特許第6435483号(P6435483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435483接着性ペーストゾル組成物及びそれを用いた産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435483
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】接着性ペーストゾル組成物及びそれを用いた産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 127/06 20060101AFI20181203BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20181203BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20181203BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20181203BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20181203BHJP
   D06M 11/36 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C09J127/06
   C09J11/06
   C09J175/04
   C09J11/04
   B32B5/24
   B32B5/28
   B32B27/30 101
   D06M15/248
   D06M13/224
   D06M13/395
   D06M15/256
   D06M13/513
   D06M11/36
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-155826(P2014-155826)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33179(P2016-33179A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−345845(JP,A)
【文献】 特開昭62−041278(JP,A)
【文献】 特開2013−018929(JP,A)
【文献】 特開2013−076096(JP,A)
【文献】 特開2001−207002(JP,A)
【文献】 特開2004−058673(JP,A)
【文献】 特開2004−058672(JP,A)
【文献】 特開2004−001502(JP,A)
【文献】 特表2013−522293(JP,A)
【文献】 特表2013−543917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物、及び表面水酸基修飾ナノシリカ粒子を含むペーストゾル組成物であって、前記可塑剤が、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の化合物であり、また前記トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)から選ばれた1種以上であり、前記可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比が10:0.1〜10:1の範囲、かつ前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対する前記表面水酸基修飾ナノシリカ粒子の配合が5〜20質量部であることを特徴とする接着性ペーストゾル組成物。
【請求項2】
前記トリイソシアネート化合物において、前記イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群、前記ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群及び、前記トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群が各々、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の4種から選ばれた何れか1種の化合物を基礎とする3量体である請求項1に記載の接着性ペーストゾル組成物。
【請求項3】
繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体による産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法であって、前記軟質塩化ビニル樹脂層が、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物、及び表面水酸基修飾ナノシリカ粒子を含む接着性ペーストゾル組成物を熱処理してゲル化させたものであって、前記可塑剤が、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の化合物であり、また前記トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)から選ばれた1種以上であり、前記可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比が10:0.1〜10:1の範囲であり、前記可撓性積層体において前記トリイソシアネート化合物が、少なくとも前記繊維織物の表面、及び前記表面水酸基修飾ナノシリカ粒子に対する結合を含む架橋構造を前記軟質塩化ビニル樹脂層に加熱形成させることを特徴とする産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法。
【請求項4】
前記トリイソシアネート化合物において、前記イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群、前記ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群及び、前記トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群が各々、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の4種から選ばれた何れか1種の化合物を基礎とする3量体である請求項3に記載の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法。
【請求項5】
前記軟質塩化ビニル樹脂層上にフッ素樹脂層が形成され、このフッ素樹脂層を成すフッ素樹脂が、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)から選ばれた1種のモノマーを単独重合してなるポリマー、またはこれらの2種以上のモノマーを共重合してなるコポリマー、またはこれらの1種以上のモノマーをビニルモノマーと共重合してなるコポリマーから選ばれた1種以上である請求項3または4に記載の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法。
【請求項6】
前記軟質塩化ビニル樹脂層上に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる防汚層が設けられていて、前記無機コロイド物質が、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上の金属酸化物である請求項3または4に記載の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維織物を基材として、繊維織物基材に軟質塩化ビニル樹脂層を被覆して得られる帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの可撓性積層体に関し、特に粘度安定性及びチキソ性とに優れた接着性ペーストゾル組成物によって形成された軟質塩化ビニル樹脂層を有し、それによって可塑剤のブリードが抑制され、防汚性に優れた産業資材用帆布及びメッシュシートに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物中には、塗工基体に対する接着性を向上させるためにイソシアネート化合物を配合する処方が古くから常用され、例えば、トリレンジイソシアネート又はジフェニールメタンジイソシアネートを三量化したイソシアネート重合物の配合が汎用的(特許文献1)である。しかし塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物中にこれらのイソシアネート重合物を配合したときにイソシアネート基が組成物と付加反応することにより生じるペーストゾルの経時的増粘挙動はペーストゾル組成物の塗工性を悪化させ、さらにイソシアネート基の付加反応が進行することにより、塗工基体に対する接着性が目的に反して不安定となることがあった。この問題を解決するために、イソシアネート基に長鎖アルキルフェノールを仮反応させ、イソシアネート基をペーストゾル組成物中で不活性化(ブロック)し、これによってペーストゾル組成物の粘度を安定させ、ペーストゾル組成物の塗工時にこの仮反応物を熱解離させることでイソシアネート基を再生する方法が考案され、例えば芳香族ジイソシアネート重合物のブロック体が提案(特許文献2)されている。しかしながらこのような多官能ブロックウレタンプレポリマーを含むプラスチゾル組成物において用いる可塑剤が、ジ−n−オクチル−フタレート、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート(DHP)などのフタル酸エステル化合物の場合、軟質塩化ビニル樹脂組成物中におけるポリイソシアネート化合物との初期相溶性が悪いと配合直後にままこ状態となり易い。拠ってポリイソシアネート化合物が分散不良のまま加工されると、成型物の外観不良や可塑剤のブリード汚れを誘引する要因となることがある。またこのようなペーストゾル組成物は増粘性が大きく、ゾルに剪断力を掛けても粘性低下が低い(チキソトロピーを示さない)ため、例えば、織物基材にペーストゾル組成物を塗布したり、あるいはペーストゾル組成物中に織物基材を浸漬した場合、織物基材への含浸効果が不十分となって、形成された軟質塩化ビニル樹脂被膜が織物基材から剥離するトラブルを生じることがある。このような現状を鑑みて、ポリイソシアネート化合物を含有するにも拘らず粘度安定性に優れた接着性ペーストゾル組成物で、剪断力を掛けると粘性低下(チキソ性)が顕著な接着性ペーストゾル組成物の開発が課題とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−105441号公報
【特許文献2】特開昭62−41278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は繊維織物を基材として、繊維織物基材に軟質塩化ビニル樹脂層を被覆して得られる帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)など、可塑剤のブリードが抑制され、防汚性に優れた産業資材用帆布及びメッシュシートの提供、及びこれら産業資材用帆布及びメッシュシートを製造するために用いる、特に粘度安定性及びチキソ性とに優れた接着性ペーストゾル組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、産業資材用帆布及びメッシュシート、及びこれらの産業資材を製造するために用いる接着性ペーストゾル組成物について上記の現状に鑑みて研究、検討を行った結果、本発明による接着性ペーストゾル組成物及びそれを用いた産業資材用帆布及びメッシュシートは、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物を含む接着性ペーストゾル組成物において、可塑剤が、イソ、またはテレフタル酸ジアルキルエステル類、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル類の化合物で、またトリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート類、ビュレット変性トリイソシアネート類、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート類から選ばれた1種以上で、可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比を10:0.1〜10:1の範囲とする接着性ペーストゾル組成物の粘度安定性及びチキソ性とに優れていて、この接着性ペーストゾル組成物を用いて加工し、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層を設けた可撓性積層体としての産業資材用帆布及びメッシュシートが可塑剤のブリードが抑制され、防汚性に優れることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明の接着性ペーストゾル組成物は、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物、及び表面水酸基修飾ナノシリカ粒子を含むペーストゾル組成物であって、前記可塑剤が、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の化合物であり、また前記トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)から選ばれた1種以上であり、前記可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比が10:0.1〜10:1の範囲、かつ前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対する前記表面水酸基修飾ナノシリカ粒子の配合が5〜20質量部であることが好ましい。これによって得られる接着性ペーストゾル組成物は、粘度安定性及びチキソ性とに優れ、しかもトリイソシアネート化合物の反応によって緻密な立体架橋構造を生成し、可塑剤のブリードを高度に抑止することを可能とする。
【0007】
本発明の接着性ペーストゾル組成物は、前記トリイソシアネート化合物において、前記イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群、前記ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群及び、前記トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群が各々、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の4種から選ばれた何れか1種の化合物を基礎とする3量体であることが好ましい。これによって得られる接着性ペーストゾル組成物は、粘度安定性及びチキソ性とに優れ、しかもトリイソシアネート化合物の反応によって緻密な立体架橋構造を生成し、可塑剤のブリードを高度に抑止することを可能とする。
【0008】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法は、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体による産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法であって、前記軟質塩化ビニル樹脂層が、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物、及び表面水酸基修飾ナノシリカ粒子を含む接着性ペーストゾル組成物を熱処理してゲル化させたものであって、前記可塑剤が、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の化合物であり、また前記トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)から選ばれた1種以上であり、前記可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比が10:0.1〜10:1の範囲であり、前記可撓性積層体において前記トリイソシアネート化合物が、少なくとも前記繊維織物の表面、及び前記表面水酸基修飾ナノシリカ粒子に対する結合を含む架橋構造を前記軟質塩化ビニル樹脂層に加熱形成させることことが好ましい。これによって得られる産業資材用帆布及びメッシュシートは、その製造過程において、粘度安定性及びチキソ性とに優れたペーストゾル組成物によって軟質塩化ビニル樹脂層が形成され、しかもトリイソシアネート化合物の反応によって緻密な立体架橋構造を軟質塩化ビニル樹脂層内に生成することで可塑剤のブリードを高度に抑止することを可能とし、同時に煤塵汚れなどの付着防止効果を発現する。
【0009】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法は、前記トリイソシアネート化合物において、前記イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群、前記ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群及び、前記トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群が各々、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の4種から選ばれた何れか1種の化合物を基礎とする3量体であることが好ましい。これによって得られる産業資材用帆布及びメッシュシートの軟質塩化ビニル樹脂層内にトリイソシアネート化合物の反応による緻密な立体架橋構造を生成することで可塑剤のブリードを高度に抑止することを可能とし、同時に煤塵汚れなどの付着防止効果を発現する。
【0010】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法は、前記可撓性積層体において前記トリイソシアネート化合物が、少なくとも前記繊維織物の表面に対する結合を含む架橋構造を軟質塩化ビニル樹脂層に形成していることが好ましい。これによって軟質塩化ビニル樹脂層内にトリイソシアネート化合物の反応による緻密な立体架橋構造を生成することで可塑剤のブリードを高度に抑止することを可能とし、同時に繊維織物に対する軟質塩化ビニル樹脂層の接着効果を増大することで、本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの耐久性や屈曲性をより高次のものとする。
【0011】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法は、前記軟質塩化ビニル樹脂層上にフッ素樹脂層が形成され、このフッ素樹脂層を成すフッ素樹脂が、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)から選ばれた1種のモノマーを単独重合してなるポリマー、またはこれらの2種以上のモノマーを共重合してなるコポリマー、またはこれらの1種以上のモノマーをビニルモノマーと共重合してなるコポリマーから選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって得られる産業資材用帆布及びメッシュシートは、可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた耐候性及び防汚性を発現する。
【0012】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの製造方法は、前記軟質塩化ビニル樹脂層上に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる防汚層が設けられていて、前記無機コロイド物質が、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上の金属酸化物であることが好ましい。これによって得られる産業資材用帆布及びメッシュシートは、可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた耐候性及び防汚性を発現する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートは、特に粘度安定性及びチキソ性とに優れた接着性ペーストゾル組成物によって形成された軟質塩化ビニル樹脂層を有し、それによって可塑剤のブリードが抑制され、防汚性に優れるので、帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの産業資材シートとして長期間使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートの要件は、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体において、軟質塩化ビニル樹脂層が、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を主体に含み、さらにトリイソシアネート化合物を含む接着性ペーストゾル組成物であって、特に可塑剤が、イソ、またはテレフタル酸ジアルキルエステル化合物類、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル化合物類であり、トリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート変性トリイソシアネート類、ビュレット変性トリイソシアネート類、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート類であり、可塑剤及びトリイソシアネート化合物との質量比を10:0.1〜10:1の範囲とする。
【0015】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートに用いる基材としての繊維織物は、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種類以上から成る混用繊維から製織された質量50〜500g/m程度、好ましくは質量65〜280g/mの織物である。合成繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエスエル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、及びヘテロ環ポリマー繊維が挙げられる。天然繊維としては木綿、麻、ケナフが挙げられ、半合成繊維にはレーヨン、アセテートが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などが挙げられる。特に本発明においては合成繊維によるフィラメントヤーンまたはスパンヤーンによる平織物、綾織物、朱子織物、模紗織物など公知の織物などが使用できる。これら基布は必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されても良い。本発明に用いる繊維織物はポリエスエル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維などから成る平織物が好ましい。
【0016】
本発明に用いる基布で、帆布に適した基布は10番手(591dtex)〜60番手(97ddtex)の範囲のスパンヤーン(短繊維紡績糸条)、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246ddtex)、30番手(197dtex)のスパンヤーンを用いた目抜け空隙率5%未満の平織基布である。具体的に20番手単糸、または20番手双糸を用いて1インチ間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で含むスパン平織物が適している。これらのスパンヤーンには芯鞘型を含み、例えばアラミド繊維スパンヤーンを芯成分として、その外周にポリエスエル繊維短繊維を絡めて鞘成分としたもの、さらには例えばアラミド繊維マルチフィラメント糸条を芯成分として、その外周にポリエスエル繊維短繊維を絡めて鞘成分としたものなど、同様に段落〔0015〕に記載した繊維2種類からの組み合わせが挙げられる。このような仕様とすることで得られる帆布の引裂強度、突起物による穴開防止性を飛躍的に高くすることを可能とする。また、メッシュシートに適する基布は、277〜2222dtex、好ましくは555〜1666dtexのマルチフィラメントヤーンを用いた目抜け空隙率20〜60%、好ましくは空隙率25%〜40%の平織物、模紗織物である。これらのメッシュ用の基布にはリップストップ基布を含み、例えばポリエスエルマルチフィラメントヤーンによる基布の経糸及び/または緯糸の一部を規則的、またはランダムにアラミド繊維マルチフィラメントヤーンに置換し配置したものが挙げられる。このような仕様により引裂強度、突起物による破壊防止性を飛躍的に高くする。
【0017】
本発明の産業資材用帆布及びメッシュシートにおける軟質塩化ビニル樹脂層には、塩化ビニル樹脂を主体として含み、さらに可塑剤として、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の液状化合物を含んでいる。〔化1〕〜〔化5〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素(C)数4〜13の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基、脂環族基などを表している。
【0018】
イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群)の可塑剤は例えば、イソフタル酸と2−エチルヘキサノールとのエステル化反応によって合成されるイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)が特に好ましく、その他イソフタル酸ジブチル(C4:MW278)、イソフタル酸ジイソブチル(C4:MW278)、イソフタル酸ジヘキシル(C6:MW334)、イソフタル酸ジヘプチル(C7:MW362)、イソフタル酸ジノニル(C9:MW418)、イソフタル酸ジイソノニル(C9:MW418)、イソフタル酸ジイソデシル(C10:MW447)、イソフタル酸ジデシル(C10:MW447)、イソフタル酸ブチルベンジル(C4,C7:MW312)などが例示される。テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)の可塑剤は例えば、テレフタル酸と2−エチルヘキサノールとのエステル化反応によって合成されるジ−2−エチルヘキシルテレフタレート(ジオクチルテレフタレート)(C8:MW390)が特に好ましく、その他、その他テレフタル酸ジブチル(C4:MW278)、テレフタル酸ジイソブチル(C4:MW278)、テレフタル酸ジヘキシル(C6:MW334)、テレフタル酸ジヘプチル(C7:MW362)、テレフタル酸ジノニル(C9:MW418)、テレフタル酸ジイソノニル(C9:MW418)、テレフタル酸ジイソデシル(C10:MW447)、テレフタル酸ジデシル(C10:MW447)、テレフタル酸ブチルベンジル(C4,C7:MW312)などが例示される。これら〔化1〕及び〔化2〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素数4〜10の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。炭素数11以上となると、イソフタル酸構造及びテレフタル酸構造により、アルキルエステルの配置構造による立体障害が大きくなり、塩化ビニル系樹脂の双極子へのエステル極性部の配位秩序が粗密化することで可塑化効率が低下する傾向がある。
【0019】
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)の可塑剤は例えば、DOP(フタル酸ジオクチル)のベンゼン環を水素化して得られる1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW362)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)の可塑剤は例えば、(〔化1〕の群)のベンゼン環を水素化して得られる1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW365)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)の可塑剤は例えば、(〔化2〕の群)のベンゼン環を水素化して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW362)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。これら〔化3〕〜〔化5〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素数4〜10の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。炭素数11以上となると、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸構造、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸構造、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造により、アルキルエステルの配置構造による立体障害が大きくなり、塩化ビニル系樹脂の双極子へのエステル極性部の配位秩序が粗密化することで可塑化効率が低下する傾向がある。
【0020】
段落〔0018〕〔0019〕に述べた(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤に併用可能な他の可塑剤成分としては、必要に応じてアセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリクレジルホスフェート、分子末端、または側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する反応性アクリル系化合物、及びアリル基を2個以上有するアリルフタレート系化合物などを(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤に対して5〜15質量%程度併用することができる。
【0021】
本発明において軟質塩化ビニル樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を主体に含み、段落〔0018〕〔0019〕に述べた(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤を1種以上含み、可塑剤を含むことによって塩化ビニル系樹脂を効果的に可塑化して軟質塩化ビニル樹脂とし、さらにトリイソシアネート化合物を含むとによって軟質塩化ビニル樹脂層に接着性及び耐熱性を付与し、同時に架橋構造を導入することで可塑剤ブリードを高度に抑止する。そして(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤とトリイソシアネート化合物との含有比が質量比10:0.1〜10:1の範囲で構成されることが好ましい。(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、35〜100質量部、好ましくは50〜80質量部である。従って塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤を100質量部配合する場合に使用するトリイソシアネート化合物の使用量範囲は1〜10質量部であり、同様に(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤を35質量部配合する場合に使用するトリイソシアネート化合物の使用量範囲は0.35〜3.5質量部である。また、塩化ビニル系樹脂とは塩化ビニルモノマーの単独重合体(乳化重合タイプで重合度が1000〜4000のもの)の他、塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のモノマー類との共重合体やグラフト重合体を含むものであるが、このような共重合体の場合、塩化ビニル含有成分が60質量%を越える比率が望ましい。共重合成分としては、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、マレイン酸及びそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテルなどのビニル化合物などが挙げられる。軟質塩化ビニル樹脂層には塩化ビニル系樹脂以外の成分として、ポリオール化合物、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などを、加工性改良剤、柔軟性改良剤、低温特性改良剤、耐熱特性改良剤、衝撃緩和剤などの目的で、塩化ビニル系樹脂に対して5〜25質量%程度併用することができる。また軟質塩化ビニル樹脂層には、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤、及びトリイソシアネート化合物以外の成分として、軟質塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤を種々任意量配合することができ、軟質塩化ビニル樹脂用安定剤として、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤を単独あるいは複数種併用して用いることができる。必要に応じて、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤(顔料)、蛍光増白剤、帯電防止剤、ワックスなどを含むことができる。
【0022】
本発明において軟質塩化ビニル樹脂層には、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤と併用して、イソシアヌレート変性トリイソシアネート〔化6〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、ビュレット変性トリイソシアネート〔化7〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)、トリメチロールアルキル変性トリイソシアネート〔化8〕の群(R=〔化9〕〜〔化12〕)から選ばれた1種以上のトリイソシアネート化合物を含有し、これらのトリイソシアネート化合物は、繊維織物の表面に対する結合を含む架橋構造を軟質塩化ビニル樹脂層内に形成させるものである。これら〔化6〕、〔化7〕、〔化8〕のトリイソシアネート化合物の群は各々、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の4種から選ばれた何れか1種の化合物を基礎とする3量体である。トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕は具体的に、トルエンのメチル基を基準に2,4位、または2,6位にイソシアネート基を配するもの、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕は具体的に、ジフェニルメタンの4,4位、または3,3位または3,4位にイソシアネート基を配するもの、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕は具体的に、m−、またはp−キシレンをベースとするイソシアネート基の配置が好ましい。本発明に用いるトリイソシアネート化合物は、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエンなどの有機溶剤に可溶化した形態、ピロリドン系、アセトアミド系などの極性溶媒に可溶化した形態、フタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジブチルなどの極性溶媒中で合成して、そのまま可溶化した形態、ブロックイソシアネートをエマルジョン化した形態、などの何れであってもよい。
【0023】
本発明に使用可能なトリイソシアネート化合物を具体的に説明すると、1).トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化9〕系)、2).4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化10〕系)、3).キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系)、4).テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化12〕系)、5).トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化9〕系)、6).4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化10〕系)、7).キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系)、8).テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化12〕系)、9).トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化9〕系)、10).4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〔化14〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化10〕系)、11).キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化11〕系)、12).テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化12〕系)、の12種類が挙げられ、これら12種から選ばれた1種の使用、または適宜併用することができる。これらの12種のトリイソシアネート化合物は、イソシアネート基の反応性を制御するためにブロック化剤を仮付加させたブロックイソシアネート化合物の態様使用が好ましい。ブロック化剤としては、アルコール類、フェノール類、活性メチレン類、メルカプタン類、酸アミド類、酸イミド類、イミダゾール類、尿素類、オキシム類、アミン類、イミド類、ピリジン類、ピラゾール類などが挙げられる。これらのブロックイソシアネートは、特定温度の加熱によりブロック化剤が解離することで、上記12種のトリイソシアネート化合物を個々に再生させる。
【0024】
これらのトリイソシアネート化合物は、加熱または触媒によるイソシアネート基の付加反応により、イソシアネート基同士の結合により架橋構造を成すと同時に、繊維織物の表面に対して結合を成し、軟質塩化ビニル樹脂層全体に架橋構造を形成し、それによって軟質塩化ビニル樹脂層と繊維織物との界面を強固に接着する。従って繊維織物はシランカップリング剤処理されたもの、ナノシリカ付着処理されたもの、コロナ放電処理がなされたものが好ましい。また特に軟質塩化ビニル樹脂層にはポリオール化合物を含むことが好ましく、トリイソシアネート化合物がポリオール化合物と付加反応してウレタン結合を成し、軟質塩化ビニル樹脂層内に架橋ウレタン成分を生成することで、より軟質塩化ビニル樹脂層の耐摩耗性、耐熱性、耐衝撃性などを向上させる。ポリオール化合物はトリイソシアネート化合物と同量(質量比1:1)で使用し、これらは具体的に、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコールなどの数平均分子量62〜500未満の低分子ポリオール、及びポリエステルポリオール、ポリアミドエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの数平均分子量500〜30000の高分子ポリオールが使用できる。またナノシリカ粒子は、粒子表面に多数の水酸基を有し、粒子径が10〜50nm、BET比表面積が150〜300m/gの表面水酸基修飾酸化ケイ素(SiO)である。トリイソシアネート化合物が、さらにナノシリカ粒子表面の水酸基と反応することで、ナノシリカ付着処理された繊維織物との接着性をさらに向上する。
【0025】
繊維織物に軟質塩化ビニル樹脂層を形成する方法として、例えば、乳化重合タイプの塩化ビニル樹脂(100質量部)に(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤(35〜100質量部)、トリイソシアネート化合物(0.35〜10質量部)、ポリオール化合物(0.35〜10質量部)、表面水酸基修飾ナノシリカ粒子(5〜20質量部)の配合による本発明の接着性ペーストゾル組成物を用いて、公知の塗工方法、例えばディッピング(繊維織物への両面加工)、コーティング(繊維織物への片面加工または両面加工で、ナイフコーティング、グラビアコーテイング、クリアランスコーティングなど)などによって繊維織物の表裏に軟質塩化ビニル樹脂層が形成される。産業資材用帆布の場合、段落〔0016〕に記載した帆布用平織基布に対してディッピングまたはコーティング、もしくはディッピングとコーティングとの併用手段により、繊維織物の隙間(繊維糸条と繊維糸条との隙間、及び繊維糸条を構成するフィラメント間の隙間)にペースト状組成物を含浸し、かつ、帆布用平織基布の両面をペースト状組成物で被覆し、これを熱処理してゲル化させることで軟質塩化ビニル樹脂層を形成して帆布を得る。またメッシュシートの場合、段落〔0016〕に記載した目抜けの平織物に対してディッピングまたはコーティングの手段により、繊維糸条を構成するフィラメント間の隙間にペースト状組成物を含浸し、かつ、目抜けの平織物の全面をペースト状組成物で被覆し、これを熱処理してゲル化させることで軟質塩化ビニル樹脂層を形成してメッシュシートを得る。これら軟質塩化ビニル樹脂層の形成量に限定は無いが、表裏合計で繊維織物の質量に対して100〜1000質量%程度、特に150〜500質量%である。
【0026】
軟質塩化ビニル樹脂層上にはフッ素樹脂層が形成されることにより、得られる産業資材用帆布及びメッシュシートは、フッ素樹脂層がバリヤー層となって可塑剤のブリードが長期間に亘り防止される効果の発現と同時に、優れた防汚性、及び優れた汚れ除去性を発現する。このフッ素樹脂層を成すフッ素樹脂は、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)から選ばれた1種のモノマーを単独重合してなる、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリトリフルオロエチレン(PTrEE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)が挙げられる。また上記に例示した2種以上のモノマーを共重合してなる、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、VdF−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、TFE−HFP共重合体樹脂、CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂などが挙げられる。フッ素樹脂層は、上記の樹脂原料(コンパウンド)をカレンダー成型、またはTダイス押出により単層または複層で成型されたもので形成され、またフッ素樹脂ディスパージョン(微細樹脂粒子分散体)を使用の場合は、液浴でのデッピング絞り、またはナイフコーティング、クリアランスコーティングなどの塗工工程に次いで焼成工程を経ることで微細樹脂粒子同士を融合一体化することでフッ素樹脂層を形成する。
【0027】
また上記に例示した1種以上のフッ素樹脂モノマーをビニルモノマーと共重合してなるフルオロオレフィン共重合体樹脂で、有機溶剤に溶解性を有する可溶性樹脂は、グラビア塗工やナイフコーティングなどの公知の塗工により帆布やメッシュシートの表面にフッ素樹脂層を形成することができる。使用できるビニルモノマーは、1)CH=CR(CH)(※Rは、炭素数1〜8のアルキル基)で示されるβ−メチル−β−アルキル置換−α−オレフィン類、2)CH=CHOR、CH=CHCHOR(※Rは、炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシアルキル基)で示されるアルキルビニルエーテル類、またはアルキルアリルエーテル類、3)CH=COOR、CH=OCOR、CHCOOR=COOR、CHCOOR=OCOR(※Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数1〜8のアルキル置換フェニル基)で示されるビニル基含有エステルなどが挙げられる。これらのフルオロオレフィン共重合体樹脂は、共重合ビニル成分中に有する水酸基、カルボキシル基などの反応性基を、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物など公知の硬化剤(架橋剤)をフルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分)に対して、固形分量換算で1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%用いて反応させることで得られる塗膜の耐摩耗性、耐酸性雨性、耐候性などを改善することができる。中でも特にイソシアネート化合物が水酸基との反応性に優れ好ましく、特に脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物が耐候性の観点で好ましい。
【0028】
また、軟質塩化ビニル樹脂層上(段落〔0026〕、〔0027〕に記したフッ素樹脂層上であってもよい)に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる防汚層が設けられることにより、得られる産業資材用帆布及びメッシュシートは、防汚層がバリヤー層となって可塑剤のブリードが長期間に亘り防止される効果の発現と同時に、優れた防汚性、及び優れた汚れ除去性の発現を可能とし、さらには優れた帯電防止性の発現を可能とする。使用する無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上の金属酸化物が使用でき、特に光触媒活性型酸化チタンゾル、光触媒活性型酸化亜鉛ゾル、光触媒活性型酸化錫ゾルなどが防汚効果に優れ好ましい。バインダー成分はシランカップリング剤が使用でき、これらは一般式:XR−Si(Y)で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有する化合物で、例えば、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、クロル基、メルカプト基など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などである。またこれらの加水分解物、及びアルコキシシラン化合物との共加水分解化合物なども使用できる。具体的にシランカップリング剤は、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。防汚層に占める無機コロイド物質の含有率に限定は無いが、特に25〜50質量%が好ましい。これらの防汚層の形成方法は、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、またはエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコートなどのコーティング法で塗布・乾燥することで形成される。バインダー成分は必要に応じて、アクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリル−シリコン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリル−ウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンドなどを併用することもできる。
【0029】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に実施例及び比較例のシートの評価方法を説明する。
〈ペーストゾル組成物の粘度の評価〉
ブルックフィールド型回転粘度計(BM型)4号ローター(6rpm→30rpm→6rpm)の粘度測定(各10秒後)を各々のペーストゾル組成物に対し、25℃の室温条件で3日間、24時間ごとに実施し、ペーストゾル組成物のチキソ性と粘度変化(初期粘度に対する増粘率%)を評価した。チキソ性は6rpm(1)→30rpm→6rpm(2)のずり速度変更において、6rpm(1)の粘度に対する6rpm(2)の粘度の変化率を求めた。
粘度の経時変化(率)の評価
1(良好):3日後の増粘率が100%未満
2(やや不良):3日後の増粘率が100〜200%未満
3(不良):3日後の増粘率が200%を越える
チキソ性の評価
1(チキソトロピー):変化率10%を越える減粘
2(ダイラタント):変化率10%を越える増粘
3:上記1,2以外
〈可塑剤ブリードの抑止効果:濡れ性評価〉
10cm×10cmサイズの試料を2枚のガラス板(10cm×10cmサイズ×5mm厚)で挟み、これを23℃で平置した状態で2400時間静置し、取り出し直後のガラス板面の曇り(フォギング)や濡れ(ブリード)の有無の目視及び指触判断を以って可塑剤のブリードの抑止性(防止性)を判断した。
1(良好):ガラス板面に曇りを認めないレベル
2(やや不良):ガラス板面に曇りを認め、触ると滑るレベル
3(不良):ガラス板面に顕著な濡れを認め、試料表面にも濡れを認めるレベル
〈可塑剤ブリードの抑止効果:揮発減量評価〉
質量の明らかな10cm×10cmサイズの試料を85℃に設定したギアーオーブン中に吊した状態で72時間静置し、取り出し後の試料の質量より可塑剤の揮発量を求め、この揮発減量の「多い」「少ない」を以って可塑剤のブリードの抑止性(防止性)を判断した。
1:(ブリード防止効果を認める):10mg未満
2:(ややブリード抑止効果を認める):10〜30mg未満
3:(ブリード防止効果が認められない):30mgを越える
〈可塑剤ブリードの抑止効果:防汚性評価〉
南向き傾斜角30度に設置し屋外曝露60日(5月〜6月)の試料について、試料の色差ΔE値(ブランクとの対比)を測定し防汚性を下記基準で判定した。(埼玉県草加市内にて曝露)
1:60日の防汚性として良好 :ΔE= 5未満
2:60日の防汚性としてやや劣る:ΔE=5 〜8未満
3:60日の防汚性として劣る :ΔE=8以上
〈接合体による耐熱クリープ性の評価〉
2枚のシートの端部同士を4cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、4cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター社製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでシート同士の融着接合を行い接合体シートを得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅4cmを含む、3cm幅×30cm長の試験片を9片採取し、クリープ試験機(東洋精機製作所社製:100LDR型)により65℃×25kgf荷重の条件でのクリープ性を24時間評価した。
評価の基準
1 :24時間経過後、接合部に異変や異常なく良好
2 :24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
3 :1時間以内に接合部が破壊し、試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
破壊状態の判断:接合部糸抜け破壊(糸の断裂なし),本体破壊等(糸の断裂あり)
【0030】
[実施例1]
ポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布を基布1として用いた。
〈繊維織物:基布1〉
〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/インチ:空隙率4.2%:質量228g/m
下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を適度な粘度に調製し、この〔配合1〕の接着性ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、基布1を浸漬(ディッピング)し、基布1に完全に〔配合1〕の接着性ペーストゾル組成物を含浸し、基布1を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合1〕の接着性ペーストゾル組成物のゲル化と、トリイソシアネート化合物の付加反応を進行させ、〔配合1〕の接着性ペーストゾル組成物で含浸し、かつ被覆されることで基布1の両面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390) 60質量部
エチレングリコール(ポリオール) 3.5質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
表面水酸基修飾シリカ粒子(75nm) 5質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
トリイソシアネート化合物 3質量部
※キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるイソシアヌレート
変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)
※イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)とトリイソシアネート化合物との質量比は
60:3(20:1)である。
【0031】
[実施例2]
実施例1において〔配合1〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390)60質量部を、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化2〕:MW390)60質量部に置換し、さらにトリイソシアネート化合物:イソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
【0032】
[実施例3]
実施例1において〔配合1〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390)60質量部を、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(〔化3〕:MW393)60質量部に置換し、さらにトリイソシアネート化合物:イソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系有効成分100%)3質量部を、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化12〕系有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
【0033】
[実施例4]
実施例1において〔配合1〕に用いたトリイソシアネート化合物:イソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
【0034】
[実施例5]
実施例2の配合に用いたトリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部を、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化12〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例2と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
【0035】
[実施例6]
実施例3の配合に用いたトリイソシアネート化合物:テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化12〕系:有効成分100%)3質量部を、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化9〕系有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例3と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
【0036】
[実施例7]
ポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条からなる目抜け平織物を基布2として用いた。
〈繊維織物:基布2〉
〔糸密度:750d/3本模紗(833dtex/3本模紗)を経緯糸条として、経糸条11本/インチ、緯糸条11本/インチの打ち込みで製織した粗目模紗織物(質量225g/m:空隙率11%)
下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を適度な粘度に調製し、この〔配合2〕の接着性ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、基布2を浸漬(ディッピング)し、基布2に完全に〔配合2〕の接着性ペーストゾル組成物を含浸し、基布2を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕の接着性ペーストゾル組成物のゲル化と、トリイソシアネート化合物の付加反応を進行させ、〔配合2〕の接着性ペーストゾル組成物で含浸し、かつ被覆されることで基布2の全面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390) 60質量部
エチレングリコール(ポリオール) 3.5質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
表面水酸基修飾シリカ粒子(75nm) 5質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
トリイソシアネート化合物 3質量部
※キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性
トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)
※イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)とトリイソシアネート化合物との質量比は
60:3(20:1)である。
【0037】
[実施例8]
実施例7において〔配合2〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390)60質量部を、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化2〕:MW390)60質量部に置換し、さらにトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例7と同様として、厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
【0038】
[実施例9]
実施例7において〔配合2〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(〔化1〕:MW390)60質量部を、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(〔化3〕:MW393)60質量部に置換し、さらにトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例7と同様として、厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
【0039】
[実施例10]
実施例7において〔配合2〕に用いたトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例7と同様として、厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
【0040】
[実施例11]
実施例8の配合に用いたトリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート(〔化8〕−〔化9〕系:有効成分100%)3質量部を、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)〔化16〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化12〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例8と同様として、厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
【0041】
[実施例12]
実施例9の配合に用いたトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるビュレット変性トリイソシアネート(〔化7〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部に置換した以外は実施例9と同様として、厚さ0.53mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
【0042】
[実施例13〜18]
実施例1〜6で得た各々の帆布の表面に下記〔配合3〕による接着層を形成し、接着層を介在して厚さ50μmのポリビニリデンフルオライド(PVdF)透明フィルムを180℃で熱ラミネートして、フッ素樹脂層が設けられた厚さが0.52mm、質量が615g/mの帆布を得た。実施例1をベースとする実施例13、実施例2をベースとする実施例14、以下同様に実施例6をベースとするのが実施例18である。
〈接着層〉
実施例1〜6の基材を80メッシュグラビアロール塗工条件の塗工機に掛け、軟質塩化ビニル樹脂層上に〔配合3〕の接着組成物による塗工を行い、120℃の熱風炉で3分間乾燥した。
〔配合3〕接着組成物
ポリエチレンイミンが反応性基としてグラフトされたアクリル樹脂
(固形分濃度30質量%、アミン当量:1400g/eq) 100質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:200g/eq) 7重量部
ベンゾトリアゾール化合物(紫外線吸収剤) 0.5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0043】
[実施例19〜24]
実施例7〜12で得た各々のメッシュシートの両面に下記〔配合4〕による防汚層を形成し、厚さが0.53mm、質量が476g/mのメッシュシートを得た。実施例7をベースとする実施例19、実施例8をベースとする実施例20、以下同様に実施例12をベースとするのが実施例24である。
〈防汚層〉
実施例7〜12の基材を80メッシュグラビアロール塗工条件の塗工機に掛け、軟質塩化ビニル樹脂層上に〔配合4〕の防汚組成物による塗工を1パス両面塗工で行い、120℃の熱風炉で3分間乾燥した。
〔配合4〕防汚組成物
シリカゾル(粒子径20〜30nm:固形分48質量%) 100質量部
ビニルトリエトキシシラン(シランカップリング剤) 50質量部
酸化亜鉛粒子(粒子径15nm)(紫外線吸収剤) 0.5質量部
ポリエチレングリコール型非イオン活性剤(帯電防止剤) 1質量部
希釈剤(水) 100質量部
【0044】
実施例1〜6の帆布、及び実施例7〜12のメッシュシートは、これらの加工に用いた接着性ペーストゾル組成物の経時的な増粘変化が小さく、ペーストゾル組成物に剪断力を掛けると粘性低下を生じてゾル粘度が下がり、基布へのゾルの含浸が効果的になされ、軟質塩化ビニル樹脂層が基布と強固に固着されることで、屈曲耐久性や接合部の耐熱クリープ性などに格段の効果が発現されていた。また、接着性ペーストゾル組成物による軟質塩化ビニル樹脂層には、基布の表面に対する結合を含む架橋構造が形成されたことで可塑剤ブリードが高度に抑止され、煤塵汚れなどの汚染を軽微なものとしていた。従ってこれらの帆布やメッシュシートは、シートハウス、トラック幌、野積シート、建築養生、防護ネットなど、広く産業資材分野で長期間使用することができる。特に実施例1〜6の帆布の表面にフッ素樹脂層を設けた各々実施例13〜18の帆布、及び実施例7〜12のメッシュシートの両面に、無機コロイド物質とシランカップリング剤の加水分解縮合物とからなる防汚層を設けた各々実施例13〜24のメッシュシートにおいては、実施例1〜6の帆布や実施例7〜12のメッシュシートよりも更に可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも煤塵汚れなどの汚染が更に軽微となり、粉塵汚れが付着しても数週間経過レベルであれば、ワイピングクロスなどでの簡単な拭き取りによって容易に付着汚れ物質が除去可能であった。また本発明の帆布は長尺加工されるためロール巻で出荷され、使用前までロール巻のまま保管されるが、そのような状態では特に実施例13〜18の帆布だと、裏面の軟質塩化ビニル樹脂層が表面のフッ素樹脂層と密着した状態となり、もしも裏面の軟質塩化ビニル樹脂層から可塑剤がブリードした場合には、ブリード可塑剤がフッ素樹脂層に移行転写することで、例えフッ素樹脂層を形成したとしても、使用直後から煤塵汚れの付着を伴う問題を生じるが、しかし実施例13〜18の帆布では裏面の軟質塩化ビニル樹脂層自体の可塑剤移行抑止効果に優れることで、そのような汚染トラブルの発生は認められなかった。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、〔配合1〕に用いたトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を省略した以外は実施例1と同様として、厚さ0.53mm、質量560g/mの帆布を得た。得られた帆布はトリイソシアネート化合物を含有しないことで、基布1の表面に対する結合を含む架橋構造を軟質塩化ビニル樹脂層に形成しないため、帆布の接合部耐熱性が不足し、高温使用環境において接合部が破壊し易いものとなった。また軟質塩化ビニル樹脂層内に立体架橋構造を生成しないことで可塑剤のブリード抑止効果にも劣り、煤塵が付着して汚れやすいものであった。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、〔配合1〕に用いたトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、メタキシリレンジイソシアネート(mXDI)〔化15〕:有効成分100%、3質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。この配合によるペーストゾル組成物の粘度は、メタキシリレンジイソシアネート(mXDI)〔化15〕の反応がペーストゾル組成物内部で進行し、不安定な増粘を生じたことでデッピィング加工時の流動性及び含浸性を悪くして、得られた帆布の外観や耐久性能を悪くしただけでなく、失活したイソシアネート基が基布と反応しないことで、接合部の耐熱クリープ性に劣っていた。
【0047】
[比較例3]
実施例1において、〔配合1〕に用いたトリイソシアネート化合物:キシリレンジイソシアネート(XDI)〔化15〕の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート(〔化6〕−〔化11〕系:有効成分100%)3質量部を、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕:有効成分100%、3質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。この配合によるペーストゾル組成物の粘度は、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)〔化13〕の反応がペーストゾル組成物内部で進行し、不安定な増粘を生じたことでデッピィング加工時の流動性及び含浸性を悪くして、得られた帆布の外観や耐久性能を悪くしただけでなく、失活したイソシアネート基が基布と反応しないことで屈曲性などの耐久性にも劣るものとなった。
【0048】
[比較例4]
実施例1において、〔配合1〕に用いた、イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(MW390:〔化1〕)60質量部を、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(別名:フタル酸ジオクチル:DOP)60質量部に置換した以外は実施例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。この配合によるペーストゾル組成物の粘度は、トリイソシアネート化合物とジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DOP)との初期相溶性が良くないことで、経時的な増粘傾向が観察され、特に初期状態のペーストゾル組成物を用いた加工による帆布では、ゾルに剪断力を掛けても粘性低下が低い(チキソトロピーを示さない)ため、ペーストゾル組成物中に基布をディッピングしても、基布への含浸効果が不十分のため、軟質塩化ビニル樹脂被膜が表面付きとなって基布から剥離し易く、また、軟質塩化ビニル樹脂層の架橋生成が不均一となることで、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DOP)のブリードを促し、煤塵が付着して汚れやすいものとなった。
【0049】
[比較例5]
実施例2の配合に用いた、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(MW390:〔化2〕)60質量部を、ジヘプチルフタレート(別名:フタル酸ジヘプチル:DHP)60質量部に置換した以外は実施例2と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。この配合によるペーストゾル組成物の粘度は、トリイソシアネート化合物とジヘプチルフタレート(別名:フタル酸ジヘプチル:DHP)との初期相溶性が良くないことで、経時的な増粘傾向が観察され、特に初期状態のペーストゾル組成物を用いた加工による帆布では、ゾルに剪断力を掛けても粘性低下が低い(チキソトロピーを示さない)ため、ペーストゾル組成物中に基布をディッピングしても、基布への含浸効果が不十分のため、軟質塩化ビニル樹脂被膜が表面付きとなって基布から剥離し易く、また、軟質塩化ビニル樹脂層の架橋生成が不均一となることで、ジヘプチルフタレート(別名:フタル酸ジヘプチル:DHP)のブリードを促し、煤塵が付着して汚れやすいものとなった。
【0050】
[比較例6]
実施例3の配合に用いた、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(MW393:〔化3〕)60質量部を、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:アジピン酸ジオクチル:DOA)60質量部に置換した以外は実施例3と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。この配合によるペーストゾル組成物の粘度は、トリイソシアネート化合物とアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:アジピン酸ジオクチル:DOA)との初期相溶性が良くないことで、経時的な増粘傾向が観察され、特に初期状態のペーストゾル組成物を用いた加工による帆布では、ゾルに剪断力を掛けても粘性低下が低い(チキソトロピーを示さない)ため、ペーストゾル組成物中に基布をディッピングしても、基布への含浸効果が不十分のため、軟質塩化ビニル樹脂被膜が表面付きとなって基布から剥離し易く、また、軟質塩化ビニル樹脂層の架橋生成が不均一となることで、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:アジピン酸ジオクチル:DOA)のブリードを促し、煤塵が付着して汚れやすいものとなった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、特に粘度安定性及びチキソ性とに優れた接着性ペーストゾル組成物によって形成された軟質塩化ビニル樹脂層を有し、それによって可塑剤のブリードが抑制され、防汚性に優れるので、帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの産業資材シートとして長期間使用することができる。