(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートクッションやシートバックから空気を吸い込んで、この吸い込んだ空気を外部に吹き出す構成として、特許文献1には、シートクッションの下部に吸気装置を設置して、吸気装置とシートクッション及びシートバックをダクトで接続した構成が記載されている。
【0006】
そして、シートバックに接続するダクトは、シートバックのパッド内に形成された前面まで貫通する形の複数の排風路を有した通風溝と連通して接続された構成になっている。
【0007】
乗員が着座するシートクッションの下部には、シートを前後にスライドさせるための駆動機構やシートバックのリクライニングのための駆動機構などが配置されており、比較的狭い空間に多くの機構が組み込まれている。そのために、吸気装置とそれと接続するダクトをシートクッションの下部に配置するためにはそのほかの部品を含めた配置が複雑になり、部品点数が多くなると共に組立に手間がかかり、コストがかかってしまうという課題がある。
【0008】
また、シートバックには、着座した乗員の腰椎を支持するためのランバー機構部品が設けられているが、このランバー機構部品と干渉しないようにダクトを配置するためには、ダクトの形状を工夫しなければならない。
【0009】
さらに、吸気装置からシートクッション及びシートバックとそれぞれ接続するために、複数のダクトを設けなければならず、部品点数が増えるとともに組立のコスト低減のネックにもなっていた。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、部品点数が少なく、かつ、比較的単純な構成で、シートクッションやシートバックの吸気及び排気を可能にする車両用シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明においては、乗員が座るシートクッションと、シートクッションに座った乗員が背を凭れるシートバックとシートクッションとシートバックとを接続するダクトとを備えた車両用シートにおいて、シートバックは、乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、表面をシートカバーで覆われて通気用の穴が複数形成されたパッド部材と、シートクッションに座った乗員の腰椎を支えるためのランバー機構部品と、パッド部材の裏面側に配置された送風機と、送風機とランバー機構部品を覆ってパッド部材の裏面側と密閉空間を形成するカバーとを有し、シートクッションは、乗員が着座する面に配置されて通気性を有するシートカバーと、表面をシートカバーで覆われて通気用の溝が形成されたパッド部材とを有し、ダクトはカバーを突き抜けてシートバックの送風機とシートクッションのパッド材に形成された溝の間を接続するように構成した。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明においては、乗員が座るシートクッションと、シートクッションに座った乗員が背を凭れるシートバックと、送風機とを備えた車両用シートにおいて、シートバックは、乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、表面をシートカバーで覆われて通気用の穴が複数形成されたパッド部材と、シートクッションに座った乗員の腰椎を支えるためのランバー機構部品と、ランバー機構部品を覆ってパッド部材の裏面側と密閉空間を形成するカバーとを有し、シートクッションは、乗員が着座する面に配置されて通気性を有するシートカバーと、表面をシートカバーで覆われて通気用の溝部が形成されたパッド部材とを有し、送風機は、シートクッションのパッド部材の溝部と接続する第1のダクトと、シートバックのカバーと接続する第2のダクトとを有するように構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数が少なく、かつ、比較的単純な構成で、シートクッションやシートバックの吸気及び排気を可能にする車両用シートを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、シートバックの裏面を密閉構造にして、送風機とクッションシートとをダクトで接続し、シートクッションの表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しにはダクトを介して行い、シートバックの表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しにはダクトを用いない構造とすることにより、1台の送風機と1つのダクトを用いることでシートクッション側とシートバック側の両方の表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しを行えるようにしたものである。
【0016】
また、本発明では、1台の送風機と1つのダクトを用いて、シートクッションの表面からの空気の吸い込みとシートバックの表面からの空気の吹き出し、または、逆に、シートクッションの表面からの空気の吹き出しとシートバックの表面からの空気の吸い込みとを同時に行えるようにしたものである。
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の対象である車両用シート100の外観を示す。車両用シート100は、乗員(図示せず)が座るシートクッション110と、シートクッション110に座った乗員が背を凭れるシートバック120、乗員の頭部を支えるヘッドレスト130を備えている。
【0019】
図2は、本実施例に係る車両用シート100のシートクッション110とシートバック120の断面を模式的に示したものである。
図2においては、説明を簡単にするために、ヘッドレスト130の表示及びシートクッション100とシートバック120の機構部品の表示を省略している。
【0020】
シートクッション110は、通気性を有しているシートカバー111と、ウレタンで形成されたパッド部材112を備えている。パッド部材112には、空気吹き出し用または空気吸い込み用の溝113が形成されている。溝113は、表面を覆う通気性を有するシートカバー111を介してシートクッション110の表面に空気を吹き出したり空気を吸い込んだりするときの空気の通路となる。
【0021】
シートバック120は、通気性を有しているシートカバー121と、ウレタンで形成されたパッド部材122を備えている。パッド部材122には空気吹き出し用又は空気吸い込み用の穴123が形成されている。
【0022】
シートバック120の裏側には裏面カバー124が取り付けられており、パッド部材122と裏面カバー124とで囲まれた空間125が密閉されている。この密閉された空間125には、ランバー機構の部品であるランバー機構部品126と送風機210、及び送風機210の排気側に繋がっているダクト213が設置されている。送風機210としては、シロッコファンを用いる。送風機210の吸気口211は、密閉された空間125の側に開放されている。実際には、この密閉された空間125にはいろいろな機構部品も設置されているが、
図2では説明を簡単にするために、それらの部品の表示を省略している。
【0023】
送風機210に繋がっているダクト211は、裏面カバー124を突き抜けて外側に延びて、その先端部分はシートクッション110の側のパッド部材112に形成された溝113の内部まで延びて、図示していない手段により固定されている。
【0024】
このような構成で、送風機210を作動させると、送風機210は、吸気口211から裏面カバー124で閉じられた空間125内に開放された矢印A2で示したように裏面カバー124で閉じられた空間125内の空気を吸い込んで、排気側に接続しているダクト211の側に空気を送り込む。ダクト211に送り込まれた空気は、矢印A3で示すようにシートクッション110の溝113の内部に入る。溝113の内部に入った空気は、矢印A4で示すように通気性のあるシートカバー111からシートカバー121の表面側に吹き出される。
【0025】
一方、送風機210により空気が吸い込まれた裏面カバー124で閉じられた空間125は、気圧が大気圧より低くなる。その結果、シートバック120の通気性のあるシートカバー121を介してパッド部材122に形成された多数の穴123から矢印A1で示したように空気が吸い込まれる。
【0026】
このようにして、シートバック120のシートカバー121の側から裏面カバー124で閉じられた空間125内に空気を吸い込み、これをダクト213でシートクッション110の側に送ってシートクッション110のシートカバー111から噴出させることにより、シートバック120における空気の吸い込みとシートクッション110における空気の吹き出しとを、1台の送風機210と1本のダクト213を用いるだけで同時に行うことができる。
【0027】
なお、
図2に示した構成においては、シートバック120の裏面の密閉した空間125において、送風機210をランバー機構部品126よりも下側に配置した例を示したが、送風機210をランバー機構部品126よりも上側に配置してもよい。
【0028】
図3に、シートクッション110側のパッド部材112とシートバック120側のパッド部材122の斜視図を示す。シートクッション110側のパッド部材112には、空気吹き出し用の溝113が形成されている。また、シートバック120側のパッド部材122には空気吸い込み用の穴123が多数形成されている。空気吸い込み用の穴123は、パッド部材122を貫通して形成されている。
【0029】
以上説明したように、本実施例によれば、ランバー機構部品126と送風機210を配置したシートバック120の裏面を密閉する構成としたことにより、シートバック120の表面から空気を吸い込むためのダクトが必要なくなり、1台の送風機210と1本のダクト213を用いたより単純な構造でシートバック120における空気の吸い込みとシートクッション110における空気の吹き出しとを同時に行えるようになった。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施例として、実施例1と逆のケース、即ち、シートクッション110シートバック120の側から空気を吸い込み、シートバック120の側から空気を吹き出す構成について、
図4を用いて説明する。
図4に示した構成において、実施例1で
図2を用いて説明した構成と同じものには同じ番号を付して、重複を避けるために説明を省略する。
図4に示した構成において、
図2で説明した構成と異なるのは、ダクト214を送風機210の吸気口211の側に取り付けた点である。送風機210としては、実施例1の場合と同様に、シロッコファンを用いる。
【0031】
図4に示した構成において、送風機210を作動させると、送風機210は、吸気口211に接続したダクト214とシートクッション110の溝113を介して、通気性のあるシートカバー111から矢印B1のようにシートカバー121の表面側の空気を吸い込む。
【0032】
このシートカバー121の表面側から吸い込まれた空気は、矢印B2に示すようにダクト214を通り、矢印B3に示すように吸気口211から送風機210の内部に吸い込まれ、矢印B4に示すように裏面カバー124で閉じられた空間125内に排出される。
【0033】
送風機210により空気が排出された裏面カバー124で閉じられた空間125は、気圧が大気圧より高くなる。その結果、パッド部材122に形成された多数の穴123からシートバック120の通気性のあるシートカバー121を介して矢印B5で示したようにシートバック120の外側に空気が吹き出される。
【0034】
このようにして、シートクッション110の側から吸い込んだ空気をダクト214を介して裏面カバー124で閉じられた空間125内に排出し、シートバック120の側から吹き出すことにより、シートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを、1台の送風機210と1本のダクト214を用いるだけで同時に行うことができる。
【0035】
なお、本実施例におけるシートクッション110側のパッド部材112に形成する溝113とシートバック120側のパッド部材122に形成する穴123については、実施例1において
図3を用いて説明したものと同じである。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、ランバー機構部品126と送風機210を配置したシートバック120の裏面を密閉する構成としたことにより、シートバック120の表面から空気を吹き出すためのダクトが必要なくなり、1台の送風機210と1本のダクト213を用いたより単純な構造でシートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを同時に行えるようになった。
【実施例3】
【0037】
実施例1ではシートクッション110における空気の吹き出しとシートバック120における空気の吸い込みとを同時に行う例について説明し、実施例2ではシートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを同時に行う例について説明したが、本実施例においては、送風機の回転方向を切り替えて、シートクッション110における空気の吹き出しとシートバック120における空気の吸い込みとを同時に行うこととシートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを同時に行うこととを切り替える例について
図5を用いて説明する。
【0038】
図5に示した構成において、実施例1及び実施例2で説明した構成と同じものについては、同じ番号を付した。実施例1及び2とは、送風機220が異なる。すなわち、実施例1及び2においては、送風機210としてシロッコファンを用いた例を説明したが、本実施例においては、送風機220として、軸流ファンを用いる。送風機として軸流ファンを用いた場合、軸流ファンに印加する電圧の極性を切り替えることで軸流ファンの回転方向を変える(逆回転)ことができ、これにより流れる空気の向きを逆転させることができる。
【0039】
図5に示した構成において、送風機220の軸流ファンを正転させることにより、実施例1で説明した場合と同様に、シートバック120から空気の吸い込み、シートクッション110から空気の吹き出しを行う。
【0040】
一方、送風機220の軸流ファンを逆転させることにより、実施例2で説明した場合と同様に、シートクッション110から空気の吸い込み、シートバック120から空気の吹き出しを行う。
【0041】
なお、本実施例におけるシートクッション110側のパッド部材112に形成する溝113とシートバック120側のパッド部材122に形成する穴123については、実施例1において
図3を用いて説明したものと同じである。
【0042】
このように、送風機220に軸流ファンを用いることにより、送風機220に印加する電圧の極性を切り替えることで送風機220から空気を送り出す方向を変えることができる。これにより、同じ構成において、シートクッション110とシートバック120の表面における空気の吸い込みと空気の吹き出しとを切り替えることが可能になる。
【実施例4】
【0043】
実施例1乃至3においては、送風機をシートバック120の側に配置する構成で説明したが、本実施例では、送風機をシートクッション110の側に設置した場合について説明する。
【0044】
図6に本実施例における車両用シートの構成を示す。本実施例においては、送風機230をシートクッション110の下側に設置し、送風機230の吸気口231とシートクッション110の溝113との間をダクト232で接続し、シートバック120のパッド部材122と裏面カバー124とで囲まれた空間125と送風機の排気側とをダクト233で接続している。なお、送風機230としては、シロッコファンを用いる。
【0045】
このような構成で送風機230を作動させると、実施例2の場合と同様に、吸気口231に接続したダクト232とシートクッション110の溝113を介して、通気性のあるシートカバー111から矢印C1のようにシートカバー121の表面側の空気を吸い込む。
【0046】
このシートカバー121の表面側から吸い込まれた空気は、矢印C2に示すようにダクト232を通り、矢印C3に示すように吸気口231から送風機230の内部に吸い込まれ、矢印C4に示すように裏面カバー124で閉じられた空間125内に排出される。
【0047】
送風機230により空気が排出された裏面カバー124で閉じられた空間125は、気圧が大気圧より高くなる。その結果、パッド部材122に形成された多数の穴123からシートバック120の通気性のあるシートカバー121を介して矢印C5で示したようにシートバック120の外側に空気が吹き出される。
【0048】
このようにして、シートクッション110の側からダクト232を経由して吸い込んだ空気をダクト233を介して裏面カバー124で閉じられた空間125内に排出し、シートバック120の側から吹き出すことにより、シートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを、1台の送風機230だけで同時に行うことができる。
【0049】
なお、本実施例におけるシートクッション110側のパッド部材112に形成する溝113とシートバック120側のパッド部材122に形成する穴123については、実施例1において
図3を用いて説明したものと同じである。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、シートバック120の裏面の密閉した空間にダクトを取り付けてシートクッション110の下側に設置した送風機230と接続したことにより、シートバック120の表面から空気を吹き出すためのダクトが必要なくなり、1台の送風機210を用いたより単純な構造でシートクッション110における空気の吸い込みとシートバック120における空気の吹き出しとを同時に行えるようになった。
【0051】
なお、
図6に示した後世において、ダクト232と233との送風機230への取り付け位置を逆にすることにより、実施例1で説明したのと同様に、シートバック120のシートカバー121の側から裏面カバー124で閉じられた空間125内に空気を吸い込み、これをダクト213で送風機230へ送り、送風機230からダクト232を介してシートクッション110の側に送ってシートクッション110のシートカバー111から噴出させることができる。
【0052】
更に、送風機230として、シロッコファンの代わりに実施例3の場合と同様に軸流ファンを用いることにより、送風機230に印加する電圧の極性を切り替えることで送風機230から空気を送り出す方向を変えることができ、同じ構成において、シートクッション110とシートバック120の表面における空気の吸い込みと空気の吹き出しとを切り替えることが可能になる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。