特許第6434756号(P6434756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434756
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】弾性体シート
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20181126BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F16F9/32 B
   F16F1/12 N
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-184573(P2014-184573)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-56895(P2016-56895A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小原 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】平渡 一樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成章
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−272565(JP,A)
【文献】 特開2001−225625(JP,A)
【文献】 特開2002−206583(JP,A)
【文献】 特開2015−190554(JP,A)
【文献】 特開2002−130350(JP,A)
【文献】 特開2004−316866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
F16F 1/00− 6/00
B60G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルばねと、前記コイルばねを支持するばね受けと、の間に設けられる弾性体シートであって、
前記コイルばねは中心線方向視で円弧状の線材であり、
前記線材の周方向視において、前記コイルばねの前記線材に接触する上面と、前記ばね受け側の側面である底面と、前記上面側から前記底面側にかけて前記線材の中心線から遠ざかるように傾斜した傾斜面と、を有し、
前記上面の半径は、前記線材の半径よりも小さく、
前記底面は両端部で前記ばね受けに接触する弾性体シート。
【請求項2】
前記底面は前記コイルばねの方に凹んだ凹部を有する
請求項1に記載の弾性体シート。
【請求項3】
前記凹部は、前記線材の周方向視で三角形である
請求項2に記載の弾性体シート。
【請求項4】
前記線材の周方向視において、
前記底面の前記両端部の幅は、前記底面が配置される前記ばね受けに設けられた溝の溝幅よりも小さい部分を有し、
前記両端部の内の少なくとも一つの端部と、前記端部と対向する前記溝の周方向側面と、の間に隙間を有する
請求項1から3のいずれか1項に記載の弾性体シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のサスペンション装置において、特許文献1には、図17に示すように、上下方向に延びるコイルばね522と、油圧緩衝器521に固定されたばね受け525との間にラバーシート530を設ける技術が記載されている。また、ラバーシート530の上面に形成された半円状のばね溝532bに、コイルばね522が嵌合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−219825号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラバーシート(弾性体シート)の上面に形成された半円状のばね溝に、コイルばねが嵌合する構成である場合、例えば、コイルばねの圧縮後の形状復帰時、コイルばねとばね溝との間に隙間が形成され、この隙間に、泥や砂等が侵入してしまうおそれがある。そして、(コイルばねとラバーシートの間の隙間に)泥や砂等が侵入した状態で、コイルばねが伸縮を繰り返すと、ラバーシートが損傷したり、コイルばねの塗装が剥げて折損したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、(コイルばねとラバーシートの間の隙間に)泥や砂等が侵入することによるコイルばねの塗装はげや折損等を抑制できる弾性体シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイルばねと、前記コイルばねを支持するばね受けと、の間に設けられる弾性体シートであって、前記コイルばねは中心線方向視で円弧状の線材であり、前記線材の周方向視において、前記コイルばねの前記線材に接触する上面と、前記ばね受け側の側面である底面と、前記上面側から前記底面側にかけて前記線材の中心線から遠ざかるように傾斜した傾斜面と、を有し、前記上面の半径は、前記線材の半径よりも小さく、前記底面は両端部で前記ばね受けに接触する弾性体シートである。ばね受け側の側面の両端部でコイルばねの圧縮荷重を受けるので、両端部がコイルばねの線材を押す押圧力を発生させることができる。これにより、コイルばねと弾性体シートとが密着するので、コイルばねと弾性体シートとの間に隙間が形成され難くなり、コイルばねと弾性体シートの間に泥や砂等が侵入し難くなる。この結果、本発明に係る弾性体シートは、コイルばねの塗装はげや折損等を防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(コイルばねとラバーシートの間の隙間に)泥や砂等が侵入することによるコイルばねの塗装はげや折損等を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るサスペンション装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施の形態に係るばね受け、コイルばね及びラバーシートを示す斜視図である。
図3】本実施の形態に係るラバーシートを斜め上から見た斜視図である。
図4】本実施の形態に係るラバーシートを上方から見た平面図である。
図5】本実施の形態に係るラバーシートを下方から見た平面図である。
図6】本実施の形態に係るラバーシートを横から見た平面図である。
図7図4のVII−VII部の断面図である。
図8図4のVIII−VIII部の断面図である。
図9図4のIX−IX部の断面図である。
図10】(a)は、コイルばねの圧縮荷重を受けていない状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。(b)は、コイルばねにプレ圧縮荷重が作用した状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。(c)は、コイルばねの圧縮荷重を受けている状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。
図11図4のXI−XI部の断面図である。
図12図4のXII−XII部の断面図である。
図13図4のXIII−XIII部の断面図である。
図14】ラバーシートの入口側端部の変形例を示す断面図である。
図15】ラバーシートの入口側端部の変形例を示す断面図である。
図16】ラバーシートの着座部の変形例を示す断面図である。
図17】従来に係るサスペンション装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るサスペンション装置300の概略構成を示す図である。
サスペンション装置300は、図1に示すように、四輪車に搭載され、ストラット型のサスペンションを構成している。サスペンション装置300は、油圧緩衝器400と、コイルばね100と、コイルばね100の圧縮荷重を受けるばね受け200と、コイルばね100とばね受け200との間に介在するラバーシート(弾性体シート)1と、を備えている。
【0010】
<油圧緩衝器>
油圧緩衝器400は、外殻を構成するダンパケース410と、ダンパケース410内に同軸で設けられたシリンダ(不図示)と、シリンダ内を摺動するピストン(不図示)と、ピストンに固定されると共に上方に突出するピストンロッド420と、を備えている。ピストンロッド420は、円柱状または円筒状の部材である。以下、ピストンロッド420の中心軸の方向(円柱または円筒の中心線方向)を、単に「上下方向」と称す場合がある。
【0011】
また、油圧緩衝器400は、ダンパケース410の下端部に設けられて、油圧緩衝器400をアッパーアーム等に連結させる車輪側ブラケット411を備えている。また、油圧緩衝器400は、ピストンロッド420の上端部に設けられて、油圧緩衝器400を車体に固定させる車体側ブラケット421と、車体側ブラケット421に固定されて、コイルばね100の上端部を支持するばね受け422と、を備えている。
【0012】
<コイルばね>
コイルばね100は、油圧緩衝器400に外装すると共に、上下方向に延びる部品である。コイルばね100は、線材101が螺旋状に巻かれて形成されている。
【0013】
<ばね受け>
図2は、ばね受け200、コイルばね100及びラバーシート1を示す斜視図である。
ばね受け200は、ダンパケース410に固定されて、コイルばね100を下方から支持する浅底で皿状を呈する部品である。ばね受け200には、ラバーシート1が配置される、平面視で約3/5円弧状の溝210(凹部)が形成されている。溝210の径方向断面は、略コの字状の形状である。
【0014】
<ラバーシート>
図3は、本実施の形態に係るラバーシート1を斜め上から見た斜視図である。図4は、本実施の形態に係るラバーシート1を上方から見た平面図である。図5は、本実施の形態に係るラバーシート1を下方から見た平面図である。図6は、本実施の形態に係るラバーシート1を横から見た平面図である。図7は、図4のVII−VII部の断面図である。図8は、図4のVIII−VIII部の断面図である。図9は、図4のIX−IX部の断面図である。
【0015】
ラバーシート1は、コイルばね100とばね受け200との間に介装されるゴム製の部品であって、コイルばね100が着座する着座部10を備えている。また、ラバーシート1は、ラバーシート1がコイルばね100から脱落することを防止する部分である、第1脱落防止部50と、第2脱落防止部60と、を備えている。
【0016】
<着座部>
着座部10は、平面視(軸方向視)で約3/5円弧状を呈しており、その周方向の一方側はコイルばね100の入口側であり、他方側はコイルばね100の線材101の端末102に接する端末側である(図2参照)。
着座部10は、円弧の周方向視(図8に示した径方向断面形状)で、上底であるコイルばね100側の底辺より下底であるばね受け200側の底辺が長い略等脚台形状に対して、上底側には略半円状の溝が形成された形状である。つまり、着座部10は、周方向視で、上部に位置して略半円状の溝を形成する上面11と、径方向内側の側面である内側側面12と、径方向外側の側面である外側側面13と、ばね受け200側の側面である底面14と、を有している。
【0017】
上面11における周方向視(図8に示した径方向断面形状)での半径R11は、コイルばね100の線材101の取り付け前において、線材101の半径R101よりも小さい。これにより、線材101と上面11との間に隙間が形成され難くなっており、線材101と上面11との間から砂や泥等が入り難くなっている。
【0018】
なお、上面11の半径R11は、少なくとも一方の開口側が、線材101の半径R101よりも小さければよい。すなわち、径方向内側(内側側面12側)の半径R11、径方向外側(外側側面13側)の半径R11を、部分的に大きくしてもよいし、小さくしてもよい。例えば、径方向内側(内側側面12側)の半径R11全体の半径R11を小さくしたり、径方向内側(内側側面12側)の上側部分(開口側部分)のみの半径を小さくしたりしてもよい。
【0019】
内側側面12,外側側面13は、周方向視(図8に示した径方向断面形状)で、上面11側から底面14側にかけて線材101の中心線から遠ざかるように傾斜した傾斜面である。これにより、内側側面12,外側側面13の上の泥や砂等が、内側側面12,外側側面13に沿って、ばね受け200側に滑り落ち、線材101と上面11との間に砂や泥等が入り難くなっている。
【0020】
底面14における径方向内側の端部14a(内側側面12と底面14とが交わる部位)は、線材101における最も径方向内側の部位101aよりも径方向内側にある。また、底面14における径方向外側の端部14b(外側側面13と底面14とが交わる部位)は、線材101における最も径方向外側の部位101bよりも径方向外側にある。
【0021】
ここで、図8(b)は、ばね受け200、コイルばね100及びラバーシート1を組み付けた状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。図8(b)に示すように、ラバーシート1の底面14における径方向内側の端部14aと径方向外側の端部14bとの中間位置14c、及びばね受け200の溝210の両側部210aにおける径方向の中間位置210bが、コイルばね100の線材101の中心線の略線上に位置する。
【0022】
また、着座部10は、図3図7などに示すように、周方向の一方側(入口側)の端面である入口側端面15を有している。そして、着座部10は、着座部10における一方側(入口側)の約1/4部分は、入口側端面15に近づくにつれて徐々に肉厚であり、上面11は一方側(入口側)に向けて立ち上がるスロープ面となっている。コイルばね100が圧縮・伸張を繰り返すことにより、着座部10に作用する上下方向の荷重の変動幅も大きくなるが、着座部10が一方側(入口側)に近づくにつれて徐々に肉厚であることにより、ラバーシート1の耐久性は高い。
【0023】
また、着座部10は、図7に示すように、一方側(入口側)の端部に、上面11から線材101側(上側)に向かって突出するリップ16を有している。リップ16は、周方向視(図8に示した径方向断面形状)で、三日月状となるように、上面11の全体に形成されている。より具体的には、図9に示すように、リップ16の突出量は上面11の中央(径方向中央)で最も大きく、中央から径方向内側又は径方向外側に向かうにつれて小さくなっている。言い換えると、リップ16は、周方向視において、中央で線材101(コイルばね100)側に最も突出している。
【0024】
これにより、リップ16が弾性変形した状態で線材101に接触する。その結果、コイルばね100の圧縮/伸長の繰り返しにより、コイルばね100とラバーシート1の間において荷重の作用/開放が繰り返されたとしても、リップ16が線材101に接触したままとなり易い。したがって、入口側において、上面11と線材101との間に隙間がさらに形成され難くなる。この結果、砂や泥等が、ラバーシート1の入口側から線材101とラバーシート1の間に侵入し難くなる。
【0025】
<入口側端面、入口側凹部>
着座部10の入口側端面15は、図7に示すように、周方向においてばね受け200側が凹むように斜めである。これにより、入口側端面15の下方には、周方向断面で略直角三角状を呈し、コイルばね100から圧縮荷重を受けた変形時に着座部10の逃げ場となる逃げ空間15aが形成されている。
【0026】
また、入口側端面15におけるばね受け200側の部位には、他方側(端末側)に凹んだ入口側凹部17が形成されている。入口側凹部17の底面17aの深さは、ばね受け200側からコイルばね100側に向かうにつれて徐々に深くなっている。
【0027】
ラバーシート1にコイルばね100の圧縮荷重が作用した場合、潰されたラバーシート1のボリュームの逃げにより、着座部10が周方向に伸びるように変形する。そして、コイルばね100の入口側において、変形する着座部10の一部が入口側端面15に形成された入口側凹部17に逃げ込むことなる。
【0028】
これにより、入口側端面15は、入口側端面15よりも突出した変形をしないため、砂や泥等が、侵入し難くなる。加えて、コイルばね100の入口側において、コイルばね100から局所的に過大な圧力がかかることを防止することができる。この結果、本実施の形態に係るラバーシート1は、コイルばね100の入口側において着座部10と線材101とのこすれ(摺接)を防止することができる。ラバーシート1は、例えば、着座部10と線材101との間に砂や泥等が侵入した場合であっても、コイルばね100の塗装剥がれや折損等を防止できる。
【0029】
また、入口側端面15は、ばね受け200側が凹むように斜めであるため、入口側端面15においてばね受け200側の端部がコイルばね100側の端部よりもラバーシート1の周方向内側(入口側と反対側)にある。そのため、コイルばね100の圧縮荷重が作用した場合、ばね受け200側の端部を支点として、入口側端面15が倒れ、コイルばね100に対するラバーシート1のコイルばね100側端部の位置が移動し難い。要するに、ラバーシート1は、入口側端面15におけるラバーシート1とコイルばね100の接触部分を一定にすることができ、双方の間で生じるこすれ(摺接)を防止し易くすることができる。
これにより、ラバーシート1は、例えば、着座部10と線材101との間に砂や泥等が侵入した場合であっても、コイルばね100の塗装剥がれや折損等を防止できる。
【0030】
<ばね受け側凹部>
着座部10は、上述した一方側(入口側)の約1/4部分に、底面14から凹むと共に周方向に延びるばね受け側凹部20を有する(図5図7参照)。ばね受け側凹部20は、入口側端面15に近づくにつれて徐々に肉厚であり、かつ上面11が一方側に向けて立ち上がるスロープ面となっている部位に設けられている。
【0031】
ばね受け側凹部20の周方向長さは、着座部10の一方側(入口側)の肉厚部分の長さに対応している。ばね受け側凹部20は、着座部10を構成するラバー部分の厚さが一定となるように、コイルばね100の圧縮荷重が作用しやすい入口側が最も深く、入口側から遠ざかるにつれて徐々に浅くなるスロープ状である。ただし、ばね受け側凹部20の深さは、周方向において一定としてもよい。
【0032】
ばね受け側凹部20は、周方向視(図8に示した径方向断面形状)で、底部の幅方向の両端でコイルばね100の圧縮荷重を受けるように底面14からコイルばね100の方に凹んでいる。そして、本実施の形態においては、ばね受け側凹部20は、図9に示すように、周方向視で略三角形である。
【0033】
本実施の形態に係るラバーシート1は、コイルばね100と、コイルばね100を支持するばね受け200と、の間に設けられる弾性体シートであって、コイルばね100は中心線方向視で円弧状の線材101であり、線材101の周方向視において、ばね受け200側の側面(底面14)は両端部でばね受け200に接触する弾性体シートである。
【0034】
また、ラバーシート1のばね受け200側の側面は、コイルばね100の方に凹んだ凹部の一例としてのばね受け側凹部20を有する。そして、ばね受け側凹部20は、線材101の周方向視で略三角形である。
【0035】
図10(a)は、コイルばね100の圧縮荷重を受けていない状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。図10(b)は、コイルばね100にプレ圧縮荷重が作用した状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。図10(c)は、コイルばね100の圧縮荷重を受けている状態における図4のVIII−VIII部の断面図である。
【0036】
着座部10の周方向視における底部の両端部14a及び14bの幅Wrは、図10(a)に示すように、コイルばね100の圧縮荷重を受けていない状態で、ばね受け200に設けられた底部の移動を抑制する溝210の溝幅Wsよりも小さい(Wr<Ws)。それゆえ、着座部10は、コイルばね100の圧縮荷重を受けていない場合には、底部の幅方向の両端部14a及び14bのいずれもばね受け200の溝210の側部210aに接触しない。
なお、着座部10は、底部の幅方向の両端部14a及び14bのいずれか一方が、ばね受け200の溝210の側部210aに接触してもよい。
【0037】
図10(b)は、コイルばね100に所定のプレ圧縮荷重を作用させるようにサスペンション装置300を例えば四輪車に取り付けた状態における、ラバーシート1の図4のVIII−VIII部の断面図である。コイルばね100に所定のプレ圧縮荷重を作用させた状態では、ラバーシート1は、ばね受け側凹部20がつぶれるように、着座部10における線材101直下の部位14d(ばね受け側凹部20の最深部)がばね受け200に接触する。図10(b)に示すように、コイルばね100に所定のプレ圧縮荷重が作用した状態においても、着座部10の周方向視における底部の幅Wraは、ばね受け200の溝210の溝幅Wsよりも小さい(Wra<Ws)。
【0038】
それゆえ、本実施の形態では、着座部10は、底部の幅方向の両端部14a及び14bのいずれもばね受け200の溝210の側部210aに接触しない。
(コイルばね100の)線材101の周方向視において、ばね受け200側の側面の両端部14a及び14bの幅は、ばね受け200側の側面が配置されるばね受け200に設けられた溝210の溝幅Wsよりも小さい部分を有し、両端部14a及び14bの内の少なくとも一つの端部と、前記端部と対向する溝210の周方向側面と、の間に隙間を有する。
なお、着座部10は、底部の幅方向の両端部14a及び14bのいずれか一方が、ばね受け200の溝210の側部210aに接触してもよい。
【0039】
一方、例えばサスペンション装置300を取り付けた四輪車が凹凸のある道路を走行することに起因してコイルばね100が縮む場合を考える。ラバーシート1は、コイルばね100の圧縮荷重を受けてつぶれ、着座部10は、図10(c)に示すように、底部の幅方向の両端部14a及び14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触する。
これらのばね受け側凹部20による作用及び効果については後述する。
【0040】
<他方側の形状>
図11は、図4のXI−XI部の断面図である。
着座部10は、図11に示すように、周方向の他方側(端末側)の端部に、上面11から上方に突出する端壁部18を有している。線材101の端末102(下方側先端)がこの端壁部18に突き当たることで、ラバーシート1とコイルばね100との周方向の位置が定まる。
【0041】
また、着座部10は、図11に示すように、他方側(端末側、入口側の反対側)の端部に、ばね受け200側に向けて肉厚である肉厚部19を有している。これにより、着座部10の他方側における耐久性は高くなっており、ラバーシート1の形状を維持することができる。一方、ばね受け200には、肉厚部19が嵌合する位置決め部211が形成されている。
【0042】
<第1脱落防止部、第2脱落防止部>
図12は、図4のXII−XII部の断面図である。
図13は、図4のXIII−XIII部の断面図である。
第1脱落防止部50、第2脱落防止部60は、ラバーシート1のコイルばね100への装着後、ラバーシート1がコイルばね100から脱落することを防止する部分である。なお、第1脱落防止部50は、ラバーシート1の周方向中間に配置されており、第2脱落防止部60は、ラバーシート1の他方側(端末側)に配置されている。
【0043】
第1脱落防止部50は、図12に示すように、内側側面12から径方向内側及び上方に突出すると共に線材101を囲むように径方向外側に延びる第1内側脱落防止片51を備えている。また、第1脱落防止部50は、外側側面13から径方向外側及び上方に突出すると共に線材101を囲むように径方向内側に延びる第1外側脱落防止片52を備えている。
【0044】
第2脱落防止部60は、図13に示すように、内側側面12から径方向内側及び上方に突出すると共に線材101を囲むように径方向外側に延びる第2内側脱落防止片61を備えている。また、第2脱落防止部60は、外側側面13から径方向外側及び上方に突出すると共に線材101を囲むように径方向内側に延びる第2外側脱落防止片62を備えている。
【0045】
第2脱落防止部60は、図13に示すように、コイルばね100の端末102を上方から挿入し易いように、その上部が開口している。これにより、端末102の設置(取付)も簡単であり、かつ、組み付けた後のコイルばね100を保持するようになっている。
【0046】
また、ラバーシート1は、図12に示すように、周方向には第1脱落防止部50が設けられている位置であって第1外側脱落防止片52の下側に、ばね受け200側に向けて突出し周方向に若干延びる凸部53を有している(図5図6も参照)。凸部53がばね受け200に形成された位置決め孔220に差し込まれることで、ラバーシート1とばね受け200とが周方向において位置決めされるようになっている。
【0047】
<ラバーシートの組み付け方法>
次に、ラバーシート1の組み付け方法を説明する。
先ず、ラバーシート1とコイルばね100とを組み付ける。
具体的には、コイルばね100の端末102と、ラバーシート1の端壁部18とを位置合わせした後、コイルばね100を下方向にラバーシート1に押し込む。そうすると、第1脱落防止部50の第1内側脱落防止片51及び第1外側脱落防止片52と、第2脱落防止部60の第2内側脱落防止片61及び第2外側脱落防止片62とが弾性変形する。これにより、線材101が、第1内側脱落防止片51及び第1外側脱落防止片52の間、第2内側脱落防止片61及び第2外側脱落防止片62の間に嵌まり込み、着座部10に着座する(図2図11参照)。
【0048】
着座と同時に、線材101は、着座部10の上面11に接触する。その後、第1内側脱落防止片51及び第1外側脱落防止片52が線材101の上面に接触し(図12参照)、第2内側脱落防止片61及び第2外側脱落防止片62も線材101の上面に接触する(図13参照)。これにより、ラバーシート1のコイルばね100への装着後、ラバーシート1がコイルばね100から脱落し難くなる。
【0049】
次に、ラバーシート1とばね受け200とを組み付ける。
具体的には、凸部53をばね受け200に対して位置合わせをしたうえで、ラバーシート1の肉厚部19とばね受け200の位置決め部211とを位置合わせする。その後、ラバーシート1をばね受け200の溝210に配置する。
【0050】
なお、ラバーシート1にコイルばね100を組み付ける方法については、上述した記載に限らず、他の方法でもよい。例えば、コイルばね100の端末102をラバーシート1の着座部10の上面11に接触させた後に、周方向の一方側(入口側)から他方側(端末側)の方へ、コイルばね100の端末102がラバーシート1の端壁部18に突き当たるまでコイルばね100を周方向に移動させてもよい。
【0051】
<ラバーシートの効果>
次に、ラバーシート1の作用効果を説明する。
着座部10の上面11の半径R11は、線材101の半径R101よりも小さい。これにより、上面11と線材101とが密着するので、上面11と線材101との間に隙間が形成され難くなる。したがって、泥や砂等が、上面11と線材101との間に侵入し難くなり、コイルばね100の塗装はげや折損等が防止される。
また、着座部10の内側側面12及び外側側面13は、上面11側から底面14側にかけて線材101の中心線から遠ざかるように傾斜しているので、泥や砂等が滑り落ちる。これにより、泥や砂等が内側側面12及び外側側面13と線材101との間に侵入し難くなる。
【0052】
また、ラバーシート1は、着座部10の周方向の一方側(入口側)の端部にリップ16を有している。これにより、コイルばね100の圧縮/伸長の繰り返しによりコイルばね100とラバーシート1との間において荷重の作用/開放が繰り返されたとしても、リップ16が線材101に接触したままとなり易い。それゆえ、一方側において、上面11と線材101との間に隙間がさらに形成され難くなる。この結果、砂や泥等が、ラバーシート1の入口側から線材101とラバーシート1の間に侵入し難くなる。
【0053】
また、着座部10の周方向の一方側の部位には、逃げ空間15aや入口側凹部17が形成されていることにより、コイルばね100の入口側において着座部10と線材101とのこすれ(摺接)を防止することができる。これにより、例えば、着座部10と線材101との間に砂や泥等が侵入した場合であっても、ラバーシート1は、コイルばね100の塗装剥がれや折損等を防止できる。
【0054】
また、ラバーシート1には、着座部10における入口側のばね受け200と対向する部位にばね受け側凹部20が形成されている。そして、コイルばね100のプレ圧縮荷重が作用した場合に、ラバーシート1は、ばね受け側凹部20がつぶれるようにばね受け200に接触する。このとき、ラバーシート1の底部における径方向内側の端部14aは、線材101における最も径方向内側の部位101aよりも径方向内側にあり、径方向外側の端部14bは、線材101における最も径方向外側の部位101bよりも径方向外側にある。そして、内側側面12及び外側側面13が線材101に向かって相対的に上方に移動し、内側側面12及び外側側面13、及びこれら近傍の部位である側部が線材101を押す方向に押圧力を発生させる。これにより、上面11と線材101とが密着し、上面11と線材101との間に隙間が形成され難くなる。この結果、ラバーシート1は、泥や砂等が、上面11と線材101との間に侵入し難くすることができ、コイルばね100の塗装はげや折損等を防止できる。
【0055】
また、コイルばね100の縮みによる圧縮荷重をラバーシート1が受けた場合には、底部の径方向内側の端部14a及び径方向外側の端部14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触するように変形する。これにより、内側側面12及び外側側面13、及びこれら近傍の部位である側部が線材101を押す方向の押圧力を発生させる。これにより、上面11と線材101とが密着し、上面11と線材101との間に隙間がさらに形成され難くなる。この結果、ラバーシート1は、泥や砂等が、上面11と線材101との間に侵入し難くすることができ、コイルばね100の塗装はげや折損等を防止できる。
【0056】
また、着座部10は、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けていない場合には、底部の径方向内側の端部14a及び径方向外側の端部14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触しない。それゆえ、例えば、コイルばね100、ラバーシート1、ばね受け200等の製造ばらつきにより、コイルばね100とラバーシート1との間、又はラバーシート1とばね受け200との間に径方向のずれが生じた場合でも、そのずれを吸収することができるので組み付け易い。
【0057】
なお、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けていないときに、着座部10の底部の径方向の両端部14a及び14bの少なくともいずれかがばね受け200の溝210の側部210aに接触しない構成である場合も同様に、ずれを吸収することができるので組み付け易い。
【0058】
本実施の形態に係るラバーシート1においては、ばね受け側凹部20の径方向断面形状が略三角形である。ばね受け側凹部20の径方向断面形状が略三角形であることにより、コイルばね100のプレ圧縮荷重を受けた場合に、着座部10における線材101直下の部位14dがばね受け200に接触した状態に変形し易くなる。そして、着座部10における線材101直下の部位14dがばね受け200に接触した状態で、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けると、底部の幅方向の両端部14a,14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触し易くなる。その結果、ラバーシート1は、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重が作用する前後において、着座部10の底部の幅方向の両端部14a,14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触しない状態から接触する状態に変化させることができる。
【0059】
加えて、コイルばね100のプレ圧縮荷重を受けた場合に、着座部10における線材101直下の部位14dがばね受け200に接触するように変形することで、ラバーシート1は、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重による衝撃を緩和することができ、振動を抑制することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係るラバーシート1においては、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けた場合に底部の幅方向の両端部14a及び14bがばね受け200の溝210の側部210aに接触する。これにより、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けた場合のラバーシート1の径方向の変形量が制限される。つまり、コイルばね100の縮みに起因する圧縮荷重を受けた場合のラバーシート1の着座部10のつぶれ量が制限される。その結果、ラバーシート1は、コイルばね100の軸方向の圧縮量を制限することにより、(コイルばね100の最圧縮時における)線材101に生じる最大応力を制限することができ、コイルばね100の破損を防止することができる。
【0061】
≪変形例≫
次に、ラバーシート1の変形例について説明する。
図14及び図15は、ラバーシート1の入口側端部の変形例を示す断面図である。図14及び図15は、図4のVII−VII部の断面図でもある。
上述した実施の形態では、図7に示すように、周方向における入口側端面15からの入口側凹部17の深さが、上側に向かうにつれて徐々に大きくなる構成を例示したが、その他に例えば、図14に示すように、入口側凹部17の底面17aが複数段で形成された構成でもよい。なお、段数は、2段、3段…等に適宜に変更してよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、図7に示すように、ラバーシート1は、ばね受け200側が凹むように入口側端面15が(入口側に)傾斜した構成を例示したが、その他に例えば、図15(a)に示すように、入口側端面15は傾斜せず、上下方向に延びる構成としてもよい。
この場合において、入口側凹部17の底面17aは、上下方向に延びる構成としてもよいし(図15(a)参照)、図15(b)に示すように、底面17aの下側が一方側に向けて傾斜し、入口側凹部17の深さが上側に向かうにつれて徐々に大きくなる構成としてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、図7に示すように、入口側端面15に入口側凹部17が形成された構成を例示したが、その他に例えば、入口側凹部17が形成されていない構成でもよい。
【0064】
図16は、ラバーシート1の着座部10の変形例を示す断面図である。図16は、図4のVIII−VIII部の断面図でもある。
上述した実施の形態では、着座部10は、周方向視(図8に示した径方向断面形状)で、略等脚台形状に対して略半円状の溝が形成された形状を例示したが、その他に例えば、図16に示すように、底面14から上方に直角に延びる面を有する略五角形状に対して略半円状の溝が形成された形状でもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態では、周方向において、2つの脱落防止部(第1脱落防止部50、第2脱落防止部60)を備える構成を例示したが、その他に例えば、脱落防止部の数は、1つ、又は、3つ以上、に変更してもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態では、ラバーシート1は、他端側の端部において、徐々に厚くなるスロープ状の肉厚部19を備える構成を例示したが、その他に例えば、スロープ状になっておらず、全体として一定の厚さである肉厚部を備える構成としてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、ピストンロッド420がダンパケース410から上方に突出する構成を例示したが(図1参照)、その他に例えば、上下逆の構成、つまり、ピストンロッド420がダンパケース410から下方に突出する構成でもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態では、サスペンション装置300がストラット型である構成を例示したが(図1参照)、その他に例えば、ウィッシュボーン型でもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ラバーシート、10…着座部、11…上面、12…内側側面、13…外側側面、14…底面、15…入口側端面、16…リップ、17…入口側凹部、18…端壁部、19…肉厚部、20…ばね受け側凹部、50…第1脱落防止部、60…第2脱落防止部、100…コイルばね、101…線材、200…ばね受け、210…溝、300…サスペンション装置、400…油圧緩衝器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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