特許第6434303号(P6434303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434303
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】入浴装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20181126BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   A61H33/00 310N
   A47K3/12
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-263735(P2014-263735)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123421(P2016-123421A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏文
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−322901(JP,A)
【文献】 特開平11−009641(JP,A)
【文献】 特開平11−056956(JP,A)
【文献】 特開2000−296165(JP,A)
【文献】 特開2006−204451(JP,A)
【文献】 特開2006−325685(JP,A)
【文献】 特開2009−022545(JP,A)
【文献】 特開2013−169443(JP,A)
【文献】 特開2014−066011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A47K 3/12
A47K 3/022
A47K 3/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、入浴者が着座するための着座部と、前記着座部を前記浴槽内へ移動させるための移動機構と、を備え、
前記着座部は、前記浴槽の長手方向の一端部上に配置され、
入浴者が前記着座部を使って入浴する際は、前記着座部は、入浴者が着座した状態で前記
移動機構によって前記浴槽内へ移動され、
入浴者が前記着座部を使うことなく入浴する際は、前記着座部は、前記浴槽の長手方向の
一端部上で待機しており、
さらに、前記着座部は、入浴者が座るためのシート部と、前記シート部に座っている入浴者の下腿を受けるための下腿受け部と、を含み、
前記下腿受け部は、前記シート部または前記移動機構に対して回動可能に連結され、
前記着座部が、前記シート部に入浴者が座った状態で、前記浴槽内に移動する際、入浴者
は、前記シート部と共に前記下腿受け部によって下腿を受けられながら前記浴槽内へ移動
される、ことを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記浴槽の長手方向の一端部において、その上端面は、前記シート部を、前記浴槽の内壁面より外側の位置で水平姿勢の状態を保って配置できる広さを有する、ことを特徴とする請求項に記載の入浴装置。
【請求項3】
前記着座部が、前記浴槽の底面へ下降したとき、前記シート部と前記下腿受け部とにより形成される形状が、前記浴槽の長手方向において仮名文字の「へ」の字形状になる、ことを特徴とする請求項またはに記載の入浴装置。
【請求項4】
前記シート部は、前記浴槽の短手方向にスライド可能に設けられており、入浴者は、前記シート部を自身に近づけるようにスライドさせ、前記スライドした前記シート部に着座することが可能になっている、ことを特徴とする請求項ないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項5】
前記シート部は、前記浴槽の短手方向にスライド可能、かつ、前記浴槽に対して回転可能に設けられ、入浴者は、前記シート部をスライドさせて自身に近づけ、回転させて前記シート部に着座することが可能になっている、ことを特徴とするないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項6】
前記浴槽は、その短手方向の他端側に第一手摺部を有している、ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項7】
前記着座部は、前記シート部の一端側または両端側に第二手摺部を有している、ことを特徴とする請求項ないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項8】
前記移動機構の動きを指示するための指示部を有する、ことを特徴とする請求項1ないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項9】
前記下腿受け部は、前記浴槽の底面側の一端に前記着座部に着座している入浴者の足を載せるための足載せ部を有する、ことを特徴とする請求項ないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項10】
前記着座部は、入浴者が凭れ掛るための背凭れ部を有する、ことを特徴とする請求項1ないしのうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項11】
前記着座部が、前記浴槽の長手方向の一端部上で待機しているときは、前記移動機構は、前記着座部によって覆われている、ことを特徴とする請求項1ないし10のうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【請求項12】
前記浴槽の長手方向の一端部は、前記浴槽の短手方向の途中の一部に前記移動機構を収納できる凹部を有し、前記着座部が、前記浴槽の長手方向の一端部上で待機しているときは、前記凹部の上方は、前記着座部の前記シート部によって覆われ、かつ、前記凹部における前記浴槽の内側は、前記着座部の前記下腿受け部によって覆われて、前記移動機構は外部から隠される、ことを特徴とする請求項11に記載の入浴装置。
【請求項13】
前記着座部と前記浴槽との間に形成されている隙間、または、前記浴槽に搬送車が横付けされた際、前記着座部と前記搬送車との間に形成されている隙間を無くすための補助部材を有する、ことを特徴とする請求項ないし12のうちのいずれか一項に記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護老人や、病人、その他の入浴者(以下、「入浴者」という)の入浴に用いることができる入浴装置に係り、より詳しくは、入浴者が、着座部を使用して入浴すること、また、着座部を使用することなく、入浴することができる入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、平面視矩形形状の浴槽と、この浴槽に設けた座部(着座部)と、この着座部を昇降させる駆動機構部と、を備えた入浴装置が開示されている。
【0003】
この入浴装置において、着座部は、浴槽の内壁に沿う状態で、その全体が浴槽内側の上端に配置されている。駆動機構部は、前記内壁よりも外側に設けられ、着座部をその内壁に沿って浴槽内で昇降させる。
【0004】
入浴者は、浴槽の内壁に沿って、その上端で待機している着座部に座った後、駆動機構部によって浴槽の底面へ移動されることにより入浴する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の入浴装置においては、入浴者が着座部を使用しないで直接入浴する場合、着座部は浴槽の内側の上端で待機している状態となっている。この待機状態では、着座部は、浴槽のほぼ中央に近い内側に張り出しているため、着座部は、入浴者が直接入浴する際には、その入浴の邪魔になる。このため、入浴者は、直接入浴する都度、着座部を浴槽の底面まで移動させざるを得ず、直接入浴に相当な手間がかかり、使い勝手が良くなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、入浴者が着座部を使って入浴することができる一方で、着座部を使うことなく直接入浴する際は、着座部が邪魔にならず、また、着座部を浴槽底面に下降させる手間が不要で、使い勝手が良い入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述の課題を解決するため、本発明に係る入浴装置は、
浴槽と、入浴者が着座するための着座部と、前記着座部を前記浴槽内へ移動させるための移動機構と、を備え、
前記着座部は、前記浴槽の長手方向の一端部上に配置され、
入浴者が前記着座部を使って入浴する際は、前記着座部は、入浴者が着座した状態で前記
移動機構によって前記浴槽内へ移動され、
入浴者が前記着座部を使うことなく入浴する際は、前記着座部は、前記浴槽の長手方向の
一端部上で待機しており、
さらに、前記着座部は、入浴者が座るためのシート部と、前記シート部に座っている入浴者の下腿を受けるための下腿受け部と、を含み、
前記下腿受け部は、前記シート部または前記移動機構に対して回動可能に連結され、
前記着座部が、前記シート部に入浴者が座った状態で、前記浴槽内に移動する際、入浴者
は、前記シート部と共に前記下腿受け部によって下腿を受けられながら前記浴槽内へ移動
される、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、着座部は、浴槽の内壁より外側となる浴槽の長手方向の一端部上に配置されているので、入浴者が着座部を使うことなく入浴するとき、着座部は、その入浴の邪魔にならない。そのため、入浴者は、着座部を浴槽の底面に移動させず、浴槽の長手方向の一端部上でそのまま待機させておくことができる。このように、この構成によれば、入浴者は、入浴に際して、着座部を浴槽底面に下降させる手間がかからず、使い勝手が良い。
【0010】
特に、この構成によれば、入浴者が、着座部に座って入浴する場合、着座部が浴槽の長手方向の一端部上で待機しているので、着座部に座って、移動機構により着座部を浴槽内に下降させて入浴することができる。また、着座部を使用しない入浴者は、入浴するに際して、浴槽の長手方向の一端部上で待機している着座部を腰掛けとして使うことができて便利である。
【0011】
このように、本発明の入浴装置は、入浴者が着座部に座って入浴するときも、また、入浴者が着座部を使うことなく直接入浴するときも、そのいずれにも、使い勝手が良い入浴装置である。
【0013】
さらに、この構成によれば、入浴者がシート部に着座し、下腿受け部で下腿を受けられた状態で、着座部が浴槽内下方に下降すると、その下降と共に、入浴者の下腿は下腿受け部によって自動的に押し上げられる。これにより、入浴者が入浴する際、入浴者の足は、浴槽の底面との間で、距離が保たれる。そのため、入浴者の足が、シート部と浴槽の底面との間で挟まれることを防止することができ、これにより入浴者は、安全に入浴することができる。
【0014】
移動機構は、特に限定されないが、その一例として、例えば、平行リンク機構がある。この平行リンク機構によれば、シート部を、水平姿勢を保った状態で平行に昇降移動させることができて好ましい。また、着座部が浴槽の長手方向の一端部上で待機しているとき、待機しているのは、着座部の本体でもあるシート部となる。また、シート部の一部が、浴槽の内側にあっても、直接入浴する入浴者の入浴動作の邪魔にならない限り、本発明に含むことができる。
【0015】
()好ましくは、前記浴槽の長手方向の一端部において、その上端面は、前記シート部を前記浴槽の内壁面より外側の位置で、水平姿勢の状態を保って配置できる広さを有する。
【0016】
この構成によれば、着座部が浴槽の長手方向の一端部上で待機しているときは、着座部のシート部は、浴槽の長手方向の一端部の上端面に水平姿勢の状態で安定して待機することができる。そのため、入浴者は、着座部に、ぐらついたり傾いたりすることなく、安定して座ることができる。また、シート部が内壁面より外側に配置されるので、着座部を使うことなく、入浴するときの邪魔にならない。
【0017】
()好ましくは、前記着座部が前記浴槽の底面へ下降したとき、前記シート部と前記下腿受け部とにより形成される形状が、浴槽長手方向において仮名文字の「へ」の字形状になる。
【0018】
この構成によれば、着座部が浴槽の底面へ下降した状態では、シート部は斜め上方へ傾斜し、下腿受け部は、斜め下方へ傾斜した状態となる。そのため、入浴者はシート部上を下腿受け部方向へずれて滑っていくことが防止され、シート部に安定して着座することができる。これによって、入浴者は、浴槽内へ水没し難くなり、入浴者は、より安全に入浴することができる。
【0019】
()好ましくは、前記シート部は、前記浴槽の短手方向にスライド可能に設けられており、入浴者は、前記シート部を自身に近づけるようにスライドさせ、前記スライドした前記シート部に着座することが可能になっている。
【0020】
この構成によれば、入浴者がシート部に座る際、シート部を自身の方向へ近づけるようにスライドさせ、このスライドによって自身に近づいたシート部に着座すると、シート部を浴槽へスライドさせことができる。そのため、入浴者は、シート部に座り易くなる。
【0021】
()好ましくは、前記シート部は、前記浴槽の短手方向にスライド可能、かつ、前記浴槽に対して回転可能に設けられ、入浴者は、前記シート部をスライドさせて自身に近づけ、回転させて前記シード部に着座することが可能になっている。
【0022】
この構成によれば、入浴者がシート部に座る際、シート部を自身の方向へ近づけることでき、かつシート部を自身の方向へ回転させることができる。そのため、入浴者をシート部に座り易くすることができる。
【0023】
()好ましくは、前記浴槽は、その短手方向の他端側に第一手摺部を有している。
【0024】
この構成によれば、入浴者は、浴槽の短手方向の一端側へスライドされたシート部に座り、第一手摺部を掴んで手元側へ引くことによって、シート部を浴槽の短手方向の他端側へスライドさせることができる。そのため、入浴者は、シート部に着座して、浴槽の短手方向の一端側から他端側へ移動し易い。
【0025】
()好ましくは、前記着座部は、そのシート部の一端側または両端側に第二手摺部を有する。
【0026】
この構成によれば、入浴者は第二手摺部を掴んで着座部に安全に着座することができる。また、第二手摺部がシート部の一端側または両端側に設けられているので、入浴者は、シート部への着座や、シート部の浴槽内への下降に際しては、第二手摺部によって、姿勢を維持できるように保護され、安全に入浴することができる。
【0027】
()好ましくは、前記移動機構の動きを指示するための指示部を有する。
【0028】
この構成によれば、入浴者は指示部によって移動機構の動きを指示することができるので、より簡易に入浴することができる。
【0029】
()好ましくは、前記下腿受け部は、前記浴槽の底面側の一端に前記着座部に着座している入浴者の足を載せるための足載せ部を有する。
【0030】
この構成によれば、足載せ部によって、入浴者がシート部に着座し、足載せ部に足を載せた状態で、着座部が浴槽内下方に下降すると、その下降と共に、入浴者の足を足載せ部によって自動的に前方へ押しやることができる。
【0031】
(10)好ましくは、前記着座部は、入浴者が凭れ掛るための背凭れ部を有する。
【0032】
この構成によれば、入浴者が背凭れ部に凭れ掛ることができるので、着座部に安定して着座することができる。そのため、入浴者がバランスを崩して着座部から転落することを防止することができ、これにより安全に入浴することができる。
【0033】
(11)好ましくは、前記着座部が前記浴槽の長手方向の一端部上で待機しているときは、前記移動機構は、前記着座部によって覆われている。
【0034】
この構成によれば、着座部が、上記待機の状態にあるとき、移動機構を外観上見えなくすることができる。そのため、入浴者は、一般家庭で使われる浴槽に近い雰囲気で入浴することができる。
【0035】
(12)好ましくは、前記浴槽の長手方向の一端部は、前記浴槽の短手方向の途中の一部に前記移動機構を収納できる凹部を有し、前記着座部が、前記浴槽の長手方向の一端部上で待機しているときは、前記凹部の上方は、前記着座部の前記シート部によって覆われ、かつ、前記凹部における前記浴槽の内側は、前記着座部の前記下腿受け部によって覆われて、前記移動機構は外部から隠される。
【0036】
この構成によれば、着座部が前記待機している状態では、移動機構は、凹部内に収納された状態であり、しかも、その凹部の上方と浴槽内側は、シート部と下腿受け部とによって覆われるので、浴槽に直接入浴する入浴者にとっては、凹部の存在、およびその凹部内における移動機構の存在にも気づきにくく、しかも、入浴する際も、入浴中も凹部およびその内部の移動機構が、なんら、見えない。そのため、入浴者は、一般家庭で用いられる浴槽の雰囲気で入浴することができる。
【0037】
(13)好ましくは、前記着座部と前記浴槽との間に形成された隙間、または、前記浴槽に横付けされた搬送車から、前記着座部に移動する際に前記着座部と搬送車との間に形成される隙間を無くすための補助部材を有する。
【0038】
この構成によれば、補助部材によって着座部と浴槽との間の隙間、または、着座部と搬送車との間の隙間がなくなる。そのため、入浴者は、スムーズに着座部上へ移動することができ、また、指や腕等の身体の一部を隙間に挟み込むリスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、入浴者は、浴槽の長手方向の一端部上で待機している着座部に座った後、着座部を浴槽内に下降させて入浴することができる。
【0040】
また、本発明によれば、入浴者は、浴槽の長手方向の一端部で待機している着座部を使うことなく、入浴するときには、着座部に邪魔されずに入浴することができ、また、入浴するたびごとに、着座部を浴槽底面へ下降させるという手間もない。
【0041】
以上により、本発明によれば、着座部が浴槽の長手方向の一端部で待機しているので、着座部に座って入浴するときも、着座部を使わないで入浴するときのいずれにおいても、使い勝手が良い入浴装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施形態に係る入浴装置の平面図である。
図2図1の入浴装置の縦断面図である。
図3】着座部が浴槽の底面に移動されて、着座部のシート部と下腿受け部とが一直線状となった状態を示す入浴装置の縦断面図である。
図4】着座部が浴槽の底面に移動されてシート部と下腿受け部とが屈曲した状態を示す入浴装置の縦断面図である。
図5】被介護者の足を載せるための足載せ部を備えた入浴装置の縦断面図である。
図6】本発明の第一変形例において、載置部がスライドした状態の入浴装置の平面図である。
図7】第一変形例において、シート部と載置部とを下面から見た斜視図である。
図8】本発明の第二変形例に係る入浴装置の平面図である。
図9】第二変形例において、載置部のスライドと、シート部の回転の説明に供する図である。
図10】第二変形例において、シート部が回転した状態の入浴装置の部分斜視図である。
図11】第二変形例において、回転ストッパピンを示す縦断面図である。
図12】本発明の第三変形例に係る入浴装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る入浴装置を、詳細に、説明する。各図中、同一ないし対応する部分には、同一の符号を付している。
【0044】
図1および図2に示すように、入浴装置1は、平面視の外形が矩形形状である浴槽2と、入浴者が着座するための着座部3と、この着座部3を、浴槽2内に移動させるための移動機構4と、を備える。
【0045】
着座部3は、シート部30と、下腿受け部31とを有する。シート部30は、その平面視の外形が矩形形状であり、入浴者が着座できるシート構造となっている。図1では、着座部3は、図解のため、仮想線で示している。また、図1では、後述の移動機構4は、図示していない。下腿受け部31は、シート部30に座っている入浴者の下腿を受けるため、シート部30の前方下方へ延びている。シート部30は、その後方に、シート部30に着座している入浴者が凭れることができる背凭れ部30aを有する。背凭れ部30aは、必ずしも、必須ではない。
【0046】
移動機構4は、着座部3のシート部30が載置される載置部40と、平行リンク機構を構成する2組のアーム部41,42と、を有する。載置部40は、平面視の外形が矩形形状であり、アーム部41,42で水平に支持される。アーム部41,42は、それぞれ、浴槽2の短手方向で対向する一対のアームで構成される。アーム部41,42は、載置部40の浴槽2の長手方向において所定間隔を隔てられている。両アーム部41,42のうち、一方の組のアーム部42は、アーム部駆動機構(図示せず)によって回動駆動される。この回動によって、載置部40は、水平姿勢を保持した状態で円弧状に昇降される。アーム部41,42は、前記したように、それぞれ、浴槽2の短手方向に一対のアームで構成されるが、図2は、浴槽2の短手方向中央における縦断面図であるので、浴槽2の短手方向他端側のアームのみが図示されている。
【0047】
載置部40は、浴槽2の長手方向の一端部2a上に配置されている。浴槽2の長手方向の一端部において、その上端面は、載置部40を浴槽2の内壁面より略外側の位置で水平姿勢の状態を保って待機させることができる広さを有している。着座部3のシート部30は、載置部40を介して、浴槽2の長手方向の一端部2aの上端面上に配置されている。そのため、入浴者は、シート部30上に安定した水平姿勢の状態を保って着座することができる。また、着座部3のシート部30が、浴槽2の長手方向の一端部上で待機している状態では、シート部30は、浴槽2の内側に張り出していない。そのため、入浴者が、着座部3を使用しないで、直接入浴する際には、シート部30は、その入浴の邪魔にならない。これにより、入浴者は、直接入浴する際においては、着座部3を浴槽2の底面まで移動させる必要はなくなるので、使い勝手が良くなる。
【0048】
浴槽2の長手方向一端部2aは、その浴槽2の短手方向の略中央部に、アーム部41,42を収納するための凹部20を有する。凹部20は、浴槽2の両側壁2bでその両側が囲まれ、アーム部41,42を収納した状態で、その作動を許容するように、浴槽2の短手方向に所定の幅を有し、かつ、浴槽2の底面21から上面22に亘って形成されている。なお、図1では、浴槽2の長手方向一端部2aにおいて、凹部20の両側の部分を符号1a1,1a2で示す。載置部40は、この浴槽2の長手方向一端部2aの両側の部分1a1,1a2上にわたって配置される。
【0049】
着座部3が、図1および図2に示すように、浴槽2の長手方向一端部2a上で待機している状態では、凹部20の上方は、着座部3のシート部30によって覆われ、かつ、凹部20における浴槽2内側は、着座部3の下腿受け部31によって覆われる。
【0050】
着座部3が、浴槽2の長手方向の一端部2a上で待機しているときは、シート部30の座面32と浴槽2の上面22との間には段差が有る。高さ調整部材5は、着座部3が待機しているときの前記段差を調整するため、シート部30の短手方向の両側それぞれの上面22に設けられている。シート部30の短手方向両側の上面22の高さが、シート部30の座面32の高さと等しいときは、高さ調整部材5を設ける必要は必ずしもない。
【0051】
着座部3の下腿受け部31は、入浴者の下腿を受けることができる形状を有している。下腿受け部31における浴槽2の上面22側の一端部は、シート部30の先端部に対して連結ピン31aによって回動自在に軸支されている。これによって、下腿受け部31は、シート部30に対して前記軸支点を中心に回動可能になっている。
【0052】
載置部40は、浴槽2の一端部2aの上面に配置され、この載置部40の上面に、シート部30が配置される。シート部30は、載置部40の上面に水平な状態を保持して配置される。
【0053】
移動機構4のアーム部41を構成する一対のアームそれぞれの一端側は、載置部40に対して連結ピン41aで回転自在に軸支されている。アーム部41の前記一対のアームそれぞれの他端側は、浴槽2の凹部20下方で、連結ピン41bで、回転自在に軸支されている。
【0054】
移動機構4のアーム部42を構成する一対のアームそれぞれの一端側は、載置部40に対して連結ピン42aで回転自在に軸支されている。アーム部42前記一対のアームそれぞれの他端側は、浴槽2の凹部20下方で、連結ピン42bで、回転自在に軸支されている。
【0055】
アーム部42を構成する一対のアームそれぞれの他端側の連結ピン42bは、モータ内蔵のアーム部駆動機構(図示せず)に連結されている。アーム部駆動機構は、凹部20の両側の浴槽2外に収納されている。アーム部駆動機構は、リモコン等の指示部の操作に応答してアーム部42を、前記連結ピン42bを回転中心にして反時計回り方向および時計回り方向に回転駆動させることができる。なお、アーム部42の前記一対のアームのうち、一方のアームが、アーム部駆動機構によって駆動されるようにしてもよい。
【0056】
図2および3を参照して、着座部3の動作を説明する。
【0057】
入浴者が着座部3を使って入浴する際には、入浴者が、着座部3のシート部30に着座し、その後、着座部3は、移動機構4によって浴槽2内へ下降される。
【0058】
具体的には、まず、入浴者は、浴槽2の一端部2a上に待機している着座部3のシート部30に座る。次いで、入浴者は、移動機構4を遠隔操作するリモコン(図示せず)を操作する。これにより、アーム部駆動機構が作動する。
【0059】
アーム部駆動機構が作動すると、アーム部42は連結ピン42bを中心にして反時計回り方向に回動し始める。そうすると、着座部3のシート部30は、アーム部41,42によって、水平姿勢を保ったまま、浴槽2の長手方向他端部側へ、かつ、浴槽2の底面21側へ円弧状に下降する。この下降に伴い、着座部3の下腿受け部31の他端が、浴槽2の底面21と接触し、下腿受け部31は、連結ピン31aを中心として時計回り方向に回転する。これにより、入浴者は、浴槽2内へ案内されながら、下腿受け部31によって自身の足を押し上げられる。
【0060】
移動機構4の一対のアーム部42が、連結ピン42bを中心としてさらに反時計回り方向に回転駆動されて、載置部40が浴槽2の底面21に達すると、着座部3のシート部30と下腿受け部31は、ほぼ同一直線上に位置する。これにより、入浴者は、足を伸ばして着座部3のシート部30に座った状態で、浴槽2の底面21まで案内される。
【0061】
この場合、図4に示すように、アーム部41の先端部分41cを、シート部30の方向に突出させてもよい。このようにアーム部41の先端部分41cを突出させると、着座部3が、アーム部41,42によって浴槽2の底面21へ移動されると、シート部30の先端側がアーム部41の先端部分41cによって、上方に持ち上げられる。その結果、シート部30と下腿受け部31とが、浴槽2の底面21に対して、連結ピン31aの箇所から「へ」の字形状に上方に屈曲する。
【0062】
シート部30と下腿受け部31とが、「へ」の字形状に屈曲すると、「へ」の字の長手方向の一半分はシート部30により形成され、「へ」の字の長手方向の他半分は下腿受け部31により形成される。この状態では、シート部30は入浴者の着座位置から下腿まで前方斜め上方へ傾斜し、下腿受け部31は、入浴者の下腿から前方斜め下方へ傾斜した状態となる。そのため、入浴者は浮力を受けてもシート部30上を前方へずり下がって滑っていくことが防止され、浴槽2内でシート部30に安定して着座することができる。これによって、入浴者は、浴槽2内へ水没し難くなるため、より安全に入浴することができる。
【0063】
一方、入浴者が着座部3を使うことなく入浴する際には、着座部3のシート部30は、浴槽2の長手方向の一端部上で待機している。そのため、入浴者は、着座部3のシート部30を、入退浴に際しての腰掛にも利用することができる。
【0064】
以上の入浴装置1によれば、着座部3は、上記のように浴槽2の長手方向の一端部上で待機できるよう配置されている。そのため、着座部3は、浴槽2の内側に張り出していないから、入浴者が直接入浴するときには、着座部3は、その直接入浴の邪魔にならず、着座部3を浴槽2の底面に移動させる必要がない。その結果、入浴者は、着座部3をそのままの状態で待機させておいて、直接入浴することができ、手間が掛からず、使い勝手が良い。
【0065】
また、入浴者が着座部3のシート部30に座って入浴する、いわゆる直接入浴する際は、シート部30の下降と共に、入浴者の下腿は、下腿受け部31によって自動的に押し上げられる。そのため、シート部30が下降しても、入浴者の足と浴槽2の底面32との間に距離が保たれる。
【0066】
従って、入浴者の足がシート部30と浴槽2の底面21との間に挟まれることを防止することができ、これにより、入浴者は、直接入浴するとき、安全に入浴することができる。
【0067】
さらに、浴槽2の上面22とシート部31の座面32は、高さ調整部材5によって、同一の水平面上に合わせることができる。そのため、入浴者は、浴槽2外から高さ調整部材5を介してシート部30へスムーズに移動して、シート部30に着座することができる。
【0068】
また、シート部30に背凭れ部30aを設けているので、入浴者は、背凭れ部30aに凭れ掛ることができ、これによって、入浴者は、着座部3に安定して着座することができる。そのため、入浴者がバランスを崩して着座部3から転落することを防止することができ、これによって、入浴者は、より安全に入浴することができる。
【0069】
さらに、着座部3が上記待機しているときは、着座部3のシート部30と下腿受け部31とによって移動機構4のアーム部41,42が覆われる。そのため、入浴者からは、アーム部41,42といった機械的構成要素が、外観上、隠される。これによって、入浴装置1の浴槽2を、一般家庭で用いられる浴槽の雰囲気に近づけることができる。
【0070】
図5に示す入浴装置1aは、図1ないし図3のそれとは異なって、着座部3のシート部30に着座している入浴者の足を載せるための足載せ部6を備えている。足載せ部6の一端側は、下腿受け部31の他端部に対して、連結ピン31bによって回動可能に軸支されている。図5に示す入浴装置1aは、足載せ部6以外は、図1ないし図3に示す入浴装置1と同様の構成を有する。足載せ部6は、下腿受け部31から着脱可能になっている。
【0071】
また、足載せ部6が下腿受け部31に設けられると、足載せ部6によって、入浴者がシート部に着座し、足載せ部6に足を載せた状態で、着座部3が浴槽2内の下方に下降すると、その下降と共に、入浴者の足を足載せ部6によって自動的に入浴者の前方へ押しやることができる。
【0072】
図6および図7を参照して、本発明の第一変形例に係る入浴装置1bを説明する。図6は、入浴装置1bの平面図であり、一部が切り欠かれて図示されている。また、載置部40がスライドする際の説明に供する図である。図7は、シート部30と載置部40と、後述のスライドレール51とを下面から見た斜視図である。
【0073】
図6を参照して、浴槽2の長手方向の一端部2aにおいて、浴槽2の短手方向に一対のスライドレール50,51が平行に対向配置されている。載置部40は、スライドレール50,51上をスライド可能となっている。これによって、シート部30は、載置部40と共に、スライドレール50,51上をスライド移動することができる。着座部3の下腿受け部31は、下腿受け回転軸40cに回動可能に連結され、シート部30とは分離されている。そのため下腿受け部31は、スライドしない。
【0074】
シート部30および載置部40には、対応する位置に共通のピン挿抜孔47がある。これらピン挿抜孔47に対して、載置部40のスライド移動を阻止するためのスライドストッパピン52が挿抜可能になっている。一方のスライドレール51の外側面には、切り欠き51aが形成されている。スライドストッパピン52は、この切り欠き51aに係入することができる。
【0075】
スライドストッパピン52がピン挿抜孔47に挿入されると、その先端がスライドレール51の切り欠き51aに係入する。この係入によって、載置部40は、スライドレール50,51上をスライド不能となる。スライドストッパピン52が、ピン挿抜孔47から引き抜かれると、スライドストッパピン52はスライドレール51の切り欠き51aから抜け出される。これによって、載置部40は、スライドレール50,51上をスライド可能となる。図6では、載置部40がスライドした状態を示している。
【0076】
スライドレール51には、入浴者がシート部30に着座しやすい位置まで載置部40をスライドさせたときに、シート部30をそのスライド位置で保持させる、スライドストッパピン52が係入できる切り欠き51bが設けられている。このスライド位置で、スライドストッパピン52がピン挿抜孔47に挿入されると、該スライドストッパピン52の先端は、スライドレール51の切欠き51bに係入する。この係入によって、載置部40は、それ以上スライドすることができず、入浴者は、そのスライド位置で、シート部30に容易、且つ安全に着座することができる。
【0077】
浴槽2は、その短手方向における他端側の上面22に、長手方向に延びる第一手摺部7を備えている。第一手摺部7に、リモコン8が取り付けられている。リモコン8は、例えば、コンピュータ内蔵のジョイステック等の構成を有する。そのレバー操作によってアーム部駆動機構に対して、作動指令を有線または無線で送信し、移動機構4の動きを指示する。
【0078】
アーム部駆動機構は、内蔵するコンピュータが前記作動指令を受信すると、アーム部駆動機構内のモータを駆動してアーム部42を時計回り方向または反時計回り方向に回動や停止などの制御ができる。
【0079】
入浴者は、例えば、浴槽2の短手方向一端側から浴槽2に入浴する際、スライドストッパピン52を引き抜く。これにより、載置部40は、スライドレール50,51上をスライド移動可能となる。図6に示すように、シート部30がスライド移動する。図6では、矢印Aの方向にスライド移動させた状態を示しており、スライドせず、浴槽中央にシート部30がある状態を仮想線で示している。これにより、入浴者が、シート部30を、載置部40と共に、自身の方向である矢印Aの方向にスライドさせることができる。
【0080】
入浴者は、この位置で、第一手摺部7を掴んでシート部30に座った後、浴槽2に入浴できる位置にまで、載置部40を、スライド移動させる。その後、入浴者は、リモコン8を操作して、移動機構4を駆動することによって、載置部40を浴槽2内へ下降させる。これによって、入浴者は、浴槽2に入浴することができる。この場合、スライドレール50,51も載置部40と共に下降する。
【0081】
以上の入浴装置1bによれば、入浴者は、シート部30に座る際、載置部40をスライドさせて、シート部30を自身の方向へ近づけることができる。そのため、この入浴装置1bは、入浴者をシート部30に座り易くすることができる。
【0082】
また、シート部30に座った入浴者は、第一手摺部7を掴んで引くことで、載置部40を、スライドレール50,51上で、スライドさせることができる。そのため、入浴者は、浴槽2内を、浴槽2の一端側または他端側のいずれの方向へも移動し易い。
【0083】
入浴者が浴槽2に入浴できる位置に載置部40が移動すると、移動機構4によって、着座部3のシート部30を載置部40および前記両スライドレール50,51と共に浴槽2内に下降させて、入浴する。
【0084】
図8ないし図11を参照して、本発明の第二変形例に係る入浴装置1cを説明する。図8は、入浴装置1cの平面図、図9は、載置部40のスライドと、シート部30の回転との説明に供する図、図10は、シート部30が回転した状態を示す部分斜視図、図11は、後述の回転ストッパピン53の縦断面図である。
【0085】
この入浴装置1cにおいて、浴槽2の長手方向の一端部2aにおいて、浴槽2の短手方向に一対のスライドレール50,51が平行に対向配置されている。このスライドレール50,51上に、載置部40は、浴槽2の短手方向に沿ってスライド可能となっている。着座部3の下腿受け部31は、下腿受け回転軸40cによって、移動機構である載置部40に回動可能に連結されている。また、シート部30は、載置部40に対して、回転軸49によって、回転可能に軸支されている。
【0086】
シート部30および載置部40には、前記と同様に、スライドストッパピン52のピン挿抜孔47が設けられている。スライドレール51には、前記したように、その側面に、スライドストッパピン52が係入できる切り欠きが形成されている。スライドストッパピン52は、ピン挿抜孔47に挿入されているときは、上記第一変形例と同様に、スライドレール51側面の切り欠きに係入している。この係入状態では、載置部40はスライド不能にロックされている。
【0087】
シート部30には、別のピン挿抜孔48から回転ストッパピン53が挿抜可能になっている。回転ストッパピン53がシート部30のピン挿抜孔48に挿入されていると、回転ストッパピン53は、載置部40側面の切り欠き穴40a(図11参照)に係入して、シート部30は載置部40に対して回転不能にロックされる。
【0088】
シート部30をスライドさせるときは、スライドストッパピン52を引き抜く。これによって、レール51側面の切り欠きからスライドストッパピン52が離脱し、シート部30は、載置部40と共に、スライドレール50,51上を図中の矢印Aヘスライド移動することが可能となる。
【0089】
シート部30が、図9の矢印Aで示す方向にスライドされて所定位置まで移動してくると、回転ストッパピン53をピン挿抜孔48から引き抜く。これによって、回転ストッパピン53は、載置部40側面の切り欠き穴40aから抜け出されるので、シート部30は、載置部40に対して図9で示すように、回転軸49を回転中心にして矢印方向Bに回転可能となる。
【0090】
シート部30は、浴槽2の短手方向における他端側に、一方向に長手に延びる凹部により形成された第二手摺部7aを有し、この第二手摺部7aの先端側のシート部30上に、上記図6のリモコン8と同じ機能を有するリモコン8aが装備されている。第二手摺部7aは、シート部30の両端側に設けてもよい。第二手摺部7aは、入浴者が把持することができる。そのため、シート部30が回転するとき、入浴者は、第二手摺部7aを把持しておくことができるので、第二手摺部7aによって、座位姿勢を安定させることができる。
【0091】
以上から入浴者は、入浴する際、スライドストッパピン52を引き抜く。これによって、シート部30は、載置部40と共に、スライドレール50,51上をスライド可能となるので、入浴者は、シート部30を自身の方向(矢印Aの方向)にスライド移動させる。
【0092】
入浴者は、シート部30のスライドにより、シート部30がA方向図9の位置までスライドすると、回転ストッパピン53を引き抜く。これによって、シート部30は回転可能となるので、入浴者は、自身がシート部30に載れる位置まで、シート部30を矢印Bの方向に回転させる。そして、入浴者は自身がシート部30に座ることができるように、シート部30を回転させて、シート部30に着座する。
【0093】
その後、入浴者は、シート部30を先程とは逆方向に回転させて、その後は、シート部30を浴槽2に入浴できる位置までスライドさせる。こうして、入浴者が入浴できる位置までシート部30がスライドされると、入浴者は、リモコン8aをONする。これによって、移動機構4が作動する結果、シート部30は、載置部40およびレール50,51と共に浴槽内に下降して、入浴者は、浴槽2内に入浴する。
【0094】
このように、入浴装置1cによれば、入浴者がシート部30に座る際は、シート部30をスライド移動させ、かつ、回転させることで、シート部30に容易に着座できる。
【0095】
また、入浴者は、着座部3に座った状態で、シート部30に設けられたリモコン8aによって、移動機構4のアーム部41,42の動作を制御することができるので、より簡易に入浴することができる。
【0096】
図12を参照して、本発明の第三変形例に係る入浴装置1dを説明する。
【0097】
この入浴装置1dにおいては、補助部材55を備えている。補助部材55は、シート部30の一方のシート端部と浴槽2の短手方向一端側の縁部との間の隙間および、シート部30の他方のシート端部と浴槽2の短手方向他端側の縁部との間の隙間上に配置されている。また、入浴者が、浴槽2に横付けされた搬送車の一例である車椅子54からシート部30上に移動する際に、着座部3と、前記横付けされた状態の車椅子54との間に形成される隙間上に配置されている。これらの補助部材55により、上記いずれの隙間も無くされる。
【0098】
補助部材55は、その一端側が、シート部30のシート端部に回動可能に設けられ、その他端側が、浴槽2の縁部上面22上にある。シート部30が、浴槽2の縁部上面22と対応する位置で待機しているときは、補助部材55は、シート部30と浴槽2の縁部上面22との間を橋渡しするように配置される。補助部材55は、その上面に入浴者が載っても、変形しない剛性を有している。
【0099】
なお、補助部材55は、入浴者が載っているシート部30が浴槽2内に下降すると、その他端側が、浴槽2の内壁面に当接しつつ、一端側を中心にして上方へ回動させられる。また、シート部30が浴槽2内を上昇していき、浴槽2の縁部上面22と対応する位置まで戻されると、補助部材55の他端側は、浴槽2の縁部上面22上に載る。
【0100】
以上の入浴装置1dによれば、入浴者が、車椅子54から浴槽2に移動する際、また、浴槽2に入浴する際は、補助部材55によって、上記隙間が無くされているので、入浴者は、隙間によって干渉されることなく、スムーズに、シート部30へ着座することができる。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、入浴装置1においても、浴槽2はその短手方向における他端側の上面22に第一手摺部7を有してもよいし、着座部3は第二手摺部7aおよびリモコン8aを有してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1,1aないし1d 入浴装置
2 浴槽
20 凹部
21 浴槽下面
22 浴槽上面
3 着座部
30 シート部
31 下腿受け部
4 移動機構
40 載置部
40c 下腿受け回転軸
41 アーム部
42 アーム部
7 第一手摺部
8 リモコン
7a 第二手摺部
8a リモコン
49 シート部軸支構造の上端部
50,51 スライドレール
52 スライドストッパピン
53 回転ストッパピン
54 車椅子(搬送車)
55 補助部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12