特許第6434872号(P6434872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434872
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20181126BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20181126BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H01L29/78 620
   H01L29/78 618Z
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 616V
   H01L29/78 616S
   H01L29/78 626A
   H01L27/092 A
   H01L27/088 331E
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-152626(P2015-152626)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-34085(P2017-34085A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 穣
(72)【発明者】
【氏名】森 伸二
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 究
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真澄
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−222957(JP,A)
【文献】 特許第4164360(JP,B2)
【文献】 特開平11−274502(JP,A)
【文献】 特開2012−151454(JP,A)
【文献】 特開2014−093319(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0100909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/8238
H01L 27/088
H01L 27/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、
第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた第3半導体層と、
前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に設けられたシード層と、
前記第3半導体層と対向する第1電極と、
を備え、
前記第1半導体層は、
第1導電型の不純物を含む第1層と、
前記第1層と前記シード層との間に設けられた第2層と、
を含み、
前記第1層における前記不純物の濃度は、前記第2層における前記不純物の濃度よりも高く、
前記第3半導体層における配向性は、前記第1層における配向性よりも高く、前記第2層における配向性よりも高い、半導体装置。
【請求項2】
前記第3半導体層中の粒界の密度は、前記第1半導体層中の粒界の密度よりも低い請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3半導体層中の結晶粒の大きさの平均は、前記第1半導体層中の結晶粒の大きさの平均よりも大きい請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3半導体層のうち第1結晶方位に配向した領域の密度は、前記第1半導体層のうち前記第1結晶方位に配向した領域の密度よりも高い請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3半導体層における前記配向性は、前記第2半導体層における配向性よりも高い請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電極は、第1端部と、前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう第1方向において前記第1端部と離間した第2端部と、を含み、
前記第1端部は、前記第1方向と交差する方向において、前記第3半導体層および前記第2層のいずれかと重なる請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1端部は、前記交差する方向において前記2層と重なる請求項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2半導体層は、
前記第1導電型の前記不純物を含む第3層と、
前記第3層と前記第3半導体層との間に設けられた第4層と、
を含み、
前記第3層における前記不純物の濃度は、前記第4層における前記不純物の濃度よりも高く、
前記第3半導体層における前記配向性は、前記第4層における配向性よりも高い請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1電極は、第1端部と、前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう第1方向において前記第1端部と離間した第2端部と、を含み、
前記第1端部は、前記第1方向と交差する方向において、前記第3半導体層および前記第2層のいずれかと重なり、
前記第2端部は、前記交差する方向において、前記第3半導体層および前記第4層のいずれかと重なる請求項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3半導体層のうち前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう第1方向が第1結晶方位に沿った領域の割合は、前記第3半導体層のうち前記第1方向が前記第1結晶方位とは異なる第2結晶方位に沿った領域の割合よりも高い請求項1〜のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1結晶方位は、<100>方向、<110>方向および<111>方向のいずれかである請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第3半導体層は、第1材料の結晶を含み、
前記第1材料は、Si、Ge、SiGe1−x(0<x<1)、InGa1−xAs(0≦x≦1)およびInGa1−xSb(0≦x≦1)のいずれかである請求項1〜1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第3半導体層は、前記第1材料の多結晶を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第3半導体層中の前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう第1方向に沿って延在する粒界は、前記第3半導体層中の前記第1方向と交差する方向に沿って延在する粒界よりも多い請求項1記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、前記第1材料の多結晶を含む請求項1〜1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項16】
第1面を有する基板をさらに備え、
前記第1半導体層は、前記第1面の上に設けられ、
前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう方向は、前記第1面に対して垂直である請求項1〜1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を主なチャネルの材料とする薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)などの半導体装置がある。例えば、チャネルには、多結晶半導体が用いられる。半導体装置において、キャリアの移動度を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−329871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、キャリアの移動度を向上させた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とシード層と第1電極とを含む半導体装置が提供される。前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられる。前記シード層は、前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に設けられる。前記第1電極は、前記第3半導体層と対向する。前記第1半導体層は、第1導電型の不純物を含む第1層と、前記第1層と前記シード層との間に設けられた第2層と、を含む。前記第1層における前記不純物の濃度は、前記第2層における前記不純物の濃度よりも高い。前記第3半導体層における配向性は、前記第1層における配向性よりも高く、前記第2層における配向性よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る別の半導体装置を例示する模式的断面図である。
図3】第1の実施形態に係るさらに別の半導体装置を例示する模式的断面図である。
図4図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図5図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図8】第1の実施形態に係るさらに別の半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9】第2の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図10図10(a)〜図10(d)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る半導体装置101は、第1半導体層10と、第2半導体層20と、第3半導体層30と、第1電極40と、を含む。半導体装置101は、さらに、第4半導体層34、絶縁膜43、絶縁層51及び絶縁層52を含む。半導体装置101は、例えば薄膜トランジスタである。
【0009】
なお、以下の説明において、第1半導体層10から第2半導体層20へ向かう第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な一つの方向をX軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0010】
第1半導体層10は、例えば、第1層11と第2層12とを含む。第2層12は、第1層11の上に積層されており、第1層11と第3半導体層30との間に設けられる。
【0011】
第1半導体層10は、第1導電型の不純物を含む。例えば、第1半導体層10は、第1導電型の不純物として、リン(P)または砒素(As)を含む。第1半導体層10は、第3半導体層30と電気的に接続されている。第1半導体層10は、例えばトランジスタのソース領域及びドレイン領域の一方である。
【0012】
第2層12における第1導電型の不純物の濃度は、第1層11における第1導電型の不純物の濃度よりも低い。例えば、第2層12は、導電性の不純物を実質的に含まない層(例えばノンドープ層)である。第1層11の不純物濃度は、例えば、1×1020cm−3以上1×1023cm−3以下である。第2層12の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上1×1020cm−3以下である。
【0013】
なお、この例では、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である。但し、実施形態においては、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型であってもよい。p型の不純物としては、例えば、ホウ素(B)やガリウム(Ga)を用いることができる。
【0014】
第1層11の厚さ(Z軸方向に沿った長さ)は、例えば、5ナノメートル(nm)以上1マイクロメートル(μm)以下である。第2層12の厚さ(Z軸方向に沿った長さ)は、例えば、1nm以上100nm以下である。
【0015】
第1半導体層10(第1層11及び第2層12)は、第1材料の結晶を含む。第1材料には、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、SiGe1−x(0<x<1)、ガリウムアンチモン(GaSb)、InGa1−xAs(0≦x≦1)及びInGa1−xSb(0≦x≦1)の少なくともいずれかを用いることができる。第1半導体層10(第1層11及び第2層12)は、第1材料の多結晶半導体層である。
【0016】
第1半導体層10の第1材料としてSiやGeを用いる場合には、n型の不純物としてPやAsを用いることができ、p型の不純物としてBやGaを用いることができる。第1半導体層10の第1材料として、III-V族化合物(InGaAs、GaAs、GaSb等)を用いる場合には、n型の不純物としてSiを用いることができ、p型の不純物として亜鉛(Zn)やベリリウム(Be)を用いることができる。
【0017】
第2半導体層20は、第1方向において第1半導体層10と離間して設けられる。
第2半導体層20は、第3層13と第4層14とを含む。第4層14は、第3層13と第3半導体層30との間に設けられる。
【0018】
第2半導体層20は、第1導電型の不純物を含む。第2半導体層20は、第3半導体層30と電気的に接続されている。第2半導体層20は、例えばトランジスタのソース領域及びドレイン領域の他方である。
【0019】
第4層14における第1導電型の不純物の濃度は、第3層13における第1導電型の不純物の濃度よりも低い。例えば、第4層14は、導電性の不純物を実質的に含まない層(例えばノンドープ層)である。第3層13の不純物濃度は、例えば、1×1020cm−3以上1×1023cm−3以下である。第4層14の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上1×1020cm−3以下である。
【0020】
第3層13の厚さ(Z軸方向に沿った長さ)は、例えば、5ナノメートル(nm)以上1μm以下である。第4層14の厚さ(Z軸方向に沿った長さ)は、例えば、1nm以上100nm以下である。
【0021】
第2半導体層20(第3層13及び第4層14)は、第1材料の結晶を含み、例えば、第1材料の多結晶半導体層である。
【0022】
第3半導体層30は、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられる。第3半導体層30は、例えばトランジスタのチャネル領域である。第3半導体層30は、第1材料の結晶を含み、例えば、第1材料の多結晶半導体層である。
【0023】
第3半導体層30における第1導電型の不純物濃度は、第1半導体層10における第1導電型の不純物濃度よりも低く、第2半導体層20における第1導電型の不純物濃度よりも低い。例えば、第3半導体層30には、導電性の不純物を実質的に含まない。または、第3半導体層30は、第2導電型の不純物を含んでもよい。これにより、トランジスタの閾値を調整することができる。第3半導体層30には、電気的特性の向上のために、フッ素(F)や水素(H)等の不純物を含んでもよい。第3半導体層30の厚さは、例えば、50nm以上10μm以下である。
【0024】
第4半導体層34は、第1半導体層10と第3半導体層30との間に設けられる。第4半導体層34は、例えば、第1材料を含む。第4半導体層34は、例えば、第4半導体層34の上に形成される第3半導体層30の結晶性を制御するシード層である。第4半導体層34の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下である。
【0025】
第1電極40は、第3半導体層30と対向する。第1電極40の少なくとも一部は、Z軸方向と交差する方向(例えばX軸方向)において、第3半導体層30と並ぶ。第1電極40の少なくとも一部は、Z軸方向と交差する方向において、第3半導体層30と重なる。第1電極40は、例えば、トランジスタのゲート電極である。ゲート長(第1電極40のZ軸方向に沿った長さ)は、例えば、50nm以上10μm以下である。
【0026】
第1電極40は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の少なくともいずれかを含む。第1電極40は、これらの材料の少なくともいずれかとSiとが反応してできるシリサイド金属を含んでもよい。第1電極40は、不純物を含むポリシリコン(Doped poly-Si)を含んでもよい。
【0027】
絶縁膜43の少なくとも一部は、第3半導体層30と第1電極40との間に設けられる。絶縁膜43は、例えば、トランジスタのゲート絶縁膜である。絶縁膜43には、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(La)、窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用いることができる。絶縁膜43には、これらの材料の積層膜または混合膜を用いてもよい。絶縁膜43の厚さ(X軸方向に沿った長さ)は、例えば、1nm以上100nm以下である。
【0028】
絶縁層51及び絶縁層52は、Z軸方向において第1電極40と並ぶ。第1電極40は、絶縁層51と絶縁層52との間に設けられる。例えば、絶縁層51は、第1電極40と第1半導体層10との間を絶縁する。絶縁層52は、第1電極40と第2半導体層20との間を絶縁する。なお、絶縁層51は、下部に配線層(配線層61等)が設けられた場合(図3を参照)には、第1電極40と配線層とを絶縁する。また、絶縁層52は、上部に配線層(配線層63等)が設けられた場合(図3を参照)には、第1電極40と配線層とを絶縁する。
絶縁層51には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンまたはポリシラザン(Polysilazane:PSZ)が用いられる。絶縁層52には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンまたはポリシラザンが用いられる。
【0029】
半導体装置101は、例えば、縦型のTFTである。第1〜第3半導体層10〜30は、基板50(図3を参照)の上に設けられ、トランジスタの電流が流れる方向(ソースとドレインとを結ぶチャネル方向)は、基板50の第1面50a(主面)に対して垂直な方向に略平行である。すなわち、第1方向(Z軸方向)は、基板の主面に対して垂直である。実施形態に係る半導体装置は、後述する横型のTFTでもよい。
【0030】
半導体装置101の構造についてさらに説明する。以下の説明においては、第1材料がSiである場合について説明する。すなわち、第1半導体層10、第2半導体層20及び第3半導体層30は、それぞれ、ポリシリコン層である。
【0031】
第3半導体層30における配向性は、第1半導体層10における配向性よりも高く、第2半導体層20における配向性よりも高い。この場合、例えば、第3半導体層30中の粒界B3の密度は、第1半導体層10中の粒界B1の密度よりも低く、第2半導体層20中の粒界B2の密度よりも低い。例えば、第3半導体層30中の結晶粒G3の大きさの平均は、第1半導体層10中の結晶粒G1の大きさの平均よりも大きく、第2半導体層20中の結晶粒G2の大きさの平均よりも大きい。
例えば、第3半導体層30は、特定の結晶配向性を有する。第1半導体層10及び第2半導体層20は、例えば、特定の結晶配向性を有さない。第1半導体層10及び第2半導体層20においては、例えば結晶がランダムに配向している。
【0032】
すなわち、第3半導体層30におけるSi結晶の特定の方位(第1結晶方位)の配向性は、第1半導体層10におけるSi結晶の当該特定の方位の配向性よりも高い。そして、第3半導体層30における第1結晶方位の配向性は、第2半導体層20における第1結晶方位の配向性よりも高い。つまり、第3半導体層30のうち第1結晶方位に配向した領域の密度は、第1半導体層10のうち第1結晶方位に配向した領域の密度よりも高く、第2半導体層20のうち第1結晶方位に配向した領域の密度よりも高い。
第1結晶方位は、例えば、<100>方向、<110>方向及び<111>方向のいずれかである。
【0033】
さらに、第3半導体層30の第1結晶方位の配向性は、第1層11の第1結晶方位の配向性及び第2層12の第1結晶方位の配向性のそれぞれよりも高い。また、第3半導体層30の第1結晶方位の配向性は、第3層13の第1結晶方位の配向性及び第4層14の第1結晶方位の配向性のそれぞれよりも高い。
【0034】
配向性の評価においては、例えば電子線回折法を用いることができる。例えば、半導体装置101の断面構造を取得し、チャネル方向(第1方向)の結晶方位を<100>、<110>及び<111>のいずれかに帰属させる。このとき、第3半導体層30においては、ある特定の1つの方位を向く領域(結晶粒)の割合が、他の2つの方位を向く領域の割合よりも有意に大きい。一方、第1半導体層10及び第2半導体層20においては、特定の結晶方位を向く領域のみが有意に大きな割合を有さない。
【0035】
換言すると、第3半導体層30のうち第1方向が第1結晶方位に沿った領域の割合は、第3半導体層30のうち第1方向が第1結晶方位とは異なる結晶方位(第2結晶方位)に沿った領域の割合よりも高い。一方、第1半導体層10のうち第1方向が第1結晶方位に沿った領域の割合は、第1半導体層10のうち第1方向が第2結晶方位に沿った領域の割合と実質的に同じである。また、第2半導体層20のうち第1方向が第1結晶方位に沿った領域の割合は、第2半導体層20のうち第1方向が第2結晶方位に沿った領域の割合と実質的に同じである。
【0036】
なお、ここで「割合」とは、観察した断面において、評価対象の半導体層の面積に対する、着目している結晶方位に配向した領域の面積の比率である。または、「割合」は、評価対象の半導体層の体積に対する、着目している結晶方位に配向した領域の体積の比率であってもよい。
【0037】
例えば、ゲート長が短い場合、第3半導体層30において、Z軸方向に沿って延在する粒界は、X軸方向またはY軸方向に沿って延在する粒界よりも多い。一方、第1及び第2半導体層中において、Z軸方向に沿って延在する粒界が生じる頻度は、X軸方向またはY軸方向に沿って延在する粒界が生じる頻度と実質的に等しい。
【0038】
図1に表したように、第1電極40は、第1端部E1と第2端部E2とを有する。第1端部及び第2端部E2は、第1方向において互いに離間した端部である。
第1端部E1は、第1方向と交差する方向(例えばX軸方向)において、第3半導体層30及び第2層12のいずれかと重なる。この例では、第1端部E1は、X軸方向において第2層12と重なっている。第1端部E1は、X軸方向において第1層11とは重ならない。
【0039】
第2端部E2は、第1方向と交差する方向において、第3半導体層30及び第4層14のいずれかと重なる。この例では、第2端部E2は、X軸方向において第4層14と重なっている。第2端部E2は、X軸方向において第3層13とは重ならない。
【0040】
ところで、チャネル材料にポリシリコンが用いられたトランジスタにおいて、チャネル中には、例えば、数多くの粒界が存在する。このため、チャネル材料にポリシリコンを用いたトランジスタにおいては、単結晶Siを用いたトランジスタと比べて、キャリアが粒界ポテンシャルの影響を受けやすい。これにより、キャリア移動度の低下、S値(サブスレッショルドスロープ)の低下及び閾値のシフトなどが生じやすい。
これに対して、チャネル中を垂直に粒界が横切らないような結晶粒の配向制御によって、キャリアの移動度の低下などを抑制することができる。前述したように、実施形態に係る半導体装置101においては、第3半導体層30における第1結晶方位の配向性は、第1半導体層10における第1結晶方位の配向性よりも高い。例えば、半導体装置101のチャネルにおいては、電流が流れる方向と平行となるように結晶配向が揃っている。これにより、キャリアがソースからドレインへ移動する際に、粒界を横切る確率が低下する。したがって、粒界ポテンシャルのキャリアへの影響が低減され、移動度を向上させることができる。閾値のシフトやS値の低下を抑制することができ、良好なサブスレッショルド特性を得ることができる。
【0041】
さらに、実施形態においては、前述したように、第1電極40の第1端部E1が不純物濃度の低い第2層12と重なり、第2端部E2が不純物濃度の低い第4層14と重なっている。第1電極40は、X軸方向において、不純物濃度の高い第1層11及び第3層13とは重ならない。これにより、GIDL(Gate Induced Drain Leakage)などによるリーク電流を低減することができる。また、第1電極40の端部が第2層12及び第4層14とオーバーラップすることにより、寄生抵抗の増大が抑制される。
【0042】
そして、第1半導体層10及び第2半導体層20においては結晶粒の配向性が低いため、ソース・ドレイン領域からの不純物拡散が抑制される。例えば、粒界に沿って不純物がチャネルへ熱拡散することが抑制される。これにより、さらにGIDLを抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、実施形態では、チャネルを形成するポリシリコン層の結晶粒は、特定方向の配向性を有する。このため、例えば、チャネルを垂直方向に横切る粒界が減少する。これにより、チャネル中に生じていた粒界ポテンシャルの影響が低減され、閾値増大や移動度低下などのトランジスタ特性の劣化を抑制できる。また、ソース・ドレイン領域近傍の結晶のみ配向性を持たせないことで、ソース・ドレイン間に生じるオフリークを低減することを可能とする。
【0044】
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る別の半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2(a)に表した半導体装置101aにおいては、第1電極40の第1端部E1は、X軸方向において、第2層12と第4半導体層34との境界と重なっている。第2端部E2は、X軸方向において第4層14と第3半導体層30との境界と重なっている。すなわち、第1電極40の端部は、結晶がランダムに配向した領域と特定の配向性を有する領域との境界と重なっている。
図2(b)に表した半導体装置101bにおいては、第1端部E1及び第2端部E2は、それぞれ、X軸方向において第3半導体層30と重なっている。
上記以外については、半導体装置101a及び101bには、図1に関して説明した半導体装置101と同様の説明を適用することができる。
【0045】
半導体装置101a及び101bにおいても、図1の半導体装置101と同様に、チャネルを形成する第3半導体層30の結晶粒は、特定方向の配向性を有する。これにより、チャネル中の粒界ポテンシャルの影響が低減され、閾値の増大やキャリアの移動度の低下などのトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0046】
さらに、第1半導体層10及び第2半導体層20における結晶の配向性が低いため、不純物がチャネル領域へ拡散しにくい。そして、第1電極40は、不純物濃度の高い第1層11及び第3層13と重ならないため、リーク電流を抑制することができる。半導体装置101a及び101bにおいては、第1電極40と第1及び第2半導体層とのオーバーラップ量が、半導体装置101に比べて小さいため、さらにリーク電流を抑制することができる。
【0047】
図3は、第1の実施形態に係るさらに別の半導体装置を例示する模式的断面図である。図3に表した半導体装置102は、複数のトランジスタ(半導体装置101c)を含む。 さらに、半導体装置102は、基板50と、絶縁層60と、配線層61と、コンタクト層62と、保護膜53と、コンタクト層64と、配線層63と、を含む。
【0048】
複数の半導体装置101cは、X−Y平面においてアレイ状に並べられて設けられる。例えば、複数の半導体装置101cの上に図示しないデバイスが積層される。積層されるデバイスは、例えばメモリセルアレイであり、この場合、複数の半導体装置101cは、メモリのドライバトランジスタとして機能する。
なお、メモリセルアレイは、複数の半導体装置101cの下側に配置されてもよい。例えば、基板50と絶縁膜60との間にメモリセルアレイが配置されてもよい。また、基板50には、CMOS等の回路が形成されていてもよい。
【0049】
図3に表した例では、1つの第3半導体層30は、2つの第1電極40の間に設けられている。すなわち、このトランジスタは、ダブルゲート構造を有する。半導体装置101cにおいては、絶縁膜43の一部は、第1電極40と絶縁層51との間、及び、第2半導体層20と絶縁層52との間、にも設けられている。
これ以外については、半導体装置101cには、図1に関して説明した半導体装置101と同様の説明を適用することができる。例えば、複数の第3半導体層30における第1結晶方位の配向性は、複数の第1半導体層10における第1結晶方位の配向性よりも高い。また、複数の第3半導体層30のうちチャネル方向が第1結晶方位に沿った領域の割合は、複数の第3半導体層30のうちチャネル方向が第1結晶方位とは異なる方位に沿った領域の割合よりも高い。
【0050】
なお、半導体装置101cの替わりに、前述した半導体装置101aまたは101b等を用いてもよい。また、複数のトランジスタ(半導体装置101c)は、シングルゲート構造であってもよい。
【0051】
基板50は、例えば、支持基板であり、Si基板を用いることができる。
絶縁層60は、基板50の上に設けられ、複数の半導体装置101cと基板50との間に配置されている。絶縁層60は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)または酸化アルミニウム(Al)を含む。
【0052】
絶縁層60は、例えば、基板50を酸化することで得られる熱酸化膜である。または、絶縁層60は、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等によって堆積された絶縁膜である。絶縁層60には、これらの熱酸化膜及び絶縁膜を組み合わせた積層膜を用いてもよい。絶縁層60によって、基板50と配線層61との絶縁性が保たれる。
【0053】
配線層61及びコンタクト層62は、複数の半導体装置101cと絶縁層60との間に設けられる。配線層61及びコンタクト層62は、第1半導体層10と電気的に接続されている。
【0054】
配線層61及びコンタクト層62には、500℃以上の温度に対する耐熱性を有する金属材料を用いることが好ましい。例えば、配線層61には、WやTiを含む金属材料を用いることができる。コンタクト層62には、W、Ti、TiN、Ni、Co、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の少なくともいずれかを用いることができる。
【0055】
保護膜53は、コンタクト層62と絶縁層51との間、及び、第1半導体層10と絶縁層51との間に設けられる。保護膜53は、例えばSiNを含む。
【0056】
複数の半導体装置101cは、配線層63と配線層61との間に設けられる。コンタクト層64は、配線層63と第2半導体層20との間に設けられる。配線層63及びコンタクト層64は、第2半導体層20と電気的に接続されている。
【0057】
コンタクト層64は、ポリシリコン層(第2半導体層20)とコンタクトする。このため、コンタクト層64には、コンタクト抵抗の低い金属材料として、コンタクト層62と同様に、W、Ti、TiN、Ni、Co、Pt、Pd等を含む金属材料を用いることができる。
【0058】
配線層63に用いられる材料は、例えば、半導体装置101cの上に積層されるデバイスの熱負荷によって決められる。500℃以上の熱負荷が掛かる場合には、配線層63には、配線層61と同様に、WやTiを含む金属材料を用いることができる。熱負荷が500℃未満の場合には、配線層63には、AlやCu等の耐熱性が低いものの低抵抗な金属材料を用いることができる。
【0059】
半導体装置102においても、ポリシリコン層(第1半導体層10及び第2半導体層20)と第1電極40とがオーバーラップする領域において、ポリシリコンは、特定の配向性を有していない。さらに、ゲート直下のチャネル領域(第3半導体層30)において、ポリシリコンは配向性を有する。これにより、キャリアの高移動度と、低リークと、を両立したTFTを実現することが可能となる。
【0060】
半導体装置102の配向性の評価においても、例えば電子線回折法を用いることができる。一例として示すと、まず、複数の(縦型または横型)TFTのチャネル中央部を含む断面、複数のTFTのチャネル端部を含む断面、または、複数のTFTのソース(またはドレイン)領域を含む断面、を取得する。各断面は、例えば、X−Y平面に対して平行である。そして、各断面(各観測点)において、ポリシリコンの結晶の配向方向を電子線回折法によって確認する。典型的な結晶の配向方向は、例えば、<100>方向、<110>方向及び<111>方向である。このとき、<100>方向±10°以内に配向している結晶粒、<110>方向±10°以内に配向している結晶粒、及び、<111>方向±10°以内に配向している結晶粒、をそれぞれ抽出する。そして、それぞれの方位について、当該方位に配向している結晶粒の割合を見積もる。ここで、「割合」は、観察した断面において、複数の半導体層全体の面積に対する、着目した方位に配向している結晶粒の面積の割合である。または、「割合」は、複数の半導体層全体の体積に対する、着目した方位に配向している結晶粒の体積の割合であってもよい。
【0061】
この割合のうち、ある特定の方位を向く結晶の割合が、他の方位を向く結晶の割合よりも有意に高い場合、当該断面(当該観測点)においてポリシリコン層が当該特定の方位に配向していると定義する。例えば、<111>方向を向く結晶の割合が、他の方位を向く結晶の割合よりも有意に高い場合(例えば、<111>方向を向く結晶の割合が全体の50%以上を占める場合等)、当該断面においてポリシリコン層が<111>配向している、とすることができる。
【0062】
例えば、第1〜第3半導体層の幅が狭い場合においても、上記のようにして配向性を評価することができる。すなわち、セルサイズが微細な場合においても、複数のトランジスタに亘って統計をとることで配向性を評価することができる。
【0063】
なお、本構造の観測に用いられる手法は、上記のみに限定されるものではない。また結晶の配向方向は、上述した3方位のみに限られるものではない。
【0064】
次に半導体装置102の製造方法について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【0065】
図4(a)に表したように、基板50の上に、絶縁層60、配線層61及びコンタクト層62をこの順に積層する。前述したように、絶縁層60の形成には、基板50の酸化、または、スパッタ装置やCVD装置等による堆積、を用いることができる。
【0066】
コンタクト層62の上に、第1半導体層10(第1層11及び第2層12)として多結晶半導体層を形成する。第1半導体層10の形成においては、結晶粒の結晶方位に配向性が生じないような条件で多結晶半導体層を形成する。例えば、LPCVD装置等を用いて、コンタクト層62の上に直接ポリシリコン層を形成することで、多結晶半導体層を形成することができる。または、500℃以上の温度にてSiHガスを用いてCVD装置等でアモルファスシリコン層を形成した後、アモルファスシリコン層を結晶化させることで多結晶半導体層を形成してもよい。ポリシリコン層を形成した後にSi等のイオン注入によってポリシリコン層の非晶質化を行ってから、再結晶化を行ってもよい。
【0067】
第1層11が含有する第1導電型の不純物の導入には、イオン注入が用いられる。または、CVD装置内におけるin−situプロセスによって、第1層11の形成時に不純物を導入してもよい。第1層11のシート抵抗の低減、及び、チャネルや配線層とのコンタクト抵抗の低減のため、第1層11における第1導電型の不純物濃度は、1×1020cm−3以上であることが好ましい。前述したように、第2層12には、例えば、導電性を付与する不純物を導入しない。
【0068】
導電性を付与する不純物以外に、ポリシリコンの電気的特性の向上のためのFやH、歪導入のための炭素(C)やGe、配線層とのシリサイド化抑制のための窒素(N)などを第1半導体層10に導入してもよい。
【0069】
図4(b)に表したように、第1半導体層10の上に第4半導体層34となるシード層34fを形成する。シード層34fは、非晶質であるアモルファスシリコン層を低温で形成することで得られる。例えば、シード層34fは、CVD装置にてSiガスを用いて450℃未満の低温で形成される。ここで形成される層の厚さは、例えば5nm以下である。
【0070】
シード層34fの上に、第3半導体層30(チャネル)となるアモルファスシリコン層30fを形成する。アモルファスシリコン層30fは、第4半導体層34に比べて高い温度で形成されることが好ましい。例えば、CVD装置にてSiHガスを用いて500℃以上の温度で、アモルファスシリコン層30fを形成することができる。
【0071】
その後、チャネルを結晶化させるため、650℃以下の熱処理を加える。これにより、アモルファスシリコン層30f及びシード層34fをポリシリコン層へと結晶化させて、第3半導体層30及び第4半導体層34を形成する。
【0072】
Siガスを用いて低温で形成されたシード層34fが存在することで、シード層34fからの核発生が減少するとともに歪みが増加する。これにより、例えば、基板垂直方向に<111>配向したポリシリコン層(第3半導体層30)が得られる。このため、チャネル方向に対して交差する方向(例えば垂直な方向)にチャネルを横切る結晶粒界が減少する。
【0073】
その後、図4(c)に表したように、第3半導体層30の上に、導電性を付与する不純物を含まない第4層14を形成する。さらに、第4層14の上に、第1導電型の不純物を含む第3層13を形成して、第2半導体層20を形成する。
【0074】
第2半導体層20は、第1半導体層10と同様に、ポリシリコン中の結晶粒に配向性が生じないように形成される。このためには、ポリシリコンをLPCVD法によって直接、第3半導体層30の上に堆積する。または、ポリシリコン層を形成した後にSiやGe等のイオン注入によってポリシリコン層の非晶質化を行ってから、再結晶化を行ってもよい。
【0075】
図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
これらの図は、図4(c)に続く、半導体装置102の製造工程を例示している。図5(a)に表したように、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)プロセスにて、第1〜第4半導体層をエッチングする。これにより、複数の柱状の縦型FET構造80を形成する。
【0076】
図5(b)に表したように、第1〜第3半導体層及びコンタクト層62を覆うように保護膜53としてSiN膜を形成する。保護膜53の形成には、例えば、原子層堆積(Atomic Layer deposition:ALD)プロセスを用いることができる。
【0077】
その後、保護膜53の上にgap−fill膜としてALD−SiOまたはポリシラザンを堆積する。そして、RIEプロセス等によって、gap−fill膜をエッチバックする。これにより、第1半導体層10同士の間に埋め込まれた絶縁層51が形成される。
【0078】
その後、図5(c)に表したように、第2層12の一部が露出するように、ウェット処理等によって、保護膜53をエッチバックする。このエッチバックプロセスによって、第1電極40とソース領域(第1半導体層10)とのオーバーラップ量が決まる。このため、図3に示した半導体装置101cの場合には、第2層12の一部のみが露出するように、エッチングが行われる。なお、エッチング量を調整することで、図2(a)及び図2(b)に示したような第1電極40を形成することも可能である。
【0079】
図6(a)及び図6(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
これらの図は、図5(c)に続く、半導体装置102の製造工程を例示している。図6(a)に表したように、絶縁膜43を第1〜第3半導体層及び絶縁層51の上に、ALDプロセスまたはCVDプロセスによって形成する。
【0080】
その後、絶縁膜43の上に、第1電極40となる導電層をALDまたはCVDによって堆積する。この導電層をRIEプロセス等によってエッチバックすることで、第1電極40が形成される。このとき、第4層14の一部のみが第1電極40とX軸方向においてオーバーラップするようにエッチングが行われる。これにより、前述したように、GIDL等のリーク電流を抑制することができる。
【0081】
その後、第1電極40及び絶縁膜43の上に、ALDプロセスやCVDプロセスによって、絶縁層52を形成する。図6(b)に表したように、絶縁層52は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)プロセスにて平坦化される。このとき、第2半導体層20上の絶縁膜43の一部も除去される。第2半導体層20上の絶縁膜43の一部は、ウェット処理等によって除去されても良い。
【0082】
その後、第2半導体層20上にコンタクト層64及び配線層63を堆積する。これにより、図3に表した半導体装置102が形成される。
【0083】
なお、図5(a)においては、第1半導体層10の下部に設けられた配線層61及びコンタクト層62が共通化されている。但し、実施形態においては、図7のように、配線層61及びコンタクト層62が複数の配線に分断されていてもよい。複数の第1半導体層10のそれぞれは、互いに異なる配線に接続されている。
【0084】
配線層63の形成後には、さらに、配線層63上にデバイスを形成すればよい。例えば、配線層63の上に再度、多結晶半導体TFTを形成することも可能である。3次元積層メモリとして、金属と酸化物とを用いたReRAM等を積層してもよい。または、配線層63上に層間絶縁膜を形成した後に、基板貼り合わせ技術を用いて、バルクSi−CMOSやIII−V族化合物半導体のチップを貼り合わせて新たな回路を実現することも可能である。
【0085】
以上説明した半導体装置102においては、トランジスタ(半導体装置101c)は、反転型の電界効果トランジスタである。但し、実施形態において、トランジスタは、蓄積型の電界効果トランジスタであってもよい。
【0086】
蓄積型トランジスタの形成方法は、シード層34fを形成するまでは、上述の方法と同様である。蓄積型トランジスタの形成においては、チャネルとなるアモルファスシリコン層30fを形成する際、第1層11に含まれる不純物と同じ導電型の不純物をアモルファスシリコン層30fに導入する。すなわち、第1層11にPやAsが導入されていた場合、アモルファスシリコン層30fにもPやAsを導入する。
例えば、アモルファスシリコン層30f中の不純物濃度は、1×1018cm−3以上である。ここで、チャネル中の不純物濃度は、ソース・ドレイン領域と同程度(例えば1×1020cm−3以上)でもよいが、チャネル厚(チャネル長)によってはカットオフ特性が劣化する。このため、チャネル幅が10nm以下でない場合は、濃度を低めに設定することが好ましい。蓄積型のトランジスタにおいても、チャネル中の欠陥を終端するためにFやH等の不純物を導入してもよい。この後、結晶化アニールとして650℃以下の熱処理を行うことで、シード層34fとアモルファスシリコン層30fとを結晶化する。これにより、第3半導体層30及び第4半導体層34としてポリシリコン層を形成する。
【0087】
蓄積型トランジスタにおいては、反転型トランジスタとは異なり、チャネルとソースの導電型が同じである。このため、蓄積型トランジスタにおいては、反転型トランジスタに比べて、チャネルへの不純物拡散による閾値変調が低減される。したがって、蓄積型トランジスタは、閾値の調整において有効である。一方で、先述したように、チャネル中の不純物濃度にもよるが、蓄積型トランジスタのチャネル厚が10nm程度以下の薄膜でない場合には、サブスレッショルド特性が劣化してしまうことがある。
結晶化により第3半導体層30を形成した後には、ドレイン領域を形成し、ポリシリコン層をピラー形状に加工する。以降の工程は、反転型トランジスタの形成と同様であるため省略する。
【0088】
図8は、第1の実施形態に係るさらに別の半導体装置を例示する模式的断面図である。 実施形態に係る半導体装置は、図3に表した半導体装置102の例に限られず、例えば、図8に表した半導体装置104のようであってもよい。
【0089】
半導体装置104は、図3に関して説明した半導体装置102と同様に、複数のトランジスタ(半導体装置101d)、基板50、絶縁層60、配線層61、コンタクト層62、保護層53、コンタクト層64及び配線層63を含む。
【0090】
図8の例では、複数の第3半導体層30のうち互いに隣合う第3半導体層30同士の間に、2つの第1電極40が設けられる。絶縁層52の一部は、上記の2つの第1電極40同士の間にも設けられる。これ以外については、半導体装置104には、図3に関して説明した半導体装置102と同様の説明を適用することができる。
【0091】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9に示した半導体装置103においても、第1半導体層10、第2半導体層20、第3半導体層30、第4半導体層34、第1電極40、絶縁膜43、が設けられる。これらについては、図1の半導体装置101における説明と、同様の説明を適用することができる。半導体装置103は、さらに、基板70、絶縁層71、絶縁層72、絶縁層73、絶縁層75及び第5半導体層35を含む。
【0092】
基板70は、例えば、支持基板である。支持基板には、Si基板を用いることができる。図9に表したように基板70は、第1面70a(主面)を有する。
【0093】
本実施形態に係る半導体装置103は、例えば、横型のトランジスタである。すなわち、第1〜第3半導体層等は、第1面70aの上に設けられ、ソースとドレインとを結ぶチャネル方向は、第1面70aに対して平行である。
【0094】
絶縁層71は、基板70の第1面70a上に設けられる。絶縁層71の材料には、例えば、SiN、AlまたはSiO等が用いられる。
【0095】
絶縁層72及び絶縁層73は、絶縁層71の一部71aと別の一部71bとの間において、絶縁層71(71c)の上に設けられる。絶縁層72及び絶縁層73は、例えば、AlまたはSiO等を含む。
【0096】
第1半導体層10は、絶縁層72と絶縁層73との間に位置し、第3半導体層30は、第1半導体層10と絶縁層73との間に位置し、第2半導体層20は、第3半導体層30と絶縁層73との間に位置する。
【0097】
第5半導体層35は、第2半導体層20と第3半導体層30との間に設けられる。なお、第5半導体層35の材料等は、第4半導体層34と同様である。
【0098】
絶縁層75は、例えば、第1電極40の側面の一部を覆うように設けられる。絶縁層75は、例えば、ゲート電極の側壁である。絶縁層75の材料として、SiOやSiNを用いることができる。
【0099】
次に半導体装置103の製造方法について説明する。
図10(a)〜図10(d)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図10(a)に表したように、基板70の上に絶縁層71を形成する。絶縁層71の形成においては、まず基板70上に絶縁膜を形成し、リソグラフィ及びRIEプロセスによって、この絶縁膜をパターニングする。これにより、絶縁層71には凹部71eが形成される。多結晶半導体層(第1〜第3半導体層)を含むTFT構造は、この凹部71eに埋め込まれる。
【0100】
多結晶半導体層としてポリシリコンを用いる場合には、絶縁層71の材料として、絶縁層71上にアモルファスシリコン膜を形成することが困難となる材料が用いられる。例えば、SiNやAlを用いることができる。一方、多結晶半導体層としてIII−V族化合物を用いる場合には、絶縁層71の材料には、SiOやSiN等が用いられる。
【0101】
その後、図10(b)に表したように、例えばALDプロセス等によって、絶縁層71上に絶縁膜を形成した後、RIE等によって凹部71eの側面のみに絶縁膜を形成する。これにより、絶縁層72及び絶縁層73が形成される。
【0102】
多結晶半導体層にInGaAsやGaSb等のIII−V族化合物半導体が用いられる場合には、絶縁層72及び絶縁層73としてAl膜等を用いることができる。多結晶半導体層にSiやGe等のIV族の材料が用いられる場合には、絶縁層72及び絶縁層73としてSiO膜等を用いることができる。
【0103】
なお、以下の例では、多結晶半導体層の材料としてポリシリコンを用い、絶縁層72及び絶縁層73の材料としてSiOを用いた場合について述べる。但し、実施形態における多結晶半導体層の材料は、上記に限定されない。例えば、多結晶半導体層の材料として、Si、Ge、SiGe1−x(0<x<1)、GaSb、InAsまたはInGa1−xAs(0<x<1)を用いてもよい。
【0104】
その後、図10(c)に表したように、第1半導体層10及び第2半導体層20を形成する。第1半導体層10及び第2半導体層20は、第1の実施形態と同様に、結晶粒が特定の配向性を有さないように形成される。そのためには、例えば、LPCVD等によって、絶縁層71上に直接ポリシリコン層を形成する。または、500℃以上の温度においてSiHガスを用いてアモルファスシリコン層を形成した後、600℃以上の熱処理によって結晶化を行う。このアモルファスシリコン層の形成に用いられる条件においては、絶縁層72、73上にアモルファスシリコンが形成され、絶縁層71上にはアモルファスシリコンが形成されにくい。
【0105】
その後、第4半導体層34及び第5半導体層35となるアモルファスシリコン層(シード層)を形成する。例えば、CVD装置によってSiガスを用いて450℃未満の低温において、シード層を形成することができる。シード層の厚さ(チャネル方向に沿った長さ)は、例えば5nm以下である。シード層を形成することによって、第3半導体層30の結晶性を制御することができる。
【0106】
シード層を形成した後に、第3半導体層30となるアモルファスシリコン層をさらに形成する。例えば、このアモルファスシリコン層は、CVD装置によって、SiHガスを用いて500℃以上の温度において形成される。形成されたアモルファスシリコン層には、閾値調整のために導電性を付与する不純物を導入することができる。例えば、pMOSFETを形成する場合には、不純物としてPやAsが用いられ、nMOSFETを形成する場合には、不純物としてBやBFを用いることができる。電気的特性の向上のために、FやHが導入されてもよい。
【0107】
その後、600℃以上の熱処理を行う。これにより、アモルファスシリコンをポリシリコンへと結晶化させる。結晶化後においては、第3半導体層30、第4半導体層34及び第5半導体層35のみが第1面70aと平行な方向への結晶粒の配向性を持つ。第1半導体層10及び第2半導体層20においては、結晶粒の配向性は低い(例えば配向性はない)。
【0108】
凹部71eよりも上部へ突出したSiを除去するためCMPプロセスによって平坦化する。これにより、中央部のポリシリコン層のみが結晶配向性を有する平坦なポリシリコン層を得ることができる。なお、チャネル中への不純物導入は、CMPによる平坦化を行った後に行われてもよく、さらに再結晶化アニールが行われてもよい。
【0109】
チャネルであるポリシリコン層を形成した後の製造工程は、通常のTFT形成プロセスフローと同様である。
図10(d)に表したように、例えば、少なくとも第3半導体層30の上に、絶縁膜43及び第1電極40を積層して、ゲートスタック構造を形成する。ゲートスタック構造の形成には、リソグラフィ及びRIEプロセスを用いることができる。
【0110】
ゲートスタック構造を形成した後に、絶縁層75となるSiO膜等を、第1電極40の側面及び上面を覆うように積層する。その後、RIEプロセスによって側壁として絶縁層75を形成する。
【0111】
その後、ソース・ドレイン領域(第1半導体層10の一部及び第2半導体層20の一部)に、不純物のイオン注入を行う。nMOSFETを形成する場合には、不純物としてPやAsを注入する。pMOSFETを形成する場合には、不純物としてBやBFを注入する。さらに、歪みを導入するためにnMOSFETの場合には、不純物としてCを導入してもよく、pMOSFETの場合にはGeを導入してもよい。イオン注入の後に、活性化アニールを行う。その後、Ni等の金属材料を用いて、セルフアラインプロセスによって、ソース・ドレイン領域に、シリサイド層を形成する。そして、シリサイド層と電気的に接続された配線層を適宜形成する。
【0112】
以上説明したようにして、図9に表した半導体装置103を形成することができる。
横型のTFTである半導体装置103においても、縦型のTFTである半導体装置101と同様に、チャネル中のみ結晶粒の配向性が高い。このため、閾値のシフトやキャリアの移動度低下などのトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
横型のTFTにおいては、側壁の形成後にソース・ドレイン領域の不純物注入が行われる。このため、チャネル方向に対して垂直な方向において、第1電極40は、不純物濃度の高いソース・ドレイン領域と重ならない。これにより、GIDLを抑制することができ、リーク電流を低減することができる。さらに、第1の実施形態と同様に、第1電極の端部の直下には、配向性の低い第1半導体層10及び第2半導体層20が位置する。このため、ソース・ドレイン領域からチャネルへの不純物の拡散が抑制される。したがって、この点からもGIDLが抑制され、リーク電流を低減することができる。
【0113】
実施形態によれば、キャリアの移動度を向上させた半導体装置が提供できる。
【0114】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。「電気的に接続」には、直接接触して接続される場合の他に、他の導電性部材などを介して接続される場合も含む。
【0115】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層及び第1電極などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0116】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0117】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
10…第1半導体層、 11…第1層、 12…第2層、 13…第3層、 14…第4層、 20…第2半導体層、 30…第3半導体層、 30f…アモルファスシリコン層、 34…第4半導体層、 34f…シード層、 35…第5半導体層、 40…第1電極、 43…絶縁膜、 50…基板、 50a…第1面、 51、52…絶縁層、 53…保護膜、 60…絶縁層、 61…配線層、 62…コンタクト層、 63…配線層、 64…コンタクト層、 70…基板、 70a…第1面、 71…絶縁層、 71a、71b…一部、 71e…凹部、 72、73、75…絶縁層、 80…FET構造、 101、101a、101b、101c、102、103…半導体装置、 B1、B2、B3…粒界、 E1…第1端部、 E2…第2端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10