特許第6434544号(P6434544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6434544感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434544
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20181126BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20181126BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20181126BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20181126BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20181126BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181126BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20181126BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20181126BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
   G03F7/031
   G03F7/027 502
   G03F7/032 501
   G03F7/004 512
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
   H05K1/03 610J
   C08F2/48
   C08G59/68
   !C07D209/86
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-1373(P2017-1373)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-215565(P2017-215565A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-105545(P2016-105545)
(32)【優先日】2016年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】峰岸 昌司
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/024951(WO,A1)
【文献】 特開2012−220794(JP,A)
【文献】 特開2016−090797(JP,A)
【文献】 特開2016−061939(JP,A)
【文献】 特開2016−038587(JP,A)
【文献】 特開2012−113104(JP,A)
【文献】 特開2013−033221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、および(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および、(D)熱硬化性成分を含有する感光性樹脂組成物であって
前記(B)光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
前記(D)熱硬化性成分が、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂、および、20℃で固体状であり、40℃で液状である半固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか1種であり、
前記40℃で固体状である固形エポキシ樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、およびビフェニル型エポキシ樹脂の少なくともいずれか1種であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
(上記一般式(1)中、Rは、芳香族骨格または脂肪族骨格を含む基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示し、Rは、炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基を示し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
【請求項2】
前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が2以上のエチレン性不飽和二重結合を有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量が250以上1500未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物がフェノール性水酸基、チオール基およびカルボキシル基の何れも有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
ソルダーレジストおよび層間絶縁材の少なくともいずれか1種を形成するために用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物が、フィルム上に塗布、乾燥されてなる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、または、請求項記載のドライフィルムの樹脂層が、硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項記載の硬化物を備えることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体部品の急速な進歩により、電子機器は小型軽量化、高性能化、多機能化される傾向にある。この傾向に追従して、プリント配線板においても、高密度化、部品の表面実装化が進みつつある。高密度プリント配線板の製造においては一般にソルダーレジスト等の硬化被膜の形成に感光性樹脂組成物が採用されており、ドライフィルム型の組成物や液状の組成物が開発されている。これらの中でも、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物が主流になっており、従来、幾つかの組成系が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
近年、プリント配線板の分野において、基板の軽薄短小化が加速しており、ソルダーレジスト等の硬化被膜にも高い解像性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−15119号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−162736号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線板の製造工程において、ソルダーレジスト等の硬化被膜が形成された後に、導体パターンの表面処理や、プリントコンタクト用の端子形成、ボンディングパット形成等のために、金めっきや錫めっきが施されることがある。金めっきや錫めっきとしては、通電やめっきリードが不要なことから無電解金めっきや無電解錫めっきが採用されることが多くなっている。しかしながら、無電解金めっき処理や無電解錫めっき処理におけるめっき液が硬化被膜に浸み込み、硬化被膜の密着性が低下するという問題があった。特に、高精細な硬化被膜ほど、めっき液の浸み込みによる密着性の低下が生じ易いことから、無電解金めっき耐性や無電解錫めっき耐性に優れた高精細の硬化被膜を形成することは困難であった。
【0006】
また、感光性樹脂組成物は、光硬化時や、その後に必要に応じて行われる熱硬化時や実装時のはんだ付けの際に、光重合開始剤などの含有成分が揮発してガス化し、周囲を汚染するという、いわゆるアウトガスの問題があった。特に実装時のはんだ付けの際には200℃以上の高温に曝されるため、アウトガスによる汚染が生じ易かった。
【0007】
そこで本発明の目的は、解像性、硬化物の無電解金めっき耐性および無電解錫めっき耐性のいずれにも優れ、アウトガスが生じにくい感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記を鑑み鋭意検討した結果、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と特定の構造を有する光重合開始剤とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、および(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有し、前記(B)光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とするものである。
(上記一般式(1)中、Rは、芳香族骨格または脂肪族骨格を含む基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示し、Rは、炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基を示し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が2以上のエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量が250以上1500未満であることが好ましい。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物がフェノール性水酸基、チオール基およびカルボキシル基の何れも有しないことが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、(D)熱硬化性成分を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(D)熱硬化性成分が、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂、および、20℃で固体状であり、40℃で液状である半固形エポキシ樹脂の少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、ソルダーレジストおよび層間絶縁材の少なくともいずれか1種を形成するために用いられることが好ましい。
【0016】
本発明のドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物が、フィルム上に塗布、乾燥されてなる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層が、硬化されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明のプリント配線板は、前記硬化物を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、解像性および硬化物の無電解金めっき耐性および無電解錫めっき耐性のいずれにも優れ、アウトガスが生じにくい感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0021】
[(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(以下、「(A)カルボキシル基含有樹脂」とも称する)を含有する。カルボキシル基含有樹脂を含有することで、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物とすることができる。(A)カルボキシル基含有樹脂としては特に限定されず、芳香環を有するものであれば、ソルダーレジスト用や、層間絶縁材用の感光性樹脂組成物において使用されている公知のカルボキシル基含有樹脂を採用することができる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基および芳香環の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂であってもよい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0022】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有する化合物を原料として用いることによって合成することができる。例えば、後述する(10)、(11)のようなフェノール性水酸基を有する化合物を出発原料として用いて合成したカルボキシル基含有樹脂に限らず、後述する(1)等のカルボキシル基含有樹脂の合成に用いられる不飽和カルボン酸、不飽和基含有化合物、ジイソシアネート、ジオール化合物、エポキシ樹脂、酸無水物等の各種の原料のいずれかが芳香環を有する場合にも、(A)カルボキシル基含有樹脂を合成することができる。
【0023】
(A)カルボキシル基含有樹脂の具体例として、以下に(1)〜(13)のカルボキシル基含有樹脂(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、上記のとおり、合成に用いる何れかの原料が芳香環を有していればよい。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0025】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0027】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0029】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0030】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0031】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0032】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0033】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0034】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0035】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0036】
(13)上記(1)〜(12)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0037】
また、(A)カルボキシル基含有樹脂は、上記カルボキシル基含有樹脂のうち(10)および(11)のような、フェノール化合物を出発原料として得られる樹脂であることが、形成されたソルダーレジストが高い信頼性を得られることより好ましい。
【0038】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲である。20〜200mgKOH/gの範囲であると、アルカリ水溶液による乾燥塗膜の剥離性と印刷性が良好となり、乾燥時にダレが生じ難い。なお、(A)カルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0039】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000〜150,000の範囲が好ましい。この範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、印刷性および硬化膜の耐熱性が良好となる。より好ましくは、5,000〜100,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)カルボキシル基含有樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。
【0041】
[(B)光重合開始剤]
本発明おいては、(B)光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
(上記一般式(1)中、Rは、芳香族骨格または脂肪族骨格を含む基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示し、Rは、炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基を示し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
ここで、Rは、芳香族骨格または脂肪族骨格を含む基であればいずれでもよく、芳香族骨格は、フェニル基などの芳香族基を1または2以上有してもよく、脂肪族骨格は、鎖状でも環状でもよい。また、Rは、オキシムエステル骨格を有していてもよく、即ち、(B)光重合開始剤はオキシムエステル2量体であってもよい。
【0042】
がとり得るアルキル基は、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜3であることがさらに好ましい。
【0043】
がとり得る炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基におけるシクロアルキル基は、炭素数3〜10であることが好ましく、炭素数3〜7であることがより好ましい。前記シクロアルキル基は、シクロペンチル基であることがさらに好ましい。また、前記シクロアルキル基を含む有機基は、シクロアルキルアルキル基であることが好ましく、シクロアルキルメチル基、シクロアルキルエチル基、シクロアルキルプロピル基等の、シクロアルキル基と炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)からなるシクロアルキルアルキル基であることが好ましい。
【0044】
がとり得るアルキル基は、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜3であることがさらに好ましい。
【0045】
がとり得るアリール基は、炭素数6〜21であることが好ましい。
【0046】
本発明においては、特に(B)光重合開始剤が、カルバゾール骨格、オキシムエステル骨格、および、Rとして炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基を有することにより、解像性、硬化物の無電解金めっき耐性および無電解錫めっき耐性のいずれにも優れ、アウトガスが生じにくい感光性樹脂組成物とすることができる。(B)光重合開始剤は、以下の一般式(1A)で表される化合物であることが好ましい。
(上記一般式(1A)中、RおよびRは、各々独立に水素原子またはアルキル基を示し、Rは、炭素数3〜20のシクロアルキル基を含む有機基を示し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
【0047】
がとり得るアルキル基は、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜3であることがさらに好ましい。R〜Rがとり得る基については、上記一般式(1)と同様である。
【0048】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例の化学式を下記するが、これに限定されるものではない。尚、下記化学式の具体的な製品としては、例えば、常州強力電子新材料社製のTR−PBG−304が挙げられる。
【0049】
(B)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。0.01質量部以上であることより無電解金めっき耐性、無電解錫めっき耐性および指触乾燥性がより良好となり、20質量部以下であることより、指触乾燥性が良好となり、アウトガスもより発生しづらくなる。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(B)光重合開始剤以外の光重合開始剤を含有してもよい。
【0051】
[(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有する。(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、公知慣用の光硬化性モノマーである光重合性オリゴマー、光重合性ビニルモノマー等を用いることができる。(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、本発明の感光性樹脂組成物をアルカリ水溶液に不溶化し、または不溶化を助けることができる。また、(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有することによって、硬化性が良好となり、はんだ耐熱性が向上する。
【0052】
(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として用いられる化合物としては、例えば、公知慣用のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。
【0053】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0054】
(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、アウトガスの抑制がより良好となり、また、指触乾燥性が良好となることから、多官能、すなわち、2以上のエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。前記エチレン性不飽和二重結合の数は、より好ましくは3〜15であり、さらに好ましくは5〜12である。また、(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重量平均分子量は、上記と同様の理由で、250以上1500未満であることが好ましい。より好ましくは300〜900、さらに好ましくは300〜600である。また、(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、上記と同様の理由で、例えばトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートのような、エチレオキサイドなどのアルキレンオキサイドで変性させたものであることが好ましく、−(OC2m−構造(nおよびmは1以上の整数;nは1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい;mは2〜3が好ましい)を有することがより好ましい。
【0055】
(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、光硬化性の促進の観点からフェノール性水酸基、チオール基およびカルボキシル基の何れも有しないことが好ましい。
【0056】
(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部の割合である。5質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を100質量部以下とすることにより、塗膜硬度を向上させることができる。
【0057】
[(D)熱硬化性成分]
本発明の感光性樹脂組成物は、熱硬化性成分を含有することが好ましい。熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)の少なくとも何れか1種を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0058】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0059】
上記エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、中でも、2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物などのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。これらは、要求特性に合わせて、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、具体的には、三菱化学社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、新日鉄住金化学社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル日本社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成イーマテリアルズ社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、新日鉄住金化学社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル日本社製のD.E.R.542、住友化学社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成イーマテリアルズ社製のA.E.R.711、A.E.R.714等のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル日本社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、新日鉄住金化学社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000、住友化学社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成イーマテリアルズ社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299、新日鉄住金化学社製のYDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5,YDCN−700−7、YDCN−700−10、YDCN−704 YDCN−704A、DIC社製のエピクロンN−680、N−690、N−695(いずれも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、新日鉄住金化学社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、新日鉄住金化学社製のエポトートYH−434;住友化学社製のスミ−エポキシELM−120等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021等の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル日本社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、ADEKA社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂;日油社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鉄住金化学社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄住金化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えば新日鉄住金化学社製のYR−102、YR−450等);トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0061】
これらの中でも、無電化金めっき耐性や無電解錫めっき耐性等の特性が向上する点から、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂や20℃で固体状であり、40℃で液状である半固形エポキシ樹脂が好ましい。40℃で固体状である固形エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYX−4000等のビキシレノール型もしくはビフェニル型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;DIC社製のRN−695等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。特に、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0062】
20℃で固体状であり、40℃で液状である半固形エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0063】
液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。
【0064】
これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
次に、オキセタン化合物について説明する。下記一般式(2)、
(式中、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)により表されるオキセタン環を含有するオキセタン化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製OXT−221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。これらオキセタン化合物は、上記エポキシ化合物と併用してもよく、また、単独で使用してもよい。
【0066】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、固形分換算で(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは環状(チオ)エーテル基0.3〜2.5当量、より好ましくは、環状(チオ)エーテル基0.5〜2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が環状(チオ)エーテル基0.3当量以上の場合、硬化被膜にカルボキシル基が残りにくく、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などが良好である。一方、環状(チオ)エーテル基2.5当量以下の場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存しにくく、硬化被膜の強度などが良好である。
【0067】
(無機フィラー)
本発明の感光性樹脂組成物は、無機フィラーを含有することが好ましく、表面処理された無機フィラーを含有することがより好ましい。ここで、無機フィラーの表面処理とは、樹脂成分との相溶性を向上させるための処理のことを言う。無機フィラーの表面処理は、無機フィラーの表面に硬化性反応基を導入可能な表面処理が好ましい。
【0068】
無機フィラーとしては、特に限定されず、公知慣用の充填剤、例えばシリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機フィラーを用いることができる。中でも、シリカが好ましく、表面積が小さく、応力が全体に分散するためクラックの起点になりにくいことから、球状シリカであることがより好ましい。
【0069】
表面処理された無機フィラーは、(A)カルボキシル基含有樹脂や硬化性成分と反応する硬化性反応基を表面に有してもよいが、有さなくてもよい。本明細書において硬化性反応基とは、(A)カルボキシル基含有樹脂や硬化性成分と硬化反応する基であれば特に限定されず、熱硬化性反応基でも光硬化性反応基でもよい。光硬化性反応基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられ、熱硬化性反応基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミノ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。また、無機フィラーは2種以上の硬化性反応基を有していてもよい。
【0070】
なかでも、常温(40℃以下)での反応性が低く、組成物中で安定であることから、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、スチリル基が好ましい。さらに常温での安定性は高いが、加熱時及び紫外線照射時に速やかに反応する、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基がより好ましく、さらに光ラジカル反応性が高く、組成物の光感度も向上し、反応後に吸湿性の低い、強固な化学結合が形成されるアクリル基、メタクリル基がさらに好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂や硬化性成分と表面処理された無機フィラーとの化学結合の形成によりクラック耐性の向上が図られる。
【0071】
無機フィラーの表面に硬化性反応基を導入する方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理すればよい。
【0072】
無機フィラーの表面処理としては、カップリング剤による表面処理が好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。中でも、シランカップリング剤が好ましい。
【0073】
シランカップリング剤としては、無機フィラーに、硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤が好ましい。熱硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、有機基として、エポキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤が挙げられ、中でもエポキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。光硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、有機基として、ビニル基を有するシランカップリング剤、スチリル基を有するシランカップリング剤、メタクリル基を有するシランカップリング剤、アクリル基を有するシランカップリング剤が好ましく、中でもメタクリル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0074】
また、硬化性反応基を有しない表面処理された無機フィラーとしては、例えば、アルミナ表面処理がされた無機フィラー等が挙げられる。
【0075】
表面処理された無機フィラーは、表面処理された状態で本発明の感光性樹脂組成物に配合されていればよく、表面未処理の無機フィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤に表面処理された無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理された無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
【0076】
無機フィラーは、平均粒径が2μm以下であると、ラミネート後の細線部への埋め込み性により優れることから好ましい。より好ましくは、1μm以下である。
【0077】
無機フィラーの配合量は、固形分換算で(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、10〜300質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましい。
【0078】
表面処理された無機フィラーと、表面処理されていない無機フィラーを併用してもよい。
【0079】
(着色剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、カラーインデックス(C.I.;ザソサイエティオブダイヤーズアンドカラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0080】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などが挙げられる。青色着色剤としては金属置換もしくは無置換のフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物がある。緑色着色剤としては、同様に金属置換もしくは無置換のフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられる。白色着色剤としては、ルチル型、アナターゼ型等の酸化チタン等が挙げられる。黒色着色剤としては、チタンブラック系、カーボンブラック系、黒鉛系、酸化鉄系、アンスラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、アニリン系の顔料、硫化モリブデン、硫化ビスマス等が挙げられる。その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色などの着色剤を加えてもよい。
【0081】
着色剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。着色剤の配合量は特に限定されないが、固形分換算で(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0082】
(有機溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板や支持フィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0083】
(その他の任意成分)
さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、電子材料の分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、ブロック共重合体、熱硬化触媒、硬化剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光開始助剤、増感剤、光塩基発生剤、熱可塑性樹脂やエラストマー、有機フィラー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体等が挙げられる。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いても良い。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0085】
次に、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムを形成する際には、まず、本発明の感光性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、40〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、3〜150μm、好ましくは5〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0086】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。より好ましくは15〜130μmの範囲である。
【0087】
キャリアフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後、樹脂層の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、樹脂層の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0088】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の感光性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0089】
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0090】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0092】
プリント配線板上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後加熱硬化(例えば、100〜220℃)、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
なお、本発明の感光性樹脂組成物が、光塩基発生剤を含む場合、露光後現像前に加熱することが好ましく、露光後現像前の加熱条件としては、例えば、60〜150℃で1〜60分加熱することが好ましい。
【0093】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10〜1000mJ/cm、好ましくは20〜800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0094】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、現像処理により硬化膜のパターンを形成するだけでなく、インクジェット法により現像処理することなく硬化膜のパターンを形成してもよい。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁材、マーキングインキ、カバーレイ、ソルダーダムを形成するために使用される。また、本発明の感光性樹脂組成物は解像性に優れることから、ファインピッチの配線パターンを備えるプリント配線板、例えばパッケージ基板、特にFC−BGA用の永久被膜(特にソルダーレジスト)の形成に好適に用いることができる。その他、本発明の感光性樹脂組成物は、半導体ウェハの保護膜を形成するために使用してもよい。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0097】
(合成例1:芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−1の合成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一となるまで溶解した。次いで、上記溶液にトリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃加熱して2時間反応させた。その後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65質量%の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂溶液A−1を得た。
【0098】
(合成例2:芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−2の合成)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置、および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製、ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部およびトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部およびトルエン252.9部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。
反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部およびトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、固形物酸価88mgKOH/g、固形分70.9質量%の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂溶液A−2を得た。
【0099】
(合成例3:芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−3の合成)
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42質量部、メチルメタクリレート43質量部、スチレン35質量部、ベンジルアクリレート35質量部、カルビトールアセテート100質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部およびアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させて、共重合体溶液(固形分濃度50質量%)を得た。これに、ハイドロキノン0.05質量部、グリシジルメタクリレート23質量部およびジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、80℃で24時間付加反応を行った後、カルビトールアセテート35質量部を加えて、固形分濃度50.0質量%の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂溶液A−3を得た。
【0100】
(合成例4:カルボキシル基含有樹脂の合成)
温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0質量部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0質量部、ε−カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0質量部、メタクリル酸メチル77.0質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0質量部、および、重合触媒としてのt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーブチルO)12.0質量部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却後、ダイセル社製サイクロマーM100を289.0質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1.3質量部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、固形物酸価79.8mgKOH/g、固形分45.5質量%であるカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0101】
(調製例1:フィラー溶剤分散品αの調整)
球状シリカ(電気化学工業社製SFP−30M、平均粒径d50=0.7μm)を70gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを28gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤として信越シリコーン社製KBE−502を2.0gを均一分散させて、フィラー溶剤分散品αを得た。
【0102】
[実施例1〜5、参考例6、比較例1〜3]
下記表1に示す処方にて各成分を表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0103】
(解像性)
実施例、参考例、比較例の各感光性樹脂組成物を、1.6mm厚の銅べたFR−4基板に乾燥膜厚が20μmとなるようにスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分乾燥して室温まで放冷した。この基板に超高圧水銀灯(ショートアークランプ5KW)搭載のオフコンタクト露光装置を用いて、上記最適露光量で遮光部分のライン幅が100μmのネガパターンを用いて露光し、30℃の1質量%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で120秒間現像を行い、150℃で60分間熱硬化を行い評価サンプルとした。得られた評価サンプルの抜きのライン幅を光学顕微鏡にて計測し、以下の評価基準で評価した。
◎:抜きのライン幅が50μm未満である。
○:抜きのライン幅が100μm未満である。
×:抜きのライン幅が100μm以上である。
【0104】
(無電解金めっき耐性、無電解錫めっき耐性、および耐薬品性評価用の基板作製条件)
実施例、参考例、比較例の各感光性樹脂組成物を、FR−4材にスクリーン印刷により全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させて、室温まで放冷した。この基板を、最適露光量でネガマスクを介して露光し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像、水洗し、現像後の基板を得た。さらに、150℃、60分でポストキュアをして硬化させて基板を得た。
なお、最適露光量は、以下のとおりとする。乾燥後の塗布基板を、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いてステップタブレット(Kodak No.2)
を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが7段のときを最適露光量とした。
【0105】
(無電解金めっき耐性)
上記基板作製条件に基づき作製した評価基板について、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット社製、METEX L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後に水
洗し、次に14.4wt%過硫酸アンモニウム水溶液に室温で3分間浸漬し、水洗した後さらに、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬した。次に、この評価基板を30℃の触媒液(メルテックス社製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に5分間浸漬した後に水洗し、85℃のニッケルめっき液(メルテックス社製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH=4.6)に30分間浸漬すること
でニッケルめっきを施した後、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗を行った。次に、評価サンプル基板を95℃の金めっき液(メルテックス社製、オウロレクトロレスUPの15vol%とシアン化金カリウム3vol%水溶液、pH=6)に40分間浸漬することで無電解金めっきを施した後、水洗を行い、さらに60℃の温水に3分間浸漬し、流水を用いて水洗を行った。得られた金めっきが施された評価サンプルにセロハン粘着テープを付着し、剥離したときの硬化被膜の状態を確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:剥がれなし。
△:エッジ部分に若干剥がれあり。
×:剥がれ、白化あり。
【0106】
(無電解錫めっき耐性)
上記基板作製条件に基づき作製した評価基板について、市販品の無電解錫めっき浴を用いて、錫1±0.2μmの条件でめっきを行った。めっきされた評価基板において、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:剥がれなし。
×:剥がれ、白化あり。
【0107】
(アウトガス)
実施例、参考例、比較例の各感光性樹脂組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分間乾燥した。次いで、この基板にフォトマススクを介して、メタルハライドランプ搭載の露光装置を用いて露光し、30℃のスプレー圧0.2MPaの1質量%NaCO水溶液で現像し、レジストパターンを形成した。ゲステル社製加熱脱着装置(TDU)に、作製したレジストより粉末サンプルを採取し入れた。その後、(1)150℃の熱抽出温度で10分間アウトガス成分を、(2)260℃の熱抽出温度で10分間アウトガス成分を、それぞれ液体窒素を用いて−60℃で捕集した。捕集されたアウトガス成分はアジレントテクノロジー社製ガスクロマトグラフィー質量分析装置(6890N/5973N)で分離分析を行い、n−ドデカン換算で定量し、以下の基準で評価した。
◎:アウトガス成分はほとんどなし。
○:アウトガス成分が少し確認された。
△:アウトガス成分が確認された。
×:アウトガス成分が多い。
【0108】
(耐薬品性)
上記基板作製条件に基づき作製した評価基板について、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬した後の塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:全く変化が認められないもの。
×:塗膜の膨潤または剥離が認められるもの。
【0109】
(クラック耐性)
実施例、参考例、比較例の各感光性樹脂組成物を、2mmの銅ラインパターンが形成された基板に塗布し、上記無電解金めっき耐性、無電解錫めっき耐性、および耐薬品性評価用の基板作製条件と同様の条件で露光、現像した後、紫外線照射、熱硬化して、銅ライン上に3mm角のレジスパターンが17個形成された評価基板を作製した。この評価基板を、−65℃と150℃の間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、TCT(Thermal Cycle Test)を行った。そして、1000サイクル時の外観を観察し、クラック数を数え、以下の基準で評価した。尚、分母の数値「68」は、3mm角のレジストパターンの4つの角(4つ)×17個で、68箇所の角を意味し、分子の数値「20」等は、クラックの発生数を表す。
◎:0/68〜20/68
○:21/68〜40/68
×:41/68以上
【0110】
【表1】
※カルボキシル基含有樹脂溶液、フィラー溶剤分散品は固形分の値
*1:合成例1で合成した芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−1(クレゾールノボラック出発樹脂CN/AA/THPAn)
*2:合成例2で合成した芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−2(フェノール出発樹脂)
*3:合成例3で合成した芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂A−3(共重合樹脂)*4:合成例4で合成した芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂(共重合樹脂)
*5:TR−PBG−304(常州強力電子新材料社製)
*6:Irgacure OXE02(BASFジャパン社製)(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム))
*7:Irgacure 907(BASFジャパン社製)(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
*8:DPHA(日本化薬社製)(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(官能基数:5官能と6官能の混合物、分子量:524および578)
*9:A−DCP(新中村化学工業社製)(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)(2官能、分子量:304)
*10:M−350(東亜合成社製)(トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート)(3官能、[CH=CHCO−(OC−OCH−CCHCH、n≒1)
*11:フタロシアニンブルー
*12:クロムフタルイエロー
*13:調整例1で調整したフィラー溶剤分散品α
*14:KS−66(信越シリコーン社製)(ポリジメチルシロキサン)
*15:YX−4000(三菱化学社製)(ビフェニル型エポキシ樹脂、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂)
*16:828(三菱化学社製)(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、20℃で液状であるエポキシ樹脂)
*17:未評価
【0111】
上記表中に示す実施例の結果から、本発明の感光性樹脂組成物は、解像性および硬化物の無電解金めっき耐性、無電解錫めっき耐性のいずれにも優れ、アウトガスが生じにくいことがわかる。これに対し、比較例は、解像性および硬化物の無電解金めっき耐性、無電解錫めっき耐性、アウトガスの抑制の少なくともいずれかの特性において、実施例より劣ることがわかる。
【0112】
また実施例の結果から、本発明の感光性樹脂組成物は、さらに耐薬品性やクラック耐性のいずれ特性においても優れていることがわかる。