特許第6434522号(P6434522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434522
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ホウ素化アレーンを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20181126BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
   C07F5/02 C
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】114
(21)【出願番号】特願2016-540434(P2016-540434)
(86)(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公表番号】特表2016-536336(P2016-536336A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014054366
(87)【国際公開番号】WO2015035217
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月23日
(31)【優先権主張番号】61/874,249
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/012,684
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】508007514
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF TRUSTEES OF MICHIGAN STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ミルトン,アール.,スリー
(72)【発明者】
【氏名】マレクズカ,ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤスンダラ,チャトュリカ
(72)【発明者】
【氏名】オッペンハイマー,ジョッシアン
(72)【発明者】
【氏名】サバソヴズ,ドミトリース
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0281939(US,A1)
【文献】 特開2010−083874(JP,A)
【文献】 特表2011−509300(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/016557(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0030213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素化アレーンを形成する方法であって、
1〜4つの置換基を含む置換アレーン環を含む基質であって、前記アレーン環が、CH活性化に電子的に有利な第1の位置において置換されておらず、かつCH活性化に立体的に有利な第2の位置において置換されていない、基質を用意するステップ、ならびに
第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、前記基質を、イリジウム前駆錯体、少なくとも1つの窒素ヘテロ原子を含む電子不足二座配位子、およびホウ素化試薬に接触させるステップを含み、
前記電子不足二座配位子が、式IVaによって定義される化合物
【化1】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、R10の少なくとも1つが、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、およびC〜Cペルフルオロアルキル基から選択されることを条件とする)を含み、
前記第1のホウ素化アレーンが、1〜4つの置換基、および前記第1の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
前記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、1〜4つの置換基、および前記第2の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
前記第1のホウ素化アレーンと前記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ホウ素化アレーンを形成する方法。
【請求項2】
前記アレーン環が、1〜3つの置換基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アレーン環が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されている、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記基質が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環であって、前記電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ前記電子吸引基に対しメタ位で置換されていない、フェニル環を含み、
前記第1のホウ素化アレーンが、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに前記電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含み、
前記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに前記電子吸引基に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基質が、2−,4−二置換ピリジン環、2−,6−二置換ピリジン環、2−,4−,6−三置換ピリジン環、および2−置換ピリジン環からなる群から選択されるピリジン環を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ホウ素化アレーンを形成する方法であって、
電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分により置換されている芳香族環を含む基質であって、前記芳香族環が、前記部分に対しオルト位で置換されておらず、かつ前記部分に対しメタ位で置換されていない、基質を用意するステップ、ならびに
第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、前記基質を、イリジウム前駆錯体、単座ピリジン配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含み、
前記第1のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびに前記部分に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含み、
第2のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびに前記部分に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含み、
前記第1のホウ素化アレーンと前記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ホウ素化アレーンを形成する方法。
【請求項7】
前記部分が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基質が、式Iによって定義される化合物
【化2】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)を含み、
前記第1のホウ素化アレーンが、式IIによって定義される化合物
【化3】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含み、
前記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、式IIIによって定義される化合物
【化4】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含む、請求項1から4、6、または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含む、請求項1から4または6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記基質が1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含み、かつ前記第1のホウ素化アレーンが、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ボロン酸誘導体を含む、請求項1から4または6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体、Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体、Ir(I)−メシチレン前駆錯体、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体、およびそれらの組合せからなる群から選択される、イリジウム錯体を含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記基質、第1のホウ素化アレーン、および、第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Clおよび−Brからなる群から選択される置換基を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記基質が、以下の式により定義される化合物
【化5】
(式中、
Xは、電子吸引基または指向型メタル化基から選択される部分であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、−Clおよび−Brであり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)を含み、
前記第1のホウ素化アレーンが、以下の式によって定義される化合物
【化6】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含み、
前記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、以下の式によって定義される化合物
【化7】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含み、
前記第1のホウ素化アレーンと前記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも25:1である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップをさらに含む、請求項12から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1のホウ素化アレーンまたは前記脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、前記第1のホウ素化アレーンまたは前記脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンと前記反応体とをクロスカップリングするステップをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、ホウ素化アレーンを形成する方法、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリールボロン酸およびアリールボロン酸エステルは、有機化学における用途の広い試薬である。特に、アリールボロン酸およびアリールボロン酸エステルは、Suzuki型クロスカップリング反応などの、様々なクロスカップリング反応に関与することができ、このカップリング反応は、以下に一般に例示される通り、炭素−炭素結合を形成することができる。
【0003】
【化1】
【0004】
結果として、アリールボロン酸エステルおよびアリールボロン酸は、しばしば、医薬品および農業化学品を含む、高度に官能基化されている有機化合物の合成における鍵となる中間体となる。置換アリールボロン酸および置換アリールボロン酸エステルを調製する位置選択的な方法を含む、アリールボロン酸およびアリールボロン酸エステルを調製するための改善方法は、医薬品および農業化学品を含む、重要なクラスの有機化合物の合成を改善する可能性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属触媒によるC−H活性化−ホウ素化は、芳香族前駆体から、単一ステップでアリールボロン酸およびアリールボロン酸エステルを調製するために使用することができる。金属触媒によるC−H活性化−ホウ素化は、代替的なホウ素化方法よりも多くの利点をもたらす。例えば、金属触媒によるC−H活性化−ホウ素化は、ホウ素化するためにC−H位を活性化するための古典的なリチウム−水素交換反応を使用する場合に通常、必要とされる極めて低い反応温度を必要としない。
【0006】
電子吸引基により置換されているアレーンであって、電子吸引基のオルト位において置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていないアレーンの場合、アレーンのイリジウム触媒によるC−H活性化−ホウ素化は、通常、立体効果によって支配される。例えば、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンの場合、イリジウム触媒によるC−H活性化−ホウ素化は、電子的に有利なベンゼン環の4位におけるホウ素化(電子吸引性のフルオロ置換基のオルトとなる。「電子的生成物(electronic product)」と呼ばれる)とは反対に、立体的に有利なベンゼン環の5位におけるホウ素化(電子吸引性のフルオロ置換基のメタとなる。「立体的生成物(steric product)」と呼ばれる)が有利であることが予期される。
【0007】
【化2】
【0008】
ある種のイリジウム触媒系は、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含めた、電子吸引基により置換されているアレーンのホウ素化を、フルオロ置換基に対しオルト位で効率よく触媒することができる(すなわち、上記のイリジウム鎖触媒系は、電子的生成物の形成を効率よく触媒することができる)ことが意外なことに発見された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を提供する。
[1]ホウ素化アレーンを形成する方法であって、
1〜4つの置換基を含む置換アレーン環を含む基質であって、上記アレーン環が、CH活性化に電子的に有利な第1の位置において置換されておらず、かつCH活性化に立体的に有利な第2の位置において置換されていない、基質を用意するステップ、ならびに
第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、上記基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップを含み、
上記第1のホウ素化アレーンが、1〜4つの置換基、および上記第1の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
上記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、1〜4つの置換基、および上記第2の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
上記第1のホウ素化アレーンと上記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、
ホウ素化アレーンを形成する方法。
[2]上記アレーン環が、1〜3つの置換基を含む、上記[1]に記載の方法。
[3]上記アレーン環が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されている、上記[1]から[2]のいずれかに記載の方法。
[4]上記基質が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環であって、上記電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ上記電子吸引基に対しメタ位で置換されていない、フェニル環を含み、
上記第1のホウ素化アレーンが、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに上記電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含み、
上記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに上記電子吸引基に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含む、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]上記基質が、2−,4−二置換ピリジン環、2−,6−二置換ピリジン環、2−,4−,6−三置換ピリジン環、および2−置換ピリジン環からなる群から選択されるピリジン環を含む、上記[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[6]上記配位子が、電子不足二座配位子を含む、上記[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記二座配位子が、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている、2,2’−ビピリジンを含む、上記[6]に記載の方法。
[8]上記二座配位子が、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【化1】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、上記二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、上記[6]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9]上記配位子が、単座ピリジン配位子を含む、上記[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[10]ホウ素化アレーンを形成する方法であって、
電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分により置換されている芳香族環を含む基質であって、上記芳香族環が、上記部分に対しオルト位で置換されていない、基質を用意するステップ、ならびに
第1のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、上記基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含み、
上記第1のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびに上記部分に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含む、ホウ素化アレーンを形成する方法。
[11]上記芳香族環が、上記部分に対しオルト位で置換されておらず、かつ上記部分に対しメタ位で置換されていない、上記[10]に記載の方法。
[12]上記第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下、上記基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップであって、
上記第2のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびに上記部分に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含み、
上記第1のホウ素化アレーンと上記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ステップ
を含む、上記[11]に記載の方法。
[13]上記部分が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基である、上記[10]から[12]のいずれかに記載の方法。
[14]上記基質が、式Iによって定義される化合物
【化2】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含み、
上記第1のホウ素化アレーンが、式IIによって定義される化合物
【化3】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、式IIIによって定義される化合物
【化4】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含む、
上記[1]から[4]または[6]から[13]のいずれかに記載の方法。
[15]上記基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含む、上記[1]から[4]または[6]から[14]のいずれかに記載の方法。
[16]上記基質が1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含み、かつ上記第1のホウ素化アレーンが、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ボロン酸誘導体を含む、上記[1]から[4]または[6]から[15]のいずれかに記載の方法。
[17]上記イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体、Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体、Ir(I)−メシチレン前駆錯体、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体、およびそれらの組合せからなる群から選択される、イリジウム錯体を含む、上記[1]から[16]のいずれかに記載の方法。
[18]上記基質、第1のホウ素化アレーン、および、第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Clおよび−Brからなる群から選択される置換基を含む、上記[1]から[17]のいずれかに記載の方法。
[19]上記基質が、以下の式により定義される化合物
【化5】
(式中、
Xは、電子吸引基または指向型メタル化基から選択される部分であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、−Clおよび−Brであり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含み、
上記第1のホウ素化アレーンが、以下の式によって定義される化合物
【化6】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、以下の式によって定義される化合物
【化7】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記第1のホウ素化アレーンと上記第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも25:1である、
上記[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[20]上記第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップをさらに含む、上記[18]から[19]のいずれかに記載の方法。
[21]上記第1のホウ素化アレーンまたは上記脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記第1のホウ素化アレーンまたは上記脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンと上記反応体とをクロスカップリングするステップをさらに含む、上記[1]から[20]のいずれかに記載の方法。
したがって、ホウ素化アレーンを調製する方法が提供される。一部の実施形態では、ホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。ホウ素化アレーンを形成する方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、適切な基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、ガスクロマトグラフィー(例えば、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ;GC−FID)を使用して決定すると、少なくとも1:1となり得る。
【0010】
ホウ素化アレーンの調製用基質は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環であって、電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていないフェニル環を含むことができる。第1のホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。第2のホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。
【0011】
例えば、一部の実施形態では、本基質は、式Iによって定義される化合物
【0012】
【化3】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含むことができる。
【0013】
これらの実施形態では、第1のホウ素化アレーンは、式IIによって定義される化合物
【0014】
【化4】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含むことができ、および第2のホウ素化アレーンは、式IIIによって定義される化合物
【0015】
【化5】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含むことができる。
【0016】
ある種の実施形態では、本基質は、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含むことができ、その構造は以下に示されている。
【0017】
【化6】
【0018】
これらの実施形態の一部では、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンから形成される第1のホウ素化アレーンは、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸誘導体(例えば、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランなどの(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸エステル)を含むことができる。
【0019】
一部の実施形態では、配位子は、単座配位子(例えば、ピリジン配位子)とすることができる。一部の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0020】
【化7】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0021】
ある種の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0022】
【化8】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0023】
一部の実施形態では、配位子は、二座配位子とすることができる。二座配位子は、電子不足二座配位子とすることができる。例えば、一部の実施形態では、二座配位子は、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている2,2’−ビピリジン(例えば、1つまたは複数のトリフルオロメチル基により置換されている2,2’−ビピリジン)を含むことができる。ある種の実施形態では、二座配位子は、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【0024】
【化9】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数は水素ではないことを条件とする)
を含むことができる。
【0025】
同様に、電子吸引基および指向型メタル化基(directed metalating group)から選択される部分によって置換されている芳香族環であって、この部分に対しオルト位で置換されていない芳香族環を含む基質から、ホウ素化アレーンを形成する方法も提供される。本方法は、第1のホウ素化アレーン(すなわち、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびにこの部分に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体によって置換されている芳香族環)を形成するのに有効な条件下、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。
【0026】
ある種の実施形態では、本芳香族環は、上記の部分に対しオルト位で置換され得ず、かつ上記の部分に対しメタ位で置換され得ない。これらの実施形態では、本方法は、第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップであって、該第2のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびにこの部分に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含む、ステップを含むことができる。一部の実施形態では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である。
【0027】
基質は、置換アリール化合物、6員の置換複素芳香族化合物、5員の置換複素芳香族化合物またはそれらの組合せとすることができる。一部の場合、上記の部分は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基とすることができる。一部の場合、上記の部分は、指向型メタル化基とすることができる。ある種の実施形態では、この指向型メタル化基は、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、−SO16、−SOR16またはC〜Cアミノアルキル基からなる群から選択することができ、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である。
【0028】
一部の実施形態では、単座配位子は単座ピリジン配位子とすることができる。一部の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0029】
【化10】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0030】
ある種の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0031】
【化11】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0032】
同様に、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)を含む置換アレーン環を含む基質からホウ素化アレーンを形成する方法であって、該アレーン環が、CH活性化に電子的に有利な第1の位置において置換されておらず、かつCH活性化に立体的に有利な第2の位置において置換されていない、方法も提供される。これらの実施形態では、方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。第1のホウ素化アレーンは、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)、および第1の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含むことができる。第2のホウ素化アレーンは、形成される場合、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)、および第2の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含むことができる。第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1となり得る。
【0033】
一部の場合、アレーン環は、フェニル環を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、本基質は、式Iによって定義される化合物
【0034】
【化12】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含むことができる。
【0035】
これらの実施形態では、第1のホウ素化アレーンは、式IIによって定義される化合物
【0036】
【化13】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含むことができ、および第2のホウ素化アレーンは、式IIIによって定義される化合物
【0037】
【化14】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含むことができる。
【0038】
ある種の実施形態では、本基質は、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含むことができ、その構造は以下に示されている。
【0039】
【化15】
【0040】
これらの実施形態の一部では、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンから形成される第1のホウ素化アレーンは、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸誘導体(例えば、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランなどの(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸エステル)を含むことができる。
【0041】
一部の場合、このアレーン環は、ピリジン環を含むことができる。ある種の場合、このピリジン環は、2−置換ピリジン環を含むことができる。ある種の場合、このピリジン環は、2,4−二置換ピリジン環、2,6−二置換ピリジン環または2,4,6−三置換ピリジン環を含むことができる。アレーン環上に存在している1〜3つの置換基は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基から個別に選択することができ、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である。ある種の場合、このアレーン環は、−Fおよび−CFからなる群から選択される、電子吸引基を含む。
【0042】
一部の実施形態では、配位子は、単座配位子(例えば、ピリジン配位子)とすることができる。一部の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0043】
【化16】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0044】
ある種の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0045】
【化17】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
とすることができる。
【0046】
一部の実施形態では、配位子は、二座配位子とすることができる。二座配位子は、電子不足二座配位子とすることができる。例えば、一部の実施形態では、二座配位子は、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている2,2’−ビピリジン(例えば、1つまたは複数のトリフルオロメチル基により置換されている2,2’−ビピリジン)を含むことができる。ある種の実施形態では、二座配位子は、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【0047】
【化18】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数は水素ではないことを条件とする)
を含むことができる。
【0048】
同様に、電子的ホウ素化生成物をもっぱら形成する方法を含む、基質の位置選択的ホウ素化方法も提供される。一部の実施形態では、位置選択的ホウ素化方法は、タンデムホウ素化/脱ハロゲン化を含むことができる。例えば、アレーンの位置選択的ホウ素化方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、適切な基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップであって、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDを使用して決定すると、少なくとも25:1である、ステップを含むことができる。この基質は、例えば、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されており、電子吸引基に対するオルト位で置換されていないフェニル環であって、かつ電子吸引基(例えば、電子吸引基に対しパラ置換基となるClまたはBr)に対し普通なら立体的に有利なメタ位におけるイリジウム触媒の立体的攻撃を妨害するよう配置されている犠牲的部分(sacrificial moiety)(例えば、ClまたはBrなどのハロゲン)をさらに含む、フェニル環を含むことができる。結果として、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、オルトホウ素化された電子的生成物(すなわち、第1のホウ素化アレーン)をもっぱら生成する。
【0049】
方法はさらに、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップを含むことができる。この第1のホウ素化アレーンは、任意の適切な合成方法を使用して還元的に脱ハロゲン化され得る。例えば、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化する方法は、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、塩基(例えば、フッ化カリウム(KF)、またはフッ化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAF)などのテトラアルキルアンモニウム塩)、および金属触媒(例えば、酢酸パラジウム(II))に接触させるステップを含むことができる。金属触媒は、PMHSからのヒドリドを受け取り、次いで、第1のホウ素化アレーンの還元的脱ハロゲン化に関与することができる、様々な金属触媒を含むことができる。適切な金属触媒は、第1のホウ素化アレーンの特定名(identity)(例えば、水素化脱ハロゲン化されるハロゲンの特定名)を含めた、いくつかの要因を鑑みて選択され得る。例えば、金属触媒は、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)または銅(Cu)を含むことができる。ある種の実施形態では、金属触媒は、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))などのパラジウム(II)触媒またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PhP))などのパラジウム(0)触媒を含むことができる。
【0050】
ある種の実施形態では、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化する方法は、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ギ酸塩および遷移金属触媒に接触させるステップを含むことができる。ギ酸塩は、ギ酸アンモニウムなどの任意の適切なギ酸塩とすることができる。遷移金属触媒は、炭素担持パラジウムなどのパラジウム(0)触媒を含むことができる。ある種の実施形態では、上記のホウ素化および脱ハロゲン化は、ワンポット合成方法を使用して行うことができる。
【0051】
本明細書に記載されている方法を使用して調製されるホウ素化アレーンは、Suzuki型クロスカップリング反応などのクロスカップリング反応を含む、追加的な化学反応に利用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法はさらに、第1のホウ素化アレーンまたは脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記の反応体と上記の第1のホウ素化アレーンまたは脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンとをクロスカップリングするステップを含むことができる。
【0052】
同様に、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含めた、電子吸引基により置換されているアレーンのホウ素化を、フルオロ置換基に対するオルト位で触媒することができるイリジウム錯体触媒も提供される。イリジウム錯体触媒は、イリジウム前駆錯体、単座または二座配位子、およびホウ素化試薬を組み合わせることにより形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
定義
本明細書において使用される用語は、特に明記しない限り、当技術分野においてそれらの慣用的な意味を有することになろう。本明細書に記載されている式の可変基(variable)の定義において言及されている有機部分は、ハロゲンという用語のように、個々の基の個々のメンバーの列挙したものをまとめた用語である。接頭語C〜Cは、各場合において、その基における可能な炭素原子数を示す。
【0054】
用語「アルキル」とは、本明細書で使用する場合、1〜6個の炭素原子を有するものを含む、飽和の直鎖状、分岐状、環式、第一級、第二級または第三級の炭化水素を指す。一部の実施形態では、アルキル基には、C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜CまたはC〜Cアルキル基が含まれよう。C〜Cアルキル基の例には、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、およびそれらの異性体が含まれる。C〜C−アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルおよび1,1−ジメチルエチルが含まれ得る。
【0055】
アルキルにより包含される、環式アルキル基または「シクロアルキル」基には、3〜6個の炭素原子を含む、単環または縮合多環を有するものが含まれる。一部の実施形態では、シクロアルキル基には、C〜CまたはC〜C環式アルキル基が含まれる。シクロアルキル基の非限定例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基が含まれる。
【0056】
アルキル基は置換され得ないか、またはアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アルキル−またはジアルキルアミノ、アミド、ニトロ、シアノ、アジド、チオール、または本明細書に記載されている合成方法を妨げない他の任意の実施可能な官能基(無保護であるか、または必要に応じて、当業者に公知の、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, Fourth Edition, 2007において教示されている通りに、保護されているかのいずれかである)などの1つまたは複数の部分により置換され得る。
【0057】
用語「ハロアルキル」とは、本明細書で使用する場合、1個または複数のハロゲン原子により置換されている、上で定義されているアルキル基を指す。例えば、C〜C−ハロアルキルには、以下に限定されないが、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1−クロロエチル、1−ブロモエチル、1−フルオロエチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−クロロ−2−フルオロエチル、2−クロロ−2,2−ジフルオロエチル、2,2−ジクロロ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、ペンタフルオロエチルなどが含まれる。
【0058】
Rがアルキルである−ORとしても定義される用語「アルコキシ」とは、−O−アルキルを指し、アルキルは、上で定義されている通りである。同様に、用語ハロアルコキシは、−O−ハロアルキルを指すために使用することができ、ハロアルキルは、上で定義されている通りである。一部の実施形態では、アルコキシ基は、1〜6個の炭素原子を含むことができる。C〜C−アルコキシ基の例には、以下に限定されないが、メトキシ、エトキシ、C−CHO−、(CHCHO−、n−ブトキシ、C−CH(CH)O−、(CHCH−CHO−(CHCO−、n−ペントキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、1,1−ジメチルプロポキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、2,2−ジメチル−プロポキシ、1−エチルプロポキシ、n−ヘキソキシ、1−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、4−メチルペントキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、1−エチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、1−エチル−1−メチルプロポキシおよび1−エチル−2−メチルプロポキシが含まれる。
【0059】
用語「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」とは、アルキル−NH−および(アルキル)N−を指し、アルキルは上で定義されている通りである。同様に、用語ハロアルキルアミノおよびハロジアルキルアミノとは、ハロアルキル−NH−および(ハロアルキル)−NH−を指し、ハロアルキルは上で定義されている通りである。用語「アミノアルキル」とは、1つのアミノ基により置換されている、上で定義されているアルキル基を指す。
【0060】
用語「アルキルカルボニル」、「アルコキシカルボニル」、「アルキルアミノカルボニル」および「ジアルキルアミノカルボニル」とは、−C(=O)−アルキル、−C(O)−アルコキシ、−C(O)−アルキルアミノおよび−C(O)−ジアルキルアミノを指し、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノは、上で定義されている通りである。
【0061】
用語「ボロン酸」とは、本明細書で使用する場合、−B(OH)部分を指す。用語ボロン酸誘導体とは、1個または複数の原子、官能基または部分構造が存在するかまたは存在しない点で、ボロン酸とは異なるホウ素含有部分であって、少なくとも理論的にボロン酸から、ある化学的または物理的過程によって形成されるものと想像することができる、ホウ素含有部分を指す。ボロン酸誘導体の例には、ボロネート、ボロネートエステルまたはボロン酸エステル(boronic ester)とも呼ばれるボロン酸エステル、1,3,2−ジアザボロリジル基などの環式アミノボランを含むアミノボラン、およびボロン酸無水物が含まれる。用語ボロン酸エステルとは、−B(OR)(Rは上で定義されているアルキル基である)などのエステル化されているボロン酸部分、および−B(OR)により表される環式ボロン酸部分(2つのR置換基は、場合により、1個または複数の追加のヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組合せ)を含むC〜C環式部分を形成するように一緒に連結されており、場合により1つまたは複数の置換基によりさらに置換されているかつ/または1つまたは複数のさらなるカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と縮合している(少なくとも1つの結合を共有している))を指す。環式ボロン酸エステルの例には、以下に限定されないが、ピナンジオールボロン酸エステル、ピナコールボロン酸エステル、1,2−エタンジオールボロン酸エステル、1,3−プロパンジオールボロン酸エステル、1,2−プロパンジオールボロン酸エステル、2,3−ブタンジオールボロン酸エステル、1,1,2,2−テトラメチルエタンジオールボロン酸エステル、1,2−ジイソプロピルエタンジオールボロン酸エステル、5,6−デカンジオールボロン酸エステル、1,2−ジシクロヘキシルエタンジオールボロン酸エステル、ビシクロヘキシル−1,1’−ジオールボロン酸エステル、ジエタノールアミンボロン酸エステルおよび1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオールボロン酸エステルが含まれる。
【0062】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の原子を指す。接頭語のハロ−(例えば、用語ハロアルキルによって例示される)とは、単一置換からパーハロ置換(例えば、クロロメチル(−CHCl)、ジクロロメチル(−CHCl)、トリクロロメチル(−CCl)としてのメチルによって例示される)までのすべてのハロゲン置換度を指す。
【0063】
用語「アレーン」とは、本明細書では一般に、芳香族環、または一緒に縮合している多環芳香族を指すために使用される。アレーンの例には、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどが含まれる。用語アレーンには、複素アレーン(すなわち、芳香族環中の1個または複数の炭素原子が、O、NまたはSなどのヘテロ原子により置き換えられている、芳香族化合物)も含まれる。複素アレーンの例には、例えば、ピリジン、フラン、インドール、ベンゾイミダゾール、チオフェン、ベンゾチアゾールなどが含まれる。
【0064】
方法
ホウ素化アレーンを調製する方法が提供される。ホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびに電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。ホウ素化アレーンを形成する方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、適切な基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、ガスクロマトグラフィー(例えば、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ;GC−FID)を使用して決定すると、少なくとも1:1となり得る。
【0065】
ホウ素化アレーンの調製用基質は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環であって、電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていないフェニル環を含むことができる。フェニル環は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基(例えば、第一級アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミン)、カルボン酸、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、ニトリル基、アルキル基(例えば、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルキル基)、ハロアルキル基(例えば、C〜Cハロアルキル基またはC〜Cハロアルキル基)、またはそれらの組合せなどの1つまたは複数の追加の置換基をさらに含むことができる。一部の実施形態では、基質は、ヒドロシリル基、−COMe基、−COtBu基、−CONMe基、−SOMe基または−CH(O(CHO)基などのイリジウム金属中心に配位する置換基は含まない。
【0066】
第1のホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。第2のホウ素化アレーンは、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含むことができる。第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンのフェニル環は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基(例えば、第一級アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミン)、カルボン酸、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、ニトリル基、アルキル基(例えば、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルキル基)、ハロアルキル基(例えば、C〜Cハロアルキル基またはC〜Cハロアルキル基)またはそれらの組合せなどの、置換基がそれから形成される基質上に存在している、1つまたは複数の追加の置換基をさらに含むことができる。
【0067】
例えば、一部の実施形態では、本基質は、式Iによって定義される化合物
【0068】
【化19】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含むことができる。
【0069】
これらの実施形態では、第1のホウ素化アレーンは、式IIによって定義される化合物
【0070】
【化20】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含むことができ、および第2のホウ素化アレーンは、式IIIによって定義される化合物
【0071】
【化21】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含むことができる。
【0072】
Yは、ボロン酸部分(−B(OH))とすることができる。Yは、ボロン酸エステル、アミノボランまたはボロン酸無水物などの、ボロン酸誘導体とすることもできる。一部の実施形態では、Yは、式−B(OR12によって定義される、ボロン酸エステルとすることができ、各R12は独立して、上で定義されているアルキル基(例えば、C〜Cアルキル基)である。
【0073】
他の実施形態では、Yは、式−B(OR12によって定義される、環式ボロン酸エステルとすることができ、2つのR12基は、それらが結合している原子と一緒になって、C〜C環式部分を形成する。C〜C環式部分は、場合により、(例えば、1つまたは複数のC〜Cアルキル基により)置換され得る。C〜C環式部分は、場合により、1つまたは複数のカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と縮合され得る(少なくとも1つの結合を共有している)。例えば、Yは、ピナンジオールボロン酸エステル、ピナコールボロン酸エステル、1,2−エタンジオールボロン酸エステル、1,3−プロパンジオールボロン酸エステル、1,2−プロパンジオールボロン酸エステル、2,3−ブタンジオールボロン酸エステル、1,1,2,2−テトラメチルエタンジオールボロン酸エステル、1,2−ジイソプロピルエタンジオールボロン酸エステル、5,6−デカンジオールボロン酸エステル、1,2−ジシクロヘキシルエタンジオールボロン酸エステル、ビシクロヘキシル−1,1’−ジオールボロン酸エステル、ジエタノールアミンボロン酸エステルまたは1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオールボロン酸エステルとすることができる。ある種の実施形態では、Yは、以下の部分の1つから選択される。
【0074】
【化22】
【0075】
一部の実施形態では、基質は式Iによって定義される化合物(式中、Rはハロゲンである)を含むことができる。ある種の場合、Rはクロロ基とすることができる。一部の実施形態では、基質は、R位において置換されている式Iの化合物を含むことができる(例えば、Rは、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基とすることができる)。ある種の実施形態では、基質は、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼン、1−クロロ−3−トリフルオロメチル−2−置換ベンゼン、1−ブロモ−3−フルオロ−2−置換ベンゼン、または1−ブロモ−3−トリフルオロメチル−2−置換ベンゼンを含むことができ、これらのベンゼン環の2位は、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基によって置換されている。
【0076】
ある種の実施形態では、基質は、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含むことができ、その構造は以下に示されている。
【0077】
【化23】
【0078】
これらの実施形態の一部では、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンから形成される第1のホウ素化アレーンは、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランなどの(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸エステルを含むことができ、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの構造は、以下に示されている。
【0079】
【化24】
【0080】
他の実施形態では、本基質は、式Iによって定義される化合物
【0081】
【化25】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含むことができる。
【0082】
これらの実施形態では、第1のホウ素化アレーンは、式IIaによって定義される化合物
【0083】
【化26】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、上記のボロン酸またはボロン酸誘導体である)を含むことができ、および、第2のホウ素化アレーンは、式IIIaによって定義される化合物
【0084】
【化27】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、上記のボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含むことができる。
【0085】
上記の通り、基質は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル基であって、電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていない、フェニル環を含むことができる。本明細書において提供される方法は、第2のホウ素化アレーンを形成するよう、電子吸引基に対しメタ位で基質がホウ素化(「立体的生成物」と呼ばれる、立体的に有利な反応生成物)されるよりも、第1のホウ素化アレーンを形成するよう、電子吸引基に対しオルト位で基質がホウ素化(「電子的生成物」と呼ばれる、電子的に有利な反応生成物)されるのが有利となり得る。
【0086】
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、ガスクロマトグラフィー(例えば、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ;GC−FID)および/または19F核磁気共鳴(NMR)分光法を含む、当技術分野で公知の標準的方法を使用して決定することができる。第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、少なくとも1:1(例えば、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.4:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.6:1、少なくとも1.7:1、少なくとも1.8:1、少なくとも1.9:1、少なくとも2.0:1、少なくとも2.1:1、少なくとも2.2:1、少なくとも2.3:1、少なくとも2.4:1、少なくとも2.5:1、少なくとも2.6:1、少なくとも2.7:1、少なくとも2.8:1、少なくとも2.9:1、少なくとも3.0:1、少なくとも3.1:1、少なくとも3.2:1、少なくとも3.3:1、少なくとも3.4:1、少なくとも3.5:1、少なくとも3.6:1、少なくとも3.7:1、少なくとも3.8:1、少なくとも3.9:1、少なくとも4.0:1、少なくとも4.1:1、少なくとも4.2:1、少なくとも4.3:1、少なくとも4.4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも4.6:1、少なくとも4.7:1、少なくとも4.8:1、少なくとも4.9:1、少なくとも5:1、少なくとも5.5:1、少なくとも6:1、少なくとも6.5:1、少なくとも7:1、少なくとも7.5:1、少なくとも8:1、少なくとも8.5:1、少なくとも9:1、少なくとも9.5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1)となり得る。一部の実施形態では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、25:1以下(例えば、20:1以下、15:1以下、10:1以下、9.5:1以下、9:1以下、8.5:1以下、8:1以下、7.5:1以下、7:1以下、6.5:1以下、6:1以下、5.5:1以下、5:1以下、4.9:1以下、4.8:1以下、4.7:1以下、4.6:1以下、4.5:1以下、4.4:1以下、4.3:1以下、4.2:1以下、4.1:1以下、4:1以下、3.9:1以下、3.8:1以下、3.7:1以下、3.6:1以下、3.5:1以下、3.4:1以下、3.3:1以下、3.2:1以下、3.1:1以下、3:1以下、2.9:1以下、2.8:1以下、2.7:1以下、2.6:1以下、2.5:1以下、2.4:1以下、2.3:1以下、2.2:1以下、2.1:1以下、2:1以下、1.9:1以下、1.8:1以下、1.7:1以下、1.6:1以下、1.5:1以下、1.4:1以下、1.3:1以下、1.2:1以下、または1.1:1以下)である。
【0087】
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲とすることができる。例えば、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、1:1〜25:1(例えば、1.5:1〜25:1、3:1〜25:1、1:1〜10:1、1.5:1〜10:1または3:1〜10:1)の範囲とすることができる。
【0088】
基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、基質の反応性、配位子の特定名、およびホウ素化試薬の特定名を含めた、いくつかの要因に応じて変わり得る。一部の実施形態では、基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、少なくとも30%(例えば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%)となり得る。
【0089】
同様に、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分によって置換されている芳香族環であって、この部分に対しオルト位で置換されていない芳香族環を含む基質から、ホウ素化アレーンを形成する方法も提供される。本方法は、第1のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。第1のホウ素化アレーンは、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびにこの部分に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含むことができる。
【0090】
ある種の実施形態では、本芳香族環は、上記の部分に対しオルト位で置換され得ず、かつ上記の部分に対しメタ位で置換され得ない。これらの実施形態では、本方法は、第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。該第2のホウ素化アレーンは、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびにこの部分に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含むことができる。一部の実施形態では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である。
【0091】
基質は、置換アリール化合物、6員の置換複素芳香族化合物、5員の置換複素芳香族化合物またはそれらの組合せとすることができる。一部の実施形態では、本基質は、上記のものなどのフェニル環を含むことができる。一部の実施形態では、本基質はピリジン環を含むことができる。
【0092】
上記の通り、芳香族環は、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分により置換され得る。一部の場合、上記の部分は、電子吸引基とすることができる。ある種の実施形態では、上記の部分は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基とすることができる。
【0093】
一部の場合、上記の部分は、指向型メタル化基とすることができる。指向型メタル化基は、当技術分野で公知である。例えばWhisler, M. C., et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2004, 43, 2206-2225を参照されたい。ある種の実施形態では、この指向型メタル化基は、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、−SO16、−SOR16またはC〜Cアミノアルキル基からなる群から選択することができ、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である。
【0094】
これらの方法では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、少なくとも1:1(例えば、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.4:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.6:1、少なくとも1.7:1、少なくとも1.8:1、少なくとも1.9:1、少なくとも2.0:1、少なくとも2.1:1、少なくとも2.2:1、少なくとも2.3:1、少なくとも2.4:1、少なくとも2.5:1、少なくとも2.6:1、少なくとも2.7:1、少なくとも2.8:1、少なくとも2.9:1、少なくとも3.0:1、少なくとも3.1:1、少なくとも3.2:1、少なくとも3.3:1、少なくとも3.4:1、少なくとも3.5:1、少なくとも3.6:1、少なくとも3.7:1、少なくとも3.8:1、少なくとも3.9:1、少なくとも4.0:1、少なくとも4.1:1、少なくとも4.2:1、少なくとも4.3:1、少なくとも4.4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも4.6:1、少なくとも4.7:1、少なくとも4.8:1、少なくとも4.9:1、少なくとも5:1、少なくとも5.5:1、少なくとも6:1、少なくとも6.5:1、少なくとも7:1、少なくとも7.5:1、少なくとも8:1、少なくとも8.5:1、少なくとも9:1、少なくとも9.5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1)となり得る。一部の実施形態では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、25:1以下(例えば、20:1以下、15:1以下、10:1以下、9.5:1以下、9:1以下、8.5:1以下、8:1以下、7.5:1以下、7:1以下、6.5:1以下、6:1以下、5.5:1以下、5:1以下、4.9:1以下、4.8:1以下、4.7:1以下、4.6:1以下、4.5:1以下、4.4:1以下、4.3:1以下、4.2:1以下、4.1:1以下、4:1以下、3.9:1以下、3.8:1以下、3.7:1以下、3.6:1以下、3.5:1以下、3.4:1以下、3.3:1以下、3.2:1以下、3.1:1以下、3:1以下、2.9:1以下、2.8:1以下、2.7:1以下、2.6:1以下、2.5:1以下、2.4:1以下、2.3:1以下、2.2:1以下、2.1:1以下、2:1以下、1.9:1以下、1.8:1以下、1.7:1以下、1.6:1以下、1.5:1以下、1.4:1以下、1.3:1以下、1.2:1以下、または1.1:1以下)である。
【0095】
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲とすることができる。例えば、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、1:1〜25:1(例えば、1.5:1〜25:1、3:1〜25:1、1:1〜10:1、1.5:1〜10:1または3:1〜10:1)の範囲とすることができる。
【0096】
基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、基質の反応性、配位子の特定名、およびホウ素化試薬の種類特定名を含めた、いくつかの要因に応じて変わり得る。一部の実施形態では、基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、少なくとも30%(例えば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%)となり得る。
【0097】
同様に、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)を含む置換アレーン環を含む基質からホウ素化アレーンを形成する方法であって、該アレーン環が、CH活性化に電子的に有利な第1の位置において置換されておらず、かつCH活性化に立体的に有利な第2の位置において置換されていない、方法も提供される。これらの実施形態では、方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。第1のホウ素化アレーンは、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)、および第1の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含むことができる。第2のホウ素化アレーンは、形成される場合、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)、および第2の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含むことができる。第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1となり得る。
【0098】
一部の場合、アレーン環は、上記のものなどのフェニル環を含むことができる。一部の場合、このアレーン環は、ピリジン環を含むことができる。ある種の場合、このピリジン環は、2−置換ピリジン環を含むことができる。ある種の場合、このピリジン環は、2,4−二置換ピリジン環、2,6−二置換ピリジン環または2,4,6−三置換ピリジン環を含むことができる。アレーン環上に存在している1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基から個別に選択することができ、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である。ある種の場合、このアレーン環は、−Fおよび−CFからなる群から選択される、電子吸引基を含む。
【0099】
これらの方法では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、少なくとも1:1(例えば、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.4:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.6:1、少なくとも1.7:1、少なくとも1.8:1、少なくとも1.9:1、少なくとも2.0:1、少なくとも2.1:1、少なくとも2.2:1、少なくとも2.3:1、少なくとも2.4:1、少なくとも2.5:1、少なくとも2.6:1、少なくとも2.7:1、少なくとも2.8:1、少なくとも2.9:1、少なくとも3.0:1、少なくとも3.1:1、少なくとも3.2:1、少なくとも3.3:1、少なくとも3.4:1、少なくとも3.5:1、少なくとも3.6:1、少なくとも3.7:1、少なくとも3.8:1、少なくとも3.9:1、少なくとも4.0:1、少なくとも4.1:1、少なくとも4.2:1、少なくとも4.3:1、少なくとも4.4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも4.6:1、少なくとも4.7:1、少なくとも4.8:1、少なくとも4.9:1、少なくとも5:1、少なくとも5.5:1、少なくとも6:1、少なくとも6.5:1、少なくとも7:1、少なくとも7.5:1、少なくとも8:1、少なくとも8.5:1、少なくとも9:1、少なくとも9.5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1)となり得る。一部の実施形態では、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、25:1以下(例えば、20:1以下、15:1以下、10:1以下、9.5:1以下、9:1以下、8.5:1以下、8:1以下、7.5:1以下、7:1以下、6.5:1以下、6:1以下、5.5:1以下、5:1以下、4.9:1以下、4.8:1以下、4.7:1以下、4.6:1以下、4.5:1以下、4.4:1以下、4.3:1以下、4.2:1以下、4.1:1以下、4:1以下、3.9:1以下、3.8:1以下、3.7:1以下、3.6:1以下、3.5:1以下、3.4:1以下、3.3:1以下、3.2:1以下、3.1:1以下、3:1以下、2.9:1以下、2.8:1以下、2.7:1以下、2.6:1以下、2.5:1以下、2.4:1以下、2.3:1以下、2.2:1以下、2.1:1以下、2:1以下、1.9:1以下、1.8:1以下、1.7:1以下、1.6:1以下、1.5:1以下、1.4:1以下、1.3:1以下、1.2:1以下、または1.1:1以下)である。
【0100】
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲とすることができる。例えば、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比は、GC−FIDを使用して決定すると、1:1〜25:1(例えば、1.5:1〜25:1、3:1〜25:1、1:1〜10:1、1.5:1〜10:1または3:1〜10:1)の範囲とすることができる。
【0101】
基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、基質の反応性、配位子の特定名、およびホウ素化試薬の特定名を含めた、いくつかの要因に応じて変わり得る。一部の実施形態では、基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率は、少なくとも30%(例えば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%)となり得る。
【0102】
上記のホウ素化アレーンを形成する方法は、反応させる基質を、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップを含むことができる。基質は、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬の反応により形成される触媒的に活性なイリジウム錯体を触媒として有効な量で組み合わせて、上記の基質およびホウ素化試薬が存在するよう、任意の適切な方法で、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬と接触され得る。例えば、基質は、単一の反応容器または溶液中、基質、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬を任意の順序または方法で組み合わせることにより(例えば、基質、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬を、逐次または同時に反応容器に加えることにより)、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬に接触され得る。したがって、基質をイリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップは、イリジウム前駆錯体、配位子およびホウ素化試薬、またはイリジウム前駆錯体および配位子を組み合わせて触媒的な活性なイリジウム錯体を形成させ、続いて基質および/またはホウ素化試薬と組み合わせることによる方法を包含し得る。
【0103】
イリジウム前駆錯体は、配位子およびホウ素化試薬と反応して、触媒的に活性なイリジウム錯体を形成することができる、任意のイリジウム錯体とすることができる。イリジウム前駆錯体は、水素を除く3つ以上の置換基がイリジウムに結合している、イリジウム錯体を含むことができる。適切なイリジウム前駆錯体は、シクロオクテン(coe)、メシチレン(MesH)、シクロオクタジエン(cod)、1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル(CP)、インデニル(Ind)またはホスフィン、および場合により、ハロゲン、−OMe、−OH、−OAcまたは−OPhなどの単座配位子を含めた、1つまたは複数の追加の配位子などの、1つまたは複数の有機配位子を含むことができ、これらは、イリジウム先駆錯体と配位子および/またはホウ素化試薬とを組み合わせると容易に置き換わり得る。適切なイリジウム前駆錯体は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Smithへの米国特許第6,878,830号、およびSmithらへの米国特許第7,514,563号において記載されているイリジウム触媒を含むことができる。
【0104】
例として、イリジウム前駆錯体は、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体を含むことができる。適切なIr(I)−シクロオクタジエン前駆錯体は、当技術分野で公知であり、[Ir(OMe)cod]、[Ir(Cl)cod]、[Ir(cod)]BF、[Ir(OH)cod]、[Ir(OPh)cod]、[Ir(OAc)cod]、(Ind)Ir(cod)、Ir(acac)cod、(dtbpy)Ir(BPin)(cod)、(tmp)Ir(BPin)(cod)およびそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、イリジウム前駆錯体は[Ir(OMe)cod]を含むことができる。イリジウム前駆錯体はまた、[Ir(OMe)coe]、[Ir(Cl)coe]、[Ir(coe)]BF、[Ir(OH)coe]、[Ir(OPh)coe]、[Ir(OAc)coe]、(Ind)Ir(coe)、Ir(acac)coe、(dtbpy)Ir(BPin)(coe)、(tmp)Ir(BPin)(coe)、[IrCl(coe)およびそれらの組合せなどのIr(I)−シクロオクテン前駆錯体も含むことができる。イリジウム前駆錯体はまた、Ir(I)−メシチレン前駆錯体を含むことができる。例示的なIr(I)−メシチレン前駆錯体は、(MesH)Ir(BPin)(B(OR11)および(MesH)Ir(BPin)を含むことができ、BPinはピナコールボランであり、R11は、水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である。イリジウム前駆錯体はまた、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体を含むことができる。例示的なIr(I)−ホスフィン前駆錯体は、(dppbz)Ir(BPin)、(Ind)Ir(dppe)、(PMeIrH、((R11P)IrH、((R11P)Ir(B(OR11、(R11P)Ir(BPin)、(((R11P)Ir((R11O)B)、((R11P)Ir(BPin)、((R11P)IrH(B(OR115−xおよびそれらの組合せを含み、xは、0〜4の間の整数であり、dppbzは、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンであり、BPinはピナコールボランであり、R11は水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である。イリジウム前駆錯体はまた、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体を含むことができる。例示的なIr(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体には、(Cp)Ir(H)(MeP)、(Cp)Ir(H)(BPin)(MeP)、(CP)Ir(H)(C)(MeP)およびそれらの組合せが含まれる。
【0105】
方法は、基質を触媒として有効な量のイリジウム前駆錯体に接触させるステップを含むことができる。一部の場合、基質は、ホウ素化反応において存在している基質のモル数に対して0.5モルパーセント(mol%)〜5.0mol%のイリジウム前駆錯体(例えば、1.0mol%〜3.0mol%)に接触され得る。
【0106】
一部の実施形態では、配位子は、二座配位子とすることができる。二座配位子は、イリジウム中心にキレートを形成するように構成される2個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子)を含む、二座配位子を含むことができる。適切な二座配位子は、イリジウム前駆錯体の性質、基質の特定名、ホウ素化反応の所望の位置選択性、および基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの所望の転化率を含めた、いくつかの要因を鑑みて選択することができる。例えば、一部の場合、電子不足二座配位子を選択することにより、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのより高いモル比が有利となり得る。同様に、一部の場合、立体的に低いかさ高さを有する二座配位子を選択することにより、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのより高いモル比が有利となり得る。
【0107】
適切な二座配位子には、イリジウム中心にキレートを形成するよう構成される、1つまたは複数の複素環式環内に2個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子)を含む、複素環式二座配位子が含まれる。複素環式二座配位子の例には、ビピリジンおよびフェナントロリンに基づく配位子が含まれる。
【0108】
一部の実施形態では、二座配位子は、電子不足二座配位子を含むことができる。電子不足二座配位子は、例えば、1つまたは複数の電子吸引性部分により置換されている、複素環式二座配位子を含むことができる。電子吸引性部分の例には、ハロゲン(例えば、FおよびCl)、ニトリル、ニトロ基、ハロアルキル基(例えば、−CFなどのペルフルオロ化ハロアルキル基)、およびそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、電子不足二座配位子は、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている、ビピリジンに基づく配位子(2,2’−ビピリジン)またはフェナントロリンに基づく配位子(例えば、フェナントロリン)を含むことができる。
【0109】
ある種の実施形態では、配位子は、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【0110】
【化28】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)を含むことができる。一部の場合、二座配位子が式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数は、水素ではない。ある種の実施形態では、1つまたは複数のR10は、−Fおよび−CFから選択される。
【0111】
一部の実施形態では、二座配位子は、以下の配位子の1種または複数から選択され得る。
【0112】
【化29】
【0113】
ある種の実施形態では、二座配位子は、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン(btfbpy)、4,4’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン(ttfbpy)および4,4’,5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビオキサゾール(box)から選択することができる。
【0114】
一部の実施形態では、配位子は、単座配位子とすることができる。単座配位子は、イリジウム中心にキレートを形成するように構成される単一のヘテロ原子(例えば、窒素原子)を含む、単座配位子を含むことができる。適切な単座配位子は、イリジウム前駆錯体の性質、基質の特定名、ホウ素化反応の所望の位置選択性、および基質の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの所望の転化率を含めた、いくつかの要因を鑑みて選択することができる。例えば、一部の場合、電子が不足している単座配位子を選択することにより、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのより高いモル比が有利となり得る。同様に、一部の場合、立体的障害のある単座配位子(例えば、該単座配位子の環において、ヘテロ原子に対し隣接位で置換基を有する)を選択することにより、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのより高いモル比が有利となり得る。
【0115】
一部の実施形態では、単座配位子は、ピリジン配位子を含むことができる。一部の場合、ピリジン配位子は、1〜3つの置換基を含むことができる。ある種の場合、このピリジン配位子は、2−置換ピリジン環を含むことができる。ある種の場合、このピリジン配位子は、2,4−二置換ピリジン配位子、2,6−二置換ピリジン配位子または2,4,6−三置換ピリジン配位子を含むことができる。ピリジン配位子上に存在している1〜3つの置換基は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基から個別に選択することができ、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である。ある種の場合、ピリジン配位子は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引性置換基を含むことができる。
【0116】
一部の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0117】
【化30】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含むことができる。
【0118】
一部の実施形態では、このピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0119】
【化31】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含むことができる。
【0120】
一部の実施形態では、ピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0121】
【化32】
(式中、
Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含むことができる。
【0122】
ある種の実施形態では、Zは、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチルまたは−COCHである。
【0123】
一部の実施形態では、ピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0124】
【化33】
(式中、
Aは、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、出現毎に個別に、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含むことができる。
【0125】
ある種の実施形態では、Zは、出現毎に個別に、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチルまたは−COCHである。
【0126】
一部の実施形態では、ピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0127】
【化34】
(式中、
Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含むことができる。
【0128】
ある種の実施形態では、Zは、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチルまたは−COCHである。
【0129】
一部の実施形態では、ピリジン配位子は、以下の式によって定義される化合物
【0130】
【化35】
(式中、
は、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含むことができる。
【0131】
ある種の実施形態では、Zは、出現毎に独立して、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチルまたは−COCHである。
【0132】
一部の実施形態では、配位子は、ホウ素化反応において存在するイリジウム1モルあたり0.5モル当量の配位子からホウ素化反応において存在するイリジウム1モルあたり5モル当量の配位子(例えば、ホウ素化反応において存在するイリジウム1モルあたり1モル当量の配位子からホウ素化反応において存在するイリジウム1モルあたり3モル当量の配位子)の範囲の量で、ホウ素化反応に存在し得る。
【0133】
ホウ素化試薬は、ホウ素化試薬として当技術分野で公知の、適切な任意のHBまたはB−B有機化合物とすることができる。好適なホウ素化試薬は、得られたホウ素化アレーンの反応性に関する考察を含む、様々な要因を鑑みて選択することができる。例示的なホウ素化試薬には、以下に示されるHBまたはB−B有機化合物が含まれる。
【0134】
【化36】
【0135】
一部の実施形態では、ホウ素化試薬は、ピナコールボラン(HBPin)、カテコールボラン、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン、ビス(ピナコラト)ジボロン(Bpin)、ビス(ヘキシレングリコラト)ジボロン、およびビス(カテコラト)ジボロンから選択される。ある種の実施形態では、ホウ素化試薬は、ピナコールボラン(HBPin)またはビス(ピナコラト)ジボロン(Bpin)である。
【0136】
ホウ素化試薬は、任意の適切な量で、ホウ素化反応に組み込むことができる。例えば、一部の実施形態では、ホウ素化試薬は、ホウ素化反応において存在する基質1モルあたり1モル当量のホウ素化試薬からホウ素化反応において存在する基質1モルあたり5モル当量のホウ素化試薬(例えば、ホウ素化反応において存在する基質1モルあたり1モル当量のホウ素化試薬からホウ素化反応において存在する基質1モルあたり3モル当量のホウ素化試薬)の範囲の量で、ホウ素化反応に存在し得る。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、基質の位置選択的ホウ素化を提供することができる。上記の通り、本基質は、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環であって、電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていないフェニル環などの、1〜4つの置換基(例えば、1〜3つの置換基)を含む、置換アレーン環を含むことができる。位置選択的ホウ素化方法とは、電子吸引基に対しオルト位で基質のホウ素化をもたらして、第1のホウ素化アレーン(電子的生成物)を形成することができる一方、電子吸引基に対しメタ位で、基質の有意な量のホウ素化をもたらして第2のホウ素化アレーン(立体的生成物)を形成することがない、ホウ素化方法のことである。ホウ素化方法は、この方法により形成される第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDを使用して決定した場合、少なくとも25:1(例えば、少なくとも50:1、少なくとも75:1または少なくとも100:1)である場合、立体選択的であると言うことができる。一部の実施形態では、位置選択的ホウ素化方法により、検出可能な量の第2のホウ素化アレーン(立体的生成物)は生じ得ない。こうした位置選択的方法は、電子的ホウ素化生成物(第1のホウ素化アレーン)をもっぱら形成するものとして記載することができる。
【0138】
一部の実施形態では、位置選択的ホウ素化方法は、タンデムホウ素化/脱ハロゲン化を含むことができる。例えば、アレーンの位置選択的ホウ素化方法は、第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、適切な基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップであって、第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDを使用して決定すると、少なくとも25:1である、ステップを含むことができる。
【0139】
この基質は、例えば、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されており、電子吸引基に対しオルト位で置換されていないフェニル環であって、かつ電子吸引基(例えば、電子吸引基のパラ置換基となるClまたはBr)に対して普通なら立体的に有利なメタ位におけるイリジウム触媒の攻撃を立体的に妨害するよう配置されている犠牲的部分(例えば、ClまたはBrなどのハロゲン)をさらに含む、フェニル環を含むことができる。結果として、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、オルトホウ素化された電子的生成物(すなわち、第1のホウ素化アレーン)をもっぱら生成する。
【0140】
例えば、一部の実施形態では、本基質は、式Iによって定義される化合物
【0141】
【化37】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、ClまたはBrであり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含むことができる。
【0142】
これらの実施形態では、第1のホウ素化アレーンは、式IIによって定義される化合物
【0143】
【化38】
(式中、X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含むことができる。
【0144】
方法はさらに、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップを含むことができる。脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンは、式IIbによって定義される化合物
【0145】
【化39】
(式中、X、R、RおよびYは、上記の通りである)
を含むことができる。
【0146】
この第1のホウ素化アレーンは、任意の適切な合成方法を使用して還元的に脱ハロゲン化され得る。例えば、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化する方法は、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、塩基、および金属触媒に接触させるステップを含むことができる。適切な塩基には、KFおよび、TBAFなどのテトラアルキルアンモニウム塩が含まれる。金属触媒は、PMHSからのヒドリドを受け取り、次いで、第1のホウ素化アレーンの還元的脱ハロゲン化に関与することができる、様々な金属触媒を含むことができる。適切な金属触媒は、第1のホウ素化アレーンの特定名(例えば、水素化脱ハロゲン化されるハロゲンの特定名)を含めた、いくつかの要因を鑑みて選択され得る。例えば、金属触媒は、Pd、Sn、Ti、ZnまたはCuを含むことができる。ある種の実施形態では、金属触媒は、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))などのパラジウム(II)触媒またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PhP))などのパラジウム(0)触媒を含むことができる。
【0147】
ある種の実施形態では、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化する方法は、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ギ酸塩および遷移金属触媒に接触させるステップを含むことができる。ギ酸塩は、任意の適切なギ酸塩とすることができる。ギ酸塩の例には、例えば、ギ酸ナトリウム(NaHC(O)O)、ギ酸カリウム(KHC(O)O)、ギ酸アンモニウム(NHHC(O)O)、ギ酸カルシウム(Ca(HC(O)O))およびそれらの組合せが含まれる。ある種の場合、ギ酸塩は、ギ酸アンモニウムとすることができる。遷移金属触媒は、炭素担持パラジウムなどのパラジウム(0)触媒を含むことができる。ある種の実施形態では、上記のホウ素化および脱ハロゲン化は、(例えば、単一の反応容器中で逐次的など、中間体ボリレート(borylate)を精製または単離することなしに)ワンポット合成方法を使用して、行うことができる。
【0148】
本明細書に記載されている方法を使用して調製されるホウ素化アレーンは、Suzuki型クロスカップリング反応などのクロスカップリング反応を含む、追加的な化学反応に利用することができる。Suzuki型クロスカップリング反応は、当技術分野で公知であり、塩基および適切な触媒の存在下で、有機ハロゲン化物と有機ホウ素とをクロスカップリングするために使用することができる。例えば、Miyaura, N. and Suzuki, A. Chem. Rev. 1995, 95, 2457、Stanforth, S. P. Tetrahedron 1998, 54, 263、Lipshutz, et al., Synthesis 2005, 2989およびLipshutz, et al., Org. Lett. 2008, 10, 4279を参照されたい。有機ハロゲン化物は、ハロゲン化アリールもしくは偽ハロゲン化アリール、またはハロゲン化ビニルまたは偽ハロゲン化ビニルなどの、不飽和ハロゲン化物または偽ハロゲン化物(例えば、トリフレート(OTf))とすることができる。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法はさらに、第1のホウ素化アレーンまたは脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記の反応体と上記の第1のホウ素化アレーンまたは脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンとをクロスカップリングするステップを含むことができる。例として、(4−クロロ−2−フルオロ−3−置換)ボロン酸エステルは、4−アセトアミド−3,6−ジクロロピコリン酸メチルとのクロスカップリング反応を受けて、6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−置換−フェニル)−4−アミノピコリネートを生成または形成することができる。別の例では、(4−クロロ−2−フルオロ−3−置換)ボロン酸エステルは、6−アセトアミド−2−クロロピリミジン−4−カルボン酸メチルまたはその未保護類似体である6−アミノ−2−クロロピリミジン−4−カルボン酸とのクロスカップリング反応を受けることができる。
【0150】
Suzukiクロスカップリング反応は、パラジウム触媒、配位子、および塩基の存在下で行うことができる。少なくとも一部の実施形態では、パラジウム触媒は、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))であり、塩基は水性炭酸カリウム(KCO)であり、配位子はトリフェニルホスフィン(PPh)である。クロスカップリング反応は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトニトリル(MeCN)、酢酸エチル(EtOAc)、水またはそれらの組合せなどの溶媒中で行うことができる。
【0151】
同様に、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含めた、電子吸引基により置換されているアレーンのホウ素化を、フルオロ置換基に対しオルト位で触媒することができるイリジウム錯体触媒も提供される(すなわち、このイリジウム錯体触媒は、電子的生成物の形成を効率よく触媒することができる)。イリジウム錯体触媒は、イリジウム前駆錯体、二座配位子およびホウ素化試薬を組み合わせることにより形成することができる。一部の場合、イリジウム錯体触媒は、本明細書に記載されている方法を実施している間に、基質の存在下で、インシチュで形成される。イリジウム錯体触媒はまた、イリジウム前駆錯体を二座配位子およびホウ素化試薬に接触させることにより形成することもできる。このイリジウム錯体触媒は、一旦形成すると、続いて、基質および/またはホウ素化試薬と組み合わされて、ホウ素化基質を与えることができる。
【0152】
一部の実施形態では、イリジウム錯体触媒は、以下の構造
(L)Ir(B)(Z
(式中、
Bは−B(OR)であり、Rは、出現毎に独立して、C〜Cアルキル基であるか、または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、1つまたは複数のC〜Cアルキル基により場合により置換されているC〜C環式部分であって、1つまたは複数のカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と場合により縮合しているC〜C環式部分を形成し、
は、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクテンまたはメシチレンであり、
Lは、以下に含まれる配位子
【0153】
【化40】
の1つから選択される二座配位子である)
によって定義することができる。
【0154】
これらの実施形態の一部では、イリジウム錯体触媒は、以下に含まれる配位子の1つから選択される二座配位子を含むことができる。
【0155】
【化41】
【0156】
一部の実施形態では、各Bは、以下に含まれる、ホウ素含有部分の1つから独立して選択される。
【0157】
【化42】
【0158】
ある種の実施形態では、Bの1つまたは複数はピナコールボランを表す。一部の場合、各Bは、ピナコールボランを表す。
【0159】
ある種の実施形態では、イリジウム錯体触媒は、以下の構造
(L)Ir(B)(Z
(式中、
Bは−B(OR)であり、Rは、出現毎に独立して、C〜Cアルキル基であるか、または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、1つまたは複数のC〜Cアルキル基により場合により置換されているC〜C環式部分であって、1つまたは複数のカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と場合により縮合しているC〜C環式部分を形成し、
は、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクテンまたはメシチレンであり、
Lは、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される二座配位子
【0160】
【化43】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
によって定義することができる。
【0161】
これらの実施形態の一部では、イリジウム錯体触媒は、以下に含まれる配位子の1つから選択される二座配位子を含むことができる。
【0162】
【化44】
【0163】
一部の実施形態では、各Bは、以下に含まれる、ホウ素含有部分の1つから独立して選択される。
【0164】
【化45】
【0165】
ある種の実施形態では、Bの1つまたは複数はピナコールボランを表す。一部の場合、各Bは、ピナコールボランを表す。
【0166】
実施形態の例
本開示の具体的な実施形態は、以下に提示されている。
【0167】
1.−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基により置換されているフェニル環を含む基質を用意するステップであって、このフェニル環が、電子吸引基に対しオルト位で置換されておらず、かつ電子吸引基に対しメタ位で置換されていない、ステップ、および
第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップであって、
第1のホウ素化アレーンが、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含み、
第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基、ならびにこの電子吸引基に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されているフェニル環を含み、
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ステップ
を含む、ホウ素化アレーンを形成する方法。
【0168】
2.上記の基質が、式Iによって定義される化合物
【0169】
【化46】
(式中、
Xは、FまたはCFであり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含み、
上記の第1のホウ素化アレーンが、式IIによって定義される化合物
【0170】
【化47】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記の第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、式IIIによって定義される化合物
【0171】
【化48】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含む、
実施形態1に記載の方法。
【0172】
3.第1のホウ素化アレーンが、電子吸引基に対しオルト位に、以下:
【0173】
【化49】
の1つから選択されるボロン酸誘導体を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0174】
4.基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0175】
5.基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含む、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0176】
6.第1のホウ素化アレーンが、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸誘導体を含む、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0177】
7.第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、少なくとも3:1である、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0178】
8.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも30%である、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0179】
9.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも50%である、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
【0180】
10.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体を含む、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0181】
11.Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体が、[Ir(OMe)cod]、[Ir(Cl)cod]、[Ir(cod)]BF、[Ir(OH)cod]、[Ir(OPh)cod]、[Ir(OAc)cod]、(Ind)Ir(cod)、Ir(acac)cod、(dtbpy)Ir(BPin)(cod)、(tmp)Ir(BPin)(cod)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態10に記載の方法。
【0182】
12.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
13.Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体が、[Ir(OMe)coe]、[Ir(Cl)coe]、[Ir(coe)]BF、[Ir(OH)coe]、[Ir(OPh)coe]、[Ir(OAc)coe]、(Ind)Ir(coe)、Ir(acac)coe、(dtbpy)Ir(BPin)(coe)、(tmp)Ir(BPin)(coe)、[IrCl(coe)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態12に記載の方法。
【0184】
14.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−メシチレン前駆錯体を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
15.Ir(I)−メシチレン前駆錯体が、(MesH)Ir(BPin)(B(OR11)、(MesH)Ir(BPin)およびそれらの組合せからなる群から選択され、BPinがピナコールボランであり、R11が水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態14に記載の方法。
【0186】
16.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
17.Ir(I)−ホスフィン前駆錯体が、(dppbz)Ir(BPin)、(Ind)Ir(dppe)、(PMeIrH、((R11P)IrH、((R11P)Ir(B(OR11、((R11P)Ir(BPin)、(((R11P)Ir((R11O)B)、((R11P)Ir(BPin)、((R11P)IrH(B(OR115−xおよびそれらの組合せからなる群から選択され、xは、0〜4の間の整数であり、dppbzは、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンであり、BPinはピナコールボランであり、R11は水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態16に記載の方法。
【0188】
18.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
19.Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体が、(Cp)Ir(H)(MeP)、(Cp)Ir(H)(BPin)(MeP)、(Cp)Ir(H)(C)(MeP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態18に記載の方法。
【0190】
20.配位子が二座配位子を含む、実施形態1から19のいずれかに記載の方法。
【0191】
21.二座配位子が電子不足二座配位子を含む、実施形態20に記載の方法。
【0192】
22.二座配位子が、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている、2,2’−ビピリジンを含む、実施形態20または21に記載の方法。
【0193】
23.二座配位子が、1つまたは複数のトリフルオロメチル基により置換されている、2,2’−ビピリジンを含む、実施形態20から22のいずれかに記載の方法。
【0194】
24.二座配位子が、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【0195】
【化50】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態20から23のいずれかに記載の方法。
【0196】
25.R10の1つまたは複数が、−Fおよび−CFから選択される、実施形態24に記載の方法。
【0197】
26.二座配位子が、以下:
【0198】
【化51】
の1つまたは複数から選択される、実施形態20から25のいずれかに記載の方法。
【0199】
27.配位子が、単座配位子を含む、実施形態1から19のいずれかに記載の方法。
【0200】
28.単座配位子が、ピリジン配位子を含む、実施形態27に記載の方法。
【0201】
29.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0202】
【化52】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態28に記載の方法。
【0203】
30.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0204】
【化53】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態28または29に記載の方法。
【0205】
31.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0206】
【化54】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態28から30のいずれかに記載の方法。
【0207】
32.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0208】
【化55】
(式中、Aは、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態28から31のいずれかに記載の方法。
【0209】
33.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0210】
【化56】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態28から30のいずれかに記載の方法。
【0211】
34.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0212】
【化57】
(式中、Zは、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態28または29に記載の方法。
【0213】
35.Zが、出現毎に独立して、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチル、または−COCHである、実施形態29から34のいずれかに記載の方法。
【0214】
36.ホウ素化試薬が、以下:
【0215】
【化58】
の1つまたは複数から選択される、実施形態1から35のいずれかに記載の方法。
【0216】
37.基質、第1のホウ素化アレーン、および第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Clおよび−Brからなる群から選択される置換基をさらに含む、実施形態1から36のいずれかに記載の方法。
【0217】
38.基質が、式Iによって定義される化合物を含み、Rが、−Clおよび−Brからなる群から選択され、かつ第1のホウ素化アレーンが式IIによって定義される化合物を含み、Rが、−Clおよび−Brからなる群から選択され、
第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも25:1である、
実施形態37に記載の方法。
【0218】
39.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップをさらに含む、実施形態38に記載の方法。
【0219】
40.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態39に記載の方法。
【0220】
41.遷移金属触媒が、酢酸パラジウム(II)を含む、実施形態40に記載の方法。
【0221】
42.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンをギ酸塩および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態39に記載の方法。
【0222】
43.遷移金属触媒が、炭素担持パラジウムを含む、実施形態42に記載の方法。
【0223】
44.ギ酸塩が、ギ酸アンモニウムを含む、実施形態42または43に記載の方法。
【0224】
45.ワンポット合成方法を使用して、第1のホウ素化アレーンが形成され、かつ還元的に脱ハロゲン化されて、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンが形成される、実施形態39から44のいずれかに記載の方法。
【0225】
46.上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンと上記の反応体とをクロスカップリングするステップをさらに含む、実施形態1から45のいずれかに記載の方法。
【0226】
47.以下の構造
(L)Ir(B)(Z
(式中、
Bは−B(OR)であり、Rは、出現毎に独立して、C〜Cアルキル基であるか、または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、1つまたは複数のC〜Cアルキル基により場合により置換されているC〜C環式部分であって、1つまたは複数のカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と場合により縮合しているC〜C環式部分を形成し、
は、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクテンまたはメシチレンであり、
Lは、以下:
【0227】
【化59】
から選択される二座配位子である)
によって定義される、イリジウム錯体。
【0228】
48.以下の構造
(L)Ir(B)(Z
(式中、
Bは−B(OR)であり、Rは、出現毎に独立して、C〜Cアルキル基であるか、または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、1つまたは複数のC〜Cアルキル基により場合により置換されているC〜C環式部分であって、1つまたは複数のカルボシクリル基または複素カルボシクリル基と場合により縮合しているC〜C環式部分を形成し、
は、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクテンまたはメシチレンであり、
Lは、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物を含む二座配位子
【0229】
【化60】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む)
により定義される、イリジウム錯体。
【0230】
49.Lが、以下:
【0231】
【化61】
の1つまたは複数から選択される、実施形態48に記載の錯体。
【0232】
50.各Bが、以下:
【0233】
【化62】
の1つから選択される、実施形態47から49のいずれかに記載の錯体。
【0234】
51.Bが、ピナコールボランである、実施形態47から50のいずれかに記載の方法。
【0235】
52.電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分により置換されている芳香族環を含む芳香族基質であって、芳香族環が上記の部分に対しオルト位で置換されていない、芳香族基質を用意するステップ、および
第1のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、上記の芳香族基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップであって、
第1のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびにこの部分に対しオルト位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含む、ステップ
を含む、ホウ素化アレーンを形成する方法。
【0236】
53.上記の芳香族環が、上記の部分に対しオルト位で置換されておらず、かつ上記の部分に対しメタ位で置換されていない、実施形態52に記載の方法。
【0237】
54.上記の第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下、上記の芳香族基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子およびホウ素化試薬に接触させるステップであって、
上記の第2のホウ素化アレーンが、電子吸引基および指向型メタル化基から選択される部分、ならびに上記の部分に対しメタ位でボロン酸またはボロン酸誘導体により置換されている芳香族環を含み、
上記の第1のホウ素化アレーンと上記の第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ステップ
を含む、実施形態53に記載の方法。
【0238】
55.上記の部分が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基である、実施形態52から54のいずれかに記載の方法。
【0239】
56.部分が、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、−SO16、−SOR16またはC〜Cアミノアルキル基からなる群から選択される、指向型メタル化基であり、
13、R14およびR15の各々が、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16が、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である、
実施形態52から54のいずれかに記載の方法。
【0240】
57.芳香族基質が、置換アリール化合物、6員の置換複素芳香族化合物、5員の置換複素芳香族化合物およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態52から56のいずれかに記載の方法。
【0241】
58.芳香族基質が、以下の式により定義される化合物
【0242】
【化63】
(式中、
Xは、電子吸引基または指向型メタル化基から選択される部分であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含み、
第1のホウ素化アレーンが、以下の式によって定義される化合物
【0243】
【化64】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、以下の式によって定義される化合物
【0244】
【化65】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含む、
実施形態54から57のいずれかに記載の方法。
【0245】
59.第1のホウ素化アレーンが、部分に対しオルト位に、以下:
【0246】
【化66】
の1つから選択されるボロン酸誘導体を含む、実施形態52から58のいずれかに記載の方法。
【0247】
60.芳香族基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンを含む、実施形態52から59のいずれかに記載の方法。
【0248】
61.芳香族基質が、1−クロロ−3−フルオロ−2−メトキシベンゼンを含む、実施形態52から60のいずれかに記載の方法。
【0249】
62.第1のホウ素化アレーンが、(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸または(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ボロン酸誘導体を含む、実施形態52から61のいずれかに記載の方法。
【0250】
63.第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、少なくとも3:1である、実施形態54から62のいずれかに記載の方法。
【0251】
64.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも30%である、実施形態54から63のいずれかに記載の方法。
【0252】
65.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも50%である、実施形態54から64のいずれかに記載の方法。
【0253】
66.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体を含む、実施形態52から65のいずれかに記載の方法。
【0254】
67.Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体が、[Ir(OMe)cod]、[Ir(Cl)cod]、[Ir(cod)]BF、[Ir(OH)cod]、[Ir(OPh)cod]、[Ir(OAc)cod]、(Ind)Ir(cod)、Ir(acac)cod、(dtbpy)Ir(BPin)(cod)、(tmp)Ir(BPin)(cod)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態66に記載の方法。
【0255】
68.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体を含む、実施形態52から65のいずれか1つに記載の方法。
【0256】
69.Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体が、[Ir(OMe)coe]、[Ir(Cl)coe]、[Ir(coe)]BF、[Ir(OH)coe]、[Ir(OPh)coe]、[Ir(OAc)coe]、(Ind)Ir(coe)、Ir(acac)coe、(dtbpy)Ir(BPin)(coe)、(tmp)Ir(BPin)(coe)、[IrCl(coe)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態68に記載の方法。
【0257】
70.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−メシチレン前駆錯体を含む、実施形態52から65のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
71.Ir(I)−メシチレン前駆錯体が、(MesH)Ir(BPin)(B(OR11)、(MesH)Ir(BPin)およびそれらの組合せからなる群から選択され、BPinがピナコールボランであり、R11が水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態70に記載の方法。
【0259】
72.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体を含む、実施形態52から65のいずれか1つに記載の方法。
【0260】
73.Ir(I)−ホスフィン前駆錯体が、(dppbz)Ir(BPin)、(Ind)Ir(dppe)、(PMeIrH、((R11P)IrH、((R11P)Ir(B(OR11、(R11P)Ir(BPin)、(((R11P)Ir((R11O)B)、((R11P)Ir(BPin)、((R11P)IrH(B(OR115−xおよびそれらの組合せからなる群から選択され、xは、0〜4の間の整数であり、dppbzは、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンであり、BPinはピナコールボランであり、R11は水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態72に記載の方法。
【0261】
74.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体を含む、実施形態52から65のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
75.Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体が、(Cp)Ir(H)(MeP)、(Cp)Ir(H)(BPin)(MeP)、(Cp)Ir(H)(C)(MeP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態74に記載の方法。
【0263】
76.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義される化合物
【0264】
【化67】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態52から75のいずれかに記載の方法。
【0265】
77.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0266】
【化68】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態76に記載の方法。
【0267】
78.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0268】
【化69】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態76または77に記載の方法。
【0269】
79.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0270】
【化70】
(式中、Aは、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態76から78のいずれかに記載の方法。
【0271】
80.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0272】
【化71】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態76または77に記載の方法。
【0273】
81.単座ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0274】
【化72】
(式中、Zは、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態76に記載の方法。
【0275】
82.Zが、出現毎に独立して、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチル、または−COCHである、実施形態78から81のいずれかに記載の方法。
【0276】
83.ホウ素化試薬が、以下:
【0277】
【化73】
の1つまたは複数から選択される、実施形態52から82のいずれかに記載の方法。
【0278】
84.芳香族基質、第1のホウ素化アレーン、および第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、−Clおよび−Brからなる群から選択される置換基をさらに含む、実施形態52から83のいずれかに記載の方法。
【0279】
85.上記の芳香族基質が、以下の式により定義される化合物
【0280】
【化74】
(式中、
Xは、電子吸引基または指向型メタル化基から選択される部分であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、−OR、−NR、−C(=O)R、ニトリル基、C〜Cアルキル基またはC〜Cハロアルキル基であり、
は、−Clおよび−Brであり、
、RおよびRの各々は、出現毎に個別に、水素またはC〜Cアルキル基であり、
は、出現毎に個別に、水素、−OR、−NRまたはC〜Cアルキル基である)
を含み、
上記の第1のホウ素化アレーンが、以下の式によって定義される化合物
【0281】
【化75】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記の第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、以下の式によって定義される化合物
【0282】
【化76】
(式中、
X、R、RおよびRは、上記の通りであり、Yは、ボロン酸またはボロン酸誘導体である)
を含み、
上記の第1のホウ素化アレーンと上記の第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも25:1である、
実施形態58から84のいずれかに記載の方法。
【0283】
86.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップをさらに含む、実施形態85に記載の方法。
【0284】
87.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態86に記載の方法。
【0285】
88.遷移金属触媒が、酢酸パラジウム(II)を含む、実施形態87に記載の方法。
【0286】
89.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンをギ酸塩および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態86に記載の方法。
【0287】
90.遷移金属触媒が、炭素担持パラジウムを含む、実施形態89に記載の方法。
【0288】
91.ギ酸塩が、ギ酸アンモニウムを含む、実施形態89または90に記載の方法。
【0289】
92.ワンポット合成方法を使用して、第1のホウ素化アレーンが形成され、かつ還元的に脱ハロゲン化されて、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンが形成される、実施形態86から91のいずれかに記載の方法。
【0290】
93.上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンと上記の反応体とをクロスカップリングするステップをさらに含む、実施形態52から92のいずれかに記載の方法。
【0291】
94.1〜3つの置換基を含む置換アレーン環を含む基質であって、上記のアレーン環が、CH活性化に電子的に有利な第1の位置において置換されておらず、かつCH活性化に立体的に有利な第2の位置において置換されていない、基質を用意するステップ、および
第1のホウ素化アレーンおよび場合により第2のホウ素化アレーンを形成するのに有効な条件下で、上記の基質を、イリジウム前駆錯体、単座配位子および二座配位子から選択される配位子、ならびにホウ素化試薬に接触させるステップであって、
上記の第1のホウ素化アレーンが、1〜3つの置換基、および上記の第1の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
上記の第2のホウ素化アレーンが、形成される場合、1〜3つの置換基、および上記の第2の位置にボロン酸またはボロン酸誘導体を含む、置換アレーン環を含み、
上記の第1のホウ素化アレーンと上記の第2のホウ素化アレーンとのモル比が、GC−FIDにより決定すると、少なくとも1:1である、ステップ
を含む、ホウ素化アレーンを形成する方法。
【0292】
95.アレーン環がフェニル環を含む、実施形態94に記載の方法。
【0293】
96.アレーン環がピリジン環を含む、実施形態94に記載の方法。
【0294】
97.ピリジン環が、2,4−二置換ピリジン環を含む、実施形態96に記載の方法。
【0295】
98.ピリジン環が、2,6−二置換ピリジン環を含む、実施形態96に記載の方法。
【0296】
99.ピリジン環が、2,4,6−三置換ピリジン環を含む、実施形態96に記載の方法。
【0297】
100.ピリジン環が、2−置換ピリジン環を含む、実施形態96に記載の方法。
【0298】
101.1〜3つの置換基が、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基から個別に選択され、
13、R14およびR15の各々が、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基、またはアリール基であり、R16が、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1615、C〜Cアルキル基またはアリール基である、
実施形態94から100のいずれかに記載の方法。
【0299】
102.アレーン環が、−Fおよび−CFからなる群から選択される電子吸引基を含む、実施形態94から100のいずれかに記載の方法。
【0300】
103.第1のホウ素化アレーンが、上記の電子吸引基に対しオルト位に、以下
【0301】
【化77】
の1つから選択されるボロン酸誘導体を含む、実施形態94から102のいずれかに記載の方法。
【0302】
104.第1のホウ素化アレーンと第2のホウ素化アレーンとのモル比が、少なくとも3:1である、実施形態94から103のいずれかに記載の方法。
【0303】
105.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも30%である、実施形態94から104のいずれかに記載の方法。
【0304】
106.第1のホウ素化アレーンおよび第2のホウ素化アレーンへの転化率が、少なくとも50%である、実施形態94から105のいずれかに記載の方法。
【0305】
107.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体を含む、実施形態94から106のいずれかに記載の方法。
【0306】
108.Ir(I)−シクロオクタジエン前駆錯体が、[Ir(OMe)cod]、[Ir(Cl)cod]、[Ir(cod)]BF、[Ir(OH)cod]、[Ir(OPh)cod]、[Ir(OAc)cod]、(Ind)Ir(cod)、Ir(acac)cod、(dtbpy)Ir(BPin)(cod)、(tmp)Ir(BPin)(cod)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態107に記載の方法。
【0307】
109.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体を含む、実施形態94から106のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
110.Ir(I)−シクロオクテン前駆錯体が、[Ir(OMe)coe]、[Ir(Cl)coe]、[Ir(coe)]BF、[Ir(OH)coe]、[Ir(OPh)coe]、[Ir(OAc)coe]、(Ind)Ir(coe)、Ir(acac)coe、(dtbpy)Ir(BPin)(coe)、(tmp)Ir(BPin)(coe)、[IrCl(coe)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態109に記載の方法。
【0309】
111.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−メシチレン前駆錯体を含む、実施形態94から106のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
112.Ir(I)−メシチレン前駆錯体が、(MesH)Ir(BPin)(B(OR11)、(MesH)Ir(BPin)およびそれらの組合せからなる群から選択され、BPinがピナコールボランであり、R11が水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態111に記載の方法。
【0311】
113.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−ホスフィン前駆錯体を含む、実施形態94から106のいずれかに記載の方法。
【0312】
114.Ir(I)−ホスフィン前駆錯体が、(dppbz)Ir(BPin)、(Ind)Ir(dppe)、(PMeIrH、((R11P)IrH、((R11P)Ir(B(OR11、(R11P)Ir(BPin)、(((R11P)Ir((R11O)B)、((R11P)Ir(BPin)、((R11P)IrH(B(OR115−xおよびそれらの組合せからなる群から選択され、xは、0〜4の間の整数であり、dppbzは、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンであり、BPinはピナコールボランであり、R11は水素、線状または分岐状C〜Cアルキル基、アリール基、またはC〜Cシクロアルキル基である、実施形態113に記載の方法。
【0313】
115.イリジウム前駆錯体が、Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体を含む、実施形態94から106のいずれかに記載の方法。
【0314】
116.Ir(I)−1,2,3,4,5−メチルシクロペンタジエニル前駆錯体が、(Cp)Ir(H)(MeP)、(Cp)Ir(H)(BPin)(MeP)、(Cp)Ir(H)(C)(MeP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態115に記載の方法。
【0315】
117.配位子が二座配位子を含む、実施形態94から106のいずれかに記載の方法。
【0316】
118.二座配位子が電子不足二座配位子を含む、実施形態117に記載の方法。
【0317】
119.二座配位子が、1つまたは複数の電子吸引性置換基により置換されている、2,2’−ビピリジンを含む、実施形態117または118に記載の方法。
【0318】
120.二座配位子が、1つまたは複数のトリフルオロメチル基により置換されている、2,2’−ビピリジンを含む、実施形態117から119のいずれかに記載の方法。
【0319】
121.二座配位子が、式IVa、式IVbまたは式IVcによって定義される化合物
【0320】
【化78】
(式中、nは、0、1、2または3であり、R10は、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜Cアルキル基またはC〜Cペルフルオロアルキル基であるが、但し、二座配位子が式IVaまたは式IVbにより定義される化合物を含む場合、R10の1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態117から120のいずれかに記載の方法。
【0321】
122.R10の1つまたは複数が、−Fおよび−CFから選択される、実施形態121に記載の方法。
【0322】
123.二座配位子が、以下:
【0323】
【化79】
の1つまたは複数から選択される、実施形態117から122のいずれかに記載の方法。
【0324】
124.配位子が、単座配位子を含む、実施形態94から106のいずれかに記載の方法。
【0325】
125.単座配位子が、ピリジン配位子を含む、実施形態124に記載の方法。
【0326】
126.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0327】
【化80】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態125に記載の方法。
【0328】
127.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0329】
【化81】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であるが、
但し、Aの1つまたは複数が水素ではないことを条件とする)
を含む、実施形態125または126に記載の方法。
【0330】
128.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0331】
【化82】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態125から127のいずれかに記載の方法。
【0332】
129.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0333】
【化83】
(式中、Aは、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態125から128のいずれかに記載の方法。
【0334】
130.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0335】
【化84】
(式中、Aは、出現毎に独立して、水素、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、
は、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態125から127のいずれかに記載の方法。
【0336】
131.ピリジン配位子が、以下の式により定義されるピリジン
【0337】
【化85】
(式中、Zは、出現毎に独立して、ハロゲン、−OR13、−NR1415、−C(=O)R16、−OC(=O)R16、ニトリル基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基およびC〜Cアミノアルキル基であり、R13、R14およびR15の各々は、出現毎に個別に、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基であり、R16は、出現毎に個別に、水素、−OR13、−NR1415、C〜Cアルキル基またはアリール基である)
を含む、実施形態125または126に記載の方法。
【0338】
132.Zが、出現毎に独立して、−F、−Cl、−CF、−Me、−OMe、−CHNH、−NHMe、−NMe、−NPh、フェニル、イソプロピル、tert−ブチル、または−COCHである、実施形態128から131のいずれかに記載の方法。
【0339】
133.ホウ素化試薬が、以下:
【0340】
【化86】
の1つまたは複数から選択される、実施形態94から132のいずれかに記載の方法。
【0341】
134.置換アレーン環、第1のホウ素化アレーン、および、形成される場合、第2のホウ素化アレーンが、−Clおよび−Brからなる群から選択される置換基を含む、実施形態94から133のいずれかに記載の方法。
【0342】
135.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化して、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを得るステップをさらに含む、実施形態134に記載の方法。
【0343】
136.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態135に記載の方法。
【0344】
137.遷移金属触媒が、酢酸パラジウム(II)を含む、実施形態136に記載の方法。
【0345】
138.第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するステップが、第1のホウ素化アレーンを還元的に脱ハロゲン化するのに有効な条件下で、第1のホウ素化アレーンをギ酸塩および遷移金属触媒に接触させるステップを含む、実施形態135に記載の方法。
【0346】
139.遷移金属触媒が、炭素担持パラジウムを含む、実施形態138に記載の方法。
【0347】
140.ギ酸塩が、ギ酸アンモニウムを含む、実施形態138または139に記載の方法。
【0348】
141.ワンポット合成方法を使用して、第1のホウ素化アレーンが形成され、かつ還元的に脱ハロゲン化されて、脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンが形成される、実施形態135から140のいずれかに記載の方法。
【0349】
142.上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンを、ハロゲン化アリール、偽ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニルおよび偽ハロゲン化ビニルからなる群から選択される反応体、ならびに遷移金属触媒に接触させ、上記の第1のホウ素化アレーンまたは上記の脱ハロゲン化されたホウ素化アレーンと上記の反応体とをクロスカップリングするステップをさらに含む、実施形態94から141のいずれかに記載の方法。
【0350】
非限定的例示として、本開示のある種の実施形態の例が以下に示される。
【実施例】
【0351】
材料および方法
別段の指定がない限り、反応は、窒素雰囲気下、磁気撹拌およびH NMR分光法によりモニタリングしながら、オーブンにより乾燥したガラス器具中で実施した。テトラヒドロフラン(THF)は、窒素下、ナトリウム/ベンゾフェノンから新しく蒸留した。酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))は、Strem Chemicals、Inc.(Newburyport、MA)から購入し、A.C.S.グレードの無水フッ化カリウム(KF)およびポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)は、Sigma Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。フラッシュまたはカラムクロマトグラフィーは、Silicycle(Quebec City、カナダ)から購入したシリカゲル(230〜400メッシュ)を用いて実施した。H NMR、13C NMR、19Fおよび11B NMRスペクトルは、VnmrJ3.2Aを実行する、7600AS 96サンプルオートサンプラーを装備したAgilent DirectDrive2 500MHz NMR分光計(H NMRは500MHz、13C NMRは125MHz、19F NMRは470MHz、および11B NMRは160MHz)を使用して記録した。融点は、Thomas−Hooverキャピラリー融点装置で測定した。正確な質量分析は、Michigan State Universityの質量分析サービスセンターのWaters GCT Premierガスクロマトグラフ/タイム−オブ−フライト質量分析計を使用して記録した。生成物は、ポジティブモードにおいて運転した電子イオン化源を使用してイオン化した。
【実施例1】
【0352】
1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのホウ素化
1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンは、除草剤を含む様々な重要な化合物のための重要な合成用ビルディングブロックである。1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのホウ素化を、フルオロ置換基に対しメタ位(「立体的生成物」と呼ばれる、立体的に有利な反応生成物)とは反対に、フルオロ置換基に対しオルト位(「電子的生成物」と呼ばれる、電子的に有利な反応生成物)において好ましくは触媒する、イリジウム触媒の能力を検討した。
【0353】
1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのホウ素化の一般手順
以下のスキームは、代表的な1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのホウ素化に使用した反応条件を例示している。
【0354】
【化87】
【0355】
窒素雰囲気のグローブボックス中、20ミリリットル(mL)のバイアル中に、ビス(ピナコラト)ジボロン(BPin;254ミリグラム(mg)、1.0ミリモル(mmol))を秤量し、THF(2mL)に溶解した。得られた溶液を10mLのメスフラスコに移した。バイアルをTHF(3×1mL)により洗浄し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。THFを用いて、このメスフラスコ中の溶液を10mLの印まで希釈し、BPinの0.10モル濃度(M)の保存溶液を得た。ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジ−μ−メトキシジイリジウム(I)([Ir(OMe)cod];33.1mg、0.050mmol)を20mLバイアルに秤量し、THF(2mL)に溶解した。得られた溶液を10mLのメスフラスコに移した。バイアルをTHF(3×1mL)により洗浄し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。THFを用いて、メスフラスコ中の溶液を10mLの印まで希釈し、[Ir(OMe)cod]の0.0050Mの保存溶液を得た。配位子(0.10mmol)を20mLのバイアルに秤量し、THF(2mL)に溶解した。得られた溶液を10mLのメスフラスコに移した。バイアルをTHF(3×1mL)により洗浄し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。THFを用いて、メスフラスコ中の溶液を10mLの印まで希釈し、配位子の0.010Mの保存溶液を得た。
【0356】
J−Young NMRチューブに、[Ir(OMe)cod](200マイクロリットル(μL)、0.001mmol)の0.0050M保存溶液、BPin(1.0mL、0.1mmol)の0.10M保存溶液、および配位子(200μL、0.002mmol)の0.010M保存溶液を投入した。このチューブに基質(1.0mmol)を加えた。J−Young NMRチューブに栓をし、十分に振盪してこの液体を混合し、グローブボックスから取り出して、80℃の油浴中で加熱した。反応の進行は、時々、油浴からチューブを取り出して、19Fおよび11B NMRスペクトルを得ることによりモニタリングした。反応が完了したと判断した後、揮発物をロータリーエバポレーションによって除去した。次に、残渣をクーゲルロール蒸留により精製すると、ホウ素化生成物の位置化学混合物が得られた。立体的生成物と電子的生成物との比は、19F NMR分光法およびGC−FIDによって決定した。
【0357】
2−クロロ−6−フルオロトルエンのホウ素化
2−クロロ−6−フルオロトルエンは、上記の一般手順を使用し、配位子としてジ(ピリジン−2−イル)メタンを使用してホウ素化した。この反応を96時間、実施すると、76:24の比の2−(3−クロロ−5−フルオロ−4−メチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(立体的生成物)および2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(電子的生成物)が、白色固体(49.3mg、ホウ素基準で91%)として得られた。
【0358】
2−(3−クロロ−5−フルオロ−4−メチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(主要):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.51 (s, 1H), 7.30 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 2.31 (d, J = 2.5 Hz, 3H), 1.34 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ-115.0 (dt, J = 9.3, 2.5 Hz); 13C NMR (125 MHz, アセトン-d6) δ 162.3 (d, J = 247.0 Hz), 136.5 (d, J = 4.8 Hz), 132.0 (d, J = 2.9 Hz), 128.4 (d, J = 20.0 Hz), 120.2, (d, J = 21.9 Hz), 85.3, 25.2, 12.2 (d, J = 4.3 Hz).
【0359】
2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(少量):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.51 (m, 1H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 2.23 (d, J = 2.5 Hz, 3H), 1.34 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ-102.4 (m); 13C NMR (125 MHz, アセトン-d6) δ 166.9 (d, J = 252.7 Hz), 136.9 (d, J = 6.7 Hz), 135.8 (d, J = 9.5 Hz), 126.0 (d, J = 3.8 Hz), 125.0 (d, J = 21.0 Hz), 84.8, 25.2, 11.8 (d, J = 4.8 Hz).
【0360】
2−クロロ−6−フルオロ−N,N−ジメチルアニリンのホウ素化
2−クロロ−6−フルオロ−N,N−ジメチルアニリンを、上記の一般手順を使用し、配位子として4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジンを使用してホウ素化した。この反応を6時間、実施すると、69:31の比の2−クロロ−6−フルオロ−N,N−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(立体的生成物)および6−クロロ−2−フルオロ−N,N−ジメチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(電子的生成物)が、無色油状物(53.8mg、ホウ素基準で90%)として得られた。
【0361】
2−クロロ−6−フルオロ−N,N−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(主要):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.51 (s, 1H), 7.28 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 2.83 (d, J = 2.5 Hz, 6H), 1.26 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -120.2 (d, J = 11.6 Hz).
【0362】
6−クロロ−2−フルオロ−N,N−ジメチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(少量):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.31 (dd, J = 7.8, 5.9 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 2.79 (d, J = 2.5 Hz, 6H), 1.30 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -108.4 (br).
【0363】
混合物:13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 165.4 (d, J = 255.6 Hz), 159.7 (d, J = 250.8 Hz), 140.4 (d, J = 12.4 Hz), 137.7 (d, J = 16.2 Hz), 137.0 (d, J = 7.6 Hz), 132.0 (d, J = 2.9 Hz), 131.9, 131.8 (d, J = 10.5 Hz), 125.3 (d, J = 3.8 Hz), 121.0 (d, J = 20.0 Hz), 84.1, 83.9, 43.4 (d, J = 4.5 Hz), 43.2 (d, J = 4.8 Hz), 24.7.
【0364】
1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼンのホウ素化
1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼンを、上記の一般手順を使用し、配位子として4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジンを使用してホウ素化した。この反応を12時間、実施すると、64:36の比の2−(3−クロロ−4−エトキシ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(立体的生成物)および2−(4−クロロ−3−エトキシ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(電子的生成物)が、無色油状物(53.5mg、ホウ素基準で89%)として得られた。
【0365】
2−(3−クロロ−4−エトキシ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(主要):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.52 (s, 1H), 7.37 (m, 1H), 4.22 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 3H, 別の異性体と重複), 1.33 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ -129.3 (d, J = 10.0 Hz).
【0366】
2−(4−クロロ−3−エトキシ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(少量):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.37 (m, 1H), 7.24 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 1H), 4.14 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.34 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ -117.9 (d, J = 5.0 Hz).
【0367】
混合物:13C NMR (125 MHz, アセトン-d6) δ 161.5 (d, J = 254.2 Hz), 156.8 (d, J = 248.9 Hz), 146.7 (d, J = 13.9 Hz), 144.3 (d, J = 15.7 Hz), 132.8 (d, J = 3.8 Hz), 132.4 (d, J = 3.1 Hz), 131.6 (d, J = 9.1 Hz), 126.1 (d, J = 3.6 Hz), 121.7 (d, J = 18.1 Hz), 85.3, 84.9, 70.9 (d, J = 5.1 Hz), 70.8 (d, J = 4.3 Hz), 25.2, 25.0, 15.9, 15.9.
【0368】
1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンのホウ素化
1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンを、上記の一般手順を使用し、配位子として4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジンを使用してホウ素化した。この反応を6時間、実施すると、60:40の比の2−(3,4−ジクロロ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(立体的生成物)および2−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(電子的生成物)が、白色固体(54.5mg、ホウ素基準で94%)として得られた。
【0369】
2−(3,4−ジクロロ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(主要):1H NMR (500 MHz, CD3CN) δ 7.53 (s, 1H), 7.34 (dd, J = 8.8, 1.5 Hz, 1H), 1.28 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ -120.0 (d, J = 8.3 Hz); 13C NMR (125 MHz, CD3CN) δ159.4 (d, J = 250.8 Hz), 134.3, 132.2 (d J = 2.9 Hz), 123.8 (d, J = 20.0 Hz), 120.8 (d, J = 20.0 Hz), 85.7, 25.2.
【0370】
2−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(少量):1H NMR (500 MHz, CD3CN) δ 7.48 (dd, J = 7.8, 5.9 Hz, 1H), 7.25 (dd, J = 7.8, 1.0 Hz, 1H), 1.30 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ -100.7 (d, J = 5.0 Hz); 13C NMR (125.72 MHz, CD3CN) δ 163.4 (d, J = 254.6 Hz), 137.5, 135.5 (d, J = 9.5 Hz), 126.6 (d, J = 3.8 Hz), 121.1 (d, J = 21.9 Hz), 85.4, 25.2.
【0371】
1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼンのホウ素化
1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼンを、上記の一般手順を使用し、配位子として4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジンを使用してホウ素化した。この反応を12時間、実施すると、55:45の比の2−(3−クロロ−4,5−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(立体的生成物)および2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(電子的生成物)が、白色固体(50.5mg、ホウ素基準で92%)として得られた。
【0372】
2−(3−クロロ−4,5−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(主要):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.58 (dt, J = 6.9, 1.5 Hz, 1H), 7.46 (m, 1H), 1.31 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ -134.5 (m, 1F), -135.9 (dd, J = 21.6, 10.0 Hz, 1F).
【0373】
2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(少量):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.38 (m, 1H), 7.13 (m, 1H), 1.33 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ -125.5 (dd, J = 21.6, 5.0 Hz, 1F), -139.9 (dd, J = 20.7, 5.8 Hz, 1F).
【0374】
混合物:13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.0 (dd, J = 255.7, 11.6 Hz), 150.7 (dd, J = 251.9, 12.0 Hz), 149.0 (dd, J = 254.5, 14.7 Hz), 147.1 (dd, J = 251.3, 16.5 Hz), 131.8 (d, J = 3.3 Hz), 130.6 (dd, J = 8.1, 5.2 Hz), 125.6 (dd, J = 14.4, 1.8 Hz), 125.1, (dd, J = 3.7, 1.5 Hz), 122.3 (d, J = 14.3 Hz), 121.5 (d, J = 15.7 Hz), 84.6, 84.4, 24.8, 24.8.
【0375】
1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼンのホウ素化
以下のスキームは、1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼンのホウ素化に使用した反応方法を例示している。
【0376】
【化88】
【0377】
窒素雰囲気のグローブボックス中、[Ir(OMe)cod](33.1mg、0.05mmol)を20mLのバイアルに入れた。固体がN−メチルピロリジン−2−オン(NMP;1mL)に部分的に溶解し、10mLのメスフラスコに移した。バイアル中に残った残渣をNMP(4×1mL)により処理し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。次に、この混合物を10mLの印までNMPにより希釈し、0.005Mの[Ir(OMe)cod]保存溶液にした。4,4’,5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビオキサゾール(box;14.0mg、0.1mmol)を20mLのバイアルに入れた。固体がNNMP(1mL)に部分的に溶解し、10mLのメスフラスコに移した。バイアル中に残った残渣をNMP(4×1mL)により処理し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。この混合物を10mLの印までNMPにより希釈し、0.01Mのbox保存溶液にした。
【0378】
マイクロ撹拌子を備えた、BPin(254mg、1.0mmol)を含有する20mLのガラス製バイアルに、[Ir(OMe)cod]保存溶液(2.0mL、0.01mmolの[Ir(OMe)cod])およびbox保存溶液(2.0mL、0.02mmolのbox)を加えた。この混合物を30分間(min)、撹拌した。1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼン(750μL、5mmol)を加えた。この反応物を室温(rt)で24時間(h)、撹拌した。ガスクロマトグラフ−質量分光法(GC−MS)分析により、BPinが完全に消費したことが示された。GC−FIDにより、電子的生成物:立体的生成物が65:35の比であることが示された。この粗製反応混合物を水(20mL)と撹拌し、ジエチルエーテル(EtO;3×5mL)により抽出した。エーテル相を硫酸マグネシウム(MgSO)により脱水してろ過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をクーゲルロール蒸留(2mmHg)により精製した。第1のフラクション(室温)は、原料の1−クロロ−2−エトキシ−3−フルオロベンゼンであり、無色油状物(411mgが得られた。基質基準で47%)として単離された。第2のフラクション(約100℃)は、2−(4−クロロ−3−エトキシ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランと2−(3−クロロ−4−エトキシ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(19F NMRによる電子的生成物:立体的生成物の比は66:34、GC−FIDによる電子的生成物:立体的生成物の比は66:34)との混合物を、無色油状物(152mg、ホウ素基準で25.3%)として含有した。
【0379】
2−(3−クロロ−4−エトキシ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(少量):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.52 (s, 1H), 7.37 (m, 1H, 別の異性体と重複), 4.22 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 3H, 別の異性体と重複), 1.33 (s, 12H, 別の異性体と重複); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ -129.3 (d, J = 10.0 Hz).
【0380】
2−(4−クロロ−3−エトキシ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(主要):1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.37 (m, 1H, 別の異性体と重複), 7.24 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 1H), 4.14 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 3H, 別の異性体と重複), 1.34 (s, 12H, 別の異性体と重複); 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ -117.9 (d, J = 5.0 Hz).
【0381】
混合物:13C NMR (125 MHz, アセトン-d6) δ 161.5 (d, J = 254.2 Hz), 156.8 (d, J = 248.9 Hz), 146.7 (d, J = 13.9 Hz), 144.3 (d, J = 15.7 Hz), 132.8 (d, J = 3.8 Hz), 132.4 (d, J = 3.1 Hz), 131.6 (d, J = 9.1 Hz), 126.1 (d, J = 3.6 Hz), 121.7 (d, J = 18.1 Hz), 85.3, 84.9, 70.9 (d, J = 5.1 Hz), 70.8 (d, J = 4.3 Hz), 25.2, 25.0, 15.9, 15.9.
【0382】
様々な条件下での、1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンおよび2−クロロ−6−フルオロトルエンのホウ素化
上記のホウ素化方法をさらに評価するために、様々な配位子を使用し、上記の一般的方法を使用して、1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンおよび2−クロロ−6−フルオロトルエンをホウ素化した。以下のスキームは、1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンおよび2−クロロ−6−フルオロトルエンのホウ素化に使用した反応方法を例示している。
【0383】
【化89】
【0384】
これらの試験の結果を表1にまとめている。表1に示されている通り、ホウ素化反応において、4,4’,5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビオキサゾール(box)などの電子不足配位子を使用することにより、電子的生成物が有利になり得た。ホウ素化反応の分析により、ホウ素化反応において、立体的なかさ高さがより小さな配位子を使用することにより、電子的生成物が有利になり得ることも示唆された。
【0385】
【表1】
【0386】
2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルのホウ素化
以下のスキームは、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルのホウ素化に使用した反応方法を例示している。
【0387】
【化90】
【0388】
窒素雰囲気のグローブボックス中、撹拌子を含有する20mLのバイアル中で、BPin(127mg、0.5mmol)および[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)をHunig塩基(2mL)に溶解した。4,4’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン(btfbpy;2.9mg、0.01mmol)を加えた。得られた溶液を室温で1時間、撹拌した。2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル(77.5mg、0.5mmol)を加えた。この反応物を室温で24時間、撹拌した。GC−MSにより、基質は残存していないこと、および2つの一ホウ素化生成物が形成していることが示された。揮発物は、ロータリーエバポレーションにより除去した。この残渣を水(10mL)およびEtO(2mL)と撹拌した。エーテル相を分離し、水相をEtO(約2×2mL)により抽出した。合わせたエーテル溶液をMgSOで脱水し、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。
【0389】
この残渣をクーゲルロール蒸留により精製すると、2−クロロ−6−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル(立体的生成物)および6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル(電子的生成物)からなる、ホウ素化生成物の位置化学混合物が41:59の比で、白色固体(105.1mg、アレーン基準で74%)として得られた。
【0390】
2−クロロ−6−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル(少量):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.67 (s, 1H), 7.47 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 1.32 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ -104.2 (d, J = 7.8 Hz).
【0391】
6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル(主要):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.86 (dd, J = 8.3, 6.4 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 1.31 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CD3CN) δ-92.2 (d, J = 4.2 Hz).
【0392】
混合物:13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 167.8 (d, J = 266.8 Hz), 163.1 (d, J = 263.0 Hz), 141.4 (d, J = 10.3 Hz), 140.6 (d, J = 2.1 Hz), 137.2, 131.1 (d, J = 3.3 Hz), 125.2 (d, J = 3.6 Hz), 119.7 (d, J = 18.1 Hz), 111.3 (d, J = 2.1 Hz), 104.9 (d, J = 18.1 Hz), 103.1 (d, J = 20.3 Hz), 85.1, 84.7, 24.8, 24.7.
【0393】
ハイ−スループット基質/配位子スクリーニング
上記のホウ素化反応の分析により、ホウ素化反応において、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン(btfbpy)、4,4’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン(ttfbpy)、または4,4’,5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビオキサゾール(box)などの電子不足配位子を使用することにより、電子的生成物が有利になり得ることが示唆された。上記のホウ素化反応の分析により、ホウ素化反応において、立体的なかさ高さがより小さな配位子を使用することにより、電子的生成物が有利になり得ることも示唆された。
【0394】
ハイ−スループットスクリーニングアッセイを使用して、2種の電子不足ビピリジン配位子(すなわち、電子吸引性置換基を含有する2種のビピリジン)をさらに評価した。以下のスキームは、ハイ−スループットスクリーニングアッセイにおいて、基質/配位子のペアを評価するために使用したホウ素化反応条件を例示している。
【0395】
【化91】
【0396】
窒素雰囲気のグローブボックス中、BPin(423.3mg、1.67mmol)、[Ir(OMe)cod](11.1mg、0.0167mmol)、および配位子(btfbpy(9.7mg、0.0332mmol)またはttfbpy(14.3mg、0.0332mmol))を20mLのバイアルに入れた。固体がHunig塩基(1mL)に部分的に溶解し、10mLのメスフラスコに移した。バイアル中に残った残渣をHunig塩基(4×1mL)により処理し、得られた溶液を上記のメスフラスコに移した。この混合物を10mLの印までHunig塩基により希釈した。このフラスコにマイクロ撹拌子を加え、この混合物を室温で1時間、撹拌し、BPin/Ir/配位子の保存溶液を得た。マイクロ撹拌子を備え、基質(2位において、−CH、−NMe、−OEt、−Cl、−Fまたは−CNにより置換されている、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼン、0.1mmol)を含有する700μLのガラス製バイアルに、BPin/Ir/配位子の保存溶液(300μL、50.0μmolのBPin、0.50μmolの[Ir(OMe)cod]、1.0μmolの配位子)を加えた。この方法で調製した各バイアルを、24ウェルのハイ−スループットスクリーニングブロックに入れた。このブロックを密閉し、グローブボックスから取り出して、磁気撹拌しながら、60℃で12時間、加熱プレート上で加熱した。この時点で、試料アリコートを各バイアルから抜き取り、転化率および立体/電子的生成物の比を、19F NMR分光法およびGC−FIDにより決定した。
【0397】
ハイ−スループットスクリーニングの結果を表2に示している。大部分の場合に、1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのフルオロ置換基に対しオルトでのホウ素化(電子的に有利な反応生成物)が有利であった。
【0398】
【表2】
【実施例2】
【0399】
1−クロロ−3−フルオロ−2−置換ベンゼンのタンデムホウ素化/Suzukiカップリング
ホウ素化アレーンは、有用な合成中間体となり得る。例えば、ホウ素化アレーンは、Suzuki型クロスカップリング反応などの様々なクロスカップリング反応に関与して、幅広い範囲の高度に官能基化された有機化合物を入手することができる。したがって、本明細書に記載されているホウ素化方法とその後のSuzukiクロスカップリングとの適合性を検討した。
【0400】
1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼンのタンデムC−H活性化/ホウ素化およびSuzukiカップリング
【0401】
【化92】
【0402】
窒素のグローブボックス中、20mLのバイアル中で、BPin(254mg、1.0mmol)、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.010mmol、0.02mmolのIr)、btfbpy(6.3mg、0.020mmol)および1,2−ジクロロ−3−フルオロベンゼン(117μL、1.0mmol)をTHF(2mL)に溶解し、60℃で12時間、撹拌した。粗製反応混合物の19F NMR分析により、67:33の比の生成物に93%で転化したことが示された。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。クーゲルロール蒸留(0.2mmHg、150℃)により、2−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランおよび2−(3,4−ジクロロ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの固体の混合物が得られた(256mg、88%、67:33の比)。
【0403】
撹拌子を有するスクリューキャップ付きチューブに、4−ヨード安息香酸メチル(228mg、0.87mmol)、KCO(218mg、1.58mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPhCl;5.5mg、0.008mmol)を秤量した。水(1.6mL)を加えてKCOを溶解し、THF(6.4mL)中の2−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランおよび2−(3,4−ジクロロ−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(合わせて、232mg、0.80mmol、67:33)からなる混合物の溶液をスクリューキャップ付きチューブに加えた。この二相の混合物にアルゴンを30分間、スパージングし、このチューブに栓をして60℃の油浴中で加熱した。4時間後、GC−MS分析により、少量のヨウ素の存在、原料のボロン酸エステルが存在しないこと、およびSuzukiカップリング生成物の重なりピークが示された。粗製反応混合物の19F NMR分析により、1%の未同定ピークを含む、68:32の比の2つのSuzuki生成物が示された。
【0404】
粗製反応混合物を塩基性アルミナの短いプラグによりろ過し、このプラグをEtOAcにより洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。ヘキサンとEtO(50:1)との混合物を用いるシリカゲルカラム上で残渣を精製すると、3つのフラクション、すなわち3’,4’−ジクロロ−5’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチル(83.7mg、33%)、3’,4’−ジクロロ−2’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチル(43.6mg、17%)、および混合フラクション(56.3mg、15%、7%、67:33)が得られた。
【0405】
3’,4’−ジクロロ−2’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(52.2mg、原料のアレーンから17.4%)として単離した。mp150〜152℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.10 (AABB, 実測J = 8.5 Hz, 2H), 7.56 (AABBの二重線, 実測J = 8.5, 1.7 Hz, 2H), 7.34 (m, ddに分割されている, 結合定数J = 8.5, 1.5 Hz, 1H), 7.28 (t, ddに分割されている, 結合定数J = 8.6, 7.3 Hz, 1 H), 3.93 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -112.9 (dd, dqに分割されている, J = 7.5, 1.6 Hz); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.6, 155.8 (d, J = 253.2 Hz), 138.6 (d, J = 1.9Hz), 133.7, 129.9, 129.9, 128.8 (d, J = 3.1 Hz), 128.4 (d, J = 4.1 Hz), 127.8 (d, J = 14.1 Hz), 125.6 (d, J = 4.3 Hz), 121.7 (d, J = 20.7 Hz), 52.3.
【0406】
3’,4’−ジクロロ−5’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(87.6mg、原料のアレーンから29.3%)として単離した。mp134〜136℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.09 (AABB, 実測J = 8.5 Hz, 2H), 7.57 (AABBの二重線, 実測J = 8.5, 2H), 7.50 (t, J = 1.9 Hz, 1H), 7.30 (dd, J = 9.4, 2.0 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -109.2 (dd, J = 9.5, 1.6 Hz); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.5, 159.0 (d, J = 251.1 Hz), 142.0 (d, J = 2.4 Hz), 140.2 (d, J = 8.3 Hz), 134.6 (d, J = 1.4 Hz), 130.4, 130.2, 126.8, 124.3 (d, J = 3.1 Hz), 120.4 (d, J = 19.8 Hz), 113.5 (d, J = 22.7 Hz), 52.3.
【0407】
1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼンのタンデムC−H活性化/ホウ素化およびSuzukiカップリング
【0408】
【化93】
【0409】
窒素のグローブボックス中、撹拌子を有するシュレンクフラスコ中で、BPin(127mg、0.5mmol)、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol)およびttfbpy(8.5mg、0.02mmol)をHunig塩基(2.0mL)に溶解し、この混合物を室温で1時間、撹拌した。1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン(93μL、1.0mmol)を加えた。シュレンクフラスコをグローブボックスから取り出して、アルゴン雰囲気下に置き、60℃の油浴中で6時間、加熱した。粗製反応混合物の19F NMR分析により、出発材料の転化率が85%、および82:18の比の2つの生成物であることが示された。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。クーゲルロール蒸留(0.2mmHg、150℃)により、2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランおよび2−(3−クロロ−4,5−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの混合物が、無色油状物として得られ、これを冷却すると固化した(217mg、79%、82:18の比)。
【0410】
撹拌子を有するスクリューキャップ付きチューブに、4−ヨード安息香酸メチル(228mg、0.87mmol)、KCO(218mg、1.58mmol)およびPd(PPhCl(5.5mg、0.008mmol)を秤量した。水(1.6mL)を加えてKCOを溶解し、THF(6.4mL)中の2−(4−クロロ−2,3−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランおよび2−(3−クロロ−4,5−ジフルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランからなる混合物溶液をスクリューキャップ付きチューブに加えた。この二相の混合物にアルゴンを30分間、スパージングし、このチューブに栓をして60℃の油浴中で加熱した。4時間後、GC−MS分析により、少量のヨウ素の存在、原料のボロン酸エステルが存在しないこと、およびSuzukiカップリング生成物の重なりピークが示された。粗製反応混合物の19F NMR分析により、主要なSuzuki生成物であるボロン酸エステルが72%、少量のSuzuki生成物であるボロン酸エステルが13%(85:15の比)、および未同定ピークが15%であることが示された。
【0411】
粗製反応混合物を塩基性アルミナの短いプラグによりろ過し、このプラグをEtOAcにより洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。ヘキサンとEtO(20:1)との混合物を用いるシリカゲルカラム上で残渣を精製すると、3’−クロロ−4’,5’−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルおよび4’−クロロ−2’,3’−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルの混合物が得られた。
【0412】
3’−クロロ−4’,5’−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(21mg、1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン基準で7%)として単離した。mp104℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.09 (AA’BB’, J = 8.6, 2H), 7.55 (AA’BB’, J = 8.6 Hz, 2H), 7.41 (dt, J = 5.9, 2.0 Hz, 1H), 7.31 (ddd, J = 10.5, 6.6, 2.2 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -137.5 (ddd, J = 20.7, 10.7, 2.1 Hz, 1F), -139.2 (dt, J = 20.8, 6.2 Hz, 1F); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.6, 151.1 (dd, J = 251.8, 13.4 Hz), 146.0 (dd, J = 251.8, 15.3 Hz), 142.2, 136.8 (dd, J = 7.6, 4.8 Hz), 130.3, 129.9, 126.9, 124.2 (d, J = 2.9 Hz), 123.2 (dd, J = 14.3, 1.9 Hz), 114.6 (d, J = 18.1 Hz), 52.3.
【0413】
4’−クロロ−2’,3’−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(117mg、1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン基準で41%)として単離した。mp101℃;1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.08 (AA’BB’, J = 8.8, 2H), 7.74 (AA’BB’の二重線, J = 8.8, 1.6 Hz, 2H), 7.57 (ddd, J = 8.7, 6.9, 2.0 Hz, 1H), 7.47 (ddd, J = 8.7, 7.3, 2.0 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -137.5 (ddd, J = 20.5, 6.4, 2.1 Hz, 1F), -139.0 (ddq, J = 20.4, 7.0, 1.7 Hz, 1F); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.6, 148.5 (dd, J = 253.7, 13.4 Hz) 147.7 (dd, J = 251.8, 15.3 Hz) 138.3, 130.0, 129.9, 128.8 (d, J = 3.8 Hz), 128.7 (d, J = 10.5 Hz), 125.2 (d, J = 4.8 Hz), 124.6 (t, J = 2.9 Hz), 122.2 (d, J = 15.3 Hz), 52.3.
【0414】
2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルのタンデムC−H活性化/ホウ素化およびSuzukiカップリング
【0415】
【化94】
【0416】
窒素のグローブボックス中、撹拌子を有するシュレンクフラスコ中で、BPin(127mg、0.5mmol)、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol)およびttfbpy(8.5mg、0.02mmol)をHunig塩基(2.0mL)に溶解し、この混合物を室温で1時間、撹拌した。2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル(156mg、1.0mmol)を加えた。シュレンクフラスコをグローブボックスから取り出して、アルゴン雰囲気下に置き、60℃の油浴中で6時間、加熱した。粗製反応物の19F NMR分析により、出発材料の転化率が80%、および2つの生成物が64:36の比であることが示された。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。クーゲルロール蒸留(0.2mmHg、150℃)により、6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル、2−クロロ−6−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリルおよび原料の2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルの混合物が、白色固体として得られた(213mg、64:32:4、ホウ素化生成物74%)。
【0417】
撹拌子を有するスクリューキャップ付きチューブに、4−ヨード安息香酸メチル(213mg、0.81mmol)、KCO(204mg、1.48mmol)およびPd(PPhCl(5.2mg、0.0074mmol)を秤量した。水(1.5mL)を加えてKCOを溶解し、上記の混合物のTHF(6.0mL)溶液をスクリューキャップ付きチューブに加えた。この二相の混合物にアルゴンを30分間、スパージングし、このチューブに栓をして60℃の油浴中で加熱した。4時間後、GC−MS分析により、ボロン酸エステルが存在しないこと、およびSuzukiカップリング生成物の重なりピークが示された。粗製反応混合物の19F NMR分析により、主要なSuzuki生成物であるボロン酸エステルが46%、少量のSuzuki生成物であるボロン酸エステルが22%(68:32の比)、未ホウ素化アレーンが13%、および未同定ピークが19%であることが示された。
【0418】
粗製反応混合物を塩基性アルミナの短いプラグによりろ過し、このプラグをEtOAcにより洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。ヘキサンとEtOAc(5:1)との混合物を用いるシリカゲルカラム上で残渣を精製すると4’−クロロ−3’−シアノ−2’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチル、3’−クロロ−4’−シアノ−5’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチル、および2つの生成物の混合物と決定されたフラクションが得られた(46mg、最初の生成物が12%、2番目の生成物が4%)。
【0419】
4’−クロロ−3’−シアノ−2’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(49mg、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル基準で17%)として単離した。mp209〜211℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.14 (AA’BB’, J = 8.3, 2H), 7.62 (AA’BB’, J = 8.3 Hz, 2H), 7.56 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 9.3, 1.5 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ-102.2 (dd, J = 9.5, 0.8 Hz); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.2, 163.9 (d, J = 262.3 Hz), 147.2 (d, J = 8.6 Hz), 141.1, 138.3 (d, J = 2.9 Hz), 131.3, 130.6, 127.2, 124.4 (d, J = 2.9 Hz), 113.3 (d, J = 20.0 Hz), 111.2, 102.4 (d, J = 18.1 Hz), 52.4.
【0420】
3’−クロロ−4’−シアノ−5’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルを白色固体(23mg、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル基準で8%)として単離した。mp148〜150℃;1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.18 (AA’BB’, J = 8.3, 2H), 7.63 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 7.56 (AA’BB’のd, J = 8.3, 2.0 Hz, 2H), 7.41 (dd, J = 8.3, 1.0 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ-106.6 (dt, J = 8.3, 1.7 Hz); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.4, 160.6 (d, J = 264.2 Hz), 137.3 (br s), 137.0 (d, J = 1.9 Hz), 135.2 (d, J = 5.7 Hz), 130.6, 130.1, 128.8 (d, J = 2.9 Hz), 127.7 (d, J = 13.4 Hz), 126.0 (d, J = 3.8 Hz), 111.2, 104.2 (d, J = 19.1 Hz), 52.4.
【0421】
2−クロロ−6−フルオロトルエンのタンデムC−H活性化/ホウ素化およびSuzukiカップリング
【0422】
【化95】
【0423】
窒素のグローブボックス中、撹拌子を有するシュレンクフラスコ中で、BPin(127mg、0.5mmol)、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol)およびttfbpy(8.5mg、0.02mmol)をTHF(2.0mL)に溶解し、室温で1時間、撹拌した。2−クロロ−6−フルオロトルエン(131μL、1.0mmol)を加えた。シュレンクフラスコをグローブボックスから取り出し、アルゴン雰囲気下に置いた。この混合物を60℃の油浴中で6時間、加熱した。粗製反応混合物の19F NMR分析により、出発材料の転化率が87%、および2つの生成物が25:75の比であることが示された。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。クーゲルロール蒸留(0.2mmHg、150℃)により、6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエンおよび2−クロロ−6−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエンの混合物が、白色固体として得られた(222mg、82%、26:74)。
【0424】
撹拌子を有するスクリューキャップ付きチューブに、4−ヨード安息香酸メチル(236mg、0.90mmol)、KCO(407mg、1.62mmol)およびPd(PPhCl(5.8mg、0.0082mmol)を秤量した。水(2.0mL)を加えてKCOを溶解し、上記の混合物のTHF(8.0mL)溶液をスクリューキャップ付きチューブに加えた。この二相の混合物にアルゴンを30分間、スパージングし、このチューブに栓をして60℃の油浴中で加熱した。4時間後、GC−MS分析により、ボロン酸エステルが存在しないこと、およびSuzukiカップリング生成物の重なりピークが示された。粗製反応混合物の19F NMR分析により、電子的に有利なSuzuki生成物であるボロン酸エステルが16%、立体的に有利なSuzuki生成物であるボロン酸エステルが71%(18:82の比)、および未同定ピークが13%であることが示された。
【0425】
粗製反応混合物を塩基性アルミナの短いプラグによりろ過し、このプラグをEtOAcにより洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。ヘキサンとEtOAc(5:1)との混合物を用いるシリカゲルカラム上で、残渣を精製した。しかし、2つの生成物が1つのフラクションとして溶出した。3’−クロロ−5’−フルオロ−4’−メチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルと4’−クロロ−2’−フルオロ−3’−メチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルとの混合物が白色固体(164mg、基質基準で59%、14:86)として単離された。
【0426】
3’−クロロ−5’−フルオロ−4’−メチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルおよび4’−クロロ−2’−フルオロ−3’−メチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸メチルの混合物:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.08 (d, J = 8.3 Hz, 2H, 2つの生成物が重複), 7.58 (d, J = 8.3 Hz, 2H, 立体支配生成物), 7.56 (d, J = 8.3 Hz, 2H, 電子支配生成物), 7.42 (s, 1H, 立体支配生成物), 7.22-7.18 (m, 重複), 3.92 (s, 3H、2つの生成物が重複), 2.36 (d, J = 2.0 Hz, 3H, 電子支配生成物), 2.33 (d, J = 2.0 Hz, 3H, 立体支配生成物); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.7, 166.6, 161.5 (d, J = 247.0 Hz), 158.0 (d, J = 249.9 Hz), 142.9 (d, J = 2.9 Hz), 139.8, 139.4 (d, J = 9. Hz), 136.0 (d, J = 7.6 Hz), 135.2 (d, J = 5.7 Hz), 130.2, 129.6, 129.6, 129.3, 128.8 (d, J = 2.9 Hz), 127.8 (d, J = 3.8 Hz), 126.7, 126.3 (d, J = 14.3 Hz), 124.8 (d, J = 3.8 Hz), 124.6 (d, J = 20.0 Hz), 123.7 (d, J = 19.1 Hz), 123.2 (d, J = 3.8 Hz), 112.2 (d, J = 24.8 Hz), 52.1, 12.5 (d, J = 5.7 Hz), 11.7 (d, J = 3.8 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -112.3 (d, J = 10.0 Hz, 立体支配生成物), -116.4 (m, 電子支配生成物).
【0427】
3,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸2−クロロ−6−フルオロフェニルのタンデムC−H活性化/ホウ素化およびSuzukiカップリング
【0428】
【化96】
【0429】
窒素のグローブボックス中、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol)およびBPin(254mg、1.0mmol)をシュレンクフラスコに加えた。このフラスコにHunig塩基(1.0mL)を加えた。ttfbpy(8.5mg、0.02mmol)のHunig塩基(1.0mL)の溶液を加えた。得られた混合物を1時間、室温で撹拌した。シュレンクフラスコにHunig塩基(1.0mL)中の基質(386mg、1.0mmol)を加え、これをグローブボックスから取り出し、コンデンサを取り付け、アルゴン雰囲気下に置いた。この反応混合物を室温で18時間、撹拌した。15時間時で採取したNMR試料の分析により、ホウ素化の形跡またはAr−F副生成物の形成は示されなかった。この反応混合物を60℃の油浴中で24時間、加熱した。この時点において、NMR分光分析により、反応は59%の転化率で進行し、17:83のモル比の立体的ホウ素化生成物と電子的ホウ素化生成物が得られたことが示された。次に、揮発物をロータリーエバポレーションにより除去した。この反応残渣をEtOに溶解し、水により洗浄した。有機層をMgSOで脱水してろ過し、蒸発させた。
【0430】
6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾエート(主要):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.64 (s, 2H), 8.15 (s, 1H), 7.62 (dd, J = 8.3, 5.9 Hz, 1H), 7.28 (dd, J = 8.1, 1.2 Hz, 1H), 1.34 (s, 12H); 19F NMR (500 MHz, CDCl3) δ -63.1, -115.6.
【0431】
2−クロロ−6−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾエート(少量):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.66 (s, 2H), 8.15 (重複したピーク, 1H), 7.72 (t, J = 1.2 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 9.3, 1.0 Hz, 1H), 1.34 (s, 12H); 19F NMR (500 MHz, CDCl3) δ -63.1, -126.1.
【0432】
次に、粗製ホウ素化生成物をTHF(2mL)に溶解し、p−ヨード安息香酸メチル(185mg、0.71mmol)を含有するスクリューキャップ付きチューブに入れた。第三リン酸カリウム二水和物(KPO・2HO;298mg、1.2mmol)を加え、このチューブにアルゴンを5分間、パージした後、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(PdCl・dppf;13mg、0.018mmol)を加えた。このチューブに栓をして60℃の油浴中で12時間、加熱した。粗製反応混合物のGC−MS分析により、ホウ素化アレーンが消費されたことが示された。次に、この粗製反応混合物を、塩基性アルミナの短いプラグに通し、EtOにより洗浄した。ろ液をMgSOで脱水してろ過し、蒸発させた。ジクロロメタンにより溶出したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、6−クロロ−2−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾエート−カップリング生成物が白色固体(79mg、15%(2ステップ))として得られた。
【0433】
メチル3’−((3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル)オキシ)−4’−クロロ−2’−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート:mp152〜154℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.68 (br s, 2H), 8.18 (br s 1H), 8.11 (AABB, J = 8.3 Hz, 2H), 7.60 (dd, J = 8.3, 1.5 Hz, 2H), 7.41-7.36 (重複した多重線, 2H), 3.93 (s, 3H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -63.0 (s, 6F), -129.1 (dt, J = 5.1, 1.7 Hz, 1F); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 166.6, 160.8, 152.2 (d, J = 254.6 Hz), 138.3 (d, J = 1.7 Hz), 135.8, 135.7, 132.7 (q, J = 34.3 Hz), 130.5 (q, J = 3.8 Hz), 130.1 (d, J = 24.8 Hz), 129.9, 128.9 (d, J = 3.1 Hz), 128.4 (d, J = 12.4 Hz), 128.2 (d, J = 3.6 Hz), 128.1 (d, J = 1.4 Hz), 127.6 (m), 125.6 (d, J = 4.1 Hz), 122.7 (q, J = 273.7 Hz, CF3), 52.3.
【実施例3】
【0434】
1−クロロ−4−フルオロ−3−置換−および1−ブロモ−4−フルオロ−3−置換ベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
電子吸引基により置換されているアレーンのオルト−ホウ素化に関する戦略として、タンデムホウ素化/脱ハロゲン化も検討した。以下のスキームは、検討したタンデムホウ素化/脱ハロゲン化方法を例示している。上で議論した通り、電子吸引基により置換されているアレーンの場合、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、通常、立体効果によって支配される。タンデムホウ素化/脱ハロゲン化では、基質は、電子吸引基、およびこの電子吸引基に対して普通なら立体的に有利なメタ位におけるイリジウム触媒の攻撃を立体的に妨害するよう、電子吸引基に対しパラ位に配置されている犠牲的原子(例えば、ClまたはBrなどのハロゲン)をさらに含むことができる。結果として、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、オルトでホウ素化された(電子的)生成物をもっぱら生成する。続く脱ハロゲン化により、所望の電子的生成物をもっぱら得ることができる。
【0435】
【化97】
【0436】
ホウ素化の一般手順
窒素雰囲気のグローブボックス中、磁気撹拌子を含有する20mLのバイアルにBPin(140mg、0.55mmol)を秤量した。2個の個別の試験管に[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.02mmol)および4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ジピリジル配位子(5.4mg、0.02mmol)を秤量し、各々をTHF(2mL)により希釈した。BPinを含有する20mLのバイアルに、[Ir(OMe)cod]溶液を移した。黄金色の濁りのない溶液が得られるまで、この混合物を撹拌した。配位子を含有する溶液をこのバイアルに移し、暗褐色の溶液になるまで、この混合物を撹拌した。このバイアルに基質(1mmol)を加え、次に、密封した。この反応混合物を室温で24時間、撹拌し、この後、このバイアルをグローブボックスから取り出した。10:1ヘキサン/EtOAc溶液(2×10mL)により溶出したシリカの短いプラグに反応混合物を通した。揮発物をロータリーエバポレーションにより除去すると生成物が得られ、標準的方法を使用して、この生成物を特性決定した。
【0437】
水素化脱ハロゲン化の一般手順
オーブンで乾燥した丸底フラスコに、上記の方法を使用して調製したホウ素化アレーン(0.368g、1mmol)、Pd(OAc)(0.011g、0.05mmol)および新しく蒸留したTHF(5mL)を投入した。セプタムを用いてこの丸底フラスコを密封し、窒素でフラッシュした。フラッシュしている間に、KF(0.116g、2mmol)の脱気した水(2mL)をシリンジにより導入した。窒素の入り口を取り去り、窒素を充填した風船をこのフラスコに取り付けた。ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS;0.24mL、4mmol)をゆっくりと滴下注入した。Hおよび19F NMRスペクトル分析により出発材料の消失が示されるまで(4時間)、この最終反応混合物を撹拌した。この反応混合物をEtOにより希釈し、層を分離した。エーテル層を60mLのシリンジ中で、セライトのプラグによりろ過した。このセライトにEtOAcでフラッシュした。次に、揮発物をロータリーエバポレーションにより除去すると生成物が得られ、標準的方法を使用してこの生成物を特性決定した。
【0438】
4−ブロモ−1−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0439】
【化98】
【0440】
上記の一般手順を使用して、4−ブロモ−1−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンをホウ素化した。このホウ素化反応により、生成物が無色油状物(0.229g、62%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.02 (dd, J = 2.5, 3.5 Hz, 1H), 7.78 (dd, J = 2.5, 6.5 Hz, 1H), 1.36 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 162.9 (dd, J = 1.9, 259.7 Hz), 143.1 (d, J = 8.5 Hz), 132.8 (qd, J = 1.9, 4.7Hz), 121.7 (q, J = 270.3 Hz), 120.0 (qd, J = 33.1, 16.1, Hz), 116.3 (d, J = 3.5 Hz), 84.7, 24.8; 19F NMR (470MHz, CDCl3) δ 61.9, 106.4; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.3 (br s).
【0441】
【化99】
【0442】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した。水素化脱ハロゲン化反応により、脱ハロゲン化生成物が白色固体(0.228g、79%)として得られた。mp76〜77℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.93 (ddd, J = 1.5, 5.5, 7.0 Hz, 1H), 7.70 (ddd, J = 1.5, 6.0, 7.5 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 6.5, 8.5 Hz, 1H), 1.37 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 164.0 (dd, J = 1.9, 260.3 Hz), 140.7 (d, J = 9.5 Hz), 130.8 (qd, J = 2.5, 4.7 Hz), 123.5 (d, J = 4.1 Hz), 122.7 (q, J = 271.0Hz), 118.3 (m), 84.3, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 61.6, 104.2; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.8 (br s).
【0443】
1−ブロモ−4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0444】
【化100】
【0445】
上記の一般手順を使用して、1−ブロモ−4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンを10mmolスケールでホウ素化した。ホウ素化反応により、生成物が白色固体(2.610g、71%)として得られた。mp66〜77℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.03 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 1.37 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 165.4 (d, J = 253.1 Hz), 142.8 (d, J = 8.5 Hz), 134.0 (qd, J = 8.5, 32.2 Hz), 121.9 (q, J = 272.2 Hz), 115.6 (m), 113.8, 84.8, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 63.5, 102.9; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.5 (br s).
【0446】
【化101】
【0447】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した。この水素化脱ハロゲン化反応により、脱ハロゲン化生成物が無色油状物(0.232g、80%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.87 (dd, J = 6.5, 6.5 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 1.38 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 166.7 (d, J = 251.4 Hz), 137.6 (d, J = 8.5 Hz), 135.1 (m), 123.2 (q, J = 271.2 Hz), 120.3 (m), 112.3 (m), 84.8, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 63.2, 100.6; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 30.1 (br s).
【0448】
4−ブロモ−1−フルオロ−2−メトキシベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0449】
【化102】
【0450】
上記の一般手順を使用して、4−ブロモ−1−フルオロ−2−メトキシベンゼンをホウ素化した。ホウ素化反応により、生成物が白色固体(0.283g、86%)として得られた。mp79〜80℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.37 (dd, J = 2.5, 4.0 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 2.5, 7.5 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 1.34 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.8 (d, J = 251.2 Hz), 148.3 (d, J = 13.2 Hz), 129.4 (d, J = 7.6 Hz), 119.6 (d, J = 2.9 Hz), 116.0 (d, J = 3.7 Hz), 84.3, 56.6, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 126.6; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.7 (br s).
【0451】
【化103】
【0452】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した(反応時間5時間)。この水素化脱ハロゲン化反応により、脱ハロゲン化生成物が無色油状物(0.228g、91%)として得られた。1H NMR (500 MHz, アセトン-d6) δ 7.23 (m, 2H), 7.12 (dd, J = 8.0, 7.5 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 1.34 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, アセトン-d6) δ 156.5 (d, J = 250.4 Hz), 147.7 (d, J = 12.4 Hz), 127.0 (d, J = 6.6 Hz), 123.9 (d, J = 3.9 Hz), 116.7 (d, J = 2.9 Hz), 83.7, 55.6, 24.3; 19F NMR (470 MHz, アセトン-d6) δ 125.6; 11B NMR (160 MHz, ( アセトン-d6) δ 30.2 (br s).
【0453】
1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0454】
【化104】
【0455】
上記の一般手順を使用して、1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシベンゼンをホウ素化した。後処理の後、白色固体(0.313g、95%)が得られた。mp104〜105℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.89 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 3.72 (s, 3H), 1.35 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 167.6 (d, J = 251.2 Hz), 159.5 (d, J = 11.4 Hz), 140.2 (d, J = 10.4 Hz), 108.3 (d, J = 22.7 Hz), 105.9 (d, J = 2.9 Hz), 83.9, 56.4, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 100.4; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.5 (br s).
【0456】
【化105】
【0457】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した(反応時間5時間)。この水素化脱ハロゲン化反応により、脱ハロゲン化生成物が無色油状物(0.152g、61%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.66 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 1H), 6.58 (dd, J = 2.5, 12.0 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 1.36 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 168.6 (d, J = 249.4 Hz), 163.9 (d, J = 11.2 Hz), 137.7 (d, J = 10.5 Hz), 109.9 (d, J = 2.9 Hz), 101.1 (d, J = 27.5 Hz), 83.6, 55.4, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 100.5; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.9 (br s).
【0458】
4−クロロ−1−フルオロ−2−メチルベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0459】
【化106】
【0460】
上記の一般手順を使用して、4−クロロ−1−フルオロ−2−メチルベンゼンをホウ素化した。後処理の後、白色固体が得られた(0.173g、64%)。mp64〜65℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.49 (dd, J = 3.0, 6.5 Hz, 1H), 7.22 (dd, J = 2.0, 6.5 Hz, 1H), 2.23 (d, J = 2.0 Hz, 3H), 1.34 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 163.9 (d, J = 247.5 Hz), 134.2 (d, J = 5.7 Hz), 133.4 (d, J = 8.5 Hz), 128.4 (d, J = 2.9 Hz), 126.6 (d, J = 21.9 Hz), 84.1, 24.7, 14.5 (d, J = 3.9 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 109.9; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.8 (br s).
【0461】
【化107】
【0462】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した(反応時間5時間)。この水素化脱ハロゲン化反応により無色油状物(0.211g、89%)が得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.56 (ddd, J = 1.5, 5.0, 7.5 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 1.0, 6.0, 7.0 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 2.28 (d, J = 2.5 Hz, 3H), 1.37 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 165.6 (d, J = 248.4 Hz), 134.7 (d, J = 5.6 Hz), 134.1 (d, J = 8.6 Hz), 124.6 (d, J = 19.8 Hz), 123.4 (d, J = 2.9 Hz), 83.8, 24.8, 14.6; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 106.9; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 30.4 (br s).
【0463】
1−クロロ−4−フルオロ−2−メチルベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0464】
【化108】
【0465】
上記の一般手順を使用して、1−クロロ−4−フルオロ−2−メチルベンゼンをホウ素化した。後処理の後、白色固体(2.38g、88%)が得られた。mp48〜49℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.66 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 2.35 (s, 3H), 1.34 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 165.4 (d, J = 249.4 Hz), 141.7 (d, J = 9.5 Hz), 136.5 (d, J = 8.5 Hz), 129.1 (d, J = 2.9 Hz), 117.7 (d, J = 25.6 Hz), 84.1, 24.7, 20.4 (d, J = 1.9 Hz); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 106.5; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.8 (br s).
【0466】
【化109】
【0467】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した(反応時間5時間)。この水素化脱ハロゲン化反応により白色固体(0.189g、80%)が得られた。mp58〜60℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.63 (dd, J = 7.0, 7.5 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 2.37 (s. 3H), 1.37 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 167.3 (d, J = 249.4 Hz), 144.4 (d, J = 8.5 Hz), 136.6 (d, J = 8.6 Hz), 124.5 (d, J = 2.9 Hz), 115.8 (d, J = 23.7 Hz), 83.7, 24.8, 21.5; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 103.8; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 30.3 (br s).
【0468】
4−ブロモ−1,2−ジフルオロベンゼンのタンデムホウ素化/脱ハロゲン化
【0469】
【化110】
【0470】
上記の一般手順を使用して、4−ブロモ−1,2−ジフルオロベンゼンをホウ素化した。後処理の後、白色固体(0.274g、86%)が得られた。mp41〜42℃;1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.57 (ddd, J = 2.0, 4.0, 5.0 Hz, 1H), 7.37 (ddd, J = 2.5, 7.0, 9.0 Hz, 1H), 1.34 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 153.7 (dd, J = 11.4, 252.2 Hz), 150.3 (dd, J = 16.1, 253.2 Hz), 133.7 (dd, J = 4.0, 7.0 Hz), 123.4 (d, J = 20.0 Hz), 115.6 (dd, J = 4.0, 7.0 Hz), 84.6, 24.7; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 130.0, 134.9; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.3 (br s).
【0471】
【化111】
【0472】
上記の一般手順を使用して、得られたホウ素化アレーンを水素化脱ハロゲン化した(反応時間5時間)。この水素化脱ハロゲン化反応により無色油状物(0.151g、63%)が得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.45 (m, 1H), 7.23 (m, 1H), 7.06 (m, 1H), 1.36 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 154.6 (dd, J = 11.5, 251.5 Hz), 150.5 (dd, J = 14.3, 247.6 Hz), 131.1 (dd, J = 3.7, 6.6 Hz), 124.1(dd, J = 3.9, 5.7 Hz), 120.2 (d, J = 17.1 Hz), 84.2, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 129.1, 139.1; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.8 (br s).
【0473】
1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシベンゼンのワンポットホウ素化/脱ハロゲン化
ワンポットホウ素化/脱ハロゲン化方法も検討した。以下のスキームは、検討した1つの(one)ホウ素化/脱ハロゲン化方法を例示している。
【0474】
【化112】
【0475】
上記の一般手順を使用して、1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシベンゼンをホウ素化した。NMR分光法により判断したところ、24時間後にホウ素化反応が完了した。反応容器を窒素雰囲気のグローブボックスに移し、この反応溶液をオーブンで乾燥した丸底フラスコに移した。ゴム製セプタムを使用してこのフラスコを密封し、グローブボックスから取り出した。
【0476】
粗製反応混合物に、上記の一般的な水素化脱ハロゲン化手順(反応時間24時間)を施した。この反応混合物をEtOにより希釈し、層を分離した。エーテル層をシリカゲルのプラグによりろ過した。シリカゲルにヘキサン(2×10mL)およびヘキサン/EtOAc混合物(10mL)でフラッシュした。溶出した溶液をロータリーエバポレーションにより濃縮した。得られた溶液を別のシリカゲルのプラグによりろ過した。プラグをヘキサン(4×10mL)でフラッシュし、最後の微量のホウ素およびPdの副生成物を除去した。揮発物をロータリーエバポレーションにより除去すると、明オレンジ色油状物(0.1597g、63%)が得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.66 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 1H), 6.58 (dd, J = 2.5, 11.5 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 1.36 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 168.6 (d, J = 249.4 Hz), 163.9 (d, J = 11.4 Hz), 137.7 (d, J = 10.4 Hz), 109.9 (d, J = 2.9 Hz), 101.1 (d, J = 27.5 Hz), 83.6, 55.4, 24.8; 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ 100.4; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 29.9 (br s).
【実施例4】
【0477】
ピリジンのホウ素化
ピリジンのホウ素化の一般手順
置換ピリジンのイリジウム触媒によるホウ素化を検討した。[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.0〜1.5mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)およびピリジン基質(0.5または1.0mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で18〜22時間、加熱した。次に、GCおよび/またはNMR分析を行うため、アリコートを採取した。生成物の単離は、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより実施した。
【0478】
2,6−ジクロロピリジンのホウ素化
【0479】
【化113】
【0480】
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.5mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2,6−ジクロロピリジン(147mg、1.0mmol)を加えた。バイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で19時間、加熱した。反応溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、溶離液としてヘキサン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、2,6−ジクロロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンが白色固体(160mg、58%)として得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.57 (s, 1H), 1.33 (s, 12H).
【0481】
2−メトキシピリジンのホウ素化
【0482】
【化114】
【0483】
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.5mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2−メトキシピリジン(105μL、1.0mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で19時間、加熱した。反応溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、溶離液としてヘキサン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、4−および5−Bpin異性体である2−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンと2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンとの1:1.4混合物が無色油状物(153mg、67%)として得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.55 (s, 1H, Hd), 8.18 (d, J= 5.1 Hz, 1H, Ha), 7.95 (dd, J= 8.4, 1.8 Hz, 1H, He), 7.25-7.12 (m, 2H, HbおよびHc), 6.73 (d, J= 8.4 Hz, 1H, Hf), 3.99 (s, 3H, 5-Bpin異性体), 3.96 (s, 3H, 4-Bpin異性体), 1.32 (s, 12H, 4-Bpin異性体), 1.31 (s, 12H, 5-Bpin異性体).
【0484】
2−フルオロ−6−メチルピリジンのホウ素化
【0485】
【化115】
【0486】
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.5mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2−フルオロ−6−メチルピリジン(103μL、1.0mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で18時間、加熱した。粗製反応混合物の19F NMR分析により、出発材料の転化率が78%、および化合物の3−Bpin:4−Bpinが1:1.8の比で形成していることが示された。反応溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、溶離液としてペンタン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、3−および4−Bpin異性体である2−フルオロ−6−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンおよび2−フルオロ−6−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンとの1:3混合物が無色油状物(177mg、75%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.04 (dd, J = 8.1, 7.8 Hz, 1H, Ha), 7.36 (d, J = 2.3 Hz, 1H, Hc), 7.07-7.06 (s, 1H, Hd), 7.02 (dd, J = 7.8, 2.2 Hz, 1H, Hb), 2.50 (s, 3H, 3-Bpin異性体), 2.49 (s, 3H, 4-Bpin異性体), 1.34 (s, 12H, 両異性体); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -58.43 (d, J= 8.1 Hz, 3-Bpin異性体), -69.80 (4-Bpin異性体).
【0487】
4−アミノ−2−メチルピリジンのホウ素化
【0488】
【化116】
【0489】
4−アミノ−2−メチルピリジン(54mg、0.5mmol)、次いでTHF(1.0mL)およびHBpin(73μL、0.5mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。ゆっくりとしたガスの発生、および白色沈殿物の形成が観察された。この反応混合物を30分間、撹拌した。[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)、dtbpy(2.7mg、0.01mmol)、およびBpin(127mg、0.5mmol)を加えた。試験管をTHF(0.5mL)によりすすぎ、この溶液を上記の混合物に加えた。バイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で22時間、加熱した。この反応混合物に、メチルアルコール(MeOH;3mL)をゆっくりと滴下添加し、得られた溶液を室温で3時間、撹拌した。この溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、GCおよびH NMR分光法による分析により、出発材料が、4−アミノ−2−メチル−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンに完全に転化していることが示された。
【0490】
2−クロロ−4−トリフルオロメチルピリジンのホウ素化
【0491】
【化117】
【0492】
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.0mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2−クロロ−4−トリフルオロメチルピリジン(64μL、0.5mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で18時間、加熱した。反応溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。溶離液としてペンタン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、2−クロロ−6−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4−トリフルオロメチルピリジンが無色油状物として得られ、経時的に固化した(145mg、94%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.96 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 1.40 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -64.75。この構造は、メタノール−d中、この化合物に[Ir(OMe)cod](2mol%)を用いて80℃で重水素化脱ホウ素化を施すことにより確認した。
【0493】
2−クロロ−4−フルオロピリジンのホウ素化
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.5mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2−クロロ−4−フルオロピリジン(90μL、1.0mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で20時間、加熱した。反応溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。溶離液としてペンタン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、2−クロロ−4−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンが無色油状物(165mg、64%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.67 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 1.36 (s, 12H); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -89.75- -89.85 (m)。この構造は、メタノール−d中、この化合物に[Ir(OMe)cod](2mol%)を用いて80℃で重水素化脱ホウ素化を施すことにより確認した。
【0494】
2−クロロ−3−フルオロピリジンのホウ素化
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.0mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および2−クロロ−3−フルオロピリジン(66mg、0.5mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で18時間、加熱した。粗製反応混合物の19F NMR分析により、出発材料の完全な転化、および化合物の4−Bpin:5−Bpin:4,6−ジBpinが3.6:2.0:1.0の比で形成していることが示された。反応溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。溶離液としてペンタン−EtOAc混合物を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製すると、4−および5−Bpin異性体である2−クロロ−3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンおよび2−クロロ−3−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンとの1:1混合物(19F NMRによる)が無色油状物(82mg、32%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.52 (s, 1H, Hc), 8.22 (d, J = 4.4 Hz, 1H, Ha), 7.81 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 1H, Hd), 7.54 (dd, J = 4.4, 4.4 Hz, 1H, Hb), 1.38 (s, 12H, 4-Bpinまたは5-Bpin異性体), 1.36 (s, 12H, 4-Bpinまたは5-Bpin異性体); 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ -109.38 (4-Bpin異性体), -120.30 (d, J = 8.3Hz, 5-Bpin異性体).
【0495】
3−ブロモ−5−フルオロピリジンのホウ素化
[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol)を含む、オーブンにより乾燥した3mLのスクリューキャップ付きWheaton(登録商標)バイアルを、窒素を満たしたグローブボックス内に入れた。THF(1.0mL)、続いてBpin(127mg、0.5mmol)および3−ブロモ−5−フルオロピリジン(88mg、0.5mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスの外で80℃で22時間、加熱した。19F NMR分光法によって、粗製反応混合物から16%の転化率が検出された。
【実施例5】
【0496】
単座のピリジン配位子を使用する、指向型C−H活性化によるホウ素化
指向性基により置換されているアレーンを含む、アレーンのホウ素化における、配位子の可能性としての単座ピリジンを検討した。アレーンのホウ素化反応において提案されている中間体に基づいた評価を行うため、ピリジンを選択した。イリジウム触媒および二座配位子の存在下での非指向型ホウ素化の間、金属中心は二座のピリジン配位子によって配位されており、こうして、基質が結合してC−H活性化のステップを受けるための開放した配位部位が1つ残される。ピリジン配位子などの単座配位子が使用される場合、金属中心にさらに空の配位部位が利用可能となる。以下に示されている通り、基質が金属中心に結合することができる基を有する場合、この基へのオルトC−H結合の活性化が起こり得る。
【0497】
【化118】
【0498】
以下のスキームにおいて、適度に好適なモノピリジン配位子により、中間体4よりも14電子中間体である3の方が有利となり、こうして、指向型ホウ素化が可能になると仮説をたてた。特に、電子が不足しているかまたは立体障害のあるピリジンが候補となる可能性が高いと考えられる。
【0499】
【化119】
【0500】
まず、カルボニル含有基質に関してピリジン配位子を評価した。アセトフェノンをモデル基質として選んだ。アセトフェノンのホウ素化に関するピリジン配位子のスクリーニングを、THF中、1mol%[Ir(OMe)cod]、2mol%ピリジン配位子、Bpin1当量(equiv)、およびケトン2当量を使用し、80℃で行った(表3)。
【0501】
【表3】
【0502】
ピリジン環上の置換基の位置は、反応結果における重要な役割を果たした。良好な転化率と優れた位置選択性の両方をもたらす最良の配位子は、3,5−ジ(トリフルオロメチル)ピリジンであった(表3、エントリー1)。残念なことに、このピリジン配位子の価格は250mgあたり$49と高価である。ホウ素化反応は、アルドール縮合の副生成物が形成した。ピリジンの2位にCF基を導入すると反応が減速し、位置選択性が低下した(表3のエントリー1と2とを比較されたい)。しかし、4位にCF基が配置されると転化率が改善され、位置選択性が中程度となった(表3のエントリー2と3とを比較されたい)。2位におけるフッ素またはメトキシなどのより小さな置換基により、−CF基と比べて、優れた転化率がもたらされるが、選択性はかなり低いものであった。興味深いことに、ピリジンの2位および6位に置換基を配置すると、位置選択性がかなり向上した。置換基の立体的なかさ高さによって、転化率は影響を受けた(表3のエントリー6、7および8を比較されたい)。過剰のホウ素試薬により、反応結果は劇的に改善された。アルドール縮合生成物は検出されず、オルトホウ素化生成物だけが観察された。
【0503】
次に、予備的な適用範囲の検討をケトンについて実施した。様々なアルキルおよびアリールケトンが首尾よくホウ素化された。支持配位子として2−メトキシピリジンを使用して実施した、イリジウム触媒によるシクロプロピルフェニルケトンのホウ素化により、オルトホウ素化生成物が50%収率で得られた。3,5−ジフルオロアセトフェノンのホウ素化は、4−トリフルオロピリジンを配位子として使用すると、円滑に進行した。16:1の比のオルト:パラホウ素化生成物を伴って、47%の転化率がGCにより検出された。収率は最適化されておらず、dtbpyを配位子として使用した場合、両フッ素置換基の間の4位にホウ素化が起こることに留意すべきである。
【0504】
【化120】
【0505】
他のカルボニル含有基質を使用して、配位子の最適化検討を行った。3,5−ジ(トリフルオロメチル)ピリジンを配位子として使用した場合、安息香酸メチルは、許容できるオルト選択性(o/(m+p)=11.7:1)および良好な転化率を与えた。2−CFおよび4−CF置換ピリジンは、位置選択性に乏しかった。興味深いことに、2−メトキシピリジンを使用すると、非常に良好なオルト選択性(o/(m+p)=10.4:1)が得られた。Aldrichにおける2−メトキシピリジンの価格は、25グラムあたり$29.70であり、配位子として非常に魅力的な選択肢になる。比較すると、二座配位子dtbpyを使用すると、安息香酸メチルは、メタおよびパラ位においてもっぱらホウ素化され、オルトホウ素化生成物は検出されなかった。さらに、2−メトキシピリジンを支持配位子として使用した場合、N,N−ジメチルベンズアミドは良好な転化率および優れたオルト選択性を実現した。他の単座のピリジン配位子では、ベンズアミドのホウ素化は起こらないか、または低い転化率が得られた。これらの結果より、ある種の二座および単座のピリジン配位子を使用すると、反応結果に明確な差異があることが示唆される。
【0506】
指向性基が存在しない場合、単座のピリジン配位子はやはり、フッ素のオルトホウ素化の選択性を改善し得ると仮説をたてた。この仮説を評価するために、2−メトキシピリジンを使用する3−フルオロトルエンのホウ素化を検討し、2−(アミノメチル)ピリジンおよびdtbpyを使用して実施したホウ素化と比較した。表4に示されている通り、配位子として2−メトキシピリジンを使用すると、優れた結果が得られた。異性体の比は4.7:1に改善され、フッ素置換基のオルトホウ素化が優先した。比較すると、二座のdtbpyを配位子として使用すると、1;1の異性体比が検出された。
【0507】
【表4】
【0508】
この一式の配位子をやはり、1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼンのホウ素化において調査した。2−(アミノメチル)ピリジンを配位子として使用すると、良好な転化率および良好な選択性が得られ、フッ素置換基のオルトホウ素化が有利となった(表5)。同じ配位子を使用した場合、溶媒をTHFからヘキサンに変更すると、選択性がわずかに改善された。この配位子は市販されている(Aldrich、25グラムあたり$60.9)。さらに、2−メトキシピリジン配位子を使用した場合、3.3:1の比のホウ素化生成物が検出された。他のモノおよびジホウ素化生成物が観察され、この基質の総転化率は、19F NMR分析により決定すると、85%であった。興味深いことに、上記の両方の配位子が、btfbpyビピリジン配位子よりも優れており、後者の配位子は、THF中で2.5:1の比のホウ素化生成物を与えた(表5)。このビピリジン配位子は市販されていない。しかし、2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン(Oakwood Chemical、25グラムあたり$110)から1ステップ合成で調製することができる。
【0509】
【表5】
【0510】
重要なことに、以下のスキームにまとめられている通り、これらの方法は、他のホウ素化反応を、代替の配位子を利用して補うものである。
【0511】
【化121】
【0512】
実験方法
アセトフェノンのホウ素化の一般手順
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、1mol%)およびBpin(127mg、0.5mmol)、続いてTHF(1.5mL)を投入した。得られた溶液に、アセトフェノン(116μL、1.0mmol)およびピリジン配位子(0.01mmol、2mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を80℃で15時間、加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、空気に開放してGC分析のために試料を採取した。この結果を上の表3に示している。総転化率とは、アセトフェノンの総転化率に相当する。
【0513】
3−フルオロトルエンのホウ素化における、配位子検討の一般手順
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、1mol%)、Bpin(127mg、0.5mmol)およびdtbpy(2.7mg、0.01mmol、2mol%)、続いてヘキサン(1.5mL)を投入した。2−(アミノメチル)ピリジン(1.0μL、0.01mmol、2mol%)の場合、これは最後に加えた。得られた溶液に、3−フルオロトルエン(111μL、1.0mmol)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を70℃で15時間、加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、空気に開放してGC分析のために試料を採取した。この結果を上の表4に示している。
【0514】
2−メトキシピリジンを配位子として使用した場合、代替手順を用いた。窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol、1mol%)およびBpin(254mg、1.0mmol)、続いてTHF(1.5mL)を投入した。得られた溶液に、3−フルオロトルエン(111μL、1.0mmol)、次いで2−メトキシピリジン(2.1μL、0.02mmol、2mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を80℃で24時間、加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、空気に開放してNMR分析のために試料を採取した。
【0515】
1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼンのホウ素化の一般手順
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、1mol%)およびBpin(127mg、0.5mmol)を投入した。試験管に1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン(148mg、1.0mmol)を秤量し、適切な溶媒(1.5mL)を有する反応用バイアルに移した。次に、この反応混合物に2−(アミノメチル)ピリジン(1.0μL、0.01mmol、2mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を50℃で16時間、加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、空気に開放してGCおよびNMR分析のために試料を採取した。この結果を上の表5に示している。
【0516】
シクロプロピルフェニルケトンのホウ素化
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](6.6mg、0.01mmol、1mol%)およびBpin(254mg、1.0mmol)、続いてTHF(1.5mL)を投入した。得られた溶液に、シクロプロピルフェニルケトン(138μL、1.0mmol)および2−メトキシピリジン(2.1μL、0.01mmol、2mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を80℃で16時間、加熱した。溶媒をロータリーエバポレーションにより濃縮し、溶離液としてEtOAc−ペンタンを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって油状残渣を精製した。シクロプロピル(2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ケトンが白色固体(53%)として得られた。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.97 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.54-7.50 (m, 2H), 7.47-7.42 (m, 1H), 2.67-2.61 (m, 1H), 1.40 (s, 12H), 1.31-1.27 (m, 2H), 1.09-1.04 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 202.4, 141.9, 132.5, 132.2, 129.0, 127.6, 83.8, 25.1, 16.7, 12.4; 11B NMR (160 MHz, CDCl3) δ 30.8.
【0517】
3’,5’−ジフルオロアセトフェノンのホウ素化
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、1mol%)およびBpin(127mg、0.5mmol)、続いてTHF(1.5mL)を投入した。得られた溶液に、3’,5’−ジフルオロアセトフェノン(156mg、1.0mmol)および4−トリフルオロメチルピリジン(1.1μL、0.01mmol、2mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を80℃で19時間、加熱した。溶媒をロータリーエバポレーションにより濃縮し、溶離液としてEtO−ペンタンの混合物を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって油状残渣を精製した。ペンタンから再結晶すると、1−アセチル−3,5−ジフルオロ−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼンが白色結晶(34%)として得られた。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.33 (ddd, J = 8.4, 2.1, 0.4 Hz, 1H), 6.96 (ddd, J = 8.5, 8.0, 2.1 Hz, 1H), 2.56 (s, 3H), 1.42 (s, 12H); 19F NMR (283 MHz, CDCl3) δ -101.18, -108.04.
【0518】
N,N−ジメチルベンズアミドのホウ素化
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、0.5mol%)、N,N−ジメチルベンズアミド(149mg、1.0mmol)およびBpin(254mg、1.0mmol)、続いてTHF(1.5mL)を投入した。得られた溶液に、2−メトキシピリジン(1.1μL、0.01mmol、1mol%)を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。得られた混合物を110℃で17時間、加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、空気に開放してGCおよびNMR分析のために試料を採取した。GC分析により、オルトホウ素化生成物への転化率は84%であり、他のホウ素化異性体はわずか微量であった。反応混合物のH−NMRスペクトルにおける共鳴は、文献で見いだされる、オルトホウ素化ベンズアミドのそれに一致する。
【0519】
安息香酸メチルのホウ素化を使用する、さらなる配位子のスクリーニング
窒素を満たしたグローブボックス中、3mLのWheaton(登録商標)バイアルに、[Ir(OMe)cod](3.3mg、0.005mmol、1mol%)およびBpin(127mg、0.5mmol)を投入した。このバイアルにTHF(1.5mL)、続いて安息香酸メチル(124μL、1.0mmol)を加えた。適切なピリジン配位子(0.01mmol、2mol%)を加えた。dtbpyを配位子として使用した場合、これをバイアル中で秤量した後、溶媒を加えた。このバイアルに栓をして、グローブボックスから取り出した。この反応混合物を80℃で18時間、加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、GC分析のために試料を採取した。この結果を表6に示している。
【0520】
【表6】
【実施例6】
【0521】
Pd/Cおよびギ酸アンモニウムを使用するワンポットホウ素化および水素化脱ハロゲン化
電子吸引基により置換されているアレーンのオルト−ホウ素化に関する戦略として、タンデムホウ素化/脱ハロゲン化を上で検討した。上で議論した通り、電子吸引基により置換されているアレーンの場合、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、通常、立体効果によって支配される。上記のタンデムホウ素化/脱ハロゲン化方法では、基質は、電子吸引基、およびこの電子吸引基に対して普通なら立体的に有利なメタ位におけるイリジウム触媒の攻撃を妨害するよう、電子吸引基のパラ位に配置されている犠牲的原子(例えば、ClまたはBrなどのハロゲン)をさらに含むことができる。結果として、イリジウム触媒によるアレーンのC−H活性化−ホウ素化は、オルトホウ素化された(電子的)生成物をもっぱら生成する。続く脱ハロゲン化により、所望の電子的生成物をもっぱら得ることができる。
【0522】
上で検討したタンデムホウ素化−水素化脱ハロゲン化方法は、2つの個別の反応を含み、各生成物を単離し、次のステップに持ち込んだ。水素化脱ハロゲン化方法は、Pd(OAc)、水素化脱ハロゲン化試薬としてポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)およびフッ化カリウム(KF)を使用した。この反応もワンポットで行うことができ、この場合、C−H活性化ホウ素化反応を行い、次に、Pd(OAc)、PMHSおよびKFを加えて、水素化脱ハロゲン化反応を実施すると、所望の生成物が優れた収率で得られた。
【0523】
炭素担持パラジウム(Pd/C)、および水素化脱ハロゲン化試薬としてギ酸アンモニウムを使用する、ワンポットホウ素化−水素化脱ハロゲン化方法の改善を検討した。この方法は、普通なら、入手するのが困難なホウ素化された分子を調製するために使用することができる。この方法により、いくつかの利益率の高い農業化学分子のための鍵となる中間体である、高度に官能基化されたホウ素化分子を入手するための極低温条件の必要性が回避される。この方法により、こうしたホウ素化分子を入手するための慣用的なLi−H交換反応を使用して形成される潜在的に反応性の高い中間体が、やはり排除される。
【0524】
実用的な観点から、ワンポット方法により、中間体の単離、精製の時間がなくなり、廃棄物および溶媒の使用量が制御される。さらに、C−H活性化および水素化脱ハロゲン化における官能基許容性は、本方法の合成的利便性を拡張し、これにより、より広範なホウ素化アレーンの入手が潜在的に可能になる。
【0525】
結果
ワンポットホウ素化−水素化脱ハロゲン化方法の一般的な合成方法は、以下に含まれる。
【0526】
【化122】
【0527】
上のスキームにおいて詳述されている一般的なホウ素化手順は、1mmolの原料のアレーン(表7におけるエントリー1〜6から選択される)で実施し、反応は、NMR分光法により判断すると、24時間後に完了した。反応容器を窒素雰囲気のグローブボックスから取り出し、この反応溶液をオーブンで乾燥した丸底フラスコに移した。このフラスコに還流コンデンサを連結し、ここに窒素を5分間、パージした。上のスキームにおいて詳述されている一般的な水素化脱ハロゲン化手順(Pd/Cおよびギ酸アンモニウムを使用)を、室温で、24時間、行った。揮発物をロータリーエバポレーションにより除去すると、反応生成物が得られた。次に、この反応生成物をNMR分光法により特性決定した。これらの結果を以下の表7に示す。
【0528】
【表7】
【0529】
添付の特許請求の範囲の組成物および方法は、本明細書に記載されている具体的な組成物および方法によって範囲が限定されることはなく、これらの具体的な組成物および方法は、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示として意図されている。機能的に等価物となる、いかなる組成物および方法も、特許請求の範囲内に収まることが意図されている。本明細書において示され、かつ記載されているものに加え、組成物および方法の様々な修正が、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図されている。さらに、ある種の代表的な組成物および方法ステップしか本明細書において開示されていないが、該組成物および方法ステップの別の組合せも、具体的に列挙されていない場合でさえも、添付の特許請求の範囲内に収まることがやはり意図される。したがって、ステップ、要素、構成成分または構成物の組合せが本明細書において明確に明記されているか、またはそれほど明確ではないが、ステップ、要素、構成成分、構成物の他の組合せが、明確に述べられていない場合でさえも包含されている。
【0530】
用語「含んでいる(comprising)」およびその派生語は、本明細書で使用する場合、用語「含んでいる(including)」およびその派生語と同義的に使用され、オープンな非限定用語である。「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」という用語は、本明細書では、様々な実施形態を記載するために使用されているが、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」は、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」の代わりに使用されて、本発明の一層、具体的な実施形態を提示することができ、やはり開示もされている。明記されている以外に、本明細書および特許請求の範囲において使用されている、形状、寸法などを表す数字のすべてが少なくとも理解されるべきであり、特許請求の範囲に対する等価物の原理の適用を限定しようとしているものと理解すべきではなく、有効桁数および通常の四捨五入手順に照らし合わせて解釈すべきである。
【0531】
特に定義されていない限り、本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、開示されている発明が属する分野における当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において列挙されている刊行物、およびそのために刊行物が引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれている。