特許第6434597号(P6434597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッドの特許一覧

特許6434597軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護
<>
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000002
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000003
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000004
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000005
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000006
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000007
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000008
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000009
  • 特許6434597-軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434597
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構の保護
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/26 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
   G04B17/26
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-203230(P2017-203230)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-81087(P2018-81087A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】16199006.4
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・レショー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2273323(EP,A2)
【文献】 特公昭40−007878(JP,B1)
【文献】 特開昭50−127895(JP,A)
【文献】 特開2015−152402(JP,A)
【文献】 特開2016−142736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00−18/08,31/004,31/02
G04C 3/02− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(1)と、及び少なくとも1つの慣性要素(2)とを有する計時器用共振機構(100)であって、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)は、回転軸(D)のまわりを回転運動をするように振動するように構成しており、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)の慣性中心は、前記回転軸(D)上に整列しており、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)は、複数の弾性ブレード(3)によって戻し力を与えられ、
その各弾性ブレード(3)は、第1の端にて前記構造(1)に直接又は間接的に固定されており、第2の端にて前記少なくとも1つの慣性要素(2)に直接又は間接的に固定されており、
その各弾性ブレード(3)は、前記回転軸(D)に垂直な平面内にて延在し、実質的に前記回転軸(D)に垂直な前記平面内にて変形することができ、
当該共振機構(100)は、少なくとも下側の軸方向の止め(7)及び/又は上側の軸方向の止め(8)を有する軸方向の止め手段を有し、
前記軸方向の止め手段は、止め休めとして、可動な構成要素の少なくとも1つと連係するように構成しており、これによって、当該共振機構(100)を前記回転軸(D)の方向の軸方向の衝撃に対して保護し、
当該共振機構(100)は、いくつかの平行なレベルにわたって延在している複数の慣性要素(2)を有し、
当該共振機構(100)は、前記慣性要素(2)の2つの隣接したレベルの間に配置された少なくとも1つの中間的な軸方向の止めを有し、
当該共振機構(100)は、前記回転軸(D)上に整列しており前記回転軸(D)に沿って延在し前記軸方向の止め手段を担持するスタッフ(4)を有し、
前記弾性ブレード(3)にはそれぞれ、前記回転軸(D)のまわりに前記スタッフ(4)と接触せずに配置された凹部、通路又は目(6)があり、
前記スタッフ(4)は、前記下側の軸方向の止め(7)及び/又は前記上側の軸方向の止め(8)を少なくとも有する
ことを特徴とする計時器用共振機構(100)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記慣性要素(2)は、下側平面(PI)と上側平面(PS)の間に延在しており、
当該計時器用共振機構(100)は、特定の前記慣性要素(2)の前記下側平面(PI)のすぐ近くに延在している下側の軸方向の止め(7)、及び/又は特定の前記慣性要素(2)の前記上側平面(PS)のすぐ近くに延在している上側の軸方向の止め(8)を少なくとも有する軸方向の止め手段を有し、
前記軸方向の止め手段は、前記慣性要素(2)との直接接触によって特定の前記慣性要素(2)の面外変位を制限するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項3】
前記構造(1)は、同じ前記慣性要素(2)の両側にて、前記下側の軸方向の止め(7)及び前記上側の軸方向の止め(8)を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項4】
前記下側の軸方向の止め(7)及び/又は前記上側の軸方向の止め(8)は、前記回転軸(D)に垂直であり衝撃を受けたときに対応する慣性要素(2)と連係する止め面を形成する下側平面の面(17)及び上側平面の面(18)を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項5】
当該計時器用共振機構(100)は、下側の全体平面(PI)と上側の全体平面(PS)の間に延在している複数の前記慣性要素(2)を有し、
前記構造(1)は、前記下側の全体平面(PI)及び前記上側の全体平面(PS)の両側にて少なくとも1つの前記下側の軸方向の止め(7)及び少なくとも1つの前記上側の軸方向の止め(8)を有し、
前記下側の軸方向の止め(7)及び前記上側の軸方向の止め(8)はそれぞれ、最も近い前記慣性要素(2)の面外変位を制限するように構成しており、これによって、当該計時器用共振機構(100)を前記回転軸(D)の方向の軸方向の衝撃に対して保護する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項6】
前記スタッフ(4)は、前記構造(1)に固定されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項7】
前記スタッフ(4)は、当該計時器用共振機構(100)の前記慣性要素(2)に固定され、
前記スタッフ(4)に属する前記軸方向の止め手段は、止め休みとして、前記構造(1)に属する相補的な止め面と連係するように構成している
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項8】
前記スタッフ(4)の前記軸方向の止め手段は、前記構造(1)に属する上側の相補的な面(18)と連係するように構成している上側の端面(48)と、及び前記構造(1)に属する下側の相補的な面(17)と連係するように構成している下側の端面(47)を有する
ことを特徴とする請求項に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項9】
前記上側の端面(48)、前記上側の相補的な面(18)、前記下側の端面(47)及び前記下側の相補的な面(17)は、前記回転軸(D)のまわりの回転面であり、対で相補的な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項10】
当該計時器用共振機構(100)は、前記構造(1)と一体化された第1のスタッフ(4)と、及び前記慣性要素(2)と一体化された第2のスタッフ(4)とを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項11】
当該計時器用共振機構(100)は、止め接触体として、少なくとも1つの前記慣性要素(2)と連係するように構成している相補的な軸方向の止め手段を有し、
この相補的な軸方向の止め手段は、最も近い慣性要素(2)の面外変位を制限するように構成しており、これによって、当該計時器用共振機構(100)を前記回転軸(D)の方向の軸方向の衝撃に対して保護する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項12】
前記弾性ブレード(3)は、直線状であり、
前記弾性ブレード(3)が延在している方向(D1、D2)は、前記回転軸(D)に垂直な平面上への射影において、前記回転軸(D)の半径方向レベルにて交差している
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記下側の軸方向の止め(7)及び/又は前記上側の軸方向の止め(8)は、サファイア又は他の光透過性の材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項14】
前記軸方向の止め手段と前記少なくとも1つの慣性要素(2)の面の間の機械的相互作用には、前記軸方向の止め手段と前記少なくとも1つの慣性要素(2)の前記面の間の磁気的相互作用が与えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用共振機構(100)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の計時器用共振機構(100)を少なくとも1つ有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(200)。
【請求項16】
請求項15に記載のムーブメント(200)を少なくとも1つ、及び/又は
請求項1に記載の計時器用共振機構(100)
を有することを特徴とする腕時計(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造と、及び少なくとも1つの慣性要素とを有する計時器用共振機構に関する。前記少なくとも1つの慣性要素は、回転軸のまわりを回転運動をするように振動するように構成しており、前記少なくとも1つの慣性要素の慣性中心は、前記回転軸上に整列しており、前記少なくとも1つの慣性要素は、複数の弾性ブレードによって戻し力を与えられ、その各弾性ブレードは、第1の端にて前記構造に直接又は間接的に固定されており、第2の端にて前記少なくとも1つの慣性要素に直接又は間接的に固定されており、その各弾性ブレードは、前記回転軸に垂直な平面内にて延在し、実質的に前記回転軸に垂直な前記平面内にて変形することができる。当該共振機構は、少なくとも下側の軸方向の止め及び/又は上側の軸方向の止めを有する軸方向の止め手段を有し、前記軸方向の止め手段は、止め休めとして、可動な構成要素の少なくとも1つと連係するように構成しており、これによって、当該共振機構を前記回転軸の方向の軸方向の衝撃に対して保護する。
【0002】
本発明は、さらに、前記のような共振機構を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメントに関する。
【0003】
本発明は、さらに、計時器用ムーブメント及び/又は前記のような共振機構を有する腕時計に関する。
【0004】
本発明は、計時器用共振器の分野に関し、特に、発振器の作動機構のための戻し手段としてはたらく弾性ブレードを有する計時器用共振器の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
耐衝撃性は、大多数の計時器発振器、特に、交差したブレードを備える共振器にとって、重要な問題である。実際に、面外の衝撃を受けたときに、ブレードに与えられる応力が非常に重要な値まで急に達して、したがって、この部品が曲がる前に移動することができるパスを縮小する。
【0006】
計時器用の緩衝機構には、様々な変形態様がある。しかし、それらの目的は主として、シャフトの脆弱なピボットを保護することであり、古典的にはらせん状のばねのような弾性要素を保護することではない。
【0007】
ETA Manufacture Horlogere Suisse SAによる欧州特許文献EP3054357A1は、構造と、及び時間的かつ幾何学的に位相ずれしている別個の主共振器とを有する計時器用発振器について記載している。主共振器それぞれの質量は、弾性戻しによって前記構造に戻される。この発振器は、車列の運動を駆動するために駆動手段を有する主共振器どうしの相互作用のための連結手段を有し、これは、伝達手段によって連接式の制御手段を駆動しガイドするように構成している駆動及びガイド手段を有し、各伝達手段は、制御手段から離れた位置にて主共振器の質量によって連接されている。主共振器と車列は、主共振器の任意の2つの連接の軸及び制御手段の連接の軸が共面とはならないように構成している。
【0008】
SWATCH GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltdによる欧州特許文献EP3035127A1は、音叉によって形成される共振器を有する計時器用発振器について記載しており、この音叉は、フレキシブル要素によって接続要素に固定された少なくとも2つの振動する可動部分を有しており、可動部分の幾何学的構成によって、プレートに対する所定の位置の仮想回転軸を定め、この回転軸のまわりを対応する可動部品が振動し、可動部分の重心は、安定位置にて、対応する仮想回転軸上にある。
【0009】
少なくとも1つの可動部品については、フレキシブル要素は、2つの平行な平面内にある互いに離れた交差した弾性ブレードによって形成され、弾性ブレードの方向は、平行な平面上への射影において、可動部品の仮想回転軸の半径方向レベルにて交差している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ブレード式共振器のブレードの面外変位パスを制限して、システムの良好な耐久性を確実にすることを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、請求項1に記載のブレード式共振機構に関する。
【0012】
本発明は、さらに、前記のような共振機構を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメントに関する。
【0013】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント及び/又は前記のような共振機構を有する腕時計に関する。
【0014】
添付図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】弾性ブレードの2つの平行なレベルを有する弾性ブレードを備えた共振機構を備えた第1の実施形態の概略平面図であり、これらのブレードが延在する方向は、射影において、慣性要素の仮想回転軸の半径方向レベルにて交差しており、慣性要素は、前記弾性ブレードによって、固定構造から懸架されており、戻る。当該共振機構は、衝撃を受けたときにブレードを保護するための軸方向の止め手段を有する。これは、図において、回転軸を中心とする光透過性の上側ディスクと下側ディスクの2つのディスクの形態(これに限定されない)で示されている。光透過性の上側ディスクは、小さな直径を有し、上側にあり、慣性要素の振動を制限するように構成している。この特定の場合において、慣性要素は、弾性ブレードのセットを包囲し保護する箱を形成している。下側ディスクは、上側ディスクよりも大きい直径を有し、前記上側とは反対側の下側における同じ慣性要素の振動を制限するように構成している。弾性ブレードは、回転軸の半径方向レベルにて目を有し、これによって、固定構造(図示せず)上に保持されたシャフトが通り抜けることが可能になる。このシャフトは、前記上側ディスクと前記下側ディスクを担持する。
図2図1の共振機構のA−Aに沿った面の断面図である。
図3】弾性ブレードを備えた別の共振機構を備えた第2の実施形態の概略平面図である。前記弾性ブレードは、ヘッドトゥテール状に構成するRCCピボットの形態に構成している弾性ブレードの単一のレベルによって構成している。これらの弾性ブレードが延在する方向は、慣性要素の仮想回転軸の半径方向レベルにて交差しており、慣性要素は、これらの弾性ブレードによって、固定構造から懸架されており、戻される。慣性要素は、回転軸を中心とするシャフトを担持しており、その2つの自由端、すなわち、上側の自由端と下側の自由端にて、このシャフトには、上側及び下側の端面があり、これらの端面は、当該構造の相補的な上側及び下側の面と連係するように構成している。
図4図3の共振機構のB−Bに沿った面の断面図である。
図5図5〜7は、図4と同様な形態で、第2の実施形態の他の変形態様を示している。シャフトの上側及び下側の端面は、構造の上側及び下側の相補的な面に対応しており、これらの面はすべて、回転軸のまわりの回転面であり、対で相補的な輪郭を有する。図5には、構造におけるメス型シリンダーと、及びシャフトの両端におけるオス型シリンダーを有する。
図6】構造におけるメス型円錐体と、及びシャフトの両端におけるオス型円錐体とを示している。
図7】構造におけるオス型円錐体と、及びシャフトの両端におけるメス型円錐体とを示している。
図8】弾性ブレードの離れた2つのレベルが重なり合っている別の共振機構の回転軸を通り抜ける断面図である。図示した変形態様(これに限定されない)において、慣性要素は、弾性ブレードの各レベルと連係し、単一のシャフトが、異なる慣性要素どうしを接続し、共振機構の全体のために軸方向の止め手段を提供する。このシャフトには、2つの肩部があり、その一方の肩部は、上側の弾性ブレードから離れており、他方の肩部は、下側の弾性ブレードから離れている。図3〜7に示した第2の実施形態におけるように、このシャフトの両端は、固定構造の相補的な面と当接位置にて連係する。
図9】本発明に係る共振機構を有するムーブメントを有する腕時計を示しているブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、構造1と、及び回転軸Dのまわりの回転運動を行うように振動するように構成している少なくとも1つの慣性要素2とを有する計時器用共振機構100に関する。結果として得られる慣性要素2のセットの慣性中心は、回転軸Dに整列している。
【0017】
少なくとも1つの慣性要素2には、複数の弾性ブレード3によって戻し力が与えられ、各弾性ブレード3は、第1の端301において構造1に直接又は間接的に固定され、第2の端302において前記少なくとも1つの慣性要素2に直接又は間接的に固定される。
【0018】
弾性ブレード3はそれぞれ、回転軸Dに垂直な平面内にて延在し、実質的にこの回転軸Dに垂直な平面内にて変形可能である。
【0019】
慣性要素2はそれぞれ、下側基本平面PIと上側基本平面PSの間に延在している。
【0020】
共振機構100は、軸方向の止め手段を有する。この軸方向の止め手段は、下側の軸方向の止め7及び/又は上側の軸方向の止め8を有する。この軸方向の止め手段は、止め休めとして、可動な構成要素の少なくとも1つと連係するように構成しており、これによって、回転軸Dの方向の軸方向の衝撃に対して、ブレード式共振機構100、特に、ブレード式共振機構100に属する弾性ブレード3を保護する。
【0021】
特に、この軸方向の止め手段は、特定の慣性要素2の下側基本平面PIのすぐ近くに延在しておりこの特定の慣性要素2の面外変位を制限するように構成している下側の軸方向の止め7、及び/又は前記特定の慣性要素2の上側基本平面PSのすぐ近くに延在しており前記特定の慣性要素2の面外変位をこの慣性要素2と直接接触することによって制限するように構成している上側の軸方向の止め8を有する。以下において、慣性要素2と直接接触するように構成しているこれらの特定の軸方向の止めにはそれぞれ、参照符号73及び83を与える。
【0022】
実際に、止め休めとして弾性ブレード3と直接連係するように構成している軸方向の止めを配置することを想到することができるが、このような連係は、ケイ素などの微細加工可能な材料によって作られた弾性ブレードに対しては適切ではない。なぜなら、劣化又は損傷のリスクがあるためである。これは、本発明の軸方向の止め手段が、好ましくは、慣性要素やスタッフのような剛体要素と連係するように構成している理由である。
【0023】
特に、共振機構100は、同じ慣性要素2の両側に、前記下側の軸方向の止め7及び前記上側の軸方向の止め8を有する。
【0024】
特定の変形態様において、下側の軸方向の止め7及び/又は上側の軸方向の止め8は、衝撃を受けたときなどに関心事の慣性要素2と連係する止め面を形成する、回転軸Dに垂直である下側の平面の面17又は上側の平面の面18を有する。
【0025】
特に、共振機構100は、下側の全体平面PIと上側の全体平面PSの間に延在している、複数の前記慣性要素2を有する。
【0026】
特に、共振機構100は、下側の全体平面PI及び上側の全体平面PSの両側にて、少なくとも1つの下側の軸方向の止め7及び少なくとも1つの上側の軸方向の止め8を有し、これらのそれぞれは、最も近い慣性要素の面外変位を制限するように構成しており、これによって、回転軸Dの方向の軸方向の衝撃に対するブレード式共振機構100を保護する。
【0027】
本発明によると、共振機構100は、いくつかの平行なレベルにわたって延在している複数の慣性要素2を有する。特に、共振機構100は、慣性要素2の2つの隣接するレベルの間に配置された少なくとも1つの中間的な軸方向の止めを有する。特に、前記のような2つのレベルの間の各間隙において、少なくとも1つの中間的な軸方向の止めが配置されている。
【0028】
特に、共振機構100は、弾性ブレード3の複数のレベルを有し、これらはすべて、これらの弾性ブレード3を保護する慣性要素2の2つの極端な上側及び下側のレベルにて延在している。
【0029】
特に、スタッフ4は、軸方向の止め手段のすべて又は一部を支持する。このスタッフ4は、回転軸Dと整列しており、この回転軸Dに沿って延在している。すべての干渉及びすべての摩擦を回避するために、少なくとも1つの弾性ブレード3には、回転軸Dのまわりでスタッフ4と接触しないように構成している凹部、通路又は目6がある。このスタッフには、さらに、少なくとも下側の軸方向の止め7又は上側の軸方向の止め8がある。特に、このスタッフ4には、同時に、少なくとも1つの下側の軸方向の止め7及び少なくとも1つの上側の軸方向の止め8がある。
【0030】
特に、各弾性ブレード3には、前記のような凹部、前記のような通路又は前記のような目6があり、スタッフ4は、ブレード3のすべてのレベルを通り抜ける。
【0031】
当然、共振機構100が平行で離れたレベルにわたって分布する慣性要素2を有する場合、スタッフ4が少なくとも1つの中間的な止めを有し、このレベルの対の間に、前記のような中間的な軸方向の止めを配置することができる。
【0032】
第1の実施形態において、このスタッフ4は、構造1に固定され、この構造1自身に、少なくとも1つの軸方向の止め面を設けることができる。
【0033】
図1及び2には、この第1の実施形態を示している。弾性ブレードを備えた共振機構100には、上側の弾性ブレード31及び下側の弾性ブレード32の平行な2つのレベルがある。これらの弾性ブレード31及び32はそれぞれ、前記2つのレベルと平行な平面上への射影において、仮想回転軸Dの半径方向レベルにて交差している方向D1及びD2に延在しており、この仮想回転軸Dのまわりを慣性要素2が振動し、慣性要素2は、前記弾性ブレード31及び32によって固定構造1から懸架され、戻される。共振機構100には、衝撃を受けたときにブレード31及び32を間接的に保護するために、軸方向の止め手段がある。軸方向の止め手段は、回転軸Dを中心とする上側ディスクと下側ディスクの2つのディスクの形態(これに限定されない)で図示されている。上側ディスクは、小さい直径を有し、特に、光透過性であり(これに限定されない)、同様に光透過性の軸の部分を有する慣性要素2に連結している。この軸の部分は、ブレードの状態を検証することを可能にし、上側に、慣性要素2の振動を制限するように構成している上側の軸方向の止め8を形成している。下側ディスクは、上側ディスクよりも大きい直径を有し、前記上側とは反対側の下側にて慣性要素2の振動を制限するように構成している下側の軸方向の止め7を形成している。ブレード31及び32はそれぞれ、回転軸Dの半径方向レベルにて目6を有する。これによって、スタッフ4の通過が可能になる。ここで、スタッフ4は、固定構造に対して保持され、前記上側ディスクと前記下側ディスクを支持する。
【0034】
第2の実施形態において、このスタッフ4は、共振機構100の慣性要素2に固定され、このスタッフ4に属する軸方向の止め手段は、止め休めとして、構造1に属する相補的な止め面と連係するように構成している。特に、軸方向の止め手段は、構造1の上側の相補的な面18と連係する上側の端面48と、及び下側の相補的な面17と連係する下側の端面47を有する。
【0035】
図3及び4は、この実施形態を示している。ここで、共振機構100は、単一のレベルの弾性ブレード3を有する。これは、ヘッドトゥテール状に構成しているRCCピボットの形態に構成しており、前記弾性ブレード3が延在している方向D1及びD2は、慣性要素2の仮想回転軸の半径方向レベルにて交差するように延在している。慣性要素2は、これらの弾性ブレード3によって、固定構造1から懸架され、戻される。慣性要素2は、回転軸Dを中心とするスタッフ4を支持し、その2つの自由な上側及び下側の端にて、このスタッフ4は、上側の端面48及び下側の端面47を有し、これらはそれぞれ、構造1の上側の相補的な面18及び下側の相補的な面17と連係するように構成している。この変形態様において、慣性要素2は、さらに、組み立て時に慣性要素と弾性ブレード3の間の距離を調整するために有用である別の上側の軸方向の止め83を有する。
【0036】
特定の実施形態において、図5〜7にて明らかなように、これらの上側の端面48、上側の相補的な面18、下側の端面47及び下側の相補的な面17は、回転軸Dのまわりの回転面であり、以下のように、対どうしで相補的な輪郭を有する。すなわち、オス型及びメス型の円筒形、オス型及びメス型の円錐体のようにである。このことによって、半径方向のパスが制限され、また、前記回転軸D上への再センタリングが可能になる。
【0037】
当然、共振機構100は、構造1と一体化された第1のスタッフ4と、及び慣性要素2と一体化された第2のスタッフ4とを有することもできる。
【0038】
特定の実施形態において、弾性ブレード3は、直線状である。特に、弾性ブレード3が延在している方向D1、D2は、回転軸Dに垂直な平面上への射影において、回転軸Dの半径方向レベルにて交差している。
【0039】
特定の実施形態において、少なくとも1つの下側の軸方向の止め7又は上側の軸方向の止め8は、サファイア又は他の光透過性の材料によって作られている。
【0040】
変形態様の1つにおいて、慣性要素2が複数ある場合に、共振機構100は、各慣性要素2と連係するために、止め接触体として、相補的な軸方向の止め手段を有し、この相補的な軸方向の止め手段は、最も近い慣性要素2の面外変位を制限するように構成している。特に、共振機構100に属する慣性要素2のセットの両側において、この共振機構100は、少なくとも1つの下側の軸方向の止め7及び少なくとも1つの上側の軸方向の止め8を有し、これらの各止めは、最も近い慣性要素2の面外変位を制限するように構成している。
【0041】
特に、図3の構成は、ヘッドトゥテール状に構成しているV字形のブレードを備えたダブルRCCピボットタイプの共振機構100に関するが、軸ゾーンを空かせるフレキシブルなブレードピボットの他の幾何学的構成にも、本発明を実装することができる。これは、重なり合ったブレードを備え、それらのブレードの平面と平行な平面上への射影において、回転軸Dの半径方向レベルにてブレードが交差している図1の構成のようにである。
【0042】
ブレード式共振器の構成はしばしば、回転軸のまわりのゾーンからの解放を可能にし、このことによって、ブレードの仮想回転軸Dを通り抜けるスタッフ4を単純に追加することが可能になる。特に、このダブルRCC(リモートセンターコンプライアンス)ピボット構成によって空いた空間によって、軸方向の止め手段を有する前記のようなスタッフ4を追加することが可能になる。
【0043】
特定の変形態様、特に、図4に示す態様において、スタッフは、慣性要素2と一体化されている。これは、一般的には、弾性ブレード3に属するケイ素などで作られたモノリシックな構成要素に取り付けられる。
【0044】
図3の変形態様は、上側の相補的な面18を担持する上側の止め180、及び下側の相補的な面17を担持する下側の止め170を有し、これらは、構造1の内部、例えば、ブリッジやプレート、に押し込まれる。これによって、止めとスタッフの間の距離Jの精密な調整が可能になる。この調整は、好ましくは、20〜70μmの範囲の調整である。しかし、これらの止めを、共振器の支持体(プレート及び/又はブリッジ)と単一部品となるように形成することもできる。ただし、この構成要素を精密に製造する必要がある。また、前記止めを、ねじキャリッジのような精密調整システムにねじ込んだりマウントしたりすることも想到することもできる。
【0045】
これらの止めの材料は、金属又はエラストマーであることができ、これによって、衝撃の緩和を変化させる。
【0046】
変形態様の1つにおいて、このような止めと、慣性要素又はスタッフとの機械的相互作用を、当接するように構成している要素、例えば、図5〜7における面18と面48及び面17と面47のそれぞれ、の間に磁気的相互作用を発生するようにして完成させることができる。この場合、この磁気的相互作用は、緩衝パッドを形成することを伴う。
【0047】
回転軸Dと関連して、止め上に置かれる場合、摩擦に関して、小さな接触半径(止めが回転軸に近い場合)上に設けられた接触体が好ましく、図示した変形態様は、さらに、回転軸Dの非常に近くに止めを有する。当然、より大きな半径上に止めを配置することもできる。例えば、慣性アーム又のリムなどの上にである。
【0048】
図5〜7にて明らかなように、他の構成によって、安全手段を異なる方向に加えて、弾性ブレードの耐衝撃性をさらに改善することができる。
【0049】
図8は、同じ共振器におけるいくつかのレベルの弾性ブレード3の重ね合わせを示しており、その各レベルは、慣性要素2と、又は少なくとも慣性要素2の特定のレベルに慣性要素2に関連づけられている。図示した変形態様(これに限定されない)において、慣性要素2は、弾性ブレード3の各レベルと連係し、単一のスタッフ4は、異なる慣性要素を接続し、そして、共振機構100全体のために軸止め手段を提供する。この変形態様において、このスタッフ4は、2つの肩部を有し、その一方の肩部は、組み立て時に上側の弾性ブレード32との距離調整のための下側の軸方向の止め73を形成し、他方の肩部は、同様な形態で、下側の弾性ブレード32との距離調整のための上側の軸方向の止め83を形成する。
【0050】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のような共振機構100を有する計時器用ムーブメント200に関する。
【0051】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント200及び/又は前記のような共振機構100を有する腕時計300に関する。
【符号の説明】
【0052】
1 構造
2 慣性要素
3 弾性ブレード
4 スタッフ
6 目
7、8 軸方向の止め
17、18 相補的な面
18 上側の相補的な面
47 下側の端面
48 上側の端面
100 共振機構
200 ムーブメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9