特許第6434858号(P6434858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434858
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】エレベータのガイドレール補強装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/02 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
   B66B7/02 H
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-97515(P2015-97515)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-210587(P2016-210587A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 泰範
(72)【発明者】
【氏名】濱田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直行
(72)【発明者】
【氏名】新田 浩二
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/048789(WO,A1)
【文献】 特開2000−118909(JP,A)
【文献】 実開昭63−041079(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/132649(WO,A1)
【文献】 特開2005−206341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体を上下方向に案内するガイドレールの背面側に取り付けられ、長尺体の剛性部材から成る前記ガイドレールの補強部材と、この補強部材を前記ガイドレールに取り付ける取り付け手段とを備えたエレベータのガイドレール補強装置において、
前記補強部材の長さ寸法を、それぞれ前記ガイドレールを支持し、隣り合う第1レールブラケット及び第2レールブラケットによる両支持点間の当該ガイドレールである部分ガイドレールの、補強範囲の長さ寸法に設定し、
前記補強部材は、長さ方向が前記補強範囲に対応する位置に取り付けられ、
前記補強範囲は、当該部分ガイドレール上に仮想的に設定した基準点における当該部分ガイドレールに作用する曲げモーメントの値を超える前記曲げモーメントが作用する範囲であり、
前記基準点は、前記第1レールブラケット側の第1境界点と第2境界点との中点より前記第2境界点側の所定の点であり、
前記第1境界点は、前記部分ガイドレール上の、前記曲げモーメントが、当該曲げモーメントの最大値と同符号である範囲の両端部であり、
前記第2境界点は、前記部分ガイドレール上の、前記曲げモーメントが、許容曲げモーメントを超える範囲の両端部であることを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記補強部材の長さ寸法を、前記部分ガイドレール上の、前記第2境界点によって規定される範囲に略相当する長さ寸法に設定したことを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記ガイドレールは、複数の単位レールと、これらの単位レールを連結する継ぎ目板とを含み、
前記取り付け手段は、剛性を有する取り付け金具から成り、
前記継ぎ目板の厚さ方向に沿う前記取り付け金具の第1寸法を、前記継ぎ目板の厚さ寸法よりも大きく設定し、
前記継ぎ目板の前記厚さ方向に直交する幅方向に沿う前記取り付け金具の第2寸法を、前記継ぎ目板の幅寸法よりも大きく、かつ、補強部材と器具ブラケットとの干渉を生じさせない寸法に設定したことを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記ガイドレールは、昇降体を案内するガイド部と、このガイド部に連設され、前記第1レールブラケット及び前記第2レールブラケットに締結される底部とを有し、
前記取り付け金具は、前記ガイドレールの前記底部に締結される第1取り付け部と、前記補強部材が締結される第2取り付け部と、これらの第1取り付け部及び前記第2取り付け部に連設される水平部とを含み、
前記第1寸法は、前記継ぎ目板の厚さ方向に沿う前記水平部の寸法と同等の寸法、または前記水平部の寸法に前記第1取り付け部の厚さ寸法または前記第2取り付け部の厚さ寸法を加えた寸法から成ることを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記補強部材は、外側端部に前記第2取り付け部に締結される締結部を有することを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記補強部材は、上下方向に延設される第1L型鋼材と、この第1L型鋼材に所定間隔で平行に延設される第2L型鋼材とから成り、
前記第1L型鋼材のL字を形成する一方の片、及び前記第2L型鋼材のL字を形成する一方の片は、前記締結部を形成し、
前記第1L型鋼材のL字を形成する他方の片と、前記第2L型鋼材のL字を形成する他方の片とを対向させて配置したことを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【請求項7】
請求項5に記載のエレベータのガイドレール補強装置において、
前記補強部材は、横断面がつば部を有する帽子形状から成り、
前記つば部は、前記締結部を形成することを特徴とするエレベータのガイドレール補強装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体の剛性部材から成るガイドレールの補強部材を備えたエレベータのガイドレール補強装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術が特許文献1に開示されている。この従来技術は、昇降体、すなわち乗かごあるいはつり合い重りを上下方向に案内するガイドレールの背面側に取り付けられるガイドレールの補強用の鋼材と、この補強用の鋼材を平板片を介してガイドレールに取り付けるボルトとを備えている。補強用の鋼材は剛性部材を形成するとともに、隣り合うガイドレールブラケット間の長さ寸法よりもわずかに短い程度の長尺体に形成されている。
【0003】
図11は特許文献1に開示されたものではないが、前述した従来技術における補強用の鋼材と同等の補強部材40と、複数の単位ガイドレール8a,8bを連結して成るガイドレール8の許容応力との関係を示している。(a)図は、前述した隣り合うガイドレール取り付けブラケットに相当する第1レールブラケット13と第2レールブラケット15の2点間に、補強部材40を取り付けた状態を模式的に示している。また(b)図は、補強部材40を取り付けたことによる応力変化が、周知の計算式から求められる許容応力の範囲内に収まっていることを示している。
【0004】
前述した特許文献1に示される従来技術における応力特性も、この図11の(a)(b)と同等と見做し得る。前述した従来技術を図11に示した符号を用いて説明すると、第1レールブラケット13と第2レールブラケット15の間のガイドレール8部分に、周知の計算式から求められる曲げモーメントが作用する範囲の全域に相当する長さ寸法の補強部材40を、ガイドレール8に取り付けたことになる。これにより従来技術は、(b)図に示すように、第1レールブラケット13と第2レールブラケット15の間のガイドレール8部分の全域にわたって、ガイドレール8部分に作用する応力が許容応力内に収まる。したがって地震時等に際しても、ガイドレール8の安定した強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−118909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した特許文献1に開示された従来技術は、曲げモーメントが作用する範囲の全域に相当する長さ寸法に補強部材を設けることから、材料費が高くなる上、補強部材の重量が重くなり、揚中装置を使用して補強部材を吊り上げながらの狭いスペースでの設置作業に手間が掛かり、昇降路の全域にわたるガイドレールの大部分に補強部材の設置作業を行うには、作業能率の向上を見込めないことから作業時間が増大して設置費用が高くなりやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、ガイドレールの所望の強度を確保可能な補強部材の長さ寸法を短くすることができるエレベータのガイドレール補強装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータのガイドレール補強装置は、昇降体を上下方向に案内するガイドレールの背面側に取り付けられ、長尺体の剛性部材から成る前記ガイドレールの補強部材と、この補強部材を前記ガイドレールに取り付ける取り付け手段とを備えたエレベータのガイドレール補強装置において、前記補強部材の長さ寸法を、それぞれ前記ガイドレールを支持し、隣り合う第1レールブラケット及び第2レールブラケットによる両支持点間の当該ガイドレールである部分ガイドレールの、補強範囲の長さ寸法に設定し、前記補強部材は、長さ方向が前記補強範囲に対応する位置に取り付けられ、前記補強範囲は、当該部分ガイドレール上に仮想的に設定した基準点における当該部分ガイドレールに作用する曲げモーメントの値を超える前記曲げモーメントが作用する範囲であり、前記基準点は、前記第1レールブラケット側の第1境界点と第2境界点との中点より前記第2境界点側の所定の点であり、前記第1境界点は、前記部分ガイドレール上の、前記曲げモーメントが、当該曲げモーメントの最大値と同符号である範囲の両端部であり、前記第2境界点は、前記部分ガイドレール上の、前記曲げモーメントが、許容曲げモーメントを超える範囲の両端部であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエレベータのガイドレール補強装置は、補強部材の長さ寸法が、許容曲げモーメントを超える範囲に相当する長さ寸法以上の寸法であることから、ガイドレールの所望の強度を確保することができる。また本発明は、曲げモーメントの範囲を規定する第1境界点と、許容曲げモーメントを超える範囲を規定する第2境界点との間の第2境界点に近い位置で仮想的に設定した基準点の特定曲げモーメント範囲に相当する長さ寸法に、補強部材の長さ寸法を設定したことから、補強部材の長さ寸法を従来技術におけるよりも短くすることができる。これにより本発明は、従来技術に比べて補強部材の重量を軽減させることができ、揚重装置を用いずに補強部材をガイドレールに取り付けることが可能になり、この補強部材の取り付け作業の能率を向上させることができる。また本発明は、補強部材の材料費を低減させることができ、補強部材の設置費用を従来技術よりも安価に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るガイドレール補強装置の第1実施形態が備えられるエレベータの一例の概略構成を示す図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3図2のB−B矢視拡大図である。
図4図2のC部拡大図である。
図5図2のD−D断面図である。
図6図2に示す第1レールブラケットと第2レールブラケットの2点間に位置するガイドレール部分において周知の計算式により求められる許容曲げモーメント、及び最大曲げモーメントを示す特性図である。
図7】本発明の第1実施形態に備えられる補強部材とガイドレールの許容応力の関係を示す図で、(a)図は、第1レールブラケットと第2レールブラケットの2点間に本実施形態の補強部材を取り付けた状態を模式的に示した図、(b)図は、補強部材を取り付けたことによる応力変化と、ガイドレールの許容応力との関係を示す特性図である。
図8】本発明の第2実施形態の要部構成を示す図で、第1実施形態を示す図3に対応する図である。
図9】本発明の第2実施形態の要部構成を示す図で、第1実施形態を示す図4に対応する図である。
図10】本発明の第2実施形態の要部構成を示す図で、第1実施形態を示す図5に対応する図である。
図11】従来技術において見做し得る補強部材とガイドレールの許容応力の関係を示す図で、(a)図は、第1レールブラケットと第2レールブラケットの2点間に従来技術におけるのと同等の長さ寸法の補強部材を取り付けた状態を模式的に示した図、(b)図は、補強部材を取り付けたことによる応力変化と、ガイドレールの許容応力との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータのガイドレール補強装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明のガイドレール補強装置の第1実施形態が設けられるエレベータは、昇降路1内を上下方向に走行する昇降体、すなわち乗かご2及びつり合い重り3と、昇降路1の上方に形成される機械室4内に配置され、図示しない巻上機に取り付けられるメインシーブ5と、つり合い重り3を乗かご2から離隔させるそらせシーブ6と、これらのメインシーブ5及びそらせシーブ6に掛け回され、一端が乗かご2に連結され、他端がつり合い重り3に連結されたロープ7を備えている。
【0013】
乗かご2及びつり合い重り3のそれぞれは、この第1実施形態に係る補強装置の取り付け対象であるガイドレール8によって上下方向に案内される。図1のA部を拡大した図2に示すように、ガイドレール8は、昇降路壁11に設けた固定部材12に固定される第1レールブラケット13、及び昇降路壁11に設けた固定部材14に固定され、第1レールブラケット13に隣り合う第2レールブラケット15等に、それぞれ締結具16によって固定されている。
【0014】
図2に示すように、ガイドレール8のそれぞれは、複数の単位レール8a,8bと、これらの単位レール8a,8bを連結する継ぎ目板10とを備えている。図3〜5に示すように、単位ガイドレール8a,8bのそれぞれは、乗かご2あるいはつり合い重り3を案内するガイド部8a1等と、これらのガイド部8a1等に連結され、第1レールブラケット13または第2レールブラケット15に締結される底部8a2等を有している。
【0015】
図2のD−D断面図である図5に示すように、継ぎ目板10は、ボルトとナットから成る締結具18によって、単位レール8a,8bの底部8a2等に固定されている。また図3に示すように、ガイドレール8には、階床位置検出装置を構成する遮蔽板等が取り付けられる器具ブラケット22が付設されている。
【0016】
図2〜5等に示すように、この第1実施形態に係るガイドレール補強装置は、長尺体の剛性部材から成るガイドレール8の補強部材20と、この補強部材20をガイドレール8に取り付ける取り付け手段とを備えている。
【0017】
この第1実施形態は、補強部材20の長さ寸法を、隣り合う第1レールブラケット13と第2レールブラケット15の2点間に位置するガイドレール8部分に作用する周知の計算式から求められる曲げモーメントの関係に基づいて設定してある。すなわち、図6に示す曲げモーメントの範囲を規定する第1境界点Mと、発生する最大曲げモーメントに応じて許容曲げモーメントを超える範囲を規定する第2境界点Nとの間の第2境界点Nに近い位置、例えば第1境界点Mと第2境界点Nとの間の第2境界点Nに近い位置に仮想的に設定した基準点Sで示した特定曲げモーメント範囲Yに相当する長さ寸法に、補強部材20の長さ寸法を設定してある。例えば、この補強部材20の長さ寸法を、第2境界点Nによって規定された許容曲げモーメントを超える範囲に略相当する長さ寸法に設定してある。
【0018】
図3〜5に示すように、前述した補強部材20をガイドレール8に取り付ける取り付け手段は、剛性を有する取り付け金具21から成っている。この取り付け金具21は、例えば側方から見てL字状を形成する一対の鋼材を、向きを変えて上下に重ね合わせ、互いに溶接によって一体化してある。
【0019】
図5に示す継ぎ目板10の厚さ方向に沿う取り付け金具21の第1寸法L1を、継ぎ目板10の厚さ寸法よりも大きく設定してある。また、継ぎ目板10の厚さ方向に直交する幅方向に沿う取り付け金具21の第2寸法L2を、継ぎ目板10の幅寸法よりも大きく、かつ、補強部材20と図3に示す器具ブラケット22との干渉を生じさせない寸法に設定してある。
【0020】
また図4に示すように、取り付け金具21は、単位ガイドレール8a,8bの底部8a2等に締結される第1取り付け部21aを有している。この第1取り付け部21aは、レールクリップ、ボルト、及びナットから成る締結具23によって、ガイドレール8a,8bの底部8a2等に締結してある。
【0021】
また図3〜5に示すように、取り付け金具21は、補強部材20が締結される第2取り付け部21bを有している。この第2取り付け部21bには、ボルトとナットから成る締結具24によって、補強部材20が締結される。また同図3〜5に示すように、取り付け金具21は、第1取り付け部21a及び第2取り付け部21bに連設される水平部21cを有している。
【0022】
この第1実施形態では、継ぎ目板10の厚さ方向に沿う前述した取り付け金具21の第1寸法L1が、水平部21cの寸法に、第1取り付け部21a、または第2取り付け部21bの厚さ寸法を加えた寸法から成っている。
【0023】
図3,5に示すように、補強部材20は、外側端部に取り付け金具21の第2取り付け部21bに締結される締結部を有している。
【0024】
図3〜5に示すように、例えば補強部材20は、上下方向に延設される第1L型鋼材20aと、この第1L型鋼材20aに所定間隔で平行に延設される第2L型鋼材20bとから成っている。
【0025】
第1L型鋼材20aのL字を形成する一方の片20a1、及び第2L型鋼材20bのL字を形成する一方の片20b1は、前述した取り付け金具21の第2取り付け部21bに締結される締結部を形成している。
【0026】
第1L型鋼材20aのL字を形成する他方の片20a2と、第2L型鋼材20bを形成する他方の片20a2とを互いに近づくように対向させて配置してある。
【0027】
このように構成した第1実施形態は、補強部材20の長さ寸法を、例えば前述したように、第2境界点Nによって規定された許容曲げモーメントを超える範囲に略相当する長さ寸法に設定してある。これにより第1実施形態は、図7に示すように、第1レールブラケット13と第2レールブラケット15の2点間に位置するガイドレール8部分の全領域における応力変化を、許容応力内に収めることができる。すなわち前述した2点間に位置するガイドレール8部分の所望の強度を確保することができる。
【0028】
また、この第1実施形態は、補強部材20の長さ寸法を、許容曲げモーメントを超える範囲に略相当する長さ寸法に設定してあり、曲げモーメントの範囲の全域に相当する長さ寸法とすることに比べて、短くすることができる。これにより第1実施形態は、補強部材20の重量を軽減させることができ、揚重装置を用いずに補強部材20をガイドレール8に取り付けることが可能になり、この補強部材20の取り付け作業の能率を向上させることができる。また、補強部材20の材料費を低減させることができ、補強部材20の設置費用を安価に抑えることができる。
【0029】
また、第1L型鋼材20aと第2L型鋼材20bから成る補強部材20は、外側端部に、取り付け金具21の第2取り付け部21bに締結される締結部を形成する一方の片20a1,20b1を有することから、これらの一方の片20a1,20b1を取り付け金具21の第2取り付け部21bに締結するボルト及びナットから成る締結具24を回転させる工具の操作空間を、第1L型鋼材20a及び第2L型鋼材20bそれぞれの外側箇所において確保することができる。これにより、取り付け金具21の第2取り付け部21bに補強部材20を取り付ける取り付け作業の能率向上に貢献する。
【0030】
図8〜10に示す本発明に係るガイドレール補強装置の第2実施形態は、ガイドレール8と昇降路壁11との間隔が狭い場合などに有効であり、第1実施形態における第1寸法L1よりも第1寸法L3を小さく設定した取り付け金具31と、横断面が、締結部を構成するつば部30aを有する帽子形状の補強部材30とを備えている。この補強部材30の長さ寸法は、前述した第1実施形態における補強部材20と同等に設定してある。
【0031】
また、この第2実施形態も第1実施形態と同様に、図9に示すように、取り付け金具31の第1取り付け部31aは、締結具23によって単位レール8a,8bの底部8a2等に取り付けられ、図8〜10に示すように、第2取り付け部31bには、締結具24によって補強部材30のつば部30aが取り付けられる。その他の構成は前述した第1実施形態と同等である。このように構成した第2実施形態も、前述した第1実施形態と同等の基本的な作用効果を得ることができる。
【0032】
なお本発明は、前述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることなく、様々な形態を取り得るものである。例えば、前述した第1実施形態では、補強部材20を第1L型鋼材20aと第2L型鋼材20bとによって構成し、第2実施形態では、補強部材30を横断面がつば部30aを有する帽子形状に構成したが、これらの補強部材20,30に代えて、剛性を有する長尺部材であれば、帯状の平板部材を補強部材として設けてもよく、また補強部材20,30及び前述した平板部材とは異なる形状の長尺部材を補強部材として設けてもよい。
【0033】
また、前述した第1,第2実施形態では、取り付け金具21,31のそれぞれを、側面から見てL字状を形成する部材を上下に重ね合わせ、溶接によって一体化してあるが、これらの取り付け金具21,31は1枚板を曲げ加工して形成したものであってもよい。
【0034】
また、前述した第1,第2実施形態では、取り付け金具21,31のそれぞれを、水平部21c,31cを挟んで、第1取り付け部21a,31a及び第2取り付け部21b,31bのうちの一方を上側に位置させ、他方を下側に位置させた形態にしてあるが、これとは異なり、第1取り付け部21a,31a及び第2取り付け部21b,31bの双方を、水平部21c,31cの上側に、または下側に配置した構成にしてもよい。このように構成した場合には、継ぎ目板10の厚さ寸法に沿う取り付け金具21,31の第1寸法は、水平部21c,31cの寸法と同等となる。
【0035】
また例えば、補強部材20,30の長さ寸法を、ガイドレール8の強度やたわみの関係上、図6に示す基準点Sが、第2境界点Nよりも少し離れた第1境界点M寄りの特定曲げモーメント範囲Yに対応する短いながらも比較的長い寸法に設定し、補強部材20,30をガイドレール8に取り付ける際に、上端部分あるいは下端部分が周辺の機材や部品に干渉する虞があるときなどには、許容曲げモーメントを超える範囲に相当する長さ寸法を確保しながら、干渉する虞のある上端部分、あるいは下端部分のみを切断してガイドレール8に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
2 乗かご(昇降体)
3 つり合い重り(昇降体)
8 ガイドレール
8a 単位レール
8a1 ガイド部
8a2 底部
8b 単位レール
10 継ぎ目板
13 第1レールブラケット
15 第2レールブラケット
20 補強部材
20a 第1L型鋼材
20a1 一方の片(締結部)
20a2 他方の片
20b 第2L型鋼材
20b1 一方の片(締結部)
20b2 他方の片
21 取り付け金具
21a 第1取り付け部
21b 第2取り付け部
21c 水平部
22 器具ブラケット
30 補強部材
30a つば部(締結部)
31 取り付け金具
31a 第1取り付け部
31b 第2取り付け部
31c 水平部
M 第1境界点
N 第2境界点
S 基準点
Y 特定曲げモーメント範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11