(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434605
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】複数のディスプレーの双方向性変更のための計時器用機構
(51)【国際特許分類】
G04B 27/06 20060101AFI20181126BHJP
G04B 19/25 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
G04B27/06
!G04B19/25 N
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-228590(P2017-228590)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-91842(P2018-91842A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年11月29日
(31)【優先権主張番号】16202484.8
(32)【優先日】2016年12月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・サグリーニ
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−219236(JP,A)
【文献】
特開平11−183649(JP,A)
【文献】
実開昭52−063068(JP,U)
【文献】
米国特許第02669832(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/25,27/00−27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のギヤ列(321)と第2のギヤ列(322)の位置を変更する双方向性変更機構(300)であって、
当該変更機構(300)は、セッティング手段に対するユーザーによる作用によって制御されるように構成しており、
当該変更機構(300)は、前記セッティング手段によって制御されるように構成している変更ピニオン(310)を有し、前記変更ピニオン(310)にあるメインアーバー(330)のまわりを前記変更ピニオン(310)と同軸にて回転する変更レバー(303)を有し、
前記変更レバー(303)は、前記変更ピニオン(310)と噛み合い前記第1のギヤ列(321)を駆動するように構成している第1の中間車セット(311)と、及び前記変更ピニオン(310)と噛み合い前記第2のギヤ列(322)を駆動するように構成している第2の中間車セット(312)とを担持しており、
前記変更機構(300)は、前記セッティング手段に対するユーザーによる作用がないときに前記変更レバー(303)を中立位置に戻すように構成している少なくとも1つの弾性要素(305)を有し、
前記第1の中間車セット(311)は、前記第1のギヤ列(321)から分離されており、前記第2の中間車セット(312)は、前記第2のギヤ列(322)から分離されており、
当該変更機構(300)には、少なくとも、前記変更レバー(303)と、前記変更ピニオン(310)の前記メインアーバー(330)との間の摩擦接続、又は前記弾性要素(305)と、前記第1の中間車セット(311)と前記第2の中間車セット(312)との間の摩擦接続のいずれかがあり、
当該変更機構(300)には、前記変更レバー(303)と、前記変更ピニオン(310)の前記メインアーバー(330)との間の前記摩擦接続、又は前記弾性要素(305)と、第1の側における前記第1の中間車セット(311)が備える第1のアーバー(331)及び第2の側における前記第2の中間車セット(312)が備える第2のアーバー(332)との間の摩擦接続があり、
前記第1の中間車セット(311)の前記第1のアーバー(331)、又は前記第2の中間車セット(312)の前記第2のアーバー(332)が、止め位置に到達すると、対応する摩擦接続がスライドして、対応するスライド用中間車セット(311、312)がそれぞれ、前記第1のギヤ列(321)又は前記第2のギヤ列(322)と噛み合って、自由に回転することができる
ことを特徴とする変更機構(300)。
【請求項2】
当該変更機構(300)は、第1の長穴(71)と第2の長穴(72)があるプレート(7)を有し、
前記第1の長穴(71)と前記第2の長穴(72)には、前記第1の中間車セット(311)にある第1のアーバー(331)と前記第2の中間車セット(312)にある第2のアーバー(332)がそれぞれガイドされ、
前記中間車セット(311、312)はそれぞれ、そのアーバー(331、332)が、中を動く前記長穴(71、72)の端にて止められるときに、前記第1のギヤ列(321)又は前記第2のギヤ列(322)と係合する位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載の変更機構(300)。
【請求項3】
当該変更機構(300)には、前記変更レバー(303)と、前記変更ピニオン(310)の前記メインアーバー(330)との間の前記摩擦接続、及び前記弾性要素(305)と、前記第1の中間車セット(311)と前記第2の中間車セット(312)との間の前記摩擦接続の両方がある
ことを特徴とする請求項1に記載の変更機構(300)。
【請求項4】
前記弾性要素(305)は、前記変更レバー(303)の縁部に当接するばね(304)であり、これによって、前記第1の中間車セット(311)にある第1のアーバー(331)及び前記第2の中間車セット(312)にある第2のアーバー(332)と、前記変更レバー(303)にあるそれらのハウジングとの摩擦が発生する
ことを特徴とする請求項1に記載の変更機構(300)。
【請求項5】
前記変更レバー(303)は、摩擦はさみ口(3030、3031、3032)によって、前記メインアーバー(330)に接するクランプと、前記第1の中間車セット(311)にある第1のアーバー(33)に接するクランプと、及び前記第2の中間車セット(312)にある第2のアーバー(332)に接するクランプを形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の変更機構(300)。
【請求項6】
前記弾性要素(305)は、その端において突き出ているスタッド(306)を担持するブレードを有するばね(304)であり、
前記スタッド(306)は、前記第1の中間車セット(311)と前記第2の中間車セット(312)にある歯の縁部を直接こするように構成している。
ことを特徴とする請求項1に記載の変更機構(300)。
【請求項7】
少なくとも第1のギヤ列(321)、第2のギヤ列(322)及びセッティング手段を有する計時器用ムーブメント(1000)であって、
前記セッティング手段によって制御され、前記第1のギヤ列(321)と前記第2のギヤ列(322)の位置を変更するように構成している請求項1に記載の変更機構(300)を有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(1000)。
【請求項8】
前記セッティング手段は、巻き及び時刻設定用のステムである。
ことを特徴とする請求項7に記載の計時器用ムーブメント(1000)。
【請求項9】
請求項7に記載の計時器用ムーブメント(1000)及び/又は請求項1に記載の変更機構(300)を有する
ことを特徴とする腕時計(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも第1のギヤ列と第2のギヤ列の位置を変更する双方向性変更機構に関する。当該変更機構は、セッティング手段に対するユーザーによる作用によって制御されるように構成しており、当該変更機構は、前記セッティング手段によって制御されるように構成している変更ピニオンを有し、前記変更ピニオンにあるメインアーバーのまわりを前記変更ピニオンと同軸にて回転する変更レバーを有し、前記変更レバーは、前記変更ピニオンと噛み合い前記第1のギヤ列を駆動するように構成している第1の中間車セットと、及び前記変更ピニオンと噛み合い前記第2のギヤ列を駆動するように構成している第2の中間車セットとを担持している。
【0002】
本発明は、さらに、前記のような計時器用制御機構によって制御される複数のディスプレーを有するディスプレー機構に関する。
【0003】
本発明は、さらに、前記のようなディスプレー機構又は前記のような計時器用変更機構を有する計時器用ムーブメントに関する。
【0004】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント、前記のようなディスプレー機構、又は前記のような計時器用変更機構を有する腕時計に関する。
【0005】
本発明は、計時器ディスプレー機構の分野に関する。
【背景技術】
【0006】
複雑な計時器では、多くの機構がジャンパーばねによって適切な位置に保持される車セットを有している。日付が変わるときにしばしば位置が変わり、その瞬間において駆動手段は相当に大きいエネルギースパイクを供給する必要がある。また、変更を行うために時刻が問題になることがある。多くの機構において、変更を22:00〜24:00に行うことは推奨されていない。
【0007】
SEIKOによる米国特許US6295249B1は、計時器用の変更デバイスを開示している。これは、巻きステムを回転させることによって制御することができるセッティング車を有する。レバーは、セッティング車の回転中心の軸線と一致する軸線上に回転中心を有し、第1の回転運動の向き及び第1の回転運動の向きとは異なる第2の回転運動の向きの揺れ運動をムーブメントに対してするようにマウントされる。レバーは、回転中心から第1の方向に延在する第1の部分と、及びその回転中心から第2の方向に延在する第2の部分とを有する。レバーの第1の部分に少なくとも第1の変更伝達車が配置されて、セッティング車の回転に応じて回転する。揺れプレートの第2の部分に少なくとも第2の変更伝達車が配置されて、セッティング車の回転に応じて回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特定の時間値におけるディスプレーの周期的駆動に関連するエネルギー消費を1日にわたって分散させることは有利である。
【0009】
本発明は、少ない数の部品しかなくいつでも変更を容易に行うことができる単純で信頼できるシステムによって、いくつかのディスプレーを管理することができるユニークな制御機構を開発することを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、請求項1に記載の複数のディスプレーの双方向性変更のための計時器用機構に関する。
【0011】
本発明は、さらに、前記のような計時器用変更機構によって制御される複数のディスプレーを有するディスプレー機構に関する。
【0012】
本発明は、さらに、前記のようなディスプレー機構又は前記のような計時器用変更機構を有する計時器用ムーブメントに関する。
【0013】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント、前記のようなディスプレー機構、又は前記のような計時器用変更機構を有する腕時計に関する。
【0014】
添付図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点を理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】2つの別個のディスプレーを備えたディスプレー機構を有する計時器用ムーブメントの部分的な概略平面図である。このディスプレー機構の入力ギヤ列は、前記の2つのディスプレーの位置を変更するように構成している本発明に係る迅速変更機構の両側に配置され、スライド用ギヤを担持する変更レバーを中立位置に戻す弾性戻し手段を有し、単一の正中ばねを有する。
【
図2】
図1と同様な図であり、変更機構が中立位置にある。
【
図3】
図2と同様な図であり、図の上部に示した第1のギヤ列を変更する位置にある。
【
図4】
図2と同様な図であり、図の下部に示した第2のギヤ列を変更する位置にある。
【
図5】
図1と同じ機構についての
図1の上側の切断線に沿った断面図であり、第1のギヤ列と連係するように構成している第1の中間車セットの詳細を示している。
【
図6】
図1と同じ機構についての
図1の下側の切断線に沿った断面図であり、第2のギヤ列と連係するように構成している第2の中間車セットの詳細を示している。
【
図7】中立位置に戻す弾性戻し手段を有する変形態様についての
図1と同様な図であり、この弾性戻し手段は、変更レバーを包囲している。
【
図8】中立位置に戻す弾性戻し手段を有する別の変形態様についての
図1と同様な図であり、スライド用ピニオンの歯の縁部をこするように構成しているスタッドが設けられている。
【
図9】前記のようなディスプレー機構と、2つの別個のディスプレーを制御する前記のような計時器用機構と、及びこれらの2つのディスプレーを変更する前記のような機構とを備える前記のような計時器用ムーブメントを有する腕時計を示しているブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、計時器用の双方向性変更機構300に関し、これは、制御ステムのようなセッティング手段に対するユーザーの作用によって制御されるように構成しており、このセッティング手段は、変更ピニオン310に作用して、変更ピニオン310を一方向又は反対方向に回転させる。
【0017】
この双方向性変更機構300は、少なくとも第1のギヤ列321と第2のギヤ列322の位置を変更するように構成しており、前記のようなセッティング手段に対するユーザーの作用によって制御されるように構成している。
【0018】
この機構300は、前記セッティング手段によって制御されるように構成している変更ピニオン310を有し、変更ピニオン310にあるメインアーバー330のまわりを変更ピニオン310と同軸に回転する変更レバー303を有する。
【0019】
この変更レバー303は、変更ピニオン310と噛み合い第1のギヤ列321を駆動するように構成している第1の中間車セット311と、及び変更ピニオン310と噛み合い第2のギヤ列322を駆動するように構成している第2の中間車セット312とを担持している。
【0020】
本発明によると、この変更機構300は、少なくとも1つの弾性要素305を有し、これは、セッティング手段に対するユーザーによる作用がないときには、変更レバー303を中立位置に戻すように構成している。この中立位置においては、第1の中間車セット311は第1のギヤ列321から分離されており、第2の中間車セット312は第2のギヤ列322から分離されている。この双方向性変更機構300には、少なくとも、変更レバー303と、変更ピニオン310のメインアーバー330との間の摩擦接続、又は弾性要素305と、第1の中間車セット311と第2の中間車セット312との間の摩擦接続のいずれかがある。
【0021】
特に、この双方向性変更機構300には、変更レバー303と、変更ピニオン310のメインアーバー330との間の摩擦接続と、及び弾性要素305と、第1の中間車セット311と第2の中間車セット312との間の摩擦接続との両方がある。
【0022】
特に、この双方向性変更機構300には、変更レバー303と、変更ピニオン310のメインアーバー330との間の摩擦接続と、及び弾性要素305と、第1の側における第1の中間車セット311の第1のアーバー331と第2の側における第2の中間車セット312の第2のアーバー332との間の摩擦接続とがある。
【0023】
第1の中間車セット311の第1のアーバー331又は第2の中間車セット312の第2のアーバー332が止め位置に到達すると、対応する摩擦接続がスライドして、対応するスライド用中間車セット311又は312が、第1のギヤ列321又は第2のギヤ列322とそれぞれ噛み合って、自由に回転することができる。
【0024】
摩擦の結果、第1の中間車セット311と第2の中間車セット312は回転し、変更レバー303が行う回転運動の向きに応じて、その変更連鎖に近づき又はその変更連鎖から遠ざかる。実際に、双方向性変更機構300は、第1の長穴71と第2の長穴72があるプレート7を有し、この第1の長穴71と第2の長穴72の中にはそれぞれ、第1の中間車セット311の第1のアーバー331及び第2の中間車セット312の第2のアーバー332がガイドされ、各中間車セット311、312はそれぞれ、そのアーバー331、332が、中を動く長穴71、72の端にて止められているときに、第1のギヤ列321又は第2のギヤ列322と噛み合う位置にある。この止められた位置において、摩擦接続がスライドして、可動なスライド用中間車セット311、312を自由にいつでも回転させることができる。
【0025】
セッティング手段に対する作用がないときに変更レバー303を中立位置に戻すことの利点は、このことによって、スライド用ギヤがギヤ列に引き続き接しているときに発生することになる摩擦を抑えることができるということである。別の利点は、セッティング手段が腕時計の制御ステムによって形成されている場合に、不注意な変更が避けられるようにセッティング手段が隔離されるということである。
【0026】
弾性要素315とアーバー331及び332の間のこの摩擦接続は、
図7に示すように、直接的に達成することができる。
図7においては、弾性要素305は、変更レバー303の縁部に当接するばね304であり、これによって、アーバー331及び332がレバー303におけるそれらのハウジングにこすれるようにする。
【0027】
弾性要素と、アーバー331及び332との間の摩擦接続は、好ましいことに、
図1に示すように又は
図8の変形態様に示すように、直接的に行うようにすることができる。この
図1においては、変更レバー303が、摩擦はさみ口3030、3031、3032によって、3つのアーバー330、331及び332のそれぞれに対するクランプを形成している。
図8の変形態様においては、弾性要素305は、ばね304であり、このばね304の両端においては、突き出ているスタッド306を担持しているブレードを有しており、このスタッド306は、第1の中間車セット311と第2の中間車セット312の歯の縁部を直接こするように構成している。
【0028】
ユーザーがセッティング手段に作用するのを止めると、弾性要素305は、第1の中間車セット311と第2の中間車セット312を中立位置に戻す。
【0029】
前記のような双方向性変更機構300は、非常に薄く、特に、変更しようとする月の相のディスプレー機構又は日付ディスプレー機構よりも厚くない。双方向性変更機構300は、総厚みが1.6mmであるように作ることができる。
【0030】
本発明は、さらに、少なくとも別個の第1のディスプレー10と第2のディスプレー20を含む複数のディスプレーを有するディスプレー機構200に関し、第1のディスプレー10は、第1のギヤ列321を有し、第2のディスプレー20は、第2のギヤ列322を有する。ディスプレー機構200は、前記のような双方向性変更機構300を有し、制御ステムのようなセッティング手段に対するユーザーによる作用によって制御されるように構成しており、このセッティング手段は、変更ピニオン310に作用して、変更ピニオン310を一方又は他方の方向に回転させる。
【0031】
本発明は、さらに、前記のようなディスプレー機構200及び/又は前記のような計時器用制御機構100を有する計時器用ムーブメント1000に関する。このムーブメント1000は、計時器用制御機構100を駆動するように構成している駆動車セット1を有する駆動手段を有する。また、ムーブメント1000は、セッティング手段又はプッシャ、引き出し部品のようなセッティング手段を形成することができる別の制御手段を形成する巻き及び時刻設定用の制御ステムを有する。
【0032】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント1000及び/又は前記のようなディスプレー機構200及び/又は前記のような計時器用制御機構100を有する腕時計2000に関する。
【符号の説明】
【0033】
10 第1のディスプレー
20 第2のディスプレー
33 第1のアーバー
71 第1の長穴
72 第2の長穴
100 計時器用制御機構
200 ディスプレー機構
300 変更機構
303 変更レバー
304 ばね
305 弾性要素
306 スタッド
310 変更ピニオン
311 第1の中間車セット
312 第2の中間車セット
321 第1のギヤ列
322 第2のギヤ列
330 メインアーバー
331 第1のアーバー
332 第2のアーバー
1000 計時器用ムーブメント
2000 腕時計
3030、3031、3032 摩擦はさみ口