特許第6434319号(P6434319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434319
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】印刷システムおよびインクカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20181126BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181126BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20181126BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   B41J2/01 121
   B41J2/01 401
   B41J2/175 175
   B41J29/46 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-10398(P2015-10398)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132237(P2016-132237A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】番匠 利裕
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103216(JP,A)
【文献】 特開2010−217564(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0176175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01
B41J 2/175
B41J 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジから供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出する印刷処理を実行するインクジェット印刷装置と、前記インクジェット印刷装置により印刷された用紙に対して後処理を実行する後処理装置とを備えた印刷システムであって、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するインク特性情報記憶手段と、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記後処理装置における不具合発生の有無とを関連づけて、不具合テーブルとして記憶する不具合テーブル記憶手段と、
前記印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、前記印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記不具合テーブルとに基づいて、前記後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記不具合に関する警告メッセージとを関連づけて、警告メッセージテーブルとして記憶する警告メッセージテーブル記憶手段と、
前記判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、前記警告メッセージテーブルに基づいて、対応する前記警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージ内容を報知する報知手段とを、
さらに備えたことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記不具合を回避する回避手段とを関連づけて、回避手段テーブルとして記憶する回避手段テーブル記憶手段と、
前記判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、前記回避手段テーブルに基づいて、対応する前記回避手段を決定し、決定した回避手段に基づいて前記印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更する設定変更手段とを、
さらに備えたことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項4】
前記インクが含有する成分ごとに含有量の閾値を記憶する閾値記憶手段を、さらに備え、
前記判定手段は、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記印刷ジョブとに基づいて、前記印刷ジョブに基づいて印刷される際に使用されるインクが含有する成分の含有量を算出し、前記算出した含有量が前記閾値記憶手段に記憶された閾値を超えている場合に、不具合が発生すると判定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の印刷システム。
【請求項5】
インクをインクジェットヘッドから吐出する印刷処理を実行するインクジェット印刷装置に対して着脱可能に取り付けられ前記インクジェットヘッドにインクを供給するインクカートリッジであって、
前記インクジェット印刷装置は、
前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インクジェット印刷装置により印刷された用紙に対して後処理を実行する後処理装置が実行する後処理の種類と、前記後処理装置における不具合発生の有無とを関連づけて、不具合テーブルとして記憶する不具合テーブル記憶手段と、
前記印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、前記印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記不具合テーブルとに基づいて、前記後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する判定手段と、を備えており、
前記インクカートリッジは、前記インクジェット印刷装置から読み出される、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するインク特性情報記憶手段
を備え、
前記インク特性情報記憶手段に記憶されたインク特性情報は、前記判定手段による、前記後処理装置に不具合が発生するか否かの判定に用いられる
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置における不具合の発生を防止する印刷システムおよびインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムは、印刷ジョブに基づいて印刷用紙に画像を印刷するインクジェット印刷装置と、インクジェット印刷装置により印刷された印刷用紙に対して後処理を行う後処理装置とを備えている。
【0003】
インクジェット印刷装置は、色ごとにインクが貯留されたインクカートリッジを着脱可能に設けており、インクカートリッジからインクジェットヘッドにインクが供給され、インクジェットヘッドのノズルからインクを用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷する。
【0004】
このインクカートリッジに貯留されるインクは、例えば、水性インク、油性インク、アルコールインクなど様々な溶媒を含んでいる。この溶媒種類によりインク特性が定まるので、印刷物の用途や印刷の仕上がり具合などに応じて適切なインク特性を有するインクが用いられて印刷処理が実行される。
【0005】
また、後処理装置は、用途に応じて様々な種類の後処理機能が搭載される。後処理機能とは、例えば、印刷された用紙を折り曲げる折り曲げ処理や、ステープル処理や、内容物を折り畳んで封筒に封入封緘する封入封緘処理や、背表紙を糊止めして製本する製本処理などを実行する機能である。後処理装置は、これらの後処理のうち、1つ以上の後処理を実行することができる機能を有している。
【0006】
このような画像形成装置において、例えば、水性インクを用いて印刷する場合、用紙にインクが浸透すると用紙が変形する場合がある。このように変形した用紙に対して後処理装置にて折り曲げ処理を実行する場合、用紙の変形により適切に折り曲げ処理が実行できないことがあった。すなわち、インクジェット印刷装置において用いられるインクのインク特性によって後処理装置に不具合が生じる場合があった。
【0007】
特許文献1には、インクカートリッジの種類をIDによって識別し、その識別されたIDによって、利用可能な記録媒体と出力に適した画像の種類とを表示し、ユーザにその選択を促し、ユーザの選択指示に従って、記録動作の設定を行うインクジェット記録装置に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−67127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、インクカートリッジの種類に応じて利用可能な記録媒体と出力に適した画像の種類とを表示するが、後処理が考慮されていないので、インクカートリッジに貯留されたインクの種類によっては、折り曲げ不良や製本不良などの後処理に不具合が生じる場合があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、後処理装置における不具合の発生を防止する印刷システムおよびインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷システムの第1の特徴は、インクカートリッジから供給されたインクをインクジェットヘッドから吐出する印刷処理を実行するインクジェット印刷装置と、前記インクジェット印刷装置により印刷された用紙に対して後処理を実行する後処理装置とを備えた印刷システムであって、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するインク特性情報記憶手段と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記後処理装置における不具合発生の有無とを関連づけて、不具合テーブルとして記憶する不具合テーブル記憶手段と、前記印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、前記印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記不具合テーブルとに基づいて、前記後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する判定手段と、を備えたことにある。
【0012】
本発明に係る印刷システムの第2の特徴は、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記不具合に関する警告メッセージとを関連づけて、警告メッセージテーブルとして記憶する警告メッセージテーブル記憶手段と、前記判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、前記警告メッセージテーブルに基づいて、対応する前記警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージ内容を報知する報知手段とを、さらに備えたことにある。
【0013】
本発明に係る印刷システムの第3の特徴は、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記後処理装置が実行する後処理の種類と、前記不具合を回避する回避手段とを関連づけて、回避手段テーブルとして記憶する回避手段テーブル記憶手段と、前記判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、前記回避手段テーブルに基づいて、対応する前記回避手段を決定し、決定した回避手段に基づいて前記印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更する設定変更手段を、さらに備えたことにある。
【0014】
本発明に係る印刷システムの第4の特徴は、前記インクが含有する成分ごとに含有量の閾値を記憶する閾値記憶手段を、さらに備え、前記判定手段は、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記印刷ジョブとに基づいて、前記印刷ジョブに基づいて印刷される際に使用されるインクが含有する成分の含有量を算出し、前記算出した含有量が前記閾値記憶手段に記憶された閾値を超えている場合に、不具合が発生すると判定することにある。
【0015】
本発明に係るインクカートリッジの第1の特徴は、インクをインクジェットヘッドから吐出する印刷処理を実行するインクジェット印刷装置に対して着脱可能に取り付けられ前記インクジェットヘッドにインクを供給するインクカートリッジであって、前記インクジェット印刷装置は、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記インクジェット印刷装置により印刷された用紙に対して後処理を実行する後処理装置が実行する後処理の種類と、前記後処理装置における不具合発生の有無とを関連づけて、不具合テーブルとして記憶する不具合テーブル記憶手段と、前記印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、前記印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、前記不具合テーブルとに基づいて、前記後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する判定手段と、を備えており、前記インクカートリッジは、前記インクジェット印刷装置から読み出される、前記インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するインク特性情報記憶手段を備えたことにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る印刷システムの第1の特徴によれば、判定手段が、印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、不具合テーブルとに基づいて、後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する。
【0017】
そのため、インクジェット印刷装置において用いられるインクのインク特性に応じて、後処理装置に不具合が生じるか否かを判定することができる。例えば、水性インクを用いて印刷する場合、用紙にインクが浸透した際、用紙が変形する場合がある。このように変形した用紙に対して後処理装置にて折り曲げ処理を実行する場合、用紙の変形により適切に折り曲げ処理が実行できない場合がある。このような不具合が生じるか否かを予め判定することができるので、後処理装置における不具合の発生を防止することができる。
【0018】
本発明に係る印刷システムの第2の特徴によれば、報知手段が、判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、警告メッセージテーブルに基づいて、対応する警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージ内容を報知するので、ユーザに警告メッセージの内容を正確に伝えることができる。そのため、ユーザは、警告メッセージの内容に応じて、不具合が発生することを許容してそのまま印刷を実行するか、印刷を中止するか、インクジェット印刷装置や後処理装置の設定情報を変更して印刷するか、を選択することができ、ユーザの嗜好に応じた対応が可能になる。
【0019】
本発明に係る印刷システムの第3の特徴によれば、設定変更手段が、判定手段により不具合が発生すると判定された場合に、回避手段テーブルに基づいて、対応する回避手段を決定し、決定した回避手段に基づいて印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更する。
【0020】
そのため、後処理装置における不具合の発生を防止するような設定情報に自動的に更新されるので、ユーザに負担をかけることなく後処理装置における不具合を回避して印刷処理および後処理を実行することができる。
【0021】
本発明に係る印刷システムの第4の特徴によれば、判定手段は、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報と、印刷ジョブとに基づいて、印刷ジョブに基づいて印刷される際に使用されるインクが含有する成分の含有量を算出し、算出した含有量が閾値記憶手段に記憶された閾値を超えている場合に、不具合が発生すると判定する。
【0022】
そのため、成分の含有量が多い場合に、後処理装置に対して不具合が発生すると判定し、成分の含有量が少ない場合に、後処理装置に対して不具合が発生しないと判定することができる。これにより、溶媒の種類のみならずその量も加味して後処理に不具合が発生するか否かを判定することができるので、より適切に不具合の発生の有無を判定することができる。
【0023】
本発明に係るインクカートリッジの第1の特徴によれば、インクジェット印刷装置から読み出される、インクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶するインク特性情報記憶手段を備えている。
【0024】
そのため、インクジェット印刷装置は、インクカートリッジに記憶されたインク特性情報を読み出すことができるので、予めインクジェット印刷装置内にインクカートリッジに貯留されたインクのインク特性情報を記憶する必要がないので、インクジェット印刷装置の記憶手段の記憶容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1に係る印刷システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施例1に係る印刷システムの機能を説明した説明図である。
図3】本発明の実施例1に係る印刷システムのプリンタユニットが備えるメモリに記憶された不具合テーブルの一例を示した図である。
図4】本発明の実施例1に係る印刷システムのプリンタユニットが備えるメモリに記憶された閾値テーブルの一例を示した図である。
図5】本発明の実施例1に係る印刷システムのプリンタユニットが備えるメモリに記憶された警告メッセージテーブルの一例を示した図である。
図6】本発明の実施例1に係る印刷システムにおける処理手順を示したフローチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る印刷システムのプリンタユニットが備えるメモリに記憶された回避手段テーブルの一例を示した図である。
図8】本発明の実施例2に係る印刷システムにおける処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1に係る印刷システムの概略構成を示す説明図である。
【0028】
図1に示す本発明の実施例1の印刷システム1は、印刷用紙Sに対する印刷処理を実行するプリンタユニット(インクジェット印刷装置)100と、印刷用紙Sに対して後処理を実行する後処理ユニット(後処理装置)200とを備えている。
【0029】
(印刷システムの全体構成)
本発明の実施例1に係るプリンタユニット100は、環状の搬送経路(図示せず)上を搬送される印刷用紙Sに対し画像を形成する。この搬送経路は、サイド給紙台120や給紙トレイ130から印刷部140を経て、排紙トレイ125へ至る搬送路(図示せず)と、サイド給紙台120や給紙トレイ130から印刷部140を経て、後処理ユニット200が接続されるサイド排紙部160に至る搬送路(図示せず)とを有している。
【0030】
上述した搬送経路を印刷用紙Sが搬送される際に、印刷部140が印刷処理を実行することにより印刷用紙Sの上面に画像が印刷される。印刷済みの印刷用紙Sは、後処理を行わない場合は排紙トレイ125から排紙される。但し、両面印刷する際には、排紙トレイ125内の反転経路(図示せず)において反転されて再び印刷部140に搬送され、裏面に対して画像が印刷される。
【0031】
印刷部140は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクに対応するインクジェットヘッド(図示しない)を備えており、印刷用紙Sは、装置内を搬送ローラにより搬送された後、インクジェットヘッドの対向面に設けられた環状の搬送ベルト(図示しない)によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、インクジェットヘッドのノズルから吐出されたインクによりライン単位で印刷する。
【0032】
このようにして片面又は両面に画像が印刷された印刷用紙Sを後処理ユニット200で後処理する場合は、サイド排紙部160に搬送されて後処理ユニット200に受け渡される。
【0033】
また、プリンタユニット100における各種の制御は、制御部190によって行われる。この制御部190は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。
【0034】
そして、制御部190は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。また、この制御部190には、タッチパネル式の操作パネル170が接続されており、操作パネル170上で表示を参照しつつタッチ操作することで、ユーザによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0035】
後処理ユニット200は、一時スタックトレイ部210と後処理部(1),(2)230,240を備えている。後処理部(1)230や後処理部(2)240は、それぞれ、印刷用紙Sを折り曲げる折り曲げ処理部、印刷用紙Sの束にステープル綴じするステープル処理部、印刷用紙Sの束にパンチ穴を開けるパンチ処理部、印刷用紙Sの束の区切りがわかるように印刷用紙Sの束を前後方向や左右方向にずらして排出するオフセット処理部、印刷用紙Sの束の背表紙を糊止めして製本する製本処理部、内容物を折り畳んで封筒に封入封緘する封入封緘処理などで構成される。
【0036】
プリンタユニット100のサイド排紙部160から排紙された印刷用紙Sは、後処理する束となるまで一時スタックトレイ部210に一時貯留され、後処理内容に対応する後処理部(1)230や後処理部(2)240に、搬送部220を介してまとめて移送される。
【0037】
後処理部(1)230や後処理部(2)240で後処理された印刷用紙Sの束は、それぞれに対応する排紙トレイ250,260に排紙される。
【0038】
また、後処理ユニット200における各種の制御は、制御部190によって行われる。
【0039】
(印刷システムの機能構成)
図2は、本発明の実施例1に係る印刷システム1の機能を説明した説明図である。
【0040】
図2に示すように、本発明の実施例1に係る印刷システムのプリンタユニット100は、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yと、本体装置に設けられた制御部190と、メモリ11と、操作パネル170とを備えている。
【0041】
K(ブラック)のインクに対応するインクカートリッジ150Kは、それぞれインクボトル151Kと、非接触IC(符号152K)とを備えている。なお、ここでは、K(ブラック)のインクに対応するインクカートリッジ150Kを例に挙げて説明するが、他のインク色のインクも同様である。
【0042】
非接触IC(符号152K)は、メモリ153Kを有しており、本体装置の制御部190との間で無線によるデータ通信を行う。
【0043】
メモリ153Kは、インクカートリッジ150Kが製造された製造年月日、インクカートリッジ150Kが本体装置に装着された使用開始日、インクボトル151Kに貯留されたインク残量、インクボトル151Kに貯留されたインクの特性を示すインク特性情報を記憶している。なお、インク残量は、例えば、初期の量から、インクジェットヘッド110からの吐出量等を減算することにより算出することができる。また、インク特性情報には、インクに含まれる1以上の溶媒種類と含有率とが関連づけて記憶されている。溶媒種類は、例えば、「水」、「低沸点溶剤」、「高沸点溶剤」、「アルコール」に分類され、この分類ごとに、含有率(wt%)が記憶されている。
【0044】
また、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクに対応するインクカートリッジ150C,150M,150Yも同様に、製造年月日、使用開始日、インク残量、インク特性情報を記憶しており、本体装置の制御部190との間で無線によるデータ通信を行う。
【0045】
メモリ11は、不具合テーブルと、閾値テーブルと、警告メッセージテーブルと、回避手段テーブルとを記憶している。このうち、警告メッセージテーブルは実施例1で用いられ、回避手段テーブルは実施例2で用いられる。
【0046】
不具合テーブルは、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yに貯留されたインクのインク特性情報と、後処理ユニット200が実行する後処理の種類と、不具合発生の有無とが関連づけられて、記憶されている。
【0047】
図3は、メモリ11に記憶された不具合テーブルの一例を示した図である。
【0048】
図3に示すように、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yに貯留されたインクのインク特性情報に含まれる溶媒種類と、後処理ユニット200が実行する後処理の種類と、不具合発生の有無とが関連づけられて、記憶されている。
【0049】
ここでは、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクの溶媒種類をそれぞれ数値で表現している。具体的に、溶媒種類は、「水」(=1)、「低沸点溶剤」(=2)、「高沸点溶剤」(=3)、「アルコール」(=4)で示している。
【0050】
後処理ユニット200が実行する後処理の種類は、例えば、「折り曲げ処理」、「ステープル処理」、「パンチ処理」、「オフセット処理」、「製本処理」、「封緘処理」であり、この後処理の種類、溶媒種類ごとに、後処理ユニット200に不具合が発生するか否かを示した不具合発生の有無の情報が記憶されている。不具合発生の有無については、不具合が発生する場合、「Y」として記憶され、不具合が発生しない場合、「N」として記憶されている。
【0051】
例えば、溶媒種類が「水」(=1)であり、後処理部(1)230がローラで用紙を挟み込むことにより用紙を折り曲げる折り曲げ処理部である場合、用紙にインクが浸透すると乾燥し難く用紙が変形する場合がある。用紙が変形していると、ローラの用紙挟み込み不良で用紙の揃えが悪くなり適切に折り曲げ処理が実行できない場合がある。そのため、「水」(=1)のときの折り曲げ処理は、不具合が発生することを示す「Y」が記憶されている。
【0052】
また、溶媒種類が「高沸点溶剤」(=3)であり、後処理部(1)230がローラで用紙を挟み込むことにより用紙を折り曲げる折り曲げ処理部である場合、インクが乾燥し難いので、インクがローラに転写し、このローラに転写されたインクが再度用紙に転写される、いわゆる再転写が発生する場合がある。そのため、「高沸点溶剤」(=3)のときの折り曲げ処理は、不具合が発生することを示す「Y」が記憶されている。
【0053】
その一方、溶媒種類が「低沸点溶剤」(=2)または「アルコール」(=4)の場合、用紙にインクが浸透すると乾燥し易く、折り曲げ処理に不具合が発生することはない。そのため、「低沸点溶剤」(=2)または「アルコール」(=4)のときの折り曲げ処理は、不具合が発生しないことを示す「N」が記憶されている。
【0054】
図4は、メモリ11に記憶された閾値テーブルの一例を示した図である。
【0055】
図4に示すように、「水」(=1)、「低沸点溶剤」(=2)、「高沸点溶剤」(=3)、「アルコール」(=4)の溶媒種類ごとに、それぞれの溶媒が、後処理ユニット200における後処理に影響を及ぼす含有量の閾値を記憶している。例えば、印刷ジョブに基づいてプリンタユニット100が印刷処理を実行する際、1ページを印刷するのにインクに含まれる「水」(=1)が「α」(mg)を超える場合には、後処理ユニット200における後処理に影響を及ぼすことになる。
【0056】
図5は、メモリ11に記憶された警告メッセージテーブルの一例を示した図である。
【0057】
図5に示すように、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yに貯留されたインクの溶媒種類と、後処理ユニット200が実行する後処理の種類と、不具合が発生した場合にユーザに報知すべき警告メッセージ内容とが関連づけられて、記憶されている。
【0058】
ここでは、不具合テーブルと同様に、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報に含まれる溶媒種類を、それぞれ数値で表現している。具体的に、溶媒種類は、「水」(=1)、「低沸点溶剤」(=2)、「高沸点溶剤」(=3)、「アルコール」(=4)で示している。
【0059】
後処理ユニット200が実行する後処理の種類は、不具合テーブルと同様に、例えば、「折り曲げ処理」、「ステープル処理」、「パンチ処理」、「オフセット処理」、「製本処理」、「封緘処理」が示されており、この後処理の種類、溶媒種類ごとに、後処理に不具合が発生した場合の警告メッセージ内容を示す記号が記憶されている。警告メッセージ内容を示す記号は、「a」、「b」、「c」で示され、1以上が記憶されている。
【0060】
「a」は「揃えが悪くなる場合があります」という警告メッセージ内容を示しており、「b」は「再転写により汚れが発生する場合があります」という警告メッセージ内容を示しており、「c」は「匂いが発生します。換気してください」という警告メッセージ内容を示している。
【0061】
例えば、溶媒種類が「水」(=1)であり、後処理部(1)230がローラで用紙を挟み込むことにより用紙を折り曲げる折り曲げ処理部である場合、上述したように、用紙にインクが浸透すると用紙の変形により用紙の揃えが悪くなり適切に折り曲げ処理が実行できない場合がある。そのため、溶媒種類が「水」(=1)であり、後処理が折り曲げ処理である場合の警告メッセージとして、「a」の「揃えが悪くなる場合があります」が記憶されている。
【0062】
また、溶媒種類が「高沸点溶剤」(=3)であり、後処理部(1)230がローラで用紙を挟み込むことにより用紙を折り曲げる折り曲げ処理部である場合、上述したように、再転写が発生する場合がある。そのため、溶媒種類が「高沸点溶剤」(=3)であり、後処理が折り曲げ処理である場合の警告メッセージとして、「b」の「再転写により汚れが発生する場合があります」が記憶されている。
【0063】
制御部190には、操作画面とタッチパネルとで構成された操作パネル170が接続されている。この操作パネル170は、インクジェット印刷装置1の上部に配置されている。この操作パネル170は、図示しないスキャナ部にセットした印刷画像を複写印刷する場合や、外部から受け付けた印刷ジョブを印刷する場合の印刷枚数などの処理内容といった設定条件を、ユーザが入力する入力操作部等として利用できる。また、操作パネル170は、後述する警告画面などを表示する。
【0064】
制御部190は、プログラムを実行する演算処理装置であり、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kに印刷動作を行わせるなどインクジェット印刷装置1の全体制御や後処理ユニット200の全体制御を行う。また、この制御部190は、本体装置に装着されたインクカートリッジとの間で無線通信によりデータ転送を行う機能を有する。
【0065】
また、制御部190は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。具体的には、制御部190は、判定手段191と、報知手段192と、設定変更手段193との機能モジュールを構築している。なお、本発明の実施例1中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせ等によって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0066】
判定手段191は、印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報と、不具合テーブルとに基づいて、後処理装置に不具合が発生するか否かを判定する。
【0067】
報知手段192は、メモリ11から警告メッセージテーブルを読み込み、読み込んだ警告メッセージテーブルに基づいて、溶媒と後処理とに対応する警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージを操作パネル170に表示させる。
【0068】
設定変更手段193は、判定手段191により不具合が発生すると判定された場合に、回避手段テーブルに基づいて、対応する回避手段を決定し、決定した回避手段に基づいて印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更する。
【0069】
<印刷システム1の作用>
次に、本発明の実施例1に係る印刷システム1の作用について説明する。
【0070】
図6は、本発明の実施例1に係る印刷システム1における処理手順を示したフローチャートである。なお、ここでは、K(ブラック)のインクを例にとって説明するが、他のインク色についても同様である。
【0071】
図6に示すように、本発明の実施例1に係る印刷システム1のプリンタユニット(インクジェット印刷装置)100は、まず、制御部190が、図示しないコンピュータからネットワークを介して印刷ジョブを受信した場合(ステップS101;YES)、この受信した印刷ジョブのヘッダに含まれる設定情報を参照して、後処理が含まれているか否かを判定する(ステップS103)。
【0072】
ステップS103において、後処理がないと判定された場合(NO)、後処理における不具合を考慮する必要がないので、処理をステップS141に移行する。
【0073】
一方ステップS103において、後処理があると判定された場合(YES)、判定手段191は、受信した印刷ジョブのヘッダに含まれる設定情報から後処理の種類を読み込む(ステップS105)。上述したように、後処理の種類は、「折り曲げ処理」、「ステープル処理」、「パンチ処理」、「オフセット処理」、「製本処理」、「封緘処理」のうち、いずれかが設定情報に含まれている。
【0074】
そして、判定手段191は、無線通信で、装着されたインクカートリッジ150のメモリ153からインク特性情報を読み込み(ステップS107)、さらにメモリ11から不具合テーブルを読み込む(ステップS109)。
【0075】
次に、判定手段191は、溶媒1が警告対象か否かを判定する(ステップS111)。ここで、インクカートリッジ150に貯留されたインクに含まれる溶媒種類のうち、最も含有率が高い順に、溶媒1、溶媒2、・・・とする。すなわち、溶媒1とは、インクカートリッジ150に貯留されたインクに含まれる溶媒種類のうち、最も含有率が高い溶媒種類のことである。そして、判定手段191は、印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報に含まれる第1溶媒の溶媒種類と、不具合テーブルとに基づいて、後処理ユニット200に不具合が発生するか否か、即ち警告対象か否かを判定する。
【0076】
ステップS111において、溶媒1は警告対象であると判定された場合(YES)、判定手段191は、溶媒1の使用量を算出する(ステップS113)。具体的に、判定手段191は、インク特性情報に含まれる溶媒1の含有率と、受信した印刷ジョブに含まれる画像データ(文字データや写真データを含む)に基づいて、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yごとに、1ページ当たりに使用される溶媒1の使用量を算出する。そして、判定手段191は、算出したインクカートリッジ150K,150C,150M,150Yごとの溶媒1の使用量を合計することにより、1ページ当たりの溶媒1の使用量を算出する。
【0077】
次に、判定手段191は、メモリ11に記憶された閾値テーブルを読み込み、読み込んだ閾値テーブルに基づいて、算出した溶媒1の使用量が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS115)。例えば、溶媒1が「水」である場合、1ページ当たりの「水」の使用量が、「水」に対応する閾値「α」(mg)を超えるか否かを判定する。
【0078】
ステップS115において、溶媒1の使用量が閾値を超えていると判定された場合(YES)、溶媒1は、後処理ユニット200において不具合を発生する可能性があるので、報知手段192は、メモリ11から警告メッセージテーブルを読み込み、読み込んだ警告メッセージテーブルに基づいて、溶媒1と後処理とに対応する警告メッセージを抽出する(ステップS131)。例えば、印刷ジョブの設定情報に含まれる後処理が折り曲げ処理であり、溶媒1が「水」(=1)である場合、報知手段192は、警告メッセージとして、「a」の「揃えが悪くなる場合があります」を抽出する。
【0079】
そして、報知手段192は、抽出した警告メッセージを操作パネル170に表示させる(ステップS133)。
【0080】
また、ステップS111において溶媒1は警告対象ではないと判定された場合(NO)または、ステップS115において溶媒1の使用量が閾値以下であると判定された場合(NO)、判定手段191は、溶媒2が警告対象か否かを判定する(ステップS117)。ここで、溶媒2とは、インクカートリッジ150に貯留されたインクに含まれる溶媒種類のうち、2番目に含有率が高い溶媒種類のことである。そして、判定手段191は、印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報に含まれる溶媒2の溶媒種類と、不具合テーブルとに基づいて、後処理ユニット200に不具合が発生するか否か、即ち警告対象か否かを判定する。
【0081】
ステップS117において、溶媒2は警告対象であると判定された場合(YES)、判定手段191は、ステップS113と同様に溶媒2の使用量を算出する(ステップS119)。
【0082】
そして、判定手段191は、メモリ11に記憶された閾値テーブルを読み込み、読み込んだ閾値テーブルに基づいて、算出した溶媒2の使用量が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS121)。
【0083】
ステップS121において、溶媒2の使用量が閾値を超えていると判定された場合(YES)、溶媒2は、後処理ユニット200において不具合を発生する可能性があるので、報知手段192は、メモリ11から警告メッセージテーブルを読み込み、読み込んだ警告メッセージテーブルに基づいて、溶媒2と後処理とに対応する警告メッセージを抽出し(ステップS131)、抽出した警告メッセージを操作パネル170に表示させる(ステップS133)。
【0084】
以上のように、本発明の実施例1に係る印刷システム1によれば、判定手段191が、印刷を要求する印刷ジョブを受信したときに、印刷ジョブに含まれる後処理の設定情報と、インクカートリッジ150に貯留されたインクのインク特性情報と、不具合テーブルとに基づいて、後処理装置に不具合が発生するか否かを判定するので、プリンタユニット100(インクジェット印刷装置)において用いられるインクのインク特性に応じて、後処理ユニット200(後処理装置)に不具合が生じるか否かを判定することができる。例えば、水性インクを用いて印刷する場合、用紙にインクが浸透した際、用紙が変形する場合がある。このように変形した用紙に対して後処理ユニット200にて折り曲げ処理を実行する場合、用紙の変形により適切に折り曲げ処理が実行できない場合がある。このような不具合が生じるか否かを予め判定することができるので、後処理ユニット200における不具合の発生を防止することができる。
【0085】
また、本発明の実施例1に係る印刷システム1では、報知手段192が、メモリ11から警告メッセージテーブルを読み込み、読み込んだ警告メッセージテーブルに基づいて、溶媒と後処理とに対応する警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージを操作パネル170に表示させるので、ユーザに警告メッセージの内容を正確に伝えることができる。そのため、ユーザは、警告メッセージの内容に応じて、不具合が発生することを許容してそのまま印刷を実行するか、印刷を中止するか、プリンタユニット100や後処理ユニット200の設定情報を変更して印刷するか、を選択することができ、ユーザの嗜好に応じた対応が可能になる。
【0086】
なお、報知手段192は、ステップS133において、操作パネル170に警告メッセージを表示したが、これに限らず、音声等により警告メッセージの内容を発報するようにしてもよい。
【0087】
なお、本発明の実施例1に係る印刷システム1では、溶媒1および溶媒2について、それぞれ警告対象であるか否かを判定したが(ステップS111,S117)、判定の対象とする溶媒は、溶媒1および溶媒2に限らず、1つの溶媒でもよいし、インクに含まれる全ての溶媒について判定の対象としてもよい。
【0088】
<実施例2>
本発明の実施例1に係る印刷システム1では、報知手段192が、メモリ11から警告メッセージテーブルを読み込み、読み込んだ警告メッセージテーブルに基づいて、溶媒と後処理とに対応する警告メッセージを抽出し、抽出した警告メッセージを操作パネル170に表示させたが、これに限らず自動的に設定情報を変更するようにしてもよい。
【0089】
本発明の実施例1に係る印刷システム1のプリンタユニット100は、図2に示したように、メモリ11に回避手段テーブルを記憶している。
【0090】
図7は、メモリ11に記憶された回避手段テーブルの一例を示した図である。なお、図1に示した実施例1に係る印刷システム1全体構成および図2に示した機能構成は、同一であるので、説明を省略する。
【0091】
図7に示すように、インクカートリッジ150K,150C,150M,150Yに貯留されたインクの溶媒種類と、後処理ユニット200が実行する後処理の種類と、不具合が発生した場合に発生する不具合を回避する回避手段内容とが関連づけられて、回避手段テーブルとして記憶されている。
【0092】
ここでは、不具合テーブルと同様に、インクカートリッジ150のインクボトル151に貯留されたインクのインク特性情報に含まれる溶媒種類を、それぞれ数値で表現している。具体的に、溶媒種類は、「水」(=1)、「低沸点溶剤」(=2)、「高沸点溶剤」(=3)、「アルコール」(=4)で示している。
【0093】
後処理ユニット200が実行する後処理の種類は、不具合テーブルと同様に、例えば、「折り処理」、「ステープル処理」、「パンチ処理」、「オフセット処理」、「製本処理」、「封緘処理」が示されており、この後処理の種類、溶媒種類ごとに、後処理に不具合が発生した場合に、発生した不具合を回避する回避手段を示す記号が記憶されている。回避手段を示す記号は、「x」、「y」、「z」で示され、1以上が記憶されている。
【0094】
「x」は転移量を低下させる設定が記憶されている。具体的に、印刷ジョブに含まれる画像データの濃度を下げることにより、インクの使用量を低減し、結果的にインクに含まれる溶媒量を低減させる。これにより、用紙の変形を防止すると共に、ローラへの転写量を低減させ再転写を防止する。
【0095】
「y」は、搬送速度を低下させる設定が記憶されている。具体的に、プリンタユニット100における搬送速度を低下させ搬送時間を長くすることにより、用紙に吐出されたインクを乾燥させる乾燥時間を長くする。乾燥により用紙の変形を復元すると共に、ローラへの転写量を低減させ再転写を防止する。
【0096】
「z」は、ステープル処理へ変更する設定が記憶されている。後処理の内容自体を変更することにより、発生する不具合を回避する。
【0097】
例えば、溶媒種類が「水」(=1)であり、後処理部(1)230がローラで用紙を挟み込むことにより用紙を折り曲げる折り曲げ処理部である場合、上述したように、用紙にインクが浸透すると用紙の変形により用紙の揃えが悪くなり適切に折り曲げ処理が実行できない場合がある。そのため、溶媒種類が「水」(=1)であり、後処理が折り曲げ処理である場合の回避手段として、「x」の転移量を低下させる設定、または「y」の搬送速度を低下させる設定が記憶されている。「x」または「y」のいずれの回避手段を採用するかは、操作パネル170からユーザにより選択させるようにする。
【0098】
<印刷システムの作用>
次に、本発明の実施例2に係る印刷システム1の作用について説明する。
【0099】
図8は、本発明の実施例2に係る印刷システム1における処理手順を示したフローチャートである。このフローチャートのうち、ステップS101〜S141の処理については、図6に示したフローチャートのそれぞれ同一ステップ番号の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0100】
図8に示すように、ステップS115において、溶媒1の使用量が閾値を超えていると判定された場合(YES)、またはステップS121において、溶媒2の使用量が閾値を超えていると判定された場合(YES)、設定変更手段193は、メモリ11から回避手段テーブルを読み込み、読み込んだ回避手段テーブルに基づいて、溶媒1と後処理とに対応する回避手段を決定する(ステップS201)。例えば、印刷ジョブの設定情報に含まれる後処理が折り曲げ処理であり、溶媒1が「水」(=1)である場合、設定変更手段193は、回避手段として、「x」の転移量を低下させる設定、および「y」の搬送速度を低下させる設定を抽出し、「x」および「y」のうち、操作パネル170のユーザ操作により選択された方を決定する。
【0101】
そして、設定変更手段193は、抽出した設定で、印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更し(ステップS203)、印刷処理および後処理を実行する(ステップS141)。
【0102】
以上のように、本発明の実施例2に係る印刷システム1によれば、設定変更手段193が、判定手段191により不具合が発生すると判定された場合に、回避手段テーブルに基づいて、対応する回避手段を決定し、決定した回避手段に基づいて印刷ジョブに含まれる印刷処理の設定情報および後処理の設定情報のうち少なくとも一方の設定情報を変更する。そのため、後処理ユニット200における不具合の発生を防止するような設定情報に自動的に更新されるので、ユーザに負担をかけることなく後処理ユニット200における不具合を回避して印刷処理および後処理を実行することができる。
【0103】
なお、図7の回避手段テーブルの回避手段として、「x」、「y」、「z」のうち、複数が記憶されている場合、上述したように、いずれの回避手段を採用するかは、操作パネル170からユーザにより選択させるようにしたがこれに限らない。例えば、溶媒の使用量の上限閾値(mg)を予め設定し、算出した溶媒の使用量が上限閾値未満の場合には、「y」の搬送速度を低下させる設定を適用し、算出した溶媒の使用量が上限閾値を超えた場合には、「x」の転移量を低下させる設定を適用するようにしてもよいし、「x」および「y」の両方の回避手段を適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…印刷システム
11…メモリ
100…プリンタユニット
110…インクジェットヘッド
110C,110M,110Y,110K…インクジェットヘッド
120…サイド給紙台
125…排紙トレイ
130…給紙トレイ
140…印刷部
150K,150C,150M,150Y…インクカートリッジ
151K,151C,151M,151Y…インクボトル
153K,153C,153M,153Y……メモリ
160…サイド排紙部
170…操作パネル
190…制御部
191…判定手段
192…報知手段
193…設定変更手段
200…後処理ユニット
210…一時スタックトレイ部
220…搬送部
250,260…排紙トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8