(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施例に係る作業機械の構成例を示す側面図である。
図1において、作業機械としてのショベル(掘削機)1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。
【0011】
また、上部旋回体3は、前方中央部に掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブーム4、アーム5、及び、エンドアタッチメント6を含み、且つ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及び、エンドアタッチメント用油圧シリンダ9を含む。本実施例では、エンドアタッチメント6はバケットであり、エンドアタッチメント用油圧シリンダ9はバケットシリンダである。なお、エンドアタッチメント6は、グラップル等、バケット以外であってもよい。
【0012】
図2は、
図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例を示す図である。なお、
図2の破線は制御圧ラインを示し、
図2の点線は電気信号ラインを示す。
【0013】
油圧ポンプ10L、10Rは、エンジン、電動モータ等の駆動源によって駆動される可変容量型ポンプである。本実施例では、油圧ポンプ10Lは、制御弁11L〜15Lのそれぞれを連通するセンターバイパス油路30Lを通じて作動油タンク22まで作動油を循環させる。また、油圧ポンプ10Lは、センターバイパス油路30Lに平行に伸びるパラレル油路31Lを通じて制御弁12L〜15Lのそれぞれに作動油を供給可能である。同様に、油圧ポンプ10Rは、制御弁11R〜15Rのそれぞれを連通するセンターバイパス油路30Rを通じて作動油タンク22まで作動油を循環させる。また、油圧ポンプ10Rは、センターバイパス油路30Rに平行して伸びるパラレル油路31Rを通じて制御弁12R〜15Rのそれぞれに作動油を供給可能である。なお、以下では、油圧ポンプ10L及び油圧ポンプ10Rは、集合的に「油圧ポンプ10」として参照される場合もある。左右一対で構成される他の構成要素についても同様である。
【0014】
制御弁11Lは、操作装置としての左側走行レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての左側走行用油圧モータ42Lに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
【0015】
制御弁11Rは、走行直進弁としてのスプール弁である。本実施例では、走行直進弁11Rは、4ポート2位置のスプール弁であり、第1弁位置及び第2弁位置を有する。具体的には、第1弁位置は、油圧ポンプ10Lとパラレル油路31Lとを連通する流路と、油圧ポンプ10Rと制御弁12Rとを連通する流路と有する。また、第2弁位置は、油圧ポンプ10Rとパラレル油路31Lとを連通する流路と、油圧ポンプ10Lと制御弁12Rとを連通する流路とを有する。
【0016】
制御弁12Lは、油圧ポンプ10が吐出する作動油をオプションの油圧アクチュエータ(図示せず。)に供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
【0017】
制御弁12Rは、操作装置としての右側走行レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10が吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての右側走行用油圧モータ42Rに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
【0018】
制御弁13Lは、操作装置としての旋回操作レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10が吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ44に供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
【0019】
制御弁13Rは、操作装置としてのバケット操作レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10が吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
【0020】
制御弁14L、14Rは、操作装置としてのブーム操作レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10が吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。なお、制御弁14Lは、ブーム操作レバーが所定のレバー操作量以上でブーム上げ方向に操作された場合に、作動油を追加的にブームシリンダ7に供給する。
【0021】
制御弁15L、15Rは、操作装置としてのアーム操作レバー(図示せず。)が操作された場合に、油圧ポンプ10が吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。なお、制御弁15Rは、アーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合に、作動油を追加的にアームシリンダ8に供給する。
【0022】
なお、左側走行用油圧モータ42L、オプションの油圧アクチュエータ、旋回用油圧モータ44、アームシリンダ8のそれぞれから流出する作動油は、戻り油路32Lを通じて作動油タンク22に排出される。同様に、右側走行用油圧モータ42R、バケットシリンダ9、ブームシリンダ7、アームシリンダ8のそれぞれから流出する作動油は、戻り油路32Rを通じて作動油タンク22に排出される。
【0023】
センターバイパス油路30L、30Rはそれぞれ、最も下流にある制御弁15L、15Rと作動油タンク22との間にネガティブコントロール絞り20L、20Rを備える。なお、以下では、ネガティブコントロールを「ネガコン」と略称する。ネガコン絞り20L、20Rは、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油の流れを制限してネガコン絞り20L、20Rの上流でネガコン圧を発生させる。
【0024】
圧力センサS1、S2は、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生したネガコン圧を検出し、検出した値を電気的なネガコン圧信号としてコントローラ54に対して出力する。
【0025】
圧力センサS3、S4は、油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧を検出し、検出した値を電気的な吐出圧信号としてコントローラ54に対して出力する。
【0026】
なお、左側走行レバー、右側走行レバー、アーム操作レバー、旋回操作レバー、ブーム操作レバー、バケット操作レバー等の操作装置には操作内容検出部が取り付けられる。操作内容検出部は、例えば、各操作装置が生成するパイロット圧を検出する圧力センサ(図示せず。)である。これら圧力センサは、検出した値を電気的なパイロット圧信号としてコントローラ54に対して出力する。
【0027】
コントローラ54は、油圧回路を制御する機能要素であり、例えば、CPU、RAM、ROM、NVRAM等を備えたコンピュータである。本実施例では、コントローラ54は、圧力センサ等の操作内容検出部の出力に基づいて各種操作装置の操作内容(例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等である。)を電気的に検出する。なお、操作内容検出部は、各種操作レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、圧力センサ以外のセンサで構成されてもよい。
【0028】
そして、コントローラ54は、各種操作装置の操作内容に応じて可変チェック弁50、メイクアップ弁51等を動作させる各種機能要素に対応するプログラムをCPUに実行させる。
【0029】
可変チェック弁50は、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断可能な機構の一例であり、コントローラ54が出力する指令に応じて動作する。本実施例では、可変チェック弁50は、パラレル油路31Rと制御弁14Rとを接続する油路33に設置されるロードチェック弁である。具体的には、可変チェック弁50は、制御弁14Rからパラレル油路31Rへの作動油の流れを防止し、且つ、パラレル油路31Rの作動油の圧力が開放圧を上回った場合にパラレル油路31Rから制御弁14Rへの作動油の流れを許容する。
【0030】
図3は、可変チェック弁50の構成例を示す概略図である。具体的には、可変チェック弁50は、主に弁体50a、バネ50b、及び電磁弁50cを含む。弁体50aは、パラレル油路31Rの作動油の圧力が開放圧を上回った場合に油路33を開くように移動し、パラレル油路31Rの作動油の圧力が開放圧以下の場合に油路33を閉じるように移動する。バネ50bは、油路33を閉じるように弁体50aを移動させる力(第1閉弁力)を発生させる。
【0031】
電磁弁50cは、コントローラ54が出力する電流指令に応じて動作する電磁比例弁である。本実施例では、電磁弁50cは、固定容量型ポンプであるコントロールポンプ55が吐出する作動油を利用して二次圧を調整する。二次圧は、バネ50bと同様、油路33を閉じるように弁体50aを移動させる力(第2閉弁力)を発生させる。
【0032】
可変チェック弁50は、パラレル油路31Rの作動油の圧力による弁体50aを押す力(開弁力)が第1閉弁力と第2閉弁力の合力である閉弁力以下の場合に油路33を閉じ、開弁力が閉弁力より大きい場合に油路33を開く。また、コントローラ54は、電磁弁50cに対する電流指令の大きさを調整することで第2閉弁力の大きさを調整する。このように、コントローラ54は、可変チェック弁50を電子制御することで油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通・遮断を切り替えることができる。
【0033】
メイクアップ弁51は、ブームシリンダ7のロッド側油室における作動油の圧力が負圧になるのを防止する。ロッド側油室でのキャビテーションの発生を防止するためである。本実施例では、メイクアップ弁51は、戻り油路32Rとブームシリンダ7のロッド側油室とを接続するメイクアップ油路34に設置される可変チェック弁であり、可変チェック弁50と同様の構成を有する。そのため、コントローラ54は、メイクアップ弁51を電子制御することでメイクアップ油路34の流路面積を調整できる。具体的には、コントローラ54は、メイクアップ弁51としての可変チェック弁の開放圧を低めに調整してメイクアップ油路34の流路面積を増大させることができる。メイクアップ弁51の上流側と下流側との間の圧力差が同じであればその開放圧が低いほどメイクアップ弁51の開口面積が大きくなるためである。なお、メイクアップ弁51は、開放圧が固定されたチェック弁であってもよい。
【0034】
チェック弁52は、パラレル油路31Rと制御弁13Rとを接続する油路35に設置されるチェック弁である。具体的には、チェック弁52は、制御弁13Rからパラレル油路31Rへの作動油の流れを防止し、且つ、パラレル油路31Rの作動油の圧力が所定の開放圧を上回った場合にパラレル油路31Rから制御弁13Rへの作動油の流れを許容する。油圧ポンプ10と制御弁12L〜15L、12R、15Rのそれぞれとの間に設置されるチェック弁についても同様である。
【0035】
ポンプレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を制御する機構である。本実施例では、ポンプレギュレータ40L、40Rは、コントローラ54が生成する指令に応じて油圧ポンプ10L、10Rの斜板傾転角を調整して油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を制御する。
【0036】
例えば、ショベル1における油圧アクチュエータが何れも操作されていない状態では、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油は、センターバイパス油路30L、30Rを通ってネガコン絞り20L、20Rに至り、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。この場合、ポンプレギュレータ40L、40Rは、ネガコン圧信号に基づいてコントローラ54が生成する指令に応じて油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させる。その結果、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油がセンターバイパス油路30L、30Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)が抑制される。
【0037】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油は、その油圧アクチュエータに対応する制御弁を介してその油圧アクチュエータに流れ込む。そのため、ネガコン絞り20L、20Rに至る量は減少或いは消滅し、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧は低下する。この場合、ポンプレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させ、各油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、各アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0038】
また、油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧が、吐出量に応じて決まる所定値を上回った場合、ポンプレギュレータ40L、40Rは、吐出圧信号に基づいてコントローラ54が生成する指令に応じて油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させる。油圧ポンプ10L、10Rの吸収馬力が駆動源としてのエンジンの出力馬力を上回るのを防止するためである。
【0039】
なお、ポンプレギュレータ40L、40Rは、ネガコン絞り20L、20Rの上流のネガコン圧、油圧ポンプ10Lの吐出圧、及び油圧ポンプ10Rの吐出圧を利用して、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を油圧的に制御してもよい。
【0040】
次に、
図4を参照して油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7及びバケットシリンダ9との間の作動油の流れについて説明する。なお、
図4は、
図2の油圧回路における制御弁13R及び制御弁14Rを含む部分の断面図である。
【0041】
制御弁14Rは、主に、バルブボディ14Ra(左下がりの斜線ハッチングで示す部分)と、バルブボディ14Raに形成されたバルブ穴内を摺動するブームスプール14Rb(右下がりの斜線ハッチングで示す部分)とを含む。
【0042】
バルブボディ14Raは、6つのランド部L1〜L6を有する。また、ランド部L1とランド部L2との間には戻り油路32Rを構成する第1戻り油路32R1が形成され、ランド部L5とランド部L6との間には戻り油路32Rを構成する第2戻り油路32R2が形成される。また、ランド部L2とランド部L3との間には環状空間V1が形成され、ランド部L3とランド部L4との間には環状空間V2が形成され、ランド部L4とランド部L5との間には環状空間V3が形成される。
【0043】
ブームスプール14Rbは、軸部Aと、軸部A上に形成される4つのランド部L7〜L10とを有する。また、ランド部L7とランド部L8との間には環状空間V4が形成され、ランド部L8とランド部L9との間には環状空間V5が形成され、ランド部L9とランド部L10との間には環状空間V6が形成される。また、ブームスプール14Rbには再生油路RCが形成される。
【0044】
環状空間V1は、バルブボディ14Raのランド部L2とランド部L3との間でバルブ穴の周りに形成される環状空間である。また、環状空間V1と向き合うバルブボディ14Raの部分には、ブームシリンダ7のロッド側油室と制御弁14Rとを接続する油路に通じる第1シリンダポートP1が形成される。また、環状空間V1には、メイクアップ弁51を含むメイクアップ油路34が接続され、第1戻り油路32R1の作動油が流入可能である。また、環状空間V1は、ブームスプール14Rbが
図4の左方向に摺動すると、環状空間V4を介して第1戻り油路32R1と連通する。また、環状空間V1は、ブームスプール14Rbが
図4の右方向に摺動すると、環状空間V5を介して環状空間V2と連通する。
【0045】
環状空間V2は、バルブボディ14Raのランド部L3とランド部L4との間でバルブ穴の周りに形成される環状空間である。また、環状空間V2と向き合うバルブボディ14Raの部分には、油圧ポンプ10Rと制御弁14Rとを接続する油路33に通じるポンプポートP2が形成される。また、環状空間V2は、ブームスプール14Rbが
図4の左方向に摺動すると、環状空間V5を介して環状空間V3と連通する。また、環状空間V2は、ブームスプール14Rbが
図4の右方向に摺動すると、環状空間V5を介して環状空間V1と連通する。
【0046】
環状空間V3は、バルブボディ14Raのランド部L4とランド部L5との間でバルブ穴の周りに形成される環状空間である。また、環状空間V3と向き合うバルブボディ14Raの部分には、ブームシリンダ7のボトム側油室と制御弁14Rとを接続する油路に通じる第2シリンダポートP3が形成される。また、環状空間V3は、ブームスプール14Rbが
図4の左方向に摺動すると、環状空間V5を介して環状空間V2と連通する。また、環状空間V3は、ブームスプール14Rbが
図4の右方向に摺動すると、環状空間V6を介して第2戻り油路32R2と連通する。
【0047】
再生油路RCは、ブームスプール14Rbが
図4の右方向に摺動したときに、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させるための油路である。本実施例では、再生油路RCは、ランド部L8及びランド部L9のそれぞれの外周面に開口し、ブームスプール14Rbが
図4の右方向に摺動したときに、環状空間V1と環状空間V3とを連通できるように形成される。なお、ブーム下げ速度は、再生油路RCの開口面積、及び、第2シリンダポートP3の開口面積(環状空間V3と第2戻り油路32R2との間の流路の流路面積)に応じて決まり、開口面積が大きいほど速い。
【0048】
制御弁13Rは、制御弁14Rと同様、第1シリンダポートQ1、ポンプポートQ2、第2シリンダポートQ3、第1戻り油路32R1、及び第2戻り油路32R2のそれぞれの間の接続関係を適宜切り替え、油圧ポンプ10Rからバケットシリンダ9を通じて作動油タンク22に向かう作動油の流れを制御する。なお、第1シリンダポートQ1は、バケットシリンダ9のロッド側油室と制御弁13Rとを接続する油路に通じるポートである。また、ポンプポートQ2は、油圧ポンプ10Rと制御弁13Rとを接続する油路35に通じるポートであり、第2シリンダポートQ3は、バケットシリンダ9のボトム側油室と制御弁13Rとを接続する油路に通じるポートである。なお、制御弁13Rは、制御弁14Rと同様の構成を有するため、その詳細の説明を省略する。
【0049】
次に、
図5を参照してブーム下げ操作が単独で行われた場合の油圧回路の状態について説明する。なお、
図5は、ブーム下げ操作が単独で行われた場合の油圧回路の状態を示す図であり、
図2に対応する。また、本実施例では、ブーム下げ操作は、掘削アタッチメントを空中で動かす際にブーム4を下降させるための操作を意味する。また、
図5の太実線はブームシリンダ7に向かう作動油の流れを表し、
図5の太点線は作動油タンクに向かう作動油の流れを表す。また、本実施例では、ブーム下げ操作はハーフレバー操作で行われる。「ハーフレバー操作」はフルレバー操作よりも小さい操作量で行われるレバー操作を意味する。また、「フルレバー操作」は、所定の操作量以上で行われるレバー操作を意味し、所定の操作量は例えば80%以上の操作量である。なお、操作量100%は操作レバーを最大限傾斜させたときの操作量に対応し、操作量0%は操作レバーを中立にしたとき(操作レバーを操作していないとき)の操作量に対応する。
【0050】
具体的には、ブーム操作レバーが下げ方向に操作されると、制御弁14Rは、図の右側のパイロットポートでパイロット圧を受けて図の左側に移動する。
【0051】
制御弁14Rが左に移動するとセンターバイパス油路30Rが遮断されるため、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油はパラレル油路31Rを通って制御弁14Rに向かう。
【0052】
このとき、コントローラ54は、可変チェック弁50の開放圧を低めに調整し、パラレル油路31Rから制御弁14Rに向かう作動油の流れを許容する。
【0053】
そして、パラレル油路31Rの作動油は、制御弁14Rを通じてブームシリンダ7のロッド側油室に流入する。また、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油は、制御弁14R及び戻り油路32Rを通じて作動油タンク22に排出される。
【0054】
次に、
図6を参照してブーム下げ操作が単独で行われた場合の制御弁14Rにおける作動油の流れについて説明する。なお、
図6は、
図2の油圧回路における制御弁13R及び制御弁14Rを含む部分の断面図であり、
図4に対応する。また、本実施例では、ブーム下げ操作はハーフレバー操作で行われる。
【0055】
具体的には、ブーム操作レバーが下げ方向に操作されると、制御弁14Rのブームスプール14Rbは、
図4に示す状態から図の右側に移動する。なお、説明の便宜のために左右を逆転させているが、
図6のブームスプール14Rbの右側への移動は、
図5における制御弁14Rの左側への移動に対応する。
【0056】
ブームスプール14Rbが右側へ移動すると、環状空間V3が環状空間V6を介して第2戻り油路32R2と連通する。そのため、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部は、第2シリンダポートP3、環状空間V3、環状空間V6、第2戻り油路32R2を通じて作動油タンク22に排出される。
【0057】
また、ブームスプール14Rbが右側へ移動すると、環状空間V2が環状空間V5を介して環状空間V1と連通する。そのため、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油は、可変チェック弁50、油路33、ポンプポートP2を通じて環状空間V2に流入し、環状空間V5及び環状空間V1、第1シリンダポートP1を通じてブームシリンダ7のロッド側油室に流入する。
【0058】
また、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の別の一部は、第2シリンダポートP3、環状空間V3、再生油路RCを通じて環状空間V1に流入し、油圧ポンプ10Rからの作動油と合流してブームシリンダ7のロッド側油室に再生される。
【0059】
次に、
図7を参照して排土操作が行われた場合の油圧回路の状態について説明する。なお、
図7は、排土操作が行われた場合の油圧回路の状態を示す図であり、
図2及び
図5に対応する。また、
図7の太実線はブームシリンダ7、アームシリンダ8、又はバケットシリンダ9に向かう作動油の流れを表し、
図7の太点線は作動油タンクに向かう作動油の流れを表す。また、本実施例では、ブーム下げ操作はハーフレバー操作で行われ、アーム開き操作はフルレバー操作で行われ、バケット開き操作はフルレバー操作で行われる。
【0060】
具体的には、ブーム操作レバーが下げ方向に操作されると、制御弁14Rは、図の右側のパイロットポートでパイロット圧を受けて図の左側に移動する。また、バケット操作レバーが開き方向に操作されると、制御弁13Rは、図の右側のパイロットポートでパイロット圧を受けて図の左側に移動する。また、アーム操作レバーが開き方向に操作されると、制御弁15Lは、図の右側のパイロットポートでパイロット圧を受けて図の左側に移動する。
【0061】
制御弁14Rの上流にある制御弁13Rが左側に移動するとセンターバイパス油路30Rが遮断されるため、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油はパラレル油路31Rを通って制御弁13R及び制御弁14Rに向かう。
【0062】
このとき、コントローラ54は、可変チェック弁50の開放圧を高めに調整し、パラレル油路31Rから制御弁14Rに向かう作動油の流れを遮断する。その結果、パラレル油路31Rの作動油は、油路35、制御弁13Rを通じてバケットシリンダ9のロッド側油室に流入する。また、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出する作動油は、制御弁13R及び戻り油路32Rを通じて作動油タンク22に排出される。
【0063】
また、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部は、制御弁14Rを通じて戻り油路32Rに至り、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出する作動油と合流して作動油タンク22に排出される。
【0064】
また、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の別の一部は再生油路RCを通じてブームシリンダ7のロッド側油室に再生される。
【0065】
このとき、コントローラ54は、メイクアップ弁51の開放圧を低めに調整してメイクアップ油路34の流路面積を増大させる。その結果、戻り油路32Rの作動油の一部は、メイクアップ油路34を通って再生油路RCからの作動油に合流してブームシリンダ7のロッド側油室に流入する。
【0066】
次に、
図8を参照して排土操作が行われた場合の制御弁13R及び制御弁14Rにおける作動油の流れについて説明する。なお、
図8は、
図2の油圧回路における制御弁13R及び制御弁14Rを含む部分の断面図であり、
図4及び
図6に対応する。また、本実施例では、ブーム下げ操作はハーフレバー操作で行われ、バケット開き操作はフルレバー操作で行われる。
【0067】
具体的には、ブーム操作レバーが下げ方向に操作されると、制御弁14Rのバルブスプールは、
図4に示す状態から図の右側に移動する。同様に、バケット操作レバーが開き方向に操作されると、制御弁13Rのバケットスプール13Rbは、
図4に示す状態から図の右側に移動する。なお、説明の便宜のために左右を逆転させているが、
図8のバケットスプール13Rb、ブームスプール14Rbの右側への移動は、
図7における制御弁13R、14Rの左側への移動に対応する。
【0068】
ブームスプール14Rbが右側へ移動すると、環状空間V3が環状空間V6を介して第2戻り油路32R2と連通する。そのため、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部は、第2シリンダポートP3、環状空間V3、環状空間V6、第2戻り油路32R2を通じて作動油タンク22に排出される。
【0069】
また、ブームスプール14Rbが右側へ移動すると、環状空間V2が環状空間V5を介して環状空間V1と連通する。このとき、コントローラ54は、可変チェック弁50の開放圧を高めに調整し、パラレル油路31Rから制御弁14Rに向かう作動油の流れを遮断する。そのため、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油は、環状空間V2には流入しない。一方で、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油は、バケットスプール13Rbが右側へ移動する場合には、チェック弁52、油路35、ポンプポートQ2、第1シリンダポートQ1を通じてバケットシリンダ9のロッド側油室に流入する。また、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出する作動油は、第2シリンダポートQ3を通じて第1戻り油路32R1に至り、その一部が作動油タンク22に排出される。
【0070】
また、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油が環状空間V2に流入しないため、ブームシリンダ7のロッド側油室の体積が膨張すると、環状空間V1の作動油の圧力は低下する。そして、環状空間V1の作動油の圧力が第1戻り油路32R1の作動油の圧力よりも低くなると、第1戻り油路32R1の作動油の別の一部は、メイクアップ油路34を通って環状空間V1に流入する。そして、環状空間V1に流入した作動油は、再生油路RCを流れる作動油に合流してブームシリンダ7のロッド側油室に流入する。このとき、コントローラ54は、メイクアップ弁51の開放圧を低めに調整してメイクアップ油路34の流路面積を増大させている。そのため、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給しなくとも、十分な量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給できる。
【0071】
次に、
図9を参照し、ブーム下げ操作を含む複合操作の際にコントローラ54が再生油と戻り油とでブーム4を下降させる処理(以下、「複合操作時処理」とする。)について説明する。なお、本実施例では、「再生油」はブームシリンダ7のボトム側油室から流出してブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油を意味し、「戻り油」はバケットシリンダ9から作動油タンク22に排出される作動油を意味する。また、
図9は、複合操作時処理の一例の流れを示すフローチャートであり、コントローラ54は、この複合操作時処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0072】
最初に、コントローラ54は、所定の複合操作が行われたか否かを判定する(ステップST1)。本実施例では、所定の複合操作は、ブーム下げ操作とエンドアタッチメント操作を含む複合操作である。具体的には、コントローラ54は、操作内容検出部としての各種圧力センサの出力に基づいてブーム下げ操作及びバケット開き操作を含む複合操作が行われたか否かを判定する。なお、所定の複合操作は、ブーム下げ操作、アーム開き操作、及びバケット開き操作を含む複合操作としての排土操作であってもよく、ブーム下げ操作とバケット閉じ操作を含む複合操作であってもよい。
【0073】
所定の複合操作が行われていないと判定した場合(ステップST1のNO)、コントローラ54は、今回の複合操作時処理を終了させる。
【0074】
また、所定の複合操作が行われたと判定した場合(ステップST1のYES)、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断する(ステップST2)。本実施例では、コントローラ54は、制御弁14Rのメータイン側の油路33を遮断する。具体的には、油路33に設置された可変チェック弁50を構成する電磁弁50cに対して電流指令を与えて可変チェック弁50の開放圧を増大させることで油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断する。
【0075】
また、コントローラ54は、ブームシリンダ7のロッド側油室に関するメイクアップ油路34の流路面積を増大させる(ステップST3)。本実施例では、コントローラ54は、メイクアップ弁51としての可変チェック弁を構成する電磁弁に対して電流指令を与えてその可変チェック弁の開放圧を低減させることでメイクアップ油路34の流路面積を増大させる。
【0076】
なお、ステップST2及びステップST3の処理は順不同であり、ステップST3の処理が実行された後でステップST2の処理が実行されてもよく同時に実行されてもよい。
【0077】
上述の処理により、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給することなく、再生油及び戻り油のみをブームシリンダ7のロッド側油室に供給できる。そのため、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油の全てをバケットシリンダ9のロッド側油室に供給できる。その結果、バケット6の開き速度の低下を防止でき、さらにはバケット6の開き速度を増大できる。そして、コントローラ54は、ブーム下げ速度、アーム開き速度、及びバケット開き速度のマッチング不良を防止できる。具体的には、コントローラ54は、例えば、アーム・バケット同時到達性を向上させることができる。なお、アーム・バケット同時到達性は、フルレバー操作されたアーム5が所定の第1姿勢から所定の第2姿勢に到達するまでに要する時間と、フルレバー操作されたバケット6が所定の第1姿勢から所定の第2姿勢に到達するまでに要する時間とをマッチさせる性能を意味する。そして、ショベル1は、アーム・バケット同時到達性が高いほど、例えばトラックの荷台に偏りなく土砂を排土できる。
【0078】
また、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断するため、制御弁14Rのところで圧力損失を発生させることもない。
【0079】
また、コントローラ54は、メイクアップ油路34の流路面積を増大させるため、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出して戻り油路32Rを流れる作動油から十分な量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入(回生)させることができる。そのため、ブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油の量が不足することはなく、キャビテーションを発生させることもない。また、コントローラ54は、戻り油路32Rの作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させるため、戻り油路32Rの作動油の圧力を低減させることができ、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出する作動油の圧力損失(メータアウト損)を低減させることができる。
【0080】
次に、
図10を参照し、本発明の実施例に係る作業機械に搭載される油圧回路の別の構成例について説明する。なお、
図10は、
図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例を示す図であり、
図7に対応する。また、
図10の太実線はブームシリンダ7、アームシリンダ8、又はバケットシリンダ9に向かう作動油の流れを表し、
図10の太点線は作動油タンクに向かう作動油の流れを表す。
【0081】
図10の油圧回路は、制御弁14Lの代わりに制御弁14Laを備える点で
図7の油圧回路と相違する。なお、その他の点で両者は共通する。そのため、共通点の説明を省略し相違点を詳細に説明する。
【0082】
制御弁14Laは、6ポート3位置のスプール弁であり、ブーム上げ操作時弁位置、中立弁位置、及び、ブーム下げ操作時弁位置を有する。
【0083】
ブーム上げ操作時弁位置(右側の弁位置)は、ブーム操作レバーが上げ方向に操作された場合に採用される弁位置である。制御弁14Laは、ブーム上げ操作時弁位置が採用された場合、油圧ポンプ10が吐出する作動油をブームシリンダ7のボトム側油室に流入させる。
【0084】
中立弁位置(中央の弁位置)は、ブーム操作レバーが操作されていない場合に採用される弁位置である。制御弁14Laは、中立弁位置が採用された場合、センターバイパス油路30Lを連通させる。
【0085】
ブーム下げ操作時弁位置(左側の弁位置)は、ブーム操作レバーが下げ方向に操作され、且つ、アーム操作レバーが操作された場合に採用される弁位置である。制御弁14Laは、ブーム下げ操作時弁位置が採用された場合、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油と、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部とを合流させ、合流後の作動油がアームシリンダ8に供給されるようにする。
【0086】
図10に示すように、ブーム下げ操作の際にブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部を油圧ポンプ10Lが吐出する作動油に合流(回生)させる場合であっても、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給することなく、再生油及び戻り油のみをブームシリンダ7のロッド側油室に供給できる。そのため、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油の全てをバケットシリンダ9のロッド側油室に供給できる。その結果、バケット6の開き速度の低下を防止でき、さらにはバケット6の開き速度を増大できる。そして、コントローラ54は、ブーム下げ速度、アーム開き速度、及びバケット開き速度のマッチング不良を防止できる。
【0087】
また、コントローラ54は、メイクアップ油路34の流路面積を増大させるため、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出して戻り油路32Rを流れる作動油から十分な量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させることができる。そのため、ブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油の量が不足することはなく、キャビテーションを発生させることもない。
【0088】
上述より、本発明の実施例に係るショベルは、ブーム下げ操作とエンドアタッチメント操作とを含む複合操作が行われた場合、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断し、且つ、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油(再生油)、及び、戻り油路32Rを流れる作動油(戻り油)をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させる。そのため、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油の全てをバケットシリンダ9に供給できる。その結果、バケット6の動作速度の低下を防止でき、さらにはバケット6の動作速度を増大できる。また、アーム動作速度とバケット動作速度とのマッチング不良を防止できる。
【0089】
また、ブーム下げ操作とエンドアタッチメント操作とを含む複合操作が行われているときのメイクアップ油路34の流路面積は、ブーム下げ操作とエンドアタッチメント操作とを含む複合操作が行われていないときのメイクアップ油路34の流路面積より大きくなるように調整される。そのため、本発明の実施例に係るショベルは、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断したとしても、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出して戻り油路32Rを流れる作動油から十分な量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させることができる。その結果、ブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油の量が不足することはなく、キャビテーションを発生させることもない。
【0090】
また、ブームスプール14Rbは、ブームシリンダ7のロッド側油室に接続される第1シリンダポートP1、油圧ポンプ10Rに接続されるポンプポートP2、及びブームシリンダ7のボトム側油室に接続される第2シリンダポートP3を有する。そして、戻り油路32Rは、バケット開き操作が行われた場合にバケットシリンダ9から流出する作動油が流れる第1戻り油路32R1と、バケット閉じ操作が行われた場合にバケットシリンダ9から流出する作動油が流れる第2戻り油路32R2とを含む。また、第1シリンダポートP1は、第2戻り油路32R2よりも第1戻り油路32R1に近いところに形成される。そのため、メイクアップ油路34の長さを必要最小限の長さに制限でき、メイクアップ油路34の管路抵抗を抑制できる。
【0091】
また、コントローラ54は、可変チェック弁50を電子制御することで油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通・遮断を切り替える。また、コントローラ54は、メイクアップ弁51を電子制御することでメイクアップ油路34の流路面積の大きさを調整する。そのため、ブームシリンダ7に流出入する作動油の流れを簡易且つ迅速に制御できる。
【0092】
次に、
図11を参照し、本発明の実施例に係る作業機械に搭載される油圧回路の更に別の構成例について説明する。なお、
図11は、
図1のショベルに搭載される油圧回路の更に別の構成例を示す図である。また、
図11の太実線はブームシリンダ7、アームシリンダ8、又はバケットシリンダ9に向かう作動油の流れを表し、
図11の太点線は作動油タンクに向かう作動油の流れを表す。
【0093】
図11の油圧回路は、再生油路RC、メイクアップ油路34、及びメイクアップ弁51がコントロールバルブ17の外部に配置される点、並びに、開閉弁56、可変絞り57、及び可変絞り58が追加された点で
図2の油圧回路と相違する。なお、その他の点で両者は共通する。そのため、共通点の説明を省略し相違点を詳細に説明する。
【0094】
コントロールバルブ17は、制御弁11L〜15L、制御弁11R〜15Rを含むバルブ集合体である。なお、
図2の油圧回路は、再生油路RC、メイクアップ油路34、及びメイクアップ弁51をコントロールバルブ17内に含むように構成される。
【0095】
開閉弁56は、再生油路RCの連通・遮断を切り替える機能要素の一例であり、コントローラ54が出力する指令に応じて動作する。本実施例では、開閉弁56は2ポート2位置の電磁開閉弁であり、第1弁位置及び第2弁位置を有する。具体的には、第1弁位置は、ブームシリンダ7のボトム側油室とロッド側油室とを連通する流路と、その流路を流れる作動油の流量を抑制する絞りと、ボトム側油室への作動油の流れを防止するチェック弁とを有する。また、開閉弁56は、第2弁位置にある場合にボトム側油室とロッド側油室との連通を遮断する。なお、開閉弁56は、図示のような電磁開閉弁ではなく、可変絞り57と同様の可変絞りであってもよい。
【0096】
可変絞り57は、ブームシリンダ7のボトム側油室から制御弁14Rへ流れる作動油の流量を調整する機能要素の一例であり、コントローラ54が出力する指令に応じて流路面積を増減させる。コントローラ54は、可変絞り57の流路面積を小さくすることで再生油路RCを流れる作動油の流量を増大させ、可変絞り57の流路面積を大きくすることで再生油路RCを流れる作動油の流量を低減させることができる。
【0097】
可変絞り58は、メイクアップ油路34を流れる作動油の流量を調整する機能要素の一例である。可変絞り58は、可変絞り57と同様、コントローラ54が出力する指令に応じて流路面積を増減させる。コントローラ54は、バケット開き操作が行われていない場合(例えばバケット閉じ操作が行われている場合)に可変絞り58の流路面積を小さくし、メイクアップ油路34を通ってブームシリンダ7へ作動油が流入するのを防止する。一方で、コントローラ54は、ブーム下げ操作及びバケット開き操作を含む複合操作が行われている場合には可変絞り58の流路面積を大きくしてバケットシリンダ9から流出した作動油がメイクアップ油路34を円滑に流れるようにする。
【0098】
図11に示すように、再生油路RC、メイクアップ油路34、及びメイクアップ弁51がコントロールバルブ17の外部に配置される場合であっても、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に供給することなく、再生油及び戻り油のみをブームシリンダ7のロッド側油室に供給できる。そのため、コントローラ54は、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油の全てをバケットシリンダ9のロッド側油室に供給できる。その結果、バケット6の開き速度の低下を防止でき、さらにはバケット6の開き速度を増大できる。そして、コントローラ54は、ブーム下げ速度、アーム開き速度、及びバケット開き速度のマッチング不良を防止できる。なお、本実施例では、バケットシリンダ9のボトム側油室と制御弁13Rとを繋ぐ管路が戻り油路の一部を構成する。
【0099】
また、
図11の油圧回路は、開閉弁56及び可変絞り57のそれぞれが担う機能を制御弁14Rから分離して開閉弁56及び可変絞り57を制御弁14Rの外部に配置した構成をとる。しかしながら、開閉弁56が担う機能のみが制御弁14Rから分離されてもよい。この場合、開閉弁56のみが制御弁14Rの外部に配置され、可変絞り57は制御弁14R内に統合される。或いは、可変絞り57が担う機能のみが制御弁14Rから分離されてもよい。この場合、可変絞り57のみが制御弁14Rの外部に配置され、開閉弁56は制御弁14R内に統合される。
【0100】
また、コントローラ54は、メイクアップ油路34の流路面積を増大させるため、バケットシリンダ9のボトム側油室から流出する作動油から十分な量の作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させることができる。そのため、ブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油の量が不足することはなく、キャビテーションを発生させることもない。
【0101】
また、
図11の油圧回路は
図10に示すような制御弁14Laを採用してもよい。この場合、コントローラ54は、排土操作が行われたときに油圧ポンプ10Lが吐出する作動油とブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部とを合流させ、合流後の作動油がアームシリンダ8に供給されるようにする。
【0102】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0103】
例えば、上述の実施例では、コントローラ54は、可変チェック弁50を電子制御して油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、可変チェック弁50は、電磁開閉弁等の他のタイプの弁であってもよい。
【0104】
また、上述の実施例では、コントローラ54は、メイクアップ弁51としての可変チェック弁を電子制御してメイクアップ油路34の流路面積を調整する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、メイクアップ弁51は、コントローラ54からの電流指令に応じて弁の開口面積を直接的に変化させる電磁比例弁等の他のタイプの弁であってもよい。
【0105】
また、上述の実施例では、ブーム下げ操作を含む複合操作の際に油圧ポンプ10Lが吐出する作動油とブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の一部とを合流させ、合流後の作動油をアームシリンダ8に流入させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、合流後の作動油は、旋回用油圧モータ44等の他の油圧アクチュエータに供給されてもよい。
【0106】
また、上述の実施例では、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9は基本的に油圧ポンプ10Rが吐出する作動油によって駆動され、且つ、アームシリンダ8は基本的に油圧ポンプ10Lが吐出する作動油によって駆動される。そして、コントローラ54は、ブーム下げ操作を含む複合操作の際に、油圧ポンプ10Rとブームシリンダ7との間の連通を遮断し、且つ、エンドアタッチメント用油圧シリンダとしてのバケットシリンダ9から流出する戻り油と再生油とでブーム4を下降させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、バケットシリンダ9以外の別の油圧シリンダ(例えばアームシリンダ8)から流出する作動油としての戻り油と再生油とでブーム4を下降させてもよい。
【0107】
また、本願は、2014年5月19日に出願した日本国特許出願2014−103711号に基づく優先権を主張するものであり、これらの日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。