(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンに比べて排ガス温度が高く、PMの排出量が少ないという長所がある。そのため、ガソリンエンジン用のフィルタにおいては、ディーゼルエンジン用のフィルタと比べて、PMの捕集効率が低くてもよいと考えられる。
一方、ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンに比べて燃費が劣るという欠点がある。そのため、ガソリンエンジンから排出される排ガスを浄化することを考えた場合、排ガスを浄化するためのフィルタには、圧力損失が低いことが求められる。また、フィルタの温度が上がりすぎると機械的な強度が低下し破壊されやすくなるので、フィルタの温度が上がりすぎないように、充分な熱容量が求められる。
【0010】
特許文献1に開示されたハニカム構造体を、ガソリンエンジンのような排ガス温度が高く、PMの排出量が少ない環境で使用すると、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低くなりにくい。この初期の圧力損失を低くするためには、セル隔壁の厚さをより薄くすることが考えられるが、セル隔壁の厚さを薄くすると、熱容量が小さくなり、排ガスが流入した際に多孔質セラミック部材(ハニカム焼成体)の温度が必要以上に高くなると考えられる。多孔質セラミック部材(ハニカム焼成体)の温度が必要以上に高くなると、多孔質セラミック部材(ハニカム焼成体)自身が熱により破損したり、担持された触媒が失活することになる。また、セル隔壁の厚さを薄くすると多孔質セラミック部材(ハニカム焼成体)の強度が低下し、破損しやすくなると考えられる。
すなわち、特許文献1に開示されたハニカム構造体はガソリンエンジン用のハニカムフィルタとして充分な性能を有しているとは言えなかった。
【0011】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低く、強度が充分に強く、熱容量の低下を抑制することができるハニカム焼成体、該ハニカム焼成体を用いたハニカムフィルタ及び該ハニカム焼成体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、セル隔壁を薄くし、ハニカム焼成体の最外周部に配置された外周セルの形状を所定の形状とすることで、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失を充分に低く、強度を充分に強くすることができ、熱容量の低下を抑制できることを見出し本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明のハニカム焼成体は、一方の端部が封止されており排ガスの流路となる複数のセルと、上記セルを区画形成する多孔質のセル隔壁とを備えたハニカム焼成体であって、上記ハニカム焼成体の構成材料はSiCであり、上記複数のセルは、上記ハニカム焼成体の最外周部に配置された外周セルと、上記外周セルより内側に配置された内部セルを含み、上記各内部セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、同一の矩形であり、上記外周セルは、上記セル隔壁及び上記ハニカム焼成体の外周を形成する外周壁から形成され、上記外周壁と接続する上記セル隔壁は、上記外周壁に向かって壁厚が徐々に増す厚壁領域を有し、上記外周セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、上記内部セルの断面形状である矩形を縮小し、かつ、縮小した矩形から2つの角部が面取りされた形状であり、上記外周セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が、上記内部セルの長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%であり、上記セル隔壁は、上記外周セル同士の間にある外周セル間セル隔壁と、上記内部セル同士の間にある内部セル間セル隔壁とを含み、上記外周セル間セル隔壁の最小の厚さは、上記内部セル間セル隔壁の厚さより厚いことを特徴とするハニカム焼成体。
【0014】
本発明のハニカム焼成体では、構成材料がSiCである。SiCは、耐熱性に優れた材料である。このため、本発明のハニカム焼成体は、耐熱性に優れたハニカム焼成体となる。
【0015】
本発明のハニカム焼成体では、上記各内部セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、同一の矩形であり、上記外周壁と接続する上記セル隔壁は、上記外周壁に向かって壁厚が徐々に増す厚壁領域を有し、上記外周セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、上記内部セルの断面形状である矩形を縮小し、かつ、縮小した矩形から2つの角部が面取りされた形状である。
上記外周セルの長手方向に垂直方向の断面形状が上記のような形状であると、ハニカム焼成体の外周壁の体積が大きくなる。
そのため、上記ハニカム焼成体は、外周壁の体積が充分に大きいので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、上記ハニカム焼成体の外周壁の体積が大きいので、本発明のハニカム焼成体では熱容量の低下を抑制することができる。そのため、本発明のハニカム焼成体が急激に加熱されたとしても外周壁により熱を受け止めることができ、クラックの発生を抑制できる。
このことは以下のようにも説明できる。
ハニカム焼成体のSiCが存在している部分とSiCが存在していないセルの空間部分とを含む領域において、ハニカム焼成体を所定範囲で切り取り、上記所定範囲に含まれるハニカム焼成体の重量を、上記所定範囲の体積で割った値を、「見かけ密度」とすると、本発明のハニカム焼成体では、ハニカム焼成体の最外周部分の方が、ハニカム焼成体の内側部分よりも「見かけ密度」の値が大きくなる。
そのため、本発明のハニカム焼成体では、ハニカム焼成体の最外周部分の熱容量が相対的に高い。従って、外部から急激に熱が加えられても最外周部分で熱を受け止めることができ、クラックの発生を防ぐことができる。
また、ハニカム焼成体の最外周部分の「見かけ密度」が高いと、外枠が機械的に頑丈な構造となるので外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
なお、本明細書において、「矩形から角部が面取りされた形状」とは、矩形から、矩形の角部を直線又は曲線で切り取った形状のことを意味する。
【0016】
本発明のハニカム焼成体では、上記外周セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が、上記内部セルの長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%である。
通常、セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が小さくなると、圧力損失が大きくなると考えられるが、上記構成のハニカム焼成体では圧力損失の増加が抑制されている。
その原因は以下の機構によるものと考えられる。
通常、ハニカム焼成体の周囲には接着材層が配置されることになる。排ガスがハニカム焼成体に流入する際には、接着材層に衝突する排ガスも生じる。このような排ガスは接着材層により流れが偏向され近くのセルに流入することになる。このように流れが偏向された排ガスは、ハニカム焼成体の最外周部に配置されている外周セルよりも、外周セルの内側に配置されているセルにより多く流入することになると考えられる。すなわち、ハニカム焼成体の外周に配置された外周セルには、もともと排ガスが流入しにくいので、ハニカム焼成体の外周に配置された外周セルの長手方向に垂直方向の断面の面積がある程度小さくてもあまり圧力損失に影響しないと考えられる。
このような理由から、本発明のハニカム焼成体のように、外周セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が、上記内部セルの長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%であったとしてもガス通過抵抗には殆ど影響しない。そのため、圧力損失が増加しにくいと考えられる。
また、上記面積の割合が60%未満であると、外周セルの開口部の面積が小さくなり排ガスの流路が狭くなり、排ガスがセル隔壁を通過する際のガス通過抵抗が大きくなるので、圧力損失が大きくなる。
また、上記面積の割合が80%を超えると、ハニカム焼成体の最外周部の見かけ密度の値が低くなるので、上記のハニカム焼成体の外周壁が厚くなっていることの効果が得られにくい。
【0017】
本発明のハニカム焼成体では、上記セル隔壁は、上記外周セル同士の間にある外周セル間セル隔壁と、上記内部セル同士の間にある内部セル間セル隔壁とを含み、上記外周セル間セル隔壁の最小の厚さは、上記内部セル間セル隔壁の厚さより厚い。
このような構造であると、ハニカム焼成体の最外周部の見かけ密度の値が高いので外枠が機械的に頑丈な構造となる。そのため、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、ハニカム焼成体の最外周部の見かけ密度の値が高いので熱容量の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明のハニカム焼成体では、上記外周セル間セル隔壁の最小の厚さは0.100〜0.300mmであることが望ましい。
外周セル間セル隔壁の最小の厚さが0.100mm未満であると、外周セル間セル隔壁の厚さが薄すぎるので、外周セル間セル隔壁が破損しやすくなる。
外周セル間セル隔壁の最小の厚さが0.300mmを超えると、外周セル間セル隔壁の厚さが厚すぎるので、排ガスが外周セル間セル隔壁を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0019】
本発明のハニカム焼成体では、上記内部セル間セル隔壁の厚さは0.210mm以下であることが望ましい。
また、内部セル間セル隔壁の厚さが0.210mm以下であると、内部セル間セル隔壁の厚さが充分に薄いのでPMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低くなる。また、PMが堆積した際も圧力損失の上昇を抑えることができる。
内部セル間セル隔壁の厚さが0.210mmを超えると、内部セル間セル隔壁の厚さが厚すぎるので、排ガスが内部セル間セル隔壁を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0020】
本発明のハニカム焼成体では、上記外周壁の最小の厚さは、上記内部セル間セル隔壁の厚さの1.5〜3倍であることが望ましい。
外周壁の最小の厚さが、内部セル間セル隔壁の厚さの1.5〜3倍であると、外周壁が充分な厚さを有しているので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
【0021】
本発明のハニカムフィルタは、上記本発明のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されることを特徴とする。
本発明のハニカムフィルタは上記効果を奏する本発明のハニカム焼成体により構成されるので、本発明のハニカムフィルタは、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低く、強度が充分に強く、熱容量の低下が抑制されている。
【0022】
本発明のハニカムフィルタはガソリンエンジンからの排ガスを浄化するために用いられることが望ましい。
上記の通り、本発明のハニカムフィルタは、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低く、強度が充分に強く、熱容量の低下が抑制されている。そのため、本発明のハニカムフィルタは、ガソリンエンジンからの排ガスを浄化するために好適に用いることができる。
【0023】
本発明のハニカム焼成体の製造方法は、セラミック原料を押出成形用金型を用いて押出成形することによりセルを区画形成するセル隔壁を備えたハニカム成形体を作製する押出成形工程と、上記セルの一方の端部を封止する封止工程と、上記ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを含む、上記本発明のハニカム焼成体を製造する方法であって、上記押出成形工程で用いる上記押出成形用金型は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有するセラミック原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であり、上記第二の面から見た上記第二貫通孔の形状は、上記ハニカム成形体の外周壁を成形するための最外周スリットと、上記ハニカム成形体の最外周部に配置された外周セル同士の間の外周セル間セル隔壁を成形するための外周スリットと、上記外周セルより内側に配置された内部セル同士の間の内部セル間セル隔壁を成形するための内部スリットとから構成された格子形状であり、上記第二の面には、上記内部スリットを形成するための内部格子が配置され、かつ、上記内部スリットの外側に配置され、上記外周スリットを形成するための外周格子が配置されており、上記第二の面から見た、上記内部格子の形状は、同一の矩形であり、上記第二の面から見た、上記外周格子の形状は、上記内部格子の形状を縮小し、その縮小した形状から2つの角部が面取りされた形状であり、かつ、上記面取りされた角部が上記最外周スリット側に配置されており、上記第二の面から見た上記外周格子の面積が、上記内部格子の各面積の60〜80%であり、上記外
周スリットの最小のスリット幅は、上記内部スリットのスリット幅よりも広いことを特徴とする。
【0024】
本発明のハニカム焼成体の製造方法では、上記構成の押出成形用金型を用いることにより、上記効果を奏する本発明のハニカム焼成体を製造することができる。
特に、本発明のハニカム焼成体の製造方法によれば、以下の理由により外周セル間セル隔壁に欠陥が生じにくい。
通常、スリット幅が一定でない押出成形用金型にセラミック原料が流れ込むと、スリット幅が広い部分ではセラミック原料の排出速度が速くなり、スリット幅が狭い部分ではセラミック原料の排出速度が遅くなる。このようにスリットに流れるセラミック原料の排出速度に違いが生じると、排出速度の速いセラミック原料に排出速度の遅いセラミック原料が引っ張られ、成形されるセル隔壁が切れる原因となる。
例えば、内部スリット側の外
周スリットのスリット幅が、内部スリットの幅と同じ幅であり、最外周スリット側に向かう途中で、急激に外
周スリットのスリット幅が広くなる押出成形用金型を用いてハニカム成形体を製造する場合には、スリット幅が広い外
周スリットの部分を流れるセラミック原料の排出速度が速すぎ、スリット幅が内部スリットの幅と同じである外
周スリットの部分を流れるセラミック原料を引っ張り形成されるセル隔壁が切れやすくなる。
しかしながら、上記外
周スリットの最小のスリット幅が、上記内部スリットのスリット幅よりも広いと、外
周スリットに流れるセラミック原料の排出速度の違いを緩和することができる。従って、成形されるセル隔壁に欠陥が生じることを防ぐことができる。
【0025】
本発明のハニカム焼成体の製造方法では、上記押出成形用金型の上記外
周スリットの最小のスリット幅は、0.100〜0.300mmであることが望ましい。
外
周スリットの最小のスリット幅が0.100mm未満であると、セラミック原料の排出速度に違いが生じやすく、成形される外周セル間セル隔壁に欠陥が生じやすい。
外
周スリットの最小のスリット幅が0.300mmを超えると、成形される外周セル間セル隔壁が厚くなりすぎるので、製造されたハニカム焼成体において排ガスが外周セル間セル隔壁を通過する際の抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなる。
【0026】
本発明のハニカム焼成体の製造方法では、上記押出成形用金型の上記内部スリットのスリット幅は、0.210mm以下であることが望ましい。
このような押出成形用金型を用いると、内部セル間セル隔壁の厚さが0.210mm以下のハニカム焼成体を製造することができる。
そのため、製造されたハニカム焼成体は、セル隔壁の厚さが充分に薄いのでPMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低くなる。また、PMが堆積した際も圧力損失の上昇を抑えることができる。
上記押出成形用金型の上記内部スリットのスリット幅が0.210mmを超えると、内部セル間セル隔壁の厚さが0.210mmを超えるハニカム焼成体が製造される。このようなハニカム焼成体は内部セル間セル隔壁の厚さが厚すぎるので、排ガスがセル隔壁を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0027】
本発明のハニカム焼成体の製造方法では、上記最外周スリットの最小のスリット幅は、上記内部スリットのスリット幅の1.5〜3倍の値であることが望ましい。
このような押出成形用金型を用いて製造されたハニカム焼成体では、外周壁が充分な厚さを有している。そのため、外枠が機械的に頑丈な構造となり外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、上記ハニカム焼成体の外周壁が厚いので、熱容量の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明のハニカム焼成体の製造方法では、上記押出成形用金型には、上記外周スリットの内壁面には原料通過抑制面が形成されていることが望ましい。
本発明のハニカム焼成体の製造方法で用いる押出成形用金型は、内部スリットのスリット幅が、外
周スリットの最小のスリット幅よりも狭い。そのため、内部スリットを流れるセラミック原料は、外
周スリットを流れるセラミック原料よりもセラミック原料の排出速度が遅くなる。このようにセラミック原料の排出速度に違いが生じると、排出速度の速いセラミック原料に排出速度の遅いセラミック原料が引っ張られ成形されるセル隔壁が切れる原因となる。
しかし、上記押出成形用金型の外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成されていると、原料通過抑制面が抵抗となり、外周スリットからセラミック原料が排出されにくくなる。その結果、外周スリットから押し出されるセラミック原料の排出速度が遅くなり、外周スリット及び内部スリットから押し出されるセラミック原料の排出速度の違いを緩和することができる。従って、成形されるセル隔壁に欠陥が生じることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のハニカム焼成体、ハニカムフィルタ及び本発明のハニカム焼成体の製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0031】
本発明のハニカム焼成体について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明のハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)に示すように、本発明のハニカム焼成体の一例であるハニカム焼成体10は、一方の端部が封止材11により封止されており排ガスの流路となる複数のセル20と、上記セルを区画形成する多孔質のセル隔壁30とを備えている。
複数のセル20は、ハニカム焼成体の最外周部に配置された外周セル21と、外周セル21より内側に配置された内部セル22を含んでいる。
各内部セル22の長手方向に垂直方向の断面形状は同一の矩形であり、外周セル21の長手方向に垂直方向の断面形状は、内部セル22の断面形状である矩形から2つの角部が面取りされた形状である。外周セル21及び内部セル22の断面形状については詳しくは後述する。
また、
図1(a)及び(b)に示すように、ハニカム焼成体10は、長手方向(
図1(a)中、両矢印の方向)に垂直方向の断面が正方形である直方体である。
ハニカム焼成体10の長手方向に垂直方向の断面は一辺が30〜45mmである正方形であることが望ましい。
ハニカム焼成体10の全長は、140〜160mmであることが望ましい。
【0032】
ハニカム焼成体10の構成材料はSiCである。SiCは、耐熱性に優れた材料である。このため、ハニカム焼成体10は、耐熱性に優れたハニカム焼成体となる。
【0033】
ハニカム焼成体10では、セル密度が、15.5〜62個/cm
2(100〜400cpsi)の範囲であることが望ましく、31〜46.5個/cm
2(200〜300cpsi)の範囲であることがより望ましい。
【0034】
上記の構成を有するハニカム焼成体10を排ガスが通過する場合について、
図1(b)を参照して以下に説明する。
図1(b)に示すように、内燃機関から排出され、ハニカム焼成体10に流入した排ガス(
図1(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、ハニカム焼成体10の排ガス流入側端面10aに開口した一のセル20に流入し、セル20を隔てるセル隔壁30を通過する。この際、排ガス中のPMがセル隔壁30で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面10bに開口した他のセル20から流出し、外部に排出される。
【0035】
次に、ハニカム焼成体10におけるセル20の配置、セル隔壁30の形状等について図面を用いて説明する。
図2は、
図1に示す本発明のハニカム焼成体の長手方向に垂直方向の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、複数のセル20は、ハニカム焼成体10の最外周部12に配置された外周セル21と、外周セル21より内側に配置された内部セル22を含んでいる。さらに、複数のセル20は、ハニカム焼成体10の角部13に配置された角部セル23を含んでいる。
なお、本明細書において、「外方ハニカム焼成体の角部」は、「外方ハニカム焼成体の最外周部」に含まれない。すなわち、外周セル21に角部セル23は含まれない。
内部セル22はセル隔壁30により区画形成されており、外周セル21はセル隔壁30及びハニカム焼成体10の外周を形成する外周壁32によりそれぞれ区画形成されている。
【0036】
図2に示すように、ハニカム焼成体10では、セル隔壁30は、外周セル21同士の間にある外周セル間セル隔壁31と、内部セル22同士の間にある内部セル間セル隔壁33とを含んでいる。外周セル間セル隔壁31は、セル間の間隔が等しい等幅領域31aと、外周壁32に向かって壁厚が徐々に増す厚壁領域31bとからなっている。また、等幅領域31aは内部セル間セル隔壁33に接続し、厚壁領域31bは、外周壁32に接続している。また、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2は一定である。
そして、外周セル間セル隔壁31の最小の厚さT
1(すなわち、等幅領域31aの幅)は、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2より厚い。
このような構造であると、ハニカム焼成体10の最外周部12の見かけ密度の値が高いので外枠が機械的に頑丈な構造となる。そのため、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、ハニカム焼成体10の最外周部12の見かけ密度の値が高いので熱容量の低下を抑制することができる。
なお、外周セル間セル隔壁31の最小の厚さT
1は、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2の1.5〜3倍であることが望ましい。
【0037】
ハニカム焼成体10では、外周セル間セル隔壁31の最小の厚さT
1は0.100〜0.300mmであることが望ましい。
外周セル間セル隔壁31の最小の厚さT
1が0.100mm未満であると、外周セル間セル隔壁31の厚さが薄すぎるので、外周セル間セル隔壁31が破損しやすくなる。
外周セル間セル隔壁31の最小の厚さT
1が0.300mmを超えると、外周セル間セル隔壁31の厚さが厚すぎるので、排ガスが外周セル間セル隔壁31を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0038】
ハニカム焼成体10では、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2は0.210mm以下であることが望ましく、0.075〜0.160mmであることが望ましい。
内部セル間セル隔壁33の厚さT
2が0.210mm以下であると、内部セル間セル隔壁33の厚さが充分に薄いのでPMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低くなる。また、PMが堆積した際も圧力損失の上昇を抑えることができる。
内部セル間セル隔壁33の厚さT
2が、0.210mmを超えると、内部セル間セル隔壁33の厚さが厚すぎるので、排ガスが内部セル間セル隔壁33を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0039】
ハニカム焼成体10では、外周壁32の厚さは特に限定されないが、外周壁32の最小の厚さT
3は、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2の1.5〜3倍であることが望ましく、2〜3倍であることがさらに望ましい。例えば、外周壁32の最小の厚さT
3は、0.113〜0.480mmであることが望ましい。
外周壁32の最小の厚さT
3が、内部セル間セル隔壁33の厚さT
2の1.5〜3倍であると、外周壁32が充分な厚さを有しているので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
【0040】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁30の気孔率は、40〜65%であることが望ましい。
セル隔壁30の気孔率が40〜65%である場合、セル隔壁30は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁30に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。従って、初期の圧力損失が低く、PMを堆積しても圧力損失が上昇しにくいハニカム焼成体10となる。
セル隔壁30の気孔率が40%未満では、セル隔壁30の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁30を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁30を通過する際の圧力損失が大きくなる。一方、セル隔壁30の気孔率が65%を超えると、セル隔壁30の機械的強度が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0041】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁30に含まれる気孔の平均気孔径は、8〜25μmであることが望ましい。
上記構成のハニカム焼成体10では、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁30に含まれる気孔の平均気孔径が8μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁30を透過する際の圧力損失が大きくなる。一方、セル隔壁30に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔径が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0042】
なお、気孔率及び平均気孔径は、水銀圧入法により測定することができる。
【0043】
ハニカム焼成体10では、外周壁32の気孔率は、40〜65%であることが望ましい。
外周壁32の気孔率が上記範囲であることが望ましい理由は、セル隔壁30の気孔率が上記範囲であると望ましい理由と同じである。
【0044】
ハニカム焼成体10では、外周壁32に含まれる気孔の平均気孔径は、8〜25μmであることが望ましい。
外周壁32に含まれる気孔の平均気孔径が上記範囲であることが望ましい理由は、セル隔壁30に含まれる気孔の平均気孔径が上記範囲であると望ましい理由と同じである。
【0045】
次に、ハニカム焼成体10の各セル20の形状について説明する。
まず、各内部セル22の長手方向に垂直方向の断面形状は、同一の矩形αである。
ハニカム焼成体10では、矩形αは正方形であることが望ましく、一辺が0.5〜2.0mmである正方形であることがより望ましい。
【0046】
外周セル21の長手方向に垂直方向の断面形状は、内部セル22の断面形状である矩形αを縮小し、かつ、縮小した矩形α´から2つの角部が面取りされた形状である。
また、外周壁32と接続する外周セル間セル隔壁31は、外周壁32に向かって壁厚が徐々に増す厚壁領域31bを有している。
すなわち、外周セル21の長手方向に垂直方向の断面形状において、矩形α´から2つの角部が面取りされた部分には、厚壁領域31bが形成されている。
なお、「矩形から角部が面取りされた形状」とは、矩形から、矩形の角部を直線又は曲線で切り取った形状のことを意味する。
また、矩形α´は、矩形αを等倍縮小した形状であってもよく、高さ方向又は幅方向に縮小した形状であってもよい。この場合、矩形α´の面積は矩形αの60〜80%であることが望ましい。
【0047】
また、外周セル21の断面形状は、
図3(a)〜(e)に示すような形状であってもよい。
図3(a)〜(e)は、本発明のハニカム焼成体における外周セルの長手方向に垂直方向の断面形状の一例を模式的に示す断面図である。
【0048】
図3(a)は、矩形αを幅方向に0.8倍した矩形α´の隣り合う2つの角部が2つの線分A及びBにより、それぞれ切り取られた6角形である外周セル21aの断面形状を示している。線分A及びBは直接接しておらず、線分A及びBを延長すると矩形α´の外側でこれらが交わることになる。また、切り取られた2つの角部の間にある矩形α´の辺の一部は、上記6角形の一辺を形成している。
【0049】
図3(b)は、矩形α´の隣り合う2つの角部が2つの線分C及びDにより、それぞれ切り取られた5角形である外周セル21bの断面形状を示している。線分Cと線分Dとはα´を形成する辺において交差している。なお、線分Cと線分Dとは矩形α´の内部で交差していてもよい。すなわち、切り取られる2つの角部の間には、上記5角形を構成する辺が存在していない。
【0050】
図3(c)は、矩形α´の隣り合う2つの角部のうち一方の角部が線分E及びFにより切り取られ、もう一方の角部が線分G及びHにより切り取られた8角形である外周セル21cの断面形状を示している。線分Eと線分Fとは、矩形α´の内部で互い交差している。さらに、線分Gと線分Hとも、矩形α´の内部で互い交差している。また、切り取られた2つの角部の間にある矩形α´の辺の一部は、上記8角形の一辺を形成している。
【0051】
図3(d)は、矩形α´の隣り合う2つの角部が2つの曲線A´及びB´により、それぞれ切り取られた外周セル21dの断面形状を示している。曲線A´及びB´は、α´の角部がR面取りされるように線分A及びBを折り曲げた曲線である。切り取られた2つの角部の間にある矩形α´の辺の一部は、外周セル21dの断面形状の輪郭を形成している。
【0052】
図3(e)は、矩形α´の隣り合う2つの角部が2つの曲線C´及びD´により、それぞれ切り取られた外周セル21eの断面形状を示している。曲線C´及びD´は、矩形α´の角部がR面取りされるように線分C及びDを折り曲げた曲線である。曲線C´と曲線D´とは矩形α´を形成する辺において交差している。なお、曲線C´と曲線D´とは、矩形α´の内部で交差していてもよい。
【0053】
ハニカム焼成体10では、
図3(a)〜(e)において矩形α´の角部が切り取られた部分(すなわち、破線と実線で囲まれた部分)には、厚壁領域31bが形成されている。
なお、外周セル21の断面形状は上記形状に限られず、矩形α´から2つの角部が面取りされた別の形状であってもよい。
【0054】
外周セル21の長手方向に垂直方向の断面形状が上記のような形状であり、厚壁領域31bが形成されていると、ハニカム焼成体10の外周壁32近傍の体積が大きくなる。
そのため、ハニカム焼成体10は、外周壁32近傍の体積が充分に大きいので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、外周壁32近傍の体積が大きいので、ハニカム焼成体10では熱容量の低下を抑制することができる。そのため、ハニカム焼成体10が急激に加熱されたとしても外周壁32により熱を受け止めることができ、クラックの発生を抑制できる。
【0055】
このことは以下のようにも説明できる。
ハニカム焼成体10のSiCが存在している部分とSiCが存在していないセルの空間部分とを含む領域において、ハニカム焼成体10を所定範囲で切り取り、所定範囲に含まれるハニカム焼成体10の重量を、所定範囲の体積で割った値を、「見かけ密度」とすると、ハニカム焼成体10では、ハニカム焼成体10の最外周部12の方が、ハニカム焼成体10の内側部分よりも「見かけ密度」の値が大きくなる。
そのため、ハニカム焼成体10では、ハニカム焼成体10の最外周部12の熱容量が相対的に高い。従って、外部から急激に熱が加えられても最外周部12で熱を受け止めることができ、クラックの発生を防ぐことができる。
また、ハニカム焼成体10の最外周部12の「見かけ密度」が高いと、外枠が機械的に頑丈な構造となるので外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
【0056】
ハニカム焼成体10では、外周セル21の長手方向に垂直方向の断面の面積が、内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%である。
通常、セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が小さくなると、圧力損失が大きくなると考えられるが、上記構成のハニカム焼成体10では圧力損失の増加が抑制されている。
その原因を以下に図面を用いて説明する。
図4は、本発明のハニカム焼成体では、外周セルの長手方向に垂直方向の断面の面積が、内部セルの長手方向に垂直方向の断面の面積よりも小さいにも関わらず、圧力損失の増加が抑制されている原因となる機構を模式的に示す模式図である。
図4に示すように、通常、ハニカム焼成体10の周囲には接着材層14が配置されることになる。排ガスがハニカム焼成体10に流入する際には、接着材層14に衝突する排ガスも生じる。このような排ガスは接着材層14によりせき止められ、流れに対してほぼ垂直方向に進むことになる。(
図4中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)。このように流れの方向が変更された排ガスは、他の排ガスに押されハニカム焼成体10の最外周部12に配置されている外周セル21又は外周セル21の内側に配置されている内部セル22に流入することになるが、流れの方向が変更された排ガスにもある程度勢いがあるので、外周セル21を飛び越え内部セル22に流入する排ガスも多く発生する。そうすると、外周セル21に流入する排ガスよりも、内部セル22に流入する排ガスの方が多いと考えられる。すなわち、ハニカム焼成体10の最外周部12に配置された外周セル21には、もともと排ガスが流入しにくいので、ハニカム焼成体10の最外周部12に配置された外周セル21の長手方向に垂直方向の断面の面積がある程度小さくてもあまり圧力損失に影響しないと考えられる。
このような理由から、ハニカム焼成体10のように、外周セル21の長手方向に垂直方向の断面の面積が、内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%であったとしてもガス通過抵抗には殆ど影響しない。そのため、圧力損失が増加しにくいと考えられる。
また、上記面積の割合が60%未満であると、外周セル21の開口部の面積が小さくなり排ガスの流路が狭くなり、排ガスがセル隔壁30を通過する際のガス通過抵抗が大きくなるので、圧力損失が大きくなる。
また、上記面積の割合が80%を超えると、ハニカム焼成体10の最外周部の見かけ密度の値が低くなるので、ハニカム焼成体10の外周壁32が厚くなっていることの効果が得られにくい。
【0057】
なお、外周セル21の長手方向に垂直方向の断面の面積及び内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積は以下の方法により求めることができる。
まず、ハニカム焼成体10を長手方向に垂直方向に切断する。次に、ハニカム焼成体10の長手方向に垂直方向の断面のSEM画像を撮影する。
撮影したSEM画像を2値化してセル隔壁30、外周壁32等の骨格部分と、外周セル21、内部セル22等の空間部分とを識別する。そして、SEM画像において各セルの空間部分と識別された部分の面積を各セルの面積とする。
また、内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積とは、上記方法により求められた全ての内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積の平均値のことである。
【0058】
次に、ハニカム焼成体10の角部13に配置される角部セル23の形状について説明する。
角部セル23の長手方向に垂直方向の断面形状は、特に限定されないが、内部セル22の断面形状である矩形αから少なくとも1つの角部が面取りされた形状であることが望ましい。また、矩形αを縮小し、かつ、縮小した矩形α´から少なくとも1つの角部が面取りされた形状であってもよい。角部セル23の形状がこのような形状であると、ハニカム焼成体10の外周壁32近傍の体積が大きくなる。
そのため、ハニカム焼成体10は、外周壁32近傍の体積が充分に大きいので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、外周壁32近傍の体積が大きいので、ハニカム焼成体10では熱容量の低下を抑制することができる。そのため、ハニカム焼成体10が急激に加熱されたとしても外周壁32により熱を受け止めることができ、クラックの発生を抑制できる。
【0059】
また、角部セル23の形状は、矩形α又は矩形α´から全ての角部が直線又は曲線で面取りされた形状であってもよく、外部セル21と同様の形状であってもよく、
図5(a)〜(d)に示す形状であってもよい。
図5(a)〜(d)は、本発明のハニカム焼成体における角部セルの長手方向に垂直方向の断面形状の一例を模式的に示す断面図である。
図5(a)は、矩形αの角部のうち最もハニカム焼成体10の内側になる角部を除いて、3つの角部が線分I、J及びKによりそれぞれ切り取られた7角形である角部セル23aの断面形状を示している。線分I及びJは直接接しておらず、線分I及びJを延長すると矩形αの外側でこれらが交わることになる。また、線分I及びKは直接接しておらず、線分I及びKを延長すると矩形αの外側でこれらが交わることになる。また、線分Jと線分Kとは並行である。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある矩形αの辺の一部は、角部セル23aの断面形状である7角形の一辺をそれぞれ形成している。
図5(b)は、矩形αの角部のうち最もハニカム焼成体10の内側になる角部が線分Lにより切り取られた5角形である角部セル23bの断面形状を示している。
図5(c)は、矩形αの角部のうち最もハニカム焼成体10の内側になる角部を除いて、3つの角部が曲線I´、J´及びK´によりそれぞれ切り取られた角部セル23cの断面形状を示している。曲線I´、J´及びK´は、矩形αの角部がR面取りされるように線分I、J及びKを折り曲げた曲線である。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある矩形αの辺の一部は、角部セル23cの断面形状の輪郭を形成している。
図5(d)は、矩形αの角部のうち最もハニカム焼成体10の内側になる角部が曲線L´により切り取られた角部セル23dの断面形状を示している。曲線L´は、矩形αの角部がR面取りされるように線分Lを折り曲げた曲線である。
特に、角部セル23の形状が
図5(b)又は
図5(d)に示す形状であると、ハニカム焼成体10の構造上、圧縮応力がかかりにくくなる。そのため、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
【0060】
ハニカム焼成体10では、角部セル23の長手方向に垂直方向の断面の面積が、内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%であることが望ましい。
上記面積の割合が60%未満であると、角部セル23の開口部の面積が小さくなり排ガスの流路が狭くなり、排ガスがセル隔壁30を通過する際のガス通過抵抗が大きくなるので、圧力損失が大きくなる。
また、上記面積の割合が80%を超えると、角部セル23の長手方向に垂直方向の断面の面積が大きいので、ハニカム焼成体10の角部の見かけの密度の値が低くなるので、ハニカム焼成体10の機械的な強度が充分になりにくい。
【0061】
ハニカム焼成体10には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0062】
次に、本発明のハニカムフィルタについて図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明のハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、本発明のハニカムフィルタの一例であるハニカムフィルタ1は、複数のハニカム焼成体10が接着材層14を介して接着されることにより形成されている円柱状のハニカムフィルタである。
【0063】
ハニカムフィルタ1は上記効果を奏するハニカム焼成体10により構成されるので、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低く、強度が充分に強く、熱容量の低下が抑制されている。
【0064】
ハニカムフィルタ1では、接着材層14は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0065】
ハニカムフィルタ1の外周には、必要に応じて排ガスの漏れを防止するための外周コート層15が形成されていてもよい。外周コート層15の材料は、接着材ペーストの材料と同じであることが望ましい。
【0066】
ハニカムフィルタ1は、ガソリンエンジンからの排ガスを浄化するために用いられるハニカムフィルタであることが望ましい。
上記の通り、ハニカムフィルタ1は、PMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低く、強度が充分に強く、熱容量の低下が抑制されている。そのため、ハニカムフィルタ1は、ガソリンエンジンからの排ガスを浄化するために好適に用いることができる。
【0067】
このようなハニカムフィルタ1が用いられた排ガス浄化装置について図面を用いて説明する。
図7は、本発明のハニカムフィルタが設置された排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示す排ガス浄化装置50は、ハニカムフィルタ1と、ハニカムフィルタ1の外方を覆う金属ケーシング51と、ハニカムフィルタ1と金属ケーシング51との間に配置された保持シール材52とから構成されており、金属ケーシング51の排ガスが導入される側の端部には、エンジン等の内燃機関に連結された導入管53が接続されており、金属ケーシング51の他端部には、外部に連結された排出管54が接続されている。
【0068】
内燃機関から排出され、排ガス浄化装置50に流入した排ガス(
図7中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、ハニカムフィルタ1を構成するハニカム焼成体10に到達し、ハニカム焼成体10により浄化される。排ガスがハニカム焼成体10により浄化される機構は既に述べているのでここでの説明は省略する。浄化された排ガスは、ハニカム焼成体10から流出し外部に排出される。
【0069】
排ガス浄化装置50において、保持シール材52は、無機繊維からなるマットであることが望ましく、そのマットは、ニードリング処理を施して得られるニードルマットであることが望ましい。
また、無機繊維としてはアルミナ繊維、アルミナ−シリカ繊維、シリカ繊維、及び、生体溶解性繊維を用いることができる。
なお、ニードリング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を素地マットに対して抜き差しすることをいう。保持シール材52では、比較的平均繊維長の長い無機繊維がニードリング処理により3次元的に交絡していることが望ましい。
【0070】
なお、交絡構造を呈するために、無機繊維はある程度の平均繊維長を有しており、例えば、無機繊維の平均繊維長は、50μm〜100mm程度であることが望ましい。
【0071】
保持シール材52を構成するマットの無機繊維の平均繊維径は、1〜20μmであることが望ましく、3〜10μmであることがより望ましい。
無機繊維の平均繊維径が1〜20μmであると、無機繊維の強度及び柔軟性が充分に高くなり、保持シール材52のせん断強度を向上させることができる。
無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維が細く切れやすいので、無機繊維の引っ張り強度が不充分となる。一方、無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、無機繊維が曲がりにくいため、柔軟性が不充分となる。
【0072】
保持シール材52を構成するマットの目付量(単位面積あたりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/m
2であることが望ましく、1000〜3000g/m
2であることがより望ましい。マットの目付量が200g/m
2未満であると、保持力が充分ではなく、このようなマットにより構成される保持シール材52を用いて排ガス浄化装置50を製造する場合、ハニカムフィルタ1が脱落しやすくなる。
また、マットの目付量が4000g/m
2を超えると、マットの嵩が低くなりにくい。
【0073】
また、保持シール材52を構成するマットの嵩密度(巻き付ける前の保持シール材の嵩密度)については、特に限定されないが、0.10〜0.30g/cm
3であることが望ましい。マットの嵩密度が0.10g/cm
3未満であると、無機繊維の絡み合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、マットの形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、各マットの嵩密度が0.30g/cm
3を超えると、保持シール材52を構成するマットが硬くなり、保持シール材52のハニカムフィルタ1への巻き付け性が低下し、保持シール材52が割れやすくなる。
【0074】
保持シール材52を構成するマットには、嵩高さを抑えたり、排ガス浄化装置50の組み立て前の作業性を高めたりするために、さらに有機バインダ等のバインダが含まれていてもよい。
また、保持シール材52を構成するマットの厚さは1.5〜15mmであることが望ましい。
【0075】
排ガス浄化装置50において、金属ケーシング51は、主にステンレス等の金属からなることが望ましい。
【0076】
次に、本発明のハニカム焼成体の製造方法の一例を説明する。
本発明のハニカム焼成体の製造方法は、セラミック原料を押出成形用金型を用いて押出成形することによりセルを区画形成するセル隔壁を備えたハニカム成形体を作製する押出成形工程と、上記セルの一方の端部を封止する封止工程と、上記ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを含む、上記本発明のハニカム焼成体を製造する方法であって、上記押出成形工程で用いる上記押出成形用金型は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有するセラミック原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であり、上記第二の面から見た上記第二貫通孔の形状は、上記ハニカム成形体の外周壁を成形するための最外周スリットと、上記ハニカム成形体の最外周部に配置された外周セル同士の間の外周セル間セル隔壁を成形するための外周スリットと、上記外周セルより内側に配置された内部セル同士の間の内部セル間セル隔壁を成形するための内部スリットとから構成された格子形状であり、上記第二の面には、上記内部スリットを形成するための内部格子が配置され、かつ、上記内部スリットの外側に配置され、上記外周スリットを形成するための外周格子が配置されており、上記第二の面から見た、上記内部格子の形状は、同一の矩形であり、上記第二の面から見た、上記外周格子の形状は、上記内部格子の形状を縮小し、その縮小した形状から2つの角部が面取りされた形状であり、かつ、上記面取りされた角部が上記最外周スリット側に配置されており、上記第二の面から見た上記外周格子の面積が、上記内部格子の各面積の60〜80%であり、上記外
周スリットの最小のスリット幅は、上記内部スリットのスリット幅よりも広いことを特徴とする。
【0077】
(1−1)セラミック原料準備工程
まず、ハニカム焼成体10の原料となるセラミック原料を準備する。セラミック原料は炭化ケイ素粉末と、有機バインダと、可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより準備することができる。
上記セラミック原料には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが望ましい。
【0078】
(1−2)押出成形工程
次に、準備したセラミック原料を押出成形用金型を用いて押出成形することによりセルを区画形成するセル隔壁を備えたハニカム成形体を作製する。
【0079】
この押出成形工程において用いる押出成形用金型について説明する。
図8は、本発明のハニカム焼成体の製造方法において用いる押出成形用金型の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示す断面図は、セラミック原料を押し出す方向に平行な方向における押出成形用金型の断面図である。
図8中、セラミック原料を押し出す方向を矢印aで示す。
【0080】
図8に示すように、押出成形用金型100は、第一の面110aと、第一の面110aの反対側に形成された第二の面110bと、第一の面110aから第二の面110bに向かって形成された第一貫通孔111aを有するセラミック原料供給部150と、第二の面110bから第一の面110aに向かって、第一貫通孔111aと連通するように形成された第二貫通孔111bを有する成形部160とを備える。
ここで、セラミック原料供給部150には、セラミック原料を供給し、通過させるために、第一貫通孔111aが形成されている。また、成形部160には、セラミック原料供給部150を通過した成形セラミック原料をハニカム成形体の形状に成形するために、第二貫通孔111bが形成されている。
なお、押出成形用金型100を固定するため、押出成形用金型100の周囲に形成された外枠170は、必要に応じて備えられていればよい。
【0081】
セラミック原料供給部150の厚さは、5〜10mmであることが望ましい。セラミック原料供給部150の厚さが5〜10mmであると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、押出成形用金型の寿命が長くなる。
セラミック原料供給部150の厚さが5mm未満であると、セラミック原料供給部150の厚さが薄くなりすぎるため、成形部160への負荷が大きくなり、押出成形用金型の寿命が短くなる場合がある。一方、セラミック原料供給部150の厚さが10mmを超えると、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。無理に成形速度を上げようとすると、押出成形用金型100への負担が大きくなり、種々の不都合が発生しやすくなる場合がある。
【0082】
成形部160の厚さは、1〜4mmであることが望ましい。成形部160の厚さが1〜4mmであると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、成形体の形状をほぼ設定通りとすることができる。
成形部160の厚さが1mm未満であると、成形部160の厚さが薄くなりすぎるため、成形体の形状をほぼ設定通りとすることが困難となり、不良品が発生し易くなる場合がある。一方、成形部160の厚さが4mmを超えると、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げるのが困難となる場合がある。無理に成形速度を上げようとすると、押出成形用金型100への負担が大きくなり、種々の不都合が発生し易くなる場合がある。
【0083】
セラミック原料供給部150の厚さに対する成形部160の厚さ(セラミック原料供給部150の厚さ/成形部160の厚さ)は、2〜8であることが望ましく、2〜6であることがより望ましい。セラミック原料供給部150の厚さに対する成形部160の厚さが上記範囲内であると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、成形体の形状をほぼ設定通りとすることができる。また、押出成形用金型の寿命を長く保つことができる。
セラミック原料供給部150の厚さに対する成形部160の厚さが2未満であると、成形部160の厚さが小さすぎて(薄すぎて)、成形体の形状が設計から外れる場合がある。また、セラミック原料供給部150の厚さが大きすぎて(厚すぎて)、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。
セラミック原料供給部150の厚さに対する成形部160の厚さが8を超えると、成形部160の厚さが大きすぎて(厚すぎて)、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。また、セラミック原料供給部150の厚さが小さすぎて(薄すぎて)、成形部160への負荷が大きくなり、押出成形用金型の寿命が短くなる場合がある。
【0084】
次に、押出成形用金型100の各スリットについて説明する。
図9(a)は、
図8に示す押出成形用金型を第二の面から見たときの平面図であり、
図9(b)は、9(a)の破線部の拡大図である。
第二の面110bから見た第二貫通孔111bの形状は、ハニカム成形体の外周壁32を成形するための最外周スリット132と、ハニカム成形体の最外周部12に配置された外周セル21同士の間の外周セル間セル隔壁31を成形するための外周スリット131と、外周セル21より内側に配置された内部セル22同士の間の内部セル間セル隔壁33を成形するための内部スリット133とから構成された格子形状である。
【0085】
ここで、最外周スリット132、外周スリット131及び内部スリット133について、
図9(a)及び(b)を用いて詳しく説明する。
【0086】
最外周スリット132は、ハニカム成形体の外周壁32を成形するためのスリットである。すなわち、
図9(b)に示すように、押出成形用金型100の断面において、外部格子121及び角部格子123を形成する辺のうち、最も押出成形用金型100の外方側に位置する辺の部分を繋いで形成される線の外側のスリットが、最外周スリット132である。
【0087】
外周スリット131は、ハニカム成形体の最外周部12に配置された外周セル間のセル壁31を成形するためのスリットである。
すなわち、
図9(b)に示すように、隣り合う外部格子121同士の間、又は、隣り合う外部格子121及び角部格子123の間にあるスリットが、外周スリット131である。また、外周スリット131は、押出成形用金型100の内方から外方にかけてスリット幅が一定である等幅領域131aと、スリット幅が徐々に拡大する拡大領域131bとを有している。外周スリット131では、等幅領域131aのスリット幅が、最小の外周スリット131のスリット幅S
1となる。
【0088】
内部スリット133は、外周セル21より内側に配置された内部セル間セル隔壁33を成形するためのスリットである。すなわち、
図9(b)に示すように、外部格子121より内側に配置されたすべてのスリットが、内部スリット133である。例えば、内部格子122と隣り合う内部格子122との間に配置されたスリットは、内部スリット133である。また、内部格子122と隣り合う外部格子121との間に配置されたスリットも、内部スリット133である。なお、内部スリット133のスリット幅S
2は一定である。
【0089】
押出成形用金型100では、外周スリット131の最小のスリット幅S
1は、内部スリット133のスリット幅S
2よりも広い。
通常、スリット幅が一定でない押出成形用金型にセラミック原料が流れ込むと、スリット幅が広い部分ではセラミック原料の排出速度が速くなり、スリット幅が狭い部分ではセラミック原料の排出速度が遅くなる。このようにスリットに流れるセラミック原料の排出速度に違いが生じると、排出速度の速いセラミック原料に排出速度の遅いセラミック原料が引っ張られ、成形されるセル隔壁が切れる原因となる。
例えば、外周スリット131において、等幅領域131aのスリット幅が、内部スリット133のスリット幅S
2と同じ幅であり、最外周スリット132側に向かう途中で、拡大領域131bが形成されている押出成形用金型を用いてハニカム成形体を製造する場合には、拡大領域131bを流れるセラミック原料の排出速度が速すぎ、等幅領域131a及び内部スリット133を流れるセラミック原料を引っ張り形成されるセル隔壁30が切れやすくなる。
しかしながら、押出成形用金型100では、外周スリット131の最小のスリット幅S
1が、内部スリット133のスリット幅S
2よりも広い。そのため、拡大領域131bを流れるセラミック原料の排出速度と、等幅領域131a及び内部スリット133とを流れるセラミック原料の排出速度との違いを緩和することができる。従って、成形されるセル隔壁30に欠陥が生じることを防ぐことができる。
なお、外周スリット131の最小のスリット幅S
1は、内部スリット133のスリット幅S
2の1.5〜3倍であることが望ましい。
【0090】
押出成形用金型100の外周スリット131の最小のスリット幅S
1は、0.100〜0.300mmであることが望ましい。
外周スリット131の最小のスリット幅S
1が0.100mm未満であると、セラミック原料の排出速度に違いが生じやすく、成形されるセル隔壁30に欠陥が生じやすい。
外周スリット131の最小のスリット幅S
1が0.300mmを超えると、成形される外周セル間セル隔壁31が厚くなりすぎるので、製造されたハニカム焼成体において排ガスが外周セル間セル隔壁31を通過する際の抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなる。
【0091】
押出成形用金型100の内部スリット133のスリット幅S
2は、0.210mm以下であることが望ましい。
このような押出成形用金型100を用いると、内部セル間セル隔壁33の厚さが0.210mm以下のハニカム焼成体10を製造することができる。
そのため、製造されたハニカム焼成体10は、セル隔壁30の厚さが充分に薄いのでPMが堆積していない初期の状態での圧力損失が充分に低くなる。また、PMが堆積した際も圧力損失の上昇を抑えることができる。
押出成形用金型100の内部スリット133のスリット幅S
2が0.210mmを超えると、内部セル間セル隔壁33の厚さが0.210mmを超えるハニカム焼成体10が製造される。このようなハニカム焼成体10は内部セル間セル隔壁33の厚さが厚すぎるので、排ガスがセル隔壁を通過する際の抵抗が大きくなり、その結果圧力損失が大きくなる。
【0092】
押出成形用金型100の最外周スリット132の最小のスリット幅S
3は、内部スリット133のスリット幅S
2の1.5〜3倍の値であることが望ましく、2〜3倍の値であることがより望ましい。例えば、最外周スリット132の最小のスリット幅S
3は、0.113〜0.480mmであることが望ましい。
このような押出成形用金型100を用いて製造されたハニカム焼成体10では、外周壁32が充分な厚さを有している。そのため、外枠が機械的に頑丈な構造となり外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、ハニカム焼成体10の外周壁32が厚いので、熱容量の低下を抑制することができる。
【0093】
次に、押出成形用金型100の内部格子122及び外部格子121について説明する。
図9(a)に示すように、第二の面110bには、内部スリット133を形成するための内部格子122が配置され、かつ、内部スリット133の外側に配置され、外周スリット131を形成するための外部格子121が配置されている。なお、第二の面110bの角部113には、角部格子123が配置されている。また、本明細書において「外部格子」に「角部格子」は含まれない。
【0094】
図9(a)に示すように、第二の面110bから見た、内部格子122の形状は、同一の矩形βである。
押出成形用金型100において、矩形βは正方形であることが望ましく、一辺が0.5〜2.0mmである正方形であることがより望ましい。
【0095】
また、
図9(a)に示すように、第二の面110bから見た、外部格子121の形状は、内部格子122の形状を縮小し、その縮小した形状である矩形β´から2つの角部が面取りされた形状である。さらに、面取りされた角部は最外周スリット132側に配置されている。
また、矩形β´は、矩形βを等倍縮小した形状であってもよく、高さ方向又は幅方向に縮小した形状であってもよい。この場合、矩形β´の面積は矩形βの60〜80%であることが望ましい。
【0096】
第二の面110bから見た、外部格子121の形状は、
図10(a)〜(e)に示すような形状であってもよい。
図10(a)〜(e)は、本発明のハニカム焼成体の製造方法において用いる押出成形用金型の第二の面から見た外周格子の形状の一例を模式的に示す平面図である。ここで、
図10(a)〜(e)中に示す破線は、内部格子122の形状である矩形βを示す。
【0097】
図10(a)は、矩形βを幅方向に0.8倍した矩形β´の隣り合う2つの角部が2つの線分M及びNにより、それぞれ切り取られた6角形である外部格子121aの形状を示している。線分M及びNは直接接しておらず、線分M及びNを延長すると矩形β´の外側でこれらが交わることになる。また、切り取られた2つの角部の間にある矩形β´の辺の一部は、上記6角形の一辺を形成している。
【0098】
図10(b)は、矩形β´の隣り合う2つの角部が2つの線分O及びPにより、それぞれ切り取られた5角形である外部格子121bの形状を示している。線分Oと線分Pとはβ´を形成する辺において交差している。なお、線分Oと線分Pとは矩形β´の内部で交差していてもよい。すなわち、切り取られる2つの角部の間には、上記5角形を構成する辺が存在していない。
【0099】
図10(c)は、矩形β´の隣り合う2つの角部のうち一方の角部が線分Q及びRにより切り取られ、もう一方の角部が線分S及びTにより切り取られた8角形である外部格子121cの断面形状を示している。線分Qと線分Rとは、矩形β´の内部で互い交差している。さらに、線分Sと線分Tとも、矩形β´の内部で互い交差している。また、切り取られた2つの角部の間にある矩形β´の辺の一部は、上記8角形の一辺を形成している。
【0100】
図10(d)は、矩形β´の隣り合う2つの角部が2つの曲線M´及びN´により、それぞれ切り取られた外部格子121dの断面形状を示している。曲線M´及びN´は、β´の角部がR面取りされるように線分M及びNを折り曲げた曲線である。切り取られた2つの角部の間にある矩形β´の辺の一部は、外部格子121dの断面形状の輪郭を形成している。
【0101】
図10(e)は、矩形β´の隣り合う2つの角部が2つの曲線O´及びP´により、それぞれ切り取られた外部格子121eの断面形状を示している。曲線O´及びP´は、矩形β´の角部がR面取りされるように線分O及びPを折り曲げた曲線である。曲線O´と曲線P´とは矩形β´を形成する辺において交差している。なお、曲線O´と曲線P´とは、矩形β´の内部で交差していてもよい。
【0102】
押出成形用金型100の外部格子121及び内部格子122が上記形状であると、厚壁領域31bが形成されたハニカム焼成体10を製造することができる。すなわち、製造されたハニカム焼成体10の外周壁32近傍の体積を充分に大きくすることができる。そのため、製造されたハニカム焼成体10の外枠が機械的に頑丈な構造となり、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、外周壁32近傍の体積が大きいので、製造されたハニカム焼成体10では熱容量の低下を抑制することができる。そのため、製造されたハニカム焼成体10が急激に加熱されたとしても外周壁32により熱を受け止めることができ、クラックの発生を抑制できる。
【0103】
また、押出成形用金型100の第二の面110bから見た外部格子121の面積は、内部格子122の各面積の60〜80%である。
押出成形用金型100の第二の面110bから見た外部格子121の面積と、内部格子122の面積との関係が上記範囲内であると、製造されたハニカム焼成体の外周セル21の長手方向に垂直方向の断面の面積を、内部セル22の長手方向に垂直方向の断面の面積の60〜80%とすることができる。このようなハニカム焼成体10は、上記ハニカム焼成体10の説明で述べたように圧力損失の増加が抑制されている。
【0104】
次に、角部格子123について説明する。
押出成形用金型100の第二の面110bから見た角部格子123の形状は、特に限定されないが、内部格子122の形状である矩形βから少なくとも1つの角部が面取りされた形状であることが望ましい。また、矩形βを縮小し、かつ、縮小した矩形β´から少なくとも1つの角部が面取りされた形状であってもよい。角部格子123の形状がこのような形状であると、製造されたハニカム焼成体10の外周壁32近傍の体積を大きくすることができる。
そのため、製造されたハニカム焼成体10は、外周壁32近傍の体積が充分に大きいので、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、外周壁32近傍の体積が大きいので、製造されたハニカム焼成体10では熱容量の低下を抑制することができる。そのため、製造されたハニカム焼成体10が急激に加熱されたとしても外周壁32により熱を受け止めることができ、クラックの発生を抑制できる。
【0105】
また、押出成形用金型100の第二の面110bから見た角部格子123の形状は、矩形β又は矩形β´から全ての角部が直線又は曲線で面取りされた形状であってもよく、外部格子121と同様の形状であってもよく、
図11(a)〜(d)に示す形状であってもよい。
図11(a)〜(d)は、本発明のハニカム焼成体の製造方法において用いる押出成形用金型の第二の面から見た角部格子の形状の一例を模式的に示す平面図である。
図11(a)は、矩形βの角部のうち最も第二の面110bの内側になる角部を除いて、3つの角部が線分U、V及びWによりそれぞれ切り取られた7角形である角部格子123aの形状を示している。線分U及びVは直接接しておらず、線分U及びVを延長すると矩形βの外側でこれらが交わることになる。また、線分U及びWは直接接しておらず、線分U及びWを延長すると矩形βの外側でこれらが交わることになる。また、線分Vと線分Wとは並行である。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある矩形βの辺の一部は、角部格子123aの形状である7角形の一辺をそれぞれ形成している。
図11(b)は、矩形βの角部のうち最も第二の面110bの内側になる角部が線分Xにより切り取られた5角形である角部格子123bの断面形状を示している。
図11(c)は、矩形βの角部のうち最もハニカム焼成体10の内側になる角部を除いて、3つの角部が曲線U´、V´及びW´によりそれぞれ切り取られた角部格子123cの形状を示している。曲線U´、V´及びW´は、矩形βの角部がR面取りされるように線分U、V及びWを折り曲げた曲線である。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある矩形βの辺の一部は、角部格子123cの断面形状の輪郭を形成している。
図11(d)は、矩形βの角部のうち最も第二の面110bの内側になる角部が曲線X´により切り取られた角部格子123dの形状を示している。曲線X´は、矩形βの角部がR面取りされるように線分Xを折り曲げた曲線である。
特に、角部格子123の形状が
図11(b)又は
図11(d)に示す形状であると、製造されたハニカム焼成体10の構造上、圧縮応力がかかりにくくなる。そのため、製造されたハニカム焼成体10は、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。
【0106】
図9(b)に示すように押出成形用金型100において、外周スリット131の内壁面には原料通過抑制面135が形成されていることが望ましい。
ここで、原料通過抑制面とは、原料が通過しにくくなるよう、表面を加工した面のことをいう。
【0107】
ハニカム焼成体10の製造方法で用いる押出成形用金型100は、内部スリット133のスリット幅S
2が、外周スリット131の最小のスリット幅S
1よりも狭い。そのため、内部スリット133を流れるセラミック原料は、外周スリット131を流れるセラミック原料よりもセラミック原料の排出速度が遅くなる。このようにセラミック原料の排出速度に違いが生じると、排出速度の速いセラミック原料に排出速度の遅いセラミック原料が引っ張られ成形されるセル隔壁30が切れる原因となる。
しかし、押出成形用金型100の外周スリット131の内壁面に原料通過抑制面135が形成されていると、原料通過抑制面135が抵抗となり、外周スリット131からセラミック原料が排出されにくくなる。その結果、外周スリット131から押し出されるセラミック原料の排出速度が遅くなり、外周スリット131及び内部スリット133から押し出されるセラミック原料の排出速度の違いを緩和することができる。従って、成形されるセル隔壁30に欠陥が生じることを防ぐことができる。
なお、内部スリット133のスリット幅S
2が最外周スリット132の最小のスリット幅S
3よりも狭い場合には、最外周スリット132の内壁面に原料通過抑制面135が形成されていてもよい。この場合には、外周スリット131、内部スリット133及び最外周スリット132から押し出されるセラミック原料の排出速度の違いを緩和することができ、成形されるセル隔壁30に欠陥が生じることを防ぐことができる。
【0108】
原料通過抑制面135としては、例えば、放電加工により形成された粗化面が挙げられる。一般的に、押出成形用金型は、ブレード加工により所定の形状に加工される。そこで、押出成形用金型100を製造する際に、第一貫通孔111及び内部スリット133をブレード加工により形成した後、外周スリット131や最外周スリット132を放電加工により形成することで、外周スリット131や最外周スリット132の内壁面に粗化面を形成することができる。外周スリット131や最外周スリット132の内壁面に粗化面が形成されていると、粗化面が抵抗となって、セラミック原料が通りにくくなる。その結果、内部スリット133から押し出されるセラミック原料が、外周スリット131や最外周スリット132から押し出されるセラミック原料に引っ張られにくくなり、切れにくくなる。
【0109】
原料通過抑制面135が粗化面である場合、表面粗さRaは、0.1〜1.0μmである。
なお、表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)に準拠した中心線平均粗さであり、例えば、触針式表面粗さ測定器等により測定することができる。
【0110】
図12は、
図8に示す押出成形用金型を第二の面から見たときの拡大図である。
図12に示すように、内部スリット133(第二貫通孔111b)は、セラミック原料供給部150の第一貫通孔111aと連通するように格子状に設けられている。
また、セラミック原料供給部150の第一貫通孔111aは、通常、スリットが交差する位置に対応して設けられている。
具体的には、
図12に示すように、内部スリット133同士の交点のうち隣接する交点をそれぞれ150a及び150bとしたとき、第一貫通孔111aは交点150a上に設けられている。
【0111】
押出成形用金型100の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金、炭化タングステンとコバルトとその他微量粒子(例えば、TiC、TiN等)とを混合して焼結した超硬合金、工具鋼、ステンレス鋼、又は、アルミニウム合金等であることが望ましい、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金であることがより望ましい。
ここで、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金の硬度は、一般に、1000〜1500Hvである。
【0112】
(1−3)乾燥工程
次に、上記押出成形工程で得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、又は、凍結乾燥機等を用いて乾燥させる。ハニカム成形体の乾燥では、マイクロ波乾燥機と熱風乾燥機とを併用するか、又は、マイクロ波乾燥機を用いてハニカム成形体をある程度の水分となるまで乾燥させた後、熱風乾燥機を用いてハニカム成形体中の水分を完全に除去してもよい。
【0113】
(1−4)封止工程
上記乾燥工程後のハニカム成形体のセルの一方の端部に封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを封止する封止工程を行う。
ここで、封止材ペーストとしては、上記セラミック原料を用いることができる。
【0114】
(1−5)脱脂工程
次に、上記封止工程後のハニカム成形体を300〜650℃で、0.5〜3時間加熱することによりハニカム成形体中の有機物を除去し、ハニカム脱脂体を作製する。
【0115】
(1−6)焼成工程
上記脱脂工程で得られたハニカム脱脂体を窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で、1800〜2200℃、0.5〜4時間焼成する。
なお、セルの端部に充填された封止材ペーストは、加熱により焼成され、封止材となる。
【0116】
以上の工程を経て本発明のハニカム焼成体を製造することができる。
【0117】
次に、本発明のハニカムフィルタの製造方法を説明する。
【0118】
(2)ハニカムフィルタの製造方法
(2−1)接着材ペースト準備工程
まず、ハニカム焼成体10を接着させるための接着材ペーストを作製する。
接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が望ましい。
上記接着材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが望ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。
【0119】
(2−2)集合工程
上記工程で準備した接着材ペーストをハニカム焼成体の側面に塗り、複数のハニカム焼成体を集合する。
その後、集合されたハニカム焼成体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、ハニカム焼成体の集合体を作製する。
次に、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体10の集合体に切削加工を施し、円柱状とする。
【0120】
(2−3)外周コート層形成工程
次に、上記集合工程により得られたハニカム焼成体の集合体の外周に外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。また、外周コート材ペーストとして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
なお、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
【0121】
以上の工程を経て本発明のハニカムフィルタを製造することができる。
【0122】
(実施例)
以下に、本発明を実施するための形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本発明を実施するための形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
(実施例1−1)
(1)ハニカム焼成体の製造
(1−1)セラミック原料準備工程
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)0.8重量%、グリセリン1.3重量%、造孔材(アクリル樹脂)1.9重量%、オレイン酸2.8重量%、及び、水13.2重量%を加えて混合してセラミック原料を準備した。
【0124】
(1−2)押出成形工程
次に、上記セラミック原料準備工程で準備したセラミック原料を押出成形し、ハニカム焼成体10の元になるハニカム成形体を作製した。
なお押出成形工程では、以下の形状の押出成形用金型を用いた。
材質は炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金であり、硬度は1200Hvであった。セラミック原料供給部の厚さが8.5mm、成形部の厚さが2mm、外周スリットの最小のスリット幅S
1が0.305mm、内部スリットのスリット幅S
2が0.203mmであり、最外周スリットの最小のスリット幅S
3が0.322mmであった。つまり、最外周スリットの最小のスリット幅S
3は、外周スリットの最小のスリット幅S
2の約1.59倍であった。
また、第二の面から見た内部格子の形状は、一辺が1.70mmの正方形であった。
外部格子の形状の面積は、内部格子の形状の面積の66.5%であった。
第二の面から見た角部格子の形状は、
図11(a)に示す形状であって、内部格子の形状の正方形から3つの角部か面取りされた形状であった。角部格子の形状の面積は、内部格子の形状の面積の70%であった。
【0125】
(1−3)乾燥工程
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。
【0126】
(1−4)封止工程
その後、ハニカム成形体のセルの一方のセルに封止材ペーストを充填してセルの封止を行った。
具体的には、排ガス入口側の端部及び排ガス出口側の端部が
図2に示す位置で封止されるようにセルの封止を行った。
【0127】
(1−5)脱脂工程
続いて、セルの目封止を行ったハニカム成形体の乾燥体を400℃、2時間の条件で脱脂する脱脂処理を行いハニカム脱脂体を作製した。
【0128】
(1−6)焼成工程
さらに、ハニカム脱脂体を常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、2時間40分の条件で焼成処理を行った。
【0129】
以上の工程を経て実施例1に係るハニカム焼成体を作製した。
作製した実施例1に係るハニカム焼成体では、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、大きさが34.3mm×34.3mm×150mm、セル密度が31個/cm
2(200cpsi)、外周セル間セル隔壁の最小の厚さが0.300mm、内部セル間セル隔壁の厚さが0.200mm、外周壁の最小の厚さが0.316mmであった。
また、内部セルの断面形状は、一辺が1.67mmの正方形であった。
外周セルの形状は、
図3(a)に示す形状であって、外部セルの断面の面積は、内部セルの断面の面積の66.5%であった。
角部セルの断面形状は、
図5(a)に示す形状であって、内部セルの断面形状の正方形から3つの角部か面取りされた形状であった。角部セルの断面の面積は、内部セルの断面の面積の70%であった。
【0130】
なお、上記(1−3)乾燥工程〜(1−6)焼成工程を経てハニカム成形体はハニカム焼成体となるが、ハニカム成形体は、乾燥や焼成の際に若干収縮し、作製されたハニカム焼成体は、金型寸法に対し98%の大きさであった。
【0131】
(実施例1−2)〜(実施例1−4)及び(比較例1−1)
製造されたハニカム焼成体の外周セル間セル隔壁の最小の厚さT
1、外周セルの断面の面積の内部セルの断面の面積に対する割合が表1に示す形状となるように、上記(1−2)押出成形工程において、押出成形用金型の外
周スリットの最小のスリット幅S
1、及び、外周格子の面積に対する内部格子の面積の割合を変更した以外は実施例1−1と同様にして実施例1−2〜実施例1−4及び比較例1−1に係るハニカム焼成体を製造した。
【0132】
(実施例1−5)
上記(1−2)押出成形工程において、押出成形用金型の最外周スリット及び外周スリットの内壁面に、原料通過抑制面を設けた以外は実施例1−1と同様にして実施例1−5に係るハニカム焼成体を製造した。なお、設けた原料通過抑制面の表面粗さRaは0.410μmであった。
製造された実施例1−5に係るハニカム焼成体の外周セル間セル隔壁の最小の厚さT
1、外周セルの断面の面積の内部セルの断面の面積に対する割合を表1に示す。
【0134】
(良品率の算出)
実施例1−1〜実施例1−5、及び、比較例1−1のハニカム焼成体を、それぞれ50個ずつ作製した。そして、セル壁が切れていない、セル壁に穴が開いていない、かつ、セル壁が波打っていないハニカム焼成体を良品であるとして、良品率を以下の式1に基づき算出した。算出した良品率を表1に示す。
良品率(%)=(良品のハニカム焼成体の個数/製造したハニカム焼成体の総数)×100・・・式1
【0135】
表1に示すように、外周セル間セル隔壁の最小の厚さT
1を大きくすると良品率が向上していた。また、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面を形成すると、良品率が向上していた。
【0136】
(実施例2)
以下の方法により実施例2に係るハニカムフィルタを作製した
【0137】
(1)ハニカム焼成体の準備
ハニカムフィルタに用いるハニカム焼成体として、実施例1−1のハニカム焼成体を準備した。
【0138】
(2)ハニカムフィルタの製造
(2−1)接着材ペースト準備工程
平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を混合し耐熱性の接着材ペーストを準備した。
【0139】
(2−2)集合工程
接着材ペーストを準備した各ハニカム焼成体の側面に塗り、各ハニカム焼成体を集合した。
その後、集合されたハニカム焼成体を120℃加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、ハニカム焼成体の集合体を作製した。
次に、ダイヤモンドカッターを用い、ハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、円柱状とした。
【0140】
(2−3)外周コート層形成工程
次に、接着材ペーストと同様の組成からなる外周コート材ペーストをハニカム焼成体集合体の外周面に塗布し、外周コート材ペーストを120℃で乾燥固化させて外周コート層を形成することにより、ハニカムフィルタを製造した。
【0141】
以上の工程を経て実施例2に係るハニカムフィルタを作製した。