(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435248
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】内燃機関始動用スタータ
(51)【国際特許分類】
F02N 11/00 20060101AFI20181126BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20181126BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
F02N11/00 T
F02N11/00 V
H02K5/10 B
H02K7/10 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-192515(P2015-192515)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66953(P2017-66953A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】泉 満朗
(72)【発明者】
【氏名】西舘 圭介
(72)【発明者】
【氏名】新田 懐之
【審査官】
小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−252622(JP,A)
【文献】
実開昭58−127839(JP,U)
【文献】
特開2016−138486(JP,A)
【文献】
特開2015−209766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00
H02K 5/10
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ固定子を備えたヨークを備え、
前記ヨークとギヤケースとの間にセンタープレートを挟持した内燃機関始動用スタータ
であって、
前記センタープレートは、前記ヨーク及び前記ギヤケース内の内歯車と隣接して配置されており、
前記センタープレートと前記内歯車とに備えた排出口が連結し、前記ギヤケースに設けた排出用の開口部につながる排水経路を形成し、
前記センタープレートで仕切られた前記ヨークの内部と、前記ギヤケースの内部が前記排出経路によって連通した内燃機関始動用スタータ。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関始動用スタータであって、
前記センタープレートの排出口を構成する開口部の周囲に突起を備え、
前記突起が前記ギヤケースの側壁と勘合し、前記センタープレートと前記内歯車との前
記排出口の径方向ずれを抑制した内燃機関始動用スタータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関始動用スタータ内部に侵入した水及び塵埃(以下、侵入物と称す)を効果的に外部に排出させる構造を備えた内燃機関始動用スタータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関始動用スタータ内部に侵入した侵入物を外部へ排出させる方法として、特許文献1のようにヨーク側面に別部品である排出用パイプを備え、前記排出パイプより侵入物を外部へ排出させる方法がある。
【0003】
以下、特許文献1の
図1、
図2により、排出パイプより侵入物を外部へ排出させる方法について説明する。
図1にはヨークの機枠9に設けられた取付穴9aに別部材である排水部材12を嵌め込むことで、排水経路を形成していることが記載されている。
図2には排水経路を構成する排水部材12が別部材であることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には内燃機関始動用スタータのギヤケースの開口部から侵入した侵入物をモータ内部へ侵入させない構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−102683号公報
【特許文献2】特開2003−155967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成によれば、ヨークの機枠に設けられた取付穴に別部材である排水部材を嵌め込むこという工程が発生するため、排水部材をヨークに嵌め込む際、に欠品、誤組み、という製造上の課題がある。また排出部材は別部材であることから、製造コストが高くなるという課題がある。
【0007】
特許文献2の構成によれば、内燃機関始動用スタータのギヤースの開口部から侵入した侵入物が溜まりクラッチ等の動作に影響を与えると共に、モータ内部に侵入した侵入物を外部へ排出させるための排水経路を備えていないため、侵入物を外部へ排出できず、モータとヨークの間に侵入物が溜まることで、モータ回転動作に影響を与えるという品質上の課題がある。
【0008】
そこで本発明は、外部への排出経路を備えた安価で信頼性の高い内燃機関始動用スタータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の望ましい形態の一つは次の通りである。
【0010】
当該内燃機関始動用スタータは、センタープレートと内歯車に連結した穴もしくは溝(以下、排出口と称す)を設けるとともにギヤケースの前記排出口近傍に開口部を設けることで、当該内燃機関始動用スタータ内部に侵入した侵入物を前記排出口から効果的に外部に排出させることが出来る。
【0011】
また、センタープレートの排出口の成形と同時に位置決め用突起を設けることで、センタープレートと内歯車に備えた排出口の円周方向ずれを抑制する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センタープレートと内歯車にセンタープレートと内歯車に連結した排出口を備えることで、ヨーク内部に侵入した侵入物とギヤケースの開口部から侵入した侵入物を外部に排出することが出来る。
【0013】
また、従来品の内燃機関始動用スタータと同じ構成部品で対応可能であり、これによって組立て方法の変更はなく、製造コストを安価に抑えた内燃機関始動用スタータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る内燃機関始動用スタータの構造を示す断面図。
【
図2】
図1のヨークとギヤケースとの間に挟持されたセンタープレートの固定構造を示す拡大断面図。
【
図3】実施例に係る内燃機関始動用スタータのギヤケースと内歯車を組み合わせた状態を示す正面図。
【
図4】
図3にセンタープレートを組み合わせた状態を示す正面図。
【
図8】実施例に係るセンタープレートを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は内燃機関始動用スタータ1の構造を示す。
【0017】
内燃機関始動用スタータ1は、回転力を発生するモータ回転子2を備えている。
【0018】
モータ回転子2の回転力は、回転軸3及びワンウェイクラッチ4を介してピニオン5に伝達される。
【0019】
マグネチックスイッチ6は、モータ回転子2への通電のオン・オフを行い、吸引力を発生する。
【0020】
ギヤケース7は、モータ回転子2とマグネチックスイッチ6を固定し、エンジンとの取り付け面を有している。またギヤケース7は、エンジンに内燃機関始動用スタータ1を取付けた際、地方向となる位置に排出用の開口部7cを備えている。
【0021】
モータ固定子を備えたヨーク8は管状であり、リヤカバー9とギヤケース7の間で挟待により配置される。
【0022】
シフトレバー10は、マグネチックスイッチ6で発生した吸引力によりワンウェイクラッチ4をリングギヤ15側へ押出す。
【0023】
ワンウェイクラッチ4は、モータ回転子2からのエンジンへの回転力を伝達する一方で、エンジンからのモータ回転子2への回転力を遮断する。
【0024】
ピニオン5は、ワンウェイクラッチ4とスプラインにより回転方向で係合しており、且つ軸方向には移動可能であり、回転軸から伝達された回転力をリングギヤ15に伝達する。
【0025】
図2は、
図1のヨーク8とギヤケース7との間に挟持されたセンタープレート12の固定構造を示す。
図3は、ギヤケース7と内歯車11を組み合わせた状態を示す。
図4は、
図3のギヤケース7と内歯車11とを組み合わせた構造体に、センタープレート12を組み合わせた状態を示す。
図5、
図6は内歯車11の構造を示す。
【0026】
図5,6に示すように、内歯車11は、開口部外周に排水経路となる凹部11a凸部11bを備えている。この凹部11aは、
図2,
図3,
図4に示すように、センタープレート12に備えた開口部12aと連結させるように配置する。
【0027】
内歯車11の底部外周に備えた凸部11cにパッキン13(
図1,
図3を参照)を嵌め込んだ状態で、ギヤケース7の内側凹部7a(
図3を参照)に勘合させることで、内歯車11の円周方向の動きを抑制することができる。
【0028】
図7、
図8はセンタープレート12の構造を示す。
【0029】
センタープレート12は、モータ回転子2の軸を通す穴12dを備えている。また外周部に開口部12a,12bを備え、前記開口部12bは突起12cを備えている。この突起12cをギヤケース7の側壁7bに勘合させる(
図3,
図4を参照)ことで、センタープレートの開口部12a,12bと、内歯車の開口部外周に備えた凹部11aの円周方向のズレを抑制し、センタープレート12と内歯車11に連結された排出口14(
図2,
図4を参照)を備えることができる。
【0030】
センタープレート12は、
図1に示すように、モータ固定子を備えたヨーク8とギヤケース7の間で挟持することで軸方向を固定する。
【0031】
以上説明した本実施例によれば、内燃機関始動用スタータ内部に侵入した侵入物は、センタープレート12の開口部12a,12bと内歯車11の凹部11aで構成された排出口14を経由して、ギヤケース7に備えた排出用の開口部7cから排出させることができる。これによって従来品と部品構成、組立て方法の変更は無く、排水経路を確保することができるため、従来品に対し信頼性向上が図れる。
【0032】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 …内燃機関始動用スタータ
2 …モータ回転子
3 …回転軸
4 …ワンウェイクラッチ
5 …ピニオン
6 …マグネチックスイッチ
7 …ギヤケース
7a…内側凹部
7b…側壁
7c…排出用の開口部
8 …ヨーク
9 …リヤカバー
10 …シフトレバー
11 …内歯車
11a…凹部
11b…凸部
11c…凸部
12 …センタープレート
12a,12b…開口部
12c…突起
12d…モータ回転子2の軸を通す穴
13 …パッキン
14 …排出口
15 …リングギヤ