(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器は、前記改質器に供給される原料供給量が最大原料供給量に到達したら、運転継続時間、及び、累積運転時間をリセットする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の、水素生成装置。
請求項1から6のいずれか1項に記載の水素生成装置と、酸化剤ガス及び前記水素生成装置からの水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える燃料電池システム。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーを有効に利用することが可能である分散型の発電装置として、発電効率及び総合効率が共に高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に「燃料電池システム」という)が注目されている。
【0003】
この燃料電池システムは、発電部の本体として、燃料電池を備えている。この燃料電池としては、例えば、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、アルカリ水溶液形燃料電池、固体高分子形燃料電池、或いは、固体電解質形燃料電池等が用いられる。
【0004】
これらの燃料電池の内で、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池(略称、「PEFC」)は、発電運転の際の動作温度が比較的低いため、燃料電池システムを構成する燃料電池として好適に用いられる。特に、固体高分子形燃料電池は、リン酸形燃料電池と比べて、電極触媒の劣化が少なく、かつ電解質の逸散が発生しないため、携帯用電子機器や電気自動車等の用途において特に好適に用いられる。
【0005】
さて、燃料電池の多く、例えば、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池は、発電運転の際に水素を燃料として用いる。しかし、それらの燃料電池において発電運転の際に必要となる水素の供給手段は、通常、インフラストラクチャーとして整備されてはいない。
【0006】
従って、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムにより電力を得るためには、その燃料電池システムの設置場所において、燃料としての水素を生成する必要がある。
【0007】
燃料電池に供給する水素を生成する方法として、改質反応が一般的に用いられている。改質反応は、例えば、原料となる都市ガスと水蒸気とをNi系やRu系の改質触媒を用いて600℃〜700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスを生成する。
【0008】
また、改質器では副反応として一酸化炭素(CO)を生成するため、COが燃料電池を被毒して電圧を低下させる場合は(固体高分子型燃料電池等の場合)、CO除去器を改質器の下流側に備える。
【0009】
CO除去器では、COと水蒸気を反応させCOを低減するCO変成触媒と、COと微量に加えた酸素を反応させてCOを酸化除去する選択酸化触媒が例示される。それぞれの触媒をCO除去反応に適した温度範囲にすることでCO除去器として機能する。
【0010】
ところで、水素生成装置の改質器に原料として供給される天然ガスは、通常、微量の窒素化合物を含有している。この窒素化合物の含有率は、例えば、天然ガスを供給する地域により異なっている。
【0011】
そして、この窒素化合物を含有する天然ガスが水素生成装置の改質器に供給されると、その改質器が備える改質触媒上において、水蒸気改質反応により生成される水素と窒素化合物との化学反応が進行することにより、アンモニアが生成されることがある。
【0012】
ここで、CO除去器に設けられた選択酸化触媒の触媒種によっては、改質器で生成されたアンモニアが吸着される場合がある。このアンモニアによる選択酸化触媒への吸着は、CO除去器の温度が低いほど吸着量が増える傾向にある。
【0013】
逆に温度が高くなると吸着したアンモニアが脱離し、水素含有ガス中のアンモニア濃度が高くなる。これは、固体高分子形燃料電池における電極触媒のアンモニアによる被毒の原因となり、固体高分子形燃料電池の発電性能を著しく低下させる。
【0014】
水素生成装置でCO除去器の選択酸化反応量が少なく温度が低くなる低負荷の運転が長くなると、運転時間に応じてアンモニア吸着量が増える。吸着量が多い状態でCO除去器の選択酸化反応量が多く温度が高くなる高負荷な運転まで負荷を上昇させると、吸着していたアンモニアが一気に放出されることになる。
【0015】
そこで、負荷上昇時にはCO除去器の温度が一定の範囲内であるとき、一定の変化速度で原料供給量を変化させる方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明の水素生成装置は、炭化水素および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、制御器と、を備え、前記制御器は、運転を開始してからの運転継続時間が長くなるにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0024】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に運転継続時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0025】
第2の発明の水素生成装置は、炭化水素および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、制御器と、を備え、前記制御器は、運転を開始してからの累積運転時間が長くなるにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0026】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に累積運転時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0027】
第3の発明の水素生成装置は、炭化水素および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、制御器と、を備え、前記制御器は、運転を開始してからの運転継続時間の長さ、及び、累積運転時間の長さにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0028】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に運転継続時間と累積運転時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0029】
第4の発明の水素生成装置は、特に、第1から第3のいずれかの発明の水素生成装置において、前記制御器は、前記改質器に供給される原料供給量が最大原料供給量に到達した
ら、運転継続時間、及び、累積運転時間をリセットするのである。
【0030】
これにより、原料供給量が最大原料供給量に到達したときのCO除去器に吸着したアンモニアの脱離を考慮して、原料供給量の増加速度がリセットされる。したがって、原料供給量の増加速度をCO除去器のアンモニア吸着量に応じた増加速度に設定することができる。
【0031】
第5の発明の水素生成装置は、特に、第1から第4のいずれかの発明の水素生成装置において、前記制御器は、運転継続時間が、第1時間に達するまでは前記原料供給量の増加速度を変化させないのである。
【0032】
これにより、起動直後はCO除去器の温度が低くアンモニアが脱離しにくく、水素含有ガス中のアンモニア濃度が高くならないため、第1時間までは、原料供給量増加速度を最大値に維持することができ、水素生成装置の負荷追従性を保つことができる。
【0033】
第6の発明の水素生成装置は、特に、第5の発明の水素生成装置において、前記制御器は、前記第1時間を累積運転時間が長くなるにしたがって短くするのである。
【0034】
これにより、累積運転時間が長くなることによって蓄積されたCO除去器へのアンモニア吸着量を考慮したうえで第1時間を設定する。したがって、原料供給量増加速度を減少させはじめる時間を適切に設定することができる。
【0035】
第7の発明の燃料電池システムは、第1から第6のいずれかの発明の水素生成装置と、酸化剤ガス及び前記水素生成装置からの水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備えるのである。
【0036】
これにより、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低減することができ、燃料電池の劣化を抑制することができるため、信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0037】
第8の発明の燃料電池システムは、特に、第7の発明の燃料電池システムにおいて、前記制御器は、前記原料増加速度に応じて、前記燃料電池の発電電力の増加速度を変化させるのである。
【0038】
これにより、発電電力量増加時の水素生成装置より導入される水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低減することができ、高濃度アンモニアによる燃料電池の被毒を抑制することができるので、発電を維持することができる信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0039】
第9の発明の水素生成装置の運転方法は、炭化水素
および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する
改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、を備えた水素生成装置の運転方法であって、運転を開始してからの運転継続時間が長くなるにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0040】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に運転継続時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0041】
第10の発明の水素生成装置の運転方法は、炭化水素
および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する
改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と
、を備えた水素生成装置の運転方法であって、運転を開始してからの累積運転時間が長くなるにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0042】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に累積運転時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0043】
第11の発明の水素生成装置の運転方法は、炭化水素および窒素化合物を含む原料を改質して水素含有ガスを生成する改質触媒を有する改質器と、前記改質器により生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒によって低減するCO除去器と、前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、を備えた水素生成装置の運転方法であって、運転を開始してからの運転継続時間の長さ、及び、累積運転時間の長さにしたがって、前記原料供給器から前記改質器に供給される原料供給量を増加させる場合における前記原料供給量の増加速度を減少させるのである。
【0044】
これにより、原料供給量増加時のCO除去器の温度上昇を緩やかにし、CO除去器に運転継続時間と累積運転時間が長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0045】
第12の発明の燃料電池システムの運転方法は、水素生成装置と、酸化剤ガス及び前記水素生成装置からの水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、前記水素生成装置が、第9から第11のいずれかの発明の水素生成装置の運転方法で運転されるのである。
【0046】
これにより、発電電力量増加時に水素生成装置より導入される水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低減することができ、高濃度アンモニアによる燃料電池の被毒を抑制することができるので、発電を維持することができる信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0047】
以下、本発明を、実施の形態でさらに詳しく説明するが、本発明が、これら実施の形態により制限されないことは勿論である。
【0048】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における水素生成装置と燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【0049】
図1において、改質器1は、原料及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する。原料は、都市ガスとする。都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。改質反応は、水蒸気改質反応とする。改質器温度検知器12は改質器1の温度を検知する。改質器温度検知器12は熱電対によって構成される。
【0050】
原料供給器2は、原料を改質器1に供給する。原料供給器2は、昇圧器によって構成される。水供給器3は、水を改質器1に供給する。水供給器3は、水の流量を調整し、ポンプによって構成される。CO除去器11は、改質器1から出た水素含有ガス中のCOを選択酸化反応、により低減させる選択酸化反応器とする。選択酸化用空気供給器6は、CO
除去器11へ供給される選択酸化用空気を供給するブロアである。
【0051】
水素生成装置100で生成された水素含有ガスは、水素供給路8を介して燃料電池151に供給される。水素供給路8はCO除去器11から燃料電池151まで繋がっている。水素供給路8中に封止器7があり。封止器7は電磁弁で構成される。燃料電池151は固体高分子型燃料電池とする。
【0052】
加熱器4は、改質器1を加熱する燃焼器とする。加熱器4の燃焼に用いる燃料には、水素生成装置の起動中は、改質器1より排出される水素含有ガスが用いられる。加熱器4に供給される水素含有ガスは、CO除去器11から封止器7の間で分岐して封止器13を通り、加熱器4に導入される燃料供給路10を介して加熱器4に直接供給される。
【0053】
燃料電池151へ水素含有ガスの供給を開始してからは、燃料電池151で利用されなかったガスは、リターン流路15から封止器14及び燃料供給路10を介して加熱器4に供給される。燃料供給器9はポンプによって構成される。封止器13及び封止器14は電磁弁で構成される。空気供給器5は、加熱器4に燃焼空気を供給する。空気供給器5は、ファンにより構成される。
【0054】
制御器50は、燃料電池システム200全体を制御可能な制御装置とする。制御器50は、演算処理部(図示せず)であるCPUと、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)であるメモリとを備える。制御器50は、集中制御を行う単独の制御器で構成されている。
【0055】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0056】
なお、以下の動作は、制御器50が燃料電池システム200を制御することによって行われる。
【0057】
水素生成装置100が起動すると、加熱器4における燃焼を開始する。このとき、封止器7と封止器14を閉止、封止器13を開封し、水素供給路8から分岐して伸び、加熱器4に至る燃焼用の燃料供給路10がガス通気状態となっている。
【0058】
よって、原料供給器2の動作開始により原料が改質器1に供給されると、改質器1を通過した原料は、上記燃焼用の燃料供給路10を用いて加熱器4に供給される。同時に、空気供給器5の動作開始により、燃焼用の空気が加熱器4に供給される。
【0059】
加熱器4において、点火電極(図示せず)により着火動作が行われ、燃焼用の空気を用いて、燃料の燃焼が起こる。このようにして、加熱器4から供給される燃焼熱により、改質器1加熱される。
【0060】
次いで、水供給器3の動作開始により、改質器1に水が供給される。水の供給開始後、改質器1で生成された水素含有ガスの組成が燃料電池151への供給に適した組成になった段階で、封止器13を閉止、封止器7と封止器14を開封し、燃料電池151に水素含有ガスが供給される。水素含有ガスの供給開始後、運転継続時間のカウントを開始する。運転継続時間をtとする。
【0061】
原料供給量が最大原料供給量より少ないと、CO除去器11における選択酸化反応量が少なくなり、CO除去器11の温度が低くなる。そのため、原料中の窒素と水素が反応して生成されるアンモニアが選択酸化触媒に吸着する。また、選択酸化触媒へのアンモニア吸着量の総量は、運転継続時間が長くなるにしたがって多くなる。
【0062】
原料供給量が最大原料供給量に到達すると、CO除去器11の選択酸化反応量が増えてCO除去器11が高温になり、吸着したアンモニアが脱離するので、tを原料供給量が最大原料供給量に到達したときにリセットする。最大原料供給量を3.5NLMとする。
【0063】
以下、原料供給量増加時の増加速度決定方法について、原料供給量増加速度をvとして説明する。
【0064】
図2は本発明の実施の形態1の水素生成装置と燃料電池システムにおける運転継続時間から原料供給量増加速度を設定することを説明するための説明図である。
【0065】
運転継続時間tが長くなればなるほどCO除去器11に吸着するアンモニアの総量が多くなるので、
図2に示すように、運転継続時間tが長くなるにともなって原料供給量増加速度vを小さくする。
【0066】
制御器50から原料供給量増加の指令が入ったとき、そのときの運転継続時間tに対応する原料供給量増加速度vを
図2から設定する。
【0067】
図2に示すように、運転継続時間tが20hであれば原料供給量増加速度vは0.08NLM/sとする。運転継続時間tが30hとなれば、原料供給量増加速度vは0.06NLM/sとし、運転継続時間tが長くなるにしたがって、原料供給量増加速度vを小さくする。設定した原料供給量増加速度vで原料供給量の増加を開始する。
【0068】
以上の動作により、運転継続時間tが長くなるとともに、原料供給量増加速度vを小さくすることで、CO除去器11における選択酸化反応量の上昇が緩やかになり、CO除去器11の温度上昇が緩やかになる。
【0069】
したがって、CO除去器11にtが長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時に水素含有ガス中のアンモニア濃度は徐々に高くなるが、アンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0070】
そのため、高濃度アンモニアによる燃料電池151の被毒を抑制することができ、発電を維持することができる信頼性の高い燃料電池システム200を提供することができる。
【0071】
なお、燃料電池151は、リン酸型燃料電池やアルカリ燃料電池であってもよい。
【0072】
なお、水素含有ガスの加熱器4への供給は燃料電池151を経由し、燃料電池151から排出されて加熱器4に供給されてもよいし、加熱器4において、燃料供給器9から水素含有ガスに燃料を追加して燃焼されてもよい。
【0073】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の水素生成装置と燃料電池システムの構成は、実施の形態1と同じであり、実施の形態2の水素生成装置と燃料電池システムの構成を示すブロック図は、
図1に示すものである。
【0074】
実施の形態1と異なるのは、CO除去器11に吸着しているアンモニアの総量が少ない時間までは、原料供給量増加速度を減少させないところと、原料供給量増加速度を累積運転時間に基づいて設定するところと、原料供給量増加速度に応じて燃料電池151の発電電力量の増加速度を変化させるところである。
【0075】
水素含有ガス供給開始後、運転継続時間および累積運転時間のカウントを開始する。運転継続時間をt、累積運転時間をTとし、原料供給量増加速度をVとする。
【0076】
原料供給量が最大原料供給量より少ないと、CO除去器11における選択酸化反応量が少なくなり、CO除去器11の温度が低くなる。そのため、原料中の窒素と水素が反応して生成されるアンモニアが選択酸化触媒に吸着する。また、選択酸化触媒へのアンモニア吸着量の総量は、累積運転時間Tが長くなるにしたがって多くなる。
【0077】
原料供給量が最大原料供給量に到達すると、CO除去器11の選択酸化反応量が増えてCO除去器11が高温になり、吸着したアンモニアが脱離するので、運転継続時間tおよび累積運転時間Tは、原料供給量が最大原料供給量に到達したときにリセットする。最大原料供給量を3.3NLMとする。
【0078】
また、運転継続時間tが第1時間に到達するまでの間で制御器50から原料供給量増加指令が入った場合、起動直後でありCO除去器11の温度が低いので、アンモニアが脱離しにくく、水素含有ガス中のアンモニア濃度が高くならない。
【0079】
したがって、水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値が高くならないので、原料供給量増加速度Vは一定の値とする。一定の値を0.09NLM/sとする。
【0080】
第1時間は、累積運転時間Tによるアンモニア吸着量も考慮して設定する。第1時間をt1とする。
【0081】
図3は本発明の実施の形態2の水素生成装置と燃料電池システムにおける累積運転時間から第1時間を設定することを説明するための説明図である。
図3に示すように第1時間t1は累積運転時間Tが長くなるにしたがって短くする。
【0082】
累積運転時間Tが2000hであれば、第1時間t1は30hとする。累積運転時間Tが3000hとなれば、第1時間t1は25hとし、累積運転時間Tが長くなるにしたがって第1時間t1を短くする。
【0083】
運転継続時間tが第1時間t1に到達した後で制御器50から原料供給量増加指令が入った場合、CO除去器11に吸着したアンモニアの総量が多くなっているので、原料供給量増加速度Vを累積運転時間Tが長くなるにしたがって小さくする。
【0084】
これにより、累積運転時間Tが長くなることによって蓄積されたCO除去器11へのアンモニア吸着量を考慮したうえで第1時間t1を設定できる。したがって、原料供給量増加速度Vを減少させはじめる時間を適切に設定することができる。
【0085】
図4は本発明の実施の形態2の水素生成装置と燃料電池システムにおける累積運転時間から原料供給量増加速度を設定することを説明するための説明図である。累積運転時間Tが長くなればなるほどCO除去器11に吸着するアンモニアが多くなるので、
図4に示すように原料供給量増加速度Vを小さくする。
【0086】
制御器50から原料供給量増加の指令が入ったとき、そのときの累積運転時間Tに対応する原料供給量増加速度Vを
図4から読み取る。
【0087】
図4に示すように、累積運転時間Tが2000hであれば原料供給量増加速度Vは0.05NLM/sとする。また、累積運転時間Tが3000hとなれば原料供給量増加速度Vは0.04NLM/sとし、累積運転時間Tが長くなるほど原料供給量増加速度Vを小
さくする。
【0088】
設定した原料供給量増加速度Vで原料供給量の増加を開始する。累積運転時間Tが長くなるとともに、原料供給量増加速度Vが小さくなることで、CO除去器11における選択酸化反応量の上昇が緩やかになり、CO除去器11の温度上昇が緩やかになる。したがって、CO除去器11に累積運転時間Tが長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ水素含有ガス中のアンモニア濃度のピーク値を低減することができる。
【0089】
図5は、本発明の実施の形態2の水素生成装置と燃料電池システムにおける原料供給量増加速度から発電電力量増加速度を設定することを説明するための説明図である。
【0090】
図5に示すように原料供給量増加速度Vが小さくなるにしたがって、発電電力量増加速度を小さくする。発電電力量増加速度をWとする。
【0091】
原料供給量増加速度Vが0.05NLM/sであれば、発電電力量増加速度Wは0.10W/sとする。原料供給量増加速度Vが0.04NLM/sとなれば、発電電力量増加速度Wは0.08W/sとし、原料供給量増加速度Vが小さくなるにしたがって発電電力量増加速度Wを小さくする。
【0092】
以上の動作により、運転継続時間tが第1時間t1に到達する前は、起動直後でありCO除去器11の温度が低いので、アンモニアが脱離しにくく、水素含有ガス中のアンモニア濃度が高くならないため、原料供給量増加速度Vを最大値に維持でき負荷追従性を保つことができる。
【0093】
運転継続時間tが第1時間t1到達後は、累積運転時間Tが長くなるとともに、原料供給量増加速度Vが小さくなることで、CO除去器11における選択酸化反応量の上昇が緩やかになり、CO除去器11の温度上昇が緩やかになる。
【0094】
したがって、CO除去器11に累積運転時間Tが長くなるほど多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、燃料電池151の発電電力量増加時の水素生成装置100より導入される水素含有ガス中のアンモニア濃度は、徐々に高くなるが、アンモニア濃度のピーク値を低減することができる。
【0095】
そのため、高濃度アンモニアによる燃料電池151の被毒を抑制することができ、発電を維持することができる信頼性の高い燃料電池システム200を提供することができる。
【0096】
なお、本実施の形態では、累積運転時間Tに基づいて、原料供給量増加速度Vを設定したが、累積起動回数に基づいて、原料供給量増加速度Vを設定しても、累積運転時間Tと累積起動回数は比例する関係にあるため同様の効果が得られる。
【0097】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の水素生成装置と燃料電池システムの構成は実施の形態1と同じであり、実施の形態3の水素生成装置と燃料電池システムの構成を示すブロック図は
図1に示すものである。
【0098】
実施の形態1と異なるのは、原料供給量増加速度を運転継続時間と累積運転時間の両方基づいて設定するところである。
【0099】
水素含有ガス供給開始後、運転継続時間および累積運転時間のカウントを開始する。
【0100】
運転継続時間をt、累積運転時間をTとする。
【0101】
原料供給量が最大原料供給量より少ないと、CO除去器11における選択酸化反応量が少なくなり、CO除去器11の温度が低くなる。そのため、原料中の窒素と水素が反応して生成されるアンモニアが選択酸化触媒に吸着する。また、選択酸化触媒へのアンモニア吸着量の総量は、運転継続時間や累積運転時間が長くなるにしたがって多くなる。
【0102】
原料供給量が最大原料供給量に到達すると、CO除去器11の選択酸化反応量が増えてCO除去器11が高温になり、吸着したアンモニアが脱離するので、運転継続時間tおよび累積運転時間Tは、原料供給量が最大原料供給量に到達したときにリセットする。最大原料供給量を3.6NLMとする。
【0103】
原料供給量増加速度は、運転継続時間tによる寄与分と累積運転時間Tによる寄与分の和で求められる。
【0104】
原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分をv、累積運転時間による寄与分をVとする。
【0105】
図6(a)は本発明の実施の形態3の水素生成装置と燃料電池システムにおける運転継続時間から原料供給量増加速度の寄与分を設定することを説明するための説明図である。
【0106】
運転継続時間tが長くなればなるほどCO除去器11に吸着するアンモニアが多くなるので、
図6(a)に示すように、原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分vを小さくする。
【0107】
図6(b)は本発明の実施の形態3の水素生成装置と燃料電池システムにおける累積運転時間から原料供給量増加速度の寄与分を設定することを説明するための説明図である。
【0108】
累積運転時間Tが長くなればなるほどCO除去器11に吸着するアンモニアが多くなるので、
図6(b)に示すように原料供給量増加速度の累積運転時間による寄与分Vを小さくする。
【0109】
制御器50から原料供給量増加の指令が入ったとき、そのときの運転継続時間tおよび累積運転時間Tに対応する原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分vと原料供給量増加速度の累積運転時間による寄与分Vを
図6(a)、
図6(b)からそれぞれ読み取る。
【0110】
図6(a)に示すように、運転継続時間tが200hであれば原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分vは0.05NLM/sとする。運転継続時間tが400hであれば原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分vは0.03NLM/sとし、運転継続時間tが長くなるにしたがって原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分vを短くする。
【0111】
図6(b)に示すように累積運転時間Tが3000hであれば原料供給量増加速度の累積運転時間による寄与分Vは0.08NLM/sとする。累積運転時間Tが4000hであれば原料供給量増加速度の累積運転時間による寄与分Vは0.04NLM/sとし、累積運転時間Tが長くなるにしたがって、原料供給量増加速度の累積運転時間による寄与分Vを小さくする。
【0112】
原料供給量増加速度は原料供給量増加速度の運転継続時間による寄与分v+原料供給量
増加速度の累積運転時間による寄与分Vで設定され運転継続時間tが200hで累積運転時間Tが3000hなら7、0.05NLM/s+0.08NLM/s=0.13NLM/sとなる。運転継続時間tが400hで累積運転時間Tが4000hなら、0.03NLM/s+0.04NLM/s=0.07NLM/sとなる。設定した速度で原料供給量の増加を開始する。
【0113】
以上の動作により、運転継続時間tや累積運転時間Tが長くなるとともに、原料供給量増加速度を小さくすることで、CO除去器11における選択酸化反応量の上昇が緩やかになり、CO除去器11の温度上昇が緩やかになる。
【0114】
したがって、CO除去器11に運転継続時間tと累積運転時間Tが長くなるほど、多く吸着したアンモニアが急激に脱離することを防ぎ、原料供給量増加時の水素含有ガス中のアンモニア濃度は、徐々に高くなるが、アンモニア濃度のピーク値を低くすることができる。
【0115】
そのため、高濃度アンモニアによる燃料電池151の被毒を抑制することができ、発電を維持することができる信頼性の高い燃料電池システム200を提供することができる。
【0116】
上記の説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。