特許第6434336号(P6434336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434336
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】放射能汚染検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20181126BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   G01T1/167 C
   G01T7/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-32674(P2015-32674)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156626(P2016-156626A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】名雲 靖
(72)【発明者】
【氏名】田所 孝広
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−222855(JP,A)
【文献】 特開2013−108815(JP,A)
【文献】 特開2013−113610(JP,A)
【文献】 特開平01−061679(JP,A)
【文献】 特開2014−020909(JP,A)
【文献】 特開平05−045467(JP,A)
【文献】 特開2011−180057(JP,A)
【文献】 特開昭56−030664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の内部の放射能汚染を検査する放射能汚染検査装置において、
前記廃棄物の内部から放出された放射線をコリメータを介して検出し、放射線量を計測する1つの放射線検出器と、
前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を離散的に移動させる移動装置と、
前記放射線検出器で計測される放射線量に対して予め設定された基準データを記憶する基準データ記憶部と、
前記基準データを超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記基準データ以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、高汚染範囲として推定する高汚染範囲推定部と、
前記高汚染範囲推定部で推定された高汚染範囲を表示する表示部とを備え、
前記移動装置は、前記放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して所定の角度となるように、かつ前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させており、
前記基準データ記憶部は、前記放射線検出器で計測される放射線量に対し前記所定の角度に対応して予め設定された所定の基準値を記憶しており、
前記高汚染範囲推定部は、前記所定の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記所定の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、高汚染範囲として推定することを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項2】
廃棄物の内部の放射能汚染を検査する放射能汚染検査装置において、
前記廃棄物の内部から放出された放射線をコリメータを介して検出し、放射線量を計測する1つの放射線検出器と、
前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を離散的に移動させる移動装置と、
前記放射線検出器で計測される放射線量に対して予め設定された基準データを記憶する基準データ記憶部と、
前記基準データを超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記基準データ以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、高汚染範囲として推定する高汚染範囲推定部と、
前記高汚染範囲推定部で推定された高汚染範囲を表示する表示部とを備え、
前記移動装置は、
第1の移動モードとして、前記放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して第1の角度となるように、かつ前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させ、
第2の移動モードとして、前記放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して前記第1の角度とは異なる第2の角度となるように、かつ前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させており、
前記基準データ記憶部は、前記放射線検出器で計測される放射線量に対し前記第1の角度に対応して予め設定された第1の基準値を記憶するとともに、前記放射線検出器で計測される放射線量に対し前記第2の角度に対応して予め設定された第2の基準値を記憶しており、
前記高汚染範囲推定部は、
前記第1の移動モードで、前記第1の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記第1の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、第1の範囲として取得し、
前記第2の移動モードで、前記第2の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記第2の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、第2の範囲として取得し、
前記第1の範囲と前記第2の範囲が重なる範囲を、高汚染範囲として推定することを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項3】
廃棄物の内部の放射能汚染を検査する放射能汚染検査装置において、
前記廃棄物の内部から放出された放射線をコリメータを介して検出し、放射線量を計測する第1の放射線検出器と、
前記廃棄物の内部から放出された放射線をコリメータを介して検出し、放射線量を計測する第2の放射線検出器と、
前記第1の放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して第1の角度となるように、かつ前記第1の放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記第1の放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させるとともに、前記第2の放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して前記第1の角度とは異なる第2の角度となるように、かつ前記第2の放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記第2の放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させる移動装置と、
前記第1の放射線検出器で計測される放射線量に対し前記第1の角度に対応して予め設定された第1の基準値を記憶するとともに、前記第2の放射線検出器で計測される放射線量に対し前記第2の角度に対応して予め設定された第2の基準値を記憶する基準データ記憶部と、
前記第1の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記第1の放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記第1の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記第1の放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、第1の範囲として取得し、
前記第2の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記第2の放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記第2の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記第2の放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、第2の範囲として取得し、
前記第1の範囲と前記第2の範囲が重なる範囲を、高汚染範囲として推定する高汚染範囲推定部と、
前記高汚染範囲推定部で推定された高汚染範囲を表示する表示部と、を備えることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項4】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記第1の放射線検出器の視野角をφa、前記第2の放射線検出器の視野角をφbとしたときに、
前記第1の角度θaは、90°−φa/2≦θa≦90°+φa/2を満たすように設定し、
前記第2の角度θbは、0°<θb<θa−φa/2+φb/2、又はθa+φa/2−φb/2<θb<180°を満たすように設定したことを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項5】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記第1の角度θaは、90°に設定しており、
前記高汚染範囲推定部は、
前記第1の放射線検出器の移動位置を座標軸とし前記第1の放射線検出器で計測された放射線量をプロットした放射線量の分布が線対称性を有する場合に、その対称軸に対応する前記廃棄物の位置を中心として前記第2の範囲を反転させた第3の範囲を取得し、
前記高汚染範囲を、前記第3の範囲と重なる範囲に限定することを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項6】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記第1の角度θaは、90°に設定しており、
前記第1の放射線検出器の移動位置を座標軸とし前記第1の放射線検出器で計測された放射線量をプロットした放射線量の分布が線対称性を有する場合に、その対称軸に対応する前記廃棄物の位置のみ放射能が存在する場合を仮定して、前記第2の放射線検出器で計測された放射線量の分布を補正する補正部をさらに備えることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項7】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記移動装置は、前記第1の放射線検出器と前記第2の放射線検出器を一体として移動させるように構成されたことを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項8】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記移動装置は、前記第2の角度θbが可変であることを特徴とする放射能汚染検査装置。
【請求項9】
請求項記載の放射能汚染検査装置において、
前記第2の放射線検出器の前記コリメータは、四角形状の穴を有することを特徴とする放射能汚染検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の内部の放射能汚染を検査する放射能汚染検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンクリート構造物の表面及び内部の放射能汚染を計測して放射能汚染のレベルを判定する放射能汚染検査装置を開示している。この放射能汚染検査装置は、コンクリート構造物の表面の放射能濃度を測定する表面汚染検出センサを備えている。また、コンクリート構造物の所定箇所を削孔するためのドリルと、ドリルの削孔に伴って発生するコンクリート粉塵を吸引する吸引器と、吸引器で吸引されたコンクリート粉塵の放射能濃度(すなわち、コンクリート構造物の内部の放射能濃度)を測定する放射能濃度測定器とを備えている。そして、表面汚染センサで測定された放射能濃度がクリアランスレベル以下であるか否かを判定するとともに、放射能濃度測定器で測定された放射能濃度がクリアランスレベル以下であるか否かを判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−333419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば原子炉を解体する際に、廃棄物として大量のコンクリート等が排出される。それらを、放射能によって汚染されているものと、汚染されずに一般廃棄物と同様に扱えるものに分けることにより、放射性廃棄物を低減することができる。
【0005】
また、廃棄物が放射能によって汚染されていても、その汚染部位を削る除染作業を行うことにより、放射性廃棄物を低減することができる。廃棄物を削る量は、廃棄物の汚染深さによって異なる。そのため、例えば、ボーリング等の手法で廃棄物の所定箇所をサンプリングして汚染深さを計測し、これに基づいて除染作業を計画することが考えられる。
【0006】
しかし、その場合、廃棄物の全体において汚染深さが一定であればよいが、汚染深さが部分的に深ければ(言い換えれば、高汚染範囲があれば)、除染作業が十分に行われない可能性が生じる。すなわち、サンプリングした位置の汚染深さより、サンプリングしない位置の汚染深さが深ければ、除染作業が十分に行われない可能性が生じる。
【0007】
本発明の目的は、廃棄物の除染作業に有効な情報として、廃棄物の内部の高汚染範囲を提示できる放射能汚染検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、廃棄物の内部の放射能汚染を検査する放射能汚染検査装置において、前記廃棄物の内部から放出された放射線をコリメータを介して検出し、放射線量を計測する1つの放射線検出器と、前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を離散的に移動させる移動装置と、前記放射線検出器で計測される放射線量に対して予め設定された基準データを記憶する基準データ記憶部と、前記基準データを超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記基準データ以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、高汚染範囲として推定する高汚染範囲推定部と、前記高汚染範囲推定部で推定された高汚染範囲を表示する表示部とを備え、前記移動装置は、前記放射線検出器の観測中心軸が前記廃棄物の表面に対して所定の角度となるように、かつ前記放射線検出器の各移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲が互いにオーバラップするように、前記放射線検出器を前記廃棄物の表面に沿って離散的に移動させており、前記基準データ記憶部は、前記放射線検出器で計測される放射線量に対し前記所定の角度に対応して予め設定された所定の基準値を記憶しており、前記高汚染範囲推定部は、前記所定の基準値を超える放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲の一部を含み、前記所定の基準値以下である放射線量が計測されたときの前記放射線検出器の移動位置に対応する前記廃棄物の内部の被検査範囲で挟まれた範囲を、高汚染範囲として推定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃棄物の除染作業に有効な情報として、廃棄物の内部の高汚染範囲を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態における放射能汚染検査装置の概要を表す図である。
図2】本発明の第1の実施形態における測定データ及び基準データの具体例を表す図である。
図3】本発明の第1の実施形態における高汚染範囲の推定方法を説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態における放射線検出器の観測中心軸の角度の設定範囲を説明するための図である。
図5】本発明の第2の実施形態における放射能汚染検査装置の概要を表す図である。
図6】本発明の第2の実施形態における測定データ及び基準データの具体例を表す図である。
図7】本発明の第2の実施形態における高汚染範囲の推定方法を説明するための図である。
図8】本発明の第1の変形例における移動装置の概要を表す図である。
図9】本発明の第3の実施形態における放射能汚染検査装置の概要を表す図である。
図10】本発明の第2の変形例における放射線量分布の線対称性の判定方法を説明するための図である。
図11】本発明の第2の変形例における高汚染範囲の推定方法を説明するための図である。
図12】本発明の第3の変形例における放射能汚染検査装置の概要を表す図である。
図13】本発明の第3の変形例における放射線量分布の補正を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1で示すように、本実施形態の放射能汚染検査装置は、廃棄物1(詳細には、例えばコンクリート)の内部の放射能汚染を検査するものであって、放射線検出器2、移動装置3、移動制御部4、波高増幅器5、波高分析器6、測定データ記憶部7、基準データ記憶部8、高汚染範囲推定部9、及び表示部10を備えている。
【0013】
放射線検出器2は、廃棄物1の内部から放出された放射線(ガンマ線)の線量を計測するものである。この放射線検出器2は、廃棄物1の内部から放出された放射線の入射方向を制限するコリメータ11と、コリメータ11を介し入射した放射線を検出する素子(図示せず)とを有している。前述した素子は、放射線を検出したときに、そのエネルギーに対応した波高値を有する信号を出力するようになっている。
【0014】
移動装置3は、放射線検出器2を廃棄物1の表面に沿って移動させるように構成されている。具体的には、例えば、廃棄物1の表面に沿って移動可能に設けられた移動体12と、移動体12にアーム13を介し接続されて放射線検出器2を保持する保持部14とを有している。そして、放射線検出器2の観測中心軸が廃棄物1の表面に対して所定の角度θ(例えば90°)となるように、かつ放射線検出器2と廃棄物1の間の距離が一定となるように、放射線検出器2を移動させるようになっている。
【0015】
移動制御部4は、移動装置3を制御し、放射線検出器2を離散的に移動させて計測させる。このとき、放射線検出器2の各移動位置(言い換えれば、各計測位置)に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sが互いにオーバラップするようになっている(図3参照)。そして、放射線検出器2の位置情報を測定データ記憶部7に出力するようになっている。
【0016】
波高増幅器5は、放射線検出器2の素子からの信号を増幅する。波高分析器6は、波高増幅器5からの信号を、その波高値(すなわち、放射線のエネルギー)に応じてカウントし、放射線のエネルギースペクトルを作成する。そして、例えば核種に応じて指定された全吸収ピーク領域における計数(又は計数率でもよい。以降、省略)を積算し、測定データ記憶部7に出力するようになっている。
【0017】
測定データ記憶部7は、移動制御部4から入力された放射線検出器2の位置と波高分析器6から入力された計数(言い換えれば、放射線検出器2で計測された放射線量)を関連付け、測定データ(図2参照)として記憶するようになっている。
【0018】
基準データ記憶部8は、上述した波高分析器6で演算される計数(言い換えれば、放射線検出器2で計測される放射線量)に対して予め設定された基準データを記憶している。具体的には、例えば廃棄物1の所定箇所をサンプリングして汚染深さを計測しており、この汚染深さに基づき、放射線検出器2の観測中心軸の角度θに対応して予め設定された所定の基準値T(図2参照)を記憶している。
【0019】
高汚染範囲推定部9は、測定データ記憶部7で記憶された測定データの計数が、基準データ記憶部8で記憶された基準値Tを超えるか否かを判定する。そして、基準値Tを超える計数と基準値T以下である計数があれば、それらの境界として、基準値T以下である計数が得られたときの放射線検出器2の位置P1,P2(図2参照)を抽出する。そして、図3で示すように、基準値Tを超える計数が得られたときの放射線検出器2の移動位置に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲S3の一部を含み、基準値T以下である計数が得られたときの放射線検出器2の移動位置P1,P2にそれぞれ対応する廃棄物1の内部の被検査範囲S1,S2で挟まれた範囲Rを、高汚染範囲として推定する。
【0020】
表示部10は、廃棄物1の断面とともに、高汚染範囲推定部9で推定された高汚染範囲Rを表示する。
【0021】
したがって、本実施形態においては、廃棄物1の除染作業に有効な情報として、廃棄物1の内部の高汚染範囲を提示できる。
【0022】
なお、上記においては、放射線検出器2の観測中心軸の角度θを90°に設定した場合を例にとって説明したが、これに限られず、90°以外に設定してもよい。但し、廃棄物1の除汚作業の観点から、図4で示すように、放射線検出器2の視野角をφとしたときに、90°−φ/2≦θ≦90°+φ/2を満たすように設定したほうがよい。
【0023】
本発明の第2の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
図5で示すように、本実施形態の放射能汚染検査装置は、放射線検出器2A,2B、移動装置3A、移動制御部4A、波高増幅器5A,5B、波高分析器6A,6B、測定データ記憶部7A、基準データ記憶部8A、高汚染範囲推定部9A、及び表示部10を備えている。
【0025】
放射線検出器2A,2Bは、廃棄物1の内部から放出された放射線(ガンマ線)の線量を計測するものである。放射線検出器2Aは、廃棄物1の内部から放出された放射線の入射方向を制限するコリメータ11Aと、コリメータ11Aを介し入射した放射線を検出する素子(図示せず)とを有している。放射線検出器2Bは、廃棄物1の内部から放出された放射線の入射方向を制限するコリメータ11Bと、コリメータ11Bを介し入射した放射線を検出する素子(図示せず)とを有している。コリメータ11Bの穴は、好ましくは、四角形状である。
【0026】
移動装置3Aは、放射線検出器2A,2Bを一体として廃棄物1の表面に沿って移動させるように構成されている。具体的には、例えば、廃棄物1の表面に沿って移動可能に設けられた移動体12と、移動体12にアーム13Aを介し接続されて放射線検出器2Aを保持する保持部14Aと、移動体12にアーム13Bを介し接続されて放射線検出器2Bを保持する保持部14Bとを有している。そして、放射線検出器2Aの観測中心軸が廃棄物1の表面に対して第1の角度θa(例えば90°)となるように、かつ放射線検出器2Aと廃棄物1の間の距離が一定となるように、放射線検出器2Aを移動させる。また、放射線検出器2Bの観測中心軸が廃棄物1の表面に対して第2の角度θb(但し、θb≠θa)となるように、かつ放射線検出器2Bと廃棄物1の間の距離が一定となるように、放射線検出器2Bを移動させるようになっている。
【0027】
移動制御部4Aは、移動装置3Aを制御し、放射線検出器2A,2Bを離散的に移動させて計測させる。このとき、放射線検出器2Aの各移動位置(言い換えれば、各計測位置)に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Saが互いにオーバラップし(図7(a)参照)、放射線検出器2Bの各移動位置(言い換えれば、各計測位置)に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sbが互いにオーバラップするようになっている(図7(b)参照)。そして、放射線検出器2A,2Bの位置情報を測定データ記憶部7Aに出力するようになっている。
【0028】
波高増幅器5Aは、放射線検出器2Aの素子からの信号を増幅する。波高分析器6Aは、波高増幅器5Aからの信号を、その波高値(すなわち、放射線のエネルギー)に応じてカウントし、放射線のエネルギースペクトルを作成する。そして、例えば核種に応じて指定された全吸収ピーク領域における計数(又は計数率でもよい。以降、省略)を積算し、測定データ記憶部7Aに出力するようになっている。
【0029】
同様に、波高増幅器5Bは、放射線検出器2Bの素子からの信号を増幅する。波高分析器6Bは、波高増幅器5Bからの信号を、その波高値(すなわち、放射線のエネルギー)に応じてカウントし、放射線のエネルギースペクトルを作成する。そして、例えば核種に応じて指定された全吸収ピーク領域における計数(又は計数率でてもよい。以降、省略)を積算し、測定データ記憶部7Aに出力するようになっている。
【0030】
測定データ記憶部7Aは、移動制御部4Aから入力された放射線検出器2Aの位置と波高分析器6Aから入力された計数(言い換えれば、放射線検出器2Aで計測された放射線量)を関連付け、第1の測定データ(図6(a)参照)として記憶する。また、移動制御部4Aから入力された放射線検出器2Bの位置と波高分析器6Bから入力された計数(言い換えれば、放射線検出器2Bで計測された放射線量)を関連付け、第2の測定データ(図6(b)参照)として記憶するようになっている。
【0031】
基準データ記憶部8Aは、上述した波高分析器6A,6Bで演算される計数(言い換えれば、放射線検出器2A,2Bで計測される放射線量)に対して予め設定された基準データを記憶している。具体的には、例えば廃棄物1の所定箇所をサンプリングして汚染深さを計測しており、この汚染深さに基づき、放射線検出器2Aの観測中心軸の角度θaに対応して予め設定された第1の基準値Ta(図6(a)参照)を記憶している。また、放射線検出器2Bの観測中心軸の角度θaに対応して予め設定された第2の基準値Tb(図6(b)参照)を記憶している。
【0032】
高汚染範囲推定部9Aは、測定データ記憶部7Aで記憶された第1の測定データの計数が、基準データ記憶部8Aで記憶された第1の基準値Taを超えるか否かを判定する。そして、基準値Taを超える計数と基準値Ta以下である計数があれば、それらの境界として、基準値Ta以下である計数が得られたときの放射線検出器2Aの位置Pa1,Pa2(図6(a)参照)を抽出する。そして、図7(a)で示すように、基準値Taを超える計数が得られたときの放射線検出器2Aの移動位置に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sa3の一部を含み、基準値Ta以下である計数が得られたときの放射線検出器2Aの移動位置Pa1,Pa2にそれぞれ対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sa1,Sa2で挟まれた範囲Raを、第1の範囲として取得する。
【0033】
また、測定データ記憶部7Aで記憶された第2の測定データの計数が、基準データ記憶部8Aで記憶された第2の基準値Tbを超えるか否かを判定する。そして、基準値Tbを超える計数と基準値Tb以下である計数があれば、それらの境界として、基準値Tb以下である計数が得られたときの放射線検出器2Bの位置Pb1,Pb2(図6(b)参照)を抽出する。そして、図7(b)で示すように、基準値Tbを超える計数が得られたときの放射線検出器2Bの移動位置に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sb3の一部を含み、基準値Tb以下である計数が得られたときの放射線検出器2Bの移動位置Pb1,Pb2にそれぞれ対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sb1,Sb2で挟まれた範囲Rbを、第2の範囲として取得する。
【0034】
そして、図7(c)で示すように、第1の範囲Raと第2の範囲Rbが重なる範囲Rを、高汚染範囲として推定する。
【0035】
表示部10は、廃棄物1の断面とともに、高汚染範囲推定部9Aで推定された高汚染範囲Rを表示する。
【0036】
したがって、本実施形態においては、廃棄物1の除染作業に有効な情報として、廃棄物1の内部の高汚染範囲を提示できる。また、本実施形態では、第1の実施形態と比べ、高汚染範囲を限定することができるため、廃棄物1の除染作業により有効な情報を提示できる。
【0037】
なお、上記においては、放射線検出器2Aの観測中心軸の角度θaを90°に設定した場合を例にとって説明したが、これに限られず、90°以外に設定してもよい。但し、廃棄物1の除汚作業の観点から、放射線検出器2Aの視野角をφaとしたときに、90°−φa/2≦θa≦90°+φa/2を満たすように設定したほうがよい。なお、放射線検出器2Bの観測中心軸の角度θbは、放射線検出器2Bの視野角をφbとしたときに、0°<θb<θa−φa/2+φb/2、又はθa+φa/2−φb/2<θb<180°を満たすように設定すればよい。
【0038】
また、上記においては、特に説明しなかったが、図8で示す変形例のように、移動装置3Aの移動体12に対してアーム13Bをスライド可能とし、アーム13Bに対して保持部14Bを回転可能とすることにより、放射線検出器2Bの観測中心軸の角度θbを可変にしてもよい。また、図示しないが、移動装置3Aの移動体12は、放射線検出器2Aを中心として放射線検出器2Bの配置を回転可能としてもよい。
【0039】
また、上記においては、移動装置3Aは、放射線検出器2A,2Bを一体として移動させるように構成した場合を例にとって説明したが、これに限られず、放射線検出器2A,2Bを別々に移動させるように構成してもよい。また、上記においては、放射線検出器2A,2Bの移動ピッチ(及び計測ピッチ)を同じにする場合を例にとって説明したが、これに限られず、機械的又は制御的な方法により、検出器の計測ピッチを放射線検出器2A,2Bの移動ピッチ(及び計測ピッチ)を異ならせてもよい。また、上記においては、放射線検出器2Aを用いて第1の測定データを取得する第1の系統と放射線検出2Bを用いて第2の測定データを取得する第2の系統を統合した場合を例にとって説明したが、これに限られず、第1の系統と第2の系統に分離してもよい。
【0040】
本発明の第3の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、第1及び第2の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0041】
図9(a)で示すように、本実施形態の放射能汚染検査装置は、放射線検出器2、移動装置3B、移動制御部4B、波高増幅器5、波高分析器6、測定データ記憶部7A、基準データ記憶部8A、高汚染範囲推定部9A、及び表示部10を備えている。
【0042】
移動装置3Bは、廃棄物1の表面に沿って移動可能に設けられた移動体12と、移動体12にアーム13を介し接続されて放射線検出器2を保持する保持部14とを有している。そして、図9(b)で示すように、移動体12に対してアーム13をスライド可能とし、アーム13に対して保持部14を回転可能とすることにより、放射線検出器2の観測中心軸の角度を可変としている。
【0043】
移動制御部4Bは、移動装置3Bを制御し、放射線検出器2を第1の移動モード又は第2の移動モードで移動させる。図9(a)で示す第1の移動モードでは、放射線検出器2の観測中心軸が廃棄物1の表面に対して第1の角度θaとなるように、かつ放射線検出器2と廃棄物1の間の距離が一定となるように、放射線検出器2を廃棄物1の表面に沿って離散的に移動させて計測させる。このとき、放射線検出器2の各移動位置(言い換えれば、各計測位置)に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Saが互いにオーバラップするようになっている。そして、第1の移動モードにおける放射線検出器2の位置情報を測定データ記憶部7Aに出力するようになっている。
【0044】
また、図9(b)で示す第2の移動モードでは、放射線検出器2の観測中心軸が廃棄物1の表面に対して第2の角度θbとなるように、かつ放射線検出器2と廃棄物1の間の距離が一定となるように、放射線検出器2を廃棄物1の表面に沿って離散的に移動させて計測させる。このとき、放射線検出器2の各移動位置(言い換えれば、各計測位置)に対応する廃棄物1の内部の被検査範囲Sbが互いにオーバラップするようになっている。そして、第2の移動モードにおける放射線検出器2の位置情報を測定データ記憶部7Aに出力するようになっている。
【0045】
測定データ記憶部7Aは、第1の移動モードにて移動制御部4Bから入力された放射線検出器2の位置と波高分析器6から入力された計数を関連付け、第1の測定データとして記憶する。また、第2の移動モードにて移動制御部4Bから入力された放射線検出器2の位置と波高分析器6から入力された計数を関連付け、第2の測定データとして記憶するようになっている。
【0046】
基準データ記憶部8Aは、第2の実施形態と同様、放射線検出器2の観測中心軸の角度θaに対応して予め設定された第1の基準値Taを記憶し、放射線検出器2の観測中心軸の角度θbに対応して予め設定された第2の基準値Tbを記憶している。
【0047】
高汚染範囲推定部9Aは、第2の実施形態と同様、測定データ記憶部7Aで記憶された第1の測定データに基づいて第1の範囲Raを取得し、測定データ記憶部7Aで記憶された第2の測定データに基づいて第2の範囲Rbを取得し、それらが重なる範囲Rを、高汚染範囲として推定する。
【0048】
表示部10は、第2の実施形態と同様、廃棄物1の断面とともに、高汚染範囲推定部9Aで推定された高汚染範囲Rを表示する。
【0049】
以上のように構成された本実施形態においても、第2の実施形態と同様、廃棄物1の除染作業に有効な情報として、廃棄物1の内部の高汚染範囲を提示できる。
【0050】
なお、第2の実施形態(及び第3の実施形態)においては、特に説明しなかったが、第1の角度θaが90°に設定されているのであれば、第1の測定データによる計数の分布(言い換えれば、放射線量の分布)が線対称性を有するか否かを判定する機能を有していてもよい。具体的には、例えば図10で示すように、上述した放射線検出器の位置Pa1,Pa2の間の範囲における計数に対し、対称軸Lを中心として線対称な関数F1,F2でフィッテングしたときに、そのフィッテング誤差が許容範囲内であるか否かを判断することにより、線対称性を有するか否かを判定する。そして、高汚染範囲推定部9Aは、第1の測定データによる計数の分布が線対称性を有すると判定した場合に、図11で示すように、対称軸Lに対応する廃棄物1の位置Pa3を中心として第2の範囲Rbを反転させた第3の範囲Rcを取得し、高汚染範囲を、第3の範囲Rcと重なる範囲Rに限定してもよい。
【0051】
あるいは、図12で示すように補正部15を備え、補正部15は、第1の測定データによる計数の分布が線対称性を有すると判定した場合に、その対称軸Lに対応する廃棄物1の位置のみ放射能が存在する場合を仮定して、第2の測定データによる計数の分布(言い換えれば、放射線量の分布)を補正してもよい。具体的には、図13中の曲線Gで示すように、対称軸Lと放射線検出器の間の距離による放射線量の減衰とコンクリートの遮蔽効果を加味して、計数を補正してもよい。これに伴い、高汚染範囲推定部9Aで用いる放射線検出器2Bの位置Pb2は、Pb2’となる。
【0052】
なお、以上においては、1つ又は2つの放射線検出器を用いる場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、3つ以上の放射線検出器を用いてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 廃棄物
2,2A,2B 放射線検出器
3,3A,3B 移動装置
8,8A 基準データ記憶部
9,9A 高汚染範囲推定部
10 表示部
11,11A,11B コリメータ
15 補正部
図1
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