特許第6434786号(P6434786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434786
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20181126BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20181126BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F28F9/02 301Z
   F28D1/053 A
   F25B39/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-238389(P2014-238389)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-99088(P2016-99088A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄一
(72)【発明者】
【氏名】門 浩隆
(72)【発明者】
【氏名】飯野 祐介
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2003−0092317(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第102519179(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0070391(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0075033(KR,A)
【文献】 特開2009−097838(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02414966(DE,A)
【文献】 特開平09−264686(JP,A)
【文献】 特開2002−213891(JP,A)
【文献】 特開2001−059693(JP,A)
【文献】 特表2005−532525(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0095458(US,A1)
【文献】 特開平09−203596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 9/26
F28D 1/053
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を熱交換流体が流通可能に形成された複数の熱交換体と、
互いに平行に延びると共に端部に開口部が形成された筒形状を有し、内部に供給される前記熱交換流体が順次流通するように複数の前記熱交換体に接続された複数のヘッダタンクと、
複数の前記ヘッダタンクの開口部の内側にそれぞれ対応して配置されると共に前記開口部を形成する前記ヘッダタンクの内周部に間隔を空けて対向する外周部を有し且つ前記ヘッダタンクの内周部との間が接合されることにより複数の前記ヘッダタンクの開口部を密閉する複数のキャップ本体と、複数の前記キャップ本体を互いに連結する連結部とを有する熱交換器用キャップと、
前記キャップ本体の外周部と前記ヘッダタンクの内周部との間隔を変化させるように形成され、前記キャップ本体の外周部および前記ヘッダタンクの内周部の少なくとも一方に、同一方向に延びる複数の前記キャップ本体の中間線で区分けされる一半部側と他半部側のうち一半部側に偏るように設けられた間隔変化部とを備える熱交換器。
【請求項2】
前記間隔変化部は、前記一半部側と前記他半部側のうち前記一半部側に数が偏るように設けられる請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
複数の前記キャップ本体は、一列に配列され、
前記間隔変化部は、複数の前記キャップ本体の中心を結ぶように延びる前記中間線で区分けされた一半部側と他半部側のうち一半部側に偏るように設けられる請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記間隔変化部は、前記ヘッダタンクの内周部に圧入するように前記キャップ本体の外周部から突出して設けられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
内部を熱交換流体が流通可能に形成された複数の熱交換体と、
互いに平行に延びると共に端部に開口部が形成された筒形状を有し、内部に供給される前記熱交換流体が順次流通するように複数の前記熱交換体に接続された複数のヘッダタンクと、
複数の前記ヘッダタンクの開口部の内側にそれぞれ対応して配置されると共に前記開口部を形成する前記ヘッダタンクの内周部に対向する外周部を有し且つ前記ヘッダタンクの内周部との間が接合されることにより複数の前記ヘッダタンクの開口部を密閉する複数のキャップ本体と、複数の前記キャップ本体を互いに連結する連結部とを有する熱交換器用キャップと、
前記熱交換器用キャップの両端に位置する2つの前記キャップ本体のうち一方の前記キャップ本体を前記ヘッダタンクに係合させる係合部とを備え
前記係合部は、一方の前記キャップ本体の外周部から延出する係合延出部と、前記係合延出部に対応して前記ヘッダタンクを貫通するように設けられた係合受け部とを有し、前記係合延出部を前記係合受け部に挿入して一方の前記キャップ本体を前記ヘッダタンクに係合させる熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換器用キャップは、両端に位置する2つの前記キャップ本体のうち他方の前記キャップ本体の外周部から延出する支持延出部を有し、
前記ヘッダタンクは、内周部を切欠いた切欠き部を有し、前記切欠き部に前記支持延出部が収容されることにより周方向に支持される請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に係り、特に、ヘッダタンクに形成された開口部を密閉する熱交換器用キャップが設けられた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調装置などにおいて、内部を流通する熱交換流体と外部を流通する外部流体との間で熱交換を行う熱交換器が用いられている。例えば、熱交換器は、互いに平行に延びると共に所定の間隔を空けて配置された一対のヘッダタンクと、この一対のヘッダタンクの間を接続する熱交換体とをそれぞれ有する複数の熱交換器コアを並列配置して構成される。一対のヘッダタンクと熱交換体は、内部を熱交換流体が流通可能に形成されており、一対のヘッダタンクに供給される熱交換流体を熱交換体に順次流通させることにより、熱交換体の外部を流通する外部流体との間で熱交換を行うことができる。この時、一対のヘッダタンクの端部には内部と外部を連通する開口部が形成されており、この開口部を熱交換器用キャップで密閉することにより、熱交換流体を流出させることなく熱交換体内に流通させることができる。
【0003】
ここで、熱交換器用キャップは、ロウ材などの接合材を用いてヘッダタンクの端部に接合されている。このため、例えば適量の接合材が付与されずに熱交換器用キャップの接合に欠陥が生じている場合には、内部を流通する熱交換流体の圧力などにより接合が破壊されて、熱交換器用キャップがヘッダタンクの端部から勢いよく飛散するといった問題があった。近年、二酸化炭素などの高圧化して用いる熱交換流体が利用されており、その危険性が高くなるおそれがある。特に、自動車などの搭乗者に近い位置に配置される熱交換器では危険性がさらに高くなるため、熱交換器用キャップをヘッダタンクの端部に確実に接合することが求められている。
【0004】
そこで、熱交換器用キャップを確実に接合する技術として、特許文献1には、ヘッダタンクの端部間に架け渡し可能な大きさの架橋プレートにより構成され、その架橋プレートに、ヘッダタンクの開口縁部に対応して円弧状の開口縁部挿入孔がそれぞれ設けられた熱交換器用キャップが開示されている。この熱交換器用キャップでは、開口縁部挿入孔にヘッダタンクの開口縁部を挿入することで熱交換器用キャップの位置ずれが防止されるため、接合材を一定の精度で付与することができ、接合の欠陥を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4109746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の熱交換器用キャップは、ヘッダタンクの端部から飛散する勢いを抑制するものではなく、ヘッダタンクとの接合が破壊された場合には勢いよく飛散するおそれがあるため、その危険性を大きく低減することはできなかった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、ヘッダタンクの端部から熱交換器用キャップが飛散する勢いを抑制することができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る熱交換器は、内部を熱交換流体が流通可能に形成された複数の熱交換体と、互いに平行に延びると共に端部に開口部が形成された筒形状を有し、内部に供給される熱交換流体が順次流通するように複数の熱交換体に接続された複数のヘッダタンクと、複数のヘッダタンクの開口部の内側にそれぞれ対応して配置されると共に開口部を形成するヘッダタンクの内周部に間隔を空けて対向する外周部を有し且つヘッダタンクの内周部との間が接合されることにより複数のヘッダタンクの開口部を密閉する複数のキャップ本体と、複数のキャップ本体を互いに連結する連結部とを有する熱交換器用キャップと、キャップ本体の外周部とヘッダタンクの内周部との間隔を変化させるように形成され、キャップ本体の外周部およびヘッダタンクの内周部の少なくとも一方に、同一方向に延びる複数のキャップ本体の中間線で区分けされる一半部側と他半部側のうち一半部側に偏るように設けられた間隔変化部とを備えるものである。
【0009】
ここで、間隔変化部は、一半部側と他半部側のうち一半部側に数が偏るように設けることが好ましい。
【0010】
また、複数のキャップ本体は、一列に配列され、間隔変化部は、複数のキャップ本体の中心を結ぶように延びる中間線で区分けされた一半部側と他半部側のうち一半部側に偏るように設けることが好ましい。
【0011】
また、間隔変化部は、ヘッダタンクの内周部に圧入するようにキャップ本体の外周部から突出して設けることができる。
【0012】
この発明に係る熱交換器は、内部を熱交換流体が流通可能に形成された複数の熱交換体と、互いに平行に延びると共に端部に開口部が形成された筒形状を有し、内部に供給される熱交換流体が順次流通するように複数の熱交換体に接続された複数のヘッダタンクと、複数のヘッダタンクの開口部の内側にそれぞれ対応して配置されると共に開口部を形成するヘッダタンクの内周部に対向する外周部を有し且つヘッダタンクの内周部との間が接合されることにより複数のヘッダタンクの開口部を密閉する複数のキャップ本体と、複数のキャップ本体を互いに連結する連結部とを有する熱交換器用キャップと、熱交換器用キャップの両端に位置する2つのキャップ本体のうち一方のキャップ本体をヘッダタンクに係合させる係合部とを備え、係合部は、一方のキャップ本体の外周部から延出する係合延出部と、係合延出部に対応してヘッダタンクを貫通するように設けられた係合受け部とを有し、係合延出部を係合受け部に挿入して一方のキャップ本体をヘッダタンクに係合させるものである。
【0014】
また、熱交換器用キャップは、両端に位置する2つのキャップ本体のうち他方のキャップ本体の外周部から延出する支持延出部を有し、ヘッダタンクは、内周部を切欠いた切欠き部を有し、切欠き部に支持延出部が収容されることにより周方向に支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、キャップ本体の外周部およびヘッダタンクの内周部の少なくとも一方に、同一方向に延びる複数のキャップ本体の中間線で区分けされる一半部側と他半部側のうち一半部側に偏るように間隔変化部が設けられるので、ヘッダタンクの端部から熱交換器用キャップが飛散する勢いを抑制することができる熱交換器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態1に係る熱交換器の構成を示す斜視図である。
図2】ヘッダタンクの端部を示す斜視図である。
図3】熱交換器用キャップの構成を示し、(A)は斜視図、(B)は底面図である。
図4】ヘッダタンクの端部に取り付けられた熱交換器用キャップを示す図である。
図5】キャップ本体をヘッダタンクに接合する接合材の状態を示す断面図である。
図6】この発明の実施の形態2に係る熱交換器の要部の構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態2において熱交換器用キャップがヘッダタンクの端部から外れる様子を示す斜視図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る熱交換器の要部の構成を示す斜視図である。
図9】キャップ本体の外周部から窪むように形成された間隔変化部を示す底面図である。
図10】キャップ本体の一半部側の外周部のみに設けられた間隔変化部を示す底面図である。
図11】キャップ本体の一半部側と他半部側のうち一半部側の外周部に大きさが偏るように設けられた間隔変化部を示す底面図である。
図12】キャップ本体の配列方向に直交する方向に延びる中間線でキャップ本体を区分けして設けられた間隔変化部を示す底面図である。
図13】ヘッダタンクの内周部に設けられた間隔変化部を示す図である。
図14】ヘッダタンクの内周部に設けられた係合部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る熱交換器の構成を示す。この熱交換器は、並列配置された3つの熱交換器コア1a〜1cを有する。熱交換器コア1a〜1cは、互いに平行に延びると共に所定の間隔を空けて配置された一対のヘッダタンク2a〜2cと、この一対のヘッダタンク2a〜2cの間を接続する熱交換体3a〜3cと、一対のヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに配置される熱交換器用キャップ5とを有する。
【0018】
熱交換体3a〜3cは、一対のヘッダタンク2a〜2cの間を接続する複数の扁平チューブ6と、複数の扁平チューブ6の間に配置されたフィン7とを有する。複数の扁平チューブ6は、ヘッダタンク2a〜2cが延びる方向に並列配置され、内部を熱交換流体Fが流通可能に形成されている。フィン7は、複数の扁平チューブ6の外壁間を連結すると共に外部流体が熱交換体3a〜3cの配列方向に通過するように隙間を空けて形成されている。
【0019】
ヘッダタンク2a〜2cは、熱交換器コア1a〜1cの配列方向に互いに隣接して1列に配列されている。また、ヘッダタンク2a〜2cは、図2に示すように、端部4a〜4cに開口部8a〜8cが形成された円筒形状を有し、内部に供給される熱交換流体Fが熱交換体3a〜3cの複数の扁平チューブ6に順次流通するように複数の扁平チューブ6と接続されている。また、ヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cには、その一部を切欠いた切欠き部9がヘッダタンク2a〜2cの配列方向に連続して形成されている。
【0020】
熱交換器用キャップ5は、1列に配列されたヘッダタンク2a〜2cの3つの開口部8a〜8cを密閉するもので、図3(A)および(B)に示すように、1列に配列された3つのキャップ本体11a〜11cと、キャップ本体11a〜11cを互いに連結する連結部12と、キャップ本体11cの外周部13から延出する支持延出部14とを有し、キャップ本体11a〜11cの配列方向に延在するように形成されている。
また、キャップ本体11a〜11cの外周部13には、外側に向かって突出する間隔変化部15が設けられている。
【0021】
図4に、ヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに取り付けられた熱交換器用キャップ5を示す。
キャップ本体11a〜11cは、円柱形状を有し、ヘッダタンク2a〜2cの開口部8a〜8cの内側にそれぞれ対応して配置される。キャップ本体11a〜11cには、開口部8a〜8cを形成するヘッダタンク2a〜2cの内周部との間に間隔を空けて対向すると共にヘッダタンク2a〜2cの内周部に沿うように外周部13が形成されている。この外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間が、ろう材などの接合材Mで接合されることにより、ヘッダタンク2a〜2cの開口部8a〜8cが密閉される。
【0022】
連結部12は、キャップ本体11aとキャップ本体11bとの間を連結すると共にキャップ本体11bとキャップ本体11cとの間を連結するものである。連結部12は、キャップ本体11a〜11cの配列方向に延びるように形成されており、ヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに形成された切欠き部9内に収容される。
支持延出部14は、キャップ本体11cの外周部13からキャップ本体11a〜11cの配列方向に延出し、ヘッダタンク2cの端部4cに形成された切欠き部9内に収容される。
【0023】
間隔変化部15は、キャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間隔を局所的に変化させるようにキャップ本体11a〜11cの外周部13から突出して設けられ、滑らかに湾曲する形状を有する。間隔変化部15は、図3(A)および(B)に示すように、キャップ本体11a〜11cの中心を結ぶように延びる中間線Lで区分けされる一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように設けられている。具体的には、キャップ本体11a〜11cの他半部側H2の外周部13には連結部12から最も離れた位置にそれぞれ1つの間隔変化部15が形成されているのに対し、キャップ本体11a〜11cの一半部側H1の外周部13には連結部12に隣接する位置にそれぞれ2つの間隔変化部15が形成されている。
【0024】
次に、熱交換器用キャップ5をヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに取り付ける方法の一例を説明する。
まず、ろう材などの接合材Mをキャップ本体11a〜11cの外面上に被膜処理し、この外面を外側に向けてキャップ本体11a〜11cをヘッダタンク2a〜2cの開口部8a〜8c内に配置すると共に連結部12と支持延出部14をヘッダタンク2a〜2cの切欠き部9内に配置する。
この時、キャップ本体11a〜11cの外周部13に形成される間隔変化部15は、ヘッダタンク2a〜2cの内周部に圧入されるような大きさで形成することが好ましい。これにより、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cに接合材Mで接合されるまでの間、キャップ本体11a〜11cの姿勢を一定に保つと共にキャップ本体11a〜11cがヘッダタンク2a〜2cの開口部8a〜8c内から抜け落ちることを防止することができる。
【0025】
これにより、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cに仮組され、そのヘッダタンク2a〜2cが熱交換体3a〜3cの複数の扁平チューブ6に接続される。この時、熱交換器用キャップ5の連結部12と支持延出部14が、ヘッダタンク2a〜2cの切欠き部9内に収容されているため、ヘッダタンク2a〜2cが周方向に支持され、ヘッダタンク2a〜2cが回転するなどの周方向の動きを抑制することができる。これにより、ヘッダタンク2a〜2cにおける複数の扁平チューブ6との接続位置が一定に保たれるため、ヘッダタンク2a〜2cを複数の扁平チューブ6にスムーズに接続することができる。
【0026】
このようにして組み立てられた熱交換器は、炉内に載置されて高温環境に曝される。これにより、熱交換器用キャップ5の外面上に被膜された接合材Mが溶融し、キャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間に生じた隙間に溶融した接合材Mが流入する。
この時、溶融した接合材Mは、キャップ本体11a〜11cの外周部13において形状が局所的に変化する間隔変化部15を起点としてその周囲から流入した後、間隔変化部15から徐々に広がるように流入する。このため、間隔変化部15から離れた箇所と比較して間隔変化部15の近傍には多くの接合材Mが流入することになる。ここで、キャップ本体11a〜11cの外周部13には、他半部側H2と比較して一半部側H1に多くの間隔変化部15が形成されているため、他半部側H2と比較して一半部側H1に多くの接合材Mが流入する。このため、図5に示すように、一半部側H1から流入する接合材Mは、ヘッダタンク2a〜2c内に長く延びるように侵入し、ヘッダタンク2a〜2c内に露出する接合材Mの露出面Eが他半部側H2と比較して緩やかに湾曲した形状となる。
【0027】
続いて、キャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間が接合材Mで満たされると、熱交換器が炉内から取り出される。これにより、ヘッダタンク2a〜2cの内周部とキャップ本体11a〜11cの外周部13との間が接合材Mで一体に接合され、ヘッダタンク2a〜2cの開口部8a〜8cをキャップ本体11a〜11cで密閉することができる。
【0028】
このようにして、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに取り付けられた熱交換器は、例えば空調装置の蒸発器として用いることができる。
例えば、膨張弁で減圧された二酸化炭素などの熱交換流体Fが、図1に示すように、一方のヘッダタンク2aの端部からヘッダタンク2a内に流入され、熱交換体3aの複数の扁平チューブ6内を流通して他方のヘッダタンク2aに流入する。続いて、熱交換流体Fは、他方のヘッダタンク2bに流入して、同様に、熱交換体3bの複数の扁平チューブ6内を流通して一方のヘッダタンク2bに流入する。このようにして、熱交換流体Fは、熱交換器コア1a〜1c内を順次流通する。
【0029】
この時、熱交換器コア1a〜1c内には、例えば約10MPaの高圧化された熱交換流体Fが流通されるため、ヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに取り付けられた熱交換器用キャップ5には大きな圧力が加わる。このため、熱交換器用キャップ5を接合する際の環境の変化などにより接合材Mの接合量が少ないといった接合の欠陥が生じている場合には、接合材Mによる接合が破壊されて熱交換器用キャップ5が飛散するおそれがある。特に、自動車などで用いられる熱交換器は、搭乗者に近い位置に配置されるため、その危険性は高いものとなる。
【0030】
ここで、ヘッダタンク2a〜2c内には、キャップ本体11a〜11cの他半部側H2と比較して一半部側H1に多量の接合材Mが流入し、その露出面Eは一半部側H1と他半部側H2とで異なる形状を有する。接合材Mの露出面Eが一半部側H1と他半部側H2とで均一な形状を有する場合には、接合材Mによる接合が一度に破壊されて熱交換器用キャップ5は勢いよく飛散するおそれがあるが、接合材Mの露出面Eを一半部側H1と他半部側H2とで異なる形状とすることで、熱交換流体Fから露出面Eを介して接合材Mに加わる応力を一半部側H1と他半部側H2とでどちらか一方に偏らせることができる。
例えば、一半部側H1と比較して他半部側H2において接合材Mに加わる応力が強い場合には、図5に示すように、他半部側H2の接合が優先的に破壊されて、一半部側H1に起き上がるようにキャップ本体11a〜11cが開かれる。これにより、キャップ本体11a〜11cの接合を一半部側H1と他半部側H2とで段階的に破壊することができ、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散する勢いを抑制することができる。
【0031】
さらに、キャップ本体11a〜11cは、連結部12により互いに連結されているため、キャップ本体11a〜11cの一部について接合に欠陥が生じていても、その他のキャップ本体の接合により接合力を補うことができる。例えば、キャップ本体11bとヘッダタンク2bとの間が少量の接合材Mで接合されている場合には、キャップ本体11aとヘッダタンク2aとの接合およびキャップ本体11cとヘッダタンク2cとの接合により接合力を補うことができ、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散することを抑制することができる。
【0032】
このようにして、熱交換流体Fが熱交換器コア1a〜1c内を順次流通する一方、熱交換流体Fより暖かい外部流体が、熱交換体3a〜3cの配列方向にフィン7の間を通って流通する。これにより、外部流体の熱がフィン7を介して熱交換体3a〜3c内に伝導され、熱交換流体Fと外部流体との間で熱交換が行われることにより、熱交換流体Fを気化して外部流体を冷却することができる。
そして、熱交換に伴って気化された熱交換流体Fは、図1に示すように、一方のヘッダタンク2cの端部から排出される。
【0033】
本実施の形態によれば、間隔変化部15が一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように設けられているため、キャップ本体11a〜11cとヘッダタンク2a〜2cの間を接合する接合材Mの接合量を偏らせることができ、接合材Mによるキャップ本体11a〜11cの接合が段階的に破壊されるため、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散する勢いを抑制することができる。
【0034】
実施の形態2
実施の形態1では、キャップ本体11a〜11cの外周部13に間隔変化部15を設けることにより、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cから飛散する勢いを抑制したが、キャップ本体11a〜11cとヘッダタンク2a〜2cとの接合力が偏るように形成されていればよく、これに限られるものではない。
【0035】
例えば、図6に示すように、実施の形態1の熱交換器において、間隔変化部15を除くと共に、熱交換器用キャップ5の両端に位置する2つのキャップ本体11aおよび11cのうちキャップ本体11aをヘッダタンク2aに係合させる係合部21を新たに設けることができる。
係合部21は、キャップ本体11aの外周部13からキャップ本体11a〜11cの配列方向に延出する係合延出部22と、この係合延出部22に対応してヘッダタンク2aの内周部に設けられた係合受け部23とを有する。
【0036】
係合受け部23は、ヘッダタンク2aの内周部から外側に向かって外壁を貫通するように形成されている。この係合受け部23に係合延出部22を挿入することにより、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの延びる方向に移動した際に、係合延出部22を係合受け部23に係合させることができる。なお、係合受け部23は、係合延出部22を係合させることができればよく、貫通孔に限られるものではない。例えば、ヘッダタンク2aの内周部に形成された凹部により係合受け部23を構成することもできる。
熱交換器用キャップ5をヘッダタンク2a〜2cに取り付ける際には、係合受け部23に係合延出部22を挿入しつつ、開口部8a〜8c内にキャップ本体11a〜11cが配置されると共に切欠き部9内に連結部12と支持延出部14が配置される。そして、実施の形態1と同様に、熱交換器用キャップ5を接合材Mによりヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに接合する。
【0037】
このようにして、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cに取り付けられた熱交換器は、内部に熱交換流体Fを供給して用いられる。ここで、キャップ本体11aから延出する係合延出部22は、ヘッダタンク2aに形成された係合受け部23内に挿入されているのに対し、キャップ本体11cから延出する支持延出部14は、上部が開放された切欠き部9内に収容されている。このため、接合材Mによるキャップ本体11a〜11cとヘッダタンク2a〜2cとの接合に欠陥が生じている場合には、熱交換流体Fの圧力により、支持延出部14が切欠き部9内から外側に向かって移動する一方で、係合延出部22が係合受け部23に係合される。このため、接合材Mによるキャップ本体11a〜11cとヘッダタンク2a〜2cとの接合は、支持延出部14に近い箇所から順次破壊されて、図7に示すように、係合延出部22側に起き上がるようにキャップ本体11a〜11cが開かれる。
このように、キャップ本体11a〜11cの接合が支持延出部14から係合延出部22に向かって段階的に破壊されるため、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散する勢いを抑制することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、キャップ本体11aとヘッダタンク2aを係合部21で係合させることで接合材Mによる接合が段階的に破壊されるため、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散する勢いを抑制することができる。
【0039】
実施の形態3
実施の形態2では、実施の形態1の間隔変化部15が除かれたが、図8に示すように、間隔変化部15を除くことなく、キャップ本体11aをヘッダタンク2aに係合させる係合部31を新たに設けることができる。
係合部31は、実施の形態2と同様に、キャップ本体11aの外周部13からキャップ本体11a〜11cの配列方向に延出する係合延出部32と、この係合延出部32に対応してヘッダタンク2aの内周部に設けられた係合受け部33とを有する。
【0040】
このような熱交換器用キャップ5をヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cに接合材Mで接合する際に接合に欠陥が生じていると、キャップ本体11a〜11cの接合が、一半部側H1と他半部側H2とで段階的に破壊されると共に支持延出部14から係合延出部32に向かって段階的に破壊される。
これにより、キャップ本体11a〜11cの接合をより多くの多面的な段階を経て破壊することができ、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの端部4a〜4cから飛散する勢いをより確実に抑制することができる。
【0041】
なお、実施の形態1および3において、間隔変化部15は、全てのキャップ本体11a〜11cに形成されたが、少なくとも1つのキャップ本体に形成されていればよく、これに限られるものではない。
また、実施の形態1および3において、間隔変化部15は、キャップ本体11a〜11cの外周部13から突出するように形成されたが、キャップ本体11a〜11cの外周部13から窪むように形成することもできる。例えば、図9に示すように、キャップ本体11a〜11cの外周部13から窪むように形成された間隔変化部41を設けることができる。
【0042】
また、実施の形態1および3において、キャップ本体11a〜11cには、一半部側H1の外周部13にそれぞれ2つの間隔変化部15が形成されると共に他半部側H2の外周部13にそれぞれ1つの間隔変化部15が形成されていたが、一半部側H1と他半部側H2のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように間隔変化部15が設けられていればよく、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、実施の形態1の熱交換器用キャップ5において、他半部側H2の外周部13には間隔変化部15を設けずに、一半部側H1の外周部13のみにそれぞれ1つの間隔変化部15を設けることができる。
【0043】
また、実施の形態1および3において、間隔変化部15は、キャップ本体11a〜11cの一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように設けられたが、接合材Mを溶融してキャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間に流入させる際に、接合材Mの流入量が一半部側H1と他半部側H2とで異なるような偏りを有する間隔変化部15を形成すればよく、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、実施の形態1の熱交換器用キャップ5において、キャップ本体11a〜11cの一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に大きさが偏るように形成された間隔変化部42を設けることができる。
【0044】
また、実施の形態1および3において、間隔変化部42は、キャップ本体11a〜11cの中心を結ぶように延びる中間線Lでキャップ本体11a〜11cを区分けした一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように設けられたが、同一方向に延びるキャップ本体11a〜11cの中間線Lで区分けした一半部側H1の外周部13と他半部側H2の外周部13のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように設けることができればよく、これに限られるものではない。例えば、図12に示すように、実施の形態1の熱交換器用キャップ5において、キャップ本体11a〜11cの配列方向に直交する方向に延びるキャップ本体11a〜11cの中間線Lで外周部13をそれぞれ区分けした一半部側H1と他半部側H2のうち一半部側H1の外周部13に数が偏るように形成された間隔変化部43を設けることができる。
【0045】
また、実施の形態1および3において、間隔変化部15は、滑らかに湾曲する形状に形成されたが、キャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間に流入する接合材Mの流入量を変化させることができればよく、これに限られるものではない。例えば、キャップ本体11a〜11cの外周部13から三角形状に突出する間隔変化部を設けることもできる。
【0046】
また、実施の形態1および3において、間隔変化部15は、キャップ本体11a〜11cの外周部13に設けられたが、キャップ本体11a〜11cの外周部13とヘッダタンク2a〜2cの内周部との間隔を変更するように、キャップ本体11a〜11cの外周部13およびヘッダタンク2a〜2cの内周部の少なくとも一方に設ければよく、これに限られるものではない。例えば、図13に示すように、キャップ本体11a〜11cの中心を結ぶように延びる中間線Lでヘッダタンク2a〜2cの内周部を区分けした一半部側H1と他半部側H2のうち一半部側H1の内周部に数が偏るように形成された間隔変化部44を設けることができる。
【0047】
また、実施の形態2および3において、係合部は、キャップ本体11aの外周部13からキャップ本体11a〜11cの配列方向に延出する係合延出部と、ヘッダタンク2aの内周部に設けられた係合受け部とから構成されたが、キャップ本体11aをヘッダタンク2aに係合することができればよく、これに限られるものではない。
例えば、図14に示すように、実施の形態2の係合部21に換えて、ヘッダタンク2aの内周部に係合部45を設けることができる。この係合部45は、ヘッダタンク2aの内周部からキャップ本体11aの上面の一部を覆うように突出する形状を有し、熱交換器用キャップ5がヘッダタンク2a〜2cの延びる方向に移動した際に、ヘッダタンク2aを係合部45に係合させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1a〜1c 熱交換器コア、2a〜2c 一対のヘッダタンク、3a〜3c 熱交換体、4a〜4c ヘッダタンクの端部、5 熱交換器用キャップ、6 複数の扁平チューブ、7 フィン、8a〜8c 開口部、9 切欠き部、11a〜11c キャップ本体、12 連結部、13 外周部、14 支持延出部、15,41,42,43,44 間隔変化部、21,31,45 係合部、22,32 係合延出部、23,33 係合受け部、F 熱交換流体、L 中間線、H1 一半部側、H2 他半部側、M 接合材。
図1
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