は、芯材の表面に、本発明の加飾成形用積層体を真空成形又は真空・圧空成形により貼り付けた後、上記アプリケーションフィルムを剥離することを特徴とする。
上記芯材としては、一般に加飾成形品に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、樹脂、金属、セラミックからなる芯材を使用することができる。
また、上記芯材は、その形状も特に限定されない。
【0067】
上記樹脂からなる芯材(樹脂芯材)の材質としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アイオノマー系樹脂、これらの樹脂に無機繊維等の各種添加剤が添加された樹脂組成物等が挙げられる。
【0068】
上記金属からなる芯材(金属芯材)の材質としては特に限定されず、例えば、鉄、アルミニウム、銅、SUS等が挙げられる。
【0069】
ここでは、真空・圧空成形により芯材の表面を加飾する場合を例に、本発明の加飾成形品の製造方法を工程順に説明する。
図3A及び
図3Bに示す真空・圧空成形装置30は、上下に成形室(上成形室32及び下成形室33)を具備し、これらに成形室内で、真空・圧空成形により芯材31の表面に加飾成形用積層体100を貼り付ける。
【0070】
(1)まず、上成形室32が上昇した状態(図示せず)で、下成形室33内のテーブル35に芯材31をセットし、芯材31に貼り付ける加飾成形用積層体100を下成形室33上面にセットする。その後、駆動装置34により上成形室32を降下させ、上下成形室内をそれぞれ気密状態とする(
図3A(a)参照)。
【0071】
(2)次に、上下成形室内をそれぞれ真空タンク37から配管38を介して真空吸引して真空状態(極低圧の状態)とする(
図3A(b)参照)。
その後、ヒーター36を点灯して加飾成形用積層体100の加熱を行う(
図3A(c)参照)。これにより、加飾成形用積層体100が軟化し、芯材31に表面形状に沿った貼り付けが可能となる。
【0072】
このとき、従来の真空・圧空成形では、
図4に示すように、加熱により軟化した加飾成形用積層体100′が自重により垂れ下がり、その結果、完成した加飾成形品において、印刷層の画像の歪みが発生する原因となっていた。
これに対して、本発明の加飾成形用積層体100は、アプリケーションフィルムを備えているため、本工程において自重による垂れ下がりがほとんど発生しない。
【0073】
なお、本発明においても加飾成形用積層体を加熱した際に、画像の歪みを引き起こさない程度の自重による垂れ下がりが発生する場合があるが、この場合は、配管38中のバルブ(図示せず)の開度などにより上下の成形室32、33の真空度を加飾成形用積層体が水平になるように調整を行ってもよい。但し、この調整を行うと工程数が増えるため、生産性の点では不利になる。
【0074】
(3)次に、下成形室33内のテーブル35を駆動装置34により上昇させ、軟化した加飾成形用積層体100に芯材31を接触させる(
図3B(d)参照)。
【0075】
(4)次に、上成形室32側の真空を開放して大気圧状態(下成形室33内は真空状態)とし、更に上成形室32内に圧空タンク39から圧縮空気を入れることにより、加飾成形用積層体100を芯材31に押圧させその形状に沿って貼り付ける(
図3B(e)参照)。
【0076】
(5)その後、上成形室32内及び下成形室33内をそれぞれ大気圧状態に戻し、上成形室32を上昇させ、加飾成形用積層体100で被覆された芯材31を取り出す(
図3B(f)参照)。
最後に、加飾成形用積層体100からアプリケーションフィルムを剥離することにより、加飾成形品を製造することができる。
【0077】
なお、ここで説明した方法は、真空・圧空成形を用いた方法であるが、真空成形を用いて、加飾成形用積層体を芯材に貼り付ける場合は、上記(4)における上成形室32内に圧空タンク39から圧縮空気を入れる工程を省略すればよい。
【0078】
このような方法で製造された加飾成形品もまた本発明の1つである。
上記加飾成形品の具体例は特に限定されず、携帯電話用やスマートフォン用、タブレット用のカバー等の電化製品、車両用内装品、バイクカウリング等、その表面に模様や図柄、文字などの意匠で加飾された種々の加飾成形品が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
<加飾フィルムの作製>
(作製例1:加飾フィルムAの作製)
(1)塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008:平均重合度800)100重量部に対し、可塑剤(ジェイプラス社製、DOP)23重量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬し、第1の塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。その後、逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、160〜180℃)を通して厚さ80μmの塩化ビニル系樹脂フィルム(第1基材フィルム)を製膜した。
【0081】
作製した第1基材フィルムについて、100℃での破断伸びを測定したところ165%であった。
上記破断伸びの測定は、引張試験機(島津製作所社製、AG−100NXplus)を使用し、JIS K 7162に準拠して行った。なお、引張時の雰囲気温度は、100℃とした。
【0082】
(2)次に、ホットメルト接着剤(日立化成ポリマー社製、ハイボン7663)を接着剤層としての厚さが40μmになるようにセパレータ上に塗工し、これを上記第1基材フィルムに転写し、第1基材フィルム、接着剤層及びセパレータがこの順で積層された積層体とした。
【0083】
(3)次に、第1基材フィルムの表面(接着剤層を形成した側と反対側の面)に下記の方法を用いて印刷層を形成した。
印刷装置としてミマキエンジニアリング製インクジェットプリンターCJV―30を使用し、溶剤系インクとしてミマキエンジニアリング製ES3インクを用いて、塩化ビニル系樹脂フィルムの表面にインクジェット印刷を行い、格子柄(格子柄の線幅:0.5pt(約0.175mm)、格子間隔:2mm)の印刷層を形成した。
上記(1)〜(3)の工程を経て、加飾フィルムAを作製した。
【0084】
(作製例2:加飾フィルムBの作製)
作製例1で作製した加飾フィルムAの印刷層上に、下記の方法で作製した厚さ80μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを、乾燥後の厚さが20μmの接着剤層(綜研化学社製、SK1506)を介して積層することにより、表面保護層が形成された加飾フィルムBを作製した。
上記塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008)100重量部に対し、可塑剤(ジェイプラス社製、DOP)15重量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬して塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物を逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、160〜180℃)を通して作製した。
【0085】
(作製例3:加飾フィルムCの作製)
作製例1で作製した加飾フィルムAの印刷層上に、厚さ50μmのアクリル系樹脂フィルム(三菱レーヨン社製、アクリプレン)を、乾燥後の厚さが20μmの接着剤層(綜研化学社製、SK1506)を介して積層することにより、表面保護層が形成された加飾フィルムCを作製した。
【0086】
<アプリケーションフィルムの作製>
(作製例4:アプリケーションフィルムAの作製)
(1)塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008:平均重合度800)100重量部に対し、可塑剤(ジェイプラス社製、DOP)15重量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬し、第2の塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。その後、逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、160〜180℃)を通して厚さ100μmの塩化ビニル系樹脂フィルム(第2基材フィルム)を製膜した。
【0087】
作製した第2基材フィルムについて、100℃での破断伸びを測定したところ130%であった。上記破断伸びの測定方法は、第1基材フィルムでの測定方法と同様である。
【0088】
(2)次に、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SKダイン 1495)100重量部に硬化剤(綜研化学社製、L−45)1.5重量部を混合して粘着剤組成物を調整し、これを乾燥後厚み20μmになるようにセパレータ上に塗工した後、上記第2基材フィルムに転写し、第2基材フィルム、粘着剤層及びセパレータがこの順で積層された積層体とした。
上記(1)及び(2)の工程を経て、アプリケーションフィルムAを作製した。
【0089】
(作製例5:アプリケーションフィルムBの作製)
第2基材フィルムを作製するための第2の塩化ビニル系樹脂組成物中の可塑剤の配合量を20重量部に変更した以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムBを作製した。
アプリケーションフィルムBを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、140%であった。
【0090】
(作製例6:アプリケーションフィルムCの作製)
塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008)100重量部に対し、可塑剤(ジェイプラス社製、DOP)5重量部、及び、アクリル化合物(カネカ社製、P530)3重量部を配合した第2の塩化ビニル系樹脂組成物を用いた以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムCを作製した。
アプリケーションフィルムCを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、130%であった。
【0091】
(作製例7:アプリケーションフィルムDの作製)
第2基材フィルムの厚さを50μmに変更した以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムDを作製した。
アプリケーションフィルムDを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、105%であった。
【0092】
(作製例8:アプリケーションフィルムEの作製)
第2基材フィルムの厚さを300μmに変更した以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムEを作製した。
アプリケーションフィルムEを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、150%であった。
【0093】
(作製例9:アプリケーションフィルムFの作製)
塩化ビニル系樹脂(カネカ社製、カネビニールS1008)100重量部に対し、可塑剤(ジェイプラス社製、DOP)30重量部を配合した第2の塩化ビニル系樹脂組成物を用いた以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムFを作製した。
アプリケーションフィルムFを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、180%であった。
【0094】
(作製例10:アプリケーションフィルムGの作製)
PMMA(メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体:三菱レーヨン社製、HBSシリーズ)からなる厚さ100μmのフィルムを第2基材フィルムとした以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムGを作製した。
アプリケーションフィルムGを構成する第2基材フィルムの100℃での破断伸びは、190%であった。
【0095】
(作製例11:アプリケーションフィルムHの作製)
粘着剤組成物として、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SK1439U)100重量部に硬化剤(綜研化学社製、E−50C)2.0重量部を混合した粘着剤組成物を用いた以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムHを作製した。
【0096】
(作製例12:アプリケーションフィルムIの作製)
粘着剤組成物として、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SK1473)100重量部に硬化剤(綜研化学社製、L−45)1.0重量部を混合した粘着剤組成物を用いた以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムIを作製した。
【0097】
(作製例13:アプリケーションフィルムJの作製)
粘着剤組成物として、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SKダイン1473H)100重量部に硬化剤(綜研化学社製、L−45)0.5重量部を混合した粘着剤組成物を用いた以外は、作製例4と同様にしてアプリケーションフィルムJを作製した。
【0098】
(実施例1〜10及び比較例1〜5)
(1)加飾成形用積層体の作製
上述した方法で作製した加飾フィルムA〜Cの1つに、アプリケーションフィルムA〜Jの1つを貼り合せて加飾成形用積層体を作製した。この工程では、勿論、アプリケーションフィルムのセパレータは剥離した。
加飾フィルムとアプリケーションフィルムとの組み合わせは、表1に記載した。なお、比較例1〜3では、アプリケーションフィルムを積層せず、加飾フィルムA〜Cそのものを加飾成形用積層体とした。
【0099】
(アプリケーションフィルムの粘着力の測定)
加飾フィルムに対するアプリケーションフィルムの粘着力を測定した。結果を表1に示した。粘着力の測定方法は上述した通りである。
【0100】
(2)加飾成形品の製造
次に、上記加飾成形用積層体を用いて、
図5に示したように、スマートフォン用カバー131の背面131a及び側面131bの一部(
図5中、ハッチング部分)を加飾し、加飾成形品を製造した。
具体的には、まず、真空・圧空成形機として、TOM成形機(布施真空社製、型番:NGF−0406)を使用し、ヒーターの加熱温度80〜120℃で、芯材(スマートフォン用カバーの基材)の背面及び側面に加飾成形用積層体を貼り付けた。この工程では、勿論、加飾成形用積層体のセパレータ(加飾フィルムのセパレータ)は剥離しておいた。
その後、真空・圧空成形機から加飾成形用積層体が貼り付けられた芯材を取り出し、アプリケーションフィルムの剥離と不要な部分のトリミングとを行い、加飾成形品とした。
【0101】
(評価)
実施例及び比較例で作製した加飾成形品について下記の評価を行った。結果を表1に示した。なお、下記(2)の評価はアプリケーションフィルムを剥離する前に行い、下記(3)の評価はアプリケーションフィルムを剥離する際に行い、下記(1)及び(4)の評価はアプリケーションフィルムを剥離した後に行った。
【0102】
(1)画像の歪み
真空・圧空成形前の加飾フィルムの印刷層の画像と、完成した加飾成形品における印刷層の画像とを対比し、以下の基準で評価した。
○:真空・圧空成形前の画像に対して、成形後の画像の画像寸法の歪みが0.50mm未満である。
△:真空・圧空成形前の画像に対して、成形後の画像の画像寸法の歪みが0.50mm以上、0.75mm未満である。
×:真空・圧空成形前の画像に対して、成形後の画像の画像寸法の歪みが0.75mm以上である。
なお、本評価において、「画像寸法の歪み」は下記の方法により算出した。
即ち、成形後の画像について、格子柄の各格子の縦及び横の長さを測定し、その最大値と、成形前の格子柄の格子間隔(2mm)との差を算出し、その値を画像寸法の歪みとした。
【0103】
また、参考のため、
図6、7に作製した加飾成形品のカラー写真を示す。
図6は、実施例1で作製した加飾成形品のカラー写真であり、
図7は、比較例1で作製した加飾成形品のカラー写真である。
これらの写真の比較からも、本発明の加飾成形用積層体を用いて加飾成形品を作製することにより画像に歪みを抑えることができることを把握することができる。例えば、
図7におけるA領域において、画像に大きな歪みが生じていることを確認することができる。
【0104】
(2)芯材への成形性
真空・圧空成形機から取り出したアプリケーションフィルムを剥離する前の成形品を観察し、下記に基準で評価した。
○:アプリケーションフィルムが加飾フィルムとともに芯材に対して端部まで追従している。
△:アプリケーションフィルムが加飾フィルムとともに芯材の端部まで追従しているが、芯材の端部でアプリケーションフィルムに破れが発生している。
×:芯材の上面は加飾することができたが、芯材の側面の一部(例えば、端部)に加飾フィルムが追従せず、加飾できない部分があった。
【0105】
(3)アプリケーションフィルムの剥離性
真空・圧空成形機から取り出した後、アプリケーションフィルムを剥離する際の剥離性につき、下記の基準で評価した。
○:スムーズに、かつ、加飾フィルム側に糊残りなく剥離することができる。
△:重剥離ではあるが、加飾フィルム側に糊残りなく剥離することができる。
×1:アプリケーションフィルムを破損することなく、剥離することができない。
×2:剥離することはできるが、加飾フィルム側に糊残りが発生する。
【0106】
(4)加飾面の外観
製造した加飾成形品の外観(シワ、型の発生の有無)を目視観察し、下記の基準で評価した。なお、本評価において、「シワ」とは、加飾成形用積層体を芯材に貼り付ける際に加飾フィルムに生じたものをいい、「型」とは、アプリケーションフィルムの剥離により加飾フィルムに生じた剥離跡をいう。
○:シワ、型がともに観察されない。
△:シワが観察される。
×:型が観察される。
【0107】
【表1】
【0108】
上記実施例及び比較例の結果より、本発明の加飾成形用積層体によれば、芯材への成形性を確保しつつ、画像の歪みの発生を抑えることができることが明らかとなった。また、本発明の加飾成形用積層体は、アプリケーションフィルムの剥離性及び加飾面の外観においても実用性のある特性を有していることが明らかとなった。