特許第6435219号(P6435219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6435219-易開封性容器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435219
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】易開封性容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20181126BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   B65D77/20 H
   B32B15/08 F
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-55948(P2015-55948)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175659(P2016-175659A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−102563(JP,A)
【文献】 特開2009−107695(JP,A)
【文献】 特開2012−148805(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2202174(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B32B 1/00−43/00
B65D 23/00−25/56
B65D 81/32−81/36
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器蓋部に開封用の開孔を有し、該開孔を開封可能な蓋材で覆った易開封性容器であって、前記容器蓋部が金属製であり、該容器蓋部の外面に、該蓋部側の面が変性オレフィン系樹脂で形成され反蓋部側の面がオレフィン系樹脂で形成された第1の積層フィルムが熱接着されており、該第1の積層フィルム上に、一面が第1の積層フィルムの前記反蓋部側の面に接合される第1接合面に形成され、他面が前記蓋材と接合される第2接合面に形成され、内部に、前記第1接合面における前記第1の積層フィルムの前記反蓋部側の面との接合強度および前記第2接合面における前記蓋材との接合強度よりも低い層間剥離強度の易剥離面を有する第2の積層フィルムが設けられており、該第2の積層フィルム上に、前記開孔を覆うように前記蓋材が設けられていることを特徴とする易開封性容器。
【請求項2】
前記第2の積層フィルムが3層以上の積層フィルムからなり、内部のいずれかの層間が前記易剥離面を構成している、請求項1に記載の易開封性容器。
【請求項3】
前記第2の積層フィルムが、前記第1接合面を形成する第一の外層と、前記第2接合面を形成する第二の外層と、第一の外層および第二の外層の構成材料とは非相溶系の樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなる中間層とを有する、請求項2に記載の易開封性容器。
【請求項4】
前記第一の外層および/または第二の外層がオレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなる、請求項3に記載の易開封性容器。
【請求項5】
前記中間層が、その積層方向両側の層との接合強度が10N/15mm以下の層からなる、請求項3または4に記載の易開封性容器。
【請求項6】
前記中間層が、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン樹脂の少なくともいずれかを含む、請求項3〜5のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項7】
前記第2の積層フィルムが、前記第1の積層フィルムおよび前記蓋材の少なくとも一方と熱接着されている、請求項1〜6のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項8】
前記蓋材の少なくとも前記第2の積層フィルム側の面がオレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物で形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項9】
前記蓋材が芯層を有する積層体に構成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項10】
前記第2の積層フィルムの面方向において、前記第2の積層フィルムが前記蓋材と接合される第1の接合領域の外縁端部であって、前記第2の積層フィルム内の前記易剥離面による剥離開始側における端部の位置が、前記第2の積層フィルムが前記第1の積層フィルムと接合される第2の接合領域の外縁端部であって、前記第2の積層フィルム内の前記易剥離面による剥離開始側における端部の位置よりも、前記開孔寄りの位置に設定されている,請求項1〜9のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項11】
前記第2の積層フィルムの面方向において、前記第2の積層フィルムが前記蓋材と接合される第1の接合領域の開孔側に位置する端部であって、前記第2の積層フィルム内の前記易剥離面による剥離開始側における端部の位置が、前記第2の積層フィルムが前記第1の積層フィルムと接合される第2の接合領域の開孔側に位置する端部であって、前記第2の積層フィルム内の前記易剥離面による剥離開始側における端部の位置よりも、前記開孔からより遠い位置に設定されている,請求項1〜9のいずれかに記載の易開封性容器。
【請求項12】
前記第1の接合領域の端部の位置と前記第2の接合領域の端部の位置との前記第2の積層フィルム面方向距離が、前記第2の積層フィルムの厚みの5倍以上に設定されている、請求項10または11に記載の易開封性容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性容器に関し、とくに、金属製の容器蓋部に開孔が設けられるとともに該容器蓋部外面に該蓋部の酸化防止用等のために樹脂層の被覆が求められるタイプの容器の開孔部に対して、優れた密封性とともに良好な易開封性を持たせた易開封性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、常温保存用やボイル、レトルト用等の食品の包装容器や、各種飲料の容器の開封部位において、食品や飲料の保存時や加熱処理時の良好な密封性と開封時の易開封性を目的として、容器と蓋材との間に、シール性と易剥離性を備えた多層フィルムや多層構造物を介在させる技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
しかし、強度を持たせる方向としては互いに逆方向となる、容器と蓋材との間の高い封緘強度と開封の際の優れた易開封性を効果的に両立させることは、容易ではなく、従来技術では未だ不十分である。とくに、金属製の容器と蓋材との間に一般的な易開封性フィルムを介在させる場合、介在させる易開封性フィルムと容器あるいは蓋材との間の熱接着強度を高めると、易開封性フィルムと容器あるいは蓋材とのシール強度まで高められてしまい、易開封性が損なわれることが多い。
【0004】
また、容器蓋部が金属製(例えば、アルミニウム製)の場合には、酸化防止用等のために容器蓋部外面に樹脂コーティングを施すことが求められることがある。しかし、コーティングされる樹脂がある種の樹脂の場合(例えば、アクリル樹脂の場合)、良好な密封性と開封時の易開封性を目的として上述したようなシール性と易剥離性を備えた多層フィルム等を介在させることが困難になることがある。すなわち、アクリル樹脂等が容器蓋部外面にコーティングされていると、容器蓋部の開孔部周りに密封性と易開封性を目的とした多層フィルム等をそのコーティング樹脂層に熱接着等により接合することが困難になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−310431号公報
【特許文献2】特開平7−32555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、上記のような問題点、とくに容器蓋部外面にアクリル樹脂等の樹脂コーティングを施すことが求められていた場合の問題点に着目し、アクリル樹脂等の樹脂コーティングの代わりに金属接着フィルム層を熱接着して金属製容器蓋部における酸化防止等の要求性能を満たすことができるようにし、その上部に、容器蓋部の開孔部周りに特別な構造を構成した、密封性と易開封性に優れた易開封性容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る易開封性容器は、容器蓋部に開封用の開孔を有し、該開孔を開封可能な蓋材で覆った易開封性容器であって、前記容器蓋部が金属製であり、該容器蓋部の外面に、該蓋部側の面が変性オレフィン系樹脂で形成され反蓋部側の面がオレフィン系樹脂で形成された第1の積層フィルムが熱接着されており、該第1の積層フィルム上に、一面が第1の積層フィルムの前記反蓋部側の面に接合される第1接合面に形成され、他面が前記蓋材と接合される第2接合面に形成され、内部に、前記第1接合面における前記第1の積層フィルムの前記反蓋部側の面との接合強度および前記第2接合面における前記蓋材との接合強度よりも低い層間剥離強度の易剥離面を有する第2の積層フィルムが設けられており、該第2の積層フィルム上に、前記開孔を覆うように前記蓋材が設けられていることを特徴とするものからなる。本発明において、容器とは、食品等の包装用に用いられるあらゆる形態の容器を含む概念であり、容器蓋部を含む部位が部分的に金属製であるもの、容器全体が金属製であるものの両方を含む概念である。また、蓋材とは、容器蓋部に設けられた開孔を封緘可能なあらゆる形態の蓋材を含む概念である。さらに、容器蓋部を構成する金属の種類についてはとくに限定されないが、代表的にはアルミニウムまたはスチールである。
【0008】
このような本発明に係る易開封性容器においては、まず、従来容器蓋部外面にアクリル樹脂等の樹脂コーティングを施すことが求められていた場合に比べ、金属製の容器蓋部の外面に、該蓋部側の面が変性オレフィン系樹脂で形成され反蓋部側の面がオレフィン系樹脂で形成された第1の積層フィルムが熱接着されており、この第1の積層フィルムによる被覆によって、容器蓋部外面の酸化防止等の機能が付与される。第1の積層フィルムの蓋部側の面が変性オレフィン系樹脂で形成されていることによって、金属製の容器蓋部に容易にかつ確実に熱接着されるようになり、反蓋部側の面がオレフィン系樹脂で形成されていることによって、次に説明する優れた易開封性を持たせるための第2の積層フィルムとの接合が容易にかつ確実に行われるようになる。この第2の積層フィルムは、上記第1の積層フィルムと開孔密封、開封用の蓋材との間に介在されるものであり、第2の積層フィルムと第1の積層フィルムおよび蓋材が相対的に高い接合強度をもって接合されることにより、まず、開孔周りで高いシール性(密封性)が得られる。そして、開孔に対して蓋材を開封する際には、第2の積層フィルムの内部での層間剥離が利用されるが、この層間剥離が容易にかつ適切に行われるように意図された剥離面が、第1の積層フィルムとの接合強度(第1接合面における接合強度)および蓋材との接合強度(第2接合面における接合強度)よりも低い層間剥離強度の易剥離面に構成されているので、第1の積層フィルム側との接合面および蓋材側との接合面での剥離を生じることなく、低い剥離力をもって確実に易剥離面にて予定されていた剥離が行われることになり、この剥離を介して開封が容易に行われる。その結果、優れた密封性と優れた易開封性を効果的に両立させた易開封性容器が実現される。
【0009】
上記本発明に係る易開封性容器においては、上記第2の積層フィルムが3層以上の積層フィルムからなり、内部のいずれかの層間が上記易剥離面を構成している構成が好ましい。このような構成においては、容器蓋部外面上に強固に熱接着された第1の積層フィルム側との所望の高い接合強度および蓋材側との所望の高い接合強度を達成しつつ、第2の積層フィルム内において、所望の低い剥離力をもって確実に層間剥離が行われる易剥離面がより容易に形成される。
【0010】
この場合、上記第2の積層フィルムが、上記第1接合面を形成する第一の外層と、上記第2接合面を形成する第二の外層と、第一の外層および第二の外層の構成材料とは非相溶系の樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなる中間層とを有する構成を採ることが好ましい。第一の外層および第二の外層の構成材料とは非相溶系の樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなる中間層とすることにより、中間層と第一の外層または第二の外層との境界面を、容易に所望の易剥離面に形成することが可能になる。第一の外層および/または第二の外層は、例えば、オレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなることが好ましい。このような外層を構成するオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを用いることができる。また、レトルト処理をする用途では、例えば、耐熱性のあるポリプロピレンやポリプロピレンの変性樹脂が好ましい。
【0011】
上記中間層としては、所望の低い剥離力を達成するために、その積層方向両側の層との層間剥離強度が適切に低いことが好ましい。例えば、中間層が、その積層方向両側の層との層間剥離強度が10N/15mm以下の層からなることが好ましい。
【0012】
好ましい中間層構成用材質については、中間層が、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0013】
上記第2の積層フィルムと上記第1の積層フィルムまたは上記蓋材との接合形態は特に限定されないが、第1の積層フィルムおよび蓋材の少なくとも一方と熱接着されている形態とすることできる。
【0014】
上記蓋材の構成としては、特に限定されないが、とくに、蓋材の少なくとも上記第2の積層フィルム側の面がオレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物で形成されていることが好ましく、それによって、第2の積層フィルムとの熱接着強度を容易に望ましい強度とすることが可能になる。
【0015】
また、上記蓋材自体の構成としては、単層構成、積層体構成のいずれも採用可能であるが、蓋材が芯層を有する積層体に構成されていると、蓋材の各面、とくに第2の積層フィルム側の面の材質を望ましい材質で構成しやすくなるので、とくに好ましい。芯層としては樹脂や樹脂組成物からなる層、金属からなる層のいずれも可能であり、例えば、蓋材を、樹脂ラミネート金属材料から構成されている形態とすることできる。この場合、蓋材の芯層を構成する金属としては、例えばアルミニウムを採用できる。
【0016】
本発明に係る易開封性容器においては、前述の如く、第2の積層フィルムの内部の易剥離面における層間剥離により易開封性が付与されるが、この易剥離面による剥離開始をより容易にするために、意図的に剥離開始側端部の位置を設定することができ、この剥離開始側端部の位置は、開孔から離れた開孔とは反対側の位置に設定することもできるし、開孔側の位置に設定することもできる。
【0017】
すなわち、本発明に係る易開封性容器における第一の好ましい形態は、上記第2の積層フィルムの面方向において、上記第2の積層フィルムが上記蓋材と接合される第1の接合領域の外縁端部であって、上記第2の積層フィルム内の上記易剥離面による剥離開始側における端部の位置が、上記第2の積層フィルムが上記第1の積層フィルムと接合される第2の接合領域の外縁端部であって、上記第2の積層フィルム内の上記易剥離面による剥離開始側における端部の位置よりも、上記開孔寄りの位置に設定されている形態である(第一の形態)。この第一の形態は、蓋材による開封が容器の外側から行われ、かつ、第1の接合領域の外縁端部側に位置する上記易剥離面による剥離開始側から行われことを前提とした易開封性容器である。
【0018】
また、本発明に係る易開封性容器における第二の好ましい形態は、上記第2の積層フィルムの面方向において、上記第2の積層フィルムが上記蓋材と接合される第1の接合領域の開孔側に位置する端部であって、上記第2の積層フィルム内の上記易剥離面による剥離開始側における端部の位置が、上記第2の積層フィルムが上記第1の積層フィルムと接合される第2の接合領域の開孔側に位置する端部であって、上記第2の積層フィルム内の上記易剥離面による剥離開始側における端部の位置よりも、上記開孔からより遠い位置に設定されている形態である(第二の形態)。この第二の形態は、容器内部の蒸気圧等により開封が容器の内側から開孔を通して行われることを前提とした易開封性容器である。
【0019】
上記第一の形態、第二の形態の如く、本発明に係る易開封性容器においては、上記第2の積層フィルム内の易剥離面による剥離開始側を、開孔の位置に対して、開孔からより遠い容器の外部側の位置または開孔により近い容器の内部側の位置のいずれに設定することも可能である。上記第一の形態のように、剥離開始側が開孔からより遠い容器の外部側に設定されれば、蓋材の開封方向への動作に伴う易開封性が向上され、上記第二の形態のように、剥離開始側が開孔により近い容器の内部側に設定されれば、易剥離面による易開封性を、例えば、レトルト食品を収容した容器の内部蒸気抜きなどに適用できる。
【0020】
上記第一の形態、第二の形態にあっては、上記第1の接合領域の端部の位置と上記第2の接合領域の端部の位置との上記第2の積層フィルム面方向距離が、上記第2の積層フィルムの厚みの5倍以上に設定されていることが好ましい。このように設定することにより、第2の接合領域の端部の位置に対し、開封、剥離動作の開始位置を形成する第1の接合領域の端部の位置をより明確に区別、設定でき、より確実に所望の易開封性が達成できる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明に係る易開封性容器によれば、優れた密封性と優れた易開封性を効果的に両立させることができる。また、上記第一の形態、第二の形態の好ましい形態を採用すれば、第2の積層フィルム内の易剥離面による易剥離性を利用した所望方向の開封動作を、より容易にかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(A)〜(D)は、本発明の一実施態様に係る易開封性容器の製造過程の一例を示す容器蓋部周りの部分断面図であり、図1(D)が完成された容器蓋部周りの構造および開封開始時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る易開封性容器の製造過程の一例を示しており、とくに容器蓋部周りの構造を示している。図1(D)が完成された易開封性容器1を示しており、とくに金属製(例えば、アルミニウム製)の容器蓋部2周りの構造を示している。図1に示す易開封性容器の製造過程においては、まず、図1(A)に示すように、例えば、アルミニウム製の容器蓋部2の外面に、該蓋部2側の面が変性オレフィン系樹脂(例えば、変性ポリプロピレン系樹脂)の層3で形成され反蓋部側の面がオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)の層4で形成された第1の積層フィルム5が熱接着される(熱接着面6)。
【0024】
次に、図1(B)に示すように、一面が第1の積層フィルム5の上記反蓋部側の面に接合される第1接合面7に形成され、他面が蓋材と接合される第2接合面8(図1(D)に図示)に形成される第2の積層フィルム9が、本実施態様では、第1接合面7、第2接合面8ともに熱接着されて設けられている。この第2の積層フィルム9は、本実施態様では、3層の積層フィルムからなり、第1接合面7を形成する第一の外層10と、第2接合面8を形成する第二の外層11と、第一の外層10および第二の外層11の構成材料とは非相溶系の樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなる中間層12とを有している。
【0025】
上記第2の積層フィルム9の内部のいずれかの層間が、第1接合面7における第1の積層フィルム5の反蓋部側の面との接合強度および第2接合面8における蓋材13(図1(D)に図示)との接合強度よりも低い層間剥離強度の易剥離面14(例えば、第二の外層11と中間層12との境界面)に構成されている。
【0026】
上記第一の外層10および/または第二の外層11は、例えば、オレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物からなり、上記中間層12は、例えば、その積層方向両側の層との接合強度が10N/15mm以下の層からなる。中間層12は、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン樹脂の少なくともいずれかを含む樹脂層からなる。
【0027】
次に、図1(C)に示すように、外面に第1の積層フィルム5、第2の積層フィルム9が熱接着により積層された容器蓋部2の積層構造に対して、打ち抜き等により、開封用の開孔15が開設される。
【0028】
次に、図1(D)に示すように、上記開孔15を開封可能な蓋材13で覆うことにより、易開封性容器1が完成される。本実施態様では、蓋材13は、樹脂ラミネート金属材料から構成されており、蓋材13の芯層16がアルミニウムで、その両側のラミネート樹脂層17、18がオレフィン系樹脂またはそれを含む樹脂組成物で構成されて、第2の積層フィルム9側のラミネート樹脂層17が第2接合面8で第2の積層フィルム9と熱接着されている。ただし、蓋材13の材質、構成は本実施態様のものには限定されない。
【0029】
また、本実施態様では、第2の積層フィルム9の面方向において、第2の積層フィルム9が蓋材13と接合される第1の接合領域19の外縁端部であって、第2の積層フィルム9内の易剥離面14による剥離開始側(剥離開始部20側)における端部の位置21が、第2の積層フィルム9が第1の積層フィルム5と接合される第2の接合領域22の外縁端部23であって、第2の積層フィルム9内の易剥離面14による剥離開始側(剥離開始部20側)における端部23の位置よりも、開孔15寄りの位置に設定されている。
【0030】
図1(D)においては、第2の積層フィルム9はその厚み方向に拡大されて表示されているが、上記第1の接合領域19の外縁端部における剥離開始部20の位置と、第2の接合領域22の外縁端部23の位置との第2の積層フィルム面方向距離dは、第2の積層フィルム9の厚みの5倍以上に設定されている。
【0031】
このように構成された易開封性容器1においては、蓋材13を開封方向24に動作させることにより、蓋材13によるシールが解除され、容器1の開孔15が開封される。すなわち、蓋材13の開封方向24への動作に伴って、第1の接合領域19における第2接合面8の蓋材13との接合強度および第2の接合領域22における第1の積層フィルム5との接合強度よりも低い層間剥離強度を有する易剥離面14の剥離開始部20から層間剥離が開始され、易剥離面14に沿って剥離が続行されて、開封が完了する。このとき、第1の接合領域19の、上記剥離開始側における端部の位置21が、上記第2の接合領域22の剥離開始側における端部の位置23(つまり、第2の接合領域22の外縁端部23の位置)よりも、開孔15寄りの位置に設定されているので、蓋材13の開封方向24への動作に伴う易剥離面14における剥離開始動作が行われやすくなり、易開封性が向上される。
【0032】
なお、上記開封動作においては、易剥離面14の剥離開始部20から層間剥離が開始される際、該剥離開始部20よりも外側(図1のより左側)に位置する第二の外層11部分と剥離開始部20よりも容器内側(図1のより右側)に位置する第二の外層11部分との間で分断が生じる可能性があるが、この分断をより円滑かつ容易に行わせるためには、例えば、剥離開始部20の位置に予めミシン目などの切れ目を入れておいてもよい。
【0033】
また、上記実施態様では、第2の積層フィルム9内の易剥離面14による剥離開始側の剥離開始部20が、開孔15に対して容器1の外部側に設定されているが、前述の第二の形態の如く、開孔15に対して容器1の内部側に設定することも可能である。この場合には、図1(D)における第1の接合領域19の端部の位置21、剥離開始部20、第2の接合領域22の端部の位置が、図1(D)とは反対側の容器内部側(つまり、開孔15により近い位置側)に設定されればよいので、図示は省略する。また、この場合には、前述したように、易剥離面14による易開封性を、例えば、レトルト食品を収容した容器の内部蒸気抜きなどに適用できる。
【0034】
次に、本発明の易開封性容器における第2の積層フィルムの製造法の一例を説明する。
3台の押出機を用いて、1台の押出機から第一の外層用樹脂として密度0.87〜0.91g/cm、メルトフローレート(MFR)(230℃)が2〜8g/10分の範囲のポリプロピレン系樹脂を220〜230℃で押し出し、もう一台の押出機から中間層用樹脂として密度0.82〜0.91g/cm、MFR(230℃)が2〜15g/10分の範囲のポリ4−メチルペンテン−1樹脂などを220〜230℃で押し出し、さらにもう一台の押出機から第二の外層用樹脂として密度0.9〜0.91g/cm、MFR(230℃)が2〜10g/10分の範囲のポリプロピレン系樹脂を220〜230℃で押し出し、共押出多層ダイで積層し、第一の外層の厚みが5μm、中間層の厚さが40μm、第二の外層の厚さが5μmとなるようにして、フィルム状に押し出し、25〜50℃の冷却ロールにキャストして冷却固化し、第2の積層フィルムとする。それぞれの層の樹脂材料を変える場合は、樹脂の融点やMFRを考慮して常法により押出し温度を設定すればよいが、MFRが大きく異なる樹脂を積層することは困難であり、樹脂の組み合わせに制約があることは言うまでもない。
【0035】
続いて、必要に応じ第二の外層または/および第一の外層の表面にコロナ放電処理を施し、巻き取り、さらに所定の幅、長さにスリットする。
【0036】
なお、図1に示した実施態様においては、開封動作における剥離の初期段階に第二の外層にその厚さ方向に分断が生じることが必要であり、第二の外層の厚さが厚すぎると、分断が生じにくくなって容易に剥離できないという問題が発生することがある。このため、第二の外層の厚さとしては、剥離のための層間剥離強度の設計値にもよるが、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は、次の通りである。
【0038】
(1)樹脂の密度
JIS K 7112(1980)に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0039】
(2)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B 7509(1992)、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0040】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX−100形((株)キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。なお、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0041】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0042】
(5)容器蓋部
腐食防止用途でエポキシ樹脂コートなどしていないアルミシート#3000(例えば、東洋製罐社製や大和製罐社製)を使用した。
【0043】
(6)第1の積層フィルム
基材層がポリプロピレン系樹脂でヒートシール層が変性ポリプロピレン系樹脂の2層で構成された無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製“トレファン”NO 9710B)を使用した。
【0044】
(7)評価用シートの作成
(5)で準備したアルミシートを幅100mm×100mmに成型したものを準備し、(6)で準備した第1の積層フィルムを同じ大きさにしたサンプルのヒートシール層をのせ富士インパルス(株)製のインパルスシーラー(CA−450−10)を使用し、加熱時間1.0秒、冷却時間3.0秒の条件でシールし評価用シートとした。
【0045】
(8)評価用易開封性シートの作成
(7)で作成した評価用シートの第1の積層フィルム側に第2の積層フィルムを幅75mm×長さ75mmに切ったサンプルの第一の外層を重ね合わせ、(7)でシールした位置と同じ位置にインパルスシーラーの条件は同じにしてシールし、シールされた場所に直径5mmの開孔を作成し評価用易開封性シートとし、手で第2の積層フィルムを引っ張ってシールできていた場合を○、シールできなかった場合を×とした。
【0046】
(9)蓋材の作成
無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製“トレファン”NO ZK93KM)をポリウレタン接着剤で固形分塗布量2g/cmでドライラミネートし、40℃で72時間エージングし、蓋材を作成した。
【0047】
(10)評価用易開封性シートと蓋材とのシール強度
(9)で準備した蓋材を幅75mm×長さ75mmに切ったサンプルの蓋材を(8)で準備した評価用易開封性シートの第2の積層フィルムがシールされ直径5mmの開孔を有している場所が覆われるように重ね、(8)で作成した評価用易開封性シートと評価用シートをシールした位置よりも奥側1mmの位置をインパルスシーラーの条件は同じにしてシールしたときに、適度な力で第2の積層フィルム内で層間剥離できた場合を○、層間剥離しなかった場合を×とした。
【0048】
実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)変性ポリプロピレン(変性PP)(PP−1)
三菱化学(株)製“モディック”P614V、MFR(230℃):3.4g/10分、密度:0.90g/cm
【0049】
(2)変性ポリプロピレン(変性PP)(PP−2)
三菱化学(株)製“モディック”P565、MFR(230℃):5.9g/10分、密度:0.89g/cm
【0050】
(3)ホモポリプロピレン(H−PP)(PP−3)
(株)プライムポリマー製“プライムポリプロ”F107DJ、MFR(230℃):8.0g/10分、密度:0.90g/cm
【0051】
(4)エチレン・プロピレンランダムコポリマー(EPC)(PP−4)
住友化学(株)製 住友“ノーブレン”FL6412、MFR(190℃):6.0g/10分、密度:0.900g/cm
【0052】
(5)エチレン・プロピレンブロック共重合体(B−PP)(PP−5)
住友化学(株)製WFS5293−17、MFR(190℃):3.0g/10分、密度:0.90g/cm
【0053】
(6)ポリ4−メチルペンテン−1(TPX)(MP−1)
三井化学(株)製“TPX”EP0518、MFR(190℃):4.0g/10分、密度:0.83g/cm
【0054】
(7)エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)(EV−1)
(株)クラレ製“エバール”E105B、MFR(190℃):5.7g/10分、密度:1.14g/cm
【0055】
(8)ナイロン6(N6)(NY−1)
宇部興産(株)製UBEナイロン1013B、密度:1.14g/cm
【0056】
(9)ポリエステル(PET)(PT−1)
東洋紡(株)製“バイロン”GM913、密度:1.15g/cm
【0057】
実施例1
第一の外層の樹脂として変性ポリプロピレン(PP−1)100重量%を用い、中間層としてポリ4−メチルペンテン−1(TP−1)100重量%を用い、第二の外層としてホモポリプロピレン(PP−3)100重量%を、3種3層無延伸フィルム成形機の押出機3台に各々投入し、180〜230℃の押出温度で230℃のTダイより押し出し、40℃のキャスティングロールで急冷し易開封性積層フィルム(第2の積層フィルム)を成形した。得られた易開封性積層フィルムの総厚さは50μmで第一の外層の厚さが5μm、中間層の厚さが40μm、第二の外層の厚さが5μmであった。
【0058】
実施例2
第一の外層を変性ポリプロピレン(PP−2)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
実施例3
中間層をエチレン・ビニルアルコール共重合体(EV−1)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
実施例4
中間層をナイロン6(NY−1)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0061】
実施例5
中間層をポリエステル(PT−1)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0062】
実施例6
第二の外層をエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP−4)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0063】
実施例7
第二の外層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(PP−5)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0064】
実施例8
第二の外層を変性ポリプロピレン(PP−1)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0065】
実施例9
第一の外層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(PP−5)100重量%、第二の外層を変性ポリプロピレン(PP−1)100重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0066】
実施例10
第一の外層の厚さを10μm、中間層の厚さを30μm、第二の外層の厚さを10μmとする以外は実施例1と同様に行った。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1から9では、第1の積層フィルムと第2の積層フィルムの第一の外層間および蓋材と第2の積層フィルムの第二の外層間で剥離することなく、第二の外層と中間層の間で層間剥離をすることができた。実施例10では、第二の外層の厚さが10μmであり、初期の剥離の抵抗が大きいものであったが、層間での剥離ができ実用レベルと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る易開封性容器は、易開封性が望まれるあらゆる金属製容器に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 易開封性容器
2 容器蓋部
3、4 層
5 第1の積層フィルム
6 熱接着面
7 第1接合面
8 第2接合面
9 第2の積層フィルム
10 第一の外層
11 第二の外層
12 中間層
13 蓋材
14 易剥離面
15 開孔
16 芯層
17、18 ラミネート樹脂層
19 第1の接合領域
20 剥離開始部
21 端部の位置
22 第2の接合領域
23 外縁端部
24 開封方向
d 端部の位置間の第2の積層フィルム面方向距離
図1