(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434295
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】重機周りの安全管理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
G08B21/02
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-251729(P2014-251729)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-115038(P2016-115038A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100078798
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 禮次郎
(73)【特許権者】
【識別番号】501429531
【氏名又は名称】株式会社マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(72)【発明者】
【氏名】三宅 ヨシタカ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一也
(72)【発明者】
【氏名】清水 大介
(72)【発明者】
【氏名】重永 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】横尾 敦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和則
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康成
(72)【発明者】
【氏名】川原 武
(72)【発明者】
【氏名】穂崎 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 聡
(72)【発明者】
【氏名】兼山 智樹
(72)【発明者】
【氏名】金本 雄一
【審査官】
吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−031660(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0151508(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0050444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F3/42−3/43
3/84−3/85
9/00−9/28
E05B1/00−65/44
65/46
65/462−85/28
G08B19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場内の作業員にそれぞれトリガーIDの受信に応じて当該トリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号を返信するIDタグを所持させ,前記作業現場内の重機に当該重機周囲の近接危険域を覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器と当該重機の運転席範囲を覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器とを搭載し,前記各IDタグからの応答信号を受信して重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されないときに重機周囲の近接危険域への作業員の接近を検出してなる重機周りの安全管理方法。
【請求項2】
請求項1の方法において,前記各IDタグからの応答信号を受信して重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されたときに,重機周囲の近接危険域への当該作業員IDの作業員の接近検出を回避してなる重機周りの安全管理方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において,前記各IDタグからの応答信号の受信を所定時間継続して前記運転席固有IDを含む応答信号中の作業員IDの数を検出してなる重機周りの安全管理方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの方法において,前記作業現場内の作業員が交代で稼働する複数の重機にそれぞれ前記第1発信器及び第2発信器を搭載し,前記重機毎に当該重機周囲の近接危険域への作業員の接近を検出してなる重機周りの安全管理方法。
【請求項5】
請求項4の方法において,前記運転席固有IDを複数の重機の共通IDとしてなる重機周りの安全管理方法。
【請求項6】
作業現場内の作業員にそれぞれ所持され且つトリガーIDの受信に応じて当該トリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号を返信するIDタグ,前記作業現場内の重機に搭載され且つ当該重機周囲の近接危険域を覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器,前記重機に搭載され且つ当該重機上の運転席範囲を覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器,及び前記各IDタグからの応答信号を受信して重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されないときに重機周囲の近接危険域への作業員の接近を検出する検出器を備えてなる重機周りの安全管理システム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて,前記検出器により,前記各IDタグからの応答信号を受信して重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されたときに,重機周囲の近接危険域への当該作業員IDの作業員の接近検出を回避してなる重機周りの安全管理システム。
【請求項8】
請求項6又は7のシステムにおいて,前記検出器により,前記各IDタグからの応答信号の受信を所定時間継続して前記運転席固有IDを含む応答信号中の作業員IDの数を検出してなる重機周りの安全管理システム。
【請求項9】
請求項6から8の何れかのシステムにおいて,前記作業現場内の作業員が交代で稼働する複数の重機にそれぞれ前記第1発信器及び第2発信器を搭載し,前記検出器により重機毎に当該重機周囲の近接危険域への作業員の接近を検出してなる重機周りの安全管理システム。
【請求項10】
請求項9のシステムにおいて,前記検出器を複数の重機にそれぞれ搭載してなる重機周りの安全管理システム。
【請求項11】
請求項10のシステムにおいて,前記検出器に,前記重機周囲の近接危険域からの応答信号を受信する第1受信機と重機運転席からの応答信号を受信する第2受信機とを含めてなる重機周りの安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重機周りの安全管理方法及びシステムに関し,とくに作業現場で稼働させる重機と作業員との接触を防止して安全を管理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バックホウ(油圧ショベル),ホイールローダ,ブルドーザ,移動式クレーン等の土木建設機械(以下,これらをまとめて重機という)を用いる土木・建築工事現場(以下,作業現場という)では,作業の安全を図るうえで重機と作業員との接触事故を防止することが重要な課題となっている。従来から,例えば重機に赤外線センサ,光センサ等の検知手段を取り付けて周囲の作業員との距離を検出し,その検出距離に応じて重機を停止させ又は重機の操作作業員(オペレータ)に警報を発するシステムが提案されている。ただし,この方法は,周囲の環境(例えば太陽光や風,電磁ノイズ等)の影響によって誤差を生じやすく,接近作業員の誤検出を生じやすい。これに対し,無線電波又は超音波によりID信号を発信するタグ(以下,IDタグということがある)を用いて重機周囲の接近作業員を検知するシステムが開発されている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
例えば特許文献2は,
図5(A)に示すように,作業現場の重機1に受信機21aと共に重機識別用のトリガーIDを発信する発信機22aを搭載し,そのトリガーIDに応答して作業員IDを返信するIDタグ30aを作業員8bに携帯させたトリガーID方式の検知システムを開示している。
図5(B)は,受信機21aと発信機22aと警報機23aとそれらの制御装置10aとを含み,制御装置10aの記憶手段16aに記録したトリガーIDを発信手段15aによりトリガー信号S1(
図5(D)参照)に変換して発信機22aから発信する重機1の車載装置を示す。
【0004】
また
図5(C)は,トリガー信号S1を受信する受信部(アンテナ)32と,入力した信号S1中のトリガーIDと記憶部37に記録した作業員IDとを組合せて応答信号S2(
図5(D)参照)を生成する処理部31と,その応答信号S2を返信する送信部35及びアンテナ36とを含むIDタグ(RFIDタグ)30aの構成を示す。なお,図示例のIDタグ30aは,受信したトリガーID(重機1の識別ID)を作業員8に提示する警報出力部33,作業員8の操作により警報を停止する停止部34,及び電源部(電池)38を含んでいる。
【0005】
図示例のトリガーID方式の検知システムは,作業員8bのIDタグ30aから返信された応答信号S2を車載の受信機21aで受信し,制御装置10aの受信手段14aにより信号S2からトリガーID及び作業員IDを抽出して検出手段13aへ入力する。また,検出手段13aにおいて応答信号S2中のトリガーIDと発信信号S1中のトリガーID(記憶手段16aに記録したトリガーID)とを対比し,両者が一致する場合に接近作業員8の存在を検知して警報機23aを駆動し,両者が相違する場合は警報機23aを駆動することなく信号S2を無視する。
【0006】
すなわち,トリガーID方式の検知システムによれば,重機1a,1b毎に識別可能なトリガーIDを周囲に発信して接近検知エリアTa,Tbを形成し,各重機1a,1bのトリガーIDと一致する応答信号S2のみを各重機1a,1bの接近作業員として検出することができるので,例えば
図6(A)に示すように複数の重機1a,1bが稼動する作業現場においても重機1a,1b毎に接近作業員を検知することができる。
【0007】
また,
図5(A)のような作業現場において,複数の作業員8a,8bが重機1の稼働・操作作業と重機周りでの作業とを不規則に交代する場合に,重機1の操作作業員8aのIDタグ30aがトリガーIDに応答して応答信号S2を返信してしまうと,重機1の周りに他の作業員8bが接近していないにも拘らず不要な警報が発生してしまう。そのような場合は,例えば特許文献3が開示するように,重機1の始動時に重機1の制御装置10aの記憶手段16aに操作作業員8aが自己の作業員IDを登録しておくことにより,不要な警報の発生を防止することができる。
【0008】
すなわち,トリガーID方式の検知システムにおいて,各重機1の制御装置10aに操作作業員8aの作業員IDを登録しておき,制御装置10aの検出手段13aにおいて応答信号S2中のトリガーIDと発信信号S1中のトリガーIDとを対比すると共に,応答信号S2中の作業員IDと登録された作業員IDとを対比し,トリガーIDが一致し且つ作業員IDが相違する場合にのみ警報機23aを駆動することにより,不要な警報の発生を防止して接近作業員検知の信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−163835号公報
【特許文献2】特開2012−053515号公報
【特許文献3】特開2014−031660号公報
【特許文献4】特開2014−177790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし,従来のトリガーID方式の検知システムは,例えば
図6(B)に示すように複数の重機1a,1bを接近させながら稼働させた場合に,一方の重機1aの接近検知エリアTaに他方の重機1bの操作作業員8aが入り込み,重機1bの操作作業員8aを重機1aの周りに接近する作業員8bと誤検出して不要な警報を発してしまう問題点がある。上述した各重機1a(又は1b)の操作作業員8aの場合と同様に,各重機1aの制御装置10aに他の重機1bの操作作業員8aの作業員IDも登録しておくことができれば,他の重機1bの操作作業員8aを接近する作業員8bと誤検出することは避けられる。ただし,複数の作業員8a,8bが各重機1の稼働・操作作業を不規則に交代するような作業現場において,各重機1の操作作業員8aを予め把握して作業員IDを登録しておくことは実際上不可能である。
【0011】
図6(B)において,各作業員8aが重機1a,1bの操作時に自己のIDタグ30aを停止する(キャンセルする)ように運用すれば,他の重機1bの操作作業員8aを接近作業員8bであると誤って検出することを避けることができる(特許文献1参照)。しかし,このような運用は,重機1の操作を他の作業員8bと交代して重機周りの作業を再開する際にIDタグ30aの停止(休止状態)を解除して動作状態に戻さなければならず,IDタグ30aを解除し忘れた作業員8の事故につながる危険性がある。複数の作業員8a,8bが複数の重機1a,1bの稼働・操作作業を不規則に交代するような作業現場において,各重機1a,1bの接近作業員8bを精度よく検知するためには,各重機1a,1bが相互に接近した場合でも,他の重機1bの操作作業員8aを重機1aの接近作業員8bであると誤って検出することを防止できる技術が必要である。
【0012】
そこで本発明の目的は,各重機の接近作業員と他の重機の操作作業員との誤検出を防止できる重機周りの安全管理方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1の実施例及び
図2の流れ図を参照するに,本発明による重機周りの安全管理方法は,作業現場E内の作業員8にそれぞれトリガーIDの受信に応じてそのトリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号S2(
図5(D)参照)を返信するIDタグ30を所持させ,作業現場E内の重機1にその重機周囲の近接危険域Tcを覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器22とその重機1の運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器25とを搭載し,各IDタグ30からの応答信号S2を受信して重機固有IDを含む応答信号S2が検知され且つその応答信号S2中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号S2が検知されないときに重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出してなるものである(
図2の流れ図のステップS102〜S110参照)。重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されたとき
は,重機周囲の近接危険域への
当該作業員IDの作業員の接近検出を回避してもよい。
【0014】
また,
図1の実施例を参照するに,本発明による重機周りの安全管理システムは,作業現場E内の作業員8にそれぞれ所持され且つトリガーIDの受信に応じて当該トリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号S2(
図5(D)参照)を返信するIDタグ30,作業現場E内の重機1に搭載され且つその重機周囲の近接危険域Tcを覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器22,重機1に搭載され且つその重機1上の運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器25,及び各IDタグ30からの応答信号S2を受信して重機固有IDを含む応答信号S2が検知され且つその応答信号S2中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号S2が検知されないときに重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出する検出器13(
図2の流れ図のステップS102〜S110参照)を備えてなるものである。検出器13により,重機固有IDを含む応答信号が検知され且つ当該応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されたとき
は,重機周囲の近接危険域への
当該作業員IDの作業員の接近検出を回避してもよい。
【0015】
好ましくは,
図2の流れ図のステップS106〜S108に示すように,検出器13により,各IDタグ30からの応答信号S2の受信を所定時間継続して運転席固有IDを含む応答信号S2中の作業員IDの数を検出する。作業現場E内の作業員が交代で稼働する複数の重機1にそれぞれ第1発信器22及び第2発信器25を搭載し,検出器13により重機1毎にその重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出することができる。この場合は,運転席固有IDを複数の重機の共通IDとすることができる。
【0016】
望ましい実施例では,複数の重機1を稼働させる場合に,検出器13を各重機1にそれぞれ搭載してその重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員の接近を検出する。更に望ましい実施例では,重機1毎に搭載する検出器13に,その重機1周囲の近接危険域Tcからの応答信号S2を受信する第1受信機21とその重機1の運転席5からの応答信号S2を受信する第2受信機24とを含める。
【発明の効果】
【0017】
本発明による重機周りの安全管理方法及びシステムは,作業現場E内の作業員8にそれぞれトリガーIDの受信に応じてそのトリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号S2を返信するIDタグ30を所持させると共に,作業現場E内の重機1にその重機周囲の近接危険域Tcを覆う強度で各重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器22とその重機1の運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器25とを搭載し,重機固有IDを含む応答信号S2が検知され且つその応答信号S2中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号S2が検知されないときにその重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出するので,次の効果を奏する。
【0018】
(イ)各重機1にその運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する発信器25を搭載し,各重機1の操作作業員(オペレータ)8の所持するIDタグ30に運転席固有IDと作業員IDとを組合せた応答信号S2を返信させることにより,その運転席固有IDを含む応答信号Sから各重機1の操作作業員8を識別することができる。
(ロ)従って,各重機1にその重機周囲の近接危険域Tcを覆う強度で各重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器22を搭載し,その重機固有IDを含む応答信号S2が検知され,且つ,その応答信号S2中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号S2が検知されないときに,その作業員IDを重機1周囲の近接危険域Tcに接近する作業員であると判定することができる。
(ハ)また,複数の重機1が稼働する作業現場において,重機固有IDを含む応答信号S2から重機1毎の接近作業員を検出し,運転席固有IDを含む応答信号から重機毎の操作作業員を検出することにより,重機1の接近作業員8と重機1の操作作業員8との誤検出を防止することができる。
(ニ)更に,従来のように各重機1の制御装置10に操作作業員8の作業員IDを登録していなくても,その運転席固有IDを含む応答信号Sから操作作業員8の作業員IDを検出することができ,各重機1の操作作業員8を接近作業員であると誤って検知することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【
図1】本発明による重機周りの安全管理システムの一実施例のブロック図である。
【
図2】本発明による重機周りの安全管理方法を示す流れ図の一例である。
【
図3】本発明で用いるIDタグの動作を示す流れ図の一例である。
【
図4】本発明の安全管理システムを重機が隣接して稼働する作業現場に適用した実施例の説明図である。
【
図5】従来の重機周りの安全管理システムの一例の説明図である。
【
図6】従来の作業員検知システムを重機が隣接して稼働する作業現場に適用した実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(A)は,複数の重機1を稼働させると共に,複数の作業員8a,8bが各重機1の操作と重機周りでの作業とを不規則に交代するような作業現場Eに本発明の安全管理システムを適用した実施例を示す。各重機1は必要時に何れかの作業員8a(又は8b)が始動して操作作業員(オペレータ)となって駆動し,必要な重機作業終了後に停止して作業員8aは周りでの作業に復帰する。図示例の重機1は,作業現場Eの任意場所へ移動するためのキャタピラ等の走行部2と,走行部2上に360度旋回可能に載置された本体部3とを有し,その旋回体3の前方に運転席5と可動腕部材6とを設けた油圧ショベル(バックホウ)である。
【0021】
以下,図示例の重機1を参照して本発明を説明するが,本発明の適用可能な作業現場Eは図示例に限定されるものではない。例えば,単独の重機1を二人以上の作業員8a,8bが不規則に交代しながら稼働するような作業現場Eにおいても本発明の安全管理システムは適用可能である。とくに本発明の安全管理システムは,後述するように運転席固有IDを含む応答信号Sから重機1を運転する操作作業員8の作業員IDを検出することができ,従来技術(例えば特許文献3)のように重機1の始動(運転交代)時に操作作業員8が手間をかけて作業員IDを登録する必要がないので,作業員8a,8bが重機1の運転を頻繁に交代するような作業現場Eにおいて有効である。
【0022】
図示例の安全管理システムは,作業現場E内で稼働させる複数の重機1にそれぞれ搭載してトリガー信号を発信させるトリガーID方式の第1発信器22及び第2発信器25と,作業現場E内の複数の作業員8にそれぞれ所持させるIDタグ30と,各IDタグ30からの応答信号を受信して各重機1の周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出する検出器13とを有する。図示例の検出器13は,複数の重機1にそれぞれ搭載した制御装置10に内蔵され,各重機1においてそれぞれ重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員の接近を検出している。ただし,検出器13は必ずしも各重機1に搭載する必要はなく,例えば各作業員8のIDタグ30の応答信号が受信できる作業現場E内の適当な位置に検出器13(又は検出器13を内蔵した制御装置10)を設置し,作業現場E内の複数の重機1の周囲危険域への作業員8の接近をまとめて検出することも可能である。
【0023】
各作業員8に所持させるIDタグ30は,トリガーIDを受信してそのトリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号S2(
図5(D)参照)を返信するトリガーID方式のものであり,必要な通信距離が確保できるパッシブ型又はアクティブ型のものを任意に選択して使用できる。望ましくは,電源(電池)を内蔵させて十分長い通信距離(例えば5〜20m程度)を確保する。好ましいIDタグ30の一例は,
図5(C)を参照して上述したもの同様に,受信部(アンテナ)32と送信部35及びアンテナ36と作業員IDを記録する記憶部37とを有し,電源部38が内蔵されたセミアクティブ型のRFIDタグである。
【0024】
図3は,IDタグ30による応答動作の流れ図の一例を示す。
図3のステップS201は,IDタグ30がトリガー信号S1(
図5(D)参照)の受信により起動され,トリガー信号S1を受信するまで待機状態であることを示している。トリガー信号S1を受信すると,ステップS202において信号S1中のトリガーIDを抽出し,ステップS203において抽出したトリガーIDと記憶部37に記録した作業員IDとを組合せて応答信号S2(
図5(D)参照)を生成し,ステップS204において生成した応答信号S2を返信する。
【0025】
後述するように本発明において作業員IDのIDタグ30は,重機固有IDをトリガーIDとする第1発信器22からのトリガー信号S1,及び運転席固有IDをトリガーIDとする第2発信器25からのトリガー信号S1の何れかによって起動されるが,何れのトリガー信号S1を受信した場合も応答動作は共通であり,
図3のステップS201において何れかのトリガー信号が受信されるまで待ち合わせる。また,ステップ203におけるトリガーIDと作業員IDとの組合せ方法(生成方法)にとくに制限はなく,後述するように応答信号S2の受信側で両者を分離抽出することが可能である任意の方法で組み合わせることができる。
【0026】
図1(C)は,各重機1に搭載する制御装置10のブロック図を示す。図示例の制御装置10には,重機1の周囲の近接危険域Tcを覆う強度でトリガー信号S1を送出する第1発信器22と,重機1の運転席範囲Tdのみを覆う強度でトリガー信号S1を送出する第2発信器25と,IDタグ30から応答信号S2を受信する受信機(アンテナ)21と,重機1の運転席5に警報を発生する警報機23とが接続されている。
【0027】
図1(B)に示すように,第1発信器22は,例えば運転席から見て死角となりうる近接危険域Tcを重機1の周囲に設定できる重機1上の部位(例えば本体部3)に設置して,その近接危険域Tcの全体に届く強度でトリガー信号S1を送出するようにしてもよい。また,重機の最大作業の範囲を近接危険域Tcとして,その近接危険域Tc全体に届く強度でトリガー信号S1を送出するようにしてもよい。これに対して第2発信器25は,重機1の運転席範囲Tdのほぼ中心部位(例えば運転席5内の天井)に設置され,例えば運転席5を覆う強度でトリガー信号S1を送出する。運転席範囲Tdは,接近危険域Tcに含まれる内側領域とすることができ,例えば運転席5のみを覆う範囲として設定すれば足りるが,運転席5の外側に食み出した部分を含んでいてもよい。
【0028】
また,第2発信器25の運転席範囲Tdは,第1発信器22の近接危険域Tcから若干外れていてもよい。例えば重機1が振動ローラやブルドーザの場合,重機の作業範囲は前後方向の一方向となるので,近接危険域Tcは前後方向を中心にして設定されるが,運転席範囲Tdは近接危険域Tcの内側領域に限定されず,近接危険域Tcより相対的に小さいが近接危険域Tcの外側を含む領域として設定してもよい。なお,運転席5の外側へ食み出すように運転席範囲Tdを広めに設定した場合は,運転席に乗席する作業員の検出漏れが少なくなる利点があるものの,逆に運転席に乗席していないが運転席に近接している作業員のIDタグを起動してしまうこともあり得るので,後述するような対策を施すことが有効である(
図2の流れ図のステップS108〜S109参照)。
【0029】
望ましくは,第1発信器22の発信周期と第2発信器25の発信周期とを相違させ,両発信器22,25から発信されるトリガー信号S1の干渉を防止する。後述するように本発明では,第1発信器22からのトリガー信号と第2発信器25からのトリガー信号との両者によって作業員IDのIDタグ30を起動するが,両発信器22,25の発信周期が重なると,IDタグ30が両発信器22,25からのトリガー信号を同時に受信されて応答動作が不安定になりうる。両発信器22,25からのトリガー信号S1の何れに対してもIDタグ30から確実の応答信号S2を返信させるためには,第1発信器22の発信周期と第2発信器25の発信周期とを相違させ,トリガー信号の同時受信を避けることが望ましい。
【0030】
また,このように両発信器22,25の発信周期を相違させたうえで,後述するように受信機21による各IDタグ30からの応答信号S2の受信時に第1発信器22及び第2発信器24の何れの発信周期よりも長い所定時間を待ち合わせることにより,両発信器22,25からの応答信号S2を一層確実に受信することができる。更に望ましくは,第1発信器22及び第2発信器25の発信周期,及び応答信号S2を待ち合わせる受信機21の所定受信時間(ホールド時間)を,作業現場Eにおいて適宜に調節可能とする。
【0031】
また,
図1(C)の制御装置10は,各重機固有ID(C)及び各運転席固有ID(D)を記憶する記憶手段16と,その重機固有ID(C)をトリガーIDとするトリガー信号を第1発信器22経由で送出する発信手段15と,その運転席固有ID(D)をトリガーIDとするトリガー信号を第2発信器25経由で送出する発信手段18と,そのトリガー信号に対するIDタグ30の応答信号を受信機21経由で受信する受信手段14と,その応答信号により重機周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出する検出器(検出手段)13とを有する。制御装置10をコンピュータとした場合は,記憶手段16をコンピュータの一次メモリ又は二次メモリとし,発信手段15及び18,受信手段14,検出器13をコンピュータの内蔵プログラムとすることができる。
【0032】
重機固有IDは,作業現場Eで稼働する重機1を識別するためのものであり,複数の重機1を稼働させる場合は各々に異なる重機固有IDを付与する。また,運転席固有ID(D)は,重機1の運転席の乗員(操作作業員8)を識別するためのものであり,作業弁場E内に複数の重機1を稼働させる場合は各重機1の運転席に異なる重機固有IDを付与することが望ましい。各重機1の運転席を異なる重機固有IDとすることにより,各重機1を運転する操作作業員8を識別できる。また,重機固有IDと共に,各重機1の運転席の定員が異なる場合は,各重機1の運転席の定員を制御装置10の記憶手段16に記憶しておくことが望ましい。ただし,各重機1の操作作業員8の識別を必要とせず,重機1の運転席に乗席する運転作業員8であるか否かを運転席範囲Tdに送出されるトリガー信号S1により確実に過不足なく検出できるのであれば,運転席固有IDを複数の重機の共通IDとしてもよい。
【0033】
望ましくは,図示例のように,制御装置10に,重機1周囲の近接危険域Tcから応答信号S2を受信する第1受信機(アンテナ)21と,重機1の運転席5から応答信号S2を受信する第2受信機(アンテナ)24とを含める。第1受信機21は近接危険域TcのIDタグ30からの応答信号S2を受信するものであり,第2受信機24は運転席範囲TdのIDタグ30からの応答信号S2を受信するものであり,上述したように通信距離の十分長いIDタグ30を使用すれば,例えば重機1上の本体部3に設置した受信機21のみによって近接危険域Tc及び運転席範囲TdのIDタグ30からの応答信号S2を共に受信することも可能であり,その場合は受信機24を省略できる。ただし,
図1(A)に示すように重機1の運転席5は金属製枠体に囲まれていることがあり,運転席5のIDタグ30からの応答信号S2が金属製枠体を越えて本体部3の受信機21に届かないおそれがあるので,そのような場合は運転席5から応答信号S2を受信する第2受信機24を併設することにより,IDタグ30からの応答信号S2の受信漏れを避けることが期待できる。
【0034】
図2は,
図1の制御装置10を用いて,制御装置10を搭載した重機1周囲の近接危険域Tcへの作業員8の接近を検出する本発明の危険管理方法の流れ図を示す。以下,
図2の流れ図を参照して
図1のシステムの作用を説明する。
図2のステップS101は,制御装置10の検出器15により,上述したように各重機1の発信手段15及び第1発信器22を介して周囲の近接危険域Tcを覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとするトリガー信号(重機固有トリガーID)S1を所定発信周期で送出し,同時に各重機1の発信手段18及び第2発信器25から運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとするトリガー信号(運転席固有トリガーID)S1を所定発信周期で送出する処理を示す。両トリガー信号S1を発信しながら,ステップS103において制御装置10の検出器15により,重機1の受信機21及び受信手段14を介して,搭載重機の周囲近接危険域Tc及び運転席範囲TdからIDタグ30の応答信号S2が受信されるのを待ち合わせる。
【0035】
図2のステップ103〜S110は,重機1の周囲近接危険域Tc及び運転席範囲Tdからの応答信号S2が受信されたときの処理を示す。先ずステップS104おいて応答信号S2中のトリガーID及び作業員IDを抽出し,ステップS105において受信したトリガーIDが記憶手段16に記録した重機固有IDと一致するか否かを判定する。両者が相違する場合は,受信した応答信号S2が搭載重機の運転席範囲Td又は他の重機の周囲近接危険域Tc(又はその重機の運転席範囲Td)のIDタグ30から発信されたものであり,搭載重機の周囲近接危険域TcのIDタグ30から発信されたものではないから,応答信号S2を無視してステップS103へ戻る。
【0036】
図2のステップS105において,受信したトリガーIDと記憶手段16に記録した重機固有IDとが一致するときはステップS106へ進み,更に所定時間にわたり応答信号S2の受信を継続し,受信した応答信号S2を例えば記憶手段16に蓄積して記憶する。ステップS106において待ち合わせる応答信号S2は,第2発信器25のトリガー信号S1に応答するものであるから,上述したステップS104〜S105と同様に,受信した応答信号S2中のトリガーID及び作業員IDを抽出すると共にそのトリガーIDが運転席固有IDと一致するか否かを判定し,トリガーIDが運転席固有IDと相違する応答信号S2は無視して累積しなくてもよい。ただし,運転席固有IDと相違する応答信号S2を累積しておいても構わない。
【0037】
ステップS106において応答信号S2の受信を待ち合わる所定時間は適当に設定できるが,上述したように第1発信器22の発信周期と第2発信器25の発信周期とを相違させた場合は,ステップS107において両発信器22,24の何れの発信周期よりも長い時間待ち合わせることが望ましく,第2発信器25のトリガー信号S1に対する応答信号S2の受信漏れを避けることができる。
【0038】
図2のステップS107は,ステップS104で抽出した作業員IDと記憶手段16に記録した運転席固有IDとを組み合わせた応答信号S2が受信されたか否かを判断する処理を示す。そのような応答信号S2が受信されないときは,ステップS103において受信された応答信号S2は重機1を運転する操作作業員8から返信されたものではなく,重機1の周囲の近接危険域Tcの作業員8から応答されたものであると判定し,ステップS110へ進んで制御装置10の警報機23を駆動する。換言すると,ステップS107において,そのような応答信号S2が受信されたときは,重機1を運転する操作作業員8から返信されたものであって,重機1の周囲の近接危険域Tcの作業員8から応答されたものではないと判定して警報機23の駆動(ステップS110)を回避することができる。
【0039】
図2のステップS108〜S109は,作業員IDと運転席固有IDとを組み合わせた応答信号S2が受信されたときに,それが重機1を運転する操作作業員8からの応答信号ではないことを判定・確認する処理を示す。先ずステップS108において,そのような運転席固有IDを含む作業員IDを検出し,その数を検出する。詳しくは,運転席固有ID毎の作業員IDの数を検出する。例えば記憶手段16に累積した運転席固有IDを含む応答信号S2のうち,異なる作業員IDの数を検出する。例えば,ステップS108において運転席固有IDを含む作業員IDの数が1名であると検出されたときは,ステップS103及びS107で検出された応答信号は重機1を運転する操作作業員8から返信されたものであると判定することでき,警報機23を駆動する必要がないのでステップS102へ戻る。
【0040】
図2のステップS109は,ステップS108で検出された運転席固有IDを含む作業員IDの数と重機1の運転席の定員数とを比較する処理を示す。例えば重機1の運転席が定員1名であり,ステップS108において検出された運転席固有IDを含む作業員IDの数も1名であるときは,ステップS103及びS107で検出された応答信号は重機1を運転する操作作業員8から返信されたものであると判定してステップS102へ戻る。他方,ステップS108において検出された運転席固有IDを含む作業員IDの数が2名以上であるときは,運転席の定員を超えており,重機1を運転する操作作業員8のタグだけでなく,重機1の近接危険域Tcの作業員8のタグが第2発信器25のトリガー信号S1に応答した可能性がある。そのため,重機1の近接危険域Tcに作業員8が存在する可能性があると判定し,ステップS110へ進んで制御装置10の警報機23を駆動する。
【0041】
図2のステップS109のように重機1の運転席の定員数と比較することにより,例えば重機1の運転席の定員が2名以上であっても,重機1の運転席の乗員(操作作業員8)と重機1に接近する近接危険域Tcの作業員8とを区別することができる。すなわち,例えば重機1の運転席が定員2名であり,ステップS108において検出された運転席固有IDを含む作業員IDの数も2名以下のときは,ステップS103及びS107で検出された応答信号は重機1の操作作業員8から返信されたものであると判定し,警報機23を駆動せずにステップS102へ戻ることができる。他方,ステップS108において検出された運転席固有IDを含む作業員IDの数が3名以上であるときは,運転席の定員を超えているので,重機1の近接危険域Tcに作業員8が存在する可能性があると判定し,警報機23を駆動することができる。したがって,運転席に乗席する作業員の検出漏れを無くすために,運転席範囲Tdを広めに,外側に食み出した部分を含むように設定した場合であっても,運転席に近接していて,運転席には乗席していない近接危険域Tcにいる作業員を確実に危険な作業員として検出して警報できる。
【0042】
図2のステップS110は,制御装置10の警報機23を駆動して重機1の運転席5に警報を発生する処理を示す。必要に応じて,
図1に示すように制御装置10にモニタ20を接続し,近接危険域Tcへの侵入が検出された作業員8の作業員ID等を運転席5に表示することも可能である。警報等によって重機1の操作作業員8に周囲危険域Tcの接近作業員8の存在を知らせることにより,重機1と接近作業員8との接触事故を未然に防止することができる。
【0043】
ステップS110において警報を発生したのちステップS102へ戻り,安全管理を終了するか否かを判定する。安全処理を継続する場合は,ステップS102からステップS103へ進み,上述したステップS103〜S110を繰り返す。安全処理を終了する場合はステップS111へ進み,各重機1からの重機固有トリガーID信号S1の送出を停止すると共に,運転席固有トリガーID信号S1の送出を停止する。
【0044】
図4(A)は,
図2の流れ図のステップS103〜S110を繰り返すことにより,
図6(A)を参照して上述した従来のトリガーID方式と同様に,複数の重機1a,1bが稼動する作業現場において重機1a,1b毎にそれぞれ接近作業員8を検知することができることを示す。また,
図2の流れ図によれば,各重機1の操作作業員8の所持するIDタグ30に運転席固有IDと作業員IDとを組合せた応答信号S2を返信させ,その運転席固有IDを含む応答信号Sから各重機1の操作作業員8を識別することができるので,
図4(B)のように複数の重機1a,1bを接近させながら稼働させた場合においても,各重機1a,1bの周囲危険域Tcの接近作業員8と各重機1a,1bの操作作業員8との誤検出を防止することができる。
【0045】
こうして本発明の目的である「各重機の接近作業員と他の重機の操作作業員との誤検出を防止できる重機周りの安全管理方法及びシステム」の提供を達成できる。
【0046】
以上,複数の作業員8a,8bが重機1の操作作業と重機1の周囲作業とを不規則に交代するような作業現場Eに適用した本発明の実施例について説明したが,作業員8の作業はこれらに限らず,例えば重機1以外の運搬機械(ダンプトラック等)の運転作業が含まれることがある。このような作業員8が運搬機械を運転しながら重機1の近接危険域Tcを通過した場合に,運搬機械上の作業員8の返信する応答信号S2と,重機周囲で作業する作業員8の返信する応答信号S2とを識別できなければ,重機周囲の近接危険域Tcに作業員8が接近していないにも拘らず,重機周囲を通過する運搬機械上の作業員8を誤検出して不要な警報を発生させる可能性がある。本発明の安全管理システム(
図2の流れ図)によれば,そのような運搬機械に上述した第2発信器25を搭載することにより,重機周囲で作業する作業員8と運搬機械上の作業員8とを識別することができる。
【0047】
すなわち,ダンプトラック等の運搬機械は,安全管理上の理由から重機1のように近接危険域Tcの設定を必要としないことがあり,近接危険域Tcを覆う強度でトリガー信号S1を送出する第1発信器(重機固有IDをトリガーIDとする第1発信器)22の搭載を必要としない場合がある。しかし,そのような場合でも,運転席範囲Tdを覆う強度でトリガー信号S1を送出する第2発信器(運転席固有IDをトリガーIDとする第2発信器)25を運搬機械に搭載しておけば,運搬機械を運転する作業員8のIDタグ30から,運転席固有IDを含む応答信号S2を返信させることができる。運搬機械上の作業員8が運転席固有IDを含む応答信号S2を返信すれば,
図2の流れ図のステップS103において運搬機械上の作業員8から重機固有IDを含む応答信号S2を受信した場合であっても,ステップS105〜S109において重機周囲の近接危険域Tcの作業員8から応答されたものではないと判定して,警報機23の不要な駆動を回避することができる。なお,第2発信器25と共に第1発信器22を搭載したダンプトラック等の運搬機械は,本発明において重機1とみなすことができる。
【符号の説明】
【0048】
1…重機 2…走行部
3…本体部 5…運転席
6…可動腕部材 8…作業員
10…制御装置
13…検出手段(検出器) 14…受信手段
15…発信手段(発信器) 16…記憶手段
17…受信手段 18…発信手段(発信器)
20…モニタ 21…応答信号受信機(受信アンテナ)
22…トリガー信号発信機 23…警報機
24…応答信号受信機(受信アンテナ) 25…トリガー信号発信機
30…IDタグ 31…処理部
32…受信部 33…警報出力部
34…停止部 35…送信部
36…送信アンテナ 37…記憶部
38…電源部
C…重機固有ID D…運転席固有ID
E…作業現場
Tc…重機固有トリガーID到達範囲
Td…運転席固有トリガーID到達範囲