(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434837
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物及びテクスチャエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20181126BHJP
H01L 31/0236 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
H01L21/308 B
H01L31/04 280
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-58169(P2015-58169)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-185849(P2015-185849A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0032836
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】林 大成
(72)【発明者】
【氏名】洪 亨杓
(72)【発明者】
【氏名】李 承洙
【審査官】
長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−141139(JP,A)
【文献】
特開2011−139023(JP,A)
【文献】
特開2012−227304(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0042851(KR,A)
【文献】
特開2013−168619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306−21/3063、21/308、
21/465−21/467、31/04−31/06、
51/42、
C09K 13/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化合物(A)と、
水酸基を含有し、ハンセン溶解度パラメータ(δp)が8.0〜12.0[J/cm3]1/2である化合物(b−1)と、アルカリ金属(塩)(b−2)とが1:0.01〜1:0.5のモル比で反応して形成された反応物(B)と、
を含むことを特徴とする、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項2】
前記化合物(b−1)は、沸点が120℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項3】
前記化合物(b−1)は、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル及びエチレングリコールフェニルエーテルからなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属(塩)(b−2)は、アルカリ金属及びアルカリ金属の水酸化物からなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項4に記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項6】
前記アルカリ化合物(A)は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム及びテトラヒドロキシエチルアンモニウムからなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項7】
前記アルカリ化合物(A)0.5〜5重量%、前記反応物(B)0.001〜5重量%及び残量の水を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の前記テクスチャエッチング液組成物により、結晶性シリコンウエハをテクスチャエッチングすることを特徴とする結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング方法。
【請求項9】
前記テクスチャエッチング液組成物を50〜100℃の温度で30秒〜60分間、前記結晶性シリコンウエハに噴霧させることを含むことを特徴とする、請求項8に記載のテクスチャエッチング方法。
【請求項10】
前記テクスチャエッチング液組成物に前記結晶性シリコンウエハを50〜100℃の温度で30秒〜60分間沈積させることを特徴とする、請求項8に記載のテクスチャエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性シリコンウエハ表面の位置別テクスチャ品質偏差を最小化にし、エッチング中に温度勾配が生じない結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物及びテクスチャエッチング方法(TEXTURE ETCHING SOLUTION COMPOSITION AND TEXTURE ETCHING METHOD OF CRYSTALLINE SILICON WAFERS)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及されている太陽電池は、次世代エネルギー源としてクリーンエネルギーである太陽エネルギーを直接電気に変換する電子素子である。太陽電池は、シリコンにホウ素を添加したP型シリコン半導体をベースとして、その表面にリンを拡散させてN型シリコン半導体層を形成したPN接合半導体基板で構成されている。
【0003】
PN接合により電界が形成された基板に、太陽光のような光を照射する場合、半導体内の電子(−)と正孔(+)が励起されて半導体内部を自由に移動する状態となる。このようなPN接合で発生した電界内にそれらが入ると、電子(−)はN型半導体に、正孔(+)はP型半導体になっていく。P型半導体とN型半導体の表面に電極を形成して電子を外部回路に流すと電流が発生することになるが、このような原理から太陽エネルギーが電気エネルギーに変換される。したがって、太陽エネルギーの変換効率を高めるために、PN接合半導体基板の単位面積当たりの電気的出力を極大化させなければならない。そのために、反射率は低くし、光吸収量は最大化させなければならない。このような点を考慮し、PN接合半導体基板を構成する太陽電池用シリコンウエハの表面を微細ピラミッド構造に形成し、反射防止膜として処理させている。微細ピラミッド構造にテクスチャリングされたシリコンウエハの表面は広い波長帯を有する入射光の反射率を低減させ、吸収済みの光の強度を増加させることで、太陽電池の性能、すなわち効率を高めることができることになる。
【0004】
シリコンウエハ表面を微細ピラミッド構造にテクスチャする方法として、米国特許第4、137、123号には、0〜75体積%のエチレングリコール、0.05〜50重量%の水酸化カリウム及び残量の水を含む異方性エッチング液に0.5〜10重量%のシリコンが溶解されたシリコンテクスチャエッチング液が開示されている。しかし、このエッチング液は、ピラミッド形成不良を起こして光反射率を増加させて効率の低下をもたらす。
【0005】
また、韓国登録特許第0180621号には、水酸化カリウム溶液0.5〜5%、イソプロピルアルコール3〜20体積%、脱イオン水75〜96.5体積%の割合で混合したテクスチャエッチング溶液が開示されている。また、米国特許第6、451、218号には、アルカリ化合物、イソプロピルアルコール、水溶性アルカリ性エチレングリコール及び水を含むテクスチャエッチング溶液が開示されている。しかし、これらのエッチング溶液は、沸点が低いイソプロピルアルコールを含有しており、テクスチャ工程中にこれを追加投入しなければならないので、生産性及びコスト面から経済的ではない。また、追加投入されたイソプロピルアルコールによりエッチング液の温度勾配が発生し、シリコンウエハ表面の位置別テクスチャ品質偏差が大きくなって均一性が低下し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4、137、123号明細書
【特許文献2】大韓民国特許公報第10−0180621号明細書
【特許文献3】米国特許第6、451、218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、結晶性シリコンウエハの表面における微細ピラミッド構造の形成において、シリコン結晶方向に対するエッチング速度差を制御してアルカリ化合物による過エッチングを防止することで、位置別テクスチャの品質偏差を最小化し、光効率を増加させる結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いたテクスチャエッチング方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.アルカリ化合物(A)と、水酸基を含有し、ハンセン溶解度パラメータ(δp)が8.0〜12.0[J/cm
3]
1/2である化合物(b−1)とアルカリ金属(塩)(b−2)との反応物(B)とを含む、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0010】
2.前記1において、前記化合物(b−1)は、沸点が120℃以上である、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0011】
3.前記1において、前記化合物(b−1)は、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル及びエチレングリコールフェニルエーテルからなる群から選択された少なくとも1つである、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0012】
4.前記1において、前記アルカリ金属(塩)(b−2)は、アルカリ金属及びアルカリ金属の水酸化物からなる群から選択された少なくとも1つである、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0013】
5.前記4において、前記アルカリ金属はナトリウム及びカリウムのうちの少なくとも1つである、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0014】
6.前記1において、前記化合物(b−1)と前記化合物(b−2)との反応モル比は、b−2/b−1が0.01〜0.50である、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0015】
7.前記1において、前記アルカリ化合物(A)は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム及びテトラヒドロキシエチルアンモニウムからなる群から選択された少なくとも1つである、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0016】
8.前記1において、前記アルカリ化合物(A)0.5〜5重量%、前記反応物(B)0.001〜5重量%及び残量の水を含む、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物。
【0017】
9.前記1〜8のいずれか1項の前記テクスチャエッチング液組成物により、結晶性シリコンウエハをテクスチャエッチングする結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング方法。
【0018】
10.前記9において、前記テクスチャエッチング液組成物を50〜100℃の温度で30秒〜60分間、前記結晶性シリコンウエハに噴霧させることを含む、テクスチャエッチング方法。
【0019】
11.前記9において、前記テクスチャエッチング液組成物に、前記結晶性シリコンウエハを50〜100℃の温度で30秒〜60分間沈積させる、テクスチャエッチング方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物及びテクスチャエッチング方法によれば、シリコン結晶方向に対するエッチング速度差を制御してアルカリ化合物による過エッチングを防止することで、結晶性シリコンウエハ表面の位置別テクスチャの品質偏差を最小化、すなわちテクスチャの均一性を向上させて太陽光の吸収量を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例1の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図2】
図2は、実施例2の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図3】
図3は、実施例3の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図4】
図4は、実施例4の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図5】
図5は、実施例5の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図6】
図6は、実施例6の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図7】
図7は、実施例7の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図8】
図8は、実施例8の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図9】
図9は、比較例1の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【
図10】
図10は、比較例2の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を用いてエッチングされた単結晶シリコンウエハ基板表面の光学顕微鏡(倍率1、000倍)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、アルカリ化合物(A)及び特定溶解度指数の化合物とアルカリ金属(塩)との反応物(B)を含むことで、結晶性シリコンウエハの表面における微細ピラミッド構造の形成において、シリコン結晶方向に対するエッチング速度差を制御してアルカリ化合物による過エッチングを防止することで、位置別テクスチャの品質偏差を最小化して光効率を増加させる結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物及びテクスチャエッチング方法に関する。
【0024】
本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物は、アルカリ化合物(A)及び特定溶解度指数の化合物とアルカリ金属(塩)との反応物(B)を含む。
【0025】
本発明によるアルカリ化合物(A)は、結晶性シリコンウエハの表面をエッチングする成分として当分野で通常に使用するアルカリ化合物であれば制限なしに使用することができる。使用可能なアルカリ化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラヒドロキシメチルアンモニウム、テトラヒドロキシエチルアンモニウムなどが挙げられ、このうち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0026】
アルカリ化合物は、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物全体重量に対して0.5〜5重量%に含まれることができ、好ましくは1〜3重量%とすることができる。含量が上記範囲に該当する場合、シリコンウエハ表面をエッチングすることができることになる。
【0027】
本発明において前記反応物(B)は、水酸基を含有し、ハンセン溶解度パラメータ(δp)(特定溶解度指数)が8.0〜12.0[J/cm
3]
1/2である化合物(b−1)とアルカリ金属(塩)(b−2)との反応物である。
【0028】
前記反応物(B)は、シリコン結晶方向である(100)、(111)面に対してより優れたエッチング速度の制御能力を示している。特に、アルカリ化合物による単結晶Siエッチング時、単結晶Si表面に吸着されて水酸基によって(100)方向のエッチング速度を抑制し、アルカリ化合物によって過エッチングを防止することで、テクスチャの品質偏差を最小化し、テクスチャ構造をなすピラミッド構造が微細に形成されるように誘導する。また、結晶性シリコンウエハ表面の潤湿性を改善させてエッチングで生成された水素バブルをシリコン表面から早く落とすことで、バブルスティック現象が発生することを防止してテクスチャの品質を向上させることができる。
【0029】
本発明において、前記反応物(B)は、沸点が120℃以上であることが好ましい(大気圧(1気圧)下で)。沸点が120℃以上になると、エッチング工程時損失率が少なく、少ない含量で使用が可能であるだけでなく、同一使用量に対する処理枚数も増加させることができる。沸点の上限は、特に制限せず、例えば250℃とすることができる。
【0030】
化合物(b−1)は、水酸基を含むことで、アルカリ金属(塩)と反応をし、過エッチングを防止することができる。
【0031】
化合物(b−1)において、ハンセン溶解度パラメータが8.0〜12.0[J/cm
3]
1/2である化合物のより具体的な例示としては、グリコールエーテル系化合物が挙げられる。化合物(b−1)のより具体的な例としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルなどが挙げられるが、これに限定されず、これらはそれぞれ単独または2種以上混合して使用することができる。
【0032】
本発明に係る化合物(b−2)において、アルカリ金属(塩)は、アルカリ金属、アルカリ金属の塩またはこの両方を指すことを意味する。
【0033】
アルカリ金属の塩は、化合物(b−1)との反応時にアルカリ金属陽イオンが解離される塩化合物であれば特に制限されず、例えばアルカリ金属の水酸化物とすることができる。
【0034】
化合物(b−2)において、アルカリ金属は、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムとすることができる。
【0035】
本発明において、化合物(B)は、化合物(b−1)と化合物(b−2)との反応物であって、その反応モル比は、b−2/b−1が0.01〜0.50、好ましくは0.1〜0.2とすることができる。上記範囲において、シリコンウエハ表面を均一なテクスチャ状に形成することができ、経済的に有効なエッチング速度を実現する反応物(B)を形成することができる。前記反応モル比が0.01未満の場合には、アルカリ化合物のシリコンウエハに対するエッチング速度を制御する能力が低下されて均一なテクスチャ状を得ることができなくなることもあり、0.5より大きい場合には、化合物(b−2)の含量が多くなり化合物(b−1)に全部溶けず反応が行われなかったり、分解されることがあり本発明で目的とする性能が実現できなくなる可能性がある。
【0036】
また、前記反応の温度は、大気圧下で40〜120℃、好ましくは70〜90℃とすることができる。
【0037】
本発明に係る反応物(B)は、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物全体重量に対して0.001〜5重量%として含まれることができ、好ましくは0.01〜2重量%とすることができる。含量が上記範囲に該当する場合に、過エッチングとエッチング加速化を効果的に防止することができる。含量が0.001重量%未満の場合は、アルカリ化合物によるエッチング速度の制御が困難となり、均一なテクスチャ状を得ることができなくなることもあり、5重量%を超える場合は、アルカリ化合物によるエッチング速度を急激に低下させて所望する微細ピラミッドを形成することが困難となる可能性がある。
【0038】
本発明に係る結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物は、上記成分を具体的な必要に応じて適切に混合した後、水を添加して全体組成を調節する。これにより、全体組成物の前記成分以外の残量は水が占めることになる。好ましくは、前記成分が上述の含量範囲を有するように、水の量を調節する。
【0039】
水の種類は、特に限定されないが、脱イオン蒸溜水とすることが好ましく、より好ましくは、半導体工程用の脱イオン蒸溜水であって、比抵抗値が18MΩ・cm以上とすることが好ましい。
【0040】
選択的に、本発明の目的、効果を損なわない範囲で当分野に公知された追加的な添加剤をさらに含むことができる。このような成分としては、粘度調整剤、pH調整剤などがあげられる。
【0041】
粘度調整剤としては、多糖類(polysaccharide)が例として挙げられる。多糖類は、単糖類2つ以上がグリコシド結合して大きい分子を形成する糖類化合物である。
【0042】
多糖類としては、グルカン系(glucan)化合物、フルクタン系(fructan)化合物、マンナン系(mannan)化合物、ガラクタン系(galactan)化合物またはこれらの金属塩などが挙げられ、このうちのグルカン系化合物とその金属塩(例えば、アルカリ金属塩)が好ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0043】
グルカン系化合物としては、セルロース、ジメチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、4−アミノベンジルセルロース、トリエチルアミノエチルセルロース、シアノエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、スターチ、デキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、デキストラン、デキストランスルフェートナトリウム、サポニン、グリコーゲン、ザイモサン、レンチナン、シゾフィナンまたはこれらの金属塩などが挙げられる。
【0044】
多糖類は、平均分子量が5、000〜1、000、000であることとすることができ、好ましくは50、000〜200、000であることが好ましい。
【0045】
多糖類は、結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物全体重量に対して10
−9ないし0.5重量%で含まれることができ、好ましくは10
−6ないし0.1重量%であることが好ましい。含量が上記範囲に該当する場合は、過エッチングとエッチング加速化を効果的に防止することができる。含量が0.5重量%を超える場合は、アルカリ化合物によるエッチング速度を急激に低下させて所望する微細ピラミッドを形成することができない。
【0046】
本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物は、通常のエッチング工程、例えばディップ方式、噴霧方式及び枚葉方式のエッチング工程にすべて適用可能である。
【0047】
本発明は、前記結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を利用した結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング方法を提供する。
【0048】
結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング方法は、本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物に結晶性シリコンウエハを沈積させる段階、または本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を結晶性シリコンウエハに噴霧する段階、または前記2つの段階をすべて含む。
【0049】
沈積と噴霧の回数は特に限定せず、沈積と噴霧を両方実行する場合にもその順序は限定されない。
【0050】
沈積、噴霧または沈積及び噴霧する段階は50〜100℃の温度で30秒〜60分間遂行することができる。
【0051】
上述のような本発明の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング方法は、酸素を供給する別途のエアレータを導入する必要がなく、初期生産及び工程コスト面から経済的であるだけでなく、簡単な工程でありながらも均一な微細ピラミッド構造の形成を可能とする。
【0052】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
製造例
下記表1に記載の成分及び条件で反応物(B)を製造した。製造例9及び10は反応なしの化合物(b−1)そのものを示す。
【0055】
実施例及び比較例
下記表2に記載の成分及び含量に、残量の水(H
2O)を添加して結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物を製造した。
【0056】
試験例
単結晶シリコンウエハ(156mm×156mm)を実施例及び比較例の結晶性シリコンウエハのテクスチャエッチング液組成物にそれぞれ浸漬させてエッチングした。この場合、テクスチャ条件は温度80℃、時間20分であった。
【0057】
1.エッチング量
エッチング前後のウエハの重量変化を測定した。
【0058】
2.テクスチャの反射率評価
エッチングした単結晶シリコンウエハの表面に、UV分光光度計を用いて600nmの波長帯を有する光を照射した際の反射率を測定し、その結果を表2に示した。
【0059】
3.テクスチャの均一性(外観)評価
テクスチャの均一性は光学顕微鏡、SEMを用い、ピラミッドの大きさはSEMを用いて評価し、その結果を表2に示した。
【0060】
◎:ウエハ全面ピラミッド形成
○:ウエハ一部ピラミッド未形成
(ピラミッド構造未形成精度5%未満)
△:ウエハ一部ピラミッド未形成
(ピラミッド構造未形成精度5〜50%)
×:ウエハピラミッド未形成
(ピラミッド未形成精度90%以上)
【0062】
表2及び
図1〜10を参考すると、実施例のシリコンウエハのエッチング液組成物は、比較例に比べて単結晶シリコンウエハの全面に非常に小さく均一なピラミッドを形成した。また、ピラミッドの形成精度が非常に優れ、低い反射率値を示すことを確認することができた。そして、光学顕微鏡またはSEM分析を介して高倍率に拡大してピラミッドを確認した結果、高密度でピラミッドが形成されたことを確認することができた。実施例6〜9の場合にもピラミッド形成精度が非常に優れ、反射率も約10〜12%の低い反射率値を示すことを確認することができた。
【0063】
但し、反応物(B)が多少過量に使用された実施例10は、エッチング速度が少し低下してテクスチャの均一性が多少低下することで、相対的に反射率が少し高くなったことを確認することができた。
【0064】
特に、実施例1と比較例1、実施例5と比較例2を比較すると、化合物(b−1)をエッチング液として直接使用するより、化合物(b−1)と化合物(b−2)との反応物を使用することが、少ない濃度でありながらもより優れた均一性のテクスチャを形成することを確認することができた。