特許第6435076号(P6435076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435076
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ウェアラブルスピーカシステム
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20181126BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20181126BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20181126BHJP
   H04R 5/02 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H04R1/00 318Z
   H04R1/02 101B
   H04R1/28 310E
   H04R5/02 Z
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-128296(P2018-128296)
(22)【出願日】2018年7月5日
(62)【分割の表示】特願2017-43602(P2017-43602)の分割
【原出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-152919(P2018-152919A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年7月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160783
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 英徳
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−510133(JP,A)
【文献】 特開昭53−100220(JP,A)
【文献】 特開平5−260144(JP,A)
【文献】 特開平6−178384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/02
H04R 1/28
H04R 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴者の首に掛けられる首掛け状態にて使用可能なウェアラブルスピーカシステムであって、
前記首掛け状態にて、前記首の後方および両側方に位置するエンクロージャと、
前記首掛け状態にて、前記聴者の上胸の部位と前記エンクロージャとの間に位置する緩衝部材と、を備えることを特徴とする、ウェアラブルスピーカシステム。
【請求項2】
前記エンクロージャの第1端部領域に配置された第1スピーカユニットと、
前記エンクロージャの第2端部領域に配置された第2スピーカユニットと、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項3】
外部に開口し、前記第1スピーカユニットの内部の空洞と外部とを連通する第1開口部と、
外部に開口し、前記第2スピーカユニットの内部の空洞と外部とを連通する第2開口部と、を備えることを特徴とする、請求項2に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項4】
一端が前記第1開口部に接続し、他端が前記第1スピーカユニットの前記空洞側に開口する第1バスレフダクトと、
一端が前記第2開口部に接続し、他端が前記第2スピーカユニットの前記空洞側に開口する第2バスレフダクトと、を備えることを特徴とする、請求項3に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項5】
外部に開口し、前記第2スピーカユニットの内部の空洞と外部とを連通する第1開口部と、
外部に開口し、前記第1スピーカユニットの内部の空洞と外部とを連通する第2開口部と、を備えることを特徴とする、請求項2に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項6】
一端が前記第1開口部に接続し、他端が前記第2スピーカユニットの前記空洞側に開口する第1バスレフダクトと、
一端が前記第2開口部に接続し、他端が前記第1スピーカユニットの前記空洞側に開口する第2バスレフダクトと、を備えることを特徴とする、請求項5に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項7】
前記第1および第2バスレフダクトは、前記エンクロージャの中央部で交差していることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項8】
前記首掛け状態において、前記第1開口部および前記第2開口部のそれぞれが、前記聴者の耳の下方に位置することを特徴とする、請求項3から請求項7のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項9】
前記第1および第2スピーカユニットの内部の空洞は、前記エンクロージャ内の空間に接続され、
前記エンクロージャは、前記エンクロージャの前記第1端部領域および前記第2端部領域の間において、前記エンクロージャ内の空間を複数の空間に分離する隔壁を備えることを特徴とする、請求項2から請求項8のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項10】
前記首掛け状態において、前記第1および第2スピーカユニットそれぞれが前記上胸に位置することを特徴とする、請求項2から請求項9のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項11】
前記第1および第2スピーカユニットは、前記首掛け状態にて前記聴者の耳側に向けて配置されるスピーカを備えることを特徴とする、請求項2から請求項10のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項12】
前記第1および第2スピーカユニットは、前記エンクロージャにおける前記緩衝部材が配置された側とは反対側に開口部を有するスピーカを備えることを特徴とする、請求項2から請求項11のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項13】
前記エンクロージャの第1端部領域および第2端部領域に前記緩衝部材を備えたことを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項14】
前記エンクロージャは、U字形であることを特徴とする、請求項1から請求項13に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項15】
U字形のエンクロージャと、
前記エンクロージャの第1端部領域および第2端部領域に設けられた緩衝部材と、を備えることを特徴とする、ウェアラブルスピーカシステム。
【請求項16】
一方向に延びる第1延在部、前記一方向に延びる第2延在部、および前記第1延在部と前記第2延在部との前記一方向の一端側を接続する接続部を備えるエンクロージャと、
前記第1延在部における前記一方向の他端側の第1端部領域と、前記第2延在部における前記一方向の他端側の第2端部領域と、に設けられた緩衝部材と、を備えることを特徴とする、ウェアラブルスピーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルスピーカシステムに関し、詳しくは、聴者が耳以外の部分に装着して使用するウェアラブルスピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を出力するスピーカシステムとして、例えばテレビジョン受信機などに内蔵されているものがある。しかし、内蔵されているスピーカシステムのスピーカは、大きな口径を有さず大音量が得られず、また、低音の再生が十分に行えず臨場感が不足する場合がある。臨場感を得るためには、大口径スピーカを有するスピーカシステムやヘッドフォンが使用される場合が多い。
【0003】
大口径スピーカを有するスピーカシステムを用いる場合には、ある程度の空間の広さが必要であり、このため、移動しながら音楽などを楽しむということには向いていない。ヘッドフォンを用いる場合には、移動しながら音楽などを楽しむことはできるが、ヘッドフォンを用いる聴者は、周りの音が聞こえなくなる問題がある。また、ヘッドフォンの場合は、音像が聴者の頭内に定位するために長時間の使用により疲労感を感じる問題もある。
【0004】
以上の問題を解消するため、特許文献1−4には、聴者の体に装着し、聴者の耳を塞がないウェアラブルスピーカシステムが開示されている。
【0005】
特許文献1には、首掛け式のウェアラブルスピーカ装置が開示されており、スピーカが聴者の顎の下に位置するとともに耳の方向を向くようになっている。特許文献2および3には、首掛け部の両側にスピーカが設けられたウェアラブルスピーカ装置が開示されており、右肩には右耳用のスピーカが位置し、左肩には左耳用のスピーカが位置している。
【0006】
特許文献4には、環状の首掛け式のウェアラブルスピーカ装置が開示されており、スピーカに加えてパッシブラジエータまたはバスレフポートを備え、特許文献1−3と異なり、低音の再生が可能であり、聴者に臨場感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−201088号公報
【特許文献2】特開2008−263374号公報
【特許文献3】特表平8−511151号公報
【特許文献4】国際公開第2016/039245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように特許文献1−3に記載のウェアラブルスピーカシステムにおいては、低音の再生に関する機構が備えられていない。また、特許文献4に開示されているウェアラブルスピーカ装置では、スピーカとパッシブラジエータおよびバスレフポートとが離れており、低音の再生が十分に行なえないことがあり、臨場感が不足する場合がある。
【0009】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、低音の再生によってより高い臨場感が得られるウェアラブルスピーカシステムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段に係るウェアラブルスピーカシステムは、U字形のエンクロージャを備えるウェアラブルスピーカシステムであって、前記エンクロージャの第1端部領域には、第1スピーカユニットと、第1バスレフダクトの端部とが配置され、前記エンクロージャの第2端部領域には、第2スピーカユニットと、第2バスレフダクトの端部とが配置され、前記第1および第2スピーカユニットそれぞれは、スピーカと該スピーカの反対向きのパッシブラジエータとを有し、前記第1および第2スピーカユニットそれぞれが有する前記スピーカと前記パッシブラジエータとの間の空間は、前記エンクロージャ内の空間に接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の技術手段は、本発明の第1の技術手段において、前記第1および第2バスレフダクトの本体部は、前記エンクロージャの中央部で交差していることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の技術手段は、本発明の第1または第2の技術手段において、前記エンクロージャの前記第1端部領域および前記第2端部領域が相互に連通していることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の技術手段は、本発明の第1または第2の技術手段において、前記エンクロージャの前記第1端部領域および前記第2端部領域の間を複数の空間に分離する隔壁を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の技術手段は、本発明の第1から第4のいずれかの技術手段において、前記エンクロージャを聴者の首に掛けた場合、前記第1バスレフダクトの端部および前記第2バスレフダクトの端部それぞれが、前記聴者の耳の下方に位置することを特徴とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の技術手段は、本発明の第1から第5のいずれかの技術手段において、前記エンクロージャを聴者の首に掛けた場合、前記スピーカユニットが聴者の上胸に位置することを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の技術手段は、本発明の第1から第6のいずれかの技術手段において、前記エンクロージャの前記U字形の内側に第1の緩衝材を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の技術手段は、本発明の第5から第7のいずれかの技術手段において、前記エンクロージャの前記第1端部領域および前記第2端部領域と前記聴者との間に第2の緩衝部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低音の再生によってより高い臨場感を得ることができるウェアラブルスピーカシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係るウェアラブルスピーカシステムの正面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るウェアラブルスピーカシステムの断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るウェアラブルスピーカシステムを説明するための図である。
図4】本発明の実施形態2に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
図5】本発明の実施形態2に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
図6】本発明の実施形態3に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
図7】本発明の実施形態3に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
図8】本発明の実施形態4に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
図9】本発明の実施形態5に係るウェアラブルスピーカシステムの正面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明のウェアラブルスピーカシステムの好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。また、複数の実施形態を説明するが、組み合わせが可能である限り、実施形態は任意に組み合わせて実施することができる。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るウェアラブルスピーカシステム100の正面図である。ウェアラブルスピーカシステム100は、エンクロージャ101を備える。エンクロージャ101は、正面から見た場合、略U字形となっている。エンクロージャ101を正面から見た場合の形状は、馬蹄形、∩字形などと表現することも可能である。エンクロージャ101は、中央部から図1において左斜め下方および右斜め下方の両方向に延びる部分と、該部分からエンクロージャ101の両先端に向かって図1において下方に延びる部分とを含む。
【0022】
なお、ウェアラブルスピーカシステム100の使用状態の一つとして、図3を参照して後述するように、エンクロージャ101の中央部を、聴者の首の後方に位置させ、エンクロージャ101の他の部分を、聴者の首の後方から首両側面を経て左右斜め前方に位置させる「首掛け状態」がある。以下では、ウェアラブルスピーカシステム100に関する左右の方向および左右の関係それぞれを、ウェアラブルスピーカシステム100を首掛け状態とした聴者にとっての左右の方向および左右の関係として説明する(これは、聴者の例えば「左耳」および「右耳」が聴者にとっての左右により決まることと整合している。)。したがって、以下の説明においては、図面に対する左右の方向および左右の関係とは逆の方向および逆の関係となる場合がある。
【0023】
エンクロージャ101の両先端のうち左側の先端から所定の長さの部分を、第1端部領域(左端部領域)と称し、エンクロージャ101の両先端のうち右側の先端から所定の長さの部分を、第2端部領域(右端部領域)と称する。エンクロージャ101には、左側の先端から第1スピーカユニット102Lおよび第1バスレフダクトの端部となる第1開口部104Lがこの順に配置され、右側の先端から第2スピーカユニット102Rおよび第2バスレフダクトの端部となる開口部104Rがこの順に配置されている。エンクロージャ101の第1端部領域(左端部領域)の長さ(上記の「エンクロージャ101の両先端のうち左側の先端から所定の長さ」)は、第1スピーカユニット102Lと、第1開口部104Lとを含むために十分な長さと定義され、エンクロージャ101の第2端部領域(右端部領域)の長さ(上記の「エンクロージャ101の両先端のうち右側の先端から所定の長さ」)は、第2スピーカユニット102Rと、第2開口部104Rとを含むために十分な長さと定義される。
【0024】
図2は、図1におけるI−I断面線におけるエンクロージャ101の第1端部領域(左端部領域)の先端から中央部分に至る途中の断面図である。図2には、エンクロージャ101の一部の断面、第1スピーカユニット102Lの断面および第1開口部104Lの断面が示されている。なお、エンクロージャ101の第2端部領域(右端部領域)の先端から中央部分に至る途中の断面図も、図2の図示における左右を逆にして符号を置き替えることにより得ることができるので、図示は省略する。
【0025】
第1スピーカユニット102Lは、図2の上方に向けて開口を有するスピーカ103L図2の下方に向けて開口を有するパッシブラジエータ105Lとを備えている。言い換えると、スピーカ103Lの背面にパッシブラジエータ105Lが備えられている。また、スピーカ103Lとパッシブラジエータ105Lとは反対向きに第1スピーカユニット102Lに備えられている。スピーカ103Lは、スピーカ103Lを形成するフレーム103aと、フレーム103aに支持される磁気回路103bと、磁気回路103bとフレーム103aとに接続される振動板103cとを有する。磁気回路103bは、図示しない磁石とボイスコイルとを備え、ボイスコイルは図示しないケーブルに接続され、ケーブルに供給される信号に応じて、振動板103cを振動させ、音声を発生させる。
【0026】
パッシブラジエータ105Lは、パッシブラジエータ105Lを形成するフレーム105aとフレーム105aに接続される振動板105cとを有する。パッシブラジエータ105Lは、スピーカ103Lの振動板103cの振動による第1スピーカユニット102L内の気圧の変動に応じて振動板105cが振動し、音声を発生させる。このようにパッシブラジエータ105Lの振動板105cは、気圧の変動に応じて振動するのであり、磁気回路によって直接振動するのではないので、パッシブラジエータ105Lは、スピーカ103Lが発生する音声のうち、主に気圧変動の周波数が低い低音を第1スピーカユニット102Lの外に放射することになる。
【0027】
したがって、スピーカ103Lが小口径のものであっても、スピーカ103Lの背面に反対向きに配置されたパッシブラジエータ105Lにより低音が強調して再生され、聴者は高い臨場感を得ることができる。
【0028】
本実施形態においては、エンクロージャ101内の空間は、スピーカ103Lとパッシブラジエータ105Lとの間の空間に接続している。また、エンクロージャ101内には第1端部領域(左端部領域)および第2端部領域(右端部領域)を相互に連通する中空の空間(内部空間)が形成されている。したがって、スピーカ103Lの振動板103cの振動による第1スピーカユニット102L内の気圧の変動は、エンクロージャ101の内部空間にも伝わることになる。これにより、エンクロージャ101もスピーカ103Lの振動板103cの振動に応じて、振動し、さらにある程度の音声を発生させることが可能となる。同様に、スピーカ103Rの振動板103cの振動による第2スピーカユニット102R内の気圧変動は、エンクロージャ101の内部空間にも伝わることになる。これにより、エンクロージャ101もスピーカ103Rの振動板103cの振動に応じて、振動し、さらにある程度の音声を発生させることが可能となる。
【0029】
また、エンクロージャ101内の空間は、第1端部領域(左端部領域)および第2端部領域(右端部領域)を連通するので、第1スピーカユニット102Lのスピーカ103Lの振動板103cの振動による気圧変化が第2スピーカユニット102Rに到達することが可能である。したがって、スピーカ103Lの振動板103cの振動による気圧変化が、第2スピーカユニット102Rのパッシブラジエータ(図示せず)の振動板の振動に影響を与える。また、同様に、第2スピーカユニット102Rのスピーカ103Rの振動板の振動による気圧変化が第1スピーカユニット102Lに到達し、第1スピーカユニット102Lのパッシブラジエータ105Lの振動板103cの振動に影響を与える。このため、従来の両耳を塞ぐヘッドフォンによる場合と、ウェアラブルスピーカシステム100による場合とにおいて、音声の再生を比較すると、従来のヘッドフォンによる場合において左耳にのみ聞こえる音声であっても、ウェアラブルスピーカシステム100による場合においては、一部成分が、第2スピーカユニット102Rのパッシブラジエータからも発生する。また、従来のヘッドフォンによる場合において右耳にのみ聞こえる音声であっても、ウェアラブルスピーカシステム100による場合においては、一部成分が、第1スピーカユニット102Lのパッシブラジエータ105Lからも発生することになる。したがって、聴者には、左右の音声が対等ではないとしても混合して左右の各スピーカから再生されて聞こえるので、音像の定位位置が聴者の頭内から前方に位置したように感じることができ、臨場感を高めることができる。
【0030】
なお、エンクロージャ101内の内部空間には、スピーカ103Lを駆動するためのケーブルを内部空間に配置してもよい。また、ケーブルに信号を供給し、スピーカ103Lを駆動するための駆動回路および駆動電源も内部空間に配置してもよい。
【0031】
また、上述のように、第1開口部104Lは、第1バスレフダクト106Lの端部となっている。第1バスレフダクト106Lの他端部は、第1スピーカユニット102Lからエンクロージャ101内の空間に向かって延びている。したがって、スピーカ103Lの振動板103cの振動に応じて、エンクロージャ101の内部の気圧が変動すると、第1バスレフダクト106Lの他端部を介して第1開口部104Lから空気の出入りが発生し、この空気の出入りにより、聴者は低音を感じることができる。
【0032】
なお、図2においては、第1スピーカユニット102Lの高さとエンクロージャ101の高さとを異ならせて示しているが、同じ高さとして、第1スピーカユニット102Lとエンクロージャ101との一体感をさらに大きくし、ウェアラブルスピーカシステム100の看者に美観を生じさせる装飾的効果を得ることもできる。また、図1において、第1スピーカユニット102Lおよび第2スピーカユニット102Rの横方向における幅が、エンクロージャ101の幅と異なっているが、スピーカユニット102Lおよび第2スピーカユニット102Rの横方向の幅をエンクロージャ101の幅と同じにするようにすることも可能である。
【0033】
図3は、聴者の首にウェアラブルスピーカシステム100を掛け、エンクロージャ101の第1端部領域および第2端部領域が首の前方に位置し、エンクロージャ101の中央部が首の後方に位置するようにした状態(首掛け状態)を示す図である。図3に示すように聴者の首にウェアラブルスピーカシステム100を掛けた場合、第1スピーカユニット102Lおよび102Rは、聴者の上胸の部位に位置することが好ましい。例えば、第1スピーカユニット102Lおよび第2スピーカユニット102Rは鎖骨上や乳房の上部に位置することが好ましい。これにより、スピーカ103Lおよび103Rの開口を上向きとしてウェアラブルスピーカシステム100を掛けた場合、聴者は、パッシブラジエータ105Lおよび105Rから発せられる低音の振動を体で感じることが可能となる。また、エンクロージャ101の一部も聴者の首の後方や上胸部に接触するため、スピーカ103Lおよび103Rそれぞれの振動板103cの振動によるエンクロージャ101の振動、および振動により発生する音声を体で感じることができる。エンクロージャ101は、聴者の首を囲むように配置されているので、聴者はエンクロージャ101の振動および振動により発生する音声が体の周囲から発せられるように感じることができ、より高い臨場感を得ることができる。
【0034】
また、図3に示すように聴者の首にウェアラブルスピーカシステム100を掛けた場合、第1開口部104Lおよび第2開口部104Rそれぞれは、聴者の耳YLおよびYRの下方に位置することが好ましい。これにより、聴者は、スピーカ103Lの振動板103cの振動による第1バスレフダクト106Lの他端部から本体部分を介した第1開口部104Lからの空気の出入りにより発生する低音を聞くことができる。また、聴者は、スピーカ103Rの振動板103cの振動による第2バスレフダクトの他端部から本体部分を介した第2開口部104Rからの空気の出入りにより発生する低音を聞くことができる。したがって、より高い臨場感を得ることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、スピーカ103Lおよびパッシブラジエータ105L、スピーカ103Rおよびパッシブラジエータ105R、ならびに、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rにより、低音の再生が可能となり、聴者はより高い臨場感を得ることができる。
【0036】
また、ウェアラブルスピーカシステム100を首掛け状態にしても、ヘッドフォンとは異なり、聴者の耳を塞がない。したがって、音像が聴者の頭内に定位することがないので、疲労感を感じることが少ない。また、聴者の耳を塞がないことにより、聴者は周囲の音を聞くことができるので危険などを避けるために周囲に注意を払うことができる。また、ウェアラブルスピーカシステム100を首掛け状態とすることにより、耳に近い位置に装着されるので、移動しても音場が変化することがなく、小さな音量でも十分な音圧を得ることができる。
【0037】
以上のような本実施形態のウェアラブルスピーカシステム100の使用場面としては、音楽再生装置、スマートフォンまたはタブレット型端末と組み合わせて音楽などを聞いたり、スマートフォンやタブレット端末の画面に表示される動画を音声付で視聴したりする場面が挙げられる。また、高齢者などにおいて、聴力の衰えにより聞きとりにくかったテレビの音声をウェアラブルスピーカシステム100により耳元で再生することもできる。また、バーチャルリアリティーやオグメンティッドリアリティのシステムと組み合わせることにより、視覚および聴覚を通して高い臨場感を得ることもできる。
【0038】
(実施形態2)
図4および図5は、本発明の実施形態2に係るウェアラブルスピーカシステム100それぞれを正面から見た場合の正面透視図である。
【0039】
図4は、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部を点線により示している図である。第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部の長さは、スピーカ103Lおよび103Rから発せられる音声の低周波領域のどの範囲を強調したいのかに応じて、任意に選択することができる。一般に、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部の長さをより大きくすると、より低い周波数の範囲が強調されることになる。
【0040】
また、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rは、以下に説明するように音声の定位位置にも関係し得る。例えば、図5に示すように第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部それぞれの長さをさらに大きくし、他端部107Lおよび107Rが、エンクロージャ101の中央部を超えて位置していてもよい。言い換えると、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部がエンクロージャ101の中央部を含む領域で交差していてもよい。
【0041】
このような第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの構成によると、第1バスレフダクト106Lにより、第2スピーカユニット102Rにより発生する音声に対応した気圧変動が第1開口部104Lへ導かれ、第2バスレフダクト106Rにより、第1スピーカユニット102Lにより発生する音声に対応した気圧変動が第2開口部104Rに導かれる。このため、第1開口部104Lからは第2スピーカユニット102Rにより発生する音声に対応した空気の出入りが生じ、第2開口部104Rからは第1スピーカユニット102Lにより発生する音声に対応した空気の出入りが生じる。
【0042】
したがって、聴者は、左耳で聞く音声に右側の音声が混合し、右耳で聞く音声に左側の音声が混合した状態で聞くことになるので、音声の定位位置が前に移動したように聞こえることになり、図4に示す構成よりも、より高い臨場感を得ることができる。
【0043】
(実施形態3)
図6および図7は、本発明の実施形態3に係るウェアラブルスピーカシステム100それぞれを正面から見た場合の正面透視図である。
【0044】
図6および図7においてはエンクロージャ101の内部に配置されている部を点線により示している。例えば図6には、第1バスレフダクト106Lおよび第2バスレフダクト106Rの本体部が点線で示されているとともに、エンクロージャ101の中央部に隔壁108が配置されていることが点線で示されている。
【0045】
隔壁108は、エンクロージャ101の内部空間を仕切る部材である。隔壁108により、エンクロージャ101の内部空間は、第1端部領域(左端部領域)の側の内部空間1081と、第2端部領域(右端部領域)の側の内部空間1082と、の二つの空間に分離される。内部空間1081は、第1開口部104Lおよび第1スピーカユニット102Lに接続され、内部空間1082は、第2開口部104Rおよび第2スピーカユニット102Rに接続される。このため、内部空間1081内の気圧変動は、内部空間1082へは伝わらなくなり、また、内部空間1082内の気圧変動は、内部空間1081へも伝わらなくなる。
【0046】
このため、隔壁108により、第1スピーカユニット102Lおよび第2スピーカユニット102Rにより発生する音声の左右の分離特性が高じることによる所謂メリハリの利いた音声を聞くことができる。
【0047】
なお、隔壁108は複数配置することができる。これにより、内部空間1081と内部空間1082とを、エンクロージャ101の半分以下の長さに調整することが可能である。
【0048】
図7は、エンクロージャ101に二つの隔壁108Lおよび108Rを配置した状態を示す図である。二つの隔壁108Lおよび108Rの間には、スピーカ103Lおよび103Rを駆動する駆動電源および駆動回路、また、外部音源の入力部を配置することができる。外部音源の入力部として、例えばフォーンジャックをエンクロージャ101に設けると、フォーンジャックを介して空気の出入りが発生し得るので、ウェアラブルスピーカシステム100の音響特性が変化する場合があるが、隔壁108Lおよび108Rの間にフォーンジャックを設けることにより、音響特性の変化を招来しないようにすることができる。
【0049】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係るウェアラブルスピーカシステム100の正面図である。これまでの実施形態との違いは、エンクロージャ101のU字形の内側に緩衝材110L、110Cおよび110Rによって首当て緩衝部材109が形成されている点である。なお、首当て緩衝部材109を第1緩衝部材と称呼する場合がある。
【0050】
首当て緩衝部材109は、ウェアラブルスピーカシステム100を図3に示したように首掛け状態とした場合に、スピーカ103Lおよび103Rそれぞれの振動板103bの振動により生じるエンクロージャ101の振動を低減させ、聴者に直接エンクロージャ101の振動が伝わるのを防止する。第1スピーカユニット102Lおよび第2スピーカユニット102Rから中高音が発せられ、その中高音による振動がエンクロージャ101を介して聴者の首の後方に伝わると、聴者が不快に感じる場合がある。そこで、中高音による振動を緩衝材110L、110Cおよび110Rにより減衰させる首当て緩衝部材109を介して聴者に伝えることで、中高音による聴者の不快感を取り除くことができる。緩衝材の材料として、例えばゴムや発泡ポリウレタンあるいはバネなどの伸縮が可能な材料を用いることができる。
【0051】
(実施形態5)
図9は、本発明の実施形態5に係るウェアラブルスピーカシステム100の左側面図である。これまでの実施形態との違いは、エンクロージャ101の第1端部領域の下面に緩衝材112Lおよび113Lを介して胸当て緩衝部材111Lが備えられている点である。図9には、ウェアラブルスピーカシステム100の右側面図は示していないが、ウェアラブルスピーカシステム100の右側面も左側面から見たのと同様の構造とすることができる。なお、胸当て緩衝部材を第2緩衝部材と称呼する場合がある。
【0052】
緩衝材112Lおよび113Lは、ウェアラブルスピーカシステム100を図3に示したように首掛け状態とした場合に、スピーカ103Lおよび103Rそれぞれの振動板106bの振動による生じるエンクロージャ101の振動を低減させ、聴者の上胸の部位に直接エンクロージャ101の振動が直接伝わるのを防止する。スピーカ103Lおよび103Rから中高音が発せられると、その中高音による振動がエンクロージャ101を介して聴者の上胸部に伝わると、聴者が不快に感じる場合がある。そこで、中高音を、胸当て緩衝部材111Lを介して聴者に伝えることで、聴者には主に低音が胸当て緩衝部材111Lを介して伝えられ、聴者の不快感を取り除くことができる。緩衝材の材料として、例えばゴムや発泡ポリウレタンあるいはバネなどの伸縮が可能な材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
100…ウェアラブルスピーカシステム、101…エンクロージャ、102L、102R…スピーカユニット、103L,103R…スピーカ、104L…第1開口部、104R…第2開口部、103a…スピーカフレーム、103b…磁気回路(永久磁石とボイスコイル)、103c…振動板、105a…パッシブラジエータフレーム、105c…振動板、106L…バスレフダクト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9