特許第6435372号(P6435372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435372円筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6435372
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】円筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20181126BHJP
   E04B 1/48 20060101ALI20181126BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20181126BHJP
   F16B 21/00 20060101ALI20181126BHJP
   F16B 7/00 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
   E04B1/26 E
   E04B1/48 F
   E04B1/58 507L
   E04B1/58 503L
   F16B21/00 Z
   !F16B7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-109108(P2017-109108)
(22)【出願日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315007581
【氏名又は名称】BXカネシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】市川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 進
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3677621(JP,B2)
【文献】 特開平11−190072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/48
E04B 1/58
F16B 21/00
F16B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材同士を接合する円筒状接合金物であって、
当該円筒状接合金物の長手方向に対し直交する方向にピンが挿入されるピン挿通孔が設けられている共に、長手方向の両端部に開口部が設けられた金物本体と、
前記金物本体の長手方向の少なくとも一方の開口部周縁の一の連結部を介し前記金物本体の開口部の中心を越えて反対側まで延びるように形成された蓋部とを有し、当該蓋部は継ぎ目無く一体成形されており、
前記金物本体と、前記蓋部と、前記連結部とは一枚の鋼板から一体成形で構成されており、前記連結部が折り曲げられることによって前記金物本体に前記蓋部が設けられていることを特徴とする円筒状接合金物。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒状接合金物において、
前記連結部の横幅は、前記蓋部の横幅および縦幅よりも狭いことを特徴とする円筒状接合金物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の円筒状接合金物において、
前記蓋部は、平面視の輪郭として、当該金物本体の開口部の中心に対し対称で対向する一対の曲線形状の辺と、一対の直線形状の辺とを有しており、
前記一対の曲線形状の辺の半径は、前記金物本体の開口部の中心に対し当該金物本体の内側面の半径よりも大きく、かつ、当該金物本体の外側面の半径以下である一方、
前記一対の直線形状の辺の内、一方の直線形状の辺が前記連結部を介して前記金物本体の一方の端部に連結され、平面視、前記一対の直線形状の辺と当該金物本体の内側面との間に隙間が形成されていることを特徴とする円筒状接合金物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の円筒状接合金物を用いた住宅構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材同士を接合する円筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱等の縦材と土台や梁等の横架材等の木材同士を接合する金物として、円筒状接合金物が各種提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
円筒状接合金物を利用した木材同士の接合では、接合すべき木材の接合部分に当該円筒状接合金物が挿入されるようにホゾ穴(溝部)を加工すると共に、そのホゾ穴と直交する方向にドリフトピンが挿入できるようにピン挿通孔を形成して、ホゾ穴に円筒状接合金物を埋め込んだ後、木材と円筒状接合金物のピン挿通孔の位置合わせを行って、木材と円筒状接合金物とを貫通するようにドリフトピンを挿通して接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5342837号公報
【特許文献2】特許第5189867号公報
【特許文献3】特開平11−350597号公報
【特許文献4】特許第3677621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1〜3に記載の円筒状接合金物は、円筒状接合金物の両端部が開口しており、特許文献2,3に記載の円筒状接合金物では開口部周縁から開口部中心に向かって傾斜した傾斜面を設けるものの、その開口部の大半が露出しているため、木材に形成したホゾ穴に円筒状接合金物を嵌め込む際、開口部周縁が木材に当たって、木材を傷付けたり、金物自体が変形するおそれがあると共に、嵌め込み作業に時間を要するという問題がある。
【0005】
また、上述の特許文献4に記載の円筒状接合金物では、円筒状接合金物の両端部に突片を傾斜させた嵌挿誘導部を設けているが、嵌挿誘導部の先端の角部が木材または木材に形成したホゾ穴に当接するよう構成されているため、木材を傷付けたり、金物自体が変形するおそれは残る。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に着目してなされたもので、従来品よりも木材を傷付けたり、金物自体が変形するおそれを低減させた筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る円筒状接合金物は、木材同士を接合する円筒状接合金物であって、当該円筒状接合金物の長手方向に対し直交する方向にピンが挿入されるピン挿通孔が設けられている共に、長手方向の両端部に開口部が設けられた金物本体と、前記金物本体の長手方向の少なくとも一方の開口部周縁の一の連結部を介し前記金物本体の開口部の中心を越えて反対側まで延びるように形成された蓋部とを有し、当該蓋部は継ぎ目無く一体成形されており、前記金物本体と、前記蓋部と、前記連結部とは一枚の鋼板から一体成形で構成されており、前記連結部が折り曲げられることによって前記金物本体に前記蓋部が設けられていることを特徴とする。
ここで、前記連結部の横幅は、前記蓋部の横幅および縦幅よりも狭いように構成すると良い。
た、前記蓋部は、平面視の輪郭として、当該金物本体の開口部の中心に対し対称で対向する一対の曲線形状の辺と、一対の直線形状の辺とを有しており、前記一対の曲線形状の辺の半径は、前記金物本体の開口部の中心に対し当該金物本体の内側面の半径よりも大きく、かつ、当該金物本体の外側面の半径以下である一方、前記一対の直線形状の辺の内、一方の直線形状の辺が前記連結部を介して前記金物本体の一方の端部に連結され、平面視、前記一対の直線形状の辺と当該金物本体の内側面との間に隙間が形成されているとさらに良い。
また、本発明に係る住宅構造は、上述のいずれかの円筒状接合金物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る円筒状接合金物は、当該円筒状接合金物の長手方向に対し直交する方向にピンが挿入されるピン挿通孔が設けられている共に、長手方向の両端部に開口部が設けられた金物本体と、金物本体の長手方向の少なくとも一方の開口部周縁の連結部を介しその開口部の中心を越えて反対側まで延ばすことにより設けられた蓋部とを有する。
そのため、本発明に係る円筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造によれば、蓋部は、当該蓋部が設けられた側の開口部の中心を越えて反対側まで延びてその開口部の大半を塞ぐことになるので、この円筒状接合金物を蓋部側から木材に形成されたホゾ穴に通す際、円筒状接合金物の中心とホゾ穴の中心とがずれていた場合でも、蓋部がホゾ穴入口周辺の縁部に当接することにより、当該金物本体の端部がホゾ穴入口周辺の縁部に当接する場合よりも、木材を傷付けたり、金物自体が変形することを低減することができる。
また、蓋部を継ぎ目無く一体成形したため、木材に形成したホゾ穴に円筒状接合金物を挿入する際、円筒状接合金物の中心とホゾ穴の中心とがずれていて、蓋部がホゾ穴入口周辺の縁部に当接した場合でも、蓋部の継ぎ目がホゾ穴入口周辺の縁部に引っ掛ることがないので、この点でも木材を傷付けることを低減できると共に、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物を土台と柱との接合に使用した場合を示す正面図である。
図2】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物を土台と柱との接合に使用した場合の要部を拡大して示す部分断面拡大正面図である。
図3】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物を柱同士の接合に使用した場合を示す正面図である。
図4】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物を柱同士の接合に使用した場合の要部を拡大して示す部分断面拡大正面図である。
図5】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の正面図である。
図6図5におけるA−A線断面図である。
図7】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の右側面図である。
図8】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の左側面図である。
図9図8におけるB−B線断面図である。
図10】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の背面図である。
図11】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の平面図、底面図である。
図12】本発明に係る実施形態の円筒状接合金物の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る円筒状接合金物、およびその円筒状接合金物を用いた住宅構造の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施の形態は、あくまで、本発明の一例であり、本発明は、下記に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
実施形態の円筒状接合金物1は、木材同士、例えば、図1および図2に示すように土台2と柱3や、図3および図4に示すように2本の柱3,3同士、さらには図示しないが柱と梁または胴差し等の住宅構造における木材同士を接合する金物で、図5図11に示すように金物本体11と、蓋部12と、連結部13とを備えて構成されており、図1図4に示すように土台2や柱3にドリル等によって予め形成された平面視、丸穴形状のホゾ穴21,31に挿入して使用される。
【0012】
ここで、ホゾ穴21,31に挿入された円筒状接合金物1は、図1図4に示すようにドリフトピン4によって接合すべき土台2と柱3や柱3,3に固定されるため、土台2や柱3にもドリフトピン4が挿入されるピン挿通孔が形成されている。
【0013】
(金物本体11)
金物本体11は、図5図11に示すように長尺で断面がほぼ円形であり、円筒状接合金物1の長手方向に対し直交する方向にドリフトピン4(図1図4参照。)が挿入されるピン挿通孔11a,11bが設けられている共に、長手方向の両端部に円形の開口部11c,11dが設けられて構成されている。
【0014】
蓋部12が設けられた側の端部に近いピン挿通孔11aは、図5図10等に示すように、90度間隔で4箇所設けられており、その内径は挿入されるドリフトピン4の外径に応じて、蓋部12が設けられていない側の端部に近いピン挿通孔11bの内径よりも小さく構成されている。つまり、蓋部12が設けられた側の端部に近い4つのピン挿通孔11aの内、金物本体11の中心を通る2つのピン挿通孔11aを選択することにより、ドリフトピン4の挿入方向を90度変更することができる。
【0015】
一方、蓋部12が設けられていない側の端部に近いピン挿通孔11bは、図5図10等に示すように、金物本体11の中心を通って対向する2つのピン挿通孔11bが金物本体11の長手方向に所定間隔を空けた3段で、かつ、90度ずつ交差するように設けられており、その内径は挿入されるドリフトピン4の外径に応じて、蓋部12が設けられた側の端部に近いピン挿通孔11aの内径よりも大きく形成されている。
【0016】
(蓋部12)
蓋部12は、図5図10等に示すように、金物本体11の長手方向の少なくとも一方の開口部周縁の端部、すなわち図5図10等では図上、上方の開口部11c周縁の端部から連結部13を介し設けられており、図11(a),(b)に示すように、蓋部12が設けられた側の開口部11cのほとんどを塞ぐように設けられている。
【0017】
つまり、蓋部12は、図11(a),(b)に示すように、連結部13を介し金物本体11の開口部11cの中心Xを越えて反対側まで延ばすことにより設けられ、後述するように蓋部12が金物本体11の開口部11cのほとんどを塞ぐように、すなわち平面視、隙間14,15および貫通孔12dを除いて開口部11cを塞ぐように構成されている。
【0018】
尚、貫通孔12dは、後述するように円筒状接合金物1の内側をメッキ処理や錆止め、塗装等の表面処理を行う際、処理液が抜き易くなるため設けているが、本実施形態では、蓋部12と金物本体11との間に隙間14,15を形成しており、隙間14,15から処理液を十分に抜くことができる場合には、貫通孔12dを省略しても良い。
【0019】
蓋部12の平面視の輪郭は、図11(a),(b)に示すように、蓋部12の中心Xに対し対称で対向する一対の曲線形状の辺(以下、曲線形状辺と略す場合がある。)12a,12aと、一対の直線形状の辺(以下、直線形状辺と略す場合がある。)12b,12cとで構成されており、その一対の直線形状辺12b,12cの内、図11(a),(b)上、左側の直線形状辺12cが連結部13を介して金物本体11の一方の端部に連結して構成されている。
【0020】
一方、一対の曲線形状辺12a,12aの半径R1は、金物本体11の開口部11cの中心に対し当該金物本体11の内側面11eの半径R2よりも大きく、かつ、当該金物本体11の外側面11fの半径R3以下としており、本実施形態では、R2<R1<R3の関係が成立している。
【0021】
そのため、実施形態の円筒状接合金物1の蓋部12を工具で打撃して木材である柱3や土台2のホゾ穴に挿入する際や、円筒状接合金物1の蓋部12に他方の柱3の端面が当接した際に、蓋部12における一対の曲線形状辺12a,12aの端部が、金物本体11の長手方向の少なくとも一方の開口部11c周縁の端部に当接するので、蓋部12が変形することを極力防止できると共に、金物本体11の開口部11c内にめり込むことも防止できる。
【0022】
また、その際、本実施形態では、蓋部12の上面が柱3や土台2のホゾ穴周縁部に当接して、金物本体11の開口部11c周縁の端部が柱3や土台2のホゾ穴周縁部に当接することが減少するので、柱3や土台2等の木材側を傷付けることを防止することができる。
【0023】
また、蓋部12の一対の直線形状辺12b,12cは、平面視、当該金物本体11の内側面11eとの間で、それぞれ、隙間14,15が形成されていると共に、蓋部12の中心Xには貫通孔12dが形成されている。
【0024】
そのため、実施形態の円筒状接合金物1の内側をメッキ処理や錆止め、塗装等の表面処理を行う際、蓋部12と金物本体11との間の隙間14,15や貫通孔12dから処理液を抜き易くなるため、円筒状接合金物1の品質を向上させることができる。
【0025】
また、蓋部12は、平面視の輪郭線として一対の直線形状辺12b,12cを有しているため、後述する図12に示すように円筒状接合金物1の曲げる前の状態、すなわち平板状の鋼板からカットまたは打ち抜き加工した状態に展開した場合、直線形状辺12bは、金物本体11の開口部11c,11dを構成する縁部と同様に直線となる。
【0026】
そのため、展開状態の円筒状接合金物1を鋼板からカットまたは打ち抜き加工等によって作製する際、鋼板の無駄を極力少なくすることができ、効率良く円筒状接合金物1を製造することができる。
【0027】
また、蓋部12は、正面視、図5図10に示すように、外側に向かって凸形状、すなわち図5図10上、上方に向かって膨出するように湾曲して構成されている。
【0028】
そのため、上述したように実施形態の円筒状接合金物1の蓋部12を工具で打撃して木材である柱3や土台2のホゾ穴に挿入する際や、円筒状接合金物1の蓋部12に他方の柱3の端面が当接した際に、蓋部12は外側に凸形状に湾曲して構成されているので、蓋部12が平面視、平面形状の場合よりも強度が向上し、蓋部12が変形することを極力防止できると共に、蓋部12が柱3や土台2等の木材側を当たった際にめりこむ等して傷付けることを防止することができる。
【0029】
また、蓋部12は、正面視、外側に凸形状に湾曲して構成されているので、蓋部12の裏側にメッキ処理や錆止め、塗装等の処理液が溜まり易くなるが、蓋部12中央の貫通孔12dによって蓋部12の裏側に溜まり易い処理液を容易に排出できる。
【0030】
(連結部13)
連結部13は、上述したように金物本体11と蓋部12とを連結するもので、図11(a),(b)に示すようにその横幅W1が蓋部12の横幅W2および縦幅W3よりも小さく、細く形成されている。
【0031】
そのため、連結部13は蓋部12よりも強度が弱くなるので、この円筒状接合金物1を蓋部12側から木材に形成されたホゾ穴に通す際、蓋部12がホゾ穴入口周辺の縁部に当接した場合、連結部13が曲がって外力を吸収するので、木材を傷付けること防止できる。
【0032】
また、図11(a),(b)に示すように、連結部13の平面視の長さLを金物本体11の厚さTよりも大きく構成して、平面視、当該金物本体11の内側面11eと、蓋部12の一対の直線形状辺12cの側面の間にそれぞれ隙間15を形成している。
【0033】
(実施形態の円筒状接合金物1を曲げる前の状態)
図12は、実施形態の円筒状接合金物1の曲げる前の状態、すなわち平板状の鋼板からカットまたは打ち抜き加工した状態を示している。
【0034】
つまり、実施形態の円筒状接合金物1の曲げる前の状態は、図12に示す通りであり、金物本体11において円形に曲げた際に突き合う左右の側縁部11g,11hに、図12に示すように側縁部11g側には凸部11g1,11g3,11g5および凹部11g2,11g4を形成する一方、側縁部11h側には凹部11h1,11h3,11h5および凸部11h2,11h4を形成する。
【0035】
そして、図12に示すように形成した鋼板を型枠(図示せず。)等により入れて左右の側縁部11g,11h同士が対向するように円形に曲げ、最終的には側縁部11g側の凸部11g1,11g3,11g5および凹部11g2,11g4が、側縁部11h側の凹部11h1,11h3,11h5および凸部11h2,11h4にそれぞれ嵌るように当接ないしは近接するように曲げて、円筒形の金物本体11を構成する。これにより、側縁部11g,11hを溶接しなくても、金物本体11の強度を向上させることができる。
【0036】
その後、円筒形の金物本体11に対し連結部13を、図5図10に示すように90度前後曲げて、蓋部12が隙間14,15および貫通孔12dを除いて金物本体11の開口部11cを塞ぐ。
【0037】
尚、先に連結部13を図5図10に示すように90度前後曲げて、その後、左右の側縁部11g,11h同士が対向するように円形に曲げ、最終的には円筒形の金物本体11を構成するようにしても良い。
【0038】
従って、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造では、金物本体11の開口部11c側に、金物本体11と連続する連結部13を介し金物本体11の開口部11cの中心Xを越えて反対側まで延びる蓋部12を設けたため、その円筒状接合金物1を蓋部12側から木材に形成されたホゾ穴に通す際、円筒状接合金物1の中心とホゾ穴の中心とがずれていた場合でも、蓋部12がホゾ穴入口周辺の縁部に当接する。
【0039】
その結果、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造によれば、金物本体11の開口部11c周縁の端部が木材のホゾ穴入口周辺の端面に当接する場合よりも、木材を傷付けたり、金物自体が変形することを低減することができる。
【0040】
また、円筒状接合金物1に蓋部12が無い場合、木材を上から下ろして木材のホゾ穴に円筒状接合金物1を嵌め込む際、木材のホゾ穴入口周辺の端面が金物本体11の開口部11c周縁に当たり、金物本体11がめりこむ等して動かなくなることがあるが、本実施形態では蓋部12があることで木材との当接面積が増えるので、円筒状接合金物1が木材にめりこみ難くなると共に、さらに蓋部12を湾曲形状にしたことで所定の位置に誘導することができ、作業効率を向上させることができる。
【0041】
特に、実施形態の円筒状接合金物1では、図12に示すように金物本体11、蓋部12および連結部13は、一枚の鋼板をカットまたは打ち抜き加工した後、折り曲げることによって一体で構成されている。
【0042】
そのため、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造によれば、金物本体11から蓋部12が外れたり、ズレるおそれがなくなり、製品精度を向上させることができる。
【0043】
また、実施形態の円筒状接合金物1では、金物本体11と蓋部12とを繋ぐ連結部13は、図11(a),(b)に示すようにその横幅W1が蓋部12の横幅W2および縦幅W3よりも小さく形成している。
【0044】
そのため、連結部13は、蓋部12よりも強度が弱くなるので、この円筒状接合金物1を蓋部12側から木材のホゾ穴に通す際、蓋部12がホゾ穴入口周辺の縁部に当接した場合でも、連結部13が曲がって外力を吸収することによって木材を傷付けること防止できる。
【0045】
また、連結部13の幅を狭くしたことで連結部13の強度が弱くなるので、金物本体11の開口部11c側を蓋部12で塞ぐため連結部13を曲げ加工する際、加える力を最小限に押さえることができ、連結部13の曲げ加工が容易になると共に、連結部13の曲げ加工の際に金物本体11の変形を極力防止することが可能となり、円筒状接合金物1全体の製品精度を向上させることができる。
【0046】
また、実施形態の円筒状接合金物1では、蓋部12の一対の曲線形状辺12a,12aの半径R1を、金物本体11の開口部11cの中心に対し当該金物本体11の内側面11eの半径R2よりも大きく、かつ、当該金物本体11の外側面11fの半径R3以下に構成して、この円筒状接合金物1の蓋部12を工具で打撃して木材である柱3や土台2のホゾ穴に挿入する際や、円筒状接合金物1の蓋部12に他方の柱3の端面が当接した際に、蓋部12における一対の曲線形状辺12a,12aの端部が、金物本体11の長手方向の少なくとも一方の開口部11c周縁の端部に当接するように構成している。
【0047】
そのため、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造によれば、蓋部12がホゾ穴入口周辺の縁部に当接した場合でも、蓋部12が変形することを極力防止できると共に、蓋部12が金物本体11の開口部内にめり込むことも防止できる。
【0048】
また、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造によれば、蓋部12の上面が柱3や土台2のホゾ穴周縁部に当接し、金物本体11の開口部11c周縁の端部が柱3や土台2のホゾ穴周縁部に当接することが減少するので、柱3や土台2等の木材側を傷付けることも防止することができる。
【0049】
また、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造では、蓋部12は、正面視、外側に凸形状に湾曲して構成されているため、蓋部12が平面視、平面形状の場合よりも強度が向上し、この点でも、蓋部12が変形することを極力防止できると共に、蓋部12が柱3や土台2等の木材側を当たった際に傷付けることを防止することができる。
【0050】
また、実施形態の円筒状接合金物1、およびその円筒状接合金物1を用いた住宅構造では、蓋部12の一対の直線形状辺12b,12c側において当該金物本体11の内側面11eとの間で、それぞれ、隙間14,15が形成されていると共に、蓋部12の中心Xには貫通孔12dが形成されているため、円筒状接合金物1のメッキ処理や錆止め、塗装等の表面処理を行う際、蓋部12と金物本体11との間の隙間14,15や貫通孔12dから処理液が抜き易くなり、円筒状接合金物1の品質を向上させることができる。
【0051】
尚、本実施形態の円筒状接合金物1では、金物本体11の一方の開口部11c側に蓋部12を設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、金物本体11の他方の開口部11d側にも、開口部11c側の蓋部12と同様に連結部13を介して蓋部12を設けるようにしても勿論良い。
【0052】
また、本実施形態の円筒状接合金物1では、蓋部12は、正面視、図5図10に示すように外側に向かって膨出するように湾曲して構成して説明したが、本発明では、これに限らず、湾曲させずに平面で構成しても勿論良い。
【0053】
また、本実施形態の円筒状接合金物1では、図12に示すように金物本体11、蓋部12および連結部13を一枚の鋼板で一体構成して説明したが、本発明では、これに限らず、金物本体11と蓋部12を別に形成しておいて、金物本体11と蓋部12とを溶接して構成するようにしても良い。この場合、金物本体11と蓋部12との溶接箇所が連結部13となる。
【符号の説明】
【0054】
1 円筒状接合金物
11 金物本体
11a,11b ピン挿通孔
11c,11d 開口部
11e 内側面
11f 外側面
11g,11h 側縁部
11h2,11h4、11g1,11g3,11g5 凸部
11h1,11h3,11h5、11g2,11g4 凹部
12 蓋部
12a,12a 曲線形状辺
12b,12c 直線形状辺
12d 貫通孔
13 連結部
14,15 隙間
2 土台
21 ホゾ穴
3 柱
31 ホゾ穴
4 ドリフトピン
【要約】
【課題】従来品よりも木材を傷付けたり、金物自体が変形するおそれを低減させる。
【解決手段】長手方向に対し直交する方向にピンが挿入されるピン挿通孔11a,11bが設けられている共に、長手方向の両端部に開口部11c,11dが設けられた金物本体11と、金物本体11の長手方向の少なくとも一方の開口部周縁から連結部13を介し金物本体11の開口部11cの中心を越えて反対側まで延ばすことにより設けられた蓋部12とを有し、金物本体11と、蓋部12と、連結部13とは一枚の鋼板から一体成形で構成され、金物本体11に対し連結部13が折り曲げられることによって金物本体11に蓋部12を設ける。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12