(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の接触型センサを適用した実施の形態について説明する。
【0011】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の接触型センサ100を示す斜視図である。
図2は、接触型センサ100を示す側面図である。
図3は、接触型センサ100を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A矢視断面を示す図である。
【0012】
接触型センサ100は、例えば、人体の表面に取り付けられ、生体信号を検出するために用いられる。このような生体信号としては、例えば、脳からの信号により筋力を発生させる際に生じる表面筋電位がある。
【0013】
生体信号(表面筋電位等)は、例えば、骨格筋の筋力低下により歩行が不自由な下肢運動機能障害者、あるいは、歩行運動のリハビリを行う患者等のように自力歩行が困難な人の歩行動作を補助(アシスト)する動作補助装置のアクチュエータの駆動に利用することができる。
【0014】
動作補助装置の装着者の下肢等の体表面に接触型センサ100を貼り付けて生体信号(表面筋電位等)を検出し、生体信号(表面筋電位等)に応じて動作補助装置を駆動すれば、装着者の歩行動作等を補助(アシスト)することができる。
【0015】
このような動作補助装置は、予め入力されたデータに基づいてロボットハンドをコンピュータ制御するように構成された所謂プレイバック型ロボットとは全く異なるものであり、装着型ロボットや外骨格型ロボット、あるいはパワードスーツ等と呼ばれることもある。
【0016】
動作補助装置の装着者は、自らの意思で歩行動作を行うと、その際に発生した生体信号に応じた駆動トルクがアシスト力として動作補助装置から付与され、例えば、通常歩行で必要とされる筋力の半分の力で歩行することが可能になる。従って、装着者は、自身の筋力とアクチュエータ(本実施例では、電動式の駆動モータを用いる)からの駆動トルクとの合力によって全体重を支えながら歩行することができる。
【0017】
上述のような接触型センサ100は、電極110、120、センサ130、ケーブル140、150、及びカバー170を含む。
【0018】
電極110は、第1電極の一例であり、所謂雌型のボタン状の部材である。電極110は、基部111、凹部112、及び孔部114を有する。電極110の上面は、カバー170によって覆われている。
【0019】
基部111は、電極110のベース(土台)になる部分であり、例えば、黄銅等の金属で一体的に形成され、接触耐久性や腐食耐久性等の耐久性のためにニッケルや銅でメッキされる。基部111は、平面視で(
図3(A)参照)円形であり、円板状の部材である。
【0020】
凹部112は、基部111の下面111Aから基部111の内部に向けて形成される凹状の穴部であり、平面視で基部111の中央に位置する。凹部112には、電極120の凸部122が嵌着される。すなわち、電極120の凸部122が電極110の凹部112に嵌め込まれることにより、電極110と120は、所謂雄型のボタン(120)と雌型のボタン(110)が留められた状態になる。
【0021】
このため、凹部112は、電極120の凸部122が内部に挿入された状態で、凸部122が抜けないように保持できる形状を有するように形成されていればよい。なお、電極110と120は、凸部122が凹部122に嵌め込まれた状態で、互いに回動自在である。
【0022】
孔部114は、基部111の下面111Aと上面111Bとの間を貫通するように形成されている。孔部114は、平面視では基部111の中心からオフセットしており、電極120と重複しない部分に形成されている。すなわち、孔部114は、電極110と120を嵌め合わせた状態で、電極120の外側面よりも外側に位置する部位に形成されている。
【0023】
孔部114は、内部の下面111A側にセンサ130を内蔵し、上面111B側からケーブル150を引き出すために設けられている。
【0024】
なお、基部111の上面の中央(平面視での基部111の上面の中央)には、ケーブル140がはんだ付けされている。なお、ケーブル140は、基部111にかしめられていてもよく、超音波接着によって固定されていてもよく、その他の方法で固定されていてもよい。
【0025】
電極120は、第2電極の一例であり、所謂雄型のボタン状の部材である。電極120は、基部121及び凸部122を有する。
【0026】
基部121は、電極120のベース(土台)になる部分であり、例えば、ABS樹脂等で一体的に形成され、銀等の導電性の金属でメッキされる。基部121は、平面視で(
図3(A)参照)円形であり、円板状の部材である。
【0027】
凸部122は、基部121の上面121Aから突出するように形成されるニップル状の部分である。凸部122は、平面視で基部121の中央に位置しており、電極110の凹部112に嵌め込まれる。
【0028】
電極120は、例えば、基部121の下面121Bに導電性のゲル(gel)を塗布した上で、接着式のテープ等によって人体の表面に貼り付けられる使い捨て式の電極である。電極110とは別に電極120を設けているのは、例えば、上述のような動作補助装置に接触型センサ100を用いる場合に、電極120を人体に固定的に貼り付けた状態で、電極120に電極110を嵌め込むことにより、電極120に対して電極110が回動自在の状態になり、動作補助装置の装着者が歩行等を行う際に、動作を行いやすくするためである。また、装着者の動作に伴って接触型センサ100にかかる応力を軽減し、接触型センサ100が装着者の体表面から脱落しにくくするためである。主にこのような理由から、接触型センサ100は、電極120に電極110を嵌め込む構成になっている。
【0029】
このように、電極120を介して電極110を装着者の体表面に取り付けることにより、電極110で生体信号(表面筋電位等)を収集する。電極110で収集した生体信号(表面筋電位等)は、ケーブル140を介して、動作補助装置の各アクチュエータの動作を制御する制御部に入力される。なお、生体信号(表面筋電位等)は、ケーブル140から制御部に入力される前に、ADC(Analog to Digital Convertor)でデジタル信号に変換される。
【0030】
なお、電極120は、導電性と粘着性を有するゲルのみで貼りつけてもよい。
【0031】
センサ130は、電極110の孔部114の内部に設けられており、接触型センサ100の装着者への取り付け状態を検出するために設けられている。すなわち、センサ130は、接触型センサ100が装着者の体表面に取り付けられているかどうかを検出する。
【0032】
センサ130は、例えば、フォトリフレクタ、超音波センサ等の能動式センサや、赤外線センサ、照度センサ、焦電センサ等の受動式センサである。センサ130は、検出用の信号を装着者の体表面に照射等することにより、接触型センサ100が装着者の体表面に取り付けられているかどうかを検出する。
【0033】
センサ130は、ケーブル150の一端に接続されており、ケーブル150の他端には、装着者への取り付け状態を監視する装置(監視装置)が接続される。接触型センサ100が動作補助装置に用いられる場合は、監視装置は、動作補助装置の各アクチュエータの動作を制御する制御部である。
【0034】
例えば、センサ130がフォトリフレクタである場合は、監視装置が監視を行う際にセンサ130に赤外線を照射させ、装着者の体表面で反射される赤外線を受光し、センサ130が反射された赤外線を検出する。そして、監視装置がセンサ130によって検出された赤外線の輝度等に基づいて、接触型センサ100が装着者の体表面に取り付けられているかどうかを判定すればよい。
【0035】
なお、センサ130の内部で、接触型センサ100が装着者の体表面に取り付けられているかどうかを判定してもよいし、接触型センサ100の内部に判定部を設けておいてもよい。また、センサ130は、検出用の信号を装着者の体表面に照射等するセンサに限られず、例えば、装着者の体表面から放射される赤外線を検出するセンサであってもよい。この場合には、人体の体表面から放射される赤外線の周波数を予め実験的に求めておき、その周波数の赤外線が検出されるかどうかで、接触型センサ100が装着者の体表面に取り付けられているかどうかを判定するようにすればよい。
【0036】
ケーブル140は、一端が基部111の上面の中央にはんだ付けされ、一端と他端との間がカバー170のパイプ部171の内部を挿通され、他端(図示せず)が監視装置に接続される。ケーブル140は、例えば、銅線によって構成される。なお、ケーブル140は、導電体製であればよいため、例えば、アルミニウム製であってもよい。
【0037】
ケーブル150は、一端が電極110の上面111B側から孔部114に挿入され、センサ130に接続される。ケーブル150は、銅線によって構成される。なお、ケーブル150は、導電体製であればよいため、例えば、アルミニウム製であってもよい。また、センサ130への銅線が複数本必要な場合は、ケーブル150を複数本用いればよい。
【0038】
ケーブル150は、カバー170のパイプ部172の内部を挿通され、ケーブル150の他端(図示せず)は、監視装置に接続される。ケーブル150の一端は、センサ130にはんだ付け等によって固定的に接続される。
【0039】
カバー170は、電極110の上面を覆うように形成されている。カバー170は、例えば、電極110の上面に貼り付けられている。カバー170は、パイプ部171及び172を有し、パイプ部171及び172の内部には、ケーブル140及び150が挿通されている。カバー170は、例えば、樹脂等の絶縁体によって形成される。
【0040】
次に、
図4及び
図5を用いて、センサ130の具体例と、センサ130の回路構成例について説明する。
【0041】
図4は、センサ130の具体例を示す図である。
図5は、センサ130の回路構成例を示す図である。
【0042】
図4(A)に示すように、センサ130は、例えば、LED(Light Emitting Diode)131とフォトトランジスタ132とで構成することができる。監視装置がLED131を点灯し、装着者の体表面1で反射された光をフォトトランジスタ132で検出すればよい。なお、フォトトランジスタ132の代わりに、フォトダイオードを用いてもよい。
【0043】
また、
図4(B)に示すように、センサ130は、赤外線を電気信号(電圧又は電流)に変換するフォトトランジスタ又はフォトダイオードであってもよい。この場合は、フォトトランジスタ又はフォトダイオードで、装着者の体表面1から放射される赤外線を検出できるようにフォトトランジスタ又はフォトダイオードで検出する赤外線の周波数を設定しておけばよい。
【0044】
図4(C)に示すように、フォトトランジスタ又はフォトダイオードを用いた場合のセンサ130の出力は、フォトトランジスタ又はフォトダイオードと、光が照射される対象物との間の距離が焦点距離にある時に最大になり、焦点距離より短い場合と長い場合には出力が低下する。
【0045】
このため、センサ130と電極120の基部121の下面(
図3(B)参照)との距離が焦点距離になるようにセンサ130の位置を決めておけば、接触型センサ100が装着者の体表面1から剥がれること等によってセンサ130と装着者の体表面1との間の距離が変化したことを、より信頼性高く検出することができる。
【0046】
なお、センサ130と電極120の基部121の下面(
図3(B)参照)との距離を必ずしも焦点距離に設定しておく必要はない。例えば、起動時にセンサ130の出力の初期値を取るようにすれば、焦点距離に設定されてなくても距離の変化として検出が可能である。
【0047】
センサ130がLED131とフォトトランジスタ132を有するフォトリフレクタで構成される場合は、例えば、
図5(A)に示すように、監視装置160AのADC(Analog to Digital Convertor)161Aと、MCU(Micro Computer Unit)162とを用いて、フォトトランジスタ132の出力をADC161Aでデジタル信号に変換し、MCU162がADC161Aの出力に基づいて、センサ130と装着者の体表面1との間の距離の変化を検出すればよい。なお、監視装置160Aとセンサ130とは、3本のケーブル150で接続される。
【0048】
また、ADC161Aの代わりに、
図5(B)に示すように、コンパレータ161Bを用いてもよい。この場合は、フォトトランジスタ132の出力を監視装置160Bのコンパレータ161Bで所定の閾値と比較し、MCU162がコンパレータ161Bの出力に基づいて、センサ130と装着者の体表面1との間の距離の変化を検出すればよい。監視装置160Bとセンサ130とは、3本のケーブル150で接続される。
【0049】
また、センサ130が赤外線を電気信号(電圧又は電流)に変換するフォトトランジスタ又はフォトダイオードを有する赤外線センサで構成される場合は、例えば、
図5(C)に示すように、監視装置160CのADC161Cと、MCU162とを用いて、赤外線を電気信号(電圧又は電流)に変換するフォトトランジスタ又はフォトダイオードで構成されるセンサ130の出力をADC161Cでデジタル信号に変換し、MCU162がADC161Cの出力に基づいて、センサ130と装着者の体表面1との間の距離の変化を検出すればよい。なお、監視装置160Cとセンサ130とは、2本のケーブル150で接続される。
【0050】
また、ADC161Cの代わりに、
図5(D)に示すように、コンパレータ161Dを用いてもよい。この場合は、赤外線を電気信号(電圧又は電流)に変換するフォトトランジスタ又はフォトダイオードで構成されるセンサ130の出力を監視装置160Dのコンパレータ161Dで所定の閾値と比較し、MCU162がコンパレータ161Dの出力に基づいて、センサ130と装着者の体表面1との間の距離の変化を検出すればよい。監視装置160Dとセンサ130とは、2本のケーブル150で接続される。
【0051】
次に、
図6を用いて、接触型センサ100の装着者への取り付け状態を検出する原理について説明する。
【0052】
図6は、接触型センサ100の装着者への取り付け状態を検出する原理を説明する図である。説明の便宜上、
図6では、接触型センサ100を簡略化して示す。なお、
図6では、カバー170を省略する。
【0053】
図6(A)に示すように、接触型センサ100は、装着者の体表面1に貼り付けられる。この状態では、例えば、電極120が接着式のテープ又はゲル等によって体表面1に貼り付けられている。
【0054】
このような状態から、例えば、ケーブル140又は150が引っ張られると、
図6(B)に示すように電極110が電極120から外れる場合がある。この場合には、センサ130と体表面1との間の距離が変化し、センサ130の受光量が変化し、センサ130の出力が変わるため、接触型センサ100の電極110又は120が体表面1から外れたことを監視装置で検知することができる。
【0055】
また、
図6(A)の状態から、例えば、電極120を体表面1に貼り付けているテープの接着力が発汗等によって弱くなり、
図6(C)に示すように電極120が体表面1から外れる場合がある。この場合には、センサ130と体表面1との間の距離が変化し、センサ130の受光量が変化し、センサ130の出力が変わるため、接触型センサ100の電極110又は120が体表面1から外れたことを監視装置で検知することができる。
【0056】
以上、実施の形態の接触型センサ100によれば、接触型センサ100が体表面1から外れたことを高い精度で検出することができる。
【0057】
接触型センサ100は、従来のようにファームウェアで信号処理を行う必要がなく、また、ファームウェア又はソフトウェアのエラー等が発生した場合に検出精度が低下するようなことも生じない。信号処理を行う必要がないため、検出に遅れが生じることがなく、素早く検出することができる。また、ファームウェアを用いないため、装置構成が簡易で済む。
【0058】
従って、実施の形態によれば、簡易な構成で、電極の接続状態を正確に検出できる、信頼性の高い接触型センサ100を提供することができる。また、接触型センサ100は、電極110又は120が体表面1から外れたことをコンピュータによる演算処理等を行うことなく、監視装置で迅速に検知することができる。
【0059】
特に、上述したような動作補助装置に接触型センサ100を用いる場合には、装着者の安全性に関わるため、正確で、かつ、迅速な検出が求められる。このような用途において、接触型センサ100は好適である。接触型センサ100の電極110又は120が体表面1から剥がれたことを検知した場合には、動作補助装置の制御部は、アクチュエータの動作を停止すればよい。安全性を確保するためである。
【0060】
また、以上では、一例として、接触型センサ100を動作補助装置に用いる形態について説明したが、接触型センサ100は、例えば、脈拍や心拍データ等を測定するための一般的な医療用のセンサとして用いることができる。
【0061】
また、以上では、一例として、電極120をテープやゲル等で体表面1に貼り付ける形態について説明したが、電極120はベルトやバンドを用いて体表面1に取り付けてもよい。また、電極120は使い捨て式ではなく、繰り返し利用可能な形態のものであってもよい。
【0062】
また、以上では、電極120を介して電極110を体表面1に固定して、表面筋電位としての生体信号を検出する形態について説明したが、電極120の代わりに絶縁体製のパッドを用いて、電極110で装着者の静電容量の変化を生体信号として検出するように構成してもよい。
【0063】
また、以上で説明した電極110、120、及びケーブル140の構成は一例であり、体表面1に取り付けることができて、生体信号を検出できるのであれば、電極110、120、及びケーブル140は、どのような構成であってもよい。この場合に、電極120を用いずに、電極110を体表面1に直接的に取り付けるようにしてもよい。
【0064】
また、接触型センサ100の電極120は次のように変形することができる。
【0065】
図7は、実施の形態の変形例による接触型センサ100A、100Bを示す図である。
【0066】
図7(A)に示す接触型センサ100Aは、
図6に示す接触型センサ100の電極120を電極120Aに置き換えたものである。電極120Aは、電極110よりも平面視で大きく、電極120Aには、センサ130に対応した貫通孔123Aが形成されている。これは、センサ130が体表面1から光を受光できるようにするためである。また、電極110が電極120Aに対して回転自在に取り付けられる場合には、
図7(B)に示すように、貫通孔123Aは、円環状に設けられていてもよい。ここで、貫通孔123Aの代わりに、センサ130が受信する光を透過する透過部を設けてもよい。例えば、センサ130が赤外線を受光する場合には、赤外線を透過する透過部を貫通孔123Aの代わりに設けてもよい。
【0067】
また、センサ130は、電極110に固定されていればよいため、
図7(C)に示すように、センサ130は、電極110の外側に固定されていてもよい。電極110に固定されていれば、センサ130で電極110が電極120から外れたことと、電極120が体表面1から外れたことを検知できるからである。
【0068】
以上、本発明の例示的な実施の形態の接触型センサについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。