(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記姿勢変換機構は、前記第1のスライダに設置された第1のラックギア、第1の軸受、第1のピニオンギア、及び第1のプッシャと、前記第2のスライダに設置された第2のラックギア、第2の軸受、第2のピニオンギア、及び第2のプッシャとを備え、
前記把持機構は、前記第1及び第2のピニオンギアそれぞれに取り付けられ、
前記第1及び第2のピニオンギアそれぞれは、前記第1及び第2の軸受に支持され、前記第1及び第2のラックギアと噛み合うように設置され、
前記第1のラックギアは、前記相対距離に応じた前記第2のプッシャからの作用を受けて動作し、前記第2のラックギアは、前記相対距離に応じて前記第1のプッシャから作用を受けて動作し、
前記第1のピニオンギアが前記第1のラックギアの動作に応じて回転し、前記第2のピニオンギアが前記第2のラックギアの動作に応じて回転することにより、前記把持機構に把持されたワークの姿勢が変換される、ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
所定の作業工程を行う複数の加工装置が設置され、前記複数の加工装置の間におけるワークの搬送のために請求項1乃至8のいずれか1項に記載の搬送システムを設けたことを特徴とする加工システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に関して図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の搬送システム100を備えた加工システム1の概略構成図である。
【0012】
ここで、
図1に示すように、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の搬送方向に沿ってX軸をとり、搬送モジュール103を載せる架台107に対して鉛直方向をZ軸とし、X軸及びZ軸と直交する軸をY軸とする。つまり、Y軸は、X軸に直交かつ水平な軸である。
【0013】
図1の加工システム1では、ワークWに対する部品組付、材料の塗布等の作業工程を行う加工装置101、102が所定の間隔をおいて設置され、加工装置101、102間のワークWの搬送を行う搬送システム100が配設されている。なお、説明を簡単にするために、
図1の加工システム1では複数の作業工程の一部を行う2つの加工装置101、102が示されているが、加工装置の数はこれに限定されない。
【0014】
搬送システム100は、架台107上に互いに連結して配置された複数の搬送モジュール103からなる搬送路110と、搬送路110上を移動する1つ又は複数の対の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105を有する。本実施形態では、搬送スライダ104は、把持機構106によりワークWを把持し、搬送スライダ104(第1のスライダ)及び姿勢変換スライダ105(第2のスライダ)の2台が対となりワークWの搬送を行う。
【0015】
なお、
図1では、5つの搬送モジュール103a〜103eからなる搬送路110と、一対の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105とを示しているが、これに限定されるものではない。また、搬送スライダ104a及び姿勢変換スライダ105aは、ワークWが加工装置101で加工されている状態を表し、搬送スライダ104b及びワーク姿勢変換スライダ105bは、ワークWが加工装置102で加工されている状態を表す。
【0016】
加工システム1では、ワークWは、搬送スライダ104上で把持されたまま加工装置により加工される。加工装置101でWの加工面W1に対する作業工程が終了すると、ワークWは、搬送モジュール103上を次の作業工程を行う加工装置102に搬送され、加工装置102でワークWの加工面W2に対する作業工程が行われる。加工装置101による作業工程と加工装置102による作業工程では、それぞれワークWの加工面W1、W2が異なる。
【0017】
ワークWは、搬送スライダ104上で異なる姿勢を取ることにより異なる加工面への部品組付けや塗布等の作業が加工装置により行われる。
図1の構成では、各作業工程においてワークWの加工面W1、W2に所定の作業を行うために、ワークWは、加工装置101による作業工程ではZ軸に対する角度θ1傾けられ、加工装置102による作業工程ではZ軸に対する角度θ2傾けられる。
【0018】
続いて、
図2を用いて、搬送モジュール103、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の構成について説明する。
【0019】
図2(A)は、搬送システム100の概略構成図であり、
図2(B)は、スライダ200をY軸方向から見た図であり、そして
図2(C)は搬送モジュール103及びスライダ200をX軸方向から見た図である。
【0020】
図2では説明を簡単にするために、搬送モジュール103として2つの搬送モジュール103a、103bを示し、下位コントローラ220としてそれぞれ搬送モジュール103a、103bの制御を担当する下位コントローラ220a、220bを示している。また、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105に共通する構成をスライダ200で表している。
【0021】
図2(A)に示すように、各搬送モジュール103は、モジュール筺体212、エンコーダ202、コイル群203及びガイドレール204を備えている。各搬送モジュール103のエンコーダ202及びコイル群203には下位コントローラ220が接続され、複数の下位コントローラ220は、ネットワーク221を通じて互いに接続されている。上位コントローラ222は、ネットワーク221を通じて複数の下位コントローラ220a、220bに接続され、複数の下位コントローラ220a、220bの制御を担当する。加工システム1では、上位コントローラ222が加工装置101、102の制御を担当する加工装置コントローラ(不図示)と協働して機能することで、ワークWの加工及び搬送が首尾よく行われるようになっている。
【0022】
図2(B)及び
図2(C)に示すように、スライダ200は、天板205、スケール206、複数の永久磁石207、永久磁石ブラケット208、所定の機構209、スケールブラケット210、及びガイドブロック211を備えている。言い換えると、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の両方は、天板205、スケール206、複数の永久磁石207、永久磁石ブラケット208、所定の機構209、スケールブラケット210、及びガイドブロック211を備えている。所定の機構209として、搬送スライダ104の天板205上には把持機構106が取り付けられ、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の天板205上には後述する姿勢変換機構が取りつけられる。
【0023】
スライダ200のガイドブロック211は、搬送モジュール103のガイドレール204に案内されて、スライダ200は、複数の搬送モジュール103からなる搬送路110に沿って移動する。スライダ200のスケール206は、スケールブラケット210を介して天板205に取り付けられている。
【0024】
スライダ200の永久磁石ブラケット208に取り付けられている永久磁石207と、モジュール筺体212のコイル群203との間で電磁力が発生し、スライダ200は、電磁力による駆動力を受けて、搬送路110に沿って移動することができる。
【0025】
搬送モジュール103のエンコーダ202は、スライダ200のスケール206との間のギャップが一定となるようにモジュール筺体212に取り付けられ、下位コントローラ220と通信可能に接続されている。エンコーダ202は、スケール206のパターンを読み取ることによりスライダ200のX方向の位置(X位置)をエンコーダ202からの相対位置として検出し、スライダ200の位置情報を下位コントローラ220に出力する。また、下位コントローラ220は、ネットワーク221を介して上位コントローラ222と情報をやり取りし、エンコーダ202からのスライダ200の位置情報等を上位コントローラ222に送信する。
【0026】
なお、
図2(A)では、1つの搬送モジュール103につき、3つのエンコーダ202a〜202cが所定の間隔をあけてモジュール筐体212に取り付けられているが、エンコーダの数はこれに限定されるものではない。
【0027】
エンコーダ202の数及び配置位置は、スライダ200が搬送モジュール103上のどの位置にあっても検出できるよう適宜調節される。
【0028】
下位コントローラ220は、担当する搬送モジュール103のエンコーダ204の出力、及びエンコーダ202の位置から担当する搬送モジュール103上におけるスライダ200の位置を算出する。また、下位コントローラ220は、電源(不図示)に接続され、担当する搬送モジュール103のコイル群203に印加する電流量を制御し、永久磁石207とコイル群203との間に発生する電磁力を調整する。このようにして、下位コントローラ220は、スライダ200を所定の位置まで所定の速度で搬送して停止させることができる。
【0029】
また、下位コントローラ220は、隣接する搬送モジュール103から担当する搬送モジュール103にスライダ200が進入してきたことをエンコーダ202によって検知し、担当する搬送モジュール103上にあるスライダ200の制御を引き継ぐ。制御を引き継いだ下位コントローラ220は、担当する搬送モジュール103上で所定の位置まで所定の速度で搬送したり、停止させたりといったスライダ200の制御を行う。
【0030】
上位コントローラ222は、スライダ200の搬送に関する制御指令を下位コントローラ220に送信し、下位コントローラ220を介して複数のスライダ200の制御を行う。下位コントローラ220は、上位コントローラ222からの制御指令を基に、担当する搬送モジュール103のコイル群203に印加する電流量を調整し、担当する搬送モジュール103上にある又は進入してきたスライダ200の駆動制御を行う。
【0031】
このように、上位コントローラ222は、下位コントローラ220を介して、各スライダ200の搬送を制御する。なお、下位コントローラ220と上位コントローラ222とを合わせて搬送制御装置230と称し、搬送制御装置230は、下位コントローラ220及び上位コントローラ222の両方の機能を実現する。
【0032】
図3は、搬送路110上の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105をY軸方向から見た図である。搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の天板205上には、ワークWの姿勢変換機構が設けられている。本実施形態の姿勢変換機構は、ガイド301、ラックギア302、軸受303、ピニオンギア304、ロッドエンド305、及びロッドエンド取付部306からなる。
【0033】
搬送スライダ104の天板205上には搬送路110の搬送方向と平行にガイド301が設置され、ガイド301上にラックギア302が設置されている。また、搬送スライダ104の天板205上にラックギア302と噛み合うように軸受303とピニオンギア304が設置されている。ピニオンギア304は、軸受303に支持されており、ラックギア302がX軸に沿って動くことによりY軸の周りに回転する。
【0034】
また、ピニオンギア304には把持機構106が取り付けられており、ピニオンギア304が回転すると把持機構106も回転し、ワークWの姿勢変換が行われる。
【0035】
ラックギア302は、ロッドエンド305によって姿勢変換スライダ105の天板205上に設置されたロッドエンド取付部306と連結されている。そのため、搬送スライダ104と姿勢変換スライダ105との間の相対距離が変化すると、ロッドエンド305を介してラックギア302の位置も変化する。その結果、ピニオンギア304は、ラックギア302の変化量に応じて回転し、ピニオンギア304に固定された把持機構106も回転する。このように、搬送スライダ104と姿勢変換スライダ105との間の相対距離を制御することにより、ワークWの姿勢変換を制御することができる。
【0036】
次に、ワークの姿勢変換の方法について
図4を用いて説明する。
図4(A)は、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の搬送プロファイル401、402である。ここで、搬送プロファイルは、一台のスライダが停止した状態から移動を開始して再び停止するまでの一つ又は複数の下位コントローラ102に関わるスライダの位置に関するプロファイルである。
【0037】
上位コントローラ222は、姿勢変換スライダ105の搬送プロファイル401、及び搬送スライダ104の搬送プロファイル402に基づいて、各スライダ104、105に対する制御指令を下位コントローラ220に出力する。
【0038】
ここでは、姿勢変換スライダ105の搬送プロファイル401は、
図1に示すティーチングポイントPaからティーチングポイントPcへの搬送プロファイルである。また、搬送スライダ104の搬送プロファイル402は、ティーチングポイントPbからティーチングポイントPdへの搬送プロファイルである。ティーチングポイントは、上位コントローラ222が下位コントローラ220に指令するスライダ104、105の搬送の目標地点であり、スライダ104、105は、下位コントローラ220により駆動制御されて、ティーチングポイントに搬送される。
【0039】
図4(A)において点401a〜401dは、それぞれ時刻t0、t1、t4、t5における姿勢変換スライダ105の搬送路110上の位置(X)を指す。また、点402a〜402dは、それぞれ時刻t0、t2、t3、t5における搬送スライダ104の搬送路110上の位置(X)を指す。
【0040】
図4(B)は、姿勢変換スライダ105の速度プロファイル411及び搬送スライダ104の速度プロファイル412である。速度プロファイル411、412は、それぞれ姿勢変換スライダ105の搬送プロファイル401及び搬送スライダ104の搬送プロファイル402の各時刻t0〜t5における、各スライダ104、105の速度vを示したものである。
【0041】
速度プロファイル411に示すように、姿勢変換スライダ105は、時刻t0にティーチングポイントPaから速度v0で動作を開始し、時刻t1に速度v1に到達し、時刻t4に減速を開始し、そして時刻t5にティーチングポイントPcに停止する。
【0042】
また、速度プロファイル412に示すように、搬送スライダ104は、時刻t0にティーチングポイントPbから速度v0で動作を開始し、時刻t2に速度v2に到達し、時刻t3に減速を開始し、そして時刻t5にティーチングポイントPcに停止する。
【0043】
次に、搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105の搬送速度vと相対距離ΔXに関して説明する。
【0044】
姿勢変換スライダ105は、時刻t0から時刻t5までの間に、ティーチングポイントPaからティーチングポイントPcまで搬送され、Pa及びPc間の搬送距離は、Xacである。また、搬送スライダ104は、時刻t0から時刻t5までの間に、ティーチングポイントPbからティーチングポイントPdまで搬送され、Pb及びPd間の搬送距離は、Xbdである。
【0045】
時刻t1、t4における姿勢変換スライダ105と搬送スライダ104との間の相対距離ΔX1、ΔX2を考える。時刻t0〜t1及び時刻t4〜t5の期間では、姿勢変換スライダ105及び搬送スライダ104は互いに等しい速度で搬送される。そのため、時刻t0〜t1及び時刻t4〜t5の期間において、スライダ104、105間の相対距離は、それぞれ一定値ΔX1、ΔX2である。そうすると、搬送距離Xac、Xbdと、スライダ104、105間の相対距離ΔX1、ΔX2との間には、
Xbd−Xac=ΔX1−ΔX2 …式1
の関係が成り立つ。
【0046】
姿勢変換スライダ105及び搬送スライダ104は、時刻t0から時刻t5の期間にそれぞれ搬送距離Xac、搬送距離Xbdの異なる距離の移動を行うため、それぞれ異なる最高速度v1、v2で動作させる。
【0047】
ここで、
図4(B)の速度プロファイル411、412からわかるように、スライダ104、105の加速度及び減速度は、スライダ104、105間で互いに同じになるように設定されている。なお、スライダ104、105の加速度及び減速度を互いに異なるように設定してもよい。
【0048】
図4(C)は、スライダ104、105間の相対距離プロファイルである。
【0049】
図4(B)の速度プロファイル411、412に沿って姿勢変換スライダ105及び搬送スライダ104が動作する場合、時刻t0にスライダ104、105は、互いに同じ加速度で加速する。そのため、時刻t0〜t1の期間、2台のスライダ104、105間の相対距離ΔX1は一定に保たれる。時刻t1後に、姿勢変換スライダ105の加速が完了し、スライダ104、105間に速度差が生じ始め、スライダ104、105間の相対距離が変化する。そして、時刻t3後に搬送スライダ104は減速し始めて、時刻t4に2台のスライダ104、105の速度は互いに等しくなる。この時、スライダ104、105間の相対距離はΔX2となり、時刻t4〜t5の期間、2台のスライダ104、105は、相対距離ΔX2を保ったまま同じ減速度で減速し、最終的に停止する。
【0050】
図4(D)は、ワークWの姿勢プロファイル422であり、ワークWの姿勢をZ軸に対する角度θで表している。時刻t0におけるワークWの姿勢は角度θ1であり、これは、
図1の加工装置101においてワークWの加工面W1に所定の加工を行う為にワークWがとるべき姿勢である。また、時刻t5におけるワークWの姿勢は角度θ2であり、これは、
図1の加工装置102においてワークWの加工面W2に所定の加工を行う為のワークWがとるべき姿勢である。
【0051】
図4(C)の相対距離プロファイル421をとるように搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105が移動すると、搬送スライダ104のラックギア302の作用により、ピニオンギア304が回転する。これにより、ワークWの姿勢は角度θ1からθ2に変換される。
【0052】
このように、本実施形態の搬送システム100では、加工装置間でワークWを搬送する間に搬送スライダ104と姿勢変換スライダ105との間に速度差を生じさせて、スライダ104、105間の相対距離が調節される。その結果、ワークWの姿勢が変換される。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る搬送システムでは、搬送スライダ及び姿勢変換スライダを小型に形成可能であり、且つワークWの姿勢を変換するためのアクチュエータ及びアクチュエータのための給電等のケーブルを必要としない。このため、狭いスペース内であっても、効率よく搬送システムを設置することができるとともに、作業工程間をスライダが往復動作する間欠搬送だけでなく、同一スライダーにより最上流工程から最下流工程まで搬送を行う循環搬送も可能になる。
【0054】
また、本実施形態の搬送システムでは、ワークの姿勢変換を制御するためのコントローラを別途設ける必要はなく、スライダの駆動制御を行うコントローラによりスライダ間の相対距離を調整するだけでワークの姿勢を変換することができる。そして、本実施形態の搬送システムでは、作業工程間の搬送中にワークWの姿勢を変換することができるため、姿勢変換のための追加の時間を必要としないため全体として加工システムの生産性を向上させることができる。
【0055】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の搬送システムに関して
図5を用いて説明する。
図5は、搬送路110上の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105上の姿勢変換機構をZ軸方向から見た図である。なお、本実施形態は、第1実施形態と比べスライダ104、105上の姿勢変換機構の構成が異なるだけであり、その他の構成についての説明は省略する。
【0056】
本実施形態の姿勢変換機構は、ガイド、ラックギア502、軸受、ピニオンギア504、ロッドエンド505、及びロッドエンド取付部506からなる。該姿勢変換機構では、搬送スライダ104の天板205上に搬送路110の搬送方向と平行してガイド(不図示)が設置され、該ガイド上にラックギア502が設置されている。また、搬送スライダ104の天板205上に、Z軸を中心とする軸受(不図示)と、ラックギア502と噛み合うようにピニオンギア504が設置されている。ピニオンギア504は、該軸受に支持され、ラックギア502がX軸方向に動くことによりZ軸の周りに回転する。
【0057】
ピニオンギア504上には把持機構106が取り付けられており、ピニオンギア504が回転すると把持機構106もY軸の周りに回転し、把持機構106に把持されたワークWの姿勢変換が行われる。ロッドエンド取付部506は、姿勢変換スライダ105の天板205上に固定され、ロッドエンド505は、ロッドエンド取付部506及びラックギア502に連結されている。搬送スライダ104と姿勢変換スライダ105との間の相対距離が変化すると、ラックギア502は、ロッドエンド505を通じて作用を受け、ガイド(不図示)に沿って移動する。
【0058】
このように、本実施形態の搬送システムでは、搬送スライダと姿勢変換スライダとの間の相対距離を調整することにより、ワークをZ軸の周りに回転させて、ワークの姿勢を変換することができる。
【0059】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態の搬送システムに関して
図6を用いて説明する。
図6は、搬送路110上の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105上の姿勢変換機構をY軸方向から見た図である。なお、本実施形態は、第1及び第2実施形態と比べスライダ104、105上の姿勢変換機構の構成のみが異なり、その他の構成についての説明は省略する。
【0060】
第1実施形態に比べ、本実施形態は、搬送スライダ104と姿勢変換スライダ105との間の相対距離を調整することにより、台形カム603、カムフォロア604を介してワークWをZ軸方向に移動させて、ワークWの姿勢変換を行う点で異なる。
【0061】
本実施形態の姿勢変換機構は、固定体600、第1のガイド601、第2のガイド602、台形カム603、カムフォロワ604、ロッドエンド305、及びロッドエンド取付部306からなる。また、搬送スライダ104の天板205上に搬送方向前方に固定体600が設置され、固定体600には、カムフォロワ604の上下移動を案内する第2のガイド602が取り付けられている。
【0062】
該姿勢変換機構では、搬送スライダ104の天板205上に搬送路110の搬送方向と平行に第1のガイド601が設置され、第1のガイド601上に台形カム603が移動可能に設置されている。
【0063】
台形カム603は、第1のガイド601によって搬送方向(X軸)と平行に動く。カムフォロワ604は、台形カム603上の傾斜面に設置され、カムフォロワ604上には把持機構106が設置されている。台形カム603がX軸方向に動くと、それに応じてカムフォロワ604及び把持機構106は第2のガイド602に沿ってZ軸方向に動き、ワークWもZ軸方向に動く。
【0064】
このように、本実施形態の搬送システムでは、搬送スライダと姿勢変換スライダとの間の相対距離を調整することにより、ワークをZ軸方向に移動させて、ワークの姿勢を変換することができる。
【0065】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について
図7を用いて説明する。
図7は、搬送路110上の搬送スライダ104a、104bの姿勢変換機構をY軸方向から見た図である。本実施形態は、第1乃至第3実施形態と異なり、2台の搬送スライダ104a、104bを対で使用し、それぞれが把持機構106a、106bを備える。
【0066】
本実施形態の姿勢変換機構は、搬送スライダ104a、104bそれぞれの天板205上に設置されている。該姿勢変換機構は、ガイド301、ラックギア302、軸受303、ピニオンギア304、ラックギアストッパ701、固定側ストッパ702、プッシャ703、ばね704、及びラックギア押付部705からなる。なお、
図7では、搬送スライダ104aについては各符号に添字aが付され、搬送スライダ104bについては各符号に添字bが付されている。また、ガイド301、ラックギア302、軸受303、及びピニオンギア304の構成は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0067】
搬送スライダ104aの天板205a上の端部に、プッシャ703と固定体706が取り付けられ、固定体706には、ラックギア302の一端に取り付けられたばね704が固定されている。ラックギア302の他端にはラックギア押付部705が取り付けられ、ラックギア押付部705には固定側ストッパ702が取り付けられている。プッシャ703の先端部は、搬送スライダ104a、104bの対のうち相手側のラックギア押付部705に向かって突出して形成されている。例えば、搬送スライダ104aのプッシャ703aの先端は、相手側である搬送スライダ104bの押付部705bに向かって突出して形成されている。
【0068】
ワークWの姿勢の初期位置は、ラックギアストッパ701aが固定側ストッパ702にばね704によって押しつけられることにより定まり、初期位置におけるワークWa、Wbの姿勢は、それぞれ角度θ1a、θ1bである。
【0069】
搬送スライダ104a、104b間の相対距離が所定の距離に短くなると、お互いのプッシャ703a、703bが相手側のラックギア押付部705a、705bに当たり、ラックギア302a、302bが動作し始める。そして、搬送スライダ104a、104b間の相対距離がさらに短くなることで、ラックギア302a、302bはさらに動作する。そして、ラックギア302a、302bが動くことによりピニオンギア303a、303bは回転し、ピニオンギア303a、303bが回転することにより把持機構106a、106bはY軸回りに回転する。その結果、ワークWa、Wbの姿勢は、それぞれ角度θ2a、θ2bへと変換される。
【0070】
図7の構成では、ワークWaは、搬送スライダ104a、104bが互いに近づくことにより時計周りに回転し、反対にワークWbは、搬送スライダ104a、104bが互いに近づくことにより反時計周りに回転する。
【0071】
以上のように本実施形態では、2台の搬送スライダが相互に作用することでワークの姿勢変換を行い、2台のスライダ搬送スライダで2個のワークの姿勢変換を一度に行うことができる。そのため、ワーク2個を1組で運び加工装置で処理する工程システムや、ワーク姿勢を対称的に変換し加工装置で処理する工程システムにおいて、姿勢変換の為のスライダが不要になり、全体として生産性をより一層向上させることができる。
【0072】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態について
図8を用いて説明する。
図8は、搬送路110上の搬送スライダ104(第2のスライダ)及び姿勢変換スライダ105a、105b(第1及び第3のスライダ)の姿勢変換機構をY軸方向から見た図である。本実施形態は、第1及び第3実施形態の姿勢変換機構を組み合わせた構成であり、1台の搬送スライダ104と2台の姿勢変換スライダ105a、105bを組合せ、ワークWをZ軸方向の移動に加えて、Y軸の周りに回転させることができる。
【0073】
第3実施形態の姿勢変換機構では、カムフォロワ604上に把持機構106が直接設けられていたが、本実施形態の姿勢変換機構では、カムフォロワ604上に軸受303及びガイド804を設けている。姿勢変換スライダ105b上には固定体805が設けられ、固定体805の端部には溝カム801が形成されている。溝カム801に案内されるカムフォロワ802が形成されたブラケット803は、搬送スライダ104上のガイド804に案内される。ブラケット803の端部上にはラックギア302が、軸受303に支持されたピニオンギア304と噛み合うように取り付けられている。
【0074】
姿勢変換スライダ105bと搬送スライダ104との間の相対距離が変化すると、ブラケット803に取り付けられたラックギア302がX軸方向に移動し、それに応じてピニオンギア304が回転する。その結果、ワークWはY軸の周りに回転する。また、姿勢変換スライダ105aと搬送スライダ104との間の相対距離が変化すると、台形カム603がX軸方向に移動し、それに応じてカムフォロワ604がZ軸方向に移動する。その結果、ワークWはZ軸に沿って移動する。
【0075】
以上のように本実施形態では、1台の搬送スライダと2台の姿勢変換スライダとが相互に作用することでワークの姿勢変換を行い、ワークの姿勢の変換をX-Z平面上で自由に行うことができる。そのため、ワークの姿勢変換の自由度が向上し、1つの加工装置にワークの複数の加工面に対する複数又は複雑な作業工程を行わせることができ、工程システム全体の生産性を一層向上させることができる。
【0076】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態に係る物品の製造システム900について
図9を用いて説明する。物品の製造システム900は、第1乃至第5実施形態に係る搬送システム100と、加工装置910、911とを有し、搬送システム100は、加工装置910、911間のワーク901の搬送を行う。ここで、物品とは、例えばインクジェットプリンタやコピー機用のトナーカートリッジ、カメラ用の部品、半導体製品等である。なお加工装置910、911の数はこれに限定されない。
【0077】
製造システム900による物品の製造方法について説明する。まず、一対の搬送スライダ104及び姿勢変換スライダ105を搬送路110上で移動させ、第1の加工装置910に搬送する。このとき、ワーク901は搬送スライダ104により把持され、第1の姿勢(例えば、角度θ1)をとっている。そして、加工装置910において、該第1の姿勢をとるワーク901に対して第1の加工処理を施す。
【0078】
その後、スライダ104、105を第2の加工装置911に向けて搬送する間に、スライダ104、105の速度を制御し、スライダ104、105間の相対距離を調整する。その結果、搬送中に、ワーク901の姿勢は、第1の姿勢から第2の姿勢(例えば、角度θ2)へと変換される。そして、第2の加工装置911において、第2の姿勢をとるワーク901に対して第2の加工処理を施すことにより、最終的な物品902が製造される。
【0079】
例えば、製造されるべき物品が、インクジェットプリンタのトナーを入れるためのカートリッジである場合、ワーク901は、カートリッジの基となるプラスチック体である。加工装置910は、カラーインク用のトナー粉末を充填するための領域をワーク901に形成し、加工装置911は、ブラックインク用のトナー粉末を充填するための領域をワーク901に形成する。そして、最終的に、物品902としてインクジェットプリンタのトナーを入れるためのカートリッジ製品が製造されることになる。
【0080】
このように、本実施形態に係る物品の製造システム900は、第1乃至第5の実施形態に係る搬送システムの利点を伴って物品を製造することができ、その結果、物品の製造効率の向上ひいては製造コストの低減につながる。
【0081】
(その他の実施形態)
その他の実施形態として、1台の搬送スライダと、3台の姿勢変換スライダとを組合せて、第1乃至第3の実施形態の姿勢変換機構の機能を備えた姿勢変換機構を構築してもよい。これにより、ワークWの姿勢をXYZ空間上で自由に変換することが可能となる。これにより、ワークの姿勢変換の自由度が向上し、1つの加工装置にワークの複数の加工面に対する複数又は複雑な作業工程を行わせることができ、工程システム全体の生産性を一層向上させることができる。