(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドアまたは車体のいずれか一方に設けられ、前記ドアまたは前記車体のいずれか他方に設けられるストライカが前記ドアの閉移動に伴って進入するストライカ進入溝が、片面に形成されたボディと、
進入した前記ストライカに噛合してオープン位置からラッチ位置に回転可能なラッチと、
前記ラッチ位置にある前記ラッチに係合可能な係合位置の方向へ、前記ラッチとの係合が解除されるリリース位置から回転するように付勢され、前記ラッチの回転に連動して前記係合位置から前記リリース位置に回転し、付勢力により前記リリース位置から前記係合位置に回転して前記ラッチに係合することで前記ドアを閉位置に拘束するポールと、
弾性部材からなる緩衝体と、を備え、
前記ボディは、前記ストライカ進入溝が形成された面と反対側に開口部を有し、該開口部から挿入された前記ポールを収容するポール組付孔を有し、
前記緩衝体は、前記リリース位置から前記係合位置に回転するポールと当接することを特徴とする車両用ドアラッチ装置。
前記ポールは、前記ドアに設けられたハンドルの開操作に基づいて、当該ポールを前記係合位置から前記リリース位置に回転させることにより前記ラッチとの係合を解除するレバーを有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアラッチ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明に係る車両用ドアラッチ装置の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0012】
(実施の形態)
以下、本実施の形態のドアラッチ装置を
図1〜
図12に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアラッチ装置の斜視図である。なお、以下の説明では、ドアラッチ装置100を車両に取り付けた状態において、
図1中の左方を「車内側(I)」、右方を「車外側(O)」、上方を「上方(U)」、下方を「下方(D)」、図面奥側を「前方(F)」、図面手前側を「後方(R)」として説明する。これらの方向の定義は説明の便宜上のものであり、ドアラッチ装置100の向きは、その取付車種や取付位置等によって変化することは勿論である。
【0013】
本実施の形態のドアラッチ装置100は、自動車の右側のフロントサイドドア(以下ドアと略称する)内の後端部に取り付けられるもので、車体側のストライカに係合することにより、ドアを閉扉状態に保持するための噛合部アッセンブリ200を、噛合部アッセンブリ200を操作するための操作部アッセンブリ300に組み付けて、噛合部アッセンブリ200と操作部アッセンブリ300とを一体化することによって構成されている。
【0014】
まず、噛合部アッセンブリ200の構成を説明する。
図2は、
図1に示す車両用ドアラッチ装置の噛合部アッセンブリの斜視図である。
図3は、
図2に示す噛合部アッセンブリの構成を示す分解斜視図である。
【0015】
図3に示すように、噛合部アッセンブリ200は、ボディ201と、ボディ201の後方側に固定されるカバープレート202と、ボディ201の前方側に固定されるバックプレート203と、後方側から挿通されるラッチ軸204と、ラッチ軸204に回転可能に支持されるラッチ205と、ラッチ205に係合することでドアを閉位置に拘束するポール206と、ラッチ205とポール206との係合を解除するアウトサイドレバー207と、進入したストライカおよびポール206と当接する緩衝体としてのバンパラバー208とを備える。
【0016】
つぎに、噛合部アッセンブリ200の各部材について詳細に説明する。
【0017】
ボディ201は、たとえば合成樹脂からなり、車体に設けられたストライカがドアの閉移動に伴って進入するストライカ進入溝201aが、片面(後方側)に形成されている。
図4は、
図2に示す噛合部アッセンブリのボディの前面側の斜視図である。
図4にハッチングで示すように、ボディ201は、ストライカ進入溝201aが形成された面と反対側(紙面手前側である前方側)に開口部を有し、その開口部から挿入されたポール206を収容するポール組付孔201bを有する。また、同様に
図4にハッチングで示すように、ボディ201は、ストライカ進入溝201aが形成された面と反対側(紙面手前側である前方側)に開口部を有し、その開口部から挿入されたバンパラバー208を収容する緩衝体組付孔としてのバンパラバー組付孔201cを有する。バンパラバー組付孔201cは、ボディ201の後方側に前後方向に延伸するように形成された舌片部201caと、ボディ201の前方側に突出した下端部201cbとを有する。
【0018】
カバープレート202は、たとえば各種の金属からなり、ストライカが進入可能な切欠部202aを有し、ボディ201のストライカ進入溝201aが形成された後方側の面に組み付けられる。
【0019】
バックプレート203は、たとえば各種の金属からなり、カバープレート202とボディ201を介装してラッチ軸204とボルトV1とにより固定される。その結果、噛合部アッセンブリ200が一体化される。また、バックプレート203は、ボディ201の枢軸201dの先端に形成された十字突起を挿入される十字孔203aを有する。
【0020】
ラッチ軸204は、カバープレート202の軸孔202b、ラッチ205の軸孔205a、およびボディ201の軸孔201eを後方側からこの順に貫通し、先端部の小径軸部204aがバックプレート203の軸孔203bに実質的に回転不能に圧入される。
【0021】
ラッチ205は、ラッチ軸204に枢支されてボディ201における後方側の内部に収容され、進入したストライカに噛合してオープン位置から半ドア位置を経てラッチ位置にラッチ軸204の軸回りに回転する。また、ラッチ205は、前方側に突出した係合部205bを有する。
【0022】
図5は、
図2に示す噛合部アッセンブリの内部構成を示す前面図である。
図5は、ラッチ位置にあるラッチ205を図示している。ラッチ205は、
図5に示すように係合部205bがスプリング209と係合することにより、ラッチ位置からオープン位置(
図5において反時計回りの方向)に回転するように付勢されている。
【0023】
図3に戻り、ポール206は、ボディ201に形成されたポール組付孔201bに組付けられる。さらに、ポール206は、前部の軸部206aがバックプレート203の軸孔203cに、後部の軸部206bがカバープレート202の軸孔202cに挿通され、回動可能に枢支される。
【0024】
つぎに、
図5は、係合位置にあるポール206を図示している。ポール206は、スプリング210によりラッチ位置にあるラッチ205に係合可能な係合位置の方向へ、ラッチ205との係合が解除されるリリース位置から回転するように付勢される。すなわち、ポール206は、
図5において時計回りの方向に付勢されている。
【0025】
さらに、ポール206は、ドアに設けられたハンドルの開操作に基づいて、後述する操作部アッセンブリ300のリリース部材302が当接してポール206を係合位置からリリース位置に回転させることによりラッチ205との係合を解除するリリースレバー206cを有する。
【0026】
図6は、
図2に示す噛合部アッセンブリの内部構成を示す後面図である。
図6は、係合位置にあるポール206を図示しており、ポール206は反時計回りの方向に付勢されている。その結果、ポール206は、ラッチ205の回転に連動して係合位置からリリース位置に回転し、付勢力によりリリース位置から係合位置に回転してラッチ205に係合することでドアを閉位置に拘束する。また、ポール206は、ストライカSに噛合したラッチ205と係合可能な係合部206dを有する。
【0027】
図3に戻り、アウトサイドレバー207は、ボディ201の枢軸201dに挿通される軸孔207aaを有する第1レバー207aと、この第1レバー207aの前方側に重合し、ボディ201の枢軸201dに挿通される軸孔207baを有する第2レバー207bとの2分割構造となっている。そして、第1レバー207aと第2レバー207bとは、それぞれラッチ軸204と平行をなすようにボディ201に前向きに一体形成した枢軸201dがバックプレート203の十字孔203aに挿入されることにより、枢軸201dに回転可能に支持される。
【0028】
第1レバー207aは、
図5に示すように、スプリング211によって、解除位置から待機位置(
図5において時計回りの方向)に回転するように付勢されている。
【0029】
図7は、
図2に示す噛合部アッセンブリの第1レバーと第2レバーとの位置関係を示す前面図である。
図7に示すように、第2レバー207bは、スプリング211によって、解除位置から待機位置(
図7において時計回りの方向)に回転するように付勢されている。
【0030】
第1レバー207aと第2レバー207bとは、第2レバー207bの車内側に突出した爪状の係合部207bbが第1レバー207aの前後方向に延伸する係合部207abの下面と当接することにより、
図7に示す待機位置からリリース位置(
図7において時計回りの方向)へ一体的に連動する。
【0031】
第2レバー207bの車外側の端部は、ドアのアウタパネルに設けたアウトサイドハンドル(図示略)に、ロッド等の操作力伝達部材(図示略)を介して連結される。アウトサイドハンドルを開操作すると、第1レバー207aの車内側の端部207acに連結された後述する操作部アッセンブリ300のリリース部材302を介して、ポール206のリリースレバー206cに開操作に基づいた入力を行い、ドアを開くことができる。
【0032】
すなわち、アウトサイドレバー207は、ドアに設けられ車体の外部からドアを開けるアウトサイドハンドルの開操作に基づいて、解除位置から待機位置に回転することにより、連動するポール206をリリース位置から係合位置へ回転させ、ラッチ205とポール206との係合を解除させることができる。
【0033】
バンパラバー208は、ゴム等の弾性部材からなる。
図8は、
図2に示す噛合部アッセンブリのバンパラバーの後方側の斜視図である。
図8に示すように、バンパラバー208は、進入したストライカと当接するストライカ当接部208aと、ボディ201に嵌合する突出部208bと、ポール206と当接するポール当接部208cとを有する。
【0034】
バンパラバー208は、
図4の紙面手前方向である前方側からボディ201のバンパラバー組付孔201cに組み付けられる。このとき、ストライカ当接部208aは、舌片部201caの上部の空間に、その一部がボディ201のストライカ進入溝201a側に露出するように嵌入される。また、突出部208bは、舌片部201caと下端部201cbとの間に嵌入される。そして、ポール当接部208cは、下端部201cbの下部に位置し、ボディ201の前方側に形成された空間に収容される。
【0035】
図9は、
図2に示す噛合部アッセンブリのバンパラバーの位置を示す後面図である。
図9に示すように、バンパラバー208のストライカ当接部208aは、ボディ201のストライカ進入溝201aの最奥部に配置される。そして、
図9の矢印A11のように進入したストライカSは、舌片部201caにガイドされ、ストライカ当接部208aと当接する。このとき、ストライカSの衝撃によるバンパラバー208の上下方向の変形は、舌片部201caと突出部208bとにより防止される。また、ストライカ当接部208aの車外側の端部は、下方に延伸しており(
図8参照)、この延伸部が舌片部201caの先端と当接することにより、バンパラバー208の車内外方向の位置ずれが防止されている。
【0036】
さらに、
図5に示すように、バンパラバー208は、リリース位置から係合位置に回転するポール206とバンパラバー208の下端部に形成されたポール当接部208cとが当接し、ポール206の付勢力による衝撃を吸収する。
【0037】
図5に戻り、スプリング209は、一方の端部209aがボディ201の紙面手前側である前方側の突部201f、他方の端部209bがラッチ205の係合部205bにそれぞれ掛止され、ラッチ205を付勢する。
【0038】
スプリング210は、一方の端部210aがボディ201の突部201g、他方の端部210bがポール206の係合部206eにそれぞれ掛止され、ポール206を付勢する。
【0039】
スプリング211は、一方の端部211aがボディ201の突部201g、他方の端部211bが第1レバー207aの係合部207adにそれぞれ掛止され、第1レバー207aおよび第2レバー207bを付勢する。
【0040】
図3に戻り、ボルトV1は、ドアのインナパネルの取付孔(図示略)、カバープレート202の貫通孔202d、およびボディ201の貫通孔201hをこの順に貫通し、バックプレート203のねじ孔203dに螺合される。
【0041】
ボルトV2、ボルトV3は、ドアのインナパネルの取付孔(図示略)を貫通し、それぞれカバープレート202のねじ孔202e、ねじ孔202fに螺合される。噛合部アッセンブリ200は、これらのボルトV1〜ボルトV3により、操作部アッセンブリ300とともにドアのインナパネルに固定される。この際、ボルトV1がバックプレート203のねじ孔203dにも螺合することにより、ボディ201の裏面にバックプレート203が固定される。
【0042】
つぎに、噛合部アッセンブリ200の動作を説明する。
【0043】
はじめに、ドアを開状態から閉状態とするときの噛合部アッセンブリ200の動作について説明する。ドアの閉操作が行われ、
図6の矢印A12に示すように、ストライカSがボディ201のストライカ進入溝201aに進入してくると、ラッチ205が矢印A13のようにオープン位置から半ドア位置を経て
図6に図示するラッチ位置に回転する。このとき、ボディ201のストライカ進入溝201aの最奥部において、ストライカSとバンパラバー208とが当接する。
【0044】
さらに、ラッチ205に当接してポール206の係合部206dが押下され、ポール206が矢印A14の方向に回転する。その後、ポール206は、スプリング210により付勢された方向(
図6において反時計回りの方向)に回転し、ラッチ205の係合部205cとポール206の係合部206dとが係合する。このストライカSとラッチ205とが噛合し、ラッチ205の係合部205cとポール206の係合部206dとが係合した状態がドアの閉状態である。
【0045】
つぎに、ドアを閉状態から開状態とするときの噛合部アッセンブリ200の動作について説明する。ドアの閉状態において、ポール206のリリースレバー206cにハンドルの開操作に基づいた入力が行われると、
図6の矢印A14に示すようにポール206が係合位置からリリース位置に回転し、ラッチ205の係合部205cとポール206の係合部206dとの係合が解除される。すると、付勢力によりラッチ205がラッチ位置からオープン位置に回転し、ストライカSとラッチ205との噛合が解除される。この状態から、さらにドアを車外方向に開扉操作するとドアが開状態となる。なお、ポール206は、ハンドルの開操作に基づいた入力が解除されると、スプリング210による付勢力によってリリース位置から係合位置に回転して戻り、
図5のようにバンパラバー208に当接する。
【0046】
つぎに、操作部アッセンブリ300の構成について説明する。操作部アッセンブリ300は、アンロック状態にあるときには、ドアの車外側のアウトサイドハンドルまたはドアの車内側のインサイドハンドルを開操作することにより、噛合部アッセンブリ200のラッチ205とストライカとの係合を解除してドアを開扉可能とし、また、ロック状態にあるときには、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルを開操作しても、ドアを開扉不能とする機能を有する。
【0047】
図10は、
図1に示す車両用ドアラッチ装置の操作部アッセンブリの構成を示す分解斜視図である。
図10に示すように、操作部アッセンブリ300は、噛合部アッセンブリ200とともに、合成樹脂よりなる平面視ほぼL字状のケーシング301に組み込まれる。
【0048】
操作部アッセンブリ300は、上述したアウトサイドレバー207における第1レバー207aと係合するリリース部材302と、リリース部材302と係合しカムサイレンサー303を嵌着され、ロック位置およびアンロック位置に切り替え可能なロックレバー304と、リング305を嵌挿されたキーアクセス306と連動し、ロックレバー304をロック位置およびアンロック位置に切り替え可能なスライドレバー307と、ロックおよびアンロック操作用のモータ308と、モータ308の回転軸に固着されたウォーム308aおよびカムサイレンサー303と噛み合いロックレバー304をロック位置およびアンロック位置に切り替え可能なウォームホイール309と、カプラ310、ラッチ205の位置検出を行う半ドア検出スイッチ311、ロックレバー304の位置検出を行うロック/アンロック検出スイッチ312、スライドレバー307の位置検出を行うキースイッチ313を連結するようにして、一体としてケーシング301に組み付けられるスイッチプレート314と、インサイドハンドルの開操作によりドアを開扉可能とするインサイドレバー315と、リリース部材302と係合するキャンセルレバー316とを備える。
【0049】
そして、噛合部アッセンブリ200および操作部アッセンブリ300は、ケーシング301と、ケーシング301の車内側の開口部を覆い、ケーシング301にねじ317で固定される合成樹脂製のカバー部材318と、カバー部材318に車外方向から嵌着されてカプラ310の外周を保護するカプラクッション319と、上方から嵌着されてケース内への雨水等の浸入を防止するための合成樹脂製の防水カバー320と、カバー部材318の車内側側面に貼着され、車内側への雨水等の浸入を防止する防水シール321とによって構成されるケース内に収容される。
【0050】
つぎに、操作部アッセンブリ300の各部材について詳細に説明する。
【0051】
ケーシング301は、たとえば合成樹脂からなり、噛合部アッセンブリ200を嵌着され、操作部アッセンブリ300の操作機構を組み付けられる。ケーシング301は、車内側が開口された操作部アッセンブリ収容部301aと、この操作部アッセンブリ収容部301aにおける後端から車外方向へほぼ直角をなすように延出し操作部アッセンブリ収容部301aと連続する噛合部アッセンブリ収容部301bとを備える。
【0052】
リリース部材302は、連結部302aにアウトサイドレバー207の第1レバー207aにおける車内側の端部207acを連結され、アウトサイドレバー207と連動する。また、リリース部材302は、アンロック状態におけるインサイドハンドルの開操作により回転するインサイドレバー315と当接して連動する。
【0053】
カムサイレンサー303は、上方側中央に形成された溝がウォームホイール309の車外側に形成され係合部(図示略)と係合する。
【0054】
ロックレバー304は、車内外方向を向く軸筒304aを、操作部アッセンブリ収容部301aの側面に突設された車内側を向く支持軸301aaに、車内側より嵌合することにより、操作部アッセンブリ収容部301a内に組み込まれている。ロックレバー304は、ターンオーバースプリング322により、ロック位置にあるときはロック位置の方向に、アンロック位置にあるときはアンロック位置の方向にそれぞれ付勢されている。
【0055】
さらに、ロックレバー304は、軸筒304aにスプリング323を挿通され、その上からリリース部材302が組み付けられる。その結果、リリース部材302は、スプリング323によりポール206との係合が解除される方向(
図10において下方側)に付勢される。
【0056】
また、ロックレバー304は、スライドレバー307やモータ308の動作により、リリース部材302がポール206と係合しないロック位置とリリース部材302がポール206と係合するアンロック位置とに切り替えられる。
【0057】
キーアクセス306は、ドアのアウタパネルに設けられたキーシリンダ(図示略)のロックおよびアンロック操作により回転する。
【0058】
スライドレバー307は、操作部アッセンブリ収容部301a内に車内側より組み込まれる。そして、スライドレバー307は、キーアクセス306の回転に連動して上下方向に移動し、ロックレバー304をロック位置およびアンロック位置に切り替える。
【0059】
モータ308は、スイッチプレート314の略中央部に形成された開口部314aに底部が嵌合するように、スイッチプレート314に載置される。そして、モータ308は、回転軸に固着されたウォーム308aがウォームホイール309と噛合して正逆回転し、ロックレバー304をロック位置およびアンロック位置に切り替える。
【0060】
ウォームホイール309は、中心の軸孔309aを、操作部アッセンブリ収容部301aの中央部に突設された車内側を向く支持軸301abに嵌合することにより、操作部アッセンブリ収容部301a内に車内側より組み込まれる。そして、ウォームホイール309は、外周に形成された歯がモータ308のウォーム308aと噛合し、車外側に形成された係合部がカムサイレンサー303と噛合する。その結果、ウォームホイール309は、モータ308の回転によりロックレバー304をロック位置およびアンロック位置に切り替える。
【0061】
インサイドレバー315は、上端部の軸孔315aを、操作部アッセンブリ収容部301aの後方側の端部の側面に突設された車内側を向きスプリング324を挿通された支持軸301acに嵌合することにより、操作部アッセンブリ収容部301a内に車内側より組み込まれる。そして、インサイドレバー315は、スプリング324によりインサイドハンドルによる開操作を待機状態に戻す方向(
図10において反時計回りの方向)に回転するように付勢される。インサイドレバー315は、アンロック状態にあるとき、インサイドハンドルの開操作によりドアを開扉可能とする。
【0062】
キャンセルレバー316は、リリース部材302と係合する。キャンセルレバー316によって、ドアを開けた状態でロックノブをロック操作してロック状態にし、そのままの状態でドアを閉じると、ドアを閉じた時点でロック状態はキャンセルされてアンロック状態に切り替えられ、かつ、ドアを開けた状態でロックノブをロック操作してロック状態として、アウトサイドハンドルを開操作しながらドアを閉じた場合には、ロック状態はキャンセルされない。
【0063】
つぎに、操作部アッセンブリ300の動作を説明する。
【0064】
はじめに、ドアがロック状態、すなわちロックレバー304がロック位置にある場合について説明する。
図11は、
図10に示す操作部アッセンブリのロック状態の動作を説明するための図である。
図11は、ドアラッチ装置100を紙面手前側である車内側から視た図である。
【0065】
まず、
図11に示すように、インサイドハンドルにドアの開操作が行われると、インサイドレバー315の係合部315bが矢印A21の方向に引っ張られる。すなわち、インサイドレバー315は、軸孔315aを軸心として軸回りに回転する方向に力を加えられる。このとき、インサイドレバー315の係合部315cとロックレバー304の係合部304bとが当接し、インサイドレバー315は、回転しない。したがって、ドアの閉状態が維持される。
【0066】
つぎに、アウトサイドハンドルにドアの開操作が行われると、アウトサイドレバー207の第2レバー207bに連動してアウトサイドレバー207の第1レバー207aが矢印A22の方向に回転する。このとき、第1レバー207aの端部207acとリリース部材302の連結部302aとが連結されているため、第1レバー207aの回転にあわせてリリース部材302が連動する。ここで、ロック状態においてリリース部材302が矢印A23のように上方側に移動しても、リリース部材302の係合部302bは、ポール206のリリースレバー206cと当接せずに空振りするため、ドアの閉状態が維持される。
【0067】
以上から、操作部アッセンブリ300は、ロック状態において、インサイドハンドルまたはアウトサイドハンドルを開操作しても、ドアの閉状態が維持されるように動作する。
【0068】
つぎに、ドアがアンロック状態、すなわちロックレバー304がアンロック位置にある場合について説明する。
図12は、
図10に示す操作部アッセンブリのアンロック状態の動作を説明するための図である。
図12は、ドアラッチ装置100の車内側を後方側から視た斜視図である。
【0069】
まず、ドアのアンロック状態において、ロックレバー304は、矢印A24のようにロック位置から時計回りの方向に回転したアンロック位置に位置する。これと連動して、リリース部材302は、矢印A25のようにロック状態より後方側に位置している。
【0070】
ここで、
図12に示すように、インサイドハンドルにドアの開操作が行われると、インサイドレバー315の係合部315bが矢印A26の方向に引っ張られる。すると、インサイドレバー315は、矢印A27のように軸孔315aを軸心として軸回りに回転する。このとき、インサイドレバー315の係合部315dとリリース部材302の下方側の端部とが当接し、矢印A28のようにリリース部材302が上方側に移動する。さらに、アンロック状態では、リリース部材302の係合部302bとポール206のリリースレバー206cとが当接するため、矢印A29のようにポール206が回転する。その結果、ポール206とラッチ205との係合が解除され、矢印A30のようにラッチ205が回転し、ラッチ205とストライカとの噛合が解除される。そして、この状態からドアを車外方向に開扉操作するとドアが開状態となる。
【0071】
つぎに、アウトサイドハンドルにドアの開操作が行われると、アウトサイドレバー207の第2レバー207bは、矢印A31の方向に引っ張られる。すると第2レバー207bと連動してアウトサイドレバー207の第1レバー207aが矢印A32の方向に回転する。このとき、第1レバー207aの端部207acとリリース部材302の連結部302aとが連結されているため、第1レバー207aの回転にあわせて、矢印A28のようにリリース部材302が上方側に連動する。そして、リリース部材302の係合部302bは、ポール206のリリースレバー206cと当接するため、矢印A29のようにポール206が回転する。その結果、ポール206とラッチ205との係合が解除され、矢印A30のようにラッチ205が回転し、ラッチ205とストライカとの噛合が解除される。そして、この状態からドアを車外方向に開扉操作するとドアが開状態となる。
【0072】
以上から、操作部アッセンブリ300は、アンロック状態において、インサイドハンドルまたはアウトサイドハンドルを開操作すると、ドアを開状態とするように動作する。
【0073】
つぎに、噛合部アッセンブリ200を組み立てる工程を説明する。はじめに、カバープレート202の軸孔202bにラッチ軸204を挿通し、その状態でカバープレート202の前方側が上方を向くようにして自動組み立てライン等にセットする。その上から、ラッチ205を軸孔205aがラッチ軸204に挿通するように重合する。さらにその上から、ボディ201を軸孔201eがラッチ軸204に挿通するように重合する。
【0074】
つぎに、バンパラバー208をボディ201の前方側のバンパラバー組付孔201cに挿入する。このとき、バンパラバー208は、ストライカ当接部208aと突出部208bとポール当接部208cとが、ボディ201の舌片部201caと突出部208bとに互いに嵌合するように組み付けられる。さらに、スプリング209を、一方の端部209aがボディ201の前方側の突部201f、他方の端部209bがラッチ205の係合部205bにそれぞれ掛止されるように組み付ける。
【0075】
次いで、ポール206をボディ201の前方側のポール組付孔201bに挿入する。さらに、スプリング210を、一方の端部210aがボディ201の突部201g、他方の端部210bがポール206の係合部206eにそれぞれ掛止されるように組み付ける。
【0076】
その後、スプリング211を、端部211aがボディ201の突部201gに掛止されるように設置し、その上から第1レバー207aを、スプリング211の端部211bが第1レバー207aの係合部207adに掛止され、かつ軸孔207aaが枢軸201dに挿通するように重ねて組み付ける。さらに、第2レバー207bを、軸孔207baが枢軸201dに挿通するように重合する。
【0077】
そして、バックプレート203を、軸孔203bにラッチ軸204の小径軸部204aを回転不能に圧入し、かつねじ孔203dがカバープレート202の貫通孔202dおよびボディ201の貫通孔201hと重なるように重合する。その後、ボルトV1をバックプレート203に螺合することにより、噛合部アッセンブリ200が組み立てられる。
【0078】
ここで、ストライカの衝撃を吸収する衝撃吸収部材は、ストライカ進入溝の最奥部に配置されている必要がある。そのため、従来衝撃吸収部材は、ボディのストライカ進入溝が形成された後方側から組み付けられていた。その結果、衝撃吸収部材をボディの後方側から組み付け、その後ボディを裏返す工程が必要であった。
【0079】
しかしながら、ドアラッチ装置100のボディ201は、前方側に開口部を有するバンパラバー組付孔201cを有している。このとき、バンパラバー208をバンパラバー組付孔201cに挿入すると、
図9に示すように、バンパラバー208の一部がストライカ進入溝201aの最深部に位置するので、バンパラバー208のストライカ当接部208aとストライカSとが当接する。その結果、ドアラッチ装置100では、バンパラバー208を紙面手前側である前方側から組み付けることができる。すなわち、ボディを裏返す工程が不要となり、各部材を一方向(前方側)から組み付けることができる。したがって、ドアラッチ装置100は、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置である。
【0080】
さらに、従来ストライカと当接して進入したストライカによる衝撃を吸収する部材と、リリース位置から係合位置に回転するポールと当接してポールの付勢力による衝撃を吸収する部材とは別体として構成されていた。そのため、これらの部材をそれぞれ個別に組み付ける工程が必要であった。
【0081】
しかしながら、ドアラッチ装置100において、ストライカSと当接するストライカ当接部208aとポール206と当接するポール当接部208cとが、バンパラバー208として一体として構成されている。その結果、ドアラッチ装置100では、ストライカSによる衝撃を吸収する部材と、ポール206による衝撃を吸収する部材とを一度に組み付けることができる。したがって、ドアラッチ装置100は、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置である。
【0082】
また、従来ラッチと係合してラッチを閉状態に拘束する拘束部材は、ストライカSと噛合するラッチと係合する必要があるため、ボディのストライカ進入溝が形成された後方側に組み付けられていた。その結果、拘束部材をボディの後方側から組み付け、その後ボディを裏返す工程が必要であった。
【0083】
しかしながら、ドアラッチ装置100のボディ201は、前方側に開口部を有するポール組付孔201bを有している。その結果、ドアラッチ装置100では、ポール206を紙面手前側である前方側から組み付けることができる。すなわち、ボディを裏返す工程が不要となり、各部材を一方向(前方側)から組み付けることができる。したがって、ドアラッチ装置100は、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置である。
【0084】
また、従来拘束部材は、上述のようにボディの後方側に組み付けられ、ドアに設けられたハンドルの開操作に基づいてストライカとラッチとの係合を解除する解除レバーは、操作部アッセンブリのリリース部材と係合するため、ボディの前方側に組み付けられていた。すなわち、従来拘束部材と解除レバーとは、別体として構成されていた。さらに、従来拘束部材と解除レバーとは、拘束部材の軸を解除レバーの軸孔に挿通してカシメることにより接合されていた。
【0085】
しかしながら、ドアラッチ装置100のボディ201は、ポール組付孔201bを有する。その結果、ドアラッチ装置100では、拘束部材と解除レバーと一度に組み付けることができる。さらに、拘束部材と解除レバーとが一体として構成されているため、これらをカシメて接合する工程が不要である。したがって、ドアラッチ装置100は、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置である。
【0086】
なお、従来カシメて接合する工程として、たとえば回転カシメが用いられていたが、この工程は短くても1秒弱を要し、他の工程と比較して時間のかかる工程である。そのため、全体で数秒程度のドアラッチ装置の組立工程において、このようなカシメる工程の回数が多いと、組立効率が低下する。したがって、カシメる工程を削減することは、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置を実現するために顕著な効果を奏する。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係るドアラッチ装置100は、ボディを裏返す工程が不要であり、一方向から組み付けることができ、部材の数が削減され、カシメる工程が削減されているため、組立効率が向上した車両用ドアラッチ装置である。
【0088】
なお、上記実施の形態において、車両用ドアラッチ装置がドア側に設けられており、ストライカが車体側に設けられているものとして説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明は、車両用ドアラッチ装置が車体側に設けられており、ストライカがドア側に設けられている場合にも適応可能である。
【0089】
また、上記実施の形態において、車両用ドアラッチ装置は、自動車のフロントサイドドアに取り付けられるものとして説明したが、本発明の車両用ドアラッチ装置は、リアドアにも取り付け可能であることは勿論である。
【0090】
また、上記実施の形態において、車両用ドアラッチ装置は、自動車の右側のドアに取り付けられるものとして説明したが、本発明の車両用ドアラッチ装置を自動車の左側のドアに取り付ける場合には、車両前後方向に沿った平面に対して左右対称に構成すればよい。
【0091】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。