(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434722
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去剤
(51)【国際特許分類】
C11D 7/38 20060101AFI20181126BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20181126BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20181126BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20181126BHJP
C11D 7/20 20060101ALI20181126BHJP
C08J 7/02 20060101ALI20181126BHJP
C08L 101/00 20060101ALN20181126BHJP
C08K 5/14 20060101ALN20181126BHJP
C08K 5/12 20060101ALN20181126BHJP
C08K 7/22 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
C11D7/38
C11D7/26
C11D7/50
C11D17/08
C11D7/20
C08J7/02 ACEV
!C08L101/00
!C08K5/14
!C08K5/12
!C08K7/22
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-132071(P2014-132071)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11323(P2016-11323A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502264991
【氏名又は名称】株式会社日新化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】399110362
【氏名又は名称】株式会社ボークス
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】下山 恵梨子
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄健
(72)【発明者】
【氏名】土田 和昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】重田 せつ
【審査官】
林 建二
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭49−011153(JP,B1)
【文献】
特開2001−088139(JP,A)
【文献】
特表2001−512177(JP,A)
【文献】
特表平10−505110(JP,A)
【文献】
特開昭55−067086(JP,A)
【文献】
特開2004−067945(JP,A)
【文献】
特開2005−048059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
B29C 71/04
C08J 3/00−3/28
C08J 7/00−7/18
C08J 99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化ベンゾイルと、常温で固体のフタル酸エステルと、液状担持体として粘稠液体とを含み、移染により着色汚染されたポリ塩化ビニル製品の着色部分に塗布するための移染着色除去剤であって、
過酸化ベンゾイルが3〜30質量部の割合で含まれ、
常温で固体のフタル酸エステルが1〜20質量部の割合で含まれ、
液状担持体が40〜90質量部の割合で含まれる、
ポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去剤。
【請求項2】
前記常温で固体のフタル酸エステルが40℃以上の融点を有する、請求項1に記載の移染着色除去剤。
【請求項3】
多孔性物質をさらに含む、請求項1または2に記載の移染着色除去剤。
【請求項4】
前記多孔性物質がシリカおよびヒドロキシアパタイトの少なくとも一方を含む、請求項3に記載の移染着色除去剤。
【請求項5】
移染により着色汚染されたポリ塩化ビニル製品の着色部分に、請求項1〜4のいずれかに記載の移染着色除去剤を塗布する工程を含む、ポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル製品に発生する移染による着色汚染を除去するための除去剤および除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」と記載する場合がある)は、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンと共に四大汎用プラスチックと称され、耐薬品性、耐油性、耐候性、電気絶縁性など種々の特性を有している。PVC製品としては、例えば、電線の被覆部、ターポリン、帆布、膜材料、タイルカーペット、床材、壁紙、ラップフィルム、農業用フィルム、シート、ホース、チューブ、ソファー、手袋、長靴、バッグ、マーキングフィルム、人形、浮輪、ボート、保育用品、塩ビ図書、ルーフィング、食品サンプル、強化和紙、医療用器具などが挙げられる。
【0003】
PVCは極性を有するため分子間力が強く、常温で硬い性質を有している。そのため、PVCは、可塑剤によって柔軟性が付与された軟質PVCの形態で加工に供される場合がある。しかし、可塑剤の中には染料や顔料との親和性が高いものがあり、PVC製品が染料や顔料を使用した製品と擦れたり接触したりした場合、PVC製品に、いわゆる色移りと称される移染による着色汚染が発生することがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、軟質PVC製の人形(フィギュア)が記載されており、このような人形には衣装が着けられている。その衣装の色が人形本体に移染し着色汚染される場合がある。このような着色汚染を除去する方法としては、摩擦によって擦り取る方法、有機溶剤で洗浄する方法などが挙げられる。
【0005】
摩擦によって擦り取る方法は、着色部分を消しゴムなどの固形の樹脂(例えばPVC、メラミン樹脂など)で擦ることによって固形の樹脂に色を移し、着色汚染を除去する方法である。しかし、この方法は、摩擦時に着色していない部分にまで着色が広がる可能性がある。
【0006】
有機溶剤で洗浄する方法は、アセトン、トルエン、スチレン、クロロホルム、酢酸エチルなどの有機溶剤を用いて着色部分を洗浄する方法である。しかし、これらの有機溶剤は、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防機則(以下「有機則」と記載する)に該当し、人体への安全性や環境への負荷の点で好ましくない。有機溶剤の中には、PVCを溶かすものも存在し、溶かされて製品の表面が平滑化したり、PVC中の可塑剤が有機溶剤中に流出したりすることによって、PVCが膨潤や硬化収縮する場合もある。このような現象が繰り返されると、PVC製品に亀裂、変質などが生じて劣化を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−118601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、PVC製品を溶かしたり硬化収縮させたりしないことに加え、膨潤させることもなく移染による着色汚染を除去することができ、かつ有機則に該当する有機溶剤を含まず作業の際に安全に取り扱うことができるポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)過酸化ベンゾイルと、常温で固体のフタル酸エステルとを含む、ポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去剤。
(2)前記常温で固体のフタル酸エステルが40℃以上の融点を有する、上記(1)に記載の着色除去剤。
(3)前記過酸化ベンゾイルが3〜30質量部、および前記常温で固体のフタル酸エステルが1〜20質量部の割合で含まれる、上記(1)または(2)に記載の着色除去剤。
(4)液状担持体をさらに含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の着色除去剤。
(5)多孔性物質をさらに含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の着色除去剤。
(6)前記多孔性物質がシリカおよびヒドロキシアパタイトの少なくとも一方を含む、上記(5)に記載の着色除去剤。
(7)移染により着色汚染されたポリ塩化ビニル製品の着色部分に、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の着色除去剤を塗布する工程を含む、ポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PVC製品を溶かしたり硬化収縮させたりしないことに加え、膨潤させることもなく移染による着色汚染を除去することができ、かつ有機則に該当する有機溶剤を含まず作業の際に安全に取り扱うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るポリ塩化ビニル製品に対する移染着色除去剤(以下、単に「本発明の着色除去剤」と記載する場合がある)は、過酸化ベンゾイルおよび特定のエステル化合物を含む。以下、本発明の着色除去剤について詳細に説明する。
【0012】
過酸化ベンゾイルは、織物、小麦粉、歯などの漂白、ニキビの治療薬、ポリマー合成におけるラジカル重合開始剤などに使用される化合物である。過酸化ベンゾイルは、加熱や衝撃で分解し爆発しやすく消防法危険物第5類(自己反応性物質)に指定されており、取り扱うには細心の注意を払う必要がある。
【0013】
特定のエステル化合物、すなわち常温(25℃)で固体のフタル酸エステルは、PVC製品に着色除去剤を馴染みやすくするために用いられる。常温で液体のエステル化合物を使用すると、PVC製品が膨潤することがある。これは、液体のエステル化合物がPVC製品内部に入り込み、PVC製品の分子結合が緩むことにより発生すると考えられる。
【0014】
特定のエステル化合物は、常温で固体であれば特に限定されない。このようなエステル化合物としては、例えば40℃以上の融点を有するフタル酸エステルが挙げられる。
【0015】
40℃以上の融点を有するフタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジシクロヘキシル(融点:62〜67℃)、フタル酸ジフェニル(融点:72〜76℃)などが挙げられる。これらの特定のエステル化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の着色除去剤において、過酸化ベンゾイルおよび特定のエステル化合物の含有量は、移染による着色汚染を除去し得る限り特に限定されず、好ましくは下記の割合で含有される。
過酸化ベンゾイル:3〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部。
特定のエステル化合物:1〜20質量部、より好ましくは10〜20質量部。
【0017】
本発明の着色除去剤には、好ましくは液状担持体が含まれる。過酸化ベンゾイルおよび特定のエステル化合物は、いずれも固形物(粉末状または顆粒状)である。したがって、これらを混合して得られる混合物に流動性を持たせて塗布しやすくするために、液状担持体が使用される。
【0018】
液状担持体は、過酸化ベンゾイルおよび特定のエステル化合物の混合物に流動性を持たせることができれば、特に限定されない。液状担持体としては粘性を有する液体(以下「粘稠液体」と記載する)を用いるのが好ましい。粘稠液体を用いることによって、本発明の着色除去剤に粘性を付与することができ、PVC製品に塗布した際に塗布部から流れ、若しくはずれにくくなる。
【0019】
液状担持体としては、有機則に該当しない化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、動植物油、流動パラフィン、シリコーンオイルなどが挙げられる。あるいは、液状担持体として、ポリビニルアルコール、水性アクリル樹脂などの水溶性ポリマー、キサンタンガム、カラギーナンなどの増粘剤を水に溶解させて粘性を付与した水溶液を使用してもよい。これらの液状担持体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。液状担持体は、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは40〜70質量部の割合で含有される。特に40質量部以上用いることによって、他の成分が十分均一に混合される。
【0020】
さらに、本発明の着色除去剤は多孔性物質を含んでいてもよい。多孔性物質を使用することによって、過酸化ベンゾイルが安定化され、作業の際に着色除去剤をより安全に取り扱うことができる。すなわち、過酸化ベンゾイルが多孔性物質の孔に捕捉されることによって、摩擦、衝撃、光などが過酸化ベンゾイルに直接影響しにくくなり、その結果、過酸化ベンゾイルの分解および爆発が防止される。
【0021】
多孔性物質は、過酸化ベンゾイルを安定化させるために使用されるものであり、着色汚染を除去する効果などに直接影響を及ぼすものではない。したがって、過酸化ベンゾイルを孔に捕捉し得るものであれば、多孔性物質は特に限定されない。
【0022】
多孔性物質としては、例えば、シリカ、モンモリロナイト、カオリナイト、ディッカイト、バーミキュライト、セピオライト、ヒドロキシアパタイト、バイデライト、パイロフィライト、タルク、サポライト、ヘクトライト、白雲母、金雲母、ゼオライトなどが挙げられる。多孔性物質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、例えばシリカおよびヒドロキシアパタイトの少なくとも一方を含むものが好ましい。多孔性物質の含有量は用いる多孔性物質や過酸化ベンゾイルの含有量に依存するが、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部の割合で含有される。
【0023】
さらに、本発明の着色除去剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば香料、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
次に、本発明の着色除去剤を用いて、PVC製品の移染による着色汚染を除去する方法について説明する。
【0025】
まず、移染により着色汚染されたPVC製品(例えば、人形、ソファー、保育用品、バック、長靴など)の着色部分に、本発明の着色除去剤を塗布する。着色除去剤の塗布量および厚みは、着色部分全体が被覆されれば、特に限定されない。
【0026】
着色除去剤の塗布後、着色部分と着色除去剤とを十分に接触させる。着色部分の濃さや大きさにもよるが、好ましくは3時間以上、より好ましくは24時間以上静置すればよい。静置は大気雰囲気中で行えばよく、特に加熱したり冷却したり、あるいは湿度を管理したりする必要はない。さらに、着色除去剤が塗布した部分からずれないように、塗布部分をフィルム、布などで被覆して固定してもよい。
【0027】
着色部分と着色除去剤とを十分に接触させた後、塗布した着色除去剤を拭き取り、塗布した部分を水やお湯で洗い流して着色除去剤を除去する。このように、本発明の着色除去剤を用いて着色汚染を除去する方法は煩雑な工程を経ずに、一般家庭などでも容易に行うことができる。
【0028】
本発明の着色除去剤は、PVC製品を溶かしたり硬化収縮させたりしないことに加え、膨潤させることもなく移染による着色汚染を除去することができ、かつ有機則に該当する有機溶剤を含まず作業の際に安全に取り扱うことができる。したがって、本発明の着色除去剤は、一般家庭などでも安全に取り扱うことができ、例えば、人形、ソファー、バック、長靴などの移染による着色汚染を除去するために、好適に使用される。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
表1に記載のように、過酸化ベンゾイル(和光純薬工業製、75質量%品)を5質量部(過酸化ベンゾイルの含有量は3.75質量部)、シリカ(東ソー・シリカ(株)製、NipsilG-300)を5質量部、フタル酸ジシクロヘキシル(東京化成工業(株)製、融点62〜67℃)を1質量部の割合で混合して撹拌し、混合物を得た。得られた混合物に、ポリエチレングリコール200(PEG200)(三洋化成工業(株)製)を89質量部の割合で加えて撹拌し、着色除去剤を得た。一般に市販品の過酸化ベンゾイルは、爆発防止のため25質量%水を含有させ、75質量%品として市販されている。
【0031】
(実施例2および3)
表1に記載の成分を表1に記載の割合で用いた以外は、実施例1と同様の手順で着色除去剤を得た。
【0032】
(比較例1および2)
表1に記載の成分を表1に記載の割合で用いた以外は、実施例1と同様の手順で着色除去剤を得た。フタル酸ブチルベンジルおよびフタル酸ジブチルは、いずれも約−35℃の融点を有しており、常温で液体である。
【0033】
得られた着色除去剤について、(1)着色除去効果および(2)試験片に対する影響を、下記の方法によって評価した。
【0034】
(1)着色除去効果
透明軟質PVC製シート(150mm×250mm×1.2mm)に、インディゴにより染色されたデニム生地を擦りつけ、PVC製シートにデニム生地のインディゴを付着させた。インディゴの付着は、学振型摩擦試験機((株)大栄科学機器製作所製)を用い、PVC製シートとデニム生地とを約5000回摩擦させることにより行った。PVC製シートについて、インディゴによる着色前後の色差ΔE
0(L*a*b表色系)を求めると、ΔE
0の値は「7.0」であった。ΔE
0は、着色部分における着色前および着色後のL値、a値およびb値をそれぞれ分光白色度計((有)東京電色製)を用いて測定し、得られた値から下記の式を用いて求めた。
【0035】
【数1】
【0036】
次いで、PVC製シートのインディゴ着色部分を被覆するように、各実施例および比較例で得られた着色除去剤を塗布して3時間養生した。その後、着色除去剤を拭き取ってお湯で洗浄し、着色除去剤を塗布していた部分のL値、a値およびb値を測定した。着色前と着色除去後との色差ΔEを、得られた値から下記の式を用いて求めた。
【0037】
【数2】
【0038】
色差ΔEの値が「0」に近いほど、着色前と着色除去後との差が小さく、移染による着色が効率よく除去されていることを示す。一方、色差ΔEの値が「7.0」に近いほど、着色除去材を塗布した後も、着色がほとんど除去されていないことを示す。結果を表1に示す。
【0039】
着色除去剤を用いずに、アセトン(比較例3)、酢酸エチル(比較例4)および水(比較例5)を用いて着色部分を洗浄した結果についても表1に示す。
【0040】
(2)試験片に対する影響
まず、試験片(直径36mmおよび厚さ1.2mmの透明軟質PVC製シート)の質量(g)を測定した。次いで、試験片を各実施例および比較例で得られた着色除去剤に浸漬し、3時間静置した。その後、試験片を着色除去剤から取り出し、付着している着色除去剤を拭き取ってお湯で洗浄し、水分を拭いて試験片の質量(g)を測定した。試験片の膨潤率を、浸漬前後の試験片の質量から下記の式を用いて求めた。なお、膨潤率がマイナスの場合、マイナスの値が大きくなるほど、硬化収縮の程度が高くなる。膨潤率の変動が少ないほど、膨潤も硬化収縮もしていないことを示す。結果を表1に示す。
膨潤率(%)={(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量}×100
【0041】
着色除去剤を用いずに、アセトン(比較例3)、酢酸エチル(比較例4)および水(比較例5)を用いて洗浄した場合の試験片に対する影響についても表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、実施例1〜3で得られた着色除去剤は、色差ΔEの値がいずれも「0」に近く、着色前の状態に戻っていることがわかる。すなわち、移染により着色されたインディゴがほとんど除去されていることがわかる。膨潤率についてもほぼ「0%」であり、PVC製シートは膨潤も硬化収縮もしていないことがわかる。
【0044】
一方、比較例1および2で得られた着色除去剤は、色差ΔEの値がいずれも「0」に近いものの、膨潤率が非常に高く、PVC製シートが膨潤することがわかる。アセトン(比較例3)および酢酸エチル(比較例4)を用いて洗浄した場合、いずれも色差ΔEの値が「7.0」に近く、着色がほぼ除去されていないことがわかる。さらに、膨潤率も−23%〜−24%であり、PVC製シートが硬化収縮していることがわかる。水(比較例5)を用いて洗浄した場合、PVC製シートは膨潤も硬化収縮もしないものの、色差ΔEの値が7.0であり、着色が全く除去されていないことがわかる。