特許第6434733号(P6434733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6434733放射線撮影システム、放射線撮影装置、それらの制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434733
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影装置、それらの制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
   A61B6/00 321
   A61B6/00 320Z
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-151044(P2014-151044)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-22338(P2016-22338A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】野中 秀樹
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−157666(JP,A)
【文献】 特開2010−051741(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/081042(WO,A1)
【文献】 特開2010−259688(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0207278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生部から照射された放射線を検出して放射線画像を取得するために撮影動作を行う複数の撮影装置と、前記撮影動作のための撮影オーダ情報の入力及び前記放射線画像の出力を行う入出力装置と、を有する放射線撮影システムであって、
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記撮影オーダ情報に応じて放射線撮影システム全体を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段から受信した前記撮影オーダ情報に応じて当該撮影装置内の撮影動作を制御する第2制御手段と、を備え、
前記複数の撮影装置のうち指定を受けた1台の撮影装置の前記第1制御手段は有効化され、前記複数の撮影装置のうち指定を受けていない他の撮影装置の前記第1制御手段は無効化されている、
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記入出力装置は、前記複数の撮影装置により撮影された前記放射線画像を表示し、前記撮影オーダ情報の入力を受け付ける操作表示手段をさらに有し、
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記操作表示手段との接続を検出する検出手段をさらに備え、
前記第1制御手段は、前記検出手段による前記操作表示手段との接続が検出された場合は前記検出手段により有効に設定されることにより有効化され、前記検出手段による前記操作表示手段との接続が検出されていない場合は前記検出手段により有効に設定されないことにより無効化されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記第制御手段は、前記撮影オーダ情報と、前記撮影装置により撮影された前記放射線画像とを関連付けることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記操作表示手段から取得した前記撮影オーダ情報を、前記他の撮影装置に通知する通知手段をさらに備えること特徴とする請求項2又は3に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記通知手段は、前記第制御手段により前記撮影オーダ情報と前記放射線画像とが関連付けられた後に、前記撮影オーダ情報に基づく撮影が完了したことを前記他の撮影装置に通知することを特徴とする請求項4に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記他の撮影装置は、前記撮影オーダ情報に基づく撮影が完了したことの通知を受けると、前記撮影オーダ情報を消去または使用禁止にすることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記放射線発生部から照射された放射線を検出して前記放射線画像を得る放射線検出手段を更に備え、
前記第2制御手段は、前記放射線検出手段への放射線の入射の検出に基づいて、前記放射線の照射中の蓄積動作と、前記蓄積動作の後の読み出し動作とをさらに制御することにより、前記撮影動作を制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記複数の撮影装置はそれぞれ、ユーザからの指定を受け付ける指定手段をさらに備え、
前記第1制御手段は、前記指定手段が前記指定を受け付けた場合は前記指定手段により有効に設定されることにより有効化され、前記指定手段が前記指定を受け付けなかった場合は前記指定手段より有効に設定されないことにより無効化されている、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
放射線発生部から照射された放射線を検出して放射線画像を取得するために撮影動作を行う複数の撮影装置と、前記撮影動作のための撮影オーダ情報の入力及び前記放射線画像の出力を行う入出力装置と、を有する放射線撮影システムに使用され得る撮影装置であって、
前記撮影オーダ情報に応じて前記放射線撮影システム全体を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段から受信した前記撮影オーダ情報に応じて当該撮影装置内の撮影動作を制御する第2制御手段と、を備え、
指定を受けた場合には前記第1制御手段は有効化され、指定を受けていない場合には前記第1制御手段は無効化されている、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項10】
放射線発生部から照射された放射線を検出して放射線画像を取得するために撮影動作を行う複数の撮影装置と、前記撮影動作のための撮影オーダ情報の入力及び前記放射線画像の出力を行う入出力装置と、を有する放射線撮影システムの制御方法であって、
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記撮影オーダ情報に応じて放射線撮影システム全体を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段から受信した前記撮影オーダ情報に応じて当該撮影装置内の撮影動作を制御する第2制御手段と、を備え、
前記複数の撮影装置のうち指定を受けた1台の撮影装置の前記第1制御手段を有効化し、前記複数の撮影装置のうち指定を受けていない他の撮影装置の前記第1制御手段を無効化する、
ことを特徴とする放射線撮影システムの制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線撮影システムの制御方法の工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム、放射線撮影装置、それらの制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影システムは、放射線を発生する放射線発生装置と、放射線を検出して放射線画像を生成する撮影部とを含んでいる。近年では、撮影部としてフラットパネルディテクタ(FPD)を使用した製品が普及している。FPDのディテクタ面上に検出素子(画素)がマトリクス状に配置されており、FPDは、放射線の検出量に応じて画素ごとに発生した信号電荷を蓄積し、その後にA/D変換してデジタルデータとして取得する。このデジタルデータは画像処理を施されて診断に供される。
【0003】
一般的に、撮影部を使用する放射線撮影システムでは、撮影部の動作設定や患者の姓名、撮影部位等の撮影オーダ情報の入力や撮影画像の表示を行うためにシステム制御部が用意され、システム内に存在する撮影部は全てシステム制御部の制御下に置かれる。システム制御部には操作部及び表示部が接続され、操作部によって撮影部の操作を行い、表示部によって撮影部が出力する放射線画像の表示を行う。一般に、システム制御部にはPCが、操作部にはキーボードやマウス等の入力装置が、表示部には液晶ディスプレイ等の表示装置が用いられる。
【0004】
患者の撮影を行う放射線技師は、放射線の曝射量等の撮影条件を放射線発生装置に設定し、使用する撮影部の選択、撮影部位や患者の姓名、身長・体重などの撮影オーダ情報をシステム制御部に入力した後に、患者を撮影部に誘導し曝射ボタンの押下に基づいて放射線撮影を実施する。
【0005】
しかしながら、例えば立位での撮影予定だったものの、患者が体を支えられずに臥位での撮影に急遽変更する場合や、大角サイズでの撮影予定が、患者の体格が大きいために半切サイズに変更する場合など、撮影オーダ情報の変更が必要な状況が発生しうる。従来は、放射線技師がシステム制御部まで移動して撮影オーダの変更を行う必要があった。
【0006】
これに対して、特許文献1では、このような煩雑さを軽減するため、システム制御部と通信可能な操作部を撮影部に接続し、システム制御部まで移動しなくても操作部からシステム制御部の撮影オーダ情報を修正できるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−268822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術であっても、システム制御部が必要であるため、放射線撮影システムの運搬や設置が煩雑となりシステム全体の可搬性を向上させることができず、さらにはシステムコストも高くなるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、放射線撮影システム全体の可搬性を向上させつつ、システムコストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮影システムは、以下の構成を備える。即ち、
放射線発生部から照射された放射線を検出して放射線画像を取得するために撮影動作を行う複数の撮影装置と、前記撮影動作のための撮影オーダ情報の入力及び前記放射線画像の出力を行う入出力装置と、を有する放射線撮影システムであって、
前記複数の撮影装置はそれぞれ、前記撮影オーダ情報に応じて放射線撮影システム全体を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段から受信した前記撮影オーダ情報に応じて当該撮影装置内の撮影動作を制御する第2制御手段と、を備え、
前記複数の撮影装置のうち指定を受けた1台の撮影装置の前記第1制御手段は有効化され、前記複数の撮影装置のうち指定を受けていない他の撮影装置の前記第1制御手段は無効化されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線撮影システム全体の可搬性を向上させつつ、システムコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る放射線撮影システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る撮影部がマスタ撮影部として動作する場合の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る撮影部がスレーブ撮影部として動作する場合の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る撮影部がマスタ撮影部として動作する場合の内部構成の別の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳述する。
【0014】
<1.放射線撮影システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線撮影システムの構成例を示す図である。放射線撮影システムは、マスタ撮影部1と、スレーブ撮影部2と、操作表示部3と、放射線制御部4と、放射線管球5と、通信経路6と、HIS(Hospital Information System:病院内情報システム)/RIS(Radiology Information System:放射線情報システム)端末7と、ストレージサーバ8と、検像ワークステーション9とを含む。なお、放射線制御部4と、放射線管球5とをまとめて放射線発生部と称する。
【0015】
マスタ撮影部1と1台以上のスレーブ撮影部2とは、通信経路6を介して相互に通信可能に接続されている。通信経路6は有線・無線を問わない。操作表示部3はマスタ撮影部1に接続される。通信経路6には、マスタ撮影部1、スレーブ撮影部2のほか、放射線制御部4が接続され、放射線制御部4の指示により放射線管球5より放射線が照射される。同じく、通信経路6にはHIS/RIS端末7、撮影画像を保存するストレージサーバ8、撮影画像に画像処理を施して最終的に診断に供するための作業を行う検像ワークステーション9が接続されている。
【0016】
マスタ撮影部1とスレーブ撮影部2とは、動作モードの違いにより別の名称を付与しているが機器自体は全く同一のものである。以下、マスタ撮影部1とスレーブ撮影部2とを区別する必要がない場合は撮影部と呼称する。
【0017】
<2.撮影部の内部構成>
次に、撮影部の内部構成について説明する。図2はマスタ撮影部1の内部構成を示した図であり、図3はスレーブ撮影部2の内部構成を示した図である。撮影部は、放射線検出部11と、ローカル制御部12と、通信部13と、システム制御部14と、操作表示部検出部15とを有する。
【0018】
放射線検出部11は、シンチレータと光検出器アレイと駆動回路およびA/D変換回路とを備える(不図示)。シンチレータでは高エネルギーの放射線により蛍光体の母体物質が励起され、再結合時のエネルギーにより蛍光を発する。シンチレータに隣接して光検出器アレイが配置されている。光検出器アレイは光子を電気エネルギーに変換して蓄積する画素をマトリクス状に配置した構造で、蓄積した電気エネルギーは駆動回路によって順次取り出され、A/D変換回路によって入射放射線量に応じたデジタルデータとして出力される。なお、放射線検出部11の構成はこの例に限定されるものではなく、例えば放射線に対して直接感度をもつ検出器を用いてもよい。
【0019】
ローカル制御部12は、撮影部内の動作を制御する。具体的には放射線検出部11の動作制御を実施して放射線画像の撮影動作を行い、撮影前に通信部13を介して外部装置から受信した撮影オーダ情報を撮影後に放射線画像と関連付け、画像を保存するストレージサーバ8や、画像処理等を施し診断に供する最終画像を生成するための検像ワークステーション9へ当該放射線画像を出力する。
【0020】
通信部13は、外部装置との通信を行い、外部装置から撮影オーダ情報を受信したり、撮影された放射線画像を外部装置へ送信したりする。
【0021】
システム制御部14は、自身を含めて撮影部が存在する放射線撮影システム全体を制御する。例えば、撮影オーダ情報の入力など撮影部の動作を設定する操作や撮影画像の表示処理などを実施する。システム制御部14が行う処理には、情報入力や画像出力のために入出力装置が必要となるが、撮影部外に設けた操作表示部3を当該入出力装置として使用する。操作表示部3は、マスタ撮影部1のシステム制御部14に接続されて(図2参照)、放射線撮影システム全体を制御するためのコンソール画面および撮影部で撮影された画像を表示し、コンソール上に表示されたボタン等により操作や文字入力を受け付ける。その用途から液晶タッチパネルディスプレイが好適である。あるいはそれを備えたモバイル型PCやタブレット端末を利用してもよい。
【0022】
操作表示部検出部15は、撮影部に操作表示部3が接続されていることを検出する。撮影部に操作表示部3が接続されていることが検知されると、操作表示部検出部15はシステム制御部14を有効に設定する。
【0023】
本実施形態に示される放射線撮影システムにはマスタ撮影部1とスレーブ撮影部2との2種類の撮影部が存在するが、両者の内部構成は全く同一であり、撮影システム内に複数存在する撮影部のうち、任意の1台がマスタ撮影部1となり、他はスレーブ撮影部2として動作することでシステムを構成する。
【0024】
放射線撮影システムの初期状態ではすべての撮影部がスレーブ撮影部2の状態である。続いて、操作表示部3の接続が行われる。任意の1台のスレーブ撮影部2に操作表示部3が接続されると、操作表示部検出部15が自身に操作表示部3が接続されたことを検出し、システム制御部14を有効化し、動作モードをマスタ撮影部1に切り替える。反対に、操作表示部3が接続されていない場合には、システム制御部14を無効化し、動作モードをスレーブ撮影部2に切り替える。撮影部と操作表示部3との接続は有線・無線を問わない。無線接続を使用し複数の撮影部が存在する場合には、操作表示部3と特定の1台の撮影部との接続を確立する。
【0025】
接続確立の方法としては、例えば、距離が一番近い撮影部と接続する、無線受信強度が一番強い撮影部と接続する、接続確立動作が最初に行われた撮影部と接続する、使用者が別途指定する撮影部と接続するなどいずれの手法を用いてもよい。すべての撮影部は同じ内部構成であるため、操作表示部3をいずれの撮影部に接続してもシステム動作上及び操作上の違いは生じない。特に無線接続の場合は、より良好な無線接続状況を確保するために接続先の撮影部を動的に変更してもよい。
【0026】
操作表示部検出部15の構成としては、接続が有線の場合は電気的または機械的なスイッチで接続検知してもよいし、有線・無線を問わず、システム制御部14と操作表示部3との間で交わされる通信状況を監視して接続を検出してもよい。
【0027】
また、図4に示すように、操作表示部検出部15に代わってマスタ指定部16を設けて使用者が任意の撮影部をマスタ撮影部1となるように指定できるようにしてもよい。例えばマスタ指定部16は電気的または機械的スイッチ等でユーザがスイッチをONにするとシステム制御部14を有効にしてマスタ撮影部1として動作開始する。これは操作表示部3がない状態においても放射線撮影システムを運用する際に有用である。
【0028】
<3.撮影部の具体的な処理>
マスタ撮影部1となった撮影部は、放射線撮影システム内に存在するすべてのスレーブ撮影部2に対してマスタモード動作中であることを示すメッセージを通知する。このメッセージを受信したスレーブ撮影部2は、今後の撮影時における画像データ送信先としてメッセージ送信元のマスタ撮影部1を設定する。
【0029】
撮影に先立ち、放射線技師が操作表示部3の画面を操作して放射線の撮影条件や撮影部位、患者の姓名、身長・体重などの撮影オーダ情報を入力する。入力された撮影オーダ情報はマスタ撮影部1内のシステム制御部14により自身を含めた全撮影部に配信され、各撮影部内のローカル制御部12により保持される。また、放射線の撮影条件に関する設定は放射線制御部4にも設定される。なお、ここでは撮影オーダ情報を操作表示部3から放射線技師が手入力することとしたが、通信経路6に通信可能に接続されたHIS/RIS端末7から配信することも可能である。その場合の配信経路については、マスタ撮影部1がHIS/RIS端末7から撮影オーダ情報を受けた後に各スレーブ撮影部に配信してもよいし、HIS/RIS端末7から全撮影部に直接配信してもよい。
【0030】
全撮影部のローカル制御部12は、撮影オーダ情報を受信すると放射線検出部11を撮影可能状態にすべく準備動作を実行する。その後、放射線検出部11は撮影待機状態となる。この状態においては全撮影部に撮影オーダ情報が配信され、かつ放射線検出部11も撮影待機状態にあるため、いずれの撮影部も撮影に使用することが可能となっている。例えば、立位撮影から臥位撮影に変更する場合や、患者の体格が大きかったためにより撮影領域の大きな撮影部に変更する場合においても追加の操作は不要で、そのまま所望の撮影部を用いて撮影が可能である。
【0031】
放射線技師は撮影に適した任意の撮影部を選択して患者を整位し、放射線制御部4の曝射ボタンを押下して放射線管球5から放射線を照射して撮影を実施する。放射線照射によって患者の撮影画像を形成する電気エネルギーが放射線検出部11に蓄積されている。当該電気エネルギーを読み出すためには、まず放射線照射が完了していることを確認した上で読み出しを実施する必要がある。例えば、撮影部自身が放射線照射状態を検出し放射線検出部11を照射中の蓄積動作モードから、当該蓄積動作モードに続く読み出しモードに移行させてもよい。すなわち、任意の撮影部に対して放射線照射が行われると、その撮影部自身が放射線の入射を検出する。これらの処理はローカル制御部12により実施され、放射線の入射を検出した撮影部のローカル制御部12は、放射線照射の終了まで待機した後に、放射線検出部11からの画像データ読み出しを実施する。読み出された撮影画像データは、撮影に先立って受信済みの撮影オーダ情報を例えば撮影画像データのヘッダ部に埋め込んで出力するなどの処理により、撮影オーダ情報と関連付けられる。関連付けが実施された撮影画像データはマスタ撮影部1のシステム制御部14に送信され、操作表示部3に表示される。
【0032】
この時、関連付けられた撮影オーダ情報は全ての撮影部に配信されているので、撮影に使用しなかった撮影部内には同じ内容の撮影オーダ情報が残っている。このまま次の撮影が実施された場合、別画像に対してこの撮影オーダ情報が関連付けられてしまうので、すべての撮影部においてこれを消去あるいは使用不可にする同期化が必要となる。撮影オーダ情報の同期化は、例えば撮影に使用された撮影部のローカル制御部12において、撮影オーダ情報と取得画像の関連付けが完了した時点で、同オーダの撮影完了通知を全撮影部のローカル制御部12に対して配信してもよい。あるいは、撮影に使用された撮影部のローカル制御部12が、マスタ撮影部1のシステム制御部14に同オーダの撮影完了通知を行い、それを受けたマスタ撮影部1のシステム制御部14が自身を含めた全撮影部のローカル制御部12に対して配信してもよい。
【0033】
あるいは、撮影に使用された撮影部からはマスタ撮影部1のシステム制御部14に撮影画像データが送信されるので、これを受信したマスタ撮影部1のシステム制御部14で受信した撮影画像データに付加された撮影オーダ情報を読み取り、該当する撮影オーダ情報の撮影完了通知を自身を含めた全撮影部のローカル制御部12に対して配信してもよい。撮影完了通知を受信した撮影部のローカル制御部12は、該当する撮影オーダ情報を記憶領域から削除する、または使用不可の情報を付加する。
【0034】
また、HIS/RIS端末7から撮影オーダ情報が配信され、かつ画像表示を必要としない場合は、マスタ撮影部1は不要ですべてスレーブ撮影部2のみでシステムを構築してもよい。これは病院外に持ち出して使用する際やモバイル放射線装置積載時など可搬性を特に重視する使用方法において特に有用である。
【0035】
以上説明したように、本発明の一実施形態では、マスタ撮影部1と複数のスレーブ撮影部2とが通信経路6を介して相互に通信可能に接続される。操作表示部3はマスタ撮影部1に接続される。通信経路6にはさらに放射線制御部4が接続されており、放射線制御部4の指示により放射線管球5から放射線が照射される。同じく通信経路6にはさらにHIS/RIS端末7、ストレージサーバ8、検像ワークステーション9が接続される。撮影オーダ情報は、操作表示部3またはHIS/RIS端末7から全ての撮影部に配信される。撮影オーダ情報を受信したすべての撮影部は放射線検出部11を撮影待機状態にして放射線撮影が実施されるのを待つ。放射線撮影が実施されると、撮影に使用された撮影部内で撮影オーダ情報と、撮影された放射線画像との関連付けが行われて出力される。実施された撮影オーダ情報は、撮影後にすべての撮影部から消去されるか、または使用禁止にされる。
【0036】
本発明によれば、撮影オーダ情報をシステム内のすべての撮影部に配信し、撮影直後に撮影画像と撮影オーダ情報との関連付けを撮影に使用した撮影部内において実施することによって、撮影システム内に存在する任意の撮影部を用いて撮影が可能で、かつ、撮影オーダ情報と撮影画像の関連付けが確実に実施される撮影システムを実現することができる。
【0037】
また、撮影システムを制御する機能をシステム内の所定の撮影部が担うため、撮影システム全体の可搬性に優れ、事故・災害時や自宅療養患者の往診時に病院外に持ち出しての使用や、モバイル放射線装置に撮影部を積載して病院内回診撮影システムを容易に構成可能な撮影システムを実現することができる。
【0038】
さらには、放射線撮影システム全体の可搬性を向上させつつ、システムコストを低減することが可能となる。
【0039】
別の実施形態では、上述した実施形態のマスタ撮影部1、スレーブ撮影部2において、マスタ機能とスレーブ機能とを適宜入れ替えて動作させる。例えば、放射線撮影システムに置いて2つの撮影部が存在している場合であって、マスタ撮影部1が他の放射線撮影システムで用いられるため、本システムとの関連付けが解除される場合である。かかる解除指示があった場合には、スレーブ撮影部2がマスタ撮影部として機能することとなる。また別の例では、複数の撮影オーダのそれぞれに利用すべき撮影部の情報が関連付けられている場合には、最も撮影回数の多い撮影部をマスタ撮影部1として選択することとしてもよい。また利用すべき撮影部でない撮影部については例えば省電力モードとしておくことで効率的な運用を実現することができる。逆に、撮影回数が最も少ない撮影部や、撮影回数が1以上の撮影部のうち、撮影回数が最も少ない撮影部をマスタ撮影部1として選定することで、放射線撮影システムの管理や制御といった処理を負荷の小さい撮影部に担当させることとなり、システムの堅牢性を向上させることができる。
【0040】
上述のマスタ撮影部の選択は、例えばある時点でマスタ撮影部となっている撮影部のシステム制御部14が撮影オーダの情報に基づいて選択する。撮影オーダに利用すべき撮影部の情報が関連付けられている場合には、当該利用すべき撮影部の情報を基に各撮影部による推定撮影回数を計算し、かかる計算結果を基に上述の通りマスタ撮影部を選択することとすればよい。あるいは、操作表示部3が上述の選択処理を実行することとしてもよい。また別の例では、操作表示部3がいずれかの撮影部を選択するための操作入力を受け付けることに応じてマスタ撮影部1を選択することとしてもよい。
【0041】
また別の実施形態によれば、マスタ撮影部1、スレーブ撮影部2によらず、撮影により得られる放射線画像データ等の情報を各撮影部が直接操作表示部3等に送信する。この場合、マスタ撮影部1では、マスタ撮影部1の放射線検出部11により得られる放射線画像と、複数の撮影オーダのうち当該放射線画像と対応する撮影オーダの識別情報とを関連付けてマスタ撮影部1のメモリに記憶させる第一の制御と、複数の撮影オーダのうちスレーブ撮影部2での撮影に対応する撮影オーダについて撮影が完了したことを示す情報と、撮影オーダを示す識別情報とを関連付けてメモリに記憶させる第二の制御を行う。かかる制御は、ローカル制御部12で実行することとしてもよいし、システム制御部14で行うこととしてもよいし、第一の制御をローカル制御部12で、第二の制御をシステム制御部14で行うこととしてもよい。
【0042】
またスレーブ撮影部2の通信部13は、複数の撮影オーダのうち1つの撮影オーダに対応する撮影が行われたことを示す情報を外部に送信する。ここで撮影が行われたことを示す情報と、スレーブ撮影部2のIDや、当該撮影オーダのIDとを関連付けてこれらの情報を合わせて外部に送信することとしてもよい。スレーブ撮影部2のID情報等がない場合には、情報の受信元で当該情報の送信元のMACアドレスやIPアドレスを基に送信元の装置が特定されることとなる。この外部の装置は、例えばマスタ撮影部1である。別の例でスレーブ撮影装置2はマスタ撮影部1に代えて直接HIS/RIS端末7やその他の中継端末に送信してもよいが、この場合にはマスタ撮影部1は別途かかる撮影が行われたことを示す情報を受信する。
【0043】
その他の実施形態として、マスタ撮影部1あるいはスレーブ撮影部2を統合的に管理する制御装置を別途設けることとしてもよい。この場合には、撮影オーダの情報及びその進捗状況を示す情報が、マスタ撮影部1またはスレーブ撮影部2で管理されるだけでなく、制御装置でも管理されることとなる。このようにすることで情報を正確に管理することができる。操作表示部3が当該制御装置として機能することとしてもよい。
【0044】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0045】
1:マスタ撮影部、2:スレーブ撮影部、3:操作表示部、4:放射線制御部、5:放射線管球、6:通信経路、7:HIS/RIS端末、8:ストレージサーバ、9:検像ワークステーション、11:放射線検出部、12:ローカル制御部、13:通信部、14:システム制御部、15:操作表示部検出部、16:マスタ指定部
図1
図2
図3
図4