(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1A〜1Cに、本発明に係る第1実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10,100,及び110は、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11で構成される。マッハツェンダ干渉計20は、1×2に分岐する光分岐部(第1の光分岐部)21と、2×1に合波する光合波部(第1の光合波部)22との間に2つのアーム部23を有する。光入射部12から光導波路13を経て光分岐部21に入射した光は、光分岐部21で2つのアーム部23に分岐される。その後、分岐された光は2つのアーム部23を経由して光合波部22で1つの光に合波され、合波された光は光導波路15を経て光出射部14から出射される。
なお、
図1B及び1Cの光変調素子100及び110は
図1Aの光変調素子10の変形例であり、光変調素子10では、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、光変調素子100及び110では、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している点で異なる。特に限定して説明していない限り、以下の説明は本実施形態のすべての図の光変調素子に共通し、以降の実施形態においても同様とする。
【0019】
それぞれのアーム部23に直線状に位相変調部(第一位相調整部)24が設けられている。また、基板型光導波路11上には、位相変調部24に電圧を印加する進行波電極30が設けられている。本実施形態の進行波電極30は、アーム部23の間に信号電極30Sを有し、アーム部23の外側にそれぞれ接地電極30Gを有する、GSG(Ground、Signal、Ground)からなるコプレーナ電極構造を有する。信号電極30Sの入力部31から高周波電気信号(以下「高周波信号」という。)を印加することにより、位相変調部24では、各アーム部23を伝播する光に所定の位相差が付与され、光合波部22で合波された光は位相差に応じて変調される。信号電極30Sの出力部32は、光変調素子10の外部に接続されて終端される。
【0020】
本実施形態では両方のアーム部23に位相変調部24が設けられているが、片方のアームのみに位相変調部を設けてもよい。しかしながら、0でない位相差(例えばπ)を付与する場合に、両方のアームに位相変調部が設けられることで、各アームの導波光の位相を反対側に変調することができる。つまり、両方のアームに位相変調部が設けられることで一方では位相を進め、他方では位相を遅らせるというプッシュプル動作を行うことにより、周波数チャープを低減して、長距離伝送に適した光信号を出力として得ることができる。
【0021】
基板型光導波路11は、好適にはシリコン等の半導体をコアとし、シリカ等の絶縁体をクラッドとする。また、コアとその周囲を囲むクラッドからなる光導波路は、シリコン等からなる基板上に形成してもよい。シリコンを用いた光導波路は、コアとクラッドの屈折率差が大きいため、光の閉じ込めが強く、製造時に生じる側壁のラフネス等の微細構造により生じる光の伝播損失が大きい。一方、シリコンを用いた光導波路は、曲げ半径10μm程度の急峻な曲げが可能である。そのため本実施形態で用いることが好ましい。
図1A〜1Cの基板型光導波路11は、4つの辺11a,11b,11c,11dを有する矩形状である。なお、基板型光導波路11が矩形(長方形)などの四角形(四辺形)とすることは必須の要件ではなく、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの種々の多角形であってもよい。多角形の角が丸みまたは面取りを有してもよい。つまり、基板型光導波路11が2つの辺11a,11bを含む輪郭を有していればよい。
【0022】
本実施形態では、位相変調部24の長手方向と進行波電極30の入出力方向とを一致させることにより、電極構造を最短化し、電気信号の伝播損失を抑制する。また、光入射部12と光分岐部21との間及び光合波部22と光出射部14との間で、光導波路13,15に急峻な曲げを設ける。これにより、マッハツェンダ干渉計20の光分岐部21と進行波電極30の入力部31との間及び光合波部22と出力部32との間が短くても、光導波路13,15を進行波電極30の側方に向かわせることができる。なお、本発明において、進行波電極30の側方とは、基板型光導波路11の平面視において電極が形成されていない領域であり、信号電極と接地電極との間の領域も側方と表すことがある。
図1A〜1Cでは、進行波電極30は、入力部31から出力部32まで直線状に形成されている。この場合、電極の長さを最も短くすることができる。実際には、進行波電極30が全長に渡って一様な幅を持つとは限らず、一部において幅がテーパ状に変化したり、幅方向の中心線が曲がったりすることがあり得る。例えば、基板型光導波路11のもつ2つの辺11a,11bが、位相変調部24の長手方向の両側で、この長手方向の延長線L1,L2とそれぞれ交差するとき、これら2つの辺11a,辺11bに入力部31及び出力部32が配置されることが好ましい。
【0023】
2つの位相変調部24は、互いに平行であることが好ましい。また、前記2つの位相変調部24と基板端である辺11aとの距離が互いに等しく、また前記2つの位相変調部24と基板端である辺11bとの距離が互いに等しいことが好ましい。つまり、2つの位相変調部24の一方の端部24aと辺11aとの距離が互いに等しく、2つの位相変調部24の他方の端部24bと辺11bとの距離が互いに等しいことが好ましい。
また、電極の伝播方向に沿う、電極の入力部31から位相変調部24の入射側の端部24aまでの長さが、それぞれの位相変調部24に対し、等しいことが好ましい。
また、電極の伝播方向に沿う、位相変調部24の出射側の端部24bから電極の出力部31までの長さが、それぞれの位相変調部24に対し、等しいことが好ましい。
これにより、それぞれの位相変調部24に対して入力部31から入力する電気信号のタイミングを合わせることが容易になる。
【0024】
光入射部12及び光出射部14は、進行波電極30の側方に位置する。これにより、進行波電極30の入力部31及び出力部32やこれと電気的に接続される構造物と、光入射部12及び光出射部14やこれと光結合される構造物とを、空間的に区分けして配置させることができる。
図1Aの光変調素子10では、上述の通り位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であり、光分岐部21又は光合波部22から90°程度曲げることで、導波路13,15を側方に向けることができる。また、
図1B及び1Cの光変調素子100及び110では上述の通り、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜しており、光分岐部21又は光合波部22から90°より小さい鋭角の角度で曲げることで、導波路13,15を側方に向けることができる。
これら方向転換は、位相変調部24と辺11a,11bとの間で、導波路13,15の一部を進行波電極30の下部を通すことにより実現できる。急峻な曲げを利用して導波路13,15の方向を変換することにより、位相変調部24と辺11a,11bとの間を短くすることができ、高周波信号がシリコン基板上を伝播することによる減衰と、インピーダンス不整合による信号劣化とを低減することが可能である。
なお、
図1B及び1Cの光変調素子100及び110において、位相変調部24の長手方向と2つの辺11a,11bとの成す角度は、0°より大きく90°より小さい角度であればよい。ただし、2直線の成す角度は、0〜90°の範囲で定義されるものとする。例えば、80°以下でもよく、70°以下でもよい。これにより、基板の長さ(辺11aから辺11bまで距離)をより短くすることができる。一方、基板の幅(辺11cから辺11dまで距離)を短くしたい場合は、
図1Aの光変調素子10のように位相変調部24の長手方向を2つの辺11a,11bに対して垂直にすればよい。
【0025】
本実施形態によれば、チップ(基板)上での電極の接続を最短で行うことができ、電極上での電気信号のパワーの損失による変調効率の低下を避けることができる。また、チップ(基板)の長さを短くすることができる。
また、電極を複数本必要とする場合においても、各電極の長さがほとんど変わることがないので、スケーラブルに電極を増やすことが可能である。従来技術である
図2のように電極を曲げて配置する場合には、並行する電極の本数が増えると、外側ほど電極の長さが長くなり、また、電極の長さの差も大きくなってしまう。
また、光入射部12の光軸と光出射部14の光軸とが一直線上になく、ずらして配置することにより、光入射部12において入射時に導波路13に結合しなかった漏れ光(迷光)が、光出射部14から混入することを避けることができる。これにより、消光状態での光パワーをより低減することができ、消光比を向上することができる。
【0026】
入力部31及び出力部32の配置される辺11a,11bの長さが十分に長い場合、光入射部12及び光出射部14を辺11a,11bに配置することもできるが、
図1A〜1Cでは、光入射部12及び光出射部14は、入力部31及び出力部32が配置される辺11a,11bとは異なる辺11c,11dに配置されている。これにより、基板型光導波路11をより小型化することができる。
チップ(基板)は、
図1Bに示すように長方形に切断されてもよく、また、
図1Cに示すように、入力部31及び出力部32の配置される辺11a,11bに対して、光入射部12及び光出射部14の配置される辺11c,11dが斜めに切断されてもよい。
図1Cの場合、チップ面積を最小化し、取り数を増加できる。
さらに、辺11c、11dの両方を斜めにすることに限らず、片方のみを斜めにして台形状にすることもできる(後述する
図4B参照)。この場合、ウエハから一括してダイシングを行う代わりに、2つのチップが斜辺を共有した長方形状のブロックに切り分けた後で、斜辺を2つに切断してもよい。
基板形状が長方形でない場合は、チップの外部との接合部(光入射部12及び光出射部14)に用いる後述の結合導波路(例えば
図32の逆テーパ導波路93)のチップ端面に対する向きは、垂直でなくともよい。結合導波路がチップ端面に対して垂直でない場合、端面の境界における屈折率差を考慮してチップ平面内で角度をつけることにより、所望の方向に出射したり、あるいは所望の方向から入射したりすることができ、高い結合を有するように設計することが可能である。
【0027】
図1Bでは、導波路13,15を進行波電極30の側方に位置する光入射部12及び光出射部14に向けて、光分岐部21又は光合波部22から90°より大きい鈍角の角度で曲げることで、導波路13,15が側方に向かうことが示されている。この場合、後述の
図3Bと比べてチップ寸法も特に変わらず、チップの長さを短くできる上、入射から出射までに光がたどる導波路長をより短くすることができる。これにより、導波路長による光損失を低減することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図3A及び3Bに、本発明に係る第2実施形態の光変調素子を示す。なお、以降の説明において、すでに説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本実施形態に係る光変調素子10A及び100Aは、第1実施形態の光変調素子10,100,及び110と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。また、本実施形態では、光入射部12及び光出射部14が、位相変調部24の長手方向における2つの端部24a,24bから、それぞれ2つの辺11a,11bに平行な方向に延長した2つの線La,Lbの間の領域に位置している。
ここで、進行波電極30の入力部31が配置される辺が11aであり、出力部32が配置される辺が11bとであると定義する。また、位相変調部24の長手方向における光分岐部21側の端部24aから前記辺11aに平行な方向に延長した線がLaであり、位相変調部24の長手方向における光合波部22側の端部24bから前記辺11bに平行な方向に延長した線がLbであると定義しる。なお、
図3Aの光変調素子10Aでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図3Bの光変調素子100Aではでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0029】
なお、
図1A〜1Cの光変調素子10,100,及び110の場合、
図3A及び3Bの光変調素子10A及び100Aとは対照的に、光入射部12及び光出射部14が、線Laと線Lbとの間の領域より外側に位置している。具体的には、光入射部12が線Laと辺11aとの間の領域に位置し、光出射部14が線Lbと辺11bとの間の領域に位置している。
また、
図3Aでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であり、「2つの辺11a,11bに平行な方向」は、「位相変調部24の幅方向」に一致する。従って、2つの線La,Lbを、2つの端部24a,24bからそれぞれ位相変調部24の幅方向に延長した線と定義することもできる。
【0030】
光入射部12及び光出射部14と、光ファイバまたはレンズ等の光学部品とを光結合させる場合、入力部31及び出力部32の配置される辺11a,11bの近傍に光入射部12及び光出射部14を配置すると、光ファイバ及びレンズ等の光学部品が、入力部31及び出力部32から電極を接続する先の基板等及び光変調素子を収容するパッケージの端面と衝突する可能性が考えられる。
光入射部12又は光出射部14の近傍に光ファイバを配置する場合、光ファイバ自体に一般には125μm径のクラッドがあり、さらに被覆部を含めると外径はそれ以上(例えば160〜250μm)となる。また、光ファイバを保持するためには、光ファイバを台座等の固定治具に固定する必要があり、固定治具の寸法は光ファイバの外径以上となる。
また、光入射部12又は光出射部14の近傍にレンズを配置する場合、レンズ径が数mmに及ぶことが一般的である。特に、光変調素子がパッケージ端面に位置する場合、レンズをパッケージ内に配置できるように、端からクリアランスを設ける必要がある。
【0031】
よって、
図3A及び3Bに示すように、光入射部12及び光出射部14の位置を光変調素子の端部、すなわち、辺11a,11bから距離を置くことが好ましい。これにより、実装時に、レンズ等とパッケージ等や中継基板等との干渉を避けることができる。従って、パッケージのスペースをより広くする必要がなく、大型化が避けられる。
図3A及び3Bでは、マッハツェンダ干渉計20と光入射部12及び光出射部14とを接続する光導波路13,15の方向は、辺11a,11bに略垂直、又は略平行な方向の直線導波路と、これらを接続する曲がり導波路の組み合わせを示している。導波路の長さを短くするために斜め方向の直線導波路及び曲率半径の大きな曲線導波路などを利用することもできる。
この手法によれば、基板寸法が異なる光変調素子を、同一のパッケージで取り扱う場合に、光入射部12と光出射部14との相対的な位置関係を同一にするなど、光入射部12と光出射部14を任意の位置に配置することができ、配置の自由度が向上する。
本実施形態においても、光入射部12の光軸と光出射部14の光軸とが一直線上になく、ずらして配置することが好ましい。これにより、第1実施形態と同様に迷光の混入を避けることができ、消光比を向上することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図4A及び4Bに、本発明に係る第3実施形態の光変調素子を示す。本実施形態に係る光変調素子10B及び100Bは、第1実施形態の光変調素子10及び100と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。なお、
図4Aの光変調素子10Bでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図4Bの光変調素子100Bでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
また、この実施形態では、マッハツェンダ干渉計20の各アーム部23に、位相変調部(第一位相調整部)24とは異なる、電気的に独立した位相調整部(第二位相調整部)25を有する。位相調整部は、半導体型光変調器でも用いられる場合があるが、高周波信号に合わせて高速な変調を行う位相変調部の他に、アーム間で相対的に位相を調整する。この種の位相調整には位相変調部24で要求される高速応答は不要であり、数μsから数ms程度の応答速度(応答時間)でよい。位相調整部25の具体例としては、熱光学効果を利用した、例えばニクロム等の電気的抵抗を有する材料を導波路の上部に配置したヒータ構造、またはドープしたシリコンを抵抗体として位相変調部24と同一工程により形成したヒータ構造を備える低速位相変調部が挙げられる。
図4A及び4Bでは、位相調整部25に電力を供給するための電極35(2本の配線でもよい)は、進行波電極30と平行に、その出力部32が配置される辺11bに向けて配置されている。また、後述の第10実施形態のように電極35が設けられてもよい。
位相調整部に電流を流すためには、通常電圧側とGND側の2本の電極が必要となる。
本実施形態では、2本を独立に設けてもよいし、複数の位相調整部がある場合はGNDを共通としてもよい。また、位相調整部のGNDを、位相変調部に設けたGNDと共通とすることも可能である。
アーム部23に設ける他の要素部品として、位相調整部25のほかにも、モニタ用PD、偏波多重回路における偏波変換素子、偏波分離・結合素子、及びマッハツェンダ干渉計におけるアーム間の光パワーを均一化するための光可変減衰器(VOA)等が挙げられる。
他の要素は、両方のアームに設けてもよく、片方のアームのみに設けてもよい。
【0033】
位相変調部24とは別の構成要素は、高速な位相変調への影響を防ぐため、位相変調部及びそれに電圧を印加するための進行波電極を避けて配置することが好ましい。そこで、他の要素は、位相変調部24の延長方向からずらした位置に、特に、位相変調部24の長手方向をそれぞれ延長した2つの線L1,L2の間の領域より外側の領域に配置してもよい。これにより、位相変調部の電気特性に影響を与えず、所望の機能を実現することが可能である。
図4A及び4Bでは、前記外側の領域(線L1と辺11cとの間の領域、及び線L2と辺11dとの間の領域)にずらした導波路23aは、基板型光導波路11のチップ長(辺11a,11b間の距離)が短くなるように、導波路を曲げたり、光の伝播方向が位相変調部24とは反対の方向(
図4A及び4Bでは下から上に向かう方向)となる部分を設けたりしてもよい。
【0034】
また、
図4A及び4Bでは、光出射部14が、位相変調部24の2つの端部24a,24bからそれぞれ位相変調部24の幅方向に延長した2つの線La,Lbの間の領域より外側(線Lbと辺11bの間)の領域に位置するが、電極の出力部32が配置される辺11bから十分に離れているので、光ファイバまたはレンズ等を配置するためのクリアランスが確保されている。
【0035】
(第4実施形態)
図5A及び5Bに、本発明に係る第4実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10C及び100Cは、第3実施形態と同様に、マッハツェンダ干渉計20の各アーム部23に、位相変調部24とは異なる、電気的に独立した位相調整部25を有する。また、各アーム部23の途中で、前記外側の領域(線L2と辺11dとの間の領域)にずらした導波路23aは、いずれも光出射部14が配置される辺11dの側に延ばされている。また、マッハツェンダ干渉計20の光合波部22も前記外側の領域(線L2と辺11dとの間の領域)に位置し、光出射部14の近くに配置されている。これにより、導波路長を短縮して、光損失を低減することができる。
なお、
図5Aの光変調素子10Cでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図5Bの光変調素子100Cでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0036】
図1A〜1Cに示すように、2つのアーム部23に位相変調部24のみが形成される構造では、マッハツェンダ干渉計20を対称に構成すると、2つのアーム部23の長さ(導波路長)は等しくなる。
また、
図4A及び4Bに示すように、位相変調部24以外の要素(例えば位相調整部25)をアーム部23に配置する場合でも、左右対称(または点対称)に構成すると、2つのアーム部23の長さ(導波路長)は等しくなる。
一方、
図5A及び5Bに示すように、他の要素を位相変調部24の片側のみに配置する、または別の場所に配置する場合は、
図4A及び4Bに示した対称の構成よりも導波路を短くでき、かつ電極の位置を集中できる。この場合、2つのアーム部23の長さ(導波路長)を等しくするため、各アーム部23(特に横にずらした導波路23a)において、異なる長さに曲げた等長化部23b,23cを設けることができる。
図5A及び5Bの場合、位相変調部24と光合波部22との間の導波路23aが、チップの内側を周回するアームに長い等長化部23bを設け、チップの外側を周回するアームに短い等長化部23cを設けて、導波路長を調整している。等長化部23b,23cは、片方のアームのみに設けることもできる。
【0037】
2つのアームの長さを等しくすることにより、光変調器の波長依存性を解消することができる。また、位相変調部から光合波部までの導波路長を等しくすることにより、光合波部における波形の劣化を抑制することができる。例えば、10Gbpsで光通信を行う場合の1ビット当たりのタイムスロットは、100psであるが、これに対応する導波路長は、シリコン/シリカ光導波路の実効屈折率を考慮すると約1cmとなる。位相変調部後の導波路長に100μmの差があると、光合波部においては、適切なタイミングから1psずれることになり、設計時点でマージンが減ってしまう。また、2つのアームを伝搬したそれぞれの光が光合波部に入射するタイミングのずれがある場合、波形の歪と同時に、プッシュプル動作による周波数チャープを低減する効果も減少させてしまう。また、両アームの位相変調が同時に起こらないため、動作時に出力光の位相が変化して、周波数チャープを誘起してしまう。よって、2つのアームの長さを可能な限り等しくすることにより、マージンを最大化し、周波数チャープを低減する効果を最大にすることができる。
【0038】
(第5実施形態)
図6A及び6Bに、本発明に係る第5実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10D及び100Dは、第1実施形態の光変調素子10,100,及び110と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。また、この実施形態では、また、マッハツェンダ干渉計20の光分岐部21及び光合波部22が、位相変調部24の2つの端部24a,24bからそれぞれ2つの辺11a,11bに平行な方向に延長した2つの線の間La,Lbの領域に位置してもよい。
なお、
図6Aの光変調素子10Dでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図6Bの光変調素子100Dでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
また、
図6Aでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であり、「2つの辺11a,11bに平行な方向」は、「位相変調部24の幅方向」に一致する。そこで、2つの線La,Lbを、2つの端部24a,24bからそれぞれ位相変調部24の幅方向に延長した線と定義することもできる。
【0039】
本実施形態によれば、位相変調部24からチップ端部の2つの辺11a,11bまでの距離を、より短くすることができる。これにより、電極上の電気信号の伝播損失を低減し、高周波特性の向上が可能である。つまり、光分岐部21及び光合波部22を配置するには所定の長さが必要である。光分岐部21及び光合波部22を位相変調部24の内側に配置することにより、マッハツェンダ干渉計20の前後の導波路13,15を、位相変調部24の端部24a,24bにより近づけることができる。そのための手法として、例えば、位相変調部24の端部24a,24bと光分岐部21又は光合波部22との間で、アーム部23の導波路を大きく曲げ、例えば90°を超える曲げ部を設けることが挙げられる。
光分岐部21を入力部31の配置される辺11aから離すことにより、マッハツェンダ干渉計20に入る前の導波路13を側方に逃がすためのスペースを削減できる。また、光合波部22を出力部32の配置される辺11bから離すことにより、マッハツェンダ干渉計20から出た導波路15を側方に逃がすためのスペースを削減できる。
【0040】
(第6実施形態)
図36に、本発明に係る第6実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10Gは、第1実施形態の光変調素子10と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。
図36の光変調素子10Gは、光入射部12及び光出射部14が進行波電極30の出力部32と同一の辺11bに配置されている点で第1実施形態の光変調素子10と異なる。また、本実施形態において光入射部12及び光出射部14が進行波電極30の出力部32と同一の辺11bに配置されているが、光入射部12及び光出射部14が進行波電極30の入力部31と同一の辺11aに配置されていてもよい。さらに、光入射部12及び光出射部14が電極の入力部31及び出力部32より外側に配置されていれば、導波路13及び15の配置(配線の仕方)は限定されない。
本実施形態によれば、例えば、パッケージ等の制約から片側から入射出射を必要とする場合であってもマッハツェンダ干渉計20を適用することができる。
なお、
図36の光変調素子10Gでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0041】
(第7実施形態)
図37に、本発明に係る第7実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10Hは、第1実施形態の光変調素子10と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。
図37の光変調素子10HにはV溝又はディープトレンチなどの溝部34が設けられており、溝部34の端部に設けられる入射部12及び光出射部14を進行波電極30の側方の任意の位置に設けることができる点で、第6実施形態に係る光変調素子10Gと異なる。また、溝部の他端は基板型光導波路11の端部(基板型光導波路11の輪郭)に形成されている。
溝部34は光ファイバを固定することができ、また、光入射部12及び光出射部14と溝部34に固定された光ファイバとが位置決めされるように構成されている。光入射部12及び光出射部14は、モードフィールドコンバータ(MFC)またはスポットサイズコンバータ(SSC)等を介して突合せ接合(Butt Joint)によって溝部34に設置された光ファイバに接続される。なお、光変調素子10Hでは、V溝34の端部が入射部12及び光出射部14の両方を構成しているが、溝部34がどちらか一方のみを構成してもよい。
本実施形態によれば、光ファイバを必要とする機能部品の近くに配置することができ、不要な引き回しを低減し、光損失をさらに抑制できる。また、本実施形態では光変調素子10HにV溝が設けられているため光ファイバを固定することができ、容易に突合せ接合(Butt Joint)をすることができる。
なお、
図37の光変調素子10Hでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0042】
(第8実施形態)
図38に、本発明に係る第8実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10Iは、第1実施形態の光変調素子10と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。
図38の光変調素子10Iは、光出射部14が進行波電極30の出力部32と同じ辺11bに、光入射部12が進行波電極30の側方の辺11cに配置されている点で第1実施形態の光変調素子10と異なる。また、本実施形態において光出射部14が進行波電極30の出力部32と同じ辺11bに、光入射部12が進行波電極30の側方の辺11cに配置されているが、光入射部12が進行波電極30の出力部と同じ辺11bに、光出射部14が進行波電極30の側方の辺11dに配置されていてもよい。また、光入射部12または光出射部14が進行波電極30の入力部31と同じ辺11aに設けられていてもよい。さらに、本実施形態において光入射部12及び光出射部14が電極の入力部31及び出力部32より外側に配置されていれば、導波路13及び15の配置(配線の仕方)は限定されない。
たとえば、変調器の前段にレーザが配置される場合、レーザを含めて1パッケージ化するには、光入射側と光出射側との方向が異なるレイアウトになる可能性があるが、本実施形態を用いることで、自由なレイアウトに対応できる。
なお、
図38の光変調素子10Iでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0043】
(第9実施形態)
図39に、本発明に係る第9実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10Jは、第1実施形態の光変調素子10と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。
図39の光変調素子10JにはV溝(又はディープトレンチ)36が設けられており、溝部の端部に設けられる光出射部14を進行波電極30の側方の任意の位置に設けることができる点で、第8実施形態の光変調素子10Iと異なる。また、第7実施形態と同様に、光出射部14は、モードフィールドコンバータ(MFC)またはスポットサイズコンバータ(SSC)等を介して突合せ接続(Butt Joint)によって光ファイバに接続され、溝部34は光ファイバを固定することができる。なお、光変調素子10Jでは、溝部34の端部が光出射部14のみを構成しているが、溝部34が入射部12及び光出射部14の両方を構成してもよい。
本実施形態を用いることで、たとえば、異なるMFCを利用して光入出射部のうち、一方は突合せ接合(Butt Joint)、反対側はレンズ結合する場合などにも対応でき、自由なレイアウトに対応できる。
なお、
図39の光変調素子10Jでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0044】
(第10実施形態)
図40A〜40Bに、本発明に係る第10実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子10K及び100Kは、第1実施形態の光変調素子10及び100と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。また、この実施形態では、第3実施形態の光変調素子10Bと同様に、マッハツェンダ干渉計20の各アーム部23に、位相変調部24とは異なる、電気的に独立した位相調整部(例えば、低速位相変調部)25を有する。光変調素子10Bでは、位相調整部25が2つの位相変調部24の外側に設けられていたのに対し、光変調素子10Kでは、位相調整部25が2つの位相変調部24の間(マッハツェンダ干渉計20の内側)に設けられる。また、位相調整部25の出力側にはモニタ用PD25aが設けられていてもよく、例えば、位相調整部25がヒータ構造である場合に、位相調整部25の温度を計測することができる。なお、
図40A及び40Bではモニタ用PD25aが一つ設けられているが、各位相調整部25の信号を計測するようにモニタ用PD25aが2つ設けられていてもよい。
また、本実施形態において、位相調整部25に電力を供給するための電極35は基板型光導波路11の内部において要素部品36である位相調整部25及びモニタ用PD25aに接続されており、
図40A及び40Bでは接地電極と信号電極の2本の電極の入出力部のみ示されている。なお、電極35の配線方法は限定されず、
図4A及び4Bの電極35のように配線されていてもよい。また、2つの位相調整部25で共通の接地電極を用いてもよい。ただし低速位相調整器においては、
図40A及び40Bに示すように、高周波電極のように電極を基板型光導波路11の辺まで引き回さずに、電極35を各要素部品36の近くに配置し、ワイヤボンディングまたは中継基板などを用いて外部と接続することが好ましい。
また、本実施形態における進行波電極30の配置について、
図40Aでは中央の接地電極30Gの出力側が中抜きになっている。また、
図40Bでは中央の信号電極30Sが二つに分割してそれぞれ独立している。なお、進行波電極30の機能を失わずかつ位相調整部25,モニタ用PD25a,及び電極35の動作、機能に支障がないように適宜配置されていれば特に限定されない。例えば、
図40Aの中央の進行波電極30G(を幅方向に2つに分割してそれぞれ独立させてもよい。
図40Bは、本実施形態の電極がGSGSG構造の場合に適用した変形例を示している。
アーム部23に設ける他の要素部品36として、位相調整部25及びモニタ用PD25aのほかにも、偏波多重回路における偏波変換素子、偏波分離・結合素子、及びマッハツェンダ干渉計におけるアーム間の光パワーを均一化するための光可変減衰器(VOA)等が挙げられる。
他の要素は、両方のアームに設けてもよく、片方のアームのみに設けてもよい。
本実施形態のように構成することで、高周波電素路の特性を劣化させずに、レイアウト上の自由度を高めることができる。
なお、
図40A及び40Bの光変調素子10Kでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0045】
(第11実施形態)
図41に、本発明に係る第11実施形態の光変調素子を示す。この光変調素子100Lは、マッハツェンダ干渉計20が二つ組み合わされた四位相偏移変調器(QPSK変調器)を有しており、共通の光分岐部(第2の光分岐部)16によって分岐された光がマッハツェンダ干渉計20の導波路17に入射し、各マッハツェンダ干渉計20から光を出射する導波路19が共通の光合波部(第2の光合波部)18に合波されている。光変調素子10Lでは、各マッハツェンダ干渉計20において、要素部品36である位相変調器(例えば、低速位相調整器)25及びモニタ用PD25aが2つの位相変調部24の内側に設けられ、さらに光の合波部18の手前にもう一つの要素部品36aが設けられている。つまり、各マッハツェンダ干渉計20に設けられた要素部品36はマッハツェンダ干渉計20の内側に配置され、二つのマッハツェンダ干渉計20の合波部における要素部品36aは二つのマッハツェンダ干渉計20の間、つまり各マッハツェンダ干渉計20の外側に配置される構造を有する。
ここで、通常要素部品36aは各マッハツェンダ干渉計20からの光導波路の長さが等長となるように配置されることが好ましく、本実施形態の構成を有することで容易に各マッハツェンダ干渉計20から要素部品36aまでの光導波路の長さを等長にすることができる。
従って、本実施形態のように構成することで、高周波電素路の特性を劣化させずに、レイアウト上の自由度を高めることができる。
なお、
図40A及び40Bの光変調素子10Kでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるが限定されず、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜していてもよい。
【0046】
(第12実施形態)
図42A及び42Bに、本発明に係る第12実施形態の光変調素子を示す。これらの光変調素子10M及び100Mは、第1実施形態の光変調素子10及び100と同様に、マッハツェンダ干渉計20を含む基板型光導波路11から構成される。また、この実施形態では、第4及び10実施形態の光変調素子10B及び10Kと同様に、マッハツェンダ干渉計20の各アーム部23に、位相変調部24とは異なる、電気的に独立した位相調整部(例えば、低速位相変調部)25を有する。光変調素子10Bでは、位相調整部25が2つの位相変調部24の外側または間に設けられていたのに対し、光変調素子10Mでは、各位相調整部25の長さ方向の出力側の延長線上に設けられる。つまり、位相調整部24と位相調整部25とが直線状に配置される。
また、本実施形態では、上記構成を可能とするため、位相変調部24よりの出力側の進行波電極30が曲がっている。これは、進行波電極において位相変調部と相互作用をする位置より出力側(後段部)は、電気信号に損失が生じても、すでに光との相互作用は完了しているため、出力される変調信号には影響は少ないためである。従って、本実施形態の進行波電極30においては、進行波電極のうち入力部31から位相変調部と相互作用をする位置までが位相変調部24に沿って直線状に構成されていれば限定されない。
また、
図42Aと
図42Bとでは、出力部が設けられる辺が異なる点で相違している。なお、進行波電極30の後段部が低速位相変調部25を避けるように構成されていれば、出力部の位置は限定されない。
本実施形態を用いることで、進行波電極の後段部であれば曲げることで位相調整部24と位相調整部25とを直線状に配置することが可能であり、これにより光導波路設計のレイアウトが自由になる。特に、本実施形態では光導波路を短尺化することができ伝搬光の損失を低減できる。
【0047】
(位相変調部の構成例)
図7に、位相変調部の断面構造の一例を示す。断面は、光の進行方向に垂直である。この構成例において、位相変調部24に用いられる光導波路46は、コア44がリブ部40とその両側にそれぞれ接続された一対のスラブ部41,42とを有し、コア44の周囲にそれぞれ下部クラッド43と上部クラッド45を有する。電極47,48の上部は上部クラッド45の上に形成され、電極47,48の下部はスラブ部41,42と電気的に接続されている。
【0048】
このような導波路構造は、Si−SiO
2−Siの積層体からなる、SOI(Siliconon insulator)基板をもとに製造することができる。中間のシリカ(SiO
2)層を下部クラッド43とし、上部のシリコン(Si)層をコア44として用いる。Si層は、中央に厚みの大きいリブ部40を持つリブ型導波路であり、光はリブ部40を中心に分布する。上部クラッド45は、コア44のリブ構造を形成した後にシリカ(SiO
2)等を堆積させることにより形成される。この上部クラッド45は必須の構成ではなく、コア44より屈折率の小さい材料が配置されればよく、例えば樹脂材料クラッドまたはエアクラッドを適用することも可能である。厚みの薄いスラブ部41,42に接続される電極47,48は、アルミ(Al)等、コア44のシリコン材料とオーミックコンタクトを形成できる材料が好適である。電極47,48はリブ部40から横方向に距離を置いて配置される。SOI基板の下部のSi層が光導波路46の下の基板49となる。
【0049】
シリコンコア44は、一部はP型、又はN型にドーピングされている。この構成例では、片方のスラブ部41がP型、もう片方のスラブ部42がN型にドーピングされている。
半導体に導電性を付与するドーパント(不純物)は母体媒質に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、本構成例のように母体媒質がシリコンのようなIV族半導体であれば、P型ドーパントとしてホウ素(B)等のIII族元素が、また、N型ドーパントとしてリン(P)や砒素(As)等のV族元素が挙げられる。
【0050】
ドーピング領域の配置として、この構成例では、スラブ部41とこれに接するリブ部40の一部がP型に、スラブ部42とこれに接するリブ部40の一部がN型にドーピングされている。P型領域51とN型領域52はリブ部40において接しており、その境界(PN接合部)50には空乏層が生じる。このPN構造に電極47,48を通じて外部から電圧を印加することで、PN接合部50のキャリア分布が変動し、空乏層の幅に変化が生じる。シリコンの屈折率はキャリア密度によって変化することが知られている。これを利用して、キャリア分布の変化を通じて、電圧により光導波路の実効屈折率を制御し、位相変調部を出力する際の光の位相状態を制御することができる。
【0051】
また、スラブ部41,42のリブ部40から離れた一部は、他の箇所に比べてドーピング濃度を高くして、P+領域53及びN+領域54とする。これにより、電極47,48とオーミックコンタクトを形成できる。P+領域53及びN+領域54は、少なくともスラブ部41,42の上面(電極47,48と接触する部分)に形成されればよいが、スラブ部41,42の厚みやドーピング条件により、スラブ部41,42の厚み方向の全体に及ぶこともできる。これにより、リブ部40の中央部にあるPN接合部50までの寄生抵抗を低減することができる。
【0052】
図8に、位相変調部の導波方向構造の一例を示す。位相変調部24は、
図7に示す断面構造が長手方向に連続して続く構造を有する。必要な位相変化量及び印加する電圧等の条件から、位相変調部24の長手方向の長さが決められる。例えば、想定する動作電圧が4Vppで、この動作電圧における単位長さ(例えば1mm)当たりの位相変化量がπ/4ラジアンのとき、位相変調部24全体で必要な位相変化量がπ/2ラジアンであれば単位長さの2倍(例えば2mm)、必要な位相変化量がπラジアンであれば単位長さの4倍(例えば4mm)と決めることができる。
また、電極47,48は進行波電極を構成する。つまり、位相変調部24の長手方向にリブ型光導波路46と合わせ並走させ、光と同じ方向に電圧を伝播させる。例えば、光導波路に導波される光が図の手前から奥側に向かって伝播するとすれば、電極47,48の手前側に信号源を、奥側に終端を接続して電圧を印加する。伝播方向が奥から手前側の場合は、電極の奥側に信号源を、手前側に終端を接続して電圧を印加する。
【0053】
(導波路構造の詳細)
位相変調部24とその他の要素(例えば光分岐部21や光合波部22)との接続及び基板上での導波路の引き回しには、リブ型導波路の他に、断面が矩形である矩形導波路(細線導波路)を利用できる。矩形導波路は、より強い電界の集中により、導波路側壁に製造上生じる微細な凹凸(側壁ラフネスの影響をより強く受けることから光損失が大きくなるというデメリットがあるが、強い閉じ込めにより曲げ半径をより小さくすることができる。また、後述するMMI及びMFC等も、矩形導波路を用いて構成される。
【0054】
図9に、リブ型導波路と矩形導波路との接続部の一例を模式的に示す。図示例では、矩形導波路55とリブ型導波路46のリブ部40とは同じ幅及び厚みを有するが、異なる幅を連続的に接続してもよい。矩形導波路55からリブ型導波路46への遷移領域56では、スラブ部41,42の幅が、ゼロから連続的に変化する。遷移領域56では、スラブ部41,42の幅は光の伝播方向(リブ部40の長手方向)に沿って線形に、又は二次関数的に増加させてもよい。線形的変化をさせる場合は設計が容易である。光損失をさらに低減するためには、二次関数的に変化させる方がよい。
遷移領域56の長さは光の波長(例えば約1〜2μm)に比べて十分に長くする必要がある。遷移領域56の長さは特に限定されるものではないが、例えば、20μm程度を例示できる。
【0055】
矩形導波路を光ファイバと直接、又はレンズ等の光学部品を介して間接的に光結合させる場合、矩形導波路の先端部に、幅が端面に向かって徐々に狭くなる逆テーパ導波路(後述する
図32参照)を設けることが好ましい。これにより、光ファイバと導波路端面でのモード不整合を低減することができ、光結合における光損失を低減することができる。
リブ型導波路及び矩形導波路の厚みがサブミクロンスケールであるので、逆テーパ導波路の先端部は、幅及び厚みがごく微細である。よって、導波路端面付近において、高屈折率コアの断面積が入射光強度のモード分布の広がりに対して1/100以下であるので、光ファイバから入射する光に対する逆テーパ型導波路端面での反射率を約−30dBまで抑えることができる。その結果、低い光損失及び高い消光比のみならず、高いリターンロスの(反射損失の少ない)光集積回路を構成することができる。
【0056】
光分岐部及び光合波部としては、1×2のマルチモード干渉計(MMI)を用いることもできる。
図10A及び10Bに、1×2MMIの模式図を示す。
図10Aが平面図、
図10Bが斜視図である。このMMI57では、片側に1本(符号58)、反対側の2本(符号55)の矩形導波路が接続されている。これらの矩形導波路55,58の幅は、リブ型導波路のリブ幅と同じであることが好ましい。具体例としては、リブ幅500nm(0.5μm)に対して、矩形導波路55,58の幅を0.5μm、2本の矩形導波路55の間隔を0.3μm、MMIの幅を1.5μm、MMIの長さを1.8μmとすることが例示される。この場合、矩形導波路55からMMI57の長辺までの間隔として、計算上0.1μmの間隔が確保される。
MMIは、
図1A等のマッハツェンダ干渉計20の光分岐部21及び光合波部22のほか、基板型光導波路11に用いる光分岐部及び光合波部(例えば
図17A及び17B等の光分岐部16及び光合波部18など)に採用することが好ましい。
【0057】
図11にマッハツェンダ型導波路59の模式図を示す。光分岐部21に左側の矩形導波路58から入射した光は、右側の2本の矩形導波路55に分岐され、マッハツェンダ型導波路58の両アーム部23を伝播する。位相変調部24を構成するリブ型光導波路46に高速電気信号を入力することにより、光変調された信号光が光合波部22の右側の矩形導波路58から出射される。マッハツェンダ型導波路59の前後の矩形導波路58は、
図1A〜1Cでは光導波路13,15に相当し、リブ型光導波路46と水平方向に90°曲げられ、前述の逆テーパ導波路からなる光結合部(
図1A〜1Cでは光入射部12及び光出射部14に相当)に接続される。
以上により、低い光損失で、電気信号入力の減衰を抑えた、光変調器に好適なマッハツェンダ型導波路58(
図1A〜1Cのマッハツェンダ干渉計20に相当)を構成することができる。マッハツェンダ型導波路を用いると、光信号のチャープを制御することができ、長距離伝送に適した高速な光変調器を構成することができる。
また、詳しくは後述するが、マッハツェンダ型導波路58を多段に接続することで、より複雑な変調方式に対応した光変調器を構成することができる。
【0058】
(電極構造の詳細)
図12に、マッハツェンダ干渉計の2つのリブ型導波路を横断した断面図(
図14A及び4BのA−A線に対応)を示す。リブ型導波路の断面構造は、
図7及び
図8と同様である。2本の導波路コア44のそれぞれのPN接合部50は、互いにPNの向きを反対にして配置されており、両方のN+領域54を同一の接地電極(GND)に接続している。
P+領域には、2つの信号電極(Signal1及びSignal2)により、別々の高周波信号を印加することができる。2つの信号電極の外側には、さらに接地電極(GND)を配置して、GSGSGからなるコプレーナ電極を構成することができる。
【0059】
マッハツェンダ干渉計を用いたプッシュプル動作においては、Signal1及びSignal2には互いにオン・オフの反転した信号(DATA,xDATA)を印加する。
各々の寸法は、所望の特性インピーダンスに合わせて設計可能である。Si上のコプレーナ線路では、信号電極の幅cと接地電極に対する間隔bとの比c:bを2:1にすることで特性インピーダンスをおよそ50Ωとできることが知られている。本構造では、シリコンリブ導波路のPN構造に生じる接合容量の影響を考慮して、c/bを2よりも小さく設計することで、特性インピーダンスを調整することが可能である。一例として、電極厚さa=2μm、GS間間隔b=8μm、信号電極幅c=10μmが挙げられる。
【0060】
次にチップ端の電極の模式図を
図13A〜13D及び
図14A,14Bに示す。
図13A,13B及び14Aでは位相変調部の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直である場合の電極の模式図であり、
図13C,13D,及び14Bでは、位相変調部の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している場合の電極の模式図である。
チップ端部においては、外部に位置するパッケージや中継基板等の上に作製された電極に対して、ボンディングにより電気的接続を行う。接続方法としてはフリップチップやワイヤボンディング等が考えられる。十分な接触面積を確保するために、電極の端部には、例えば100μm角のボンディング接続部を配置する。電極の端部から位相変調部24の電極に向けて、連続的に幅を変えて接続することで、特性インピーダンスの不整合による反射や減衰を低減している。光導波路26は、
図14A及び14Bに示すように、電極の下部を通過することで、チップ端部のボンディング接続部から位相変調部24までの距離を低減することが可能である。なお、電極の下部に配置される光導波路26は、
図14Aでは、
図5Aに示すように、
図14Bでは、
図5Bに示すようにそれぞれ位相変調部24の外側に向かうアーム部23の一部であってもよく、マッハツェンダ干渉計20の前後の光導波路13,15であってもよい。
【0061】
図13B及は
図13AのX部の部分拡大図であり、
図13Dは
図13CのX部の部分拡大図である。このとき電極の下部を通過する光導波路は、チップ端部に矩形に設定したボンディング接続部を避けることで、ボンディング時に生じる歪の影響を避けることができる。
図13A〜Dの各要素の寸法としては、位相変調部上では
図12と同様にGS間間隔b=8μm、信号電極幅c=10μmが挙げられ、チップ端部では、信号電極幅d=100μm、接地電極幅e=200μmが挙げられる。
【0062】
図12〜14Bに示す例では電極がGSGSG構造となっている。この場合の光変調素子の全体を
図15A及び15Bに例示する。この光変調素子10E及び100Eでは、進行波電極30Aが、マッハツェンダ干渉計20の2つのアーム部23の間に接地電極30Gを有し、2つのアーム部23の外側にそれぞれ信号電極30Sを有し、これらの信号電極30Sの外側にさらに接地電極30Gを有する。
なお、
図15Aの光変調素子10Eでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図15Bの光変調素子100Eでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
また、
図16A及び16Bに、電極がGSとなっている光変調素子の一例を示す。GS構造の電極は、例えば非特許文献1に記載されている。この光変調素子10Fでは、進行波電極30Bが、マッハツェンダ干渉計20の2つのアーム部23の外側に、それぞれ接地電極30G及び信号電極30Sを有する。
なお、
図16Aの光変調素子10Fでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図16Bの光変調素子100Fでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
このように、電極がGSG構造でない場合でも、
図1A〜1Cまたは
図3A〜
図6B等に示す構造とすることで、高周波電極における電気信号の低損失化や広帯域化が図れる。
【0063】
(QPSK用光変調器)
本発明に係る実施形態は、基板型光導波路が1つのマッハツェンダ干渉計を含む構成に限られず、複数のマッハツェンダ干渉計(MZI)を含む構成も可能である。特に、多値化を行う場合に、複数のMZIに分岐したり、複数のMZIから合波したりする場合においても、各MZIの位相変調部から素子の端部までの距離を最小限に保つことができる。
一例として、
図17A,17B及び
図18A,18Bに、QPSK用光変調器の構成例を示す。共通の光分岐部16によって分岐された光が各マッハツェンダ干渉計20の導波路17に入射し、各マッハツェンダ干渉計20から光を出射する導波路19が共通の光合波部18に合波されている。なお、
図17A及び18Aでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図17B及び18Bでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0064】
それぞれのマッハツェンダ干渉計20に設けられる進行波電極30の電極構造は、GSG、GSGSG、GS等であってよい。2つのマッハツェンダ干渉計20がそれぞれGSGSG構造を持つ場合、それぞれが独立したGSGSG−GSGSG構造でもよく、隣接する接地電極を共通化したGSGSGSGSG構造でもよい。2つのマッハツェンダ干渉計20がそれぞれGS構造を持つ場合、向きが同じGS−GS構造でもよく、向きが反対のGS−SG構造でもよい。
【0065】
QPSK(quadrature phase shift keying)フォーマット用光変調器の場合、2つのマッハツェンダ干渉計20の出力の間でπ/2の位相変調を行う。そのためのπ/2シフト調整部27は、上述した位相調整部25と同様な構成のヒータ型位相調整部で実現でき、
図5A及び5Bに示す構成と同様に、他の要素を側部に配置することが可能である。
各マッハツェンダ干渉計20と共通の光分岐部16との間を接続する導波路17の一部又は全部を側部に配置する場合、これらの導波路17の長さが互いに等しいことが好ましい。また、各マッハツェンダ干渉計20と共通の光合波部18との間を接続する導波路19の一部又は全部を側部に配置する場合、これらの導波路19の長さが互いに等しいことが好ましい。
【0066】
図17A及び17Bの場合、各マッハツェンダ干渉計20と共通の光合波部18との間を接続する導波路19が側部に配置されている。2つのマッハツェンダ干渉計20の間に他の要素を配置することもできるが、
図5A及び5Bと同様に、マッハツェンダ干渉計20と基板側部との間のスペースに配置することが好ましい。この例では、4つのマッハツェンダ干渉計20の各位相変調部24の長手方向をそれぞれ延長した複数の線のうち、最も離れた2つの線L1,L2間の領域より外側、具体的には線L2と辺11dとの間の領域に、π/2シフト調整部27や共通の光合波部18を配置している。そして、導波路19の一方又は両方に等長化部19b,19cを設けている。
【0067】
図18A及び18Bの場合、各マッハツェンダ干渉計20の位相変調部24と光合波部22との間の導波路23aを側方に引き出している。また、この導波路23aにも等長化部23bを設けている。導波路19上のπ/2シフト調整部27に給電する電極37は辺11aに向けて配置し、導波路23a上の位相調整部25に給電する電極35は辺11bに向けて配置している。また、この給電用電極37は、電極35と同じく辺11bに配置してもよい。
この場合、給電は辺11bの片側一方となり、外部に配置するパッケージにおいても、片側のみへの電極の引き出しが容易となる。また、電極35,37の両方を辺11aに配置しても同様の効果がある。
図18A及び18Bでは
図17A及び17Bとは異なり、マッハツェンダ干渉計20の各アームに位相調整部25を設けている。これにより、例えば製造において生じる各々のマッハツェンダ干渉計の各アーム間の差を調整することが可能となる。
ここで記載したQPSK用光変調器は、本実施形態の変調器で変調可能なフォーマットの一つである。一般的には本発明の変調器は2つのマッハツェンダ干渉計に対して適切な電気信号を印加することで、任意の振幅・位相変調が可能である。例えば、入力の電気信号に強度変化を持たせることで、16QAM及び64QAM変調に用いることができる。
【0068】
(DP−QPSK用光変調器)
図19A及び19Bに示すように、QPSK用光変調器を2つ組み合わせることにより、DP(Dual polarization)−QPSK用光変調器を構成することも可能である。
図19A及び19Bでは、マッハツェンダ干渉計(MZI)20に設ける進行波電極の図示を省略している。
図19Aでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図19Bでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
光導波路を伝播する光は、通常、複数のモードの重ね合わせとして表されるが、シングルモードの場合、導波路を伝播する光は1つのモードのみからなる。しかしながら、導波路断面における高さ方向と幅方向の寸法が近い場合は、通常、主電界が幅方向のモード(ここでは便宜的にTEモードと呼ぶ)、及び主電界が高さ方向のモード(ここでは便宜的にTMモードと呼ぶ)の2つが存在する。
QPSK用光変調器は、上述したように2つのMZI20と、入射光を2つのMZI20に分岐する光分岐部16と、各MZI20からの出射光を合波する光合波部18と、光合波部18の前段に配置されたπ/2シフト調整部27を有する。
DP−QPSK用光変調器は、2つのQPSK用光変調器に共通する光分岐部16Aと、光分岐部16Aを各QPSK用光変調器の光分岐部16と接続する2つの光導波路17Aと、2つのQPSK用光変調器に共通する光合波部18Aと、この光合波部18Aを各QPSK用光変調器の光合波部18と接続する2つの光導波路19Aを有する。
【0069】
DP−QPSK用光変調器では、通常の導波路にTE/TMの2つのモードが存在できることを利用して、TE偏光で入力した光を分岐して、各々QPSK信号に変更した後、片方の偏光を回転させてTM偏光とし、さらに2つの偏光を偏光合成部(コンバイナ)で同一の導波路上に合成して、TE/TM両偏波に独立したQPSK信号を有するDP−QPSK変調を行う。偏波回転素子28は、QPSK用光変調器の光合波部18の後段の光導波路19Aに設けられている。偏波合成素子29は、DP−QPSK用光変調器の光合波部18Aと一体に成形され、光導波路19Aより入射した光を、TE、及びTMの二つの偏波状態としての後段の光導波路15に接続する。また、本実施形態では、偏波合成素子29と偏波回転素子28の位置は分離されているが、一体の機能を持つ偏波回転合成素子を設けることも可能である。
上述したものと同様の等長化部19b,19dを、QPSK用光変調器の光合波部18の前段の光導波路19(等長化部19b)や、DP−QPSK用光変調器の光合波部18Aの前段の光導波路19A(等長化部19d)に設けることが好ましい。
【0070】
図19A及び19Bでは、2か所に偏波回転素子28を設けることが可能であるが、通常は片側に配置させればよい。同じ光合波器に合波される2つの光導波路は、長さを等しくすることが好ましい。偏波回転素子28や偏波合成素子29としては、非特許文献2に記載されているものが挙げられる。偏波回転素子28及び偏波合成素子29に給電する電極38,39、又は
図18A及び18Bと同様に位相調整部25に給電する電極35が必要であれば、適宜、辺11a又は辺11bに向けて配置することができる。
本実施形態によれば、複雑な構成を有する光変調器であっても、電極部を最短で位相変調部に到達させることができる。また、位相変調部への電気信号が素子の同一の方向から入力できるため、パッケージの高周波信号の入力口を同一方向に設けることができる。
【0071】
(PD集積)
図20A及び20Bにフォトダイオード(PD)を集積した実施形態を示す。非特許文献3に記載されているように、シリコン導波路上にPD60を集積することも可能である。この実施形態では、側部(線L2と辺11dの間)に配置した光合波部22の後段にPD60を配置している。
図20Aでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図20Bでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0072】
(両方の側部に他の要素を持つ例)
図21A及び21Bでは、光入射部12に近い側部(線L1と辺11cの間)に光分岐部21の前段に高次モード除去部61を設け、光出射部14に近い側部(線L2と辺11dの間)に配置した光合波部22の後段にPD60を配置している。ここで、高次モード除去部とは、本導波路をマルチモード導波路として設計した場合に適用可能な構造であり、不要な高次モードを導波路から取り除く構造を持つ。例えばシリコン上に集積することもできる。
本発明はこれに限られず、マッハツェンダ干渉計20の前後に、
図5A及び5Bのような位相調整部25を設けることもできる。
【0073】
(光入射部と光出射部を同じ側に配置した構成例)
これまで図示した実施形態(例えば
図1A参照)は、光入射部12及び光出射部14がそれぞれ異なる辺11c、11dに配置されているが、
図22A及び22Bに示すように、光入射部12及び光出射部14を同じ辺11eに配置することもできる。この配置によれば、ファイバアレイを利用して光入射部12と光出射部14を同時に調心することができる。なお、
図22Aでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図22Bでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0074】
(光入射部及び/又は光出射部を基板上に配置した構成例)
これまで図示した実施形態(例えば
図1A参照)は、光入射部12及び光出射部14がそれぞれ基板型光導波路11の端部に設けられ、外部の光ファイバと光結合させることができるものであるが、
図23A及びCに示すように、受光器等の光出射部14Aを基板上に設けたり、
図23B及びDに示すように、光源等の光入射部12Aを基板上に設けたりすることもできる。
図23A及びCの場合、光出射部14Aは、進行波電極30とその側方の辺11dとの間に設けられているが、辺11dには接していない。また、
図23B及びDでは、光入射部12Aは、進行波電極30とその側方の辺11cとの間に設けられているが、辺11cには接していない。なお、
図23Aおよび23Bでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図23C及び23Dでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
【0075】
(複数のマッハツェンダ干渉計を含む他の例)
図24A及び24Cに示すように、2つのマッハツェンダ干渉計20を並列に接続したり、
図24B及びDに示すように、2つのマッハツェンダ干渉計20を独立に設けられたりすることもできる。
図24Aおよび24Bでは位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して垂直であるのに対し、
図24C及び24Dでは、位相変調部24の長手方向が2つの辺11a,11bに対して傾斜している。
なお、
図17A,17B及び
図18A,17Bも2つのマッハツェンダ干渉計20を並列に接続した例に該当するが、
図24A及び24Cの場合、1つの光入射部12から導波路13を、共通の光分岐部16により2つの導波路17に分岐し、それぞれを2つのマッハツェンダ干渉計20に接続している。また、それぞれのマッハツェンダ干渉計20の出力を合波することなく、導波路15を介して光出射部14から出射している。
図24A及び24Cでは、1つの基板に光入射部1つと光出射部2つを設けているが、光入射部1つと光出射部3つ以上を設けてもよい。また、光入射部2つと光出射部1つを設けたり、光入射部3つ以上と光出射部1つとを設けたり、種々のバリエーションが可能である。
図24B及び24Dの場合、1つの基板型光導波路11に、光入射部12及び光出射部14がそれぞれ複数設けられている。また、それぞれの光入射部12と光出射部14との間にマッハツェンダ干渉計20が設けられ、光入射部12から光出射部14に至る経路が独立に配置されている。
【0076】
(シリコン導波路の曲げ半径)
非特許文献4によると、シリコン導波路では数μmまで、光損失の増加なく曲げることが可能である。従って、位相変調部から、電極構造間の距離は、曲げ半径と、結合部の長さ、また、さらに、複数本導波路が並ぶ場合にはこの導波路間隔によることになる。
例えば、導波路の曲げ半径を10μmとすると過剰な光損失なく曲げを構成することが可能である。また、簡単のため、
図10A及び10Bに示すMMI57を光分岐部又は光合波部に用い、MMI57の配置に必要な長さも10μmとする。
【0077】
図25A及び25Bは、
図1A及び1Bのように一組のマッハツェンダ干渉計20からなる場合である。
図25Aの場合、位相変調部24からの90°の曲げにつき10μmの距離が必要となり、MMI57への曲げで10μm、MMI57に10μm、光導波路26への曲げ部で10μmが必要であり、電極パッド30aまでの距離を10μmとすると、位相変調部24と電極パッド30aの間を50μmで構成することが可能である。
図25Bの場合、位相変調部24からの90°前後の曲げにつき10μmの距離が必要となり、MMI57への曲げで10μm、MMI57に10μm、光導波路26への曲げ部で10μmが必要であり、電極パッド30aまでの距離を10μmとすると、位相変調部24と電極パッド30aの間を50μmで構成することが可能である。
図26A及び26Bは、
図5A及び5Bのように光合波部を側部に配置した場合である。この場合、位相変調部24からの曲げ半径10μm、2本の光導波路26の間隔10μm、さらに電極パッド30aまで10μmの間隔を取ると、位相変調部24と電極パッド30aの間隔を30μmで構成することが可能である。
【0078】
図27A及び27Bは、
図17A,B,及び
図24A及びCのように2本のマッハツェンダ干渉計20が組み合わされた場合である。
図27Aの場合、
図25Aと同じように、位相変調部24に接続された曲げが10μm,その後、光分岐部21又は光合波部22を経て90°曲げまでが30μm、さらに光導波路17,19を2本、光分岐部16又は光合波部18で合わせて曲げるまでに30μm、光導波路13,15から電極パッド30aまでの間隔を10μmとすれば、位相変調部24と電極パッド30aの間隔は合計80μmで構成が可能である。
図27Bの場合、
図25Bと同じように、位相変調部24に接続された曲げが10μm,その後、光分岐部21又は光合波部22を経て90°前後の曲げまでが30μm、さらに光導波路17,19を2本、光分岐部16又は光合波部18で合わせて曲げるまでに30μm、光導波路13,15から電極パッド30aまでの間隔を10μmとすれば、位相変調部24と電極パッド30aの間隔は合計80μmで構成が可能である。
【0079】
図28A及び28Bは、
図6A及び6Bのように光合波部を位相変調部の内側に向けて配置した場合である。
図27A及び27Bと同様に、2本のマッハツェンダ干渉計20が組み合わされているが、位相変調部24と電極パッド30aの間隔を40μmとすることも可能である。また、
図1A〜1Cのように一組のマッハツェンダ干渉計20からなる場合について考察すると、位相変調部24と電極パッド30aの間隔を30μmとすることも可能である。
図28Aでは、
図27Aに比べて光分岐部21又は光合波部22が20μm下方にずれており、光分岐部21又は光合波部22から90°曲げの10μmの位置と、導波路23dから導波路17,19までの間隔10μmの位置とが、左右に揃っている。また、
図28Bでは、
図27Bに比べて光分岐部21又は光合波部22が20μm下方にずれており、光分岐部21又は光合波部22から90°前後の曲げの10μmの位置と、導波路23dから導波路17,19までの間隔10μmの位置とが、左右に揃っている。
それゆえ、一組のマッハツェンダ干渉計20からなる場合では、
図25A及び25Bの50μmよりも20μm短い30μmで済む。また、
図28A及び28Bのように2本のマッハツェンダ干渉計20が組み合わされた場合でも、
図27A及び27Bの80μmよりも20μmの2倍だけ短い40μmで済む。
なお、光分岐部21又は光合波部22の位置をさらに下方に(左右の位相変調部24の間に向けて)ずらしても、導波路23dを位相変調部24の端部から90°または90°前後曲げるのに10μm必要で、さらにその位置から導波路17,19までに間隔10μmが必要であるから、結果は同様となる。
【0080】
さらに、
図25A〜28Bにおいて、曲げ半径10μm、導波路間隔10μmというのは、前述のとおり実現可能な一例であるが、これに限らず、さらに狭めることも可能である。
上記例は矩形導波路について説明したが、リブ型導波路では、光損失の低減が図れる一方、曲げ半径が大きくなる、しかし、例えば曲げ半径を2倍にしても、電極パッドと位相変調部との間の距離は2倍以下であり、おおむね100μm〜200μmの電極パッド−位相変調部間距離の実現が可能である。
なお、
図25B,26B,27B,及び28Bにおいて、位相変調部24の長手方向がチップの幅方向(上記図の左右方向)に対して傾斜している場合、例えば
図25Bの左側では位相変調部24から90°未満の曲げでよく、一方、右側では位相変調部24から90°より大きい曲げが必要となる。この場合、光分岐部21又は光合波部22と位相変調部24との間において、2つのアーム部23の導波路長が等しくなるように調整することが好ましい。
【0081】
(光変調素子モジュール)
図29及び
図30に光変調素子モジュールの実施形態を示す。
図30は、
図29のM−M線に沿う断面図である。パッケージ(筐体)の上部を覆う蓋は省略している。
この光変調素子モジュール70は、光変調素子チップ71をパッケージ72に収容する。パッケージ72は、例えばセラミック等の絶縁体からなる。光変調素子チップ71は、チップキャリア73の中央くぼみ部73aに配置され、はんだ付け等で固定されている。チップキャリア73の長手方向の両側には、それぞれ、メタライズパターン75を形成したメタライズパターン形成部76と、終端回路基板77を配置した終端回路配置部78が設けられている。
【0082】
メタライズパターン75は、
図31に示すように、ストリップ線路75aとしてGSGSGの電極パターンを有する。電極を構成する金属は特に限定されないが、例えば金(Au)が挙げられる。メタライズパターン75はワイヤ74(
図30参照)によって光変調素子チップ71の進行波電極の入力部(
図15A及び15Bの入力部31参照)と電気的に接続されている。信号入力線を外部のリード線の間隔に合わせるために、
図29に示すように、光変調素子チップ71側では狭く、パッケージ72の端部に向かって広がる、逆V字型のパターンである。また、中心軸に対して左右対称である。
また、
図31のメタライズパターン75は、光変調素子チップ71の内部に有する、フィードバック動作用のPDへの入出力配線のためのパッド75bを、ストリップ線路75aの左側で光変調素子チップ71の近傍に有する。
【0083】
終端回路基板77は、50Ωの終端回路を、中心軸に対して左右対称に、はんだ付け等で固定している。終端回路基板77はワイヤ74(
図30参照)によって光変調素子チップ71の進行波電極の出力部(
図15A及び15Bの出力部32参照)と電気的に接続されている。ワイヤ74としては、特に限定されないが、Auワイヤが挙げられる。入力部及び出力部のそれぞれにつき、GSGSGの各5本をボンディングする。
【0084】
光結合系として、光入射部又は光出射部と光ファイバ80との間に、それぞれ2つのレンズ81,82が設けられる。第1レンズ81は、YAGレーザを用いた溶接によりチップキャリア73上の治具(図示せず)に固定され、光変調素子チップ71の左右にそれぞれ配置されている。第2レンズ82は、光ファイバ80とともにパッケージ72の外壁部72aに接続されている。
光変調素子チップ71の光入射部又は光出射部(
図15A及び15Bの光入射部12、光出射部14参照)と、第1レンズ81、第2レンズ82、さらに光ファイバ80は、一直線上に配置されている。光変調素子チップ71は、チップキャリア73の中央部で、かつパッケージ72の中央部に配置されている。
【0085】
寸法の一例を下記に示す。横寸法は
図29の左右方向、縦寸法は
図29の上下方向、高さは
図30の上下方向である。
パッケージ72の横寸法:18.2mm。
パッケージ72の縦寸法:14.8mm。
パッケージ72の高さ:6.7mm。
メタライズパターン75の縦寸法:3mm。
チップキャリア73の縦寸法:6mm。
終端回路配置部78の縦寸法:3mm。
リード線の間隔:1mm。
光変調素子チップ71の短尺面:1.4mm。
光変調素子チップ71の長尺面:4.9mm。
光導波路結合部の短尺面端からの距離(
図15A及び15Bの辺11aから光入射部12まで、及び辺11bから光出射部14までに相当):各1.55mm。
進行波電極の間隔:0.5mm。
Auワイヤの直径:25μm。
第1レンズの直径:2.5mm。
第1レンズ81を固定する治具の長さ:5mm。
【0086】
(逆テーパ部構造)
モードフィールドコンバータ(MFC)で用いる逆テーパ部構造については、例えば
図32(非特許文献4のFig2を参照)に示すような構造が提案され、実証されている。
図32において、光ファイバなどの外部のデバイスを、図の左奥に配置し、テーパ先端部に向かって、モードが広くなることを利用して高効率な光結合を実現することができる。
例えばシリカ等の下部クラッド91上にシリコンコアの矩形導波路92が配置され、矩形導波路92の先端部が逆テーパ導波路93となっている。逆テーパ導波路93の周囲は樹脂(ポリマー)等のクラッド94で覆われる。さらに、矩形導波路92の上などを含めて、上部クラッド95が設けられる。
【0087】
(クラッドの厚み)
上述したように光導波路を電極の下部に通して両者が上下に交差する場合、電極に使用する金属により導波路の光損失(以下、導波路損失という。)の増大を招くおそれがある。そのため、電極と導波路の間には適切な間隔を確保することが好ましい。
クラッドの厚みに関して、シミュレーションの結果を示す。メタルによる電極が光導波路の上部に配置される場合の導波路損失を、リブ型導波路及び矩形導波路についてそれぞれシミュレーションにより求めた。
【0088】
シミュレーションに用いたモデルは、リブ型導波路については
図33Aに示す構造であり、コア104はリブ部101及び両側のスラブ部102からなり、リブ部101の幅w
r=500nm、リブ部101の高さh
r=220nm、スラブ部102の高さh
s=95nm、下部クラッド103の厚さh
u=2μmとし、コア104の下面から電極106の下面までの高さhを変数とした。矩形導波路については
図33Bに示す構造であり、コア107の幅w
c=500nm、コア107の高さh
r=220nm、下部クラッド103の厚さh
u=2μmとし、コア107の下面から電極106の下面までの高さhを変数とした。この場合、高さhは上部クラッド105の厚みに相当する。
クラッド103,105の材料はシリカ(SiO
2)とし、コア104,107の材料はシリコン(Si)とし、電極106の材料はアルミニウム(Al)とした。
【0089】
シミュレーションでは、電極106もクラッド103,105と同じくシリカから構成されると仮定して、シリコンのコア104,107に対して求めた導波モードのうち、電極106の領域に存在する光パワーの割合を求めた。さらに、アルミの消光係数から電極106による実効的な光損失を計算した。得られた結果を
図34に示す。
【0090】
シミュレーション結果によると、h=0.6〜1.0μmまでの間で急激に光損失は減少し、hが1μm以上であれば、導波路長に対する導波路損失は10dB/cm以下となる。する。電極の下に位置する導波路長は、電極のサイズから100μm前後と想定される。このことから、クラッド厚が1μm以上であれば、光導波路が電極の下を通過することによる過剰な光損失(以下、過剰損失という。)は0.1dB以下となる。
シリコン導波路の光損失が1〜2dB/cm程度であることを考慮すると、シリコン導波路の全長は1cm以上と想定されることから、0.1dB程度の過剰損失は1/10以下となり、影響は十分に小さくなる。
そこで、基板型光導波路のコアの上面と進行波電極との間にシリカからなるクラッド(
図33A及び33Bの上部クラッド105)が設けられる場合、コアと進行波電極とが上下に交差する位置において、クラッドの厚み(
図33A及び33Bのh)が1μm以上であることが好ましい。また、コアと進行波電極とが上下に交差する位置では、光導波路が位相変調部(リブ型導波路)以外の部分であることが好ましく、矩形導波路の部分であることが好ましい。
【0091】
h=1.2μmとしたときの矩形導波路の電極による過剰損失の測定結果を
図35に示す。ここで、電極による過剰損失とは、電極が矩形導波路の上部にある場合の光損失から、電極が矩形導波路の上部にない場合の光損失を減じた差をいう。
通信波長1.55μmでの過剰損失(
図35のWGLoss)は0.5dB/cmであり、電極の下部を光導波路が通過する影響(過剰損失)を小さく抑えたまま、高周波電極での高周波信号の減衰を抑えた光変調器を構成することが可能である。
【0092】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
それぞれの実施形態や構成例などで説明した特徴は、技術的に矛盾のない限り、それぞれ任意に組み合わせることが可能である。
【0093】
図4A,4B,5A,及び5Bでは、位相調整部25等の他の要素を、アーム部23のうち、位相変調部24と光合波部22との間に挿入している。これと同様に、位相変調部24と光分岐部21との間に他の要素を挿入してもよい。また、
図5A及び5Bのように構成する場合は、光分岐部21が前記外側の領域(線L1と辺11cとの間の領域)に位置し、光入射部12の近くに配置されてもよい。
【0094】
第2実施形態(
図3A及び3B)や第5実施形態(
図6A及び6B)等において、2つの線La,Lbを定義する際に、辺11a,11bが互いに平行でない場合、線La,Lbを独立に定義することもできる。例えば、位相変調部24の光分岐部21側の端部24aから延長する線Laは、入力部31が配置される辺11aと平行にとり、位相変調部24の光合波部22側の端部24bから延長する線Lbは、出力部32が配置される辺11bと平行にとることもできる。