(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクセルの操作状態を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキの操作状態を検出するブレーキ操作検出手段と、前記アクセル操作検出手段により検出されたアクセルの操作状態、及び前記ブレーキ操作検出手段により検出されたブレーキの操作状態に基づいて、前記アクセルとブレーキとが共に操作されていると判断した場合に、車両の駆動力を制限する駆動力制御手段と、を備えるブレーキオーバーライドシステムにおいて、
車両の外部環境を認識し、認識結果に基づいて、自動で車両を制動する自動制動機能を有する運転支援装置を備え、
前記駆動力制御手段は、前記運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態にあり、かつ、前記運転支援装置による自動制動が実行されていない場合には、前記アクセルとブレーキとが共に操作されているときに、車両の駆動力の制限を行わないことを特徴とするブレーキオーバーライドシステム。
前記駆動力制御手段は、前記アクセルが前記ブレーキより先に操作されている状態において、後からブレーキが操作されたときに、該ブレーキの操作が複数回繰り返して行われた場合には、前記運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態であっても、車両の駆動力を制限することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキオーバーライドシステム。
前記駆動力制御手段は、前記ブレーキが先に操作されている状態において後からアクセルが操作された場合、又は、前記ブレーキとアクセルとが同時に操作開始された場合には、車両の駆動力を制限することを特徴とする請求項3に記載のブレーキオーバーライドシステム。
前記アクセルとブレーキとが共に操作されているが、車両の駆動力の制限を行わない場合に、アクセルとブレーキとが共に操作されていることを運転者に提示する提示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブレーキオーバーライドシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ブレーキオーバーライドシステムによれば、例えば、アクセルペダルが何らかの原因でロックされてしまったような状況においても、ブレーキペダルを踏むことにより、安全に車両を減速させて停止させることができる。しかしながら、例えば、アクセルペダルを踏んで加速しているときに、誤って左足がブレーキペダルに触れてしまったような場合、上述した従来のブレーキオーバーライドシステムでは、運転者が意図していないにも拘らず車両が減速し、運転者に違和感を与えるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、アクセル操作とブレーキ操作とが一緒に行われた場合に、運転者の意図しない減速を防止して、運転者に違和感を与えることを防止することが可能なブレーキオーバーライドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブレーキオーバーライドシステムは、アクセルの操作状態を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキの操作状態を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作検出手段により検出されたアクセルの操作状態、及びブレーキ操作検出手段により検出されたブレーキの操作状態に基づいて、アクセルとブレーキとが共に操作されていると判断した場合に、車両の駆動力を制限する駆動力制御手段とを備えるブレーキオーバーライドシステムにおいて、車両の外部環境を認識し、認識結果に基づいて、自動で車両を制動する自動制動機能を有する運転支援装置を備え、運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態にある場合には、アクセルとブレーキとが共に操作されているときであっても、駆動力制御手段が、車両の駆動力の制限を行わないことを特徴とする。
【0008】
運転支援装置による自動制動(自動ブレーキ)機能が動作可能な状態では、例えば、障害物等と接触する可能性がある場合等には、自動的に車両が制動されて車両が安全に停止される。そのため、アクセルとブレーキとが共に操作されているときに、車両の駆動力の制限を禁止したとしても(すなわち、ブレーキオーバーライドをキャンセルしても)安全性が確保される。よって、本発明に係るブレーキオーバーライドシステムによれば、運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態においては、ブレーキオーバーライドをキャンセルすることにより、アクセル操作とブレーキ操作とが一緒に行われた場合に、運転者の意図しない減速を防止して、運転者に違和感を与えることを防止することが可能となる。
【0009】
ただし、本発明に係るブレーキオーバーライドシステムでは、運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態であり、かつ、アクセルとブレーキとが共に操作されているときであっても、運転支援装置による自動制動が実行される際には、駆動力制御手段が、車両の駆動力を制限することが好ましい。
【0010】
この場合、運転支援装置による自動制動(自動ブレーキ)が実行される際(例えば、障害物等と接触する可能性がある場合等)には、車両の駆動力を制限することにより、より迅速かつより安全に車両を減速・停止させることが可能となる。
【0011】
本発明に係るブレーキオーバーライドシステムでは、アクセルがブレーキより先に操作されている状態において、後からブレーキが操作されたときに、該ブレーキの操作が複数回繰り返して行われた場合には、運転支援装置による自動制動機能が動作可能な状態であっても、駆動力制御手段が、車両の駆動力を制限することが好ましい。
【0012】
ブレーキの操作が複数回繰り返して行われる場合には、運転者に車両を制動したいという意思があると推定される。よって、このような状況では、車両の駆動力を制限したとしても、運転者に違和感を与えるおそれが少ない。よって、ブレーキの操作が複数回繰り返して行われた場合には、車両の駆動力を制限することにより、運転者の意図しない減速を防止しつつ、車両を制動(減速)することが可能となる。
【0013】
一方、本発明に係るブレーキオーバーライドシステムでは、ブレーキが先に操作されている状態において後からアクセルが操作された場合、又は、ブレーキとアクセルとが同時に操作開始された場合には、駆動力制御手段が、車両の駆動力を制限することが好ましい。
【0014】
この場合には、すでに制動(減速)が開始されており、誤ってアクセルに触れてしまった可能性があるため、車両の駆動力を制限しても運転者に違和感を与える可能性が低い。よって、通常制御によって、車両の駆動力を制限することにより、車両を減速して停止することができる。
【0015】
本発明に係るブレーキオーバーライドシステムは、アクセルとブレーキとが共に操作されているが、車両の駆動力の制限を行わない場合に、アクセルとブレーキとが共に操作されていることを運転者に提示する提示手段をさらに備えることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、アクセルとブレーキとが共に操作されていることを運転者に認識させ、注意を促すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクセル操作とブレーキ操作とが一緒に行われた場合に、運転者の意図しない減速を防止して、運転者に違和感を与えることを防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、ここでは、車両の駆動力を出力するパワーユニットとしてガソリンエンジンを用いた場合、すなわちガソリンエンジン車に適用した場合を例にして説明する。
【0020】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るブレーキオーバーライドシステム1の構成について説明する。
図1は、ブレーキオーバーライドシステム1、及び、該ブレーキオーバーライドシステム1が適用されたエンジン10等の構成を示すブロック図である。
【0021】
エンジン10は、どのような形式のものでもよいが、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナから吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナから吸入された空気の量は、エアクリーナとスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0022】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(
図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カム軸と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0023】
同様に、排気カム軸と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0024】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0025】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
【0026】
排気管18の集合部の下流かつ後述する排気浄化触媒20の上流には、空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、排気ガス中の酸素濃度、未燃ガス濃度に応じた信号(すなわち混合気の空燃比に応じた信号)を出力でき、空燃比をリニアに検出することができるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。
【0027】
LAFセンサ19の下流には排気浄化触媒20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO
2)、水蒸気(H
2O)及び窒素(N
2)に清浄化するものである。
【0028】
上述したエアフローメータ14、LAFセンサ19、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。ここで、クランクシャフト10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ33aが取り付けられており、クランク角センサ33は、タイミングロータ33aの突起の有無を検出することにより、クランクシャフト10aの回転位置を検出する。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0029】
これらのセンサは、電子制御装置(以下「ECU」という)50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、及び、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの開度を検出するアクセルペダル開度センサ35等の各種センサも接続されている。なお、アクセルペダル開度センサ35は、特許請求の範囲に記載のアクセル操作検出手段として機能する。
【0030】
ECU50は、例えばCAN(Controller Area Network)100を介して、運転支援装置60、ビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)70、及びメータ・コントロールユニット(以下「MCU」という)80等と相互に通信可能に接続されている。
【0031】
運転支援装置60は、外部環境(例えば車両前方の走行環境)を認識して前方障害物に対する警報や自動制動(自動ブレーキ)を行う機能(自動制動機能/プリクラッシュブレーキ機能)を有している。
【0032】
より具体的には、運転支援装置60は、まず、例えば一対のカメラからなるステレオカメラ61で撮像した画像を処理して外部の走行環境(例えば先行車両や障害物等)を認識する。次に、運転支援措置70は、認識結果(先行車両や障害物の情報)や車両の走行状態等に基づいて、検出した障害物等と接触する可能性を判定する。そして、運転支援装置60は、障害物等と接触する可能性があると判定した場合には、車両を制動(減速・停止)させるために、自動制動(自動ブレーキ)要求情報をCAN100を介してVDCU70及びECU50に送信する。また、運転支援装置60は、例えばシステムエラー情報を含む動作情報等をCAN100を介してECU50に送信する。なお、運転支援装置60は、認識した走行環境から先行車両を検出し、先行車両に対して追従制御や警報制御を行うことにより運転者の運転操作を支援する機能なども有している。
【0033】
VDCU70には、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキスイッチ71や、ブレーキアクチュエータ74のマスタシリンダ圧力(ブレーキ油圧)を検出するブレーキ液圧センサ72が接続されている。ブレーキスイッチ71及びブレーキ液圧センサ72は、特許請求の範囲に記載のブレーキ操作検出手段として機能する。また、VDCU70には、車両の各車輪の回転速度(車速)を検出する車輪速センサ73等も接続されている。
【0034】
VDCU70は、ブレーキペダルの操作量(踏み込み量)に応じてブレーキアクチュエータ74を駆動して車両を制動するとともに、車両挙動を各種センサ(例えば車輪速センサ73、操舵角センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等)により検知し、自動加圧によるブレーキ制御とエンジン10のトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保する。
【0035】
VDCU70は、検出したブレーキスイッチ71やブレーキ液圧等の制動情報(ブレーキ操作情報)や車輪速(車速)等を、CAN100を介してECU50に送信する。一方、VDCU70は、CAN100を介して、上述した自動制動(自動ブレーキ)要求情報等を受信する。VDCU70は、自動制動要求情報を受信した場合には、自動的にブレーキアクチュエータ74を駆動して車両を制動する。
【0036】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルバルブ13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0037】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力から回転角速度およびエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル開度、混合気の空燃比、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。また、ECU50は、CAN100を介して、上述した自動制動(自動ブレーキ)要求情報、システムエラー情報等を含む運転支援装置60の動作情報、ブレーキスイッチ71やブレーキ液圧等の制動情報(ブレーキ操作情報)、及び車輪速(車速)等を受信する。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットルバルブ13等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0038】
また、ECU50は、アクセルペダルとブレーキペダルが一緒に踏まれた際に、エンジン出力(車両の駆動力)を絞り、ブレーキを優先させるブレーキオーバーライドシステムの機能を有している。特に、ECU50は、アクセルペダルの踏み込みとブレーキペダルの踏み込みとが一緒に行われた場合に、運転者の意図しない減速を防止して、運転者に違和感を与えることを防止する機能を有している。そのため、ECU50は、エンジン出力制御部51を機能的に有している。ECU50では、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、エンジン出力制御部51の機能が実現される。
【0039】
エンジン出力制御部51は、アクセルペダルの操作状態、及びブレーキペダルの操作状態に基づいて、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているか否かを判定し、共に踏み込まれていると判断した場合には、エンジン出力を所定値以下に制限(低減)する。その際に、エンジン出力制御部51は、例えば、スロットルバルブ13を閉じ側に駆動して、エンジン10の出力トルクを所定値以下に制限(低減)する。すなわち、エンジン出力制御部51は、特許請求の範囲に記載の駆動力制御手段として機能する。
【0040】
ただし、エンジン出力制御部51は、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)機能が動作可能な(すなわち機能している)状態にある場合には、安全性が確保されていると判断し、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているときであっても、エンジン出力の制限を行わない。一方、運転支援装置60による自動制動機能が動作できない状況、すなわち、車速が所定速度(例えば60km/h)以上であったり、運転支援装置60がシステムエラーを起こしているような状況で、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれたときには、エンジン10の出力を制限(低減)する。
【0041】
なお、エンジン出力制御部51は、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態であり、かつ、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているときであっても、運転支援装置60による自動制動が実行される際(プリクラッシュブレーキ動作時)には、迅速な減速・停止を補助するために、エンジン出力を制限する。
【0042】
エンジン出力制御部51は、アクセルペダルが先に踏み込まれている状態において、後からブレーキペダルが踏みこまれたときに、該ブレーキペダルの踏み込みが複数回(例えば2回以上)繰り返して行われた場合には、運転者が車両を制動(減速)しようとしていると推定し、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態であっても、エンジン出力を制限する。
【0043】
なお、エンジン出力制御部51は、ブレーキペダルが先に踏み込まれている状態において後からアクセルペダルが踏み込まれた場合、又は、ブレーキペダルとアクセルペダルとが同時に踏み込み開始された場合には、すでに制動(減速)が開始されており、誤ってアクセルに触れてしまった可能性があるため、通常制御によって、エンジン出力を制限(低減)する。
【0044】
MCU80は、例えば、コンビネーションメータ内やダッシュボードの上部などに配設されたLCDディスプレイ等からなる表示部81(マルチファンクションディスプレイ)と接続されており、該表示部81を駆動して、例えば、車両やエンジン10等の状態や各種情報を運転者に提示する。特に、MCU80は、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているが、エンジン出力の制限を行わない場合(ブレーキオーバーライドをキャンセルする場合)に、運転者に対して警告を発する。その際に、MCU80は、表示部81を駆動し、例えば、警告灯を点灯させたり、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれていることを文字で表示したりすることが好ましい。また、同時に警告音を出力するようにしてもよい。MCU80及び表示部81は、特許請求の範囲に記載の提示手段として機能する。
【0045】
次に、
図2を参照しつつ、ブレーキオーバーライドシステム1の動作について説明する。
図2は、ブレーキオーバーライドシステム1による、エンジン出力制限処理(ブレーキオーバーライド処理)の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主として、ECU50において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0046】
まず、ステップS100では、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているか否かについての判断が行われる。ここで、アクセルペダルとブレーキペダルのいずれか一方のみが踏み込まれている場合、及びアクセルペダルとブレーキペダルがどちらも踏み込まれていない場合には、一旦本処理から抜ける。一方、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているときには、ステップS102に処理が移行する。
【0047】
ステップS102では、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)機能が動作可能な状態(すなわち機能している状態)であるか否かについての判断が行われる。ここで、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態でない場合(すなわち、車速が所定速度(例えば60km/h)以上であったり、運転支援装置60がシステムエラーを起こしているような場合)には、ステップS104に処理が移行する。一方、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態にあるときには、ステップS106に処理が移行する。
【0048】
ステップS104では、エンジンの出力が制限(すなわち、ブレーキオーバーライドシステムが作動)されるとともに、車両が制動されて、減速する。その後、本処理から一旦抜ける。
【0049】
一方、ステップS106では、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)の実行条件(プリクラッシュブレーキ機能の作動条件)が成立したか否か(例えば、障害物が検出され、該障害物と接触する可能性があるか否か)についての判断が行われる。ここで、運転支援装置60による自動制動の実行条件が成立した場合には、ステップS108に処理が移行する。一方、運転支援装置60による自動制動の実行条件が成立していないときには、ステップS110に処理が移行する。
【0050】
ステップS108では、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)が優先して実行される。その際に、エンジン出力が制限され、車両が迅速に減速される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0051】
一方、ステップS110では、アクセルペダルが先に踏み込まれている状態において、後からブレーキペダルが踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、ブレーキペダルが先に踏み込まれている状態において後からアクセルペダルが踏み込まれた場合、又は、ブレーキペダルとアクセルペダルとが同時に踏み込み開始された場合には、ステップS104に処理が移行し、上述したように、エンジンの出力が制限されるとともに、車両が制動されて、減速する。そして、その後、本処理から一旦抜ける。一方、アクセルペダルが先に踏み込まれているときに後からブレーキペダルが踏み込まれた場合には、ステップS112に処理が移行する。
【0052】
ステップS112では、アクセルペダルが踏まれたままの状態で、ブレーキペダルが複数回(例えば2回以上)繰り返して踏み込まれたか否かについての判断が行われる。ここで、ブレーキペダルが複数回繰り返して踏み込まれた場合には、ステップS104に処理が移行し、上述したように、エンジンの出力が制限(低減)されるとともに、車両が制動されて減速する。そして、その後、本処理から一旦抜ける。一方、ブレーキペダルが一度しか踏まれていないときには、ステップS114に処理が移行する。
【0053】
ステップS114では、エンジン出力の制限が禁止(すなわち、ブレーキオーバーライドシステムの作動が制限)される。また、ステップS114では、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれていることが、ディスプレイ表示や警告音等により運転者に提示される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)機能が動作可能な状態においては、エンジン出力の制限を禁止(ブレーキオーバーライドをキャンセル)することにより、アクセルペダルの踏み込みとブレーキペダルの踏み込みとが一緒に行われた場合に、運転者の意図しない減速を防止して、運転者に違和感を与えることを防止することが可能となる。
【0055】
ただし、本実施形態によれば、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態であり、かつ、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているときであっても、運転支援装置60による自動制動が実行される際には、エンジン出力が制限される。よって、運転支援装置60による自動制動(自動ブレーキ)が実行される際(例えば、障害物等と接触する可能性がある場合等)には、エンジン出力を制限することにより、より迅速かつより安全に車両を減速・停止させることが可能となる。
【0056】
本実施形態によれば、アクセルペダルが先に踏み込まれている状態において、後からブレーキペダルが踏まれたときに、該ブレーキペダルの踏み込みが複数回繰り返して行われた場合には、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態であっても、エンジン出力が制限される。ここで、ブレーキペダルの踏み込みが複数回繰り返して行われる場合には、運転者に車両を制動したいという意思があると推定される。よって、このような状況では、エンジン出力を制限したとしても、運転者に違和感を与えるおそれが少ない。そこで、本実施形態によれば、ブレーキペダルの踏み込みが複数回繰り返して行われた場合には、エンジン出力を制限することにより、運転者の意図しない減速を防止しつつ、車両を制動(減速)することが可能となる。
【0057】
一方、本実施形態によれば、ブレーキペダルが先に踏み込まれている状態において後からアクセルペダルが踏み込まれた場合、又は、ブレーキペダルとアクセルペダルとが同時に踏み込みを開始された場合には、エンジン出力が制限される。この場合、すでに制動(減速)が開始されており、誤ってアクセルペダルに触れてしまった可能性があるため、エンジン出力を制限したとしても運転者に違和感を与える可能性が低い。よって、通常制御によって、エンジン出力を制限することにより、車両を減速して停止することができる。
【0058】
本実施形態によれば、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているが、エンジン出力の制限を行わない場合に(すなわち、ブレーキオーバーライドをキャンセルする際に)、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏まれていることが運転者に提示される。そのため、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏まれていることを運転者に認識させ、注意を促すことができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ECU50、運転支援装置60、VDCU70、及びMCU80それぞれをCAN100で相互に通信可能に接続したが、システムの構成はこのような形態に限られることなく、例えば、機能的な要件やコスト等を考慮して、任意に変更することができる。
【0060】
また、上述した構成に加えて、エンジン出力制御部51において、例えば、ブレーキペダルの踏込み量、踏込み力、踏込み速度、及び踏込み継続時間のうち、少なくともいずれか一つに基づいて、運転者の制動する意思の有無を判定し、制動する意思があると判定した場合には、運転支援装置60による自動制動機能が動作可能な状態であっても、アクセルペダルとブレーキペダルとが共に踏み込まれているときに、エンジン出力を制限する構成としてもよい。
【0061】
ここで、運転者に車両を制動したいという意思がある場合には、エンジン出力を制限したとしても、運転者に違和感を与えるおそれがない。よって、運転者に車両を制動する意思があると判定される場合には、エンジン出力を制限することにより、運転者の意図しない減速を防止しつつ、車両を制動(減速)することができる。
【0062】
上記実施形態では、本発明をガソリンエンジン車に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、ガソリンエンジン以外の駆動力源を有する車両、例えば、エンジンと電動モータとを駆動力源とするハイブリッド車(HEV)、及び電動モータを駆動力源とする電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などにも適用することができる。