(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端座位判定部は、前記ベッドを対角方向に挟んで配置された2つの荷重検出器からの検出値の大小関係の反転に基づいて前記被験者が端座位状態に至ることを予測する請求項1に記載の在床状態監視システム。
前記端座位判定部は、前記被験者が端座位状態に至ると予測した場合に、前記体動判定部の判定結果と前記体位置判定部の判定結果とに基づいて前記被験者が端座位状態であるか否かを判定する請求項3に記載の在床状態監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本発明の実施形態の在床状態監視システム100(
図1)について、これをベッドBD(
図2)と共に使用して、ベッドBD上の被験者Sの在床状態を監視する場合を例として説明する。
【0020】
以下の説明においては、直方形のベッドBD(
図2)の中心を中心Oとして、中心Oを通りベッドBDの短手(幅方向)に延びる軸をベッドBDのX軸とし、中心Oを通りベッドBDの長手(長さ方向、上下方向)に延びる軸をベッドBDのY軸とする。ベッドBDの平面視において、ベッドBDの中心Oの右側をX軸の正側、左側をX軸の負側とし、ベッドBDの中心Oの上側をY軸の正側、下側をY軸の負側とする。被験者SがベッドBD上に横たわる場合は、一般にY軸に沿って横たわり、Y軸方向の正側に頭部を置き、負側に脚部を置く。
【0021】
図1に示す通り、本実施形態の在床状態監視システム100は、荷重検出部1、制御部3、記憶部4、報知部5を主に有する。荷重検出部1と制御部3とは、A/D変換部2を介して接続されている。制御部3には更に入力部6が接続されている。
【0022】
荷重検出部1は、4つの荷重検出器11、12、13、14を備える。荷重検出器11、12、13、14のそれぞれは、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を検出する荷重検出器である。このような荷重検出器は例えば、特許第4829020号や特許第4002905号に記載されている。荷重検出器11、12、13、14はそれぞれ、配線又は無線によりA/D変換部2に接続されている。
【0023】
図2に示す通り、荷重検出部100の4つの荷重検出器11〜14は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL
1、BL
2、BL
3、BL
4の下端部に取り付けられたキャスターC
1、C
2、C
3、C
4の下にそれぞれ配置される。
【0024】
A/D変換部2は、荷重検出部1からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、荷重検出部1と制御部3にそれぞれ配線又は無線で接続されている。
【0025】
制御部3は、専用又は汎用のコンピュータであり、内部に体動判定部31、体位置判定部32、及び端座位判定部33が構築されている。
【0026】
記憶部4は、在床状態監視システム100において使用されるデータを記憶する記憶装置であり、例えばハードディスク(磁気ディスク)を用いることができる。報知部5は、制御部3からの出力に基づいて所定の報知を行う部分であり、画像(映像)による報知を行う液晶モニター等のモニター51と、音声による報知を行うスピーカー52とを含む。
【0027】
入力部6は、制御部3に対して所定の入力を行うためのインターフェイスであり、キーボード及びマウスにし得る。
【0028】
このような在床状態監視システム100を使用して、ベッド上の被験者の在床状態を監視する動作について説明する。ここで、被験者の在床状態の監視とは、具体的には例えば、被験者が端座位状態に至ること(至ろうとする状況)の予測、及び/又は被験者が端座位状態に至ったか否かの判定である。なお、本明細書及び本発明において「端座位状態」とは、被験者がベッドの幅方向の端部に座った状態を意味する。被験者の足がベッドの下の床面に接触している状態及び接触していない状態のいずれも、端座位状態に含まれる。
【0029】
在床状態監視システム100を使用した被験者の在床状態の監視は、
図3のフローチャートに示す通り、被験者の荷重を検出する荷重検出工程S1と、検出した荷重に基づいて被験者の体動の有無を判定する体動判定工程S2と、検出した荷重に基づいて被験者がベッドの端部に近づいているか否かを判定する体位置判定工程S3と、荷重検出工程S1において検出された被験者の荷重、体動判定工程S2において判定された被験者の体動の有無、体位置判定工程S3において判定された被験者がベッドの端部に近づいているか否かの判定結果の少なくとも一つに基づいて、被験者が端座位状態に至ることを予測し、及び/又は被験者が端座位状態に至ったか否かを判定する端座位判定工程S4と、端座位判定工程S4の判定結果に基づいて所定の報知を行う報知工程S5とを含む。
【0030】
[荷重検出工程]
荷重検出工程S1では、荷重検出器11、12、13、14を用いてベッドBD上の被験者Sの荷重を検出する。ベッドBD上の被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL
1〜BL
4の下に配置された荷重検出器11〜14に分散して付与され、これらによって分散して検出される。
【0031】
荷重検出器11〜14はそれぞれ、荷重(荷重変化)を検出してアナログ信号としてA/D変換部2に出力する。A/D変換部2は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「荷重信号」)として制御部3に出力する。以下では、荷重検出器11、12、13、14から出力されたアナログ信号をA/D変換部2においてデジタル変換して得られる荷重信号を、それぞれ荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4と呼ぶ。
【0032】
[体動判定工程]
体動判定工程S2では、体動判定部31が、荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つを用いて、被験者Sに体動が生じているか否かを判定する。
【0033】
ここで「体動」とは、被験者の頭部、胴部(体幹)、四肢の移動を意味する。呼吸や心拍等に伴う臓器、血管等の移動は体動には含まれない。体動は、一例として、被験者Sの胴部(体幹)の移動を伴う大きな体動と、被験者の四肢や頭部の移動のみを伴う小さな体動とに分類し得る。大きな体動の一例は、寝返りや起き上がり等であり、小さな体動の一例は、睡眠中の手足や頭部の移動等である。
【0034】
体動判定部31は、次の原理に基づいて、被験者Sに体動が生じているか否かの判定を行う。
【0035】
図4に、時刻t
0、t
1、t
2を含む所定期間に得られた、荷重検出器11からの荷重信号s
1の概略的な波形を示す。
【0036】
図4に示す波形が得られた所定期間のうち、時刻t
0から時刻t
1までの期間(期間P
1)においては、被験者Sに体動は生じていなかった。そのため、この期間の荷重信号s
1は、被験者Sの呼吸及び心拍に応じた被験者の臓器や血管の移動を反映してわずかに振動するのみであり、その変動量は小さい。換言すると、被験者Sに体動が生じていない期間P
1においては、荷重信号s
1のサンプリング値のばらつきは小さい。
【0037】
一方で、
図4に示す波形が得られた所定期間のうち、時刻t
1から時刻t
2までの期間(期間P
2)においては、被験者Sに体動が生じていた。具体的には、被験者Sは右腕を動かしていた。そのため、この期間の荷重信号s
1は、被験者Sの右腕の移動を反映して大きく変動している。換言すると、被験者Sに体動が生じている期間P
2においては、荷重信号s
1のサンプリング値のばらつきは大きい。
【0038】
このように、荷重検出器11からの荷重信号s
1のサンプリング値のばらつきは、被験者Sに体動が生じていない期間において小さくなり、被験者Sに体動が生じている期間において大きくなる。荷重検出器12、13、14からの荷重信号s
2、s
3、s
4についても同様である。
【0039】
そのため、体動判定部31は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つについて、所定期間(一例として5秒間)に含まれるサンプリング値のばらつきの大きさを表わす標準偏差σを算出し、算出した標準偏差σと所定の閾値σ
thとの比較に基づいて、被験者Sに体動が生じているか否かを判定する。
【0040】
具体的には例えば、所定期間について算出した標準偏差σの値が所定の閾値σ
thよりも小さければ、当該期間においては被験者Sに体動は生じていないと判定する。一方で、所定のサンプリング期間について算出した標準偏差σの値が所定の閾値σ
thよりも大きければ、当該期間において被験者Sに体動が生じていると判定する。なお、標準偏差σに代えて、分散σ
2を所定の閾値σ
2thと比較して、被験者Sの体動の有無を判定してもよい。
【0041】
[体位置判定工程]
体位置判定工程S3では、体位置判定部32が、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4に基づいて、被験者Sの体位置がベッドBDの幅方向(X軸方向)の端部に近づいているか否かを判定する。
【0042】
以下においては、ベッドBDのX軸方向正側の端部を第1ベッド端部Be1と呼び、ベッドBDのX軸方向負側の端部を第2ベッド端部Be2と呼ぶ(
図2)。また、第1ベッド端部Be1、第2ベッド端部Be2を総称して、ベッド端部と呼ぶ。
【0043】
体位置判定部32は、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4の各サンプリング時刻におけるサンプリング値をW
1、W
2、W
3、W
4として、次の式1を用いて値Xを求める。
【数1】
そして、求めた値Xを用いて、次の原理により、被験者Sがベッド端部に近づいているか否かを判定する。
【0044】
本実施形態の在床状態監視システム100が備える荷重検出器11〜14のうち、荷重検出器11、14は第1ベッド端部Be1に設けられた脚BL
1、BL
4の下に設置されており、荷重検出器12、13は第2ベッド端部Be2に設けられた脚BL
2、BL
3の下に設置されている。
【0045】
被験者SがベッドBDの中心Oの近傍に位置する場合には、被験者Sの荷重は第1ベッド端部Be1側と第2ベッド端部Be2側とに均等に付与されるため、荷重検出器11、14からの荷重信号s
1、s
4のサンプリング値W
1、W
4の和(W
1+W
4)と、荷重検出器12、13からの荷重信号s
2、s
3のサンプリング値W
2、W
3の和(W
2+W
3)とは略等しくなり、式1により求められる値Xは、ほぼ0に等しくなる。
【0046】
一方で、被験者Sが第1ベッド端部Be1に近づくに従って荷重検出器11、14からの荷重信号s
1、s
4のサンプリング値W
1、W
4は次第に大きくなり、且つ荷重検出器12、13からの荷重信号s
2、s
3のサンプリング値W
2、W
3は次第に小さくなる。この時、式1により求められる値Xは次第に大きくなる。同様に、被験者Sが第2ベッド端部Be2に近づくに従って荷重検出器12、13からの荷重信号s
2、s
3のサンプリング値W
2、W
3は大きくなり、且つ荷重検出器11、14からの荷重信号s
1、s
4のサンプリング値W
1、W
4は次第に小さくなる。この時も、式1により求められる値Xは次第に大きくなる。
【0047】
体位置判定部32は、被験者SのベッドBD上でのX軸方向の位置と値Xとの間のこのような関係に基づき、被験者Sがベッド端部に近づいているか否かを判定する。具体的には、式1により求めた値Xを所定の閾値X
thと比較し、値Xが所定の閾値X
thを越えた時点で、被験者Sがベッド端部に近づいたと判定する。
【0048】
所定の閾値X
thは適宜設定することができる。被験者がベッド端部に近づいたとの判断をより早い時点で(即ち、被験者Sとベッド端部との間の距離が比較的大きい時点で)行うことが望ましい場合には所定の閾値X
thを小さめに設定する。反対に、被験者がベッド端部に近づいたとの判断をより遅い時点で(即ち、被験者Sとベッド端部との間の距離が比較的小さくなった時点で)行うことが望ましい場合には所定の閾値X
thを大きめに設定する。
【0049】
なお、剛体は3点支持が最も安定的であるため、ベッドBDも3点支持気味の状態(即ち、ベッドBDが四隅の脚BL
1〜BL
4によって均等に支持されるのではなく、これらの内の3つによる支持の分担量が増え、残る1つによる支持の分担量が減った状態)となる場合がある。この時、ベッドBD及びその上の被験者Sの荷重は四隅の脚BL
1〜BL
4の下の荷重検出器11〜14の内の3つに対しては多めに付与され、残る1つに対しては少なめに付与される。本実施形態の体位置判定部32は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4を総合的に用いる式1により被験者Sの体位置を判定しているため、ベッドBDが3点支持気味の状態に至った場合でも、3点支持気味の状態が発生することによりサンプリング値W
1〜W
4の値に生じ得る誤差をある程度相殺し、判定精度の低下を抑制することができる。
【0050】
[端座位判定工程]
端座位判定工程S4においては、まず、端座位判定部33が、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4に基づいて、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測する。そして、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測した後に、端座位判定部33が、体動判定工程S2における判定結果と体位置判定工程S3における判定結果とに基づいて、被験者Sが実際に端座位状態に至ったか否かの判定を行う。
【0051】
端座位判定部33は、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を、次の原理に基づいて予測する。
【0052】
本発明の発明者は、被験者Sが端座位状態に至ることをより早い段階で検知すべく、ベッドBD上での被験者Sの移動の様子と、被験者Sの移動に応じた荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4の変動の様子との関係について研究を重ねた。そして、被験者SがベッドBD上に横たわった状態(仰臥、横臥、又は伏臥した状態)からベッド端部に座った端座位状態へと移動する過程においては、ベッドBDを対角方向に挟んで配置された一対の荷重検出器(ベッドBDの対角位置に配置された一対の荷重検出器)の間で、荷重信号のサンプリング値の大小関係が極めて高い確率で反転することを見出した。
【0053】
端座位判定部33は、本発明の発明者のこの知見に基づき、荷重検出器11からの荷重信号s
1のサンプリング値W
1と荷重検出器13からの荷重信号s
3のサンプリング値W
3との大小関係、又は荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2と荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4との大小関係が反転したことに基づいて、被験者Sが端座位状態に至ろうとしている状況を予測する。
【0054】
被験者SがベッドBD上に横たわった状態からベッド端部に座った端座位状態へと移動する過程で、ベッドBDを対角方向に挟んで配置された一対の荷重検出器の間で、荷重信号のサンプリング値の大小関係が反転することを、いくつかの具体例を挙げて示す。
【0055】
(1)具体例1
図5(a)に示すように、被験者Sが、時刻T
1に、ベッドBDのX軸方向略中央に、体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合、ベッドBDの四隅に設けられた荷重検出器11、12、13、14には、被験者Sの荷重が約3:3:7:7の比率で付与される。したがって、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさも約3:3:7:7となる。被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12に付与される荷重の割合よりも被験者Sの頭側に設置された荷重検出器13、14に付与される荷重の割合が大きいのは、人間の上半身と下半身の重さの比率が約7:3であることによる。
【0056】
図5(b)に示すように、被験者Sが、時刻T
2に、ベッドBDの第2ベッド端部Be2のY軸方向略中央に端座している場合、被験者Sの荷重は大部分が第2ベッド端部Be2側の荷重検出器12、13に付与される。ここでは例えば、ベッドBDの四隅に設けられた荷重検出器11、12、13、14に、被験者Sの荷重が、約1:9:9:1の比率で付与されるものとする。この場合、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさも約1:9:9:1となる。
【0057】
ここで、ベッドBDのX軸方向負側且つY軸方向負側に設置された荷重検出器12からの荷重信号s
2と、ベッドBDのX軸方向正側且つY軸方向正側(即ち、荷重検出器12の対角位置)に設置された荷重検出器14からの荷重信号s
4に着目する。
【0058】
被験者Sがベッド中央で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器12には被験者Sの荷重の約3/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器14には被験者Sの荷重の約7/20が付与されている。すなわち、被験者Sがベッド中央で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器12よりも、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器14により多くの荷重が付与されており、荷重信号s
4のサンプリング値W
4は、荷重信号s
2のサンプリング値W
2よりも大きい(
図5(c))。
【0059】
一方で、被験者Sが第2ベッド端部Be2に端座している時刻T
2においては、被験者Sが存在する第2ベッド端部Be2に設置された荷重検出器12には被験者Sの荷重の約9/20が付与されており、被験者Sが存在していない第1ベッド端部Be1側に設置された荷重検出器14には被験者Sの荷重の約1/20が付与されている。すなわち、被験者Sが第2ベッド端部Be2に端座している時刻T
2においては、被験者Sの存在しない第1ベッド端部Be1側に設置された荷重検出器14よりも、被験者Sの存在する第2ベッド端部Be2側に設置された荷重検出器12により多くの荷重が付与されており、荷重信号s
2のサンプリング値W
2は、荷重信号s
4のサンプリング値W
4よりも大きい(
図5(c))。
【0060】
このように、被験者Sがベッド中央で仰臥した状態から、第2ベッド端部Be2に端座した状態に移動する過程においては、荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が反転する。
【0061】
被験者Sがベッド中央に仰臥している時刻T
1と、被験者が第2ベッド端部Be2で端座している時刻T
2との間の期間における、荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4の変動の様子を概略的に示すと、
図5(c)のグラフのようになる。このグラフからも、荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が、時刻T
1と時刻T
2との間の期間の、被験者Sが端座位状態となる直前の時点において反転していることが読み取れる。また、サンプリング値の大小関係の反転は、荷重信号s
2のサンプリング値W
2と荷重信号s
4のサンプリング値W
4との間でのみ生じており、その他のサンプリング値の間では生じていないことが読み取れる。
【0062】
なお、時刻T
2において被験者Sが端座する位置がベッドBDの第1端部Be1である場合にも同様に、時刻T
1と時刻T
2との間において、荷重信号s
1のサンプリング値W
1と荷重信号s
3のサンプリング値W
3との間でサンプリング値の大小関係の反転が生じることが理解されるであろう。
【0063】
(2)具体例2
図6(a)に示すように、被験者Sが、時刻T
1に、ベッドBDのX軸方向略中央の第1ベッド端部Be1側に、体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合を考える。この場合は、被験者SがベッドBDのX軸方向略中央に体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合(
図5(a))に比較して、より多くの荷重が、第1ベッド端部Be1側に設置された荷重検出器11、14に付与される。ここでは例えば、被験者Sの荷重が、荷重検出器11、12、13、14に、約4:2:6:8の比率で付与されるものとする。この場合、荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさも約4:2:6:8となる。
【0064】
図6(b)に示すように、被験者Sが、時刻T
2に、ベッドBDの第2ベッド端部Be2のY軸方向略中央に端座している場合には、上記の具体例1において述べた通り、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさは約1:9:9:1となる。
【0065】
被験者Sがベッド中央の第1ベッド端部Be1側で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器12には被験者の荷重の2/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器14には被験者の荷重の8/20が付与されている。即ち、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4は、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2よりも大きい(
図6(c))。
【0066】
一方で、被験者Sが第2ベッド端部Be2に端座している時刻T
2においては、被験者Sの存在しない第1ベッド端部Be1側に設置された荷重検出器14には被験者Sの荷重の1/20が付与されており、被験者Sの存在する第2ベッド端部Be2側に設置された荷重検出器12には被験者の荷重の9/20が付与されている。即ち、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2は、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4よりも大きい(
図6(c))。
【0067】
このように、被験者Sがベッド中央の第1ベッド端部Be1側で仰臥した状態から、第2ベッド端部Be2に端座した状態に移動する過程においても、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が反転する。
【0068】
時刻T
1と時刻T
2との間の期間における、荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4の変動の様子を概略的に示すと、
図6(c)のグラフのようになる。このグラフからも、荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が、時刻T
1と時刻T
2との間の期間の、被験者Sが端座位状態となる直前の時点において反転していることが読み取れる。
【0069】
(3)具体例3
図7(a)に示すように、被験者Sが、時刻T
1に、ベッドBDのX軸方向略中央の第2ベッド端部Be2側に、体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合を考える。この場合は、被験者SがベッドBDのX軸方向略中央に体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合(
図5(a))に比較して、より多くの荷重が、第2ベッド端部Be2側に設置された荷重検出器12、13に付与される。ここでは例えば、被験者Sの荷重が、荷重検出器11、12、13、14に、約2:4:8:6の比率で付与されるものとする。この場合、荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさも約2:4:8:6となる。
【0070】
図7(b)に示すように、被験者Sが、時刻T
2に、ベッドBDの第2ベッド端部Be2のY軸方向略中央に腰掛けている場合には、上記の具体例1において述べた通り、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさは約1:9:9:1となる。
【0071】
被験者Sがベッド中央の第2ベッド端部Be2側で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器12には被験者の荷重の4/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器14には被験者の荷重の6/20が付与されている。即ち、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4は、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2よりも大きい(
図7(c))。
【0072】
一方で、被験者Sが第2ベッド端部Be2に端座している時刻T
2においては、被験者Sの存在しない第1ベッド端部Be1側に設置された荷重検出器14には被験者Sの荷重の1/20が付与されており、被験者Sの存在する第2ベッド端部Be2側に設置された荷重検出器12には被験者の荷重の9/20が付与されている。即ち、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2は、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4よりも大きい(
図7(c))。
【0073】
このように、被験者Sがベッド中央の第2ベッド端部Be2側で仰臥した状態から、第2ベッド端部Be2に端座した状態に移動する過程においても、荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が反転する。
【0074】
時刻T
1と時刻T
2との間の期間における、荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4の変動の様子を概略的に示すと、
図7(c)のグラフのようになる。このグラフからも、荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係が、時刻T
1と時刻T
2との間の期間の、被験者Sが端座位状態となる直前の時点において反転していることが読み取れる。また、サンプリング値の大小関係の反転は、荷重信号s
2のサンプリング値W
2と荷重信号s
4のサンプリング値W
4との間でのみ生じており、その他のサンプリング値の間では生じていないことが読み取れる。
【0075】
具体例1〜3において例示した場合の他も、被験者SがベッドBD上に横たわった状態(仰臥、横臥、又は伏臥した状態)からベッド端部に座った端座位状態へと移動する期間内の、被験者Sが端座位状態に至る直前の時点で、ベッドBDの対角位置に設置された一対の荷重検出器の荷重信号のサンプリング値の大小関係が入れ替わる場合が極めて多い。被験者Sが横たわった状態においては被験者の脚側に位置し且つ被験者Sが端座した状態においては被験者の存在する側に位置するように設置された第1の荷重検出器のサンプリング値が、被験者が端座位へと移動する期間に大きく増大すること、及び被験者Sが横たわった状態においては被験者の頭側に位置し且つ被験者Sが端座した状態において被験者の存在しない側に位置するように設置された(即ち、第1の荷重検出器に対して、ベッドBDの対角位置に設置された)第2の荷重検出器のサンプリング値が、被験者が端座位へと移動する期間に大きく減少することがその理由である。
【0076】
また、具体例1〜3においては、被験者SがベッドBD上に横たわった状態において被験者Sの重心はベッドBDのY軸方向正側に位置しているが、仮に被験者SがベッドBD上に横たわった状態において被験者Sの重心がY軸方向負側に位置している場合には、被験者Sがベッド端部Be2のY軸方向略中央に座った端座位状態へと移動する期間内に、荷重検出器11の荷重信号s
1のサンプリング値W
1と、荷重検出器13の荷重信号s
3のサンプリング値W
3の大小関係が反転する。
【0077】
なお、本実施形態の在床状態監視システム100の端座位判定部33は、ベッドBDを対角方向に挟んで配置された一対の荷重検出器(ベッドBDの対角位置に配置された一対の荷重検出器)の間で、荷重信号のサンプリング値が一致した時点で被験者Sが端座位状態に至ることを予測しても良い。本明細書及び本発明においては、「2つの荷重検出器からの検出値(信号値、サンプリング値)の大小関係の変化に基づいて被験者が端座位状態に至ることを予測する」とは、2つの荷重検出器からの検出値の反転に基づく端座位状態の予測と、2つの荷重検出器からの検出値の一致に基づく端座位状態の予測の両方を含むものとする。
【0078】
また、
図5(c)、
図6(c)、
図7(c)に示すような荷重信号s
2と荷重信号s
4との大小関係の一致及び反転は、例えば、時刻T
1と時刻T
2との間の所定の時刻Tにおける荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、時刻Tにおける荷重信号s
4のサンプリング値W
4との間の標準偏差が、時刻T
1から時刻T
2に向かうにしたがって小さくなり、その後再び大きくなる現象として捉えることもできる。このように、2つの荷重検出器からの検出値の一致及び反転を、例えば両検出値の間の標準偏差の変化といった異なる観点で捉え、これに基づき端座位予測を行う場合も、本発明に記載された「2つの荷重検出器からの検出値(信号値、サンプリング値)の大小関係の変化に基づいて被験者が端座位状態に至ることを予測する」に含まれる。
【0079】
次に、被験者SがベッドBD上に横たわった状態からベッドの幅方向に移動することなく起き上がり、上半身を起こした状態へと移動する過程、及び被験者SがベッドBD上で寝返りを打つ過程においては、具体例1〜3で示したような、サンプリング値の大小関係の反転が生じないことを、比較例1、2を挙げて示す。
【0080】
(4)比較例1(起き上がり)
図8(a)に示すように、被験者Sが、時刻T
1に、ベッドBDのX軸方向略中央に、体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合には、上記の具体例1において述べた通り、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさは約3:3:7:7となる。
【0081】
図8(a)に示す被験者Sが、上半身を起こし、時刻T
2において、ベッドBDのX軸方向略中央に上半身を起こした状態で座っている場合(
図8(b))を考える。この場合は、被験者Sが仰臥している場合(
図8(a))に比較して、より多くの荷重が、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12に付与される。ここでは例えば、被験者Sの荷重が、荷重検出器11、12、13、14に、約4:4:6:6の比率で付与されるものとする。この場合、荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさも約4:4:6:6となる。
【0082】
被験者SがベッドBDのX軸方向略中央で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12には被験者の荷重の3/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器13、14には被験者の荷重の7/20が付与されている。被験者SがベッドBDのX軸方向略中央に上半身を起こして座っている時刻T
2においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12には被験者の荷重の4/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器13、14には被験者の荷重の6/20が付与されている。このように、比較例1においては、ベッドBDの対角位置に設置された一対の荷重検出器11、13の間においても、一対の荷重検出器12、14の間においても、サンプリング値の大小関係の反転は生じていない。
【0083】
時刻T
1と時刻T
2との間の期間における、荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4の変動の様子を概略的に示すと、
図8(c)のグラフのようになる。このグラフからも、荷重検出器11の荷重信号s
1のサンプリング値W
1と、荷重検出器13の荷重信号s
3のサンプリング値W
3の大小関係は反転(変化)しておらず、且つ荷重検出器12の荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14の荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係も反転(変化)していないことが読み取れる。
【0084】
(5)比較例2(寝返り)
図9(a)に示すように、被験者Sが、時刻T
1に、ベッドBDのX軸方向略中央に、体軸をY軸方向に一致させて仰臥している場合には、上記の具体例1において述べた通り、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさは約3:3:7:7となる。
【0085】
図9(a)に示す被験者Sが、寝返りを打ち、時刻T
2において、ベッドBDのX軸方向中央の第1ベッド端部Be1側で、体軸をY軸方向に向けて伏臥している場合(
図9(b))を考える。この場合は、例えば、上記の具体例2の時刻T
1における状況と、仰臥、伏臥の違いを除いてほぼ同様の状況に至り、荷重検出器11、12、13、14からの荷重信号s
1、s
2、s
3、s
4のサンプリング値W
1、W
2、W
3、W
4の大きさは約4:2:6:8となる。
【0086】
被験者SがベッドBDのX軸方向略中央で仰臥している時刻T
1においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12には被験者の荷重の3/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器13、14には被験者の荷重の7/20が付与されている。被験者SがベッドBDのX軸方向中央の第1ベッド端部Be1側で伏臥している時刻T
2においては、被験者Sの脚側に設置された荷重検出器11、12には被験者の荷重の4/20、2/20が付与されており、被験者Sの頭側に設置された荷重検出器13、14には被験者の荷重の6/20、8/20が付与されている。このように、比較例2においては、ベッドBDの対角位置に設置された一対の荷重検出器11、13の間においても、一対の荷重検出器12、14の間においても、サンプリング値の大小関係の反転は生じていない。
【0087】
時刻T
1と時刻T
2との間の期間における、荷重信号s
1〜s
4のサンプリング値W
1〜W
4の変動の様子を概略的に示すと、
図9(c)のグラフのようになる。このグラフからも、荷重検出器11からの荷重信号s
1のサンプリング値W
1と、荷重検出器13からの荷重信号s
3のサンプリング値W
3の大小関係は反転(変化)しておらず、且つ荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2と、荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4の大小関係も反転(変化)していないことが読み取れる。
【0088】
端座位判定部33は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4に基づいて被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測した後、被験者Sが実際に端座位状態に至ったか否かの判定を行う。この判定は、具体的には次のようにして行う。
【0089】
端座位判定部33は、体動判定工程S2において体動判定部31が被験者Sに体動が生じていると判定した場合には、その判定結果を受け取り、「体動有り」のフラグを立てる。また、体位置判定工程S3において体位置判定部32が被験者Sがベッド端部に近づいていると判定した場合には、その判定結果を受け取り、「ベッド端部」のフラグを立てる。
【0090】
端座位判定部33は、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測した後に、「体動有り」フラグ、及び「ベッド端部」フラグが立っているか否かを確認する。そして、「体動有り」フラグ、及び「ベッド端部」フラグの両方が立っている場合、又は立った場合には、被験者Sが端座位状態に至ったと判定する。
【0091】
[報知工程]
報知工程S5においては、報知部5が、端座位判定部33における予測、及び判定の結果を、在床状態監視システム100の利用者である看護師や介護士等に報知する。
【0092】
報知部5による報知は、モニター51を用いた視覚的な報知、及び/又はスピーカー52を用いた聴覚的な報知を含む、様々な態様でなされ得る。一例として、被験者Sが端座位に至ろうとする状況を予測した時点、及び被験者Sが端座位に至ったと判定した時点のそれぞれにおいて、その旨をモニタ−51にアイコン等により表示する。これと同時に、スピーカー52から、何らかの報知音を発しても良い。
【0093】
被験者Sが端座位に至ったと判定した時点で行われる報知を、被験者Sが端座位に至ろうとする状況を予測した時点に行われる報知よりも、緊急度の高い印象を与える態様としてもよい。例えば視覚的な報知であれば、前者のアイコンに赤色を用い、後者のアイコンに黄色を用いる等である。
【0094】
看護師や介護士等は、報知部5による報知に応じて、ベッドBDに向かうことが出来る。そして、端座位に至った被験者S(即ち、入院患者や介護施設の入所者等)の状況を確認し、必要に応じて立上りや車いすへの移動を介助することができる。
【0095】
次に、本実施形態の在床状態監視システム100を用いて行った、実際の端座位予測と端座位判定の一例について説明する。
【0096】
この例における被験者Sの実際の姿勢の変動の様子は次の通りであった。
(1)時刻0s〜時刻3.0s: ベッドBDのX軸方向中央部に体軸をY軸に対して時計回りに幾分傾けた状態で仰臥。
(2)時刻3.0s: 端座位に向かって移動を開始。
(3)時刻4.5s〜5.0s頃: 第2ベッド端部Be2に腰掛けた端座位状態に至る。
(4)時刻6.3s: 立ち上がって離床。
【0097】
被験者Sが上述の移動を行った期間における、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4の変動の様子は、
図10(a)のグラフの通りである。
図10のグラフのうち、時刻0s〜時刻1.5sの期間は、在床状態監視システム100の起動に伴って信号がブレており、データとしては無効である。
【0098】
図10(a)のグラフから、被験者SがベッドBDの中央に仰臥していた時刻1.5s〜時刻3.0sの期間においては、荷重信号s
1〜s
4はいずれも安定していたことが読み取れる。また、この期間において、被験者Sの頭側に位置する荷重検出器13、14からの荷重信号s
3、s
4が、被験者Sの脚側に位置する荷重検出器11、12からの荷重信号s
1、s
2よりも大きいことや、被験者Sの体軸がY軸に対して傾いているため、荷重信号s
2、s
4が荷重信号s
1、s
3よりも大きくなっていることも読み取れる。
【0099】
また、
図10(a)から、被験者Sが端座位に向かって移動を開始した直後の約3.7sの時点で、荷重検出器12からの荷重信号s
2の値と、荷重検出器14からの荷重信号s
4の値とで、大小関係が反転していることが読み取れる。
【0100】
被験者Sが上述の移動を行った期間における、体動判定部31による被験者Sの体動の有無の判定結果、及び体位置判定部32による被験者Sがベッド端部に近づいているか否かの判定の結果は、それぞれ
図10(b)、
図10(c)の通りであった。
【0101】
図10(b)のグラフにおいて、縦軸の「1」は端座位判定部33に「体動あり」フラグが立てられていることを、「0」は、端座位判定部33に「体動あり」フラグが立てられていないことをそれぞれ意味する。体動判定部31は、時刻0s〜時刻10sの全期間において体動有りと判定しているが、この点は、体動の有無を判定すべく標準偏差σと比較される閾値σ
thを調整することにより改善し得る。具体的には例えば、閾値σ
thを適宜調整して大きめの値とすることにより、被験者Sが仰臥状態から端座位状態へと移動し、離床する時刻3s〜時刻6.3sの期間のみ「体動あり」との判定結果を得ることができる。
【0102】
図10(c)のグラフにおいて、縦軸の「1」は端座位判定部33に「ベッド端部」フラグが立てられていることを、「0」は、端座位判定部33に「ベッド端部」フラグが立てられていないことをそれぞれ意味する。
図10(c)から、被験者Sがベッド端部Be2に座った端座位に至った時刻4.5s〜5.0s頃と、被験者Sが離床した時刻6.3sとの間の期間において、「ベッド端部」フラグが立っていたことが読み取れる。
【0103】
在床状態監視システム100は、
図10(a)に示す荷重信号s
1〜s
4、及び
図10(b)、
図10(c)に示す体動判定部31、体位置判定部32の判定結果に基づいて、時刻3.7sに被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測し、その後、時刻4.7sに、被験者Sが端座位に至ったと判定した。即ち、上述した被験者Sの実際の姿勢の変動の様子に応じた正確な予測及び判定を行った。
【0104】
本実施形態の在床状態監視システム100の効果を次にまとめる。
【0105】
本実施形態の在床状態監視システム100は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4に基づいて、被験者Sが実際に端座位状態に至る前に、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測することができる。したがって、本実施形態の在床状態監視システム100によれば、在床状態監視システム100の使用者である看護師や介護士等に、より早い段階で報知を行うことができ、看護師や介護士等は、当該報知に基づき、ベッドBD上の入院患者等をより適切に介助することができる。これにより、入院患者等の離床時に生じ得る転倒や転落等の事故をより確実に防止することができる。
【0106】
本実施形態の在床状態監視システム100は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4に基づいて被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測した後に、被験者Sが端座位状態に至ったか否かの判定をしている。このように、被験者Sが端座位状態に至る前の荷重変動の履歴も考慮して端座位判定を行っているため、判定の精度が高い。
【0107】
また、本実施形態の在床状態監視システム100は、体位置判定部32による被験者Sがベッド端部に近づいているか否かの判定結果のみではなく、体動判定部31による被験者Sに体動が生じているか否かの判定結果も考慮に入れて、被験者Sが端座位状態に至ったか否かを判定している。このように体動の有無を考慮にいれた判定を行っているため、被験者Sが実際に端座位に至っている場合と、例えば被験者Sがベッド端部付近で体動を生じることなく睡眠している場合とを区別して、より精度の高い判定を行うことができる。
【0108】
本実施形態の在床状態監視システム100は、ベッドBDの脚BL
1〜BL
4の下に配置した荷重検出器11〜14を用いて被験者Sの在床状態を判定している。したがって、被験者Sの身体に計測装置を取り付ける必要がなく、被験者Sに不快感や違和感を与えることがない。
【0109】
<変形例>
上記実施形態の在床状態監視システム100において、次の変形態様を用いることもできる。
【0110】
上記実施形態の在床状態監視システム100においては、体動判定部31は、荷重検出器11〜14からの荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つを任意に選び、選んだ荷重信号について標準偏差σを算出していたがこれには限られない。体動判定部31は荷重信号s
1〜s
4の全てについて標準偏差σを算出してもよく、この場合は例えば、算出した標準偏差σのうち最大の値と、所定の閾値σ
thとを比較して被験者Sの体動の有無を判定してもよい。
【0111】
上記実施形態の在床状態監視システム100においては、体動判定部31は、A/D変換部2からの荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つをそのまま用いて標準偏差σを算出していたが、これには限られない。体動判定部31は、荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つについてダウンサンプリングを行った上で標準偏差σを算出してもよい。
【0112】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、体動判定部31は、荷重信号s
1〜s
4の少なくとも1つについて、例えば15秒の移動平均処理を施して直流成分をブロックした上で、処理後の信号を用いて標準偏差σを求めても良い。上記実施形態の在床状態監視システム100において、体動判定部31は、上記ダウンサンプリングと上記移動平均処理の両方を施して、処理後の信号を用いて標準偏差σを求めてもよい。
【0113】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、体動判定部31は、標準偏差σを算出することなく、体動の有無を判定してもよい。
【0114】
具体的には例えば、被験者Sに体動が生じた場合には、これに応じて被験者Sの重心Gの位置は移動するが、その移動量は、呼吸や心拍による内臓や血管の移動に応じた重心Gの移動量よりも大きい。したがって、体動判定部31は、荷重信号s
1〜s
4を用いて被験者Sの重心Gの位置、及びその時間的変化である重心軌跡GTを算出し、重心Gが、所定の期間内に、所定の距離を越えて移動した場合に、被験者Sに体動があったと判定してもよい。
【0115】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、体位置判定部32は、式1に代えて、第1ベッド端部Be1側に配置された荷重検出器11、14からの荷重信号s
1、s
4のサンプリング値W
1、W
4のいずれかと、第1ベッド端部Be2側に配置された荷重検出器12、13からの荷重信号s
2、s
3のサンプリング値W
2、W
4のいずれかとの差分の絶対値と、所定の閾値との比較に基づいて、被験者Sがベッド端部に近づいているか否かを判定してもよい。例えばX’=|W
1−W
2|で表される値X’も、被験者Sがベッド端部に近づくにしたがって大きくなるため、値X’と所定の閾値X’
thとの比較に基づいて、被験者Sがベッド端部に近づいているか否かを判定し得る。
【0116】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、体位置判定部32は、被験者Sの重心Gの位置と、第1、第2ベッド端部Be1、Be2との間の距離に基づいて、被験者Sがベッド端部に近づいているか否かを判定してもよい。
【0117】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、端座位判定部33は、被験者Sが端座位状態に至ろうとする状況を予測した際に、被験者Sが第1ベッド端部Be1と、第2ベッド端部Be2のいずれにおいて端座位状態に至ろうとしているのかも予測してよい。
【0118】
具体的には例えば、荷重検出器11からの荷重信号s
1のサンプリング値W
1と荷重検出器13からの荷重信号s
3のサンプリング値W
3との間で大小関係の入れ替わりが検知された場合には被験者Sが第1ベッド端部Be1で端座位に至ろうとしていると予測し、荷重検出器12からの荷重信号s
2のサンプリング値W
2と荷重検出器14からの荷重信号s
4のサンプリング値W
4との間で大小関係の入れ替わりが検知された場合には被験者Sが第2ベッド端部Be2で端座位に至ろうとしていると予測する。また、予測においては更に、重心Gの位置を参酌してもよい。
【0119】
上記実施形態の在床状態監視システム100においては、端座位判定部33は、荷重信号s
1〜s
4に基づいて被験者Sが端座位に至ろうとする状況を予測した後に、体動判定部31の判定結果及び体位置判定部32の判定結果を用いた端座位判定を行っていた。しかしながら、これには限られない。
【0120】
端座位判定部33は、被験者Sが端座位に至ろうとする状況が予測されているか否かにかかわらず(端座位に至ると予測されているか否かにかかわらず)、体動判定部31の判定結果に基づき「体動有り」フラグが立っているか否か、及び体位置判定部32の判定結果に基づき「ベッド端部」フラグが立っているか否かを確認し、両フラグが立っている場合には、被験者Sが端座位状態に至っていると判定してもよい。
【0121】
上記実施形態の在床状態監視システム100においては、端座位判定部33は、端座位予測及び端座位判定の両方を行うことができるように構成されている。しかしながらこれには限られず、端座位判定部33は、端座位予測又は端座位判定のいずれか一方のみを行うことの出来る構成であってもよい。
【0122】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、荷重検出器11〜14は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
【0123】
上記実施形態の在床状態監視システム100においては、荷重検出器11〜14の各々は、ベッドBDの脚BL
1〜BL
4の下端に取り付けられたキャスターC
1〜C
4の下に配置されていたがこれには限られない。荷重検出器11〜14の各々は、ベッドBDの4本の脚とベッドBDの床板との間に設けられてもよいし、ベッドBDの4本の脚が上下に分割可能であれば、上部脚と下部脚との間に設けられても良い。また、荷重検出器11〜14をベッドBDと一体に又は着脱可能に組み合わせて、ベッドBDと本実施形態の生体状態モニタリングシステム100とからなるベッドシステムBDSを構成してもよい(
図11)。
【0124】
上記実施形態の在床状態監視システム100において、荷重検出部1とA/D変換部2との間に、荷重検出部1からの荷重信号を増幅する信号増幅部や、荷重信号からノイズを取り除くフィルタリング部を設けても良い。
【0125】
上記実施形態の生体状態モニタリングシステム100において、表示部5は、モニター51に代えて、又はこれに加えて、生体状態を表わす情報を印字して出力するプリンタや、生体状態を表示するランプ等の簡易な視覚表示手段を備えてもよい。また、スピーカー52に代えて、又はこれに加えて、振動により報知を行う振動発生部を備えてもよい。
【0126】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【解決手段】ベッド上の被験者の在床状態を監視する在床状態監視システムは、前記ベッドの四隅に設けられ且つ前記被験者の荷重を検出する4つの荷重検出器と、前記4つの荷重検出器に含まれ且つ前記ベッドを対角方向に挟んで配置された2つの荷重検出器からの検出値の大小関係の変化に基づいて前記被験者が端座位状態に至ることを予測する端座位判定部とを備える。