特許第6435554号(P6435554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435554
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20181203BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20181203BHJP
   H01B 17/58 20060101ALN20181203BHJP
【FI】
   B60R16/02 620C
   B60J5/04 Z
   B60R16/02 622
   B60R16/02 623T
   !H01B17/58 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-150916(P2015-150916)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-30442(P2017-30442A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武志
(72)【発明者】
【氏名】萩原 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】浦 雅史
(72)【発明者】
【氏名】美才治 健
(72)【発明者】
【氏名】楠山 一博
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347282(JP,A)
【文献】 特開2004−136711(JP,A)
【文献】 特開2005−343329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60J 5/04
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとから中空状に構成されたドア本体部の内側に車両のボディ側の電気部品とドア側の電気部品とを電気的に接続するワイヤハーネスが通される車両のドア構造であって、
前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間がドア用シール部材によりシールされた状態で、両パネルの端縁が連結されており、
前記ワイヤハーネスが前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間からドア本体部の内側に通されており、
前記ドア用シール部材は、前記アウタパネルとインナパネルとのいずれか一方に固定されており、
前記ワイヤハーネスは、前記アウタパネルとインナパネルとのいずれか他方に固定された支持部材により支持されて前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間に通されており、
前記支持部材には、前記ワイヤハーネスを覆った状態で前記ドア用シール部材と面接触する板状カバーが設けられている車両のドア構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のドア構造であって、
前記支持部材には、前記ワイヤハーネスが通される可撓性の管状部材が接続されており、
前記管状部材の先端には、車両のボディに接続されるフランジ部が設けられている車両のドア構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のドア構造であって、
前記ワイヤハーネスを支持する支持部材と板状カバーとは別部品であり、
前記板状カバーは、前記支持部材に対して爪と爪受け部との係合作用により取付けられる構成である車両のドア構造。
【請求項4】
請求項3に記載された車両のドア構造であって、
前記板カバーには、その板カバーを前記支持部材に対して取付ける際に、把持できるように構成された取っ手部が設けられている車両のドア構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された車両のドア構造であって、
前記ドア本体部のアウタパネルとインナパネルとは、異なる素材により構成されている車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタパネルとインナパネルとから中空状に構成されたドア本体部の内側に車両のボディ側の電気部品とドア側の電気部品とを電気的に接続するワイヤハーネスが通される車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドア本体部内には、一般的に、窓ガラスの昇降等に使用されるモータ等の複数の電気部品が収納されており、それらの電気部品が車両のボディ側の電気部品とワイヤハーネスによって電気的に接続されている。前記ワイヤハーネス103は、図10に示すように、ドアグロメット110によって保護された状態で車両のボディ105とドア本体部100の間で配線されている(特許文献1参照)。ドアグロメット110は、車両のボディ105とドア本体部100間でワイヤハーネス103を保護する可撓性のハーネス保護管部114と、ドア本体部100のインナパネル102の表側でそのインナパネル102に沿ってワイヤハーネス103を保護するグロメット本体部116とから構成されている。そして、グロメット本体部116によってインナパネル102の室内側パネル面102rまで導かれたワイヤハーネス103は、その室内側パネル面102rの開口(図示省略)からドア本体部100内に挿入されて電気部品に接続される。
【0003】
ここで、ドアグロメット110のグロメット本体部116は、ワイヤハーネス103をインナパネル102の表面に沿って室内側パネル面102rまで導く際、ドア本体部100とボディ105のドア開口部(図示省略)間をシールするウエザストリップ107の下側に通されている。即ち、ウエザストリップ107は、インナパネル102の表面に対して若干突出した状態のグロメット本体部116の表面上を横切った状態で、インナパネル102の表面、及びグロメット本体部116の表面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−042048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両のドア構造では、ウエザストリップ107は、グロメット本体部116の表面上を横切った状態でインナパネル102の表面、及びグロメット本体部116の表面に固定されている。即ち、ウエザストリップ107は、インナパネル102の表面とグロメット本体部116間の段差を跨いだ状態で固定されている。このため、前記段差とウエザストリップ107との間で隙間が生じ易くなり、ドア本体部100とボディ105のドア開口部間のシール性が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ウエザストリップよりも外側でワイヤハーネスをドア本体部の内側に通せるようにして、ドア(ドア本体部)とボディのドア開口部間のシールを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、アウタパネルとインナパネルとから中空状に構成されたドア本体部の内側に車両のボディ側の電気部品とドア側の電気部品とを電気的に接続するワイヤハーネスが通される車両のドア構造であって、前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間がドア用シール部材によりシールされた状態で、両パネルの端縁が連結されており、前記ワイヤハーネスが前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間からドア本体部の内側に通されており、前記ドア用シール部材は、前記アウタパネルとインナパネルとのいずれか一方に固定されており、 前記ワイヤハーネスは、前記アウタパネルとインナパネルとのいずれか他方に固定された支持部材により支持されて前記アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間に通されており、前記支持部材には、前記ワイヤハーネスを覆った状態で前記ドア用シール部材と面接触する板状カバーが設けられている
【0008】
本発明によると、ドア本体部は、アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間がドア用シール部材によりシールされた状態で、両パネルの端縁が連結されることにより構成される。そして、ワイヤハーネスは、アウタパネルの端縁とインナパネルの端縁間からドア本体部の内側に通されている。このため、ドア(ドア本体部)とボディのドア開口部間をシールするウエザストリップよりも外側でワイヤハーネスをドア本体部の内側に通せるようになる。このため、ドア本体部においてウエザストリップを固定するインナパネルの表面に段差等が生じなくなり、ドア(ドア本体部)とボディのドア開口部間のシールが向上する。
また、アウタパネルとインナパネル間に通されるワイヤハーネスを支持する支持部材には、ワイヤハーネスを覆った状態でドア用シール部材と面接触する板状カバーが固定されている。このため、ドア用シール部材とワイヤハーネスとが直接的に接触することがない。したがって、ドアの開閉動作により支持部材とワイヤハーネスとが若干動いたとしても、ワイヤハーネスがドア用シール部材に対して擦れることがなくなる。なお、前記支持部材、及び板状カバーとは、ドアの開閉動作によりワイヤハーネスと共に動くため、両者間で擦れは生じ難い。また、ドア用シール部材に対して板状カバーが面接触する構成のため、ドア用シール部材に対してワイヤハーネスが直接的に接触する場合と比較して接触状態が一定化して、シール品質にばらつきが生じない。
【0011】
請求項2の発明によると、支持部材には、ワイヤハーネスが通される可撓性の管状部材が接続されており、前記管状部材の先端には、車両のボディに接続されるフランジ部が設けられている。これにより、ドアと車両のボディ間でワイヤハーネスが露出しない。
【0012】
請求項3の発明によると、ワイヤハーネスを支持する支持部材と板状カバーとは別部品であり、前記板状カバーは、前記支持部材に対して爪と爪受け部との係合作用により取付けられる構成である。このため、ワイヤハーネスを支持部材によって支持した後で、前記支持部材に対して板状カバーを取付けることができる。
【0013】
請求項4の発明によると、板カバーには、その板カバーを支持部材に対して取付ける際に、把持できるように構成された取っ手部が設けられている。このため、支持部材に対して板状カバーを取付けるための作業を実施し易くなる。
【0014】
請求項5の発明によると、ドア本体部のアウタパネルとインナパネルとは、異なる素材により構成されている。このため、例えば、アウタパネルを鋼板により成形し、インナパネルをカーボン繊維パネル等により成形することでドア本体部の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ウエザストリップよりも外側でワイヤハーネスをドア本体部の内側に通せるようになり、ドア(ドア本体部)とボディのドア開口部間のシールが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る車両の右フロントドアの前部を前方内側(左側)から見た斜視図である。
図2】前記右フロントドアの前部を室内側から見た側面図である。
図3】前記右フロントドアの前部の平断面図(図2のIII-III矢視断面図)である。
図4】前記右フロントドアの前部の平断面図(図2のIV-IV矢視断面図)である。
図5図4のV矢視拡大図である。
図6図4の外形図である。
図7】ドアグロメットの外形斜視図である。
図8】ドアグロメットの外形斜視図である。
図9図8のIX矢視拡大図である。
図10】従来の車両におけるドアの前部を前方内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のドア構造について説明する。本実施形態に係る車両のドア構造は、車両のフロントドアに本発明を適用したものである。ここで、左右のフロントドアは同一構造で左右対称に形成されているため、代表して右側のフロントドア(以下、フロントドア10という)について説明する。なお、図中に示す前後左右及び上下は、フロントドアの前後左右及び上下に対応している。
【0018】
<フロントドア10の概要ついて>
フロントドア10は、図1に示すように、ドア本体部10mと、そのドア本体部10mの上側に設けられた窓枠部(図示省略)とから構成されており、前記窓枠部に窓ガラス11が上下スライド可能な状態で嵌め込まれている。また、ドア本体部10mの内部には、図3図4の平断面図に示すように、窓ガラス11を上下スライド可能にガイドするガイド部材11gが設けられている。ドア本体部10mは、鋼板製のアウタパネル12と炭素繊維製のインナパネル14とから構成されている。
【0019】
アウタパネル12は、図3図4に示すように、フロントドア10の意匠面を構成する表面パネル12eと、表面パネル12eを裏側から覆う枠状の補強用パネル200とからなり、表面パネル12eの周縁フランジ部12fと補強用パネル200の周縁フランジ部201とが互いにスポット溶接等により接合されている。
【0020】
アウタパネル12の補強用パネル200は、図3に示すように、表面パネル12eにほぼ平行な平坦板部205と、平坦板部205の外周縁に形成された傾斜部204と、傾斜部204の外周縁に形成された外周側平坦板部203と、外周側平坦板部203の外周縁に緩やかな傾斜部202を介して形成された前記周縁フランジ部201とから構成されている。そして、アウタパネル12の補強用パネル200の前端位置には、図1に示すように、外周側平坦板部203から傾斜部204の位置に上下一対のヒンジ機構15のドア側ヒンジ15mがボルト止めされている。そして、前記ヒンジ機構15のボディ側ヒンジ15sがボディ20のドア開口部21(図3参照)の前端縁を構成するフロントピラー25の外側面にボルト止めされている。なお、フロントピラー25は、図3図4に示すように、フロントドア10と共に車両の意匠面を構成するボディアウタパネル23によって覆われている。
【0021】
これにより、フロントドア10は、車両のボディ20に対してドア開口部21を閉じる全閉位置とドア開口部21を全開にする全開位置との間で水平回動が可能になる。表面パネル12eと補強用パネル200とからなるアウタパネル12は、図1図2に示すように、炭素繊維製のインナパネル14によって室内側から覆われている。そして、アウタパネル12を構成する補強用パネル200の平坦板部205の端縁には、図3図4に示すように、インナパネル14に覆われる位置にドア用ウエザストリップ13が固定されている。ドア用ウエザストリップ13は、アウタパネル12の補強用パネル200とインナパネル14間をシールする部材であり、補強用パネル200の平坦板部205の端縁に沿って周方向に延びるように設置されている。
【0022】
インナパネル14は、上記したように、アウタパネル12を室内側から覆うパネルであり、図2図3に示すように、アウタパネル12(補強用パネル200)の傾斜部204を覆う外周側傾斜部141と、ドア用ウエザストリップ13に当接する段差部142と、その段差部142よりも内周側に形成された内周側傾斜部143と、その内周側傾斜部143よりも内周側に形成された平坦板部145とから構成されている。そして、インナパネル14の内周側傾斜部143には、図1図3に示すように、フロントドア10(ドア本体部10m)とボディ20のドア開口部21(フロントピラー25)間をシールするウエザストリップ17が固定されている。ウエザストリップ17は、図1に示すように、インナパネル14の内周側傾斜部143に沿って周方向に延びるように設置されている。
【0023】
インナパネル14は、図1図3等に示すように、アウタパネル12を室内側から覆った状態で、そのインナパネルの外周側傾斜部141が補強用パネル200の傾斜部204に対してボルト止めされることでアウタパネル12に連結される。これにより、ドア本体部10mには、アウタパネル12とインナパネル14とが連結されることによって内部空間が形成され、その内部空間に窓ガラス11を上下動させる機構、及びモータやドア補強部材等が収納される。また、ドア本体部10mのインナパネル14の室内側は、図3図4に示すように、内装パネル16によって覆われている。内装パネル16には、フロントドア10が閉じられたときに、ボディ20のドア開口部21の周縁に固定されたボディ側ウエザストリップ28が面接触可能に構成されている。
【0024】
ドア本体部10mのインナパネル14の前端における高さ方向中央部には、図1に示すように、そのインナパネル14の外周側傾斜部141から段差部142にかけて切欠部14c(点線参照)が形成されている。切欠部14cは、ドア本体部10mの内部にワイヤハーネスWを引き込むための開口を形成するためのものであり、その切欠部14cの位置にドアグロメット30のグロメット本体部320が固定されている。
【0025】
<ドアグロメット30の概要について>
ドアグロメット30は、車両のボディ20とフロントドア10のドア本体部10m間でワイヤハーネスWを保護する部材である。ドアグロメット30は、図7図8に示すように、樹脂製のグロメット本体部320と、そのグロメット本体部320の管部321に同軸に接続されたゴム製のハーネス保護管部33と、そのハーネス保護管部33の先端に設けられた樹脂製の蓋状フランジ部35とから構成されている。
【0026】
<グロメット本体部320について>
ドアグロメット30のグロメット本体部320は、図1図2に示すように、インナパネル14の切欠部14cの周縁に固定される部分であり、ワイヤハーネスWをアウタパネル12とインナパネル14間からドア本体部10mの内部に導けるように構成されている。グロメット本体部320は、図7図9に示すように、インナパネル14の切欠部14cの周縁を覆う波形フランジ部322と、波形フランジ部322の表面中央で前方に突出形成された管部321と、その管部321と連通した状態で波形フランジ部322の裏側から後方に突出するハーネス支持溝部324とから構成されている。
【0027】
波形フランジ部322は、インナパネル14の切欠部14cの周縁形状に合わせて波形に形成されている。波形フランジ部322の裏側端縁には、インナパネル14の切欠部14cの周縁に形成された係合穴(図示省略)と係合可能に構成されたクリップ部322kが設けられている。このため、図4図5に示すように、グロメット本体部320のハーネス支持溝部324をインナパネル14の切欠部14cからドア本体部10mの内側に挿入した状態で、波形フランジ部322のクリップ部322kを切欠部14cの周縁の係合穴と係合させることで、グロメット本体部320をインナパネル14に固定することができる。
【0028】
グロメット本体部320のハーネス支持溝部324には、図5図6に示すように、アウタパネル12(補強用パネル200)のドア用ウエザストリップ13に対応する位置に板状カバー37が取付けられる。板状カバー37は、図4図5に示すように、ハーネス支持溝部324に収納されたワイヤハーネスWがドア用ウエザストリップ13と接触しないように、ワイヤハーネスWを覆う部材である。板状カバー37は、ワイヤハーネスWを覆った状態で、ドア用ウエザストリップ13に面接触可能なように構成されている。板状カバー37は、図9に示すように、ドア用ウエザストリップ13が面接触する平坦面37fを備える椅子状に形成されている。そして、板状カバー37の平坦面37fの幅方向両側には、ハーネス支持溝部324に形成された爪324tが係合可能に構成された爪受け部37yが設けられている。また、板状カバー37の平坦面37fの後側には、板状カバー37をハーネス支持溝部324に取付ける際に把持できる取っ手部37hが設けられている。
【0029】
<ハーネス保護管部33及び蓋状フランジ部35について>
ドアグロメット30のハーネス保護管部33は、ワイヤハーネスWが通されるゴム製のフレキシブルチューブである。ハーネス保護管部33は、図7図8に示すように、基端部がグロメット本体部320の管部321に同軸に接続されており、先端部が蓋状フランジ部35に接続されている。ここで、ドアグロメット30のグロメット本体部320とハーネス保護管部33と蓋状フランジ部35とは成形型を使用して一体成形される。そして、ドアグロメット30の蓋状フランジ部35が、図3図4に示すように、車両のボディ20のフロントピラー25に設けられた配線コネクタ25cに連結されている。即ち、ドアグロメット30を使用することで、ワイヤハーネスWを露出させることなくボディ20とフロントドア10間で配線できるようになる。即ち、ドアグロメット30のグロメット本体部320が本発明の支持部材に相当し、ハーネス保護管部33が本発明の管状部材に相当する。また、蓋状フランジ部35が本発明のフランジ部に相当する。
【0030】
<ワイヤハーネスWの配線手順について>
先ず、インナパネル14の切欠部14cの周縁にドアグロメット30のグロメット本体部320が固定され、ワイヤハーネスWがドアグロメット30のグロメット本体部320からハーネス保護管部33、蓋状フランジ部35に通される。なお、ワイヤハーネスWをドアグロメット30に通した後で、グロメット本体部320をインナパネル14に固定することも可能である。次に、板状カバー37を爪受け部37yと爪324tとの係合作用によりグロメット本体部320のハーネス支持溝部324に取付けることで、ワイヤハーネスWが板状カバー37に覆われる。次に、インナパネル14がアウタパネル12の補強用パネル200に連結される。これにより、アウタパネル12の補強用パネル200に固定されているドア用ウエザストリップ13が、図3図5に示すように、インナパネル14の段差部142、及び板状カバー37の平坦面37fに面接触する。この結果、アウタパネル12とインナパネル14間のシール性が確保される。次に、ドアグロメット30の蓋状フランジ部35、及びワイヤハーネスWが、図3等に示すように、車両のボディ20(フロントピラー25)の配線コネクタ25cに連結されることで、ワイヤハーネスWの配線が終了する。このように、ドア用ウエザストリップ13が本発明のドア用シール部材に相当する。
【0031】
<本実施形態に係る車両のドア構造の長所について>
本実施形態に係る車両のドア構造によると、ドア本体部10mは、アウタパネル12の端縁とインナパネル14の端縁間がドア用ウエザストリップ13(ドア用シール部材)によりシールされた状態で、両パネル12,14の端縁が連結されることにより構成される。そして、ワイヤハーネスWは、アウタパネル12の端縁とインナパネル14の端縁間からドア本体部10mの内側に通されている。このため、フロントドア10(ドア本体部10m)とボディ20のドア開口部21間をシールするウエザストリップ17よりも外側でワイヤハーネスWをドア本体部10mの内側に通せるようになる。このため、ドア本体部10mにおいてウエザストリップ17を固定するインナパネル14の表面に段差等が生じなくなり、フロントドア10(ドア本体部10m)とボディ20のドア開口部21間のシールが向上する。
【0032】
ここで、ドア用ウエザストリップ13は、アウタパネル12(補強用パネル200)に固定されている。また、ワイヤハーネスWはインナパネル14に固定されたグロメット本体部320(支持部材)により支持されてアウタパネル12の端縁とインナパネル14の端縁間に通されている。そして、グロメット本体部320(ハーネス支持溝部324)には、ワイヤハーネスWを覆った状態でドア用ウエザストリップ13と面接触する板状カバー37が設けられている。このため、ドア用ウエザストリップ13とワイヤハーネスWとが直接的に接触することがない。したがって、フロントドア10の開閉動作によりグロメット本体部320とワイヤハーネスWとが若干動いたとしても、ワイヤハーネスWがドア用ウエザストリップ13に対して擦れることがなくなる。また、ドア用ウエザストリップ13に対して板状カバー37が面接触する構成のため、ドア用ウエザストリップ13に対してワイヤハーネスWが直接的に接触する場合と比較して接触状態が一定化して、シール品質にばらつきが生じない。また、アウタパネル12を鋼板により成形し、インナパネル14をカーボン繊維パネル等により成形することでドア本体部10mの軽量化を図ることができる。
【0033】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、板状カバー37をグロメット本体部320と別部品にし、板状カバー37をワイヤハーネスWの配線後にグロメット本体部320のハーネス支持溝部324に取付ける例を示した。しかし、板状カバー37をグロメット本体部320のハーネス支持溝部324と一体成形することも可能である。また、本実施形態では、ドア本体部10mを鋼板製のアウタパネル12と炭素繊維製のインナパネル14とから構成する例を示した。しかし、インナパネル14を鋼板や樹脂板により形成することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
10・・・・・フロントドア
10m・・・・ドア本体部
12・・・・・アウタパネル
13・・・・・ドア用ウエザストリップ(ドア用シール部材)
14・・・・・インナパネル
17・・・・・ウエザストリップ
20・・・・・ボディ
21・・・・・ドア開口部
30・・・・・ドアグロメット
320・・・・グロメット本体部(支持部材)
324t・・・爪
33・・・・・ハーネス保護管部(管状部材)
35・・・・・蓋状フランジ部(フランジ部)
37・・・・・板状カバー
37y・・・・爪受け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10