(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
柱と接合される複数の梁用の主筋を備え、前記梁用の主筋は、普通強度部分と、前記普通強度部分よりも強度が大きく前記普通強度部分に隣合って配置された高強度部分とを有する鉄筋コンクリート造を設計する方法であって、
前記高強度部分を、少なくとも前記梁用の主筋のうち前記柱と接合される柱梁接合部を含む接合部側領域と、前記普通強度部分を挟んで前記柱梁接合部とは反対側に位置する梁中央側領域とに配置し、
前記梁用の主筋の鉄筋量を、降伏ヒンジの位置の曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するにあたり、前記降伏ヒンジの位置を前記高強度部分のうち前記接合部側領域と前記普通強度部分との境界部に設定した
ことを特徴とする鉄筋コンクリート造の設計方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1で示される通り、鉄筋断面積は設計用曲げモーメントに基づいて算出されるものであり、一般的には、梁の付け根が降伏ヒンジとなるように設定される。この付け根の設計用曲げモーメントの大きさに基づいて、梁用の主筋の径の大きさや本数が算出されるので、梁用の主筋の径の大きさや本数は、付け根の曲げモーメントが大きいと、1本あたりの梁用の主筋の強度が同一であれば、多くの梁用の主筋が必要とされたり、径の大きな主筋が必要とされたりする。
しかし、梁用の主筋の本数が多く配置できない場合には、梁幅を大きくして配置できるようにするか、主筋量を減らすために梁せいを大きくして梁あるいは柱梁接合部の断面積を大きくしなければならない、という課題がある。
【0005】
この課題を解決するために、梁用の主筋を、普通強度部分と、普通強度部分よりも強度が大きい高強度部分とを備えて構成し、高強度部分を、梁用の主筋のうち柱梁接合部と柱梁接合部から梁長さ方向に沿った高強度領域とに連続して配置し、普通強度部分を、高強度領域を挟んで柱梁接合部とは反対側に位置する普通強度領域に連続して配置し、梁用の主筋の鉄筋量を、降伏ヒンジの位置の曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するにあたり、降伏ヒンジの位置を高強度部分と普通強度部分との境界部に設定することが考えられる。
しかしながら、降伏ヒンジの位置を高強度部分と普通強度部分との境界部に設定した建物では、普通強度部分で降伏するため、主に、降伏ヒンジを設定した位置から梁中央側に連続して形成された普通強度部分に、ひび割れ等の破壊が進行するという課題が生じる。
この課題は、主筋が全長に渡って一様の強度の建物や、高強度部分が柱梁接合部にのみに配置され梁に高強度領域がかからない建物でも生じるものである。これらの建物では、柱梁接合部の付け根が降伏ヒンジとなり、普通強度部分では、付け根から梁中央側に向かってひび割れ等の破壊が進行するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、降伏ヒンジの設定位置から梁中央側に向かってひび割れ等の破壊が進行することが少ない鉄筋コンクリート造の設計方法及び鉄筋コンクリート造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法は、柱と接合される複数の梁用の主筋を備え、前記梁用の主筋は、普通強度部分と、前記普通強度部分よりも強度が大きく前記普通強度部分に隣合って配置された高強度部分とを有する鉄筋コンクリート造を設計する方法であって、前記高強度部分を、少なくとも前記梁用の主筋のうち前記柱と接合される柱梁接合部を含む接合部側領域と、前記普通強度部分を挟んで前記柱梁接合部とは反対側に位置する梁中央側領域とに配置し、前記梁用の主筋の鉄筋量を、降伏ヒンジの位置の曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するにあたり、前記降伏ヒンジの位置を前記高強度部分のうち前記接合部側領域と前記普通強度部分との境界部に設定したことを特徴とする。
【0008】
以上の構成の本発明では、高強度部分は、接合部側領域に配置され、普通強度部分は、高強度部分に隣接して配置される。つまり、降伏ヒンジの位置を柱梁接合部から離れた位置とし、降伏ヒンジの位置(破壊領域)を限定させる部分を普通強度部分とした。
本発明では、地震等の大きな荷重が鉄筋コンクリート造に生じた際に、高強度部分と普通強度部分との境界部に力が集中する。境界部に破壊が集中してひび割れ等の破壊が梁中央側に向けて拡散しようとしても、本発明では、高強度部分は、接合部側領域だけでなく、梁中央側領域にも配置されるので、梁中央側に向けての破壊の拡散が抑制される。
そのため、本発明では、大きな地震等が発生した際に、高強度部分を構成する接合部側領域と普通強度部分との間で梁用の主筋を確実に破損させることができる。
しかも、本発明では、降伏ヒンジが設定される位置を柱梁接合部の付け根から梁長さ方向の所定位置までにコントロールすることができる。つまり、梁の長さが長い場合には、接合部側領域を柱梁接合部の付け根から遠い位置とし、梁の長さが短い場合には、接合部側領域を柱梁接合部の付け根から近い位置にする。そのため、鉄筋コンクリート造の設計上の自由度が大きくなる。
【0009】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分のうち前記接合部側領域との境界位置と前記梁中央側領域との境界位置との梁長さ方向の寸法は、100mm以上梁の有効梁せいの長さ以下である構成が好ましい。
前述の寸法を確保することにより、大地震等が発生した際に、梁の破壊が柱梁接合部に進展することを抑制できるとともに、梁用の主筋を確実に破損させることができる。
【0010】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記梁用の主筋のうち中央の曲げモーメントが小さい部分を普通強度とする構成が好ましい。
この構成では、降伏ヒンジが設定される位置以外に、梁の中央側に普通強度部分を設定することにより、製造コストを低いものにできる。つまり、降伏ヒンジが設定される位置の梁中央側領域を挟んで反対側の梁の中央側は、中央の曲げモーメントが小さいので、高強度部分にする必要がない。そのため、高強度部分に設定する領域を必要最小限にすることで、主筋の製造コストを抑えることができる。
【0011】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記高強度部分には設備配管用貫通孔が設けられている構成が好ましい。
この構成では、設備配管用貫通孔が設けられる領域が高強度であるため、設備用配管用孔を施工しても、建物の強度低下を小さなものにできる。
【0012】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記接合部側領域は、前記柱梁接合部に配置された第一領域と、前記第一領域と連続して形成され前記柱梁接合部から梁長さ方向に沿った第二領域とを備え、前記設備配管用貫通孔は、前記第二領域に配置された第一貫通孔と、前記梁中央側領域に配置された第二貫通孔とを有する構成が好ましい。
この構成では、降伏ヒンジが設定される普通強度部分を挟んで第一貫通孔と第二貫通孔とが配置されるので、複数の設備用配管の施工作業を容易に行うことができる。
【0013】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分は降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定され、前記高強度部分は前記普通強度部分よりも降伏点又は0.2%耐力が大きく設定され、前記梁用の主筋は、前記普通強度部分と同じ強度の1本の普通鉄筋を部分焼入れして前記高強度部分とする構成が好ましい。
この構成では、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定される1本の普通鉄筋を部分焼入れして普通強度部分と高強度部分とを形成しているので、柱梁接合部に配置される高強度部分の太さを太くすることを要しない。そのため、この点からも、柱梁接合部の断面積を大きくすることを要しない。しかも、普通強度部分と高強度部分とが1本の鉄筋から構成されるので、現場での取り扱いが容易となる。
【0014】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分の太さに対して前記高強度部分の太さが太い構成が好ましい。
鉄筋の太さと強度とは比例するため、鉄筋の太さが太いと、鉄筋自体の強度が大きなものになる。そのため、普通強度部分に比べて、高強度部分は強度及び径のそれぞれが大きいから、普通強度部分に対する強度の差をより大きくすることができる。
【0015】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分と前記高強度部分とは、互いに対向する端部同士が接合部を介して連結され、前記接合部は、摩擦圧接、ガス圧接、溶接のいずれかで形成される構成が好ましい。
この構成では、接合部を摩擦圧接、ガス圧接、溶接で形成することで、普通強度部分と高強度部分との突き合わされた部分が膨らんだ状態となる。この膨らんだ部分がコンクリートとの付着力を大きくすることができる。
【0016】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分と前記高強度部分とは、互いに対向する端部同士が接合部を介して連結され、前記接合部は、前記普通鉄筋部分に形成された雄ねじ部と前記高強度部分に形成された雄ねじ部とにそれぞれ螺合されるカプラーを有する構成が好ましい。
この構成では、小径鉄筋と大径鉄筋とをカプラーを用いて接合するので、摩擦圧接、ガス圧接、溶接で接合部を形成する場合に比べて、建設現場での大径鉄筋と小径鉄筋との接続作業が容易となる。
【0017】
本発明の鉄筋コンクリート造の設計方法では、前記普通強度部分と前記高強度部分とは、互いに対向する端部同士が接合部を介して連結され、前記接合部は、前記普通鉄筋部分に形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部に螺合されるとともに前記高強度部に形成された雌ねじ部とを有する構成が好ましい。
この構成では、普通強度部分と高強度部分とを接合するために、カプラーが不要とされるので、現場での作業が容易となるだけでなく、カプラーを別途用意する必要がないから、鉄筋構造を施工するに際しての管理が容易となる。
【0018】
本発明の鉄筋コンクリート造は、前述の構成の鉄筋コンクリート造の設計方法で設計されたことを特徴とする。
この構成では、前述と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図面の
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1には第1実施形態の全体構成が示されている。
図1において、建物は、複数の梁2と、梁2と接合する複数の柱3とを備えた複数階建ての鉄筋コンクリート造であり、鉄筋構造1にコンクリート体100が打設されている。
梁2と柱3とが接合された柱梁接合部200の形態としては、十字形接合S1やト形接合S2があるが、本実施形態では、他の接合に適用されるものでもよい。
【0021】
梁2の鉄筋構造1は、水平方向に延びて配筋された複数の梁用の主筋21と、主筋21の軸方向と交差する平面内において主筋21を囲んで等間隔に配筋されて梁2のせん断強度を補強する複数の梁用のせん断補強筋22とを備える。
水平方向に隣合う主筋21は、継手4で接合されている。継手4は、機械式継手や、それ以外の継手でもよい。あるいは、端部同士を重ね合わせ、針金等で結線する構成でもよい。さらには、端部同士を突き合わせて溶接等で接合する構成でもよい。
柱3の鉄筋構造1は、垂直方向に延びて所定間隔を空けて配筋された複数の柱用の鉄筋材31と、鉄筋材31の軸方向と交差する平面内において鉄筋材31を囲んで等間隔に鉄筋材31の延出方向に配筋されて柱3のせん断強度を補強する複数の柱用のせん断補強筋32とを備える。鉄筋材31及びせん断補強筋32は普通鉄筋である。
なお、
図1は、本実施形態の概略を示すものであるため、主筋21や鉄筋材31の本数や配列は、後述する
図2(B)とは異なる。
【0022】
十字形接合S1を含む領域において、主筋21は、その中央部分に第一高強度部分211Aがあり、第一高強度部分211Aの両端側にそれぞれ普通強度部分212があり、これらの普通強度部分212を挟んで第一高強度部分211Aの反対側に第二高強度部分211Bがある。
第一高強度部分211Aは、十字形接合S1に配置された第一領域210Sと十字形接合S1から梁長さ方向に沿った高強度領域としての第二領域210Aとに配置される。
第二領域210Aの梁長さ方向に沿った寸法は、隣合う柱3の間の寸法、建物全体の大きさ、その他の条件により設定されるものである。
例えば、梁の長さが長い場合には、接合部側領域21Mのうち第二領域210Aの端縁を十字形接合S1の付け根Rから遠い位置とし、梁の長さが短い場合には、第二領域210Aを十字形接合S1の付け根Rから近い位置にする。
【0023】
普通強度部分212は、第二領域210Aを挟んで十字形接合S1とは反対側に位置する普通強度領域210Bに配置されている。第二高強度部分211Bは、1本の主筋21の両端側に配置されている。
即ち、高強度部分は、梁用の主筋21のうち十字形接合S1と第二領域210Aとに位置する接合部側領域21Mと、普通強度部分212を挟んで十字形接合S1とは反対側に位置する梁中央側領域21Nとに配置されている。
【0024】
梁2には設備配管用貫通孔Hが設けられている。
設備配管用貫通孔Hは、第二領域210Aを水平方向に貫通して設けられた第一貫通孔H1と、梁中央側領域21Nを水平方向に貫通して設けられた第二貫通孔H2とを有する。第一貫通孔H1と第二貫通孔H2とは、それぞれ普通強度部分212に近接配置されている。
第一貫通孔H1及び第二貫通孔H2は、それぞれ台所から引き出された換気用配管(図示せず)や、電線を通す配管、その他の設備配管を通すものである。
第一貫通孔H1及び第二貫通孔H2の開口形状は、図では、円形である。なお、本実施形態では第一貫通孔H1及び第二貫通孔H2の開口形状は、円形孔に限定されるものではなく、長方形孔でも、矩形状でもよい。第一貫通孔H1及び第二貫通孔H2の大きさは、上下の梁2の間の寸法や、後述するせん断補強筋22の配置位置に制限される。
【0025】
本実施形態では、設備配管用貫通孔Hの補強は、「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」(日本建築学会2010年2月20日第8版第1刷)に従う。
つまり、鉄筋コンクリート造の梁に設備配管用貫通孔が形成されると、梁の構造性能、特に、せん断終局強度が低下する。また、孔の外周囲には、応力集中によるひび割れも生じやすいことから、孔周囲は適切に補強することが必要とされる。そのため、設備配管用貫通孔Hを構成する第一貫通孔H1や第二貫通孔H2は、それぞれ円形孔の直径や長方形孔の梁せい方向の辺長は、梁せいの1/3以下とし、同一の梁に2個以上の円形孔が設けられる場合、円形孔の中心間隔は、孔径の3倍以上にすることが望ましい。
梁の降伏ヒンジが設けられる領域や梁せい方向に偏心した位置に第一貫通孔H1や第二貫通孔H2を設けないことが好ましい。
第一貫通孔H1や第二貫通孔H2の周囲は、補強することが好ましい。せん断に対する補強としては、あばら筋や斜め補強筋を用いる方法がある。補強筋としては、第一貫通孔H1や第二貫通孔H2の周囲を囲う補強筋、例えば、スーパーハリーZ(株式会社栗本鉄工所の商品名)を用いてもよい。
【0026】
第一高強度部分211A、普通強度部分212及び第二高強度部分211Bは、1本の鉄筋から一体に形成されている。
普通強度部分212は降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定されている。
第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bは、普通強度部分212より高強度である。
例えば、第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bの降伏点又は0.2%耐力は、490MPa(N/mm
2)以上1000MPa(N/mm
2)以下である。普通強度部分212の降伏点又は0.2%耐力は、295MPa(N/mm
2)以上390MPa(N/mm
2)以下である。
以上の構成の主筋21は、普通強度部分212と同じ強度の1本の普通鉄筋(SD345)を部分焼入れして高強度部分211にする。
【0027】
ト形接合S2を含む領域において、主筋21は、建物外側に位置する一端部分に第一高強度部分211Aがあり、第一高強度部分211Aの梁中央側に隣接して普通強度部分212があり、普通強度部分212を挟んで第一高強度部分211Aの反対側に第二高強度部分211Bがある。
第一高強度部分211Aは、ト形接合S2とト形接合S2から梁長さ方向に沿った第二領域210Aとに配置される。
【0028】
第1実施形態において、鉄筋コンクリート造を設計する方法について説明する。
図2では、設計用曲げモーメント分布が(A)に示され、主筋の概略正面図が(B)に示され、概略断面図が(C)に示されている。
図2(B)に示される通り、主筋21は、上下にそれぞれ水平に配置された上部21A及び下部21Bと、上部21A及び下部21Bの間の高さ位置に配置された側部21Cとからなる。
第1実施形態では、降伏ヒンジの位置Qを曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するために用いるものであり、第一高強度部分211Aのうち接合部側領域21Mと普通強度部分212との境界部に設定する。
【0029】
普通強度領域210Bの梁長さ方向の寸法、つまり、第一高強度部分211Aのうち接合部側領域21Mと普通強度部分212との境界位置と、第二高強度部分211Bの梁中央側領域21Nと普通強度部分212との境界位置との梁長さ方向の寸法は、100mm以上、かつ、梁の有効梁せいdの長さ以下である。ここで、梁の有効梁せいdは、圧縮縁から引張鉄筋の重心までの距離で、曲げモーメントが作用したときに下側の鉄筋が引張応力となる場合には、下側の主筋の重心Gから梁上面までの寸法である。
例えば、本実施形態の梁用の主筋21の配列において、梁の高さ寸法が400mmである場合、梁の有効せいdは346mmとすることができる。
主筋21のうち十字形接合S1から外れた位置には、上部21A、下部21B及び側部21Cの外周部分を覆うようにせん断補強筋22が複数配置されている。これらのせん断補強筋22は、梁の長手方向に沿って互いに等間隔に配置されている。
せん断補強筋22は、普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力(345MPa(N/mm
2))よりも大きい降伏点又は0.2%耐力(1275MPa(N/mm
2))を有するウルボン1275(高周波熱錬(株)の商品名)を用いることが好ましい。なお、本実施形態では、ウルボン1275に代えて普通鉄筋と同じ降伏点又は0.2%耐力を有するせん断補強筋を用いてもよい。
【0030】
図2(A)で示される設計用曲げモーメント分布は、隣合う主筋21の普通強度部分212の接続部分で0となり、
図2(B)の左側に配置された柱梁接合部200の梁2の付け根Rに向かうに従って大きくなる。なお、
図2(A)で示される設計用曲げモーメントは、常時(自重)荷重のモーメントに外力モーメントを加えたものである。設計用曲げモーメントは通常の設計手法によって求められる。
主筋21の鉄筋量の算定は、鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(日本建築学会2010年2月20日第8版第1刷)第14頁から第16頁に準拠する。
梁の引張鉄筋比が釣合鉄筋比以下のときは、許容曲げモーメント(設計用曲げモーメント)は次式による。
M=a
tf
tj ……式(A)
【0031】
ここで、a
tは引張鉄筋断面積であり、f
tは鉄筋の許容引張応力度であり、jは梁の応力中心距離である。引張鉄筋断面積a
tは、主筋21が上下に分かれて複数本ずつ配置されている場合には、上下それぞれ配置された主筋21の断面積の合計値である。
jは(7/8)dあるいは0.9dとしてもよい。許容引張応力度f
tは、鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説で規定された下記の表から求められる。例えば、SD345の主筋21では、短期許容引張応力度は345N/mm
2である。
【0033】
前述の式(A)の算定の他、梁は次の条件に従うことが求められる。
長期荷重時に正負最大曲げモーメントを受ける部分の引張鉄筋断面積は0.004bd(bは梁幅)又は存在応力によって必要とされる量の4/3倍のうち、小さい方の数値以上とする。
主要な梁は、全スパンにわたり複筋梁とする。
主筋は、D13(Dは呼び名)以上の異形鉄筋とする。
主筋のあきは、25mm以上かつ異形鉄筋の径(呼び名の数値mm)の1.5倍以上とする。
主筋の配置は、特別な場合を除いて2段以下とする。
【0034】
Mは、
図2(A)で示される設計用曲げモーメントのグラフから求められるモーメント値である。モーメント値Mは、降伏ヒンジの位置Qでの値である。
なお、主筋21の柱梁接合部200の付け根Rの応力は、第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bの降伏点以下である。
図2(A)で示される設計用曲げモーメントでは、最大値が梁の左側の付け根Rの位置であり、最小値が梁の右側の付け根であり、これらの中間位置(隣合う主筋21の普通強度部分同士が接合される位置の近傍(梁の中央部付近))で0となる。降伏ヒンジの位置Qは付け根Rより小さな値となる。
【0035】
図2(B)に示される通り、隣合う柱3の間の互いに対向する垂直面間寸法や、付け根Rから降伏ヒンジの位置Qまでの寸法Sは設計者により曲げモーメント分布に基づいて適宜設定されている。設計用曲げモーメントの付け根Rでの値と、モーメント値が0となる位置の付け根Rからの寸法とは、事前の解析等により降伏ヒンジの位置を検討する時点で既知の数値である。そのため、降伏ヒンジの位置Qでのモーメント値Mは、これらの数値の比に基づいて求められる数値を利用してもよい。
本実施形態では、主筋21の鉄筋量を
図2(A)の設計用曲げモーメントの降伏ヒンジの位置Qでの値から算定する。
鉄筋量は引張鉄筋断面積a
tから求められる。鉄筋本数は、断面積a
tから1本あたりの主筋21の断面積を除算することで求められる。
【0036】
このような計算に基づいて、主筋21の断面積を求め、さらに、断面積から主筋21の径及び本数を求める。例えば、梁の中心から上側の鉄筋量が906mm
2であり、下側の鉄筋量が906mm
2であり、上下の鉄筋量がそれぞれ906mm
2必要とされた場合、上部21Aの主筋21として、中央に2本のD13(SD345)の主筋21を配置し、両角部にそれぞれ1本のD16(SD345)の主筋21を配置し、下部21Bの主筋21として、中央にD13の主筋21を2本配置し、両角部にD13の主筋21を1本ずつ配置し、側部21Cの主筋21を上下左右にD16の主筋21を1本ずつ配置する(
図2(C)参照)。
【0037】
従って、第1実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)梁用の主筋21の第一高強度部分211Aを、十字形接合S1に位置する接合部側領域21Mとし、第二高強度部分211Bを、普通強度部分212を挟んで十字形接合S1とは反対側に位置する梁中央側領域21Nとし、主筋21の鉄筋量を、降伏ヒンジの位置Qの曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するにあたり、降伏ヒンジの位置Qを接合部側領域21Mと普通強度部分212との境界部に設定した。そのため、地震等の大きな荷重が鉄筋コンクリート造に生じた際に、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との境界部に力が集中し、ひび割れ等の破壊が梁中央側に向けて拡散しようとしても、高強度領域は、接合部側領域21Mに配置される第一高強度部分211Aだけでなく、梁中央側領域21Nに配置される第二高強度部分211Bもあるため、破壊の拡散が抑制される。
【0038】
しかも、降伏ヒンジが設定される位置Qを十字形接合S1の付け根Rから梁長さ方向の所定位置までにコントロールすることができる。
図3(A)は第1実施形態の梁の模式図であり、
図3(B)は梁用の主筋の付着長さLdと応力分布との関係を示すグラフである。前述では、第一高強度部分211Aのうち接合部側領域21Mと普通強度部分212との境界位置と、第二高強度部分211Bの梁中央側領域21Nと普通強度部分212との境界位置との梁長さ方向の好ましい寸法は、100mm以上、かつ、梁の有効梁せいdの長さ以下としたが、ここでは、説明を簡便にするため、接合部側領域21Mと普通強度部分212との境界位置は梁の付け根とした。
図3(A)(B)において、第1実施形態の梁用の主筋21では、実際の応力分布σ1は、降伏ヒンジの位置Qで生じるものである。降伏ヒンジの位置Qの近傍においてひび割れCが生じるものであり、実際の応力分布σ1は、降伏ヒンジの位置Qから普通強度部分212の長さxに渡って高い値が連続するが、第二高強度部分211Bに対応する領域になると、低い値となり、従来例と比較してひび割れの発生範囲が小さくなる。実際の応力分布σ1に対応して設計で考える応力分布σ2を設定する。
以上のことから、梁用の主筋21の長さが長い場合には、接合部側領域21Mを柱梁接合部200の付け根Rから遠い位置とし、主筋21の長さが短い場合には、接合部側領域21Mを柱梁接合部200の付け根Rから近い位置にする。このように、第1実施形態では、鉄筋コンクリート造の設計上の自由度が大きくなる。
【0039】
これに対して、全てが同一強度からなる従来例の梁用の主筋では、
図4(A)(B)に示される通り、柱梁接合部200の付け根Rから有効梁せいdの長さに渡って高い応力分布σ1となり、鉄筋コンクリート造の設計の自由度が制限される。
図4(A)は従来例の梁の模式図であり、
図4(B)は梁用の主筋の付着長さと応力分布との関係を示すグラフである。
図4(A)(B)において、従来例の梁用の主筋では、実際の応力分布σ1は、降伏ヒンジの位置Qで最大となるが、第1実施形態とは異なり、最大値となるのは、柱梁接合部200の付け根Rである。実際の応力分布σ1は、柱梁接合部200の付け根Rから有効梁せいdの長さに対応する寸法に渡って高い値が連続し、有効梁せいの長さdを超えると、低い値となる。そのため、従来例では、実際の応力分布σ1に対応し、設計で考える応力分布σ2を設定するにあたり、少なくとも、有効梁せいの長さdに渡って設計上の応力分布σ2を高い値としなければならない。以上のことから、従来例では、第1実施形態とは異なり、鉄筋コンクリート造の設計の自由度が制限されることになる。
【0040】
(2)普通強度部分212のうち接合部側領域21Mとの境界位置と梁中央側領域21Nとの境界位置との梁長さ方向の寸法が100mm以上梁の有効梁せいdの長さ以下が確保されるから、大地震等が発生した際に、梁の破壊が柱梁接合部に進展することを抑制できるとともに、梁用の主筋21を確実に破損させることができる。
【0041】
(3)高強度領域には設備配管用貫通孔Hが設けられているから、設備配管用貫通孔Hを利用して配管作業をすることができる。その上、設備配管用貫通孔Hが設けられる領域が高強度領域であり、ひび割れの拡散が抑制されるため、設備用配管用孔を施工しても、建物の強度低下を小さなものにできる。
【0042】
(4)降伏ヒンジが設定される普通強度部分212を挟んで第一貫通孔H1と第二貫通孔H2とが配置されるので、配管作業をより容易に行うことができる。
【0043】
(5)主筋21は、普通強度部分212と同じ強度の1本の普通鉄筋を部分焼入れして第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bとしたから、十字形接合S1に配置される高強度部分の太さを太くすることを要しない。そのため、現場での取り扱いが容易となる。
【0044】
(6)接合部側領域21Mを、十字形接合S1と、十字形接合S1の付け根Rから梁長さ方向に位置する第二領域210Aとから構成したから、降伏ヒンジの位置Qが梁2の付け根Rから離れた位置となる。そのため、設計用壁モーメントが小さくなり、その分、鉄筋量が少なくて済むので、端や柱梁接合部200の断面積を大きくすることを要せず、その結果、居住空間を広いものにできる。
【0045】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を
図5に基づいて説明する。
第2実施形態は、主筋21の構成が第1実施形態とは異なり、他の構成は第1実施形態と同じである。第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図5(B)に示される通り、十字形接合S1を含む領域において、主筋21は、その中央部分に第一高強度部分211Aがあり、第一高強度部分211Aの隣に第一普通強度部分212Aがあり、第一普通強度部分212Aを挟んで第一高強度部分211Aの反対側に第二高強度部分211Bがあり、第二高強度部分211Bの隣に第二普通強度部分212Bがある。
【0046】
第一普通強度部分212Aは、第二領域210Aを挟んで十字形接合S1とは反対側に位置する普通強度領域210Bに配置されている。
第二普通強度部分212Bは、主筋21の端部に配置されており、隣合う主筋21は、第二普通強度部分212Bで互いに継手4で連結されている。
第2実施形態では、第二普通強度部分212Bが配置される位置は、
図5(A)で示される通り、中央の設計用曲げモーメントMが小さい部分である。
【0047】
第2実施形態において、鉄筋コンクリート造を設計する方法は、第1実施形態と同じである。
第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(7)梁用の主筋21のうち中央の曲げモーメントが小さい部分を普通強度としたから、降伏ヒンジが設定される位置Q以外に、梁の中央側を第二普通強度部分212Bとしたので、製造コストを低いものにできる。
【0048】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を
図6に基づいて説明する。
第3実施形態は、主筋21の構成が第1実施形態とは異なり、他の構成は第1実施形態と同じである。第3実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図6(B)に示される通り、主筋21Pは、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定される普通鉄筋から構成されるものであり、普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力は、295MPa(N/mm
2)以上390MPa(N/mm
2)以下である。
【0049】
主筋21Pの長さ寸法は、第1実施形態の主筋21と同じであり、主筋21Pの配置位置は、主筋21と同様、上部21Aの4本、下部21Bに4本、側部21Cに左右2本ずつである。
本実施形態では、普通強度部分212は、前述の主筋21Pから構成され、第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bは、それぞれ、主筋21Pと4本の補強筋21Qとから構成されている。
補強筋21Qは、十字形接合S1と十字形接合S1から梁長さ方向に沿った第二領域210Aとに配置される。
補強筋21Qは、主筋21Pと同じ材料からなる普通鉄筋から構成される。補強筋21Qは、例えば、側部21Cの間に配置されるものであり(
図6(C)参照)、その本数は、後述するように、設計用曲げモーメントに基づいて設定される。
【0050】
図6(A)で示される設計用曲げモーメント分布は、
図2(A)で示される設計用曲げモーメント分布と同じである。
モーメント値Mは、降伏ヒンジの位置Qでの値であり、本実施形態では、降伏ヒンジの位置Qは第一高強度部分211Aと普通強度部分212との境界部である。
本実施形態では、主筋21Pの鉄筋量を第1実施形態と同様の方法で算出する。寸法Sの区間では、柱梁接合部200の付け根Rの曲げモーメントに対して、逆算して求められる応力が鉄筋の降伏点以下となるような鉄筋量とすればよい。その結果、左右に隣合う側部21Cを構成する主筋21Pの間に2本ずつの補強筋21Qを配置することで(
図6(C)参照)、普通強度部分212より強度の大きな第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bを設定することができた。
【0051】
従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)〜(4)(6)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(8)梁用の主筋21Pの鉄筋量を、降伏ヒンジの位置Qの曲げモーメントを設計用曲げモーメントとして算定するにあたり、降伏ヒンジの位置Qを補強の境界部に設定したから、設計用曲げモーメントのモーメント値が小さくなり、その分、鉄筋量が少なくてすむ。
【0052】
(9)普通強度の領域より鉄筋の数を増やして高強度の領域を形成したため、1本の普通鉄筋の一部を焼入れして第一高強度部分211A及び第二高強度部分211Bを形成する場合に比べて、鉄筋の製造コストを下げることができる。
【0053】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を
図7から
図9に基づいて説明する。
第4実施形態は、主筋21の普通強度部分212と第一高強度部分211Aとの接合構造及び普通強度部分212と第二高強度部分211Bとの接合構造が第1実施形態とは異なり、他の構成は第1実施形態と同じである。第4実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
第4実施形態では、第一高強度部分211Aと普通強度部分212と接合部210及び第二高強度部分211Bと普通強度部分212との接合部210とが「節」のように接合された構造である(
図7(C)参照)。
【0054】
図7には、それぞれ1本の主筋からなる第一高強度部分211Aと普通強度部分212との接合を摩擦圧接で行う場合が示されている。第一高強度部分211Aと普通強度部分212とは、同じ材料であり、第一高強度部分211Aは普通強度部分212に比べて太いことから、高強度とされる。
図7(A)において、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との端面同士を互いに突き合わせた状態とする。
その後、
図7(B)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との一方、例えば、第一高強度部分211Aを普通強度部分212に向けて押圧し、他方、例えば、普通強度部分212をその軸方向に回転させる。第一高強度部分211Aと普通強度部分212とは接触加圧させながら相対的に回転運動するので、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との突き合わせ部分に摩擦熱が発生する。すると、
図7(C)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との圧接された端面同士は「節」のように膨らんだ状態で接合される。
【0055】
図8には、接合部210をガス圧接で形成する例が示されている。
図8(A)において、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との端面同士を互いに突き合わせた状態とする。その後、
図8(B)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212とを互いに近接する方向に押圧して突き合わせ、この突き合わせ部分を外周に沿って酸素アセチレン炎等で加熱する。すると、
図8(C)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との圧接された端面同士は「節」のように膨らんだ状態で接合される。
【0056】
図9には、接合部210を突き合わせ溶接で形成する例が示されている。
図9(A)において、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との端面同士を互いに突き合わせた状態とする。その後、
図9(B)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212とのそれぞれを電極Tで把持し、これらの電極Tを互いに近接する方向に移動させて突き合わせ部を圧接し、かつ、2つの電極Tの間に通電して突き合わせ部を加熱する。すると、
図9(C)に示される通り、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との圧接された端面同士は「節」のように膨らんだ状態で接合される。なお、本実施形態における溶接は前述のような突き合わせ溶接に限定されるものではなく、他の溶接でも接合部210を形成することが可能である。
【0057】
第4実施形態において、鉄筋コンクリート造を設計する方法は、第1実施形態と同じである。
第4実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(10)接合部210は、摩擦圧接、ガス圧接、突き合わせ圧接のいずれかで形成されているので、第一高強度部分211Aと普通強度部分212との突き合わされた部分が「節」のように膨らんだ状態となる。この膨らんだ部分とコンクリート部分との密接力が大きくなる。
【0058】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を
図10から
図12に基づいて説明する。
第5実施形態は、接合部の構成が第4実施形態と相違するものであり、他の構成は第4実施形態と同じである。第5実施形態の説明において、第1実施形態や第4実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図10は第5実施形態の鉄筋構造の要部を示す。
図10において、大径の第一高強度部分211Aと小径の普通強度部分212とは接合部24を介して互いに連結されている。第一高強度部分211Aと小径の普通強度部分212とは別の鉄筋である。
接合部24の中心位置で第一高強度部分211Aと普通強度部分212との端部同士が接合されており、この中心位置から柱3までの距離が高強度領域としての第二領域210Aとされる。なお、この中心位置が降伏ヒンジの位置Qとなる。
【0059】
接合部24の具体的な構成が
図11及び
図12に示されている。
図11及び
図12において、接合部24は、第一高強度部分211Aの端部に形成された雄ねじ部211Tと、小径の普通強度部分212の端部に形成された雄ねじ部212Tと、これらの雄ねじ部211T,212Tにそれぞれ螺合されるカプラー25とを備えている。第一高強度部分211Aの端面211Dと、普通強度部分212の端面212Dとが互いに当接されている。
カプラー25は、外周面が六角形とされたナット状の部材である。カプラー25の雌ねじ部は、第一高強度部分211Aの雄ねじ部211Tの径に合わせた大径部252Tと、普通強度部分212の雄ねじ部212Tの径に合わせた小径部251Tとから構成される。これらの大径部252Tと小径部251Tとの間には段差が形成されている。
【0060】
第5実施形態において、鉄筋コンクリート造を設計する方法は、第1実施形態と同じである。
第5実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(11)接合部24は、第一高強度部分211Aの雄ねじ部211Tと普通強度部分212の雄ねじ部212Tとにそれぞれ螺合されるカプラー25を有するので、摩擦圧接、ガス圧接、溶接で接合部210を形成する場合に比べて、建設現場での鉄筋接続作業が容易となる。
【0061】
次に、本発明の第6実施形態を
図13に基づいて説明する。
図13は第6実施形態の接合部を示すものである。
第6実施形態は、接合部26の構成が第5実施形態と相違するものであり、他の構成は第5実施形態と同じである。第6実施形態の説明において、第5実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図13において、大径鉄筋からなる第一高強度部分211Aと、小径鉄筋からなる普通強度部分212とは接合部26を介して互いに連結されている。
接合部26は、第一高強度部分211Aの端部に形成された雌ねじ部211Cと、普通強度部分212の端部に形成された雄ねじ部212Tとを備えている。
【0062】
第6実施形態では、第3実施形態と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(12)接合部26は、普通強度部分212に形成された雄ねじ部212Tと、雄ねじ部212Tに螺合されるとともに大径の第一高強度部分211Aの端部に形成された雌ねじ部211Cとを有するので、第5実施形態に比べて、カプラーが不要とされる。そのため、現場での作業が容易となるだけでなく、カプラーを別途用意する必要がないから、鉄筋構造を施工するに際しての管理が容易となる。
【0063】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明では、建築構造物以外にも、橋等の土木構造物にも適用することができる。
さらに、本発明では、第二領域210Aの長さ寸法が0、つまり、第一高強度部分211Aが十字形接合S1にのみ配置される構成としてもよい。
また、設備配管用貫通孔Hを必ずしも設けることを要しない。仮に設ける場合にあっても、第一貫通孔H1と第二貫通孔H2との一方を設けるものであってもよい。