(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、回路基板を用いたインサート成形品として、自動車の内燃機関に搭載される吸入空気量センサを有するセンサ装置を例に挙げて説明する。吸入空気量センサとは気体(空気)の流量を測定する流量センサであり、内燃機関に搭載されている電子制御燃料噴射装置による吸入空気量制御に利用するために設置されている。吸入空気量センサには薄肉のダイヤフラムを有するセンサチップが用いられており、センサチップでの計測データを、制御チップで収集・補正し、外部に出力する仕組みとなっている。
【0010】
−第1の実施形態−
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態のセンサ装置の断面図である。
図1は、
図5に示されたセンサ装置を構成する回路モジュールの平面図であり、
図2は、
図1に図示された回路モジュールのII−II線断面図である。
図5に図示されるように、センサ装置100は、回路モジュール30と複数のコネクタリード18とをインサート品として、インサート成形により回路モジュール30およびコネクタリード18と樹脂50(
図4参照)が一体化された構造を有する。
先ず、回路モジュール30について説明する。
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は、各図に図示の通りとする。
【0011】
図1、
図2に示されるように、回路モジュール30は、回路基板1と、第1の半導体素子3と、第2の半導体素子4と、導体により形成された内層配線8と、樹脂漏れ抑制層21とを備えている。
第1の半導体素子3は、流量センサ素子である。第1の半導体素子3は、矩形形状をした半導体基板の主面側に流量センサ部2を有する。流量センサ部2は、第1の半導体素子3に設けられたダイヤフラム上に形成される。ダイヤフラムは、半導体基板を裏面側からエッチングして薄肉とした薄肉領域のことである。図示はしないが、ダイヤフラム上には、発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の周囲に配置され、ブリッジ回路を構成する制御用としての複数の抵抗体が設けられている。流量センサ部2は、発熱抵抗体によって加熱された気体により上昇する制御用の抵抗体の温度が、気体の流量に関連することを利用してその流量を検出するものである。
【0012】
回路基板1は、多層配線基板により形成され、配線基板間に内層配線8を有する。各配線基板は、例えば、エポキシ樹脂等のポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリイミドやアクリル等の熱可塑性樹脂により形成されている。あるいは、これらの樹脂材料にガラス、シリカ等のフィラーを含有した基材により形成されている。回路基板1には、第1の半導体素子3が収容される凹部が形成されている。第1の半導体素子3は、流量センサ部2を上部側にしてこの凹部内に配置され、凹部の底面に接着剤5により接着されている。第1の半導体素子3は、回路基板1に設けられたパッド9にワイヤ7によりボンディングされている。ワイヤ7は、ポッティングにより形成された封止樹脂10により封止されている。
【0013】
第2の半導体素子4は、CPU,入力回路、出力回路およびメモリ等を有し、気体の流量が検出されるように流量センサ部2を制御する。第2の半導体素子4は、回路基板1の一面に接着剤5により接着され、回路基板1に設けられたパッド9にワイヤ7によりボンディングされている。第2の半導体素子4はベアチップであり、その上面はポッティングにより形成された封止樹脂10により封止されている。
接着剤5および封止樹脂10は、回路基板1と同様な材料により形成される。
【0014】
第1の半導体素子3と第2の半導体素子4とは、パッド9を介して内層配線8により接続されている。また、第2の半導体素子4は、内層配線8により、回路基板1のX方向後端の入出力用のパッド9aに接続されている。
【0015】
回路基板1の上下面には、樹脂漏れ抑制層21が形成されている。センサ装置100の樹脂50は、
図4に図示されるように、X方向前方の前壁部51、X方向後方の後壁部52、およびY方向に延在され、前壁部51と後壁部52とを接続する一対の中間壁部53を有する矩形の枠状に形成されている。回路基板1の上面に設けられる樹脂漏れ抑制層21は、X方向の前方側に、Y方向に直線状に延在された外縁部21aと、X方向の後方側にコ字形状に形成された内縁部21bとを有する。回路基板1の上面側に形成される樹脂漏れ抑制層21は、樹脂50の前壁部51の外側面51a、内側面51bおよび一対の中間壁部53の内側面53aのそれぞれに沿って形成されている。また、回路基板1の下面に形成される樹脂漏れ抑制層21は、上面側に形成される樹脂漏れ抑制層21に対向する位置に形成されている。
【0016】
次に、この回路モジュール30をインサート品として、インサート成形により、回路モジュール30と樹脂50とが一体化されたセンサ装置100を作製する方法を説明する。
図3は、
図1に図示された回路モジュール30をインサート成形する状態を示す断面図であり、
図4は、
図1に図示された回路モジュール30をインサート成形した直後の樹脂成形体の平面図である。
なお、上述したように、センサ装置100は、回路モジュール30と複数のコネクタリード18とをインサート品として、このインサート品と樹脂50が一体化された構造を有する。
上金型11と下金型12には、回路モジュール30と複数のコネクタリード18とを収容する収容部が形成されている。回路モジュール30と複数のコネクタリード18とを下金型12の収容部に収容し、上金型11を閉じる。上金型11と下金型12には、それぞれ、外周側壁11a、12a、および樹脂漏れ抑制層21上に配置される仕切り壁11b、11c、11d、12b、12c、12dが形成されている。各仕切り壁11b、11c、12b、12cの回路基板1との当接面には、クランプ部15が設けられている。但し、後述するように、クランプ部15は、回路基板1の厚さによっては、回路基板1に当接しない。
【0017】
上金型11の仕切り壁11b、11cは、それぞれ、樹脂漏れ抑制層21に対応する位置に形成されている。下金型12の仕切り壁12b、12cは、それぞれ、上金型11の仕切り壁11b、11cに対応する位置に形成されている。仕切り壁11d、12dは、回路基板1の入出力用のパッド9aとコネクタリード18とを仕切るためのものである。上下金型11、12の仕切り壁11b、12bと、仕切り壁11c、12cとの間には、空洞部13が形成されている。また、上下金型11、12の仕切り壁11d、12dと、上下金型11、12のX方向の後端側の外周側壁11a、12aとの間には空洞部14が形成されている。なお、入出力用のパッド9aは、上金型11の仕切り壁11dにより覆われるようにする。
【0018】
図3に図示された状態で、上下金型11、12の空洞部13、14に溶融樹脂50a(
図6参照)を注入して、空洞部13、14内を充填する。いわゆる、回路モジュール30と複数のコネクタリード18とをインサート品として、インサート成形を行う。これにより、溶融樹脂50aが硬化され、樹脂50の前壁部51、および一対の中間壁部53と回路基板1とが密着して一体化された樹脂成形体が形成される。
【0019】
なお、インサート成形には、インサート品と樹脂との間に接合機構を有しない一体化と、接合機構を有する一体化とがある。接合機構を有しない一体化は、インサート品を樹脂により抱込む、換言すれば、挟持する構造である。接合機構を有する一体化とは、インサート品と樹脂との間に接着層を設けたり、インサート品と樹脂とを化学的に結合したりする構造である。本明細書において、回路基板1と樹脂50とが密着するとは、接合機構を有している構造も、接合機構を有していない構造も含まれる。
【0020】
樹脂50が形成された後、回路モジュール30を上下金型11、12から取り出した状態を
図4に示す。
回路基板1には、前壁部51、後壁部52および一対の中間壁部53を有する矩形枠状の樹脂50が一体化されている。後壁部52には、複数のコネクタリード18が一体化されている。
【0021】
この後、回路基板1の入出力のパッド9aとコネクタリード18とをワイヤ17により接続する。ワイヤ17は、ワイヤボンディングにより形成することができる。
そして、樹脂50の表裏面のそれぞれに、上カバー54と、下カバー55を接合する。これにより、
図5に図示されるセンサ装置100が得られる。
【0022】
図3において、上下金型11、12の空洞部13、14に溶融樹脂50aを注入する工程において、樹脂漏れを防止するために、各仕切り壁11b、11c、12b、12cに設けられたクランプ部15は、それぞれ、回路基板1に当接させる必要がある。しかし、回路基板1の厚さにはばらつきがあるため、回路基板1が薄い場合には、上下金型11、12を型締めした状態で回路基板1とクランプ部15との間に隙間が生じる。特に、回路基板1として多層配線基板を用いると、各層の配線基板のばらつきが増大されて、厚さ全体のばらつきが大きくなることもある。回路基板1の厚さが薄くなる方にばらついて、回路基板1とクランプ部15との間に隙間が生じると、樹脂漏れが発生する可能性がある。
【0023】
図6は、樹脂漏れの抑制作用を説明するための図であり、
図6(A)は本発明による樹脂漏れ抑制層を有する構造を示す図であり、
図6(B)は、樹脂漏れ抑制層を有していない従来の樹脂成形体の図である。
図6(B)に図示された従来の構造では、回路基板1の一面1aが、直接、クランプ部15に対向している。回路基板1は、低熱伝導の材料により形成されているため、溶融樹脂50aの温度の冷却速度が遅い。このため、回路基板1の一面1aとクランプ部15との隙間Sから漏れ出す溶融樹脂50aの硬化に時間が掛かり、漏出樹脂61の量が多くなる。漏出樹脂61の厚さが隙間Sよりも厚くなり、漏出樹脂61の収縮による負荷が大きくなると回路基板1を変形させる。また、漏出樹脂61が、回路基板1に実装された電子部品32を覆い、電子部品32に圧力が作用することもある。このように、漏出樹脂61により回路基板1が変形したり、実装された電子部品32に圧力が作用したりすると、センサ装置100の性能に影響する。
【0024】
これに対し、本発明の第1の実施形態では、
図6(A)に図示される構造となっている。つまり、回路基板1における、樹脂50が形成される各側面に沿って樹脂漏れ抑制層21が形成されている。樹脂漏れ抑制層21とクランプ部15との隙間Sは、回路基板1のばらつき量に等しく設定されている。樹脂漏れ抑制層21は、回路基板1の基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率の基材により形成されている。このため、樹脂漏れ抑制層21とクランプ部15との隙間Sから漏れ出す溶融樹脂50aは、樹脂漏れ抑制層21により速やかに冷却され固化する。これにより、漏出樹脂61の量が抑制される。樹脂漏れ抑制層21の形成範囲を樹脂漏れ領域より広くすれば、樹脂の冷却効果が大きくなり漏出樹脂61の抑制効果を大きくすることができる。
【0025】
樹脂漏れ抑制層21は、鉄、銅等の金属、窒化アルミニウム、アルミナ等のセラミックス、またはカーボン等の高熱伝導材料からなる微粒子を混合したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、またはポリカーボネイトやポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
樹脂漏れ抑制層21は、溶融樹脂50aが、直接、回路基板1に接触しないように、前壁部51、中間壁部53側の端部が、前壁部51、中間壁部53に重なる位置に形成することが好ましい。また、樹脂漏れ抑制層21は、漏出樹脂61が形成される領域よりも広い範囲に亘って形成することが好ましい。
【0026】
上記第1の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)回路基板1における樹脂50に密着する部分に沿って、当該部分の少なくとも縁部領域に、回路基板1の基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料からなる樹脂漏れ抑制層21を設ける構造とした。このため、樹脂漏れ抑制層21と上金型11のクランプ部15との隙間Sから漏れ出す溶融樹脂50aの冷却、固化が速やかに行われ、漏出樹脂61を抑制することができる。
【0027】
(2)第1の実施形態におけるセンサ装置100は、通常のインサート成形に対し、回路基板1における上下金型11、12のクランプ部15に対応する位置に樹脂漏れ抑制層21を形成する工程を追加するだけで得ることができる。このため、樹脂50の形状等に何らの制約を受けることなく、回路基板1をインサート品とするインサート成形を行うことが可能であり、スループットを向上することができる。
【0028】
(3)回路基板1と漏出樹脂61との間に設ける樹脂漏れ抑制層21を、漏出樹脂61より広い範囲に設けるようにした。このため、漏出樹脂61を抑制する効果を大きくすることができる。
なお、回路基板1として、厚みのばらつきが大きい多層配線基板を用いる構造では、漏出樹脂61の抑制効果に伴い、信頼性向上の効果を高めることができる。
【0029】
−第2の実施形態−
図7は、本発明の第2の実施形態としてのセンサ装置の回路モジュールの平面図であり、
図8は、
図7に図示された回路モジュールのVIII−VIII線断面図である。
図9は、
図7に図示された回路モジュールをインサート成形する状態を示す断面図である。
第2の実施形態は、第2の半導体素子24と入出力用のパッド9aとを、外層配線22により接続した点で第1の実施形態と相違する。
第2の実施形態では、回路基板1に実装される第2の半導体素子24として、DFP(Dual Flat Package)またはQFP(Quad Flat Package)等の樹脂封止されたフラットパッケージが用いられている。第1の実施形態における第2の半導体素子4と入出力用のパッド9aを接続する内層配線8に替えて、第2の実施形態では、回路基板1の上面に外層配線22が形成されている。外層配線22の一端が入出力用のパッド9aに接続されている。
【0030】
第2の実施形態では、回路基板1上に、第2の半導体素子24、第3の半導体素子25および他の電子部品26が実装されている。第2、第3の半導体素子24、25は、リード31がパッド9に接合されて実装されている。また、他の電子部品26は、端子部(図示せず)がパッド9に接合されて実装されている。外層配線22は、
図7に点線で示すように、回路基板1の上面に配設されており、第2、第3の半導体素子24、25および他の電子部品26を、パッド9を介して接続する。外層配線22は、保護レジスト23により覆われている。但し、パッド9、9aは保護レジスト23から露出されている。
【0031】
銅等の卑金属は安価であるが、外層配線として用いると腐食され易い。このため、パッド9、9aを露出して、外層配線22全体を保護レジスト23により被覆する。外層配線22全体を保護レジスト23により被覆した後、第2,第3の半導体素子24、25および他の電子部品26をパッド9に接合する。この手順により、保護レジスト23を回路基板1の上面に能率的に設けることができる。
【0032】
回路モジュール30およびコネクタリード18と樹脂50とのインサート成形は、
図9に図示されるように、回路基板1上に第2、第3の半導体素子24、25および他の電子部品26が実装された状態で行う。
【0033】
第2の実施形態において、保護レジスト23を樹脂漏れ抑制層21と同一の材料により形成することもできる。保護レジスト23を樹脂漏れ抑制層21と同一の材料とすれば、保護レジスト23の形成を樹脂漏れ抑制層21の形成と同工程で行うことができ、工程数の省力化を図ることができる。
第2の実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0034】
−第3の実施形態−
図10は、本発明の第3の実施形態としてのセンサ装置の回路モジュールの平面図であり、
図11は、
図10に図示された回路モジュールのXI−XI線断面図である。
図12は、
図10に図示された回路モジュールをインサート成形する状態を示す断面図であり、
図13は、
図12に図示された回路モジュールをインサート成形した直後の樹脂成形体の断面図である。
第3の実施形態は、樹脂漏れ抑制層21を外縁部21aと内縁部21bとの間にも設け、外縁部21aと内縁部21bとを一体的に接続した構成とした点で、第2の実施形態と相違する。
図10、
図11等に図示されているように、回路基板1上に形成される樹脂漏れ抑制層21は、外縁部21aと、内縁部21bと、外縁部21aと内縁部21bを接続する中間部21cとが一体化して形成された構造を有する。なお、
図11おいて、上金型11の仕切り壁11b、11cを点線で図示している。
第3実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0035】
なお、第3の実施形態においても、第1、第2の実施形態と同様にインサート成形を行う。第3の実施形態では、
図12に図示されるように、樹脂漏れ抑制層21が、上下金型11、12の仕切り壁11bと仕切り壁11cとに跨って設けられている。このため、樹脂漏れ抑制層21をクランプ部15に正確に位置合わせをする必要が無い。これにより、生産性がよいものとなり、かつ、歩留まりを良好にすることができる。また、溶融樹脂50aは、樹脂漏れ抑制層21の外縁部21a側または樹脂漏れ抑制層21の内縁部21b側から漏れ出す前に、樹脂漏れ抑制層21の中間部21cに接触して冷却されるため、漏出樹脂61の量を少なくする、または無くすことが可能となる。
【0036】
−第4の実施形態−
図14は、本発明の第4の実施形態としてのセンサ装置の回路モジュールの平面図であり、
図15は、
図14に図示された回路モジュールのXV−XV線断面図である。
図16は、
図14に図示された回路モジュールをインサート成形する状態を示す断面図であり、
図17は、
図14に図示された回路モジュールをインサート成形した直後の樹脂成形体の断面図である。
第4の実施形態は、内層配線8および樹脂漏れ抑制層21に替えて、樹脂漏れ抑制層を兼ねる外層配線27またはパッド状導体28を設けた点で、第3の実施形態と相違する。
【0037】
図14、
図15に図示されるように、ワイヤ7が接続されるパッド9と、第2の半導体素子24が接続されるパッド9は、外層配線27により接続されている。外層配線27は、例えば、銅等の金属導体により形成されており、複数、配設されている。各外層配線27は、第3の実施形態の樹脂漏れ抑制層21と同様、外縁部、内縁部、中間部が一体的に形成された長さを有し、上下金型11、12の仕切り壁11bと仕切り壁11cとに跨って設けられている。つまり、複数の外層配線27は、樹脂50の前壁部51に密着される部分を、相互に離間して横断するように配設されている。
また、
図14に図示されるように、樹脂50の前壁部51の内側面51bおよび一対の中間壁部53それぞれの内側面53a(
図4参照)に沿って、複数のパッド状導体28が配列されている。換言すれば、複数のパッド状導体28は、二点鎖線で示す上金型11の仕切り部11cに対応して配列される。但し、パッド状導体28は、外層配線27が延在されている領域には形成されていない。各パッド状導体28は、銅等の金属導体により形成されており、外層配線22に接続されている。金属導体で形成された外層配線27およびパッド状導体28は、回路基板1の基材よりも熱伝導率が高い。このため、漏出樹脂61の量を抑制することができる。
【0038】
なお、外層配線27およびパッド状導体28は、その配列方向に隣接する外層配線27またはパッド状導体28との間に間隙Kを有している。しかし、溶融樹脂50aは、外層配線27またはパッド状導体28の上面および側面において冷却されるため、この間隙Kから漏れ出す溶融樹脂50aを抑制する効果がある。但し、間隙Kは余り大きくしない方が望ましい。一例として、外層配線27またはパッド状導体28の上面とクランプ部15の下面との隙間Sが0.75mm程度の場合、間隙Kは、数十μm〜数百μm程度とすることができる。但し、これは単に参考として示すものであって、間隙Kは、樹脂漏れ抑制層21とクランプ部15との隙間S、外層配線27やパッド状導体28の材質、面積、形状等により変化するものである。
【0039】
第4の実施形態の他の構成は、第3の実施形態と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。
第4の実施形態においても、第3の実施形態と同様な効果を奏する。
また、第4の実施形態では、外層配線27またはパッド状導体28が樹脂漏れ抑制層の機能を兼ねているため、工程数を省力化することができる。
【0040】
なお、第4の実施形態において、外層配線27に替えて内層配線8を設け、パッド状導体28のみを有する構造としてもよい。また、パッド状導体28を、1〜2個の外層配線22のみに接続される細長い形状としてもよい。
【0041】
−第5の実施形態−
図18は、本発明の第5の実施形態のセンサ装置の断面図である。
第5の実施形態は、コネクタリードがインサート成形されていない点で、第1の実施形態形と相違する。
図18に図示されるように、前壁部51、後壁部52および一対の中間壁部53(
図18には図示されず)を有する矩形枠状の樹脂50は、回路基板1の領域内において回路基板1に一体化されている。樹脂漏れ抑制層21は、前壁部51および後壁部52それぞれの内外側面に沿って形成されている。図示はしないが、樹脂漏れ抑制層21は、一対の中間壁部53に沿っても形成されている。
【0042】
入出力用のパッド9aは、樹脂50の後壁部52の外部において回路基板1の上面に形成されている。二点鎖線で図示されるように、コネクタ65に一体化されたコネクタリード64を入出力用のパッド9aに接続する構造とすることもできる。入出力用のパッド9aに、ワイヤやバスバー等、コネクタリード以外の接続部材を接続することもできる。
第5の実施形態における他の構成は、第1の実施形態と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
なお、第5の実施形態に示すコネクタリードがインサート成形されていない構造を、第2〜第4の実施形態に適用することもできる。
【0044】
上記各実施形態では、流量センサを有するセンサ装置100として例示した。しかし、本発明は、流量センサ以外の他のセンサ素子を有するセンサ装置に適用することができる。センサ素子は1個に限らず、複数のセンサ素子を有するものであってもよい。
また、本発明は、センサ素子以外の半導体素子が実装された回路モジュールと樹脂とが一体化された樹脂成形体に適用することができる。
【0045】
上記、第1〜第3の実施形態では、樹脂漏れ抑制層21を、回路基板1の上下両面に設けた構造として例示した。しかし、樹脂漏れ抑制層21を、回路基板1の上面および下面の一方のみに設けるようにしてもよい。
【0046】
上記各実施形態では、回路基板1として、多層配線基板を用いた構造として例示したが、回路基板1は、単層の回路基板としてもよい。また、回路基板1は、基材と表面層とが異なる材料により形成されているものであってもよい。その場合、樹脂漏れ抑制層21、27、パッド状導体28の熱伝導率は、回路基板1の表面層の材料の熱伝導率よりも高いものであればよい。
【0047】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。上記各実施形態を組み合わせてもよく、さらに、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0048】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2015年第193796号(2015年9月30日出願)