特許第6434750号(P6434750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434750
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】スプリングシート
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20181126BHJP
   F16F 9/38 20060101ALI20181126BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F16F9/32 B
   F16F9/38
   B60G11/16
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-180618(P2014-180618)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-53409(P2016-53409A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】押江 雄己
(72)【発明者】
【氏名】永田 一生
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/179692(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010028290(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0082037(US,A1)
【文献】 特開2014−114884(JP,A)
【文献】 特開2003−343634(JP,A)
【文献】 特開平09−100858(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166940(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0158393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
F16F 1/00− 6/00
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰機構を内蔵するシリンダに取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたスプリングの当該車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、
前記シリンダの周囲に設けられて前記スプリングを支持する金属部材と、
前記金属部材の車体側に配置され、前記スプリングが配置される受圧部と、当該受圧部の径方向の外側に構成された外側部と、当該外側部に連結され、当該金属部材に支持されている支持部と、を有する樹脂部材と、
を備え
前記外側部は、前記受圧部の前記スプリング側の表面から、前記車体側に行くに従って径が徐々に拡がるように傾斜しており、
前記支持部は、前記外側部における前記金属部材側の側面から、前記金属部材における前記スプリングの荷重を受止める荷重受部の方へ延びて前記金属部材に支持されている
スプリングシート。
【請求項2】
前記樹脂部材は、前記外側部の前記スプリング側の側面に第1リブを備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記外側部の前記車輪側の側面に第2リブを備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項4】
前記受圧部の前記金属部材側の側面に第3リブを備えている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記スプリング側の側面にたまる可能性がある液体を前記車輪側へ排出する排出機構を有する請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項6】
前記樹脂部材、前記金属部材、及び前記シリンダの内、少なくとも隣接する2つの部材の位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構を有する請求項1からのいずれか1項に記載のスプリングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に備えられるスプリングの圧縮荷重を受けるスプリングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸架装置(サスペンション)に備えられたコイルスプリングの圧縮荷重を、金属製のスプリングシートにて受ける技術が提案されている。
例えば特許文献1には、以下の事項が記載されている。図13は、特許文献1に記載された懸架装置4の概略構成を示す図である。車両の懸架装置4は、図13に示すように、金属製のコイルスプリング20と、緩衝器12に固定されてコイルスプリング20の圧縮荷重を受ける金属製のスプリングシート18とを備えている。このスプリングシート18は、コイルスプリング20と車輪3との間に配置される部分の半径方向長さは短い。このため、スプリングシート18は、コイルスプリング20が破損した場合に、コイルスプリング20の破片が車輪3の方へ向かうのを抑制できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−144872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全性を担保するためには、スプリングシートが支持するスプリングが破損した場合に、スプリングの破片が車輪へ脱落するのを抑制することが望ましい。この対策の一例として、スプリングシートが金属製である場合、スプリングシートに、スプリング破片の脱落を抑制する部位を設けることが挙げられる。しかしながら、スプリングシートは、抑制部位の分重くなってしまうため、軽量化を図り難い。
【0005】
スプリングの破片が車輪へ脱落するのを抑制する部位や部品を、樹脂などの金属よりも軽い材質で成形することで軽量化を図ることが考えられる。そして、樹脂などの金属よりも軽い材質で成形する場合には、脱落したスプリングの破片を受け止めるための強度を確保することが必要となる。
【0006】
本発明は、軽量化を図ることができると共に破損したスプリングが車輪へ脱落するのを確度高く抑制することができるスプリングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、減衰機構を内蔵するシリンダに取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたスプリングの当該車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、前記シリンダの周囲に設けられて前記スプリングを支持する金属部材と、前記金属部材の車体側に配置され、前記スプリングが配置される受圧部と、当該受圧部の径方向の外側に構成された外側部と、当該外側部に連結され、当該金属部材に支持されている支持部と、を有する樹脂部材と、を備え、前記外側部は、前記受圧部の前記スプリング側の表面から、前記車体側に行くに従って径が徐々に拡がるように傾斜しており、前記支持部は、前記外側部における前記金属部材側の側面から、前記金属部材における前記スプリングの荷重を受止める荷重受部の方へ延びて前記金属部材に支持されているスプリングシートである。
【0008】
スプリングシートが金属部材と樹脂部材とを備えることにより、金属部材のみで同じ形状である場合と比較すると、スプリングシートが軽くなる。また、スプリングと車輪との間に樹脂部材の外側部が配置されることにより、仮にスプリングが破損したとしても、破損したスプリングが車輪へ脱落することが抑制される。また、樹脂部材は、外側部を支持し、金属部材に連結されている支持部を有しているので、破損したスプリングの破片により外側部が大きな力を受けたとしても樹脂部材自体が破壊されることが抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化を図ることができると共に破損したスプリングが車輪へ脱落するのを確度高く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る懸架装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る懸架装置を車輪に取り付けた状態を示す概略図である。
図3】(a)は、金属シート及び樹脂シートを上方から見た斜視図であり、(b)は、樹脂シートを下方から見た斜視図である。
図4】下スプリングシートの拡大断面図である。
図5】第2の実施形態に係る下スプリングシートの断面図である。
図6】第3の実施形態に係る下スプリングシートの断面図である。
図7】(a)は、第2の実施形態に係る樹脂シートの変形例を示す断面図である。(b)は、第3の実施形態に係る樹脂シートの変形例を示す断面図である。
図8】(a)及び(b)は、第1の変形例に係る位置ずれ抑制機構を示す図である。
図9】(a)及び(b)は、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構を示す図である。
図10】(a)及び(b)は、第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構を示す図である。
図11】懸架装置の変形例を示す図である。
図12】樹脂シートの変形例を示す図である。
図13】特許文献1に記載された懸架装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る懸架装置1の概略構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係る懸架装置1を車輪に取り付けた状態を示す概略図である。
懸架装置1は、ストラット式サスペンションであり、図1に示すように、減衰機構(不図示)を内蔵するシリンダ10と、このシリンダ10内に収納されたピストン(不図示)を支持するピストンロッド20と、を備えている。
【0012】
シリンダ10は、円筒状の外シリンダ11を有し、この外シリンダ11内に、円筒状の内シリンダ(不図示)と、この内シリンダ内を往復動するピストンと、減衰力を発生する複数のバルブ装置と、を備えている。
【0013】
ピストンロッド20は、円柱状または円筒状の部材であり、円柱または円筒の中心線方向の一方の端部側にシリンダ10内に収納されるピストン(不図示)が取り付けられ、中心線方向の他方の端部側にナット21が取り付けられている。以下、ピストンロッド20の中心軸20aの方向(軸方向(円柱または円筒の中心線方向))を、単に「上下方向」と称す場合がある。
【0014】
また、懸架装置1は、シリンダ10の外側に配置されたコイルスプリング30と、シリンダ10の外周に取り付けられてコイルスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、を備えている。
【0015】
また、懸架装置1は、上端部側に取り付けられてコイルスプリング30の上端部を支持する上スプリングシート36と、コイルスプリング30と上スプリングシート36との間に介在する上シートラバー37と、を備えている。
【0016】
本実施形態では、コイルスプリング30は、例えば、両端部の座巻数が1/2である左巻きに、断面円形の金属線材を屈曲させることによりコイル状に成形された圧縮ばねである。
下スプリングシート31については、後で詳述する。
【0017】
上シートラバー37は、図1に示すように、コイルスプリング30の上端部と上スプリングシート36との間に介在する円環状の円環状部位371と、円環状部位371の下端部から下方に伸びる蛇腹状のダストカバー372とが連続するように一体成形されている。
【0018】
また、懸架装置1は、ピストンロッド20の上端部側に取り付けられて、この懸架装置1を車両に取り付けるための車体側取付ブラケット40を備えている。また、懸架装置1は、シリンダ10の下端部側に固定されて、この懸架装置1を車輪に取り付けるための車輪側取付ブラケット50を備えている。また、懸架装置1は、シリンダ10における上下方向の中央部に固定されて、スタビライザー(不図示)の端部を連結するためのスタビライザー取付アーム51を備えている。
【0019】
また、懸架装置1は、上スプリングシート36と車体側取付ブラケット40の後述する下マウントベース43との間に配置された円環状のベアリング38を備えている。また、懸架装置1は、上スプリングシート36に溶接され、上スプリングシート36とベアリング38との間に介在する円環状の金属板39を備えている。
【0020】
車体側取付ブラケット40は、上下方向に並べて配置された凹状の部材と凸状の部材から構成されるステー41を備えている。また、車体側取付ブラケット40は、上下方向に並べて配置された上マウントベース42および下マウントベース43と、ステー41と上マウントベース42との間に設けられたマウントラバー44とを備えている。
【0021】
下マウントベース43の下面には、後述するバンプラバー61を保持する凸状のバンプラバー保持部材45が溶接されている。
【0022】
この車体側取付ブラケット40は、ステー41がピストンロッド20の上端部に挿入されてナット21で締結されることにより、ピストンロッド20に装着される。また、車体側取付ブラケット40は、上マウントベース42および下マウントベース43に貫通されたボルト46により車体に取り付けられる。
【0023】
また、懸架装置1は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の外周を囲むように配置されたバンプラバー61を備えている。
バンプラバー61は、下端部(車輪側)から上端部(車体側)に向けて外径が段々と大きくなるように形成されている。そして、バンプラバー61の上端部が、車体側取付ブラケット40のバンプラバー保持部材45の内側に嵌め込まれている。
【0024】
以上のように構成された懸架装置1は、図2に示すように、車輪側取付ブラケット50に取り付けたアーム101を介して、車輪110のホイール111に固定されている。また、懸架装置1は、車体側取付ブラケット40を介して車両の車体に取り付けられる。
【0025】
そして、懸架装置1は、車両が路面から受ける衝撃力をコイルスプリング30の弾発力により吸収するように伸縮する。そして、懸架装置1は、その伸縮に伴うピストン(不図示)の往復動時に、シリンダ10に内蔵された減衰機構が発生する減衰力により、伸縮の際に生じる振動を抑制する。
なお、懸架装置1が車両に取り付けられた状態において、車輪110が旋回するのに伴ってシリンダ10とともに下スプリングシート31およびコイルスプリング30が回転する。
【0026】
<第1の実施形態>
次に、第1の実施形態に係る下スプリングシート31について説明する。
図3(a)は、金属シート310及び樹脂シート320を上方から見た斜視図であり、図3(b)は、樹脂シート320を下方から見た斜視図である。
図4は、下スプリングシート31の拡大断面図である。
【0027】
第1の実施形態に係る下スプリングシート31は、減衰機構を内蔵するシリンダ10に取り付けられると共に、車体と車輪との間に配置されたコイルスプリング30の車輪側の端部を支持するスプリングシートであって、シリンダ10の周囲に設けられてコイルスプリング30を支持する金属部材の一例としての金属シート310と、金属シート310の車体側に配置され、コイルスプリング30が配置される受圧部324と、受圧部324の径方向の外側に構成された外側部325と、外側部325に連結され、金属シート310に支持されている支持部の一例としての下面側傾斜リブ332と、を有する樹脂部材の一例としての樹脂シート320と、を備える。
【0028】
また、下スプリングシート31は、金属シート310、樹脂シート320及びシリンダ10の内、少なくとも隣接する2つの部材の位置ずれを抑制する位置ずれ抑制機構400を有する。
以下に、金属シート310、樹脂シート320及び位置ずれ抑制機構400について詳述する。
【0029】
(金属シートの構成)
金属シート310は、上下方向に伸びる円筒状の第1円筒状部311と、第1円筒状部311の下方において円筒状の一部に矩形の金属側矩形面312aが形成された所謂D字状で筒状のD字状部312とを有している。また、金属シート310は、第1円筒状部311とD字状部312とを接続するように上下方向に対して傾斜した傾斜部313を有している。また、金属シート310は、D字状部312における下端部から上下方向に直交する方向に外側に向かい、コイルスプリング30の荷重を受止める荷重受部314を有している。
【0030】
ここで、図4に示すように、シリンダ10の外シリンダ11は、シリンダ部11cと、金属シート310の第1円筒状部311が嵌め合わされる嵌合部11aと、シリンダ部11cよりも半径方向外側へ突出して金属シート310の上下方向の位置を定める位置決め部11bと、を有している。
【0031】
嵌合部11aは、シリンダ部11cと略同じ形状の部位である。
位置決め部11bは、嵌合部11aよりも半径方向外側へ突出した凸部11dを有している。
なお、外シリンダ11は、金属製のパイプがプレス加工されることにより成形され、その際、位置決め部11bなどは、バルジ成形にて成形されることを例示することができる。また、シリンダ部11cや嵌合部11aを1つのパイプにて形成すると共に、このパイプに別部材の位置決め部11bを、例えば、溶接などにて固定してもよい。
【0032】
そして、金属シート310の第1円筒状部311の内径と外シリンダ11の嵌合部11aの外径とは、第1円筒状部311と嵌合部11aとがしまりばめで嵌め込まれるような寸法関係である。つまり、金属シート310は、第1円筒状部311が外シリンダ11の嵌合部11aに圧入されることで外シリンダ11に固定される。
【0033】
D字状部312の内面の大きさは、外シリンダ11の位置決め部11bの外面の大きさ以上に設定されている。
【0034】
傾斜部313は、下方に行くに従って径が徐々に拡がるように傾斜している。この傾斜部313が外シリンダ11の位置決め部11bと接触することで、金属シート310の下方への移動が抑制される。付言すれば、金属シート310が外シリンダ11に圧入される際に傾斜部313が位置決め部11bに突き当たるまで圧入されることで両者の上下方向の位置が定まる。
【0035】
荷重受部314は、基本的には円盤状の部位であり、図4に示すように、その外径Doは、コイルスプリング30の下端部における中心径Dcよりも大きい(Do>Dc)。
【0036】
(樹脂シートの構成)
樹脂シート320は、上下方向に伸びる円筒状の第1円筒状部321と、第1円筒状部321の下方において円筒状の一部に矩形の樹脂側矩形面322aが形成された所謂D字状で筒状のD字状部322とを有している。また、樹脂シート320は、第1円筒状部321とD字状部322とを接続するように上下方向に対して傾斜した傾斜部323を有している。
【0037】
また、樹脂シート320は、傾斜部323から上下方向に直交する方向に外側に向かい、コイルスプリング30の下端部を支持する受圧部324と、受圧部324よりも外側の部位に設けられた外側部325と、を有している。
外側部325は、受圧部324のコイルスプリング30側の表面から車体側へ傾斜している。外側部325は、受圧部324の最外径部から上方に行くに従って径が徐々に拡がるように全周に渡って形成されている。
【0038】
また、樹脂シート320は、受圧部324におけるコイルスプリング30側の面(上面)に、コイルスプリング30の下端部を載せるための載置部327を有している。
また、樹脂シート320は、受圧部324上に、載置部327の内側と外側に配置され、受圧部324から上方に突出し、コイルスプリング30の下端部が半径方向の内側と外側へ移動するのをそれぞれ抑制する内側抑制部328と外側抑制部329とを有している。
【0039】
本実施形態に係るコイルスプリング30の座巻数は1/2であることから、コイルスプリング30の下端部は略180度に亘って載置部327と接触する。内側抑制部328及び外側抑制部329は、略180度に亘ってコイルスプリング30の下端部が移動するのを抑制する。
【0040】
また、樹脂シート320は、内側抑制部328及び外側抑制部329の開始地点に、受圧部324から上方に突出する直方体状の上方突出部330を有している。コイルスプリング30の下端部の先端がこの上方突出部330に突き当たることで、コイルスプリング30の円周方向の回転が抑制される。なお、コイルスプリング30の下端部と載置部327とが接触するのは180度以外でもよい。
【0041】
また、樹脂シート320は、コイルスプリング30と車輪110との間に配置されるリブを有する。例えば、樹脂シート320は、受圧部324の金属シート310側の側面(下面)に第3リブの一例としての下方リブ331を有している。下方リブ331は、受圧部324の金属シート310側の面(下面)から金属シート310の荷重受部314の方へ下方に延びるリブである。また、樹脂シート320は、外側部325における金属シート310側の側面から金属シート310の荷重受部314の方へ先端332aが上下方向に対して斜め方向(図4の矢印S1の方向)となるように延びる下面側傾斜リブ332を有している。
【0042】
下方リブ331は、図3(b)に示すように、周方向に延びる複数の下面側周方向リブ331aと、径方向に延びる複数の下面側径方向リブ331bとを有している。
下面側傾斜リブ332は、図3(b)に示すように、径方向に延びるリブであって、下方リブ331の下面側径方向リブ331bと連続するように形成されたリブである。下面側傾斜リブ332の先端(下端)332aが上下方向に対して傾斜している。下面側傾斜リブ332は、外側部325を支持し、金属シート310に連結されている支持部の一例として機能する。
【0043】
また、樹脂シート320は、外側部325のコイルスプリング30側の側面に第1リブの一例としての上面側傾斜リブ333を備えている。上面側傾斜リブ333は、図3(a)に示すように、受圧部324におけるコイルスプリング30側の面(上面)と外側部325におけるコイルスプリング30側の側面とを接続するように斜め方向に延びるリブである。
上面側傾斜リブ333は、径方向に延びるリブであり、周方向に複数設けられている。
【0044】
また、樹脂シート320は、外側部325におけるコイルスプリング30側の側面に、隣り合う上面側傾斜リブ333を接続するように周方向に延びる上面側周方向リブ334を有している。
上面側周方向リブ334は、径方向に複数形成されている。図3(a)に示した例では、上面側周方向リブ334は、下から1番目の第1上面側周方向リブ334aと、下から2番目の第2上面側周方向リブ334bと、下から3番目の第3上面側周方向リブ334cと、下から4番目の第4上面側周方向リブ334dとを有している。第1上面側周方向リブ334a、第2上面側周方向リブ334b、第3上面側周方向リブ334c及び第4上面側周方向リブ334dにおける中心からの半径を、それぞれRa、Rb、Rc、Rdとすると、Ra<Rb<Rc<Rdである。
【0045】
また、樹脂シート320には、コイルスプリング30側の側面に溜まる可能性がある水などの液体を、コイルスプリング30側の側面から車輪側に排出する排出機構の一例としての排出孔325h,スリット334sが形成されている。排出孔325hは、各上面側傾斜リブ333間に一つ形成されている。図3(a)に示した例では、第2上面側周方向リブ334bと第3上面側周方向リブ334cとの間に形成されている。そして、排出孔325hよりも上方にある、第3上面側周方向リブ334cと、第4上面側周方向リブ334dとには、液体を下にある第2上面側周方向リブ334bの方へ流すためのスリット334sが形成されている。これにより、第3上面側周方向リブ334cや第4上面側周方向リブ334dに溜まった液体が、スリット334s、排出孔325hを介して、樹脂シート320の下方へ排出される。なお、外側部325は、各排出孔325hが低くなるように傾斜しているとよい。
【0046】
また、樹脂シート320の受圧部324にも、コイルスプリング30側の側面に溜まる可能性がある液体を車輪側に排出する排出機構の一例としての排出孔324hが形成されている。排出孔324hは、各上面側傾斜リブ333間に一つ形成されている。そして、排出孔324hよりも上方にある、第1上面側周方向リブ334aには、液体を受圧部324の方へ流すためのスリット334sが形成されている。これにより、第1上面側周方向リブ334aに溜まった液体が、スリット334s、排出孔324hを介して、樹脂シート320の下方へ排出される。第1上面側周方向リブ334aに形成されたスリット334sは、コイルスプリング30側の側面(上面)から排出孔324hを介して車輪側に液体を排出する排出機構の一例として機能する。なお、受圧部324は、各排出孔324hが低くなるように傾斜しているとよい。
【0047】
なお、樹脂シート320の材料としては、ABS、エンジニアリング・プラスチック、ポリカーボネイト、ウレタン、ナイロンであることを例示することができる。
【0048】
上述した金属シート310及び樹脂シート320において、樹脂シート320における第1円筒状部321、D字状部322及び傾斜部323の大きさは、金属シート310における第1円筒状部311、D字状部312及び傾斜部313の大きさよりも大きい。そして、樹脂シート320と金属シート310とはすきまばめで嵌り合っている。
【0049】
そして、樹脂シート320の下方リブ331及び下面側傾斜リブ332の下端部と、金属シート310の荷重受部314側の面(上面)とが接触するように金属シート310と樹脂シート320とは上下方向に重ねて配置される。これにより、樹脂シート320の下方への移動が抑制される。
【0050】
また、金属シート310のD字状部312と樹脂シート320のD字状部322とが嵌り合い、これらD字状部312及びD字状部322における周方向の一部に形成された矩形の面同士である金属側矩形面312a及び樹脂側矩形面322aが径方向に対向する。そして、樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、これら径方向に対向する金属側矩形面312aと樹脂側矩形面322aとが接触する。これにより、金属シート310に対する樹脂シート320の回転が抑制される。つまり、上述した位置ずれ抑制機構400は、金属シート310のD字状部312と樹脂シート320のD字状部322とを有して構成される。
【0051】
位置ずれ抑制機構400により、金属シート310に対する樹脂シート320の回転が抑制されるので、金属シート310に対して樹脂シート320が相対的に移動することに起因して音が生じることが抑制される。
【0052】
以上説明したように構成された下スプリングシート31においては、コイルスプリング30の荷重を受止める部位には金属シート310を設け、コイルスプリング30の荷重を受止める部位よりも外側では樹脂シート320のみを設けている。それゆえ、下スプリングシート31全てを金属にて成形するのと比較すると、下スプリングシート31の軽量化を図ることができ、ひいては懸架装置1の軽量化を図ることができる。
【0053】
また、下スプリングシート31の材料として樹脂を採用することで、成形型を用いて任意の形状に成形することができる。たとえ、内側抑制部328、外側抑制部329および上方突出部330などを有する凹凸のある形状であったとしても容易に成形することができる。つまり、下スプリングシート31が全て金属である場合には、例えば板金をプレス加工することで凹凸をつけるため、多数の金型および多数の工程が必要となる。しかしながら、下スプリングシート31の一部の材料として樹脂を用いることで射出成形(インジェクション成形)にて成形することができるので、凹凸を有する複雑な形状であったとしても、金属の場合よりも容易に成形することができる。
【0054】
また、樹脂を用いることで形状の自由度も高まるので、内側抑制部328および外側抑制部329や、載置部327の形状をコイルスプリング30の下端部の形状に精度高く合わせることができる。それゆえ、コイルスプリング30と下スプリングシート31との間に、例えば砂などが入り込むことを抑制することができる。
【0055】
また、下スプリングシート31全てが金属である場合には、金属のコイルスプリング30と直接接触することに起因する音を抑制するなどのためには、下スプリングシート31とコイルスプリング30との間にゴムなどの弾性部材を設ける必要がある。しかしながら、本実施形態では、コイルスプリング30と直接接触する部位には樹脂シート320が存在するので、弾性部材を削減することができる。
【0056】
また、樹脂シート320には、受圧部324よりも外側の部位に外側部325が設けられており、図2に示すように、懸架装置1が車両に取り付けられた状態において、この外側部325がタイヤ112とコイルスプリング30との間に位置するように配置される。それゆえ、たとえコイルスプリング30が破損したとしても、下スプリングシート31の外側部325が、コイルスプリング30の破片がタイヤ112の方へ向かうのを抑制する。
【0057】
そして、本実施の形態に係る樹脂シート320においては、コイルスプリング30側の側面に、外側部325と受圧部324とを接続する上面側傾斜リブ333や上面側周方向リブ334が設けられている。それゆえ、本実施の形態に係る樹脂シート320は、上面側傾斜リブ333や上面側周方向リブ334が設けられていない構成と比較すると強度が大きい。その結果、本実施の形態に係る樹脂シート320は、コイルスプリング30の破片が脱落したとしても確度高く脱落したコイルスプリング30の破片を受け止める。
【0058】
さらに、本実施の形態に係る樹脂シート320においては、外側部325における金属シート310側の側面に、外側部325から金属シート310の荷重受部314の方へ延びる下面側傾斜リブ332が設けられている。それゆえ、本実施の形態に係る樹脂シート320は、外側部325にかかった力が下面側傾斜リブ332を介して金属シート310に伝わる。
【0059】
つまり、(樹脂シート320の半径方向外側に位置する)外側部325における金属シート310側の側面から金属シート310の方(半径方向内側)へ延びる下面側傾斜リブ332が、外側部325が受ける力を金属シート310へ伝達する伝達部の一例として機能する。それゆえ、コイルスプリング30の破片が外側部325に脱落することにより外側部325にかかった力を金属シート310で受け止めるので外側部325が破壊されることが抑制される。
【0060】
これらにより、本実施の形態に係る下スプリングシート31によれば、コイルスプリング30の破片がタイヤ112に刺さり、タイヤ112がバーストしてしまうことが抑制される。
【0061】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る下スプリングシート34の断面図である。
第2の実施形態に係る下スプリングシート34は、第1の実施形態に係る下スプリングシート31と同様に金属シート340と樹脂シート350とを有している。以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0062】
第2の実施形態に係る金属シート340は、荷重受部314における最外径部314aから、上下方向に対して斜め下方向(図5の矢印S2の方向)に延びる外側傾斜部345を有している。
【0063】
第2の実施形態に係る樹脂シート350は、外側部325における金属シート310側の側面から金属シート340の外側傾斜部345の方へ先端352aが上下方向に対して斜め方向(図5の矢印S3の方向)となるように延びる下面側傾斜リブ352を有している。下面側傾斜リブ352は、下方リブ331の下面側径方向リブ331bと連続するように形成されたリブであり、周方向に複数設けられている。
【0064】
そして、第2の実施形態に係る樹脂シート350は、外側部325の車輪110側の側面に第2リブの一例としての外側下方リブ355を備えている。外側下方リブ355は、外側部325における車輪110側の側面から下方に延びるリブである。
外側下方リブ355は、隣り合う下面側傾斜リブ352間を接続するように周方向に延びるリブでもあり、径方向に複数設けられている。外側下方リブ355の高さH(外側部325の下面325aからの突出量)は、下面側傾斜リブ352の高さと同じである。
なお、樹脂シート350は、第1の実施形態に係る樹脂シート320が有している上面側傾斜リブ333及び上面側周方向リブ334を有していない。
【0065】
以上のように構成された第2の実施形態に係る下スプリングシート34においては、外側部325における金属シート310側の側面に、外側部325から金属シート340の外側傾斜部345の方へ延びる複数の下面側傾斜リブ352が設けられている。それゆえ、外側部325にかかった力が下面側傾斜リブ352を介して金属シート340に伝わる。
【0066】
また、下面側傾斜リブ352間を接続するように外側下方リブ355が設けられており、下面側傾斜リブ352が補強されている。それゆえ、コイルスプリング30の破片が外側部325に脱落することにより外側部325にかかった力を金属シート340で受け止めるので外側部325が破壊されることが抑制される。
【0067】
したがって、本実施形態に係る下スプリングシート34においても、コイルスプリング30の破片がタイヤ112に刺さり、タイヤ112がバーストしてしまうことが確度高く抑制される。
【0068】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る下スプリングシート35の断面図である。
第3の実施形態に係る下スプリングシート35は、第2の実施形態に係る下スプリングシート34の金属シート340と同じ金属シート360と、樹脂シート370とを有している。以下では、第2の実施形態に係る下スプリングシート34と異なる点を中心に説明する。
【0069】
第3の実施形態に係る樹脂シート370は、外側部325における金属シート310側の側面から金属シート360の外側傾斜部345の方へ上下方向に対して斜め方向(図6の矢印S4の方向)に延びる外側斜めリブ375を有している。外側斜めリブ375は、隣り合う下面側傾斜リブ352間を接続するように周方向に延びるリブでもあり、径方向に複数設けられている。また、図6に示した断面図で見た場合の外側斜めリブ375の傾斜角度は、金属シート360の外側傾斜部345に略直交する角度である。そして、外側斜めリブ375の先端が金属シート340の外側傾斜部345に接触するように成形されている。
【0070】
第3の実施形態に係る下スプリングシート35においては、外側部325における金属シート360側の側面に、外側部325から金属シート360の外側傾斜部345の方へ延びる複数の下面側傾斜リブ352と複数の外側斜めリブ375とが設けられている。それゆえ、外側部325にかかった力が下面側傾斜リブ352及び外側斜めリブ375を介して金属シート360に伝わる。その結果、コイルスプリング30の破片が外側部325に脱落することにより外側部325にかかった力を金属シート360で受け止めるので外側部325が破壊されることが抑制される。
【0071】
したがって、本実施形態に係る下スプリングシート35においても、コイルスプリング30の破片がタイヤ112に刺さり、タイヤ112がバーストしてしまうことが確度高く抑制される。
【0072】
<第2の実施形態に係る樹脂シート、第3の実施形態に係る樹脂シートの変形例>
図7(a)は、第2の実施形態に係る樹脂シート350の変形例を示す断面図である。図7(b)は、第3の実施形態に係る樹脂シート370の変形例を示す断面図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、上述した第2の実施形態に係る樹脂シート350及び第3の実施形態に係る樹脂シート370は、第1の実施形態に係る樹脂シート320が有している上面側傾斜リブ333及び上面側周方向リブ334を有していてもよい。
【0073】
これにより、コイルスプリング30側の側面に設けられた上面側傾斜リブ333や上面側周方向リブ334が、樹脂シート350及び樹脂シート370の強度を高める。その結果、樹脂シート350、370は、コイルスプリング30の破片が脱落したとしても確度高く脱落したコイルスプリング30の破片を受け止める。
【0074】
<位置ずれ抑制機構の変形例>
上述した実施形態においては、金属シート310のD字状部312と樹脂シート320のD字状部322とで、位置ずれ抑制機構400を構成しているが特にかかる態様に限定されない。以下に、位置ずれ抑制機構400の変形例について、第1の実施形態に係る金属シート310と樹脂シート320とを例にとり説明するが、その他の実施形態に係る金属シートと樹脂シートにも同様に適用することができる。
【0075】
図8(a)及び図8(b)は、第1の変形例に係る位置ずれ抑制機構400を示す図である。図8(a)は、第1の変形例に係る金属シート310を上方から見た斜視図であり、図8(b)は、第1の変形例に係る樹脂シート320を下方から見た斜視図である。
第1の変形例に係る金属シート310は、図8(a)に示すように、D字状部312の代わりに円筒状の円筒状部316を有する。また、第1の変形例に係る金属シート310は、荷重受部314に、周方向の所定の領域に渡って下方に凹んだ凹部317が周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。
【0076】
他方、第1の変形例に係る樹脂シート320においては、D字状部322の代わりに円筒状の円筒状部335を有する。また、第1の変形例に係る樹脂シート320は、受圧部324の下方リブ331の先端が周方向の所定の領域に渡って下方に突出した下方凸部336を有する。下方凸部336は、金属シート310の凹部317の形状に沿うように周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。
【0077】
そして、第1の変形例に係る金属シート310の凹部317と第1の変形例に係る樹脂シート320の下方凸部336とが嵌り合うように配置される。そして、第1の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、凹部317と下方凸部336における周方向に対向する面同士である金属側側面317aと樹脂側側面336aとが接触する。これにより、第1の変形例に係る金属シート310に対する第1の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0078】
すなわち、第1の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第1の変形例に係る金属シート310の凹部317と、第1の変形例に係る樹脂シート320の下方凸部336とを有する。
【0079】
図9(a)及び図9(b)は、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400を示す図である。図9(a)は、第2の変形例に係る金属シート310を上方から見た斜視図であり、図9(b)は、第2の変形例に係る樹脂シート320を下方から見た斜視図である。
第2の変形例に係る金属シート310は、図9(a)に示すように、上述したD字状部312の代わりに、六角筒状の金属側六角筒状部318を有している。
【0080】
他方、第2の変形例に係る樹脂シート320は、上述した第2円筒状部322の代わりに、六角筒状の樹脂側六角筒状部337を有している。
【0081】
そして、第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部318と第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部337とが嵌り合う。そして、第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部337における径方向に直交する樹脂側矩形面337aと第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部318における径方向に直交する金属側矩形面318aとが対向する。そして、第2の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、これら径方向に対向する樹脂側矩形面337aと金属側矩形面318aとが接触する。これにより、第2の変形例に係る金属シート310に対する第2の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0082】
すなわち、第2の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第2の変形例に係る金属シート310の金属側六角筒状部318と、第2の変形例に係る樹脂シート320の樹脂側六角筒状部337とを有して構成される。
【0083】
図10(a)及び図10(b)は、第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400を示す図である。図10(a)は、第3の変形例に係る金属シート310を上方から見た斜視図であり、図10(b)は、第3の変形例に係る樹脂シート320を下方から見た斜視図である。
第3の変形例に係る金属シート310は、図10(a)に示すように、D字状部312の代わりに円筒状の円筒状部316を有する。また、第3の変形例に係る金属シート310は、荷重受部314に、上下方向の貫通する貫通孔319が周方向に複数(本実施形態においては3つ)形成されている。貫通孔319は、図10(a)に示すように、径方向が長辺で周方向が短辺となる長方形である。
【0084】
他方、第3の変形例に係る樹脂シート320においては、D字状部322の代わりに円筒状の円筒状部335を有する。また、第3の変形例に係る樹脂シート320は、受圧部324の下方リブ331の下面側径方向リブ331bの先端が下方に突出する下方突出部338を有する。下方突出部338は、金属シート310の貫通孔319よりも小さな形状であり、周方向に等間隔に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。
【0085】
そして、第3の変形例に係る金属シート310の貫通孔319と第3の変形例に係る樹脂シート320の下方突出部338とが嵌り合うように配置される。そして、第3の変形例に係る樹脂シート320がコイルスプリング30により周方向の荷重を受けた場合、貫通孔319と下方突出部338とが接触する。これにより、第3の変形例に係る金属シート310に対する第3の変形例に係る樹脂シート320の周方向への移動が抑制される。
【0086】
すなわち、第3の変形例に係る位置ずれ抑制機構400は、第3の変形例に係る金属シート310の貫通孔319と、第3の変形例に係る樹脂シート320の下方突出部338とを有して構成される。
【0087】
上述した位置ずれ抑制機構400の変形例においても、下スプリングシート31を金属シート310と樹脂シート320とを有して構成して軽量化を図りつつ、金属シート310に対して樹脂シート320が相対的に移動することに起因して音が生じることをより確実に抑制できる。
【0088】
図11は、懸架装置1の変形例を示す図である。
上述した懸架装置1は、下スプリングシート31,34,35における樹脂シート320,350,370がコイルスプリング30と直接接触する構成である。しかしながら、懸架装置1は、図11に示すように、樹脂シート320,350,370とコイルスプリング30との間にゴムなどの弾性部材60を有してもよい。
【0089】
図12は、樹脂シート320,350,370の変形例を示す図である。図12は、樹脂シート320,350,370を上方から見た斜視図である。
上述した樹脂シート320,350,370は、コイルスプリング30側の側面に溜まる可能性がある液体を、コイルスプリング30側の側面から車輪側に排出するために、排出孔324h、排出孔325h、スリット334sを有している。しかしながら、図12に示すように、樹脂シート320,350,370は、排出孔324h、排出孔325h、スリット334sを有していなくてもよい。樹脂シート320,350,370に、排出孔324h、排出孔325h、スリット334sが形成されていないことで、樹脂シート320,350,370の強度が大きくなる。
【符号の説明】
【0090】
1…懸架装置、10…シリンダ、20…ピストンロッド、30…コイルスプリング、31,34,35…下スプリングシート、310,340,360…金属シート、320,350,370…樹脂シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13