特許第6435318号(P6435318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435318海洋モニタリングのための自律式セイルボート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435318
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】海洋モニタリングのための自律式セイルボート
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/04 20060101AFI20181126BHJP
   B63H 9/06 20060101ALI20181126BHJP
   B63B 43/04 20060101ALI20181126BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20181126BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20181126BHJP
   B63B 11/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   B63H9/04 Z
   B63H9/06 A
   B63B43/04
   B63B35/00 T
   B63B49/00 Z
   B63B11/00 A
【請求項の数】30
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-504324(P2016-504324)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公表番号】特表2016-512802(P2016-512802A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】US2014030829
(87)【国際公開番号】WO2014153299
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】13/845,488
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515263901
【氏名又は名称】オートノーマス マリーン システムズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AUTONOMOUS MARINE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ホールマンズ,ワルター
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4610212(US,A)
【文献】 米国特許第5072682(US,A)
【文献】 特開平9−142381(JP,A)
【文献】 特開昭56−82697(JP,A)
【文献】 米国特許第3885512(US,A)
【文献】 実開平1−141199(JP,U)
【文献】 特表2007−500638(JP,A)
【文献】 米国特許第4473023(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 11/00
15/00
35/00
43/04
49/00
B63H 9/04−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイルボートであって、
互いに平行に配置され、トラス配置によって共に連結される、複数のハル、
ハルの平面に垂直な第1の回転軸の周り、およびハルの平面に平行な第2の回転軸の周りで回転可能な、ウィングセイル構造、および、
セイルボートの転覆が検知されたときに、ウィングセイル構造を第2の回転軸の周りで回転させるように構成される、自動復原システムを含む、
前記セイルボート。
【請求項2】
ウィングセイル構造が、自動復原システムがウィングセイル構造を回転させる場合にセイルボート復原の促進に供する浮力要素を含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項3】
浮力要素が、ウィングセイルを含む、請求項2に記載のセイルボート。
【請求項4】
浮力要素が、ウィングセイル上方に浮揚性球体を含む、請求項3に記載のセイルボート。
【請求項5】
ハルに平行なキール回転軸の周りで回転可能なキールを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項6】
キールがウィングセイル構造に固定して取り付けられ、キール回転軸が第2の回転軸に一致する、請求項5に記載のセイルボート。
【請求項7】
転覆が起こったかどうかを検知し、転覆が検知された場合に自動復原システムを作動させる、制御システムを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項8】
制御システムが、転覆が検知される前に傾船角度を検知し、検知された傾船角度に基づいて、自動復原システムを作動させる、請求項7に記載のセイルボート。
【請求項9】
自動復原システムを動作可能にするために必要なエネルギーを提供する、1または2以上のソーラーパネルを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項10】
ラダー、およびターゲット領域へ向けてセイルボートの進行方向を生み出すためにラダーの向きを制御するナビゲーション制御システムを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項11】
ウィングセイル構造が、セイルボートを前方に推進させるための揚力を提供するウィングセイルを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項12】
ウィングセイル構造が、現在の風向きと一貫して向きを揃えるようにウィングセイル構造上で旋回する風見を含む、請求項11に記載のセイルボート。
【請求項13】
ウィングセイル構造が、ウィングセイル構造の第1の回転軸周りの回転を促進するバランス要素を含む、請求項12に記載のセイルボート。
【請求項14】
ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差を制御する連結ロッドを含む、請求項12に記載のセイルボート。
【請求項15】
トラス構造が、ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差を、トラス構造の向きに基づいて制御するための、連結ロッドに連結されるカムを含む、請求項14に記載のセイルボート。
【請求項16】
カムが、トラス構造の向きに基づいてウィングセイルの所望の迎え角度を提供するように成形されたカムスロットを含む、請求項15に記載のセイルボート。
【請求項17】
モニタリング装置を設置するための1または2以上の水密の区画を含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項18】
モニタリングシステムから遠隔のモニタリング局へ情報を通信するための1または2以上の通信システムを含む、請求項17に記載のセイルボート。
【請求項19】
1または2以上の通信システムが、衛星トランシーバーを含む、請求項18に記載のセイルボート。
【請求項20】
1または2以上の通信システムが、SENSトランスミッターを含む、請求項19に記載のセイルボート。
【請求項21】
ウィングセイル構造の第1の回転軸周りの回転を制御するモーターを含む、請求項1に記載のセイルボート。
【請求項22】
モーターが、ウィングセイル構造が第1の回転軸周りで変動するとエネルギーを発生する発電機として構成され得る、請求項21に記載のセイルボート。
【請求項23】
セイルボートであって、
互いに平行に配置され、トラス配置によって共に連結される、複数のハル、
ハルの平面に垂直な第1の回転軸の周りで回転可能な、ウィングセイル構造、および、
ウィングセイル構造の第1の回転軸周りの回転を制御する、自動復原システムを含み、
ウィングセイル構造が、
セイルボートを前方に推進させるための揚力を提供するウィングセイル、
現在の風向きと一貫して一致するようにウィングセイル構造上で旋回する風見、および、
ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差を制御する連結ロッドを含み、および、
自動復原システムが、トラス配置に取付けられ、ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差をトラス構造の向きに基づいて制御するための連結ロッドに連結される、カムを含む、
前記セイルボート。
【請求項24】
ウィングセイル構造が、ウィングセイル構造の第1回転軸周りの回転を促進するバランス要素を含む、請求項23に記載のセイルボート。
【請求項25】
カムが、トラス構造の向きに基づいてウィングセイルの所望の迎え角度を提供するように成形されたカムスロットを含む、請求項23に記載のセイルボート。
【請求項26】
ウィングセイル構造の第1の回転軸周りの回転を制御するモーターを含む、請求項23に記載のセイルボート。
【請求項27】
モーターが、ウィングセイル構造が第1の回転軸周りで変動するとエネルギーを発生する発電機として構成され得る、請求項26に記載のセイルボート。
【請求項28】
水中に転覆したセイルボートを復原する方法であって、転覆したセイルボートの浮心を、転覆したセイルボートの重心から離すために、水の表面に平行な軸の周りで浮力マスト構造を回転させ、それにより復原トルクを導くことを含む、前記方法。
【請求項29】
セイルボートを自己調整させる方法であって、
特定の迎え角でセイルボートを前方に推進させるための揚力を提供するウィングセイル構造を提供すること、
セイルボートに対する風向きを示す風見構造を提供すること、
風見構造によって示された風向きに基づいてウィングセイルの迎え角を制御するカムを介して、ウィングセイル構造と風見構造とを連結すること、
を含む、前記方法。
【請求項30】
カムが、その相対的な向きがセイルボートの向きと一致するように、セイルボートに強固に固着され、風見構造の回転がセイルボートの向きに対するウィングセイル構造の回転を引き起こすように、風見構造に連結される、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律式セイルボートの分野、特に、周囲および他の状況をモニタリングおよび報告するためのモニタリングおよび通信装置を含む、低コスト、高効率、および、耐久性の高い、セイルボートに関する。
【背景技術】
【0002】
世界の海は、海によって取り囲まれる領域のサイズ、および、遠方領域まで到達するために必要な時間および資源のせいもあって、モニタリングするには最も困難で費用が掛る領域である。南太平洋などの遠方領域における船舶の有人モニタリングを提供するための一日当たりのコストは、約10,000−1,000,000ドルであることが見積もられている。したがって、実際には非常に小さな海洋モニタリングが実行されている。同様に、航空偵察は、多額の費用が掛り、各フライトの間にモニタリングされる範囲および領域の観点から非常に限定的なものである。また、有人のモニタリング船舶または航空機は、不利な気象条件に影響されて、モニタリングが実施される時間が制限されたり、配置されたモニタリング要員を危険にさらす可能性がある。衛星画像は、海の表面および上方における条件に関するいくつかの情報を提供するが、海面下の状況に関しては大幅に制限されている。
【0003】
より詳細な海洋モニタリングの提供へのニーズが高まっている。例えば、海洋生物に有害な炭化水素および他の物質の増加するレベルに関する懸念である。沿岸領域における、施肥地から流れる窒素は、特に懸念されている。特定の生息地における魚のモニタリングは、増加する死亡率または減少する出生率の早期警戒を提供し得る。同様に、湾での原油流出などの環境災害において、災害の影響が及ぶ範囲を正確にモニタリングすることは、救助や復旧作業を助けることになる。
【0004】
環境への懸念以上に、世界の特定領域における海賊行為の増加や、海を介した麻薬取引の増加が懸念されている。有人監視は、範囲と領域が限られ、いくつかのケースでは、監視要員を危険にさらす。
【0005】
特定の懸念への取り組みに加えて、海洋条件のモニタリングは、嵐および津波を予報する能力を高め、特定の危険な条件の船舶に警告することによる海洋の安全を高め得る。いくつかのケースでは、ある領域における海の遠隔モニタリング能力は、その領域における捜索および救助作業を高め得る。
【0006】
海洋モニタリングを増強するための入手可能な手段を提供することは有利である。また、モニタリングの現場で人員を必要とすることなく、この増強された海洋モニタリングを提供することは有利である。また、危険な条件における残存性の高い公算を伴う、信頼性の高い、強固なモニタリング能力を提供することは有利である。
【0007】
これらおよび他の利点は、周囲および他の状況を報告するためのモニタリングおよび通信装置を装備した自律式セイルボートの船団によって実現可能である。最適な安定性およびスピードのために、自律式セイルボートは、自己復原能力を具備するマルチハルセイルボート(カタマラン)である。各セイルボートは、通信装置およびモニタリング装置に動力を供給するソーラーパワーを使用して、1または2以上の衛星リンクを介して情報を送受信する。各セイルボートは、風に対する所望の迎え角(“迎え角”)を維持するための自動帆走システム、および、十分な電力が利用可能である場合に要求に応じて使用する電気推進を含む。任務特有のペイロードを支持するために、モジュラー式設計が使用される。
【0008】
例示的な実施態様において、セイルボートは、互いに平行に配置され、トラス配置によって共に連結される、複数のハル、ハルの平面に垂直な第1の回転軸の周り、およびハルの平面に平行な第2の回転軸の周りで回転可能な、ウィングセイル構造、および、セイルボートの転覆が検知されたときに、ウィングセイル構造を第2の回転軸の周りで回転させるように構成される、自動復原システムを含む。
【0009】
転覆したセイルボートの復原は、転覆したセイルボートの浮心を、転覆したセイルボートの重心から離すために、水の表面に平行な軸の周りで浮力マスト構造を回転させることによって、実行されてもよい。
【0010】
他の例示的な実施態様において、セイルボートは、互いに平行に配置され、トラス配置によって共に連結される、複数のハル、ハルの平面に垂直な第1の回転軸の周りで回転可能な、ウィングセイル構造、および、ウィングセイル構造の第1の回転軸周りの回転を制御する、自動復原システムを含む。ウィングセイル構造は、セイルボートを前方に推進させるための揚力を提供するウィングセイル、現在の風向きと一貫して一致するようにウィングセイル構造上で旋回する風見、および、ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差を制御する連結ロッドを含む。自動復原システムは、トラス配置に取付けられ、ウィングセイル構造の向きと風見の向きとの間の差をトラス構造の向きに基づいて制御するための連結ロッドに連結される、カムを含む。
【0011】
自己調整は、風見構造によって示された風向きに基づいてウィングセイルの迎え角を制御するカムを介して、ウィングセイル構造と風見構造とを連結することによって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、衛星およびインターネット接続を介して利用者と通信する自律式セイルボートの船団の例示的な概念図を示す。
図2図2A−2Bは、本発明の側面に従った、例示的な自律式セイルボートを示す。
図3図3A−3Iは、自己復原能力を備えた、例示的な自律式セイルボートを示す。
図4A-B】図4A−4Bは、自己調整能力を備えた、例示的な自律式セイルボートを示す。
図4C-E】図4C−4Eは、自己調整能力を備えた、例示的な自律式セイルボートを示す。
図5図5は、例示的な自律式セイルボートの通信および制御システムの例示的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を通して、同じ参照番号は、同様または対応する特徴または機能を指示するものである。包含される図面は、例示目的のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
詳細な説明
以下の詳細な説明においては、本発明の概念を十分に理解できるように、特定の構造、インターフェイス、技術などの具体的な詳細が、限定のためではなく、説明のために記載されている。しかしながら、当業者には明らかなように、本発明は、これらの詳細な説明から逸脱した他の実施態様において実行され得る。同様に、詳細な説明の本文は、図に示されるような例示的な実施態様を対象にしたものであり、説明された発明を特許請求の範囲に限定するものでも、特許請求の範囲に明確に含まれている限定を越えるものでもない。単純化および明確化の目的のために、不必要な詳細で本発明の説明を阻害することがないように、既知のデバイス、回路および方法の詳細な説明は省略される。
【0015】
図1は、衛星とインターネット接続とを介して利用者と通信する自律式セイルボートの船団の例示的なコンセプトスケッチを示す。典型的な実施形態において、船団のプロバイダーは、任務特有のモニタリングタスクのために、顧客の特定の要求に基づいて船舶を構成する。船団の移動は、船団のプロバイダーによって顧客からの指令に基づいて制御され、任務特有の情報の収集は、顧客によって少なくとも一部が制御されてもよい。
【0016】
船舶110の船団は、モニタリングされる海域に配備され、制御情報を受信、およびモニタリングならびに他の情報を送信するための、モニタリングおよび制御局150と通信する。他の形態の通信も使用できるが、各船舶との通信は、典型的には衛星通信システム120−130を介す。例えば、海岸に近接する任務においては、通信は、陸上のセルタワー170を使用したセルラーネットワークを介して提供され得る。
【0017】
任意に、異なる通信システムが、異なる応用のために使用され得る。例えば、ナビゲーション情報は、1つのシステムを介して通信され、モニタリング情報は、もう一つのシステムを介して通信されてもよい。
【0018】
モニタリングおよび制御システム150は、例えば、インターネットネットワーク140を介して、制御情報を船舶の船団へ通信し、船舶からのフィードバック情報を受信する。他のモニタリングシステム160は、船舶からのモニタリング情報を受信してもよく、また、任意に特定のモニタリング機器を制御するように構成されてもよい。
【0019】
使用される通信システムに応じて、メッセージは、目的地情報を提供する。例えば、インターネットネットワーク140が使用される場合、メッセージは、衛星通信システム120−130とインターネット140との間のインターネットインターフェイス135にメッセージを運ぶための目的地URLアドレス、またはアドレスのセットを通信する。セルラーネットワークが使用される場合、メッセージは、1または2以上の目的地にアドレスされたテキストメッセージであってもよい。
【0020】
コマンド通信システムの例示的な実施形態では、各船舶は、個々の通信アドレスを有していてもよく、船団全体としての制御、ならびに船団内の各船舶の制御を可能にする、船団通信アドレスを有していてもよい。制御は、一般的にナビゲーションコマンドおよびモニタリングコマンドの形態である。コマンドの構造は、船舶110に提供されている能力に依存する。例えば、船舶110が、ナビゲーションソフトウェアを含む場合、制御局150は、目標位置(例えば緯度、経度)だけを通信してもよいし、船舶110は、進行方向およびその方向に進むための船舶コマンド(例えば、ラダー制御)を決定してもよい。
【0021】
他の実施形態では、制御局150が、進行方向を通信して、船舶110が、船舶コマンドを決定してもよく、または、制御局150が、船舶コマンドを各船舶110に通信してもよい。コマンド構造は、制御局150の操作者が船団および船団内の各船舶の状況依存の制御を行うことができるように、基本的な船舶コマンドから最高支援ナビゲーションコマンドの範囲であってもよい。
【0022】
各船舶は、船舶の現在位置およびスピードおよび進行方向を提供するGPSシステムなどの、位置およびトラッキング情報を提供するためのナビゲーションモニターを、好ましくは含む。この情報は、一般的に制御局150に通信されると共に、船舶の制御を促進するために船舶内の制御システムによって使用される。例えば、トラッキング情報は、目標の方向(目標への“タッキング(tacking)”)における全体最適のスピードを達成するための異なる“針路”(風に対する方向)上の進行を含む、現在の風況に基づいた目標領域へ向けての最適な有効速度(VMG)を達成するための船舶の経路を制御するために使用されてもよい。
【0023】
各船舶はまた、様々なモニタリング装置を含んでもよく、いくつかの応用において、異なる船舶は、異なるモニタリング装置を備えていてもよい。船舶モニタリング装置は、一般的に、例えば、前述のGPS(全地球測位システム)、慣性計測装置(IMUs)、温度センサー、および風向きおよびスピードセンサー、およびカメラおよびハルスピードセンサーを含んでもよい。
【0024】
任務特有のモニタリング装置は、ビデオおよび赤外線カメラ、スキャナー、音響センサーおよびハイドロフォン、伝導度センサー、酸素および他のガスセンサー、気圧計、光−流体水質センサー、炭化水素検出器、ガイガーカウンター、塩分およびpHセンサー、圧力センサーなどを含んでもよい。モニターされた情報は、モニタリングシステム150、160に、継続的に、定期的に、要求に応じて、または誘発時に、通信されてもよい。誘発は、モニターされる値の変化、位置の変化などに基づいてもよい。上述のように、任務特有のモニターされた情報は、1または2以上のモニタリングシステム160に提供されてもよく、これらのシステムは、いくつかまたはすべてのモニタリング装置を制御してもよい。
【0025】
船舶が船団として配備される場合、領域内の測定は、領域内の異なる位置での船舶から取得することができることに注目することが重要である。そのような多重の測定は、決定された範囲、方向、または、異なる船舶から検知された対象の向きに基づく三角測量のような、共通の位置決定技術を介して、検知された対象の位置を決定することを可能にするであろう。
【0026】
与えられたターゲット領域内の比較的ランダムな船舶の位置が、共通して使用され得るにも関わらず、ターゲット領域内の各ポイントが、少なくとも1つの船舶のモニタリング範囲内にあることを保証するための各船舶の制御されたポジショニング、または、ピケライン(picket line)に近づくまたは横切る全ての対象が検知されることを保証するためのピケラインなどの、与えられたパターンにおける全ての船舶のポジショニングなど、他の配備スキームが使用されてもよいことに注目することも重要である。当業者は、船舶の位置は、領域内を行ったり(タッキング)来たりさせることよって、例えば、特定の水路への入口を横切るピケラインを設置して、各船舶がピケラインに沿って割り当てられた領域を有するように、規定された領域内に制御され得ることを認識するであろう。
【0027】
図2A−2Bは、本発明の態様に従った自律式セイルボート200の一例を示す。好ましくは、セイルボート200は、他の船舶との衝突が起きた時に脅威とならないように、比較的小さくて軽い。例示のセイルボート200は、約8フィートの長さ、約6フィートの船幅、および約200ポンドの重量を有し、特に大量交通量領域において、夜間の任意使用のための赤、緑、および白の走行用ライト(図示せず)が備えられる。
【0028】
セイルボート200は、回転可能なセイル−ウィング構造220を具備するマスト(図示せず)がその上に搭載される、トラス構造240を介して共に連結される2つの波浪貫通型(wave-piercing)ハル210を含む、カタマラン型である。トラス構造240はまた、補助推進力デバイス235を具備するキール230を支持する。少なくとも1つのハル210は、ラダー215を含む。
【0029】
セイルウィング構造220は、セイルウィング222、風見225、およびセイルウィング構造220を最小労力でマストの周りで回転させるカウンターバランス228を含む。例示的な実施態様において、カウンターバランス228は、回転する部分の質量中心が、回転ベアリングの中心線およびセイルウィングの揚力中心と一致することをもたらす。
【0030】
セイルボート200は、マストの上部に通信および他のモニタリング装置250、およびその中に追加の装置が構成され得る水密の区画260を含む。ソーラーパネル223、245は、ウィングセイル220およびトラス240構造上に搭載され、推進力デバイス235およびオンボード通信、制御およびモニタリングシステムに動力を供給するために必要なエネルギーを提供する。任意に、推進力デバイス235は、セイルボート200が帆を張って進行する間に電気を生成するように構成されてもよい。
【0031】
例示的なセイルボート200は、4つの区画260を含み、通常の構成において、1つの区画は、ナビゲーションおよび通信制御システムおよびバッテリーストレージを含み、残りの3つの区画は、任務特有のペイロード(payload)システムのために利用可能である。キール230はまた、水面および水中モニタリングのためのモニタリングデバイス(図示せず)を包含するように構成されてもよい。ハル210およびトラス構造240はまた、特定の任務に依存して他のモニタリングデバイスを包含するように構成されてもよい。
【0032】
図2Bに示されるように、ウィングセイル構造220およびキール230は、ハル210に平行に走るトラス構造240上の回転軸242の周りを回転可能である。トラス構造の上に延伸するマストの周りのウィングセイル構造の回転と対照的に、回転軸242上のウィングセイル構造220の回転は、結果的にハル210に平行な回転軸周りの回転となり、一方で、マスト周りのウィングセイル構造220の回転は、ハル210の平面に垂直な軸周りの回転となる。
【0033】
この例示的な実施態様において、ウィングセイル構造220およびキール230は、共に強固に連結されるため、シングルアクチュエータ(図示せず)が、回転軸242周りの連結体の回転のために使用され得る。任意に、ウィングセイル構造220およびキール230の回転を個別に制御するために、デュアルアクチュエータを使用してもよい。
【0034】
例示的な実施態様において、ウィングセイル構造220およびキール230配置の質量中心は、回転中心、回転軸242よりもはるかに上である。したがって、回転可能なキール230は、風に向けてウィングセイル構造220を回転させることで高い風況においてセイルボートを安定させるように位置づけられ、セイルボートの重心を風上の(windward)ハルへ向けて動かし、風上のハルが水の中から揚がる(フライングハル)可能性を低減する。
【0035】
回転構造220−230の質量中心が低い実施態様においては、ウィングセイル構造220は、風から離れるように回転され、風に与えられる有効なセイル領域を低減し、同様に、風上のハルが水の中から揚がる可能性を低減する。
【0036】
回転可能なキールはまた、セイルボート200のドラフト(draft)の低減を可能にし、セイルボート200の浅瀬における進行を可能にする。回転可能なウィングセイル構造220は、セイルボート200が、そのソーラーパネル223が太陽に向かうポイントにウィングセイルを任意に傾けること、またはトラス構造240上のソーラーパネル245を遮ることを防ぐことを可能にする。ウィングセイル構造220を傾けることはまた、セイルボート200を観測する能力を低減し、極秘任務において有利であり得る。回転可能なウィングセイル構造220はまた、以下にさらに詳述されるように、転覆後のセイルボート200を復原できるようにする。
【0037】
図3A−3Iは、回転可能なウィングセイル構造220を使用した、例示的なセイルボート200の自己復原性能を示す。この例においては、ウィングセイル構造220は、シングルアクチュエータがこれらの要素220、230の両方を回転させるように、キール230に強固に取り付けられる。上記のように、ウィングセイル構造220およびキール230が個別に回転されるように提供してもよい。
【0038】
図3Aは、セイルボート200の安定した向きを示し、この向きにおいて、セイルボート200の重心および浮心は、セイルボート200の略中心に位置付けられる。図3Bにおいて、ウィングセイル上の風力301は、セイルボートを風から離れるように傾ける(傾斜させる)トルク305を導き、左側のハルを水中から揚げ、重心350を少しだけ右側に移動する一方で、浮心360は、右側のハル220に移動し、反時計回り方向において結果的なトルク365をもたらし、風力301に対抗するように働き、セイルボートを図3Aの安定位置にリストアするのに資する。
【0039】
風力301が過度である場合、セイルボートはさらに傾き、重心350をさらに右側に移動させ、トルク365を低減する。風によって起こるトルク305が、トルク365を上回る場合、結果的なトルクは、時計回り方向になり、図3Cに示されるようにセイルボートの転覆を引き起こす。ウィングセイル222は、浮揚性であり、典型的に密閉された中空または発泡(foam)構造であるため、転覆したセイルボート200は、完全にはひっくり返らない。任意に、浮遊球体(図示せず)は、ウィングセイル222の上部に固定されて、ウィングセイル222の浮力をさらに増加させる。この浮遊球体はまた、マスト上部の図2Aの装置250のための水密環境を提供する働きをしてもよい。
【0040】
不運にも、セイルボートは完全にひっくり返らなくても、重心350が浮心360と再び一致するため(右側のハルとウィングセイル222の上部との間)、図3Cの転覆したセイルボートは、安定した位置にある。セイルボートは、セイルボートを図3Cの安定位置から図3Aの安定位置に脱出させるために、十分な反時計回りの復原力/トルクが適用されるまでは、いつまでもこの位置に留まる。
【0041】
上述したように、セイルボート200は、回転可能なウィングセイル222およびキール230を含む。転覆を検知すると、ウィングセイルを回転させるためにモーターが動作可能になり、この場合、所期の回転310は、図3Dに示されるような時計回り方向である。ウィングセイル222が回転軸242の周りを時計回り方向に回転すると、回転は、ウィングセイル222をさらに水の中へ沈めるようとする。ウィングセイル222の浮力のため、このウィングセイル222をさらに水の中へ沈めるようとすることは、浮心360の右側への移動を開始させ、図3Eに示されるように、復原トルク370を導く。このウィングセイル222の回転はまた、重心350の左側への移動を開始させ、復原トルクをさらに増加させる。
【0042】
ウィングセイル222およびセイルボートの他の要素の構造的配置に従って、ウィングセイル222はまた、ウィングセイル222が回転軸242周りで回転することによるダメージを防止するために、セイルボートのマストと一致する回転軸周りに“ニュートラルな”位置へと回転する。
【0043】
ウィングセイル222およびキール230が、回転軸242の周りを時計回りにさらに回転310すると、図3F−3Gに示されるように、セイルボートは、さらに反時計回りに回転し、浮心360はさらに右側に、重心350は左側に移動する。
【0044】
図3Gに示されるように、ある時点において、継続的な反時計回りの回転310は、セイルボートの重心350を、浮心360の左側にさらに移動させ、反時計回りのトルク370をさらに増加させる。このトルク370が、セイルボートの下面上の風力301を乗り越えるのに十分である場合、セイルボートは、図3Hに示されるように、左側のハルが表面に到達するまで反時計回りに回転し続ける。この位置において、セイルボートの重心および浮心は、略整列され、ウィングセイル222の傾きは、風301に対する低減された有効な表面領域を与え、他の転覆の可能性を低減する。
【0045】
風が弱まる場合、ウィングセイル構造220およびキール230は、反時計回り方向315に回転し、セイルボートを図3Iの安定した向きであって、図3Aの本来の安定した向きの向きに戻し得る。したがって、転覆後にウィングセイル構造220を回転軸周りに回転させることによって、セイルボート200は自己復原する。
【0046】
上述のセイルボート200の制御システムは、セイルボート200の垂直向き(横傾斜角度(heeling angle))をモニターするように構成され、転覆が検知された場合に、ウィングセイル構造220およびキール230の回転を開始させる。任意に、横傾斜角度が所定の閾角度を上回る場合に、風に与えられる有効なウィングセイルの表面領域を低減し、重心を風上のハルへ向けて移動させるように(回転可能な構成要素のCGが、回転中心242の上であると仮定して)、ウィングセイル構造220およびキール230の回転が開始されてもよく、したがって、風の横傾斜効果(heeling effect)を低減し、転覆の可能性を低減する。
【0047】
例示的な自律式セイルボート200はまた、セイルボートの進行方向に対する風向きに基づくセイル調整(sail-trim)を自律的に調節する能力を含む。帆走技術において知られているように、最適なスピードを達成するために、揚力(風によってセイル上に及ぼされる前進力)を最大にするための風に対する好ましい迎え角を与えるように、セイルは調整/調節される。セイルボートの進行方向に関して風向きが変わると、セイルは、風向きにおけるこの変化を受け入れるように調整されなければならない。同様に、セイルボートがそのコースを変える場合、新しい進行方向に関する風向きが変化し、セイルは、コースにおけるこの変化を受け入れるように調整されなければならない。
【0048】
セイルボートは、手動/遠隔セイル調整が可能なように構成されてもよいのだが、自己調整能力は、制御の複雑さを大幅に低減し、自己調整能力が、純粋に機械的である場合、適切なセイル調整を提供するのに必要なエネルギー量を大幅に低減する。自律式セイルボート200の好ましい実施態様において、進行方向は、セイルボートを所望の方向へ向けるようにラダーを制御することで制御され、セイルボートを所望の方向へ推進させるのに必要なセイル調整は自動的に制御される。セイルが、現在の進行コースおよび現在の風況で、十分な揚力を達成できない場合、補助推進力システム235が起動されてもよく、または、より効果的な相対的な風向きを提供するように、進行コースが変更されてもよい(所望の進行方向を達成するための交互に替わる進路方向に沿った“タッキング”と呼ばれている)。
【0049】
図4A−4Eは、上から見たセイルボート200を使用した、例示的なセイルボート200のための例示的な自動セイル調整構成を示す。ウィングセイル構造220は、ウィングセイル222、風見225、およびバランスアーム228を含む。ウィングセイル構造220は、ハル210の間のトラス440に強固に連結されるマスト410の周りを自由に回転する。この例において、トラス440は、図示し易いように、ハル210の間の単純な梁として示されている。図2Aに示されるように、実際のトラス構造240は、ソーラーパネル245などのアイテムを支持する多重トラスを含んでもよい。
【0050】
潜在的な横流れを除いては、セイルボートの進行方向は、セイルボートが前方に進行している場合は一般的にセイルボートの向きによって決まるため、本開示においては、参照し易いように、セイルボートの用語“進行方向”およびセイルボートの用語“向き”(すなわち、セイルボートが向けられる方向)は、区別なく使用される。
【0051】
また、参照および理解し易いように、ここでは“実際の風”と“見掛けの風”との間は明確に区別しない。当技術分野で周知のように、移動するセイルボート上の観察者に対して、または、ウィングセイルなどのセイルボート上の対象物に対して、見掛けの風は、実際の風とセイルボートの速度との組み合わせである。例えば、セイルボートが、5ノットの風に真っ直ぐに4ノットで進行する場合、見掛けの風は、セイルボートの前方から9ノットである。
【0052】
セイルボートが、ボート後方からの5ノットの風で、4ノットで進行する場合、見掛けの風は、ボート後方から1ノットである。セイルボートが、風に対して非ゼロ角度で進行する場合、見掛けの風は、風の速度とボート速度との差のベクトルである。ウィングセイルの表面に渡って進行する風によって生み出される力は、見掛けの風に依存し、本開示においては、用語相対的風向き、または向きに関する風向き、またはセイルボートの進行方向は、見掛けの風向きと見なされてもよい。
【0053】
図4Aの例示において、セイルボート200の進行方向450は、セイルボート200が補助推進力手段(図2Aにおける235)によって前方に推進する場合に起こり得るように、風向き460に真っ直ぐ(反対方向)である。風に対する迎え角がゼロであるこの状態において、風はウィングセイル222および風見225の両側の周囲を均一に流れ、セイルボート200に揚力を提供しない、ウィングセイル222の“ニュートラル”または“ゼロ揚力”状態となる。
【0054】
ウィングセイル構造220が、風から少しだけ外れる場合、ウィングセイル222上に圧力勾配を生み出し、以下に詳述されるように、“追い風”または風下、側のウィングセイルの側面に向かう力を生み出す。セイルボート200の進行方向450が、図4Aに示されるように風向き460になる場合、ウィングセイル222を風向き460から外すことで誘発される力が及ぼされ、セイルボート200を後方へ押し、結果的に、意図した進行方向450におけるボートの移動に対抗する抗力となる。
【0055】
セイルボート200を前方に推進させる揚力を生み出すために、セイルボート200は、風に対して角度のない方向に操縦されなければならず、セイルは、その表面を横切る風の移動からこの揚力を生み出すように調整されなければならない。典型的に、セイルボートは、相対的な風向きが最小のタッキング角度より大きい場合に前方へ進行することができ、タッキング角度は、セイルボートのデザインによって異なり、一般的に約40−50°である。
【0056】
最少のタッキング角度より小さい角度で、風の中で生み出される圧力勾配は、ボートの進行方向と逆であり、上記のように、セイルボートの後方への分力を生み出す。最少のタッキング角度より大きい角度で、ウィングセイル222の左側および右側への風の流れの差は、以下にさらに詳述されるように、セイルボートの前方方向における分力を有する力を生み出す。
【0057】
図4Bは、風向き460に対してある角度をなす方向455で進行するセイルボート200を示す。点線462、464で示されるように、風がウィングセイル222の前縁に近づく場合、それはウィングセイル222の左側および右側に迂回する。この例においては、ウィングセイル222の右側(風下)上の風464は、ウィングセイル222の前縁の周囲を曲り、ウィングセイル222の後部に向かって、ウィングセイル222の風下表面に沿って進む。ウィングセイル222の左側(風上)上の風462は、ウィングセイルの後部に向かって、ウィングセイル222の風上表面に沿って進む。風上表面上で生み出される圧力が、風下表面上で生み出される圧力より大きければ、風上表面から風下表面に向かう方向における力となる。
【0058】
図4Bの例において、ウィングセイル222の風上表面から風下表面に向かう方向における力は、矢印480で近似される。セイルボート200に対して、この力480は、セイルボート200を舷側に押す分力480aを有し、分力480bは、セイルボート200を前方に押す。キール230は、水中ではセイルボート200の舷側への移動に抵抗し、この力480aの少なくとも幾らかを前方推進力に変換するように成形される。
【0059】
ウィングセイル222に渡る全体的な風の通過は、進行方向455におけるセイルボート200の前方推進力であり、風力480の前方分力480bから、ハル210による横向き分力480aによる横向き推進力の転換、および風下方向(“風圧差(leeway)”)におけるセイルボートの横向き推進力の残りである。この風圧差は、一般的にセイルボート200を少しだけ風の中へ向けるようにラダー角度を若干変更することによって補正される。
【0060】
上記のように、ウィングセイル222が風向き460に対して向けられる角度(迎え角)は、与えられた風速および方向から生み出される揚力の量を決定する。例えば、図4Bにおいて、ウィングセイル222がマスト410の周りを反時計回りに回転される場合は、迎え角を低減して、ウィングセイル222を風向き460により一致するように向け、ウィングセイル222の両側への風の転向がより均一になり、ウィングセイル222の風下および風上表面の間の圧力勾配を低減する。
【0061】
反対に、図4Bのウィングセイル222が、マスト210の周りを時計回り方向にさらに回転する場合、迎え角を増加させ、風下風464は、風下表面の周りをウィングセイル222の前縁の曲線に沿って流れることができず、失速を引き起こし、そして風下表面に渡るスムースな流れは達成されず、風下および風上表面の間の圧力勾配は低減する。
【0062】
また、理想的な迎え角も、風向き460に対するセイルボート200の進行方向455に応じて異なる。最小のタッキング角度(“詰め開き(close to the wind)”)に近い進行方向455の“クローズリーチ(close reach)”では、狭い迎え角は、より望ましい揚力を提供し、風向きに垂直(“真横(abeam)”)に近い進行方向455の“真横の風をうけた帆走(beam reach)”では、より広い迎え角が支持される一方で、風下表面に渡るスムースな流れを維持し、風向き460に対して約135°の進行方向455の“真横よりやや後方から風を受けての帆走(broad reach)”では、より広い迎え角であっても支持される。より広い迎え角は、一般的にウィングセイル222の風下表面に渡る風の流れによって生み出される力の前方分力480aを増加させる効果を有し、典型的に、セイルボートは、セイルボートの特定のデザインに依存して、真横の風をうけた帆走または真横よりやや後方から風を受けての帆走において進行する場合に、最大スピードを達成する。
【0063】
進行方向に対して与えられた風向きのための理想的な迎え角、または風向きに対するボートの向き(“相対風向き(relative wind direction)”)は、主にウィングセイル222の前縁の形状および風下表面の形状で決まる。したがって、ウィングセイル222の特定の形状が与えられ、相対風向きが決められる場合、ウィングセイル222は、対応する相対風向きのための理想的な迎え角にセットすることができる。
【0064】
例示的なセイルボート200の風見225は、セイルボートの進行方向455に対する風向き460の決定を促進する。風見225は、ウィングセイル構造220上を最小の回転摩擦で旋回する。したがって、風見225は、ウィングセイル構造220の向きに関わらず、風向き460にそれ自身を一貫して整列させる。風見225とウィングセイル構造220との角度が増加および減少すると、連結ロッド435は、この回転をトラス440に対する大幅な水平方向移動に変換し、対応して、風向き460に対するウィングセイル構造220の角度430に基づいてセイルボート200の向きに対する水平方向移動を提供する。
【0065】
制御の視点から、別の言い方で述べると、トラス440に対する連結ロッド435の水平方向移動は、ウィングセイル構造220に対する風見225の回転を制御する。風見225は、風向き460と絶えず整列されるため、風見225のウィングセイル構造220に対する回転を制御することは、ウィングセイル構造220を風向き460に対して効果的に制御することになる。すなわち、連結ロッド435の水平方向制御は、風向き460に対するウィングセイル222の迎え角を制御する効果がある。
【0066】
迎え角の手動/遠隔制御において、電磁ピストンなどの電気式アクチュエータは、連結ロッド235を横方向移動させることによって迎え角を制御するように調節される。典型的に、迎え角は、セイルボート200の速度をモニタリングする間に調節され、好ましい迎え角は、最高速度を提供する迎え角にセットされる。
【0067】
本発明の側面に従って、セイルボート200は、与えられた風向きに対する迎え角を自動的に制御するように構成される。例えば、上記の電気式アクチュエータは、手動/遠隔制御と同様に、最高速度を達成するようにコンピュータ制御されるか、または、例えば、様々な風向きに対するアクチュエータ設定のテーブルを使用して、決められた風向きに基づいて上記のような“理想的な”迎え角にセットされてもよい。
【0068】
しかしながら、上記のように、所望の迎え角を達成する、セイル調整の電気的制御は電気式エネルギーを消費するが、一方で、セイル調整の機械的制御は消費しない。さらに、機械的制御は、フィードバックループ自体が制御ロッド435であるため、風における即時の変化に最も反応し得る。本発明のさらなる側面に従って、連結ロッド435のトラス440への連結は、風向き460に対する進行方向455(対応して、セイルボート200の相対向き)が変化するため、トラス440に対する連結ロッド435の水平方向位置を機械的に異ならせる。
【0069】
図4Cは、トラス440に固定可能に取り付けられることで、セイルボート200に固定可能に取り付けられるカム470を示す。連結ロッド435は、カムスロット471内を移動する柱を含み、カムスロット471は、トラス440および取り付けられたカム470がウィングセイル構造220に対して回転すると、連結ロッド435の水平方向移動を引き起こすように、または別の言い方で述べると、ウィングセイル構造220が、セイルボート200向きに対して回転すると、連結ロッド435の水平方向移動を引き起こすように成形される。
【0070】
すなわち、コース変更によりセイルボート200の向きが変更される場合、または、風向き460における変更が、ウィングセイル構造220のセイルボート220の向きに対するウィングセイル構造220の向きの変更を引き起こす場合、カム470は、対応する連結ロッド435への水平方向変更を引き起こし、したがって、セイルボート200の進行方向に対する風向き460のこの変更に基づいて、ウィングセイル222の迎え角(説明を明確にするために、図4C−4Eには示されない)を変更する。
【0071】
上記のように、理想的な迎え角は、与えられた相対風向き、および、与えられたウィングセイル222の形状のために決めることが出来る。したがって、カムスロット471は、全ての相対風向きのための理想的な迎え角を達成するための水平方向の変更を引き起こすために作られ得る。すなわち、カムの形状は、制御アルゴリズムの機械的な実施態様である。
【0072】
図4Cは、セイルボート200およびウィングセイル構造220が風向きに対して“ニュートラル”位置にある場合のカムスロット471を具備する例示的なカム470を示し、ここで、ウィングセイル222および風見225は、風向き460と整列する。見て分かるように、カムスロット471は、カムスロット471が強固に取り付けられたトラス440の回転を介して時計回りまたは反時計回りに回転すると(すなわち、セイルボートのニュートラル位置に対する向きの風460の中への変更)、連結ロッド435の大幅な線形の水平方向移動をもたらす。
【0073】
図4Dに示されるように、カム470の時計回りの回転は、矢印478で指示されるように、連結ロッド435をカム470の中心へ向けて進行するように押し込み、風見225のウィングセイル構造220上のピボット425の周りの反時計回り方向への回転を引き起こす。回転抵抗が最小であるため、風見225は、自身を風向きに継続的に整列させ、このウィングセイル構造220に対する風見225の反時計回りの回転は、風向き462に対してウィングセイル222を時計回りに外し、図4Bに示されるセイルボート200に対するウィングセイル構造220の向きと同じように、ウィングセイル222の右側表面を風462の風下側上に置く迎え角を導く。この風462の風下側上のウィングセイル222の右側表面の向きは、セイルボート200に対する前方分力および右側への風圧差分力と共に揚力をもたらす。
【0074】
図4Eに示されるように、カム470の反時計回りの回転は、矢印479で指示されるように、連結ロッド435がカム470の中心から離れるように進行するように押し込み、風見225のウィングセイル構造220上のピボット425の周りの反時計回り方向への回転を導く。この時計回りの回転は、ウィングセイル222の風向き464に対する反時計回りの回転を導き、ウィングセイル222の左側表面を風の風下側上に置くウィングセイル222の迎え角をもたらす。この風の風下側上のウィングセイル222の左側表面の向きは、セイルボート200に対する前方分力および左側への風圧差分力と共に揚力をもたらす。
【0075】
カムスロット471によって提供される水平方向への傾斜は、カム470(またはセイルボート200)として提供され、風向きに対して回転される迎え角を決定する。図4Dおよび4Eに示されるように、図4Eにおけるカム470の反時計回りの回転は、図4Dにおけるカム470の時計回りの回転より大きいため、図4Eにおける迎え角は、図4Dにおける迎え角より大きい。すなわち、カム470の回転に基づく迎え角は、回転の程度に依存して異なり、迎え角は、カムスロット471によって制御されるため、全ての風向きに対する理想的な迎え角を達成する。
【0076】
図4Eにおけるカムスロット471の形状によって示されるように、図示された向きを超えたカム470のさらなる反時計回りの回転は、相対風向きの広い範囲を横切って延伸する理想的な迎え角に一致する、連結ロッド435の水平方向位置における極めて小さな変更を生み出す。いくつかの点において、カム470の反時計回りのさらなる回転は、連結ロッド435がカム470の中心へ向けて引かれることを引き起こし、迎え角を低減する。
【0077】
進行方向が風向きと一緒になると共に(“追い風”セイリング)、相対風向きが増加すると、ウィングセイル構造220は継続的に回転し、ウィングセイル222をトラス440の前方に置く。最終的に、ウィングセイル構造220は、セイルボート200の後部から来る風向きと整列してもよい。そのような整列は、圧力差を生み出すことがなく、対応して揚力を生み出すこともない。帆走技術では知られているように、追い風に真っ直ぐにセイリングすることは、セイル表面が風に垂直な向きであってあったとしても、セイルの効果的なポイントではなく、追い風に真っ直ぐではない方向における代替のコース(タック)上をセイリングすることは、一般的に追い風ターゲットへのより早いルートを提供する。したがって、本発明の一つの実施態様において、ナビゲーション制御システムは、極端な追い風セイリングを避けるように構成されてもよく、よって、ウィングセイル222の向きが、セイルボート200の後部からの風向きに整列することを避ける。
【0078】
代替的に、カムスロット471は、追い風セイリングの場合にウィングセイル構造220が最小の迎え角(正または負)に拘束されるように、“不連続性”を提供するように形成されてもよい。通常は正および負の最小角度の間の迎え角を提供する風向きにおいて、カムの状態は“不安定”であり、連結ロッド235が正または負の最小迎え角(1つまたは他のタックへの“ジャイビング(gybing)”)を生み出す位置に来るようにする。このように、ウィングセイルは、セイルボート200後方からの風に対して幾らかの抵抗を常に与え、前方推進力を引き起こす。
【0079】
上記の機械的自己調整システムの使用は、エネルギー消費を低減するために好ましいが、必要に応じて、ウィングセイル構造220の回転のダイレクト制御を可能にするモーターが提供されてもよい。上述のように、例えば、自己復原プロセスを開始する前に、ウィングセイル構造220は、ウィングセイル構造220が回転軸242の周りで回転することによるセイルボートの他の要素への干渉を避けるために、マスト410周りの回転に関して“ニュートラル”位置に置かれる必要があり、このマスト410周りの制御された回転を提供するためにモーターが使用されてもよい。
【0080】
任意に、マスト410周りのウィングセイル構造220の回転のためにモーターが提供される場合、モーターは、他の機能を提供するために使用されてもよい。例えば、モーターは、発電機として働くように構成されてもよい。機械的自己調整モードである場合、風の変動、またはセイルボートが波上を進行するにつれた迎え角の変動は、マスト410周りのウィングセイル構造220のランダムな揺らぎを引き起こす。
【0081】
モーターが発電機として構成される場合、これらマスト410周りの揺らぎは、使用または蓄えることができる電気エネルギーを生み出す。さらに、発電機は、その負荷に比例した慣性抵抗をもたらすため、より安定した進行を提供するため、過度の揺らぎによって引き起こされる損傷を低減するため、および揺らぎに対する所望の制動量をもたらすために、負荷が制御されてもよい。
【0082】
いずれにしても、相対風向きおよび提供された迎え角に関わらず、セイルボート200がターゲット領域へ向けて十分に前進していないこと、またはその指定された監視領域を越えて進行していることが判定されると、セイルボート200のナビゲーション制御システム、好ましくは、補助推進システム235を作動させるように構成される。これらの期間の間、マスト410周りでウィングセイル構造220が揺らぐにつれて電気を生み出す上記発電機の使用は、補助推進システム235によって消費される幾らかのエネルギーを補充するため、特に風が不安定または海が荒れている場合に揺らぎを緩衝させるために使用されてもよい
【0083】
図5は、例示的な自律式セイルボートの通信、制御およびモニタリングシステムの例示的なブロック図を示す。
【0084】
幾つかの装置は自律式または半自律式で動作し得るが、制御コンピュータ510は、主にセイルボート上の装置の操作を統合する。例えば、いくつかの実施態様において、全ての外部通信は、コンピュータ510によって制御される一方で、他の実施態様においては、デバイスが、個々の通信デバイス間で直接メッセージを送受信する。同様に、制御コンピュータ510によってもたらされるペイロード任務特有のモニタリングの協働および制御の程度は、特定の任務および/または特定の種類のモニタリングに依存して様々である。
【0085】
単一のブロックとして図示されているが、制御コンピュータ510は、例えば、フェイルセーフ操作のための代理機能システムおよび/またはナビゲーションなどの特定のタスクのためにカスタマイズされた埋め込みシステムを含む、多重処理システムを含んでもよい。制御コンピュータ510の操作は、以下のようにコンピュータ510が協働するボード上の装置に照らしてよく理解されるであろう。
【0086】
自律式セイルボートのための基本的な装置の一部は、複数の衛星からメッセージを受信するGPS受信機515であり、それによって受信機515の緯度および経度(よって、セイルボートの位置)が決定される。GPS受信機515の能力にしたがって、進行のスピードおよび方向などの他の情報も提供されてもよく、または、制御コンピュータ510などの他の要素が、経時的な位置報告から進行のスピードおよび方向などを決定してもよい。
【0087】
この情報は、通信バス501に提供され、この通信バス501上のデバイスのいずれかによって使用される。上記のように、制御コンピュータ510は、ターゲット領域へのルートを決定するためにセイルボートの現在の位置を使用し、横流れを補償するためのラダー調整のために進行のスピードおよび方向を使用するなどしてもよい。位置情報は、セイルボートから送信される各モニタリングメッセージに含まれてもよい。
【0088】
自律式セイルボートのための他の基本的な装置の一部は、モニターされた情報を報告するための通信デバイスである。図5の例において、複数の衛星通信デバイス520、525が提供されるが、より少ないまたはより多くの通信デバイスが提供されてもよい。例示的な衛星通信(Satcom)受信機520は、イリジウム受信機などの従来の衛星メッセージシステムである。受信機520は、セイルボートにアドレスされたメッセージを受信し、これらのメッセージをバス501上に提供する。
【0089】
特定のセイルボートは、セイルボートに関連するメッセージ(例えば、ナビゲーションメッセージ)を受信するためのアドレス、および、ペイロードに関連するメッセージ(例えば、モニター制御メッセージ)を受信するためのアドレスなどの多重アドレスを有してもよく、代替的に、全てのメッセージが単一のアドレスにアドレスされてもよく、受信されたメッセージを区別するためのメッセージプロトコルが設定されてもよい。幾つかの構成において、セイルボートの群は、“船団”または“準船団”関連の通信を受信するための共通のアドレスがアサインされてもよい。制御コンピュータ510は、特定のデバイスへの特有通信情報のためのメッセージを受信して処理するように構成されてもよく、および/または、幾つかのデバイスは、特定のメッセージを直接受信および処理するように構成されてもよい。
【0090】
同様に、メッセージは、セイルボートから受信機520を介して送信されてもよい。これらのメッセージは、セイルボート上のデバイスから受信する情報に基づいて制御コンピュータ510によってフォーマットされてもよく、または、いくつかのデバイスは、受信機520に直接メッセージを提供するように構成されてもよい。メッセージは、適切な受信者へメッセージを送達するための受信機アドレスを頼りに、共通のアドレスにアドレスされてもよく、および/または、特定のメッセージを特定の受信者に直接通信するために、異なるアドレスが使用されてもよい。
【0091】
メッセージを送信および受信するための商用衛星通信システムを使用する能力は、メッセージの形態および内容の十分な適応性を提供する。例えば、HTMLスキームを使用してこれらの通信をカスタム形式で定義してもよい。いくつかの実施態様において、カスタム形式およびスタンダード形式の混合が使用されてもよい。例えば、米国海洋電子機器協会(NMEA)は、標準プロトコルNMEA2000を提供し、それは、海洋デバイス間におけるナビゲーション、制御、モニタリングおよび他の情報を通信するために使用されている。制御コンピュータ510は、例えば、受信機520を介した陸上のモニターおよび制御局(図1の150)間のNMEAフォーマットメッセージを送受信するために構成されてもよい。
【0092】
従来の衛星メッセージシステムを使用することにより提供される適応性は、しかしながら、セイルボート上の相当な資源の使用を必要とし、これらのサービスにアクセスするための相当な金銭的コストを招き得る。特に注目すべきなのは、各メッセージが送信または受信される前に、衛星との同期リンクが設定される必要があることである。さらに、船団における各セイルボートは、同期リンクを設定するために、他の各セイルボートとの間で衛星チャネルを“奪い合う”。これらのメッセージの生成、送信、受信および復号は、電気エネルギーを消費し、電気推進システムの次に、セイルボート上で最も電気エネルギーを消費し得る。
【0093】
任意に、低電力で制限された機能の衛星通信システムが、日常的な情報を通信するために使用されてもよい。例えば、センサー埋め込み式通知システム(SENS)は、モニターされた情報を効果的に通信するように特別に設計されている。図5の例においては、SENS受信機(またはSENS送信機)525が、モニターされたいくつかの情報を通信するために使用され、よって電力消費が大きな受信機520を介してこの情報を通信するタスクから開放される。
【0094】
SENS送信機525は、比較的短いメッセージ(約80バイト)を、定期的に、および/または、事象報告が起動される場合に送信する。これらのメッセージは、典型的に、送信機525の識別子、GPS現在地、および、1または2以上のセンサー/モニターから報告されるパラメータ値を含む。SENS送信機525は、衛星システムとの同期リンクの設定を要求することなく、各メッセージを自律式に同報通信により送ることによって、衛星通信において典型的に要求される時間およびエネルギーの大幅な量を節約する。SENSメッセージは、固定フォーマットを使用するため、これらメッセージの生成は最適化され、各メッセージのために消費される時間および資源をさらに低減する。
【0095】
例示的な実施態様において、SENS送信機525は、位置およびセンサーデータの一次資料として使用されてもよく、サットコム送信機520は、状況に応じて必要とされる場合にのみ利用される。例えば、サットコム送信機520は、ターゲット領域に進行するための命令を受信するために使用されてもよく、ターゲット領域へ向う途中のセイルボートから送られる全てのメッセージは、SENS送信機525を介して送られる。同様に、ターゲット領域にある間は、定期的な位置およびセンサーメッセージは、SENS送信機525を介して送られ、他のモニターからの情報は、特定の事象が起こる場合にサットコム受信機520を介して通信されてもよい。
【0096】
サットコム受信機520の代わりに、他の通信システムが使用されてもよい。例えば、海岸に沿ってまたは内陸水路上を進行する場合は、携帯電話受信機またはWiFi受信機530が使用されてもよい。いくつかの実施態様において、WiFi受信機530は、配備される前の構成および他の情報を受信するため、および/または、各配備の前のセイルボート上の装置をテストするために、コンピュータ510をネットワークに連結するために使用されてもよい。セイルボート上の装置と通信するための他の手段は、当業者がこの開示を考慮することで明らかになるであろう。
【0097】
図5はまた、セイルボートを制御するために使用される共通の装置535−555を示す。追加のまたは代替的な装置は、当業者には明らかである。
【0098】
補助推進装置535は、主に、ウィングセイルがターゲット領域へ向けて十分に進んでいない場合、割り当てられた領域において位置を維持できない場合、または、大量交通量領域などにおいて“天候に依存しない(weather-independent)”制御が要求される場合に、オンデマンドの前進および逆進の推進力を提供する。
【0099】
夜間航海灯540は、主に大量交通量領域において使用するために提供され、赤、緑および白の夜間航海灯のセットを含む。
【0100】
船舶関連の様々なモニター545が、セイルボートおよびその周囲の状況を決定するために提供される。これらのモニター545は、例えば、風向およびスピードモニター、水速力変換器、電圧および電流モニター、慣性モニター、ウィングセイル向きモニター、ラダー向きモニター、横傾斜角度モニター、コンパス向きモニターなどを含んでもよい。
【0101】
ラダー制御システム550は、与えられたコースを維持するため、コースを変更するため、横流れを補正するなどのために、ラダーの向きを制御する。
【0102】
復原作動システム555は、上記の自己復原能力を実施するために必要なアクチュエータを含む。アクチュエータは、制御コンピュータ510からの命令によって制御されてもよいし、システム555が、上記の報告または決定された横傾斜角度に基づく復原および横傾斜補正動作を自律的に実行するために必要な電子部品を含んでもよい。
【0103】
任意に、開発時、および各配備の前および後における装置の主に構成およびテストのために、外部インターフェイス560が提供されてもよい。
【0104】
上記のように、セイルボートは、任務特有のペイロード装置570をターゲット領域へ運ぶように意図されており、このペイロード装置570には、他の種類のデバイスが配備され得るが、典型的には、カメラ、変換器および同類のものなどのモニタリングデバイスの集まりが含まれる。例えば、制限領域の付近で船舶が検知された場合などの一定の状況下におけるアナウンスのために、拡声器システムが提供されてもよく、双方向の音声通信のためにマイクロホンシステムが提供されてもよい。
【0105】
ペイロードシステムをセイルボート制御システム内に組み込むために、ペイロードインターフェイス565が提供される。このインターフェイスは、受信機520から受信したあらゆるモニタリング命令を通信するため、モニターされた情報を制御コンピュータ510へ、または、直接受信機520、525へ通信するために使用されてもよい。
【0106】
セイルボート上の様々な装置へ電力を提供するために、電力調定および制御システム560は、様々な源から電力を受け取り、セイルボートの各構成要素に必要な電力を提供する。図示されないが、図2Aのセイルボート200の各区画260は、システム560からの電力へのアクセス、並びに、データバス501または他のオンボードネットワークへのアクセスを提供するためにプレ配線される。いくつかの実施態様において、不可欠な装置に必要な電力が提供されることを保証するために、優先方式が使用される。例えば、利用可能な電力が少なくなる場合、ラダー制御および復原作動システムなどの不可欠な装置は使用可能である一方で、いくつかの装置は使用不能になってもよい。
【0107】
電力制御システム560は、セイルボート上に取付けられたソーラーパネル585からのエネルギーを受信し、ソーラーパネル585が電気を生み出さない場合は、このエネルギーのいくらかを蓄える。任意に、電気推進装置(図2Aの235)は、ウィングセイルがセイルボートを推進させる場合に電気を生み出す発電機を含むように構成されてもよい。好ましくは、電気推進システムは、セイルボートが低スピードで帆走している間は最小抵抗を提供し、生み出された揚力が、与えられた最小スピードを維持しながら負荷を十分に支える場合にのみ、発電機負荷を提供する。
【0108】
上記では本発明の原理を例示したに過ぎない。ここで詳細に説明または示されていないことであっても、当業者は、本発明の原理を盛り込んで、その精神と範囲内で、様々に工夫してアレンジできることが理解できるであろう。例えば、セイルボートは、より大きな船舶との衝突に耐えるように設計されるが、セイルボートは、商用船舶およびAIS受信機を装備する他の船舶によって送信される一情報を受信するAIS(船舶自動識別装置)受信機を含むように構成されてもよい。衝突を避けるために、制御コンピュータ510は、受信したAIS情報に基づいて進行方向を一時的に調節するように構成されてもよい。これらおよび他のシステム構成および最適化された機能は、本開示を参照した当業者にとっては明らかであり、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
【0109】
これら特許請求の範囲の解釈においては、
(a)用語“含む”は、与えられた特許請求の範囲に列挙されている以外の他の要素の存在を除外するものではなく、
(b)要素に先行する用語“a”または“an”は、複数のそのような要素の存在を除外するものでなく、
(c)特許請求の範囲におけるどのような引用符号も、これらの範囲を限定するものではなく、
(d)いくつかの“手段”は、同様の製品またはハードウェアまたはソフトウェア実装構造または機能で表現されてもよく、
(e)開示された各要素は、ハードウェア部分(例えば、ディスクリートおよび集積電子回路を含む)およびソフトウェア部分(例えば、コンピュータプロラム)の組み合わせから成っていてもよく、
【0110】
(f)ハードウェア部分は、プロセッサを含んでもよく、ソフトウェア部分は、非一時的なコンピュータ可読メディアに格納されてもよく、説明された要素の1または2以上の機能のいくつかまたはすべてをプロセッサが実行するように構成されてもよく、
(g)ハードウェア部分は、アナログおよびディジタル部分の1つまたは両方から成っていてもよく、
(h)説明されたデバイスのすべてまたはその一部は、明確に記載されない限り、互いに統合されるか、さらなる部分に分離されてもよく、
(i)明確に記載されない限り、特定の一連の動作を必要とすることを意図するものではなく、
(j)用語“複数”の要素は、請求された要素の2つまたはそれ以上を含み、要素のいかなる特定の範囲の数も含意するものではなく、すなわち、複数の要素とは、わずか2つの要素であり得、無限の数の要素を含み得ることは、理解すべきである。
図1
図2
図3
図4A-B】
図4C-E】
図5