特許第6435596号(P6435596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435596振動素子、振動デバイス、電子機器、および移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435596
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】振動素子、振動デバイス、電子機器、および移動体
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/24 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   H03H9/24 B
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-166004(P2013-166004)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-35734(P2015-35734A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】石井 昌宏
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−279001(JP,A)
【文献】 特開2005−345404(JP,A)
【文献】 特開2013−005072(JP,A)
【文献】 特開2012−257141(JP,A)
【文献】 特開2013−192013(JP,A)
【文献】 特開昭56−158520(JP,A)
【文献】 特開2005−229143(JP,A)
【文献】 特開2010−263317(JP,A)
【文献】 特開2012−147347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00−9/135
H03H 9/15−9/24
G01C 19/56
H01L 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
第1面および前記第1面と表裏関係にある第2面を含み、前記基部から延設方向に並んで延設されている第1駆動腕および第2駆動腕と、を備え、
前記第1駆動腕および前記第2駆動腕のそれぞれは、
前記第1面側のみに有底の溝部と、前記第2面側のみに圧電体を含む駆動部と、を備え、前記延設方向と直交する断面形状が、前記延設方向と前記第1面の法線方向とに直交する幅方向の中心を通る仮想中心線に対し非対称な断面形状を含んでおり、
前記第1駆動腕の前記溝部は、前記第1面の前記法線方向からの平面視において、前記第1駆動腕の前記仮想中心線に対して第1の方向に偏った位置、かつ前記第1駆動腕の前記仮想中心線を含む位置に配置され、かつ前記第1駆動腕の前記溝部の深さは前記第1駆動腕の厚さの1/2より大きく、
前記第2駆動腕の前記溝部は、前記平面視において、前記第2駆動腕の前記仮想中心線に対して前記第1の方向と反対の方向に偏った位置、かつ前記第2駆動腕の前記仮想中心線を含む位置に配置され、かつ前記第2駆動腕の前記溝部の深さは前記第2駆動腕の厚さの1/2より大きいことを特徴とする振動素子。
【請求項2】
前記駆動部は、前記圧電体に積層され、かつ前記幅方向に並んで設けられた複数の電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
前記部は、前記基部に設けられていないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動素子。
【請求項4】
前記第1駆動腕と前記第2駆動腕との間に、前記基部から延設されている調整腕を備え、
前記調整腕は、前記第1面および前記第2面の法線方向であるZ軸方向に関して、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕の屈曲方向と逆方向に屈曲振動して振動漏れを調整することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動素子と、
前記振動素子が収納されている収納容器と、を含むことを特徴とする振動デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動素子を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動素子を備えていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子、およびそれを用いた振動デバイス、電子機器、並びに移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や移動体としての自動車などに用いられている水晶発振器、あるいは角速度センサーなどの振動デバイスに用いられる振動素子としては、次のようなものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている振動素子は、複数の振動腕を備えている音叉型の振動素子であり、Z軸方向に厚みを有する基部と、基部からY軸方向に延出し、X軸方向に並んで設けられている2つの振動腕とを有し、振動効率を高めるため表面および裏面の各々に掘り込まれた溝部が形成されている。そして、各振動腕(駆動腕)には、励振用の電極が形成されている。このような振動素子は、振動腕に形成された前述の電極に電圧を印加することにより、2つの振動腕をX軸方向に面内振動させる。
【0004】
また、例えば特許文献2に開示されている振動素子は、角速度を検出する振動素子(ジャイロ素子)であり、複数の振動腕(駆動腕)を備える音叉型の振動素子である。この振動素子は、基部と、基部から互いに並んでY軸方向に延出し、X軸方向に並んで設けられている2つの振動腕とを有している。各振動腕は、Z軸方向に対向する表面および裏面の各々に形成された溝を有しており、その横断面形状が「S」字状となっている。各振動腕をこのような形状とすることにより、機械的強度を維持しつつQ値の変動を抑制することができる。
【0005】
また、特許文献2の振動素子では、各振動腕の横断面形状が左右非対称(X軸方向の中央線に関して非対称)となっているため、各振動腕をZ軸方向に振動させると、X軸方向の振動が発生し、結果として、Z軸方向およびX軸方向が合成された方向に斜め振動することとなる。このような斜め振動は、振動腕の振動バランスを向上させ、振動素子の振動特性を向上させる効果がある。
【0006】
上述のような振動素子は、例えば水晶、あるいはシリコンなどで構成された板状の基板を所望の形状に加工することにより形成することができる。具体的には、基板の両面に、振動素子の平面視形状に対応するマスクを形成し、これらマスクを介して基板をエッチングすることにより振動素子を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−216924号公報
【特許文献2】国際公開第2010/047115号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の振動素子では、振動腕(駆動腕)の表面および裏面の各々から溝を掘り込むことが必要である。また、特許文献2に記載の振動素子(ジャイロ素子)では、振動腕(駆動腕)の形状を「S」字状の横断面とするために、表面および裏面に溝を形成することが必要である。特に特許文献2に開示されている振動素子のような振動腕を「S」字状の横断面とするには、溝を深く形成し、かつ振動腕(振動素子)の小型化のために溝幅を抑えなければならなかった。このように、溝を、その幅を抑えつつ深く形成することは、加工が困難であり、例えば、表面に形成する溝が裏面に貫通してしまったり、側面に開放して側面が欠損してしまったりすることがあった。また、表面および裏面の各々から溝を掘り込み、且つ表面および裏面に電極あるいは圧電体を形成するため、加工工程が複雑となり、加えて加工の工数が増加してしまう。このように、従来の振動素子においては、表裏面からの溝を有する振動腕の形成に多くの工数がかかるとともに加工が困難であるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る振動素子は、基部と、第1面および前記第1面と表裏関係にある第2面を含み、前記基部から延設されている駆動腕と、前記第1面に設けられている有底の段差部と、前記第2面に、圧電体を含み設けられている駆動部と、を備え、前記駆動腕は、前記駆動腕の延設する方向と直交する幅方向の中心を通る第1の中心線に対し、非対称な断面形状を含み設けられていることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、簡単な加工により、斜め振動させることが可能な駆動腕(振動腕)有する振動素子を得ることができる。この斜め振動とは、駆動腕の延在方向を含む平面で互いに交差する第1軸および第2軸と、この2つの軸に交差する第3軸のうちの2つの軸方向の振動成分を持った振動である。斜め振動する駆動腕を有することにより、振動漏れが抑制され、本適用例にかかる振動素子は、振動特性に優れたものとなる。また、加工が簡単であるため歩留まりが向上する。また、駆動腕を低インピーダンスで斜め振動をさせることができる。詳述すると、振動素子を構成する駆動腕の段差部が第1面に設けられている。即ち、段差部は、一方面から掘り込むことで形成することができるため、第1の中心線に対し非対称な断面形状を含む段差部を容易に形成することができる。また、第1面の裏面である第2面に圧電体を含む駆動部が設けられている。第2面は、段差部が設けられていない平面であり駆動部を容易に形成することができる。したがって、本構成によれば、一方面(第1面)に段差部が設けられ、裏面(第2面)に駆動部が設けられている駆動腕を容易に形成することが可能となり、安定した斜め振動を継続可能な振動素子を安価に提供することが可能となる。
【0012】
[適用例2]上記適用例に記載の振動素子において、前記駆動部は、前記幅方向に分割されて設けられていることが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、駆動腕の延在方向を含む平面方向に駆動腕が振動する、所謂面内振動のインピーダンスを低下させることが可能となり、容易に面内振動を得ることができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に記載の振動素子において、前記段差部は、前記駆動腕に設けられており、前記基部に達していないことが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、外部からの衝撃などが加わった場合は、駆動腕と基部との接続部に大きな応力が生じるが、本例の構成では、段差部が設けられていることによって生じる駆動腕の断面面積の小さい部分が、基部との接続部に存在しない。したがって、耐衝撃性が向上する振動素子を得ることが可能となる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に記載の振動素子において、前記段差部は、前記幅方向の両側に前記駆動腕の壁部を有する溝部であることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、段差部が溝部であり、両側に壁部が存在するため駆動腕の形状が安定すると共に剛性が高まり、これらによって、駆動腕のより安定した振動を得ることが可能となる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に記載の振動素子において、前記基部から延出されている検出腕を備えていることが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、駆動腕が有している2つの軸方向の振動成分の変化を、検出腕によって検出することにより、互いに交差する2軸の各軸まわりの角速度を検出することが可能となる。換言すれば、一つの振動素子によって、互いに交差する複数軸の各軸まわりの角速度を検出することが可能となる。
【0020】
[適用例6]上記適用例に記載の振動素子において、前記駆動腕は、並設されている第1駆動腕と第2駆動腕とを含み、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕には、厚さ方向の中心を通る中心線に向かって互いに同方向に偏って配置されている前記段差部が設けられていることが好ましい。
【0021】
本適用例によれば、第1駆動腕および第2駆動腕のそれぞれの段差部が、第2の中心線に向かって互いに同方向に偏って配置されているため、第1駆動腕および第2駆動腕のそれぞれの斜め振動の方向が振動を打ち消す方向になり、振動漏れなどが生じ難くなり、これによって振動特性を向上させた振動素子を得ることが可能となる。
【0022】
[適用例7]上記適用例に記載の振動素子において、前記駆動腕は一対で配設されており、一対の前記駆動腕と前記駆動腕との間に、前記基部から延出されている調整腕を備えていることが好ましい。
【0023】
本適用例によれば、一対の駆動腕は、一方の駆動腕および他方の駆動腕と、調整腕とがZ軸方向の反対側に屈曲振動するため、一対の駆動腕の屈曲振動のうちのZ軸方向成分の振動と、調整腕のZ軸方向の振動とが釣り合って相殺(キャンセル)される。そのため、調整腕を設けることで効果的に振動漏れを防止することができる。
【0024】
[適用例8]本適用例に係る振動デバイスは、上記適用例のいずれか一例に記載の振動素子と、前記振動素子が収納されている収納容器と、を含むことを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、安定した斜め振動の継続が可能であり、且つコスト低減を実現できる振動デバイスを得ることが可能となる。
【0026】
[適用例9]本適用例に係る電子機器は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動素子を備えていることを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、安定した斜め振動の継続が可能であり、且つコスト低減を実現できる振動素子を備えているため、より安定した特性と低コストを実現した電子機器を得ることが可能となる。
【0028】
[適用例10]本適用例に係る移動体は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動素子を備えていることを特徴とする。
【0029】
本適用例によれば、安定した斜め振動の継続が可能であり、且つコスト低減を実現できる振動素子を備えているため、より安定した特性と低コストを実現した移動体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図。
図2図1に示す振動デバイスに備えられた振動素子を示す平面図(上面図)。
図3図3(a)は図2中のA−A線断面図であり、図3(b)は駆動部の変形例を示す同様の断面図。
図4図2に示す振動素子の動作を説明するための断面図であり、図4(a)は図3(a)の駆動部に対応し、図4(b)は図3(b)の駆動部に対応する。
図5図2に示す振動素子の変形例を示す断面図。
図6】本発明の第2実施形態に係る振動デバイスを示す断面図。
図7図6に示す振動デバイスに備えられた振動素子としてのジャイロ素子を示す平面図(上面図)。
図8図8(a)は図7中のB−B線断面図であり、図8(b)は駆動部の変形例を示す同様の断面図。
図9図7に示すジャイロ素子の変形例を示す断面図。
図10図7に示すジャイロ素子の動作を説明するための断面図であり、図10(a)は図8(a)の構成に対応し、図10(b)は図8(b)の構成に対応する。
図11】Z軸まわりの角速度が加わった際のジャイロ素子の振動を示す平面図。
図12】Y軸まわりの角速度が加わった際のジャイロ素子の振動を示す平面図。
図13】段差部の変形例を示す断面図。
図14】電子機器の一例としてのモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
図15】電子機器の一例としての携帯電話機の構成を示す斜視図。
図16】電子機器の一例としてのデジタルスチールカメラの構成を示す斜視図。
図17】移動体の一例としての自動車の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の振動素子、振動デバイス、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0032】
<振動デバイス>
(第1実施形態)
図1図5を用い、本発明の第1実施形態に係る振動デバイスとしての振動子について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図であり、図2は、図1に示す振動デバイスに備えられた振動素子を示す平面図(上面図)であり、図3(a)は駆動部の構成を示す図2中のA−A線断面図であり、図3(b)は駆動部の変形例を示す同様の断面図である。また、図4は、図2に示す振動素子の振動腕の動作を説明するための断面図であり、図4(a)は図3(a)の駆動部に対応し、図4(b)は図3(b)の駆動部に対応する図である。また、図5は、図2に示す振動素子の変形例を示す断面図である。なお、各図では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸としてX軸(第1方向)、Y軸(第2方向)およびZ軸(第3方向)を図示している。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向(第1方向)」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向(第2方向)」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向(第3方向)」とも言う。また、以下では、X軸とY軸とで規定される平面を「XY」平面とも言い、Y軸とZ軸とで規定される平面を「YZ平面」とも言い、X軸とZ軸とで規定される平面を「XZ平面」とも言う。また、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0033】
図1に示すように、振動デバイスとしての振動子1は、振動素子2と、この振動素子2を収納するパッケージ9とを有する。パッケージ9は、ベース基板91、枠部材92および蓋部材93で構成された内部空間Sを有しており、この内部空間に、振動素子2が収納されている。振動素子2は、固定材96によってベース基板91に接続、固定されている。振動子1は、所定の周波数(共振周波数)で振動する電気信号を発生させる機能を有している。以下、振動子1を構成する各部位を順次詳細に説明する。
【0034】
(振動素子)
まず、図2および図3(a)に沿って振動素子2について説明する。図2に示すように、振動素子2は、3脚音叉型の振動素子である。また、本実施形態の振動素子2は、所定の周波数(共振周波数)で振動する電気信号を発生させることができる。振動素子2は、素子基板3に形成された基部4および基部4から延出する3本の振動腕(駆動腕5,6、および調整腕7)と、この素子基板3上に形成された複数の電極とを有している。
【0035】
素子基板3は、例えばシリコン基板を素材として形成されている。素子基板3には、圧電体としての圧電体層13(図3(a)参照)を含む駆動部が設けられており、この駆動部を用いて腕部(駆動腕5,6)を振動させる。このように、シリコン基板などを素子基板3の素材として用いることでエッチングにより高い寸法精度で素子基板3を形成することができる。なお、素子基板3は、例えば、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、チタン酸バリウム等の圧電体材料で構成されていてもよい。この場合でも、エッチングにより高い寸法精度で素子基板3を形成することができる。
【0036】
(基部)
図2に示すように、基部4は、XY平面に広がりを有し、Z軸方向に厚さを有する板状をなしている。また、基部4は、振動腕(駆動腕5,6、および調整腕7)と概ね等しい厚さとなるように形成されている。このような基部4には、3つの振動腕が接続されている。これら振動腕のうち、駆動腕5,6は、振動素子2を駆動するための駆動用腕として機能し、調整腕7は、駆動腕5,6のZ方向の振動を相殺するための調整用腕として機能する。
【0037】
調整腕7は、基部4のX軸方向での中央部に配置され、基部4のY軸方向の端部4aからY軸方向に延伸されている。また、駆動腕5および駆動腕6は、互いの間に調整腕7が位置するように基部4のX軸方向での両端側に配置され、基部4のY軸方向の端部4aからY軸方向に延伸されている。駆動腕5,6および調整腕7は、互いに並行するように基部4からそれぞれY軸方向に延出している。また、駆動腕5,6および調整腕7は、略等間隔でX軸方向に並んで離間配置されている。また、駆動腕5,6および調整腕7は、それぞれ、長手形状をなし、その端部が固定端となり、先端部が自由端となる。
【0038】
(駆動腕)
図2および図3(a)に示すように、駆動腕5は、XY平面で構成された第1面(上面)10と、XY平面で構成されるとともに第1面と表裏の関係となる第2面(下面)11とを有し、第1面10と第2面11とを繋ぐ側面20,21を有した構成となっている。駆動腕5には、第1面10から掘り込まれた段差部としての有底の溝部8aが設けられている。溝部8aの基部4側の端である一方端16は、基部4の端部4aに達しないように配置されている。このように溝部8aの一方端16を配置することで、溝部8aを設けることによって生じる駆動腕5の断面面積の小さい部分が、駆動腕5と基部4との接続部分に存在せず、駆動腕5と基部4との接続部分における駆動腕5の強度低下を生じない。これにより振動素子2の耐衝撃性を向上させることができる。また、溝部8aの先端部側の端である他方端18は、駆動腕5の先端に達しない位置、換言すれば先端部と距離を有する位置に配置されている。
【0039】
また、溝部8aは、溝部8aの一方の側壁と側面20との間隔より溝部8aの他の側壁と側面21との間隔が大きくなるように配置されている。即ち、溝部8aは、中心Qに対し調整腕7側に偏って設けられている。換言すれば、駆動腕5は、駆動腕5の延在方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)の中心Qを通る第1の中心線P1に対し、非対称な断面形状を含み設けられている。また、駆動腕5は、Z軸方向(厚さ方向)の中心Qを通る第2の中心線P2に対しY軸方向の断面形状が非対称となる。そのため、後述するように、駆動腕5をX軸方向(面内方向)に振動させると、この振動によりZ軸方向(面外方向)の振動が新たに励起され、結果として、駆動腕5をX軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する方向、言い換えればX軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した方向に、屈曲振動(以下、単に「斜め振動」とも言う。)させることができる。
【0040】
同様に、駆動腕6は、XY平面で構成された第1面(上面)10と、XY平面で構成されるとともに第1面と表裏の関係となる第2面(下面)11とを有し、第1面10と第2面11とを繋ぐ側面22,23を有した構成となっている。駆動腕6には、第1面10から掘り込まれた段差部としての有底の溝部8bが設けられている。溝部8bの基部4側の端である一方端17は、基部4の端部4aに達しないように配置されている。このように溝部8bの一方端17を配置することで、溝部8bを設けることによって生じる駆動腕6の断面面積の小さい部分が、駆動腕6と基部4との接続部分に存在せず、駆動腕6と基部4との接続部分の強度低下を生じない。これにより振動素子2の耐衝撃性を向上させることができる。また、溝部8bの先端部側の端である他方端19は、駆動腕6の先端に達しない位置、換言すれば先端部と距離を有する位置に配置されている。
【0041】
なお、溝部8a,8bの他方端18,19は、駆動腕5,6の先端に達しない位置例で説明したがこれに限らず、溝部8a,8bが駆動腕5,6の先端に達し、他方端が開放端となっている構成であってもよい。
【0042】
また、溝部8bは、溝部8bの一方の側壁と側面22との間隔より溝部8bの他の側壁と側面23との間隔が大きくなるように配置されている。即ち、溝部8bは、中心Qに対し調整腕7側に偏って設けられている。換言すれば、駆動腕6は、駆動腕6の延在方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)の中心Qを通る第1の中心線P1に対し、非対称な断面形状を含み設けられている。また、駆動腕6は、Z軸方向の中心Qを通る第2の中心線P2に対しY軸方向の断面形状が非対称となる。そのため、後述するように、駆動腕6をX軸方向(面内方向)に振動させると、この振動によりZ軸方向(面外方向)の振動が新たに励起され、結果として、駆動腕6をX軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する方向、言い換えればX軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した方向に、屈曲振動(以下、単に「斜め振動」とも言う。)させることができる。
【0043】
上述したように、溝部8a,8bは、駆動腕5と駆動腕6との幅方向(X軸方向)の中心を通る中心線に向かって同方向に偏って配置されている。なお、上述した溝部8a,8bは、素子基板3を形成すると同様に、エッチングなどの簡便な方法で、且つ高い寸法精度で形成することができる。
【0044】
図3(a)に示すように、本実施形態の振動素子2では、駆動腕5および駆動腕6の第1面10と表裏の関係となる第2面11に、圧電体としての圧電体層13を含む駆動部が設けられている。駆動部は、駆動腕5および駆動腕6の各第2面11に、第1電極層12、圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)13、第2電極層14がこの順で積層されて構成されている。圧電体層13を含む駆動部は、通電されることにより伸縮して駆動腕5および駆動腕6を斜め振動させる機能を有する。このように、圧電体層13を含む駆動部を用いて駆動腕5および駆動腕6を振動させる場合には、素子基板3を、例えばシリコン基板で構成することができる。
【0045】
第1電極層12、および第2電極層14の構成材料としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料を用いることができる。
【0046】
中でも、第1電極層12および第2電極層14の構成材料としては、金を主材料とする金属(金、金合金)、白金を用いるのが好ましく、金を主材料とする金属(特に金)を用いるのがより好ましい。Auは、導電性に優れ(電気抵抗が小さく)、酸化に対する耐性に優れているため、電極材料として好適である。また、AuはPtに比しエッチングにより容易にパターニングすることができる。
【0047】
なお、例えば、第1電極層12および第2電極層14を金で構成し、素子基板3との密着性が低い場合は、第1電極層12および第2電極層14と素子基板3との間に、Ti、Cr等で構成された下地層を設けるのが好ましい。これにより、下地層と駆動腕5,6との密着性、および、下地層と第1電極層12との密着性をそれぞれ優れたものとすることができる。その結果、第1電極層12が駆動腕5,6から剥離するのを防止し、振動素子2の信頼性を優れたものとすることができる。
【0048】
圧電体層13の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等が挙げられるが、AIN、ZnOを用いることが好適である。
【0049】
(調整腕)
調整腕7は、その長手方向(延出方向であるY軸方向)の全域にわたって、厚さ(Z軸方向の長さ)および幅(X軸方向の長さ)が一定となっている。このような調整腕7は、駆動腕5、および駆動腕6の振動に合わせて振動する。
【0050】
(駆動腕、調整腕の動作)
図4(a)も併せて参照しながら駆動腕5,6および調整腕7の動作について説明する。
上述のような構成では、電源によって第1電極層12と、第2電極層14との間に交番電圧を印加すると、各圧電体層13がY軸方向に伸長または収縮し、ある一定の周波数(共振周波数)で駆動腕5および駆動腕6がZ軸方向に屈曲振動する。このとき、駆動腕5および駆動腕6には、Z軸方向の振動によってその形状に起因したX軸方向の新たな屈曲振動が励起される。この新たな屈曲振動により、駆動腕5および駆動腕6は、X軸方向への屈曲振動とZ軸方向への屈曲振動とが合成されることにより斜め振動するが、駆動腕5および駆動腕6の断面形状がXY平面およびYZ平面に関して非対称であるため、図4(a)に矢印L1,L2で示すようなZ軸およびX軸に対して傾斜した方向に振動する(すなわち斜め振動する)。また、駆動腕5および駆動腕6は、ZY平面に関して対称的に屈曲振動する。
【0051】
一方の調整腕7は、このような駆動腕5および駆動腕6の屈曲振動と同時に、図4(a)に示す矢印L3の方向であるZ軸方向に、かつ駆動腕5および駆動腕6のZ軸方向の振動とは反対方向に屈曲振動する。
【0052】
このような振動においては、駆動腕5および駆動腕6は、YZ平面に関して対称的に振動するため、駆動腕5の屈曲振動のうちのX軸方向成分の振動と、駆動腕6の屈曲振動のうちのX軸方向成分の振動とが釣り合って相殺(キャンセル)される。そのため、調整腕7には、X軸方向の振動が伝達されず、調整腕7は、X軸方向にほとんど振動しない。また、駆動腕5および駆動腕6と調整腕7とがZ軸方向の反対側に屈曲振動するため、駆動腕5および駆動腕6の屈曲振動のうちのZ軸方向成分の振動と、調整腕7のZ軸方向の振動とが釣り合って相殺(キャンセル)される。そのため、振動素子2によれば、効果的に、振動漏れを防止することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、斜め振動する2つの駆動腕5および駆動腕6が基部4の両端部(X軸方向の両端部近傍)に位置しているため、面外方向(Z軸方向)および面内方向(X軸方向)ともにバランシングされる(バランスよく駆動することができる)ので、より安定して駆動腕5、駆動腕6および調整腕7を振動させることができる。そのため、振動漏れをより効果的に防止することができる。また、振動素子2では、調整腕7を有しているため、駆動腕5および駆動腕6のZ軸方向の振動(並進運動)が自動的に相殺されるため、回転モーメントも相殺されて小さくなる。
【0054】
(駆動部の変形例)
なお、上述では、図3(a)に示すような、駆動腕5および駆動腕6の各第2面11に、第1電極層12、圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)13、第2電極層14がこの順で積層されている駆動部の構成で説明したが、図3(b)に示すような駆動部の構成であってもよい。以下に詳細に説明する。
【0055】
図3(b)に示す駆動部は、駆動腕5および駆動腕6の各第2面11に、2つに分割された第1電極層としての第3電極12aおよび第4電極12b、圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)13、2つに分割された第2電極層としての第5電極14aおよび第6電極14bがこの順で積層されている。このような構成の駆動部においては、第3電極12a、圧電体層13、および第5電極14aを含む駆動部と、第4電極12b、圧電体層13、および第6電極14bを含む駆動部とに、電源によって交番電圧を印加すると、第3電極12aに対応する圧電体層13および第4電極12bに対応する圧電体層13とが、Y軸方向に伸長または収縮し、ある一定の周波数(共振周波数)で駆動腕5および駆動腕6がX軸方向に屈曲振動する。なお、駆動腕5および駆動腕6の断面形状が、上述の実施形態と同様にXY平面およびYZ平面に関して非対称であるため、図4(b)に矢印L4,L5で示すようなZ軸およびX軸に対して傾斜した方向に振動する(すなわち斜め振動する)。また、駆動腕5および駆動腕6は、ZY平面に関して対称的に屈曲振動する。
【0056】
上述した駆動腕5および駆動腕6は、図4に示すように、面内方向(X軸方向)にも面外方向(Z軸方向)にも振動させることができる。この時、駆動方向と振動方向が近い程低インピーダンスとなるので、駆動方向を選択することができる。すなわち、よりZ軸に近い方向に振動させる場合には図4(a)の構成、よりX軸方向に近い方向に振動させる場合には図4(b)の構成の方が低インピーダンスとなる。
【0057】
なお、上述の実施形態では、調整腕7に圧電体素子(駆動部)を設けず、駆動腕5および駆動腕6の振動につられて調整腕7が振動する構成について説明したが、調整腕7に圧電体素子(駆動部)を設けて、圧電体素子の伸縮によって調整腕7をZ軸方向に振動させてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、駆動腕5、駆動腕6、および調整腕の長手方向の全域にわたって、厚さ(Z軸方向の長さ)および幅(X軸方向の長さ)が一定となっている例で説明したが、図5に示すように、それぞれの先端部に駆動腕5より幅広の幅広部(ハンマーヘッド)55を設けてもよい。なお、図5においては、駆動腕5を代表例として示しており、他の駆動腕、あるいは調整腕に幅広部(ハンマーヘッド)が設けられている構成でも同様である。溝部8aは、開放端55bと基部側の端55aとを有している。溝部8aの他方端50bは、図5(a)に示すように、幅広部55の基部4(図2参照)側の端55aより開放端55b側、即ち幅広部55内に入っていてもよいし、図5(b)に示すように、基部4側の端55aに達しない位置、即ち駆動腕5の内にあってもよい。
【0059】
(パッケージ)
次に、図1に戻り、振動素子2を収容・固定する収容容器としてのパッケージ9について説明する。図1に示すように、パッケージ9は、板状のベース基板91と、枠状の枠部材92と、板状の蓋部材93とを有している。ベース基板91、枠部材92および蓋部材93は、下側から上側(+Z方向)へこの順で積層されている。ベース基板91と枠部材92とは、後述のセラミック材料等で形成されており、互いに一体に焼成されることで接合されている。枠部材92と蓋部材93とは、接着剤あるいはろう材等により接合されている。そして、パッケージ9は、ベース基板91、枠部材92および蓋部材93で画成された内部空間Sに、振動素子2を収納している。なお、パッケージ9内には、振動素子2の他、振動素子2を駆動する電子部品(発振回路)等を収納することもできる。
【0060】
なお、ベース基板91の構成材料としては、絶縁性(非導電性)を有しているものが好ましく、例えば、各種ガラス、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物系セラミックス等の各種セラミックス材料、ポリイミド等の各種樹脂材料などを用いることができる。
また、枠部材92および蓋部材93の構成材料としては、例えば、ベース基板91と同様の構成材料、Al、Cu、コバールのような各種金属材料、各種ガラス材料等を用いることができる。
【0061】
このベース基板91の上面には、固定材96を介して、前述した振動素子2が固定されている。この固定材96は、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の接着剤で構成されている。このような固定材96は、未硬化(未固化)の接着剤をベース基板91上に塗布し、さらに、この接着剤上に振動素子2を載置した後、その接着剤を硬化または固化させることにより形成される。これにより、振動素子2がベース基板91に確実に固定される。なお、この固定は、導電性粒子を含有するエポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の導電性接着剤を用いて行ってもよい。
【0062】
以上、説明した第1実施形態によれば、エッチングなどの簡単な加工で斜め振動させることが可能な駆動腕5,6を有する振動素子2を得ることができる。このように斜め振動させる駆動腕5,6を有することにより、振動漏れが抑制され、振動特性に優れた振動素子2となる。また、加工が簡単であるため歩留まりが向上する。また、駆動腕5,6に段差部としての溝部8a,8bが第1面10に設けられている。即ち、溝部8a,8bは、一方面(第1面10)から、エッチングなどによって掘り込むことで形成することができるため、第1の中心線P1に対し非対称な断面形状を含む溝部8a,8bを容易に形成することができる。また、第1面10の裏面である第2面11に圧電体層13を含む駆動部が設けられている。第2面11は、溝部8a,8bが設けられていない平面であり駆動部を容易に形成することができる。したがって、本構成によれば、一方面(第1面10)に溝部8a,8bが設けられ、裏面(第2面11)に駆動部が設けられている駆動腕5,6を容易に形成することが可能となり、安定した斜め振動を継続可能な振動素子2、即ち振動子1を安価に提供することが可能となる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る振動デバイスとしてのジャイロセンサーについて説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る振動デバイスとしてのジャイロセンサーを示す断面図、図7は、図6に示す振動デバイスに備えられた振動素子としてのジャイロ素子を示す平面図(上面図)平面図、図8(a)は図7中のB−B線断面図であり、図8(b)は駆動部の変形例を示す同様の断面図、図9は、図7に示すジャイロ素子の変形例を示す断面図である。また、図10は、図7に示すジャイロ素子の振動腕の動作を説明するための断面図であり、図10(a)は図8(a)の駆動部に対応し、図10(b)は図8(b)の駆動部に対応する図である。また、図11は、Z軸まわりの角速度が加わった際のジャイロ素子の振動を示す平面図であり、図12は、Y軸まわりの角速度が加わった際のジャイロ素子の振動を示す平面図である。
【0064】
なお、以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、以下では、図1に示すように、互いに直交する3軸を、X軸(第1軸)、Y軸(第2軸)およびZ軸(第3軸)とする。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、X軸およびY軸で規定される平面を「XY平面」とも言い、Y軸およびZ軸で規定される平面を「YZ平面」とも言い、Z軸およびX軸で規定される平面を「XZ平面」とも言う。
【0065】
図6に示すジャイロセンサー1aは、振動素子としてのジャイロ素子40と、このジャイロ素子40を収納するパッケージ9aとを有する。パッケージ9aは、ベース基板91a、枠部材92aおよび蓋部材93aで構成された内部空間Sを有しており、この内部空間に、ジャイロ素子40が収納されている。ジャイロ素子40は、固定材96aによってベース基板91aに接続、固定されている。ジャイロセンサー1aは、所定の周波数(共振周波数)で振動する電気信号を発生させる機能を有している。ジャイロセンサー1aは、Z軸まわりの角速度ωzと、Y軸まわりの角速度ωyとを検出することのできるジャイロセンサーである。以下、ジャイロセンサー1aを構成する各部位を順次詳細に説明する。
【0066】
(ジャイロ素子)
まず、図7および図8(a)に沿ってジャイロ素子40について説明する。図7に示すように、ジャイロ素子40は、所謂ダブルT型のジャイロ素子である。ジャイロ素子40は、素子基板70と、素子基板70に形成された複数の圧電体としての圧電体層63,66を含む駆動部とを有している。
【0067】
素子基板70は、例えばシリコン基板を素材として形成されている。素子基板70には、圧電体としての圧電体層63,66(図8(a)参照)を含む駆動部および検出部が設けられている。そして、この駆動部を用いて、第1駆動腕としての第1駆動振動腕46および第3駆動振動腕48と、第2駆動腕としての第2駆動振動腕47および第4駆動振動腕49を駆動し、検出部を用いて、第1、第2検出振動腕42,43から信号(出力信号)として取り出す。
【0068】
このように、シリコン基板などを素子基板70の素材として用いることでエッチングにより高い寸法精度で素子基板70を形成することができる。なお、素子基板70は、圧電体材料で構成されていてもよい。圧電体材料としては、例えば、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。特に、素子基板70を構成する圧電体材料としては、水晶が好ましい。水晶で素子基板70を構成すると、素子基板70の振動特性(特に周波数温度特性)を優れたものとすることができる。また、エッチングにより高い寸法精度で素子基板70を形成することができる。
【0069】
このような素子基板70は、XY平面に拡がりを有し、Z軸方向に厚みを有し、中央基部41と、第1検出振動腕42、第2検出振動腕43と、第1連結腕44、第2連結腕45と、第1駆動振動腕46、第2駆動振動腕47、第3駆動振動腕48、第4駆動振動腕49とを有している。なお、以降の説明では、第1検出振動腕42、第2検出振動腕43をまとめて「第1、第2検出振動腕42,43」、第1連結腕44、第2連結腕45をまとめて「第1、第2連結腕44,45」、第1駆動振動腕46、第2駆動振動腕47、第3駆動振動腕48、第4駆動振動腕49をまとめて「第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49」のように記載することがある。
【0070】
素子基板70の中央部には、中央基部41と中央基部41からX軸方向に互いに反対方向に延出している第1連結腕44および第2連結腕45とを含む基部58が配置されている。また、第1検出振動腕42および第2検出振動腕43は、中央基部41からY軸方向に互いに反対方向に延出している。また、第1駆動振動腕46および第3駆動振動腕48は、第1連結腕44の先端部からY軸方向に互いに反対方向に延出している。また、第2、第4駆動振動腕47,49は、第2連結腕45の先端部からY軸方向に互いに反対方向に延出している。
【0071】
なお、図示の構成では、第1連結腕44および第2連結腕45の幅は、中央基部41の幅よりも狭くなっているが、中央基部41と同じ幅で形成して一体にしてもよい。また、第1、第3駆動振動腕46,48は、第1連結腕44の延在方向の途中から延出してもよく、同様に、第2、第4駆動振動腕47,49は、第2連結腕45の延在方向の途中から延出してもよい。
【0072】
(検出振動腕)
第1、第2検出振動腕42,43は、重心(中心)Gと交わるXZ平面に関して対称に設けられている。また、これら第1、第2検出振動腕42,43は、図8(a)に示すように略矩形の横断面形状をなしている。第1検出振動腕42の第2面(下面)68には、二つの検出部がX軸方向に並んで形成されている。二つの検出部は、第1電極層65a、圧電体層66、第2電極層67aがこの順に積層されている第1検出部75と、第1電極層65b、圧電体層66、第2電極層67bがこの順に積層されている第2検出部76とを含む。なお、本例の圧電体層66は、一体的に形成されているが、一体的に形成されていなくてもよく、それぞれ個別に形成されている構成でもよい。なお、第2検出部76は、第1検出部75に対してグランドとなる電位を有する。同様に、第2検出振動腕43の第2面(下面)にも、二つの検出部がX軸方向に並んで形成されているが、構成が同じであるので説明を省略する。
【0073】
このような構成では、角速度ωyおよび角速度ωzの少なくとも一方が加わることにより励振される検出モードで第1、第2検出振動腕42,43が振動すると、第1検出部75および第2検出部76が伸長または収縮する。この伸長または収縮により、第1、第2検出振動腕42,43の歪みを第1電極層65aと第2電極層67aとの間(第1検出部75)、および、第1電極層65bと第2電極層67bとの間(第2検出部76)から信号(出力信号)として取り出すことができる。
【0074】
このようにして二つの検出部から取り出された信号を、後述するように処理することにより、角速度ωyおよび角速度ωzをそれぞれ独立して検出することができる。
なお、二つの検出部を用いることにより、簡単な構成で、より確実に第1、第2検出振動腕42,43の歪みを信号として取り出すことができる。
【0075】
なお、図示の構成では、第1検出振動腕42および第2検出振動腕43の断面形状が矩形であるが、第1、第2検出振動腕42,43の上面および下面の少なくとも一方の面に溝を設けても良い。
【0076】
(駆動振動腕)
次に、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49の構成について説明する。なお、第1、第2駆動振動腕46,47と第3、第4駆動振動腕48,49とは、重心(中心)Gと交わるXZ平面に関して対称に設けられている。したがって、本説明では、第1、第2駆動振動腕46,47について説明し、第3、第4駆動振動腕48,49の説明は省略する。
【0077】
図7および図8(a)に示すように、第1駆動振動腕46は、XY平面で構成された第1面(上面)60と、XY平面で構成されるとともに第1面と表裏の関係となる第2面(下面)61とを有し、第1面60と第2面61とを繋ぐ側面71,72で構成されている。第1駆動振動腕46には、第1面60から掘り込まれた段差部としての有底の溝部50が設けられている。溝部50の第1連結腕44側の端である一方端50aは、第1連結腕44に達しないように配置されている。このように溝部50の一方端50aを配置することで、溝部50を設けることによって生じる第1駆動振動腕46の断面面積の小さい部分が、第1駆動振動腕46と第1連結腕44との接続部分に存在せず、第1駆動振動腕46の強度低下が生じない。これによりジャイロ素子40の耐衝撃性を向上させることができる。また、溝部50の先端部側の端である他方端50bは、第1駆動振動腕46の先端に達しない位置、換言すれば先端部と距離を有する位置に配置されている。
【0078】
また、溝部50は、溝部50の一方の側壁と側面71との間隔より溝部50の他の側壁と側面72との間隔が大きくなるように配置されている。即ち、溝部50は、中心Qに対し第1検出振動腕42側に偏って設けられている。換言すれば、第1駆動振動腕46は、第1駆動振動腕46の延在方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)の中心Qを通る第1の中心線P1に対し、非対称な断面形状を含み設けられている。また、第1駆動振動腕46は、Z軸方向の中心Qを通る第2の中心線P2に対しY軸方向の断面形状が非対称となる。そのため、後述するように、第1駆動振動腕46をX軸方向(面内方向)に振動させると、この振動によりZ軸方向(面外方向)の振動が新たに励起され、結果として、第1駆動振動腕46をX軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する方向、言い換えればX軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した方向に、屈曲振動(以下、単に「斜め振動」とも言う。)させることができる。
【0079】
同様に、第2駆動振動腕47は、XY平面で構成された第1面(上面)60と、XY平面で構成されるとともに第1面と表裏の関係となる第2面(下面)61とを有し、第1面60と第2面61とを繋ぐ側面73,74で構成されている。第2駆動振動腕47には、第1面60から掘り込まれた段差部としての有底の溝部51が設けられている。溝部51の第2連結腕45側の端である一方端51aは、第2連結腕45に達しないように配置されている。このように溝部51の一方端51aを配置することで、溝部51を設けることによって生じる第2駆動振動腕47の断面面積の小さい部分が、第2駆動振動腕47と第2連結腕45との接続部分に存在せず、第2駆動振動腕47の強度低下が生じない。これによりジャイロ素子40の耐衝撃性を向上させることができる。また、溝部51の先端部側の端である他方端51bは、第2駆動振動腕47の先端に達しない位置、換言すれば先端部と距離を有する位置に配置されている。
【0080】
なお、溝部50,51の他方端50b,51bは、第1駆動振動腕46、第2駆動振動腕47の先端に達しない位置例で説明したがこれに限らず、溝部50,51が第1駆動振動腕46、第2駆動振動腕47の先端に達し、他方端が開放端となっている構成であってもよい。
【0081】
また、溝部51は、溝部51の一方の側壁と側面73との間隔より溝部51の他の側壁と側面74との間隔が大きくなるように配置されている。即ち、溝部51は、中心Qに対し第1検出振動腕42側に偏って設けられている。換言すれば、第2駆動振動腕47は、第2駆動振動腕47の延在方向(Y軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)の中心Qを通る第1の中心線P1に対し、非対称な断面形状を含み設けられている。また、第2駆動振動腕47は、Z軸方向の中心Qを通る第2の中心線P2に対しY軸方向の断面形状が非対称となる。そのため、後述するように、第2駆動振動腕47をX軸方向(面内方向)に振動させると、この振動によりZ軸方向(面外方向)の振動が新たに励起され、結果として、第2駆動振動腕47をX軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する方向、言い換えればX軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した方向に、屈曲振動(以下、単に「斜め振動」とも言う。)させることができる。
【0082】
上述したように、溝部50,51は、第1駆動振動腕46と第2駆動振動腕47との厚さ方向(Z軸方向)の中心を通る中心線に向かって互いに同方向に偏って配置されている。なお、溝部50,51は、素子基板70を形成すると同様に、エッチングなどの簡便な方法で、且つ高い寸法精度で形成することができる。
【0083】
図8(a)に示すように、本実施形態のジャイロ素子40では、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47の第1面60と表裏の関係となる第2面61に、圧電体としての圧電体層63を含む駆動部が設けられている。駆動部は、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47のそれぞれの第2面61に、第1電極層62、圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)63、第2電極層64がこの順で積層されて構成されている。圧電体層13を含む駆動部は、通電されることにより伸縮して第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47を斜め振動させる機能を有する。このように、圧電体層13を含む駆動部を用いて第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47を振動させる場合には、素子基板70を、例えばシリコン基板で構成することができる。
【0084】
第1電極層62、および第2電極層64の構成材料としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電材料を用いることができる。
【0085】
中でも、第1電極層62および第2電極層64の構成材料としては、金を主材料とする金属(金、金合金)、白金を用いるのが好ましく、金を主材料とする金属(特に金)を用いるのがより好ましい。Auは、導電性に優れ(電気抵抗が小さく)、酸化に対する耐性に優れているため、電極材料として好適である。また、AuはPtに比しエッチングにより容易にパターニングすることができる。
【0086】
なお、例えば、第1電極層62および第2電極層64を金で構成し、素子基板70との密着性が低い場合は、第1電極層62および第2電極層64と素子基板70との間に、Ti、Cr等で構成された下地層を設けるのが好ましい。これにより、下地層と第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47との密着性、および、下地層と第1電極層62との密着性をそれぞれ優れたものとすることができる。その結果、第1電極層62が第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47から剥離するのを防止し、ジャイロ素子40の信頼性を優れたものとすることができる。
【0087】
圧電体層13の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等が挙げられるが、AIN、ZnOを用いることが好適である。
【0088】
(駆動部の変形例)
図8(b)に示す駆動部は、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47の各第2面61に、2つに分割された第1電極層としての第3電極62aおよび第4電極62b、圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)63、2つに分割された第2電極層としての第5電極64aおよび第6電極64bがこの順で積層されている。このような構成の駆動部においては、第3電極62a、圧電体層13、および第5電極64aを含む駆動部と、第4電極62b、圧電体層63、および第6電極64bを含む駆動部とに、電源によって交番電圧を印加すると、第3電極62aに対応する圧電体層63および第4電極62bに対応する圧電体層63とが、Y軸方向に伸長または収縮し、ある一定の周波数(共振周波数)で第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47がX軸方向に屈曲振動する。なお、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47の断面形状が、上述の実施形態と同様にXY平面およびYZ平面に関して非対称であるため、図10(b)に矢印L4,L5で示すようなZ軸およびX軸に対して傾斜した方向に振動する(すなわち斜め振動する)。また、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47は、ZY平面に関して対称的に屈曲振動する。
【0089】
また、上述の実施形態では、第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47の長手方向(延出方向であるY軸方向)の全域にわたって、厚さ(Z軸方向の長さ)および幅(X軸方向の長さ)が一定となっている例で説明したが、図9に示すように、それぞれの先端部に第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47より幅広の幅広部(ハンマーヘッド)55を設けてもよい。なお、図9においては、第1駆動振動腕46を代表例として示している。溝部50は、開放端55bと第1連結腕44(図7参照)側の端55aとを有している。溝部50の他方端50bは、図9(a)に示すように、幅広部55の第1連結腕44側の端55aより開放端55b側、即ち幅広部55内に入っていてもよいし、図9(b)に示すように、基部側の端55aに達しない位置、即ち第1駆動振動腕46の内にあってもよい。なお、第1検出振動腕42にも、前述の幅広部55に相当する幅広部が設けられている構成であってもよい。
【0090】
上述した第1駆動振動腕46および第2駆動振動腕47は、図10に示すように、面内方向(X軸方向)にも面外方向(Z軸方向)にも振動させることができる。この時、駆動方向と振動方向が近い程低インピーダンスとなるので、駆動方向を選択することができる。すなわち、よりZ軸に近い方向に振動させる場合には図10(a)の構成、よりX軸方向に近い方向に振動させる場合には図10(b)の構成の方が低インピーダンスとなる。
【0091】
(パッケージ)
次に、図6に戻り、ジャイロ素子40を収容・固定する収容容器としてのパッケージ9aについて説明する。図6に示すように、パッケージ9aは、板状のベース基板91aと、枠状の枠部材92aと、板状の蓋部材93aとを有している。ベース基板91a、枠部材92aおよび蓋部材93aは、下側から上側(+Z方向)へこの順で積層されている。ベース基板91aと枠部材92aとは、後述のセラミック材料等で形成されており、互いに一体に焼成されることで接合されている。枠部材92aと蓋部材93aとは、接着剤あるいはろう材等により接合されている。そして、パッケージ9aは、ベース基板91a、枠部材92aおよび蓋部材93aで画成された内部空間Sに、ジャイロ素子40を収納している。なお、パッケージ9a内には、ジャイロ素子40の他、ジャイロ素子40を駆動する電子部品(発振回路)等を収納することもできる。
【0092】
なお、ベース基板91aの構成材料としては、絶縁性(非導電性)を有しているものが好ましく、例えば、各種ガラス、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物系セラミックス等の各種セラミックス材料、ポリイミド等の各種樹脂材料などを用いることができる。
また、枠部材92aおよび蓋部材93aの構成材料としては、例えば、ベース基板91aと同様の構成材料、Al、Cu、コバールのような各種金属材料、各種ガラス材料等を用いることができる。
【0093】
このベース基板91aの上面には、固定材96aを介して、前述したジャイロ素子40が固定されている。この固定材96aは、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の接着剤で構成されている。このような固定材96aは、未硬化(未固化)の接着剤をベース基板91a上に塗布し、さらに、この接着剤上にジャイロ素子40を載置した後、その接着剤を硬化または固化させることにより形成される。これにより、ジャイロ素子40がベース基板91aに確実に固定される。なお、この固定は、導電性粒子を含有するエポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の導電性接着剤を用いて行ってもよい。
【0094】
(ジャイロセンサーの動作)
以上、ジャイロセンサー1aの構成について説明した。ジャイロセンサー1aは、次のようにしてY軸まわりの角速度ωyおよびZ軸まわりの角速度ωzを検出する。以下、図10ないし図12を用いて説明するが、説明の便宜上、図11および図12では、各電極、溝部などの図示を省略している。
【0095】
角速度が加わらない状態において、第3電極62a、第4電極62b、および圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)63を含む駆動部と、第5電極64a、第6電極64bおよび圧電体としての圧電体層(圧電薄膜)63を含む駆動部との間に交番電圧を印加すると、図10(a)、(b)に示すように、第1、第2駆動振動腕46,47および図示しない第3、第4駆動振動腕48,49は、それぞれ、非対称部を有しているため斜め振動する。また、この振動は、第1、第3駆動振動腕46,48と第2、第4駆動振動腕47,49(図7参照)とが重心Gと交わるYZ平面に関して面対称の振動となる。
【0096】
この際、前述したように、第1、第3駆動振動腕46,48と、第2、第4駆動振動腕47,49とが重心Gを通るYZ平面に関して面対称の振動を行っているため、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49のX軸方向への振動が相殺される。そのため、第1、第2検出振動腕42,43は、X軸方向に殆ど振動しない。一方、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49は、互いにZ軸方向の同じ側へ向けて振動するため、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49のZ軸方向への振動は相殺されない。そのため、第1、第2検出振動腕42,43は、図10に示すように、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49とのバランスを取るように、Z軸方向にかつ第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49と逆向きに屈曲振動する。なお、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49の振動方向については図10に記されている振動方向に限らず、例えば図10に記されている振動方向と逆であっても良い。所望の周波数や駆動手段により振動方向は適宜選択される。
【0097】
この状態で、ジャイロセンサー1aにZ軸まわりの角速度ωzが加わると、図11に示すように、コリオリ力Aが作用し、このコリオリ力Aを駆動力として矢印Bで示す振動(Z軸回り角速度検出振動モード)が励振される。このとき、第1、第2検出振動腕42,43に生じる変形は、X軸に関して逆方向である。また、この検出振動モードは、駆動周波数の±10%以内の周波数であることが好ましい。なお、この第1、第2検出振動腕42,43の振動方向に関しては、第1、第2検出振動腕42,43がZ軸回りに関して同じ回転方向に振動していると言い換えることができる。これは、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49がコリオリ力Aの作用によって図11のように振動し、なおかつ第1、第2検出振動腕42,43は、中央基部41を挟んで上側と下側にそれぞれ延出しているため、第1検出振動腕42は、第1、第2駆動振動腕46,47に対応した変形をし、第2検出振動腕43は、第3、第4駆動振動腕48,49に対応した変形をするためである。
【0098】
一方、ジャイロセンサー1aにY軸まわりの角速度ωyが加わると、図12に示すように、コリオリ力Aが作用し、このコリオリ力Aを駆動力として、矢印Bで示す振動(Y軸回り角速度検出振動モード)が励振される。この時、第1、第2検出振動腕42,43に生じる変形は、X軸に関して同方向である。また、この検出振動モードは、駆動周波数の±10%以内の周波数であることが好ましい。なお、この第1、第2検出振動腕42,43の振動方向に関しては、第1、第2検出振動腕42,43がX軸に関して同方向に振動していると言い換えることができる。これは、コリオリ力Aの作用によって第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49が図12のように振動し、さらに第1、第2検出振動腕42,43にX軸に関して同方向かつ第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49と逆方向のコリオリ力が働くためX軸方向に関しては同方向に振動するためである。
【0099】
ジャイロセンサー1aでは、前述のZ軸まわりの角速度ωzが加わったときと、Y軸まわりの角速度ωyが加わったときの第1、第2検出振動腕42,43の振動方向の異なりを利用して、角速度ωzおよび角速度ωyをそれぞれ独立して検出することができる。なお、第1検出振動腕42に設けられている検出部が、第1検出部75と第2検出部76(図8参照)であり、第2検出振動腕43に設けられている検出部が、第3検出部(図示せず)と第2検出部(図示しない)である。
【0100】
具体的に説明すると、角速度ωzが加わったときに、第1検出部75と第2検出部76とから取り出される信号(電圧)V1は、角速度ωzに起因した信号(電圧)+Vzであり、第3検出部と第4検出部とから取り出される信号(電圧)V2は、角速度ωzに起因した信号(電圧)−Vzである。すなわち、V1=+Vz、V2=−Vzである。
【0101】
一方、角速度ωyが加わったときに、第1検出部75と第2検出部76とから取り出される信号V1は、角速度ωyに起因した信号+Vyであり、第3検出部と第4検出部とから取り出される信号V2は、角速度ωyに起因した信号+Vyである。すなわち、V1=+Vy、V2=+Vyである。なお、信号V1、V2の間で符号が同じなのは、前述したように、歪み検出手段がZ軸回りの角速度に対し異符号の信号を生じるように構成されているためである。
【0102】
そのため、ジャイロセンサー1aに、Y軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する軸(すなわち、Y軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した軸)まわりの角速度ωyzが加わると、第1検出部75と第2検出部76とから取り出される信号V1は、(+Vy)+(+Vz)であり、第3検出部と第4検出部とから取り出される信号V2は、(+Vy)+(−Vz)である。すなわち、V1=Vy+Vz、V2=Vy−Vzである。
【0103】
このようにして得られた信号V1、V2を加または減することにより、角速度ωyzのY軸まわりの角速度ωyと、Z軸まわりの角速度ωzとを分離することができ、角速度ωyおよび角速度ωzをそれぞれ独立して検出することができる。具体的には、V1+V2=2Vyとなり、角速度ωzに起因する信号Vzを排除することができる。これにより、Y軸まわりの角速度ωyが求まる。反対に、V1−V2=2Vzとなり、角速度ωyに起因する信号Vyを排除することができる。これにより、Z軸まわりの角速度ωzが求まる。ジャイロセンサー1aによれば、簡単に、Y軸まわりの角速度ωyおよびZ軸まわりの角速度ωzをそれぞれ独立して検出することができる。
【0104】
このような計算は、ジャイロセンサー1aに接続された図示しないICチップ等により行うことができる。なお、上述した信号「Vz」、「Vy」の符号は、配線の構成によっては符号が逆となる。すなわち、上記「+Vz」が「−Vz」、「−Vz」が「+Vz」となるとともに、「+Vy」が「−Vy」、「−Vy」が「+Vy」となる場合もある。
【0105】
以上、説明した第2実施形態によれば、エッチングなどの簡単な加工で、斜め振動させることが可能な第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49を有するジャイロ素子40を得ることができる。このように斜め振動させる第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49を有することにより、簡単に、Y軸まわりの角速度ωyおよびZ軸まわりの角速度ωzをそれぞれ独立して検出することができるジャイロ素子40を得ることができる。また、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49に設けられている溝部50,51,52,53は、一方面(第1面10)から、エッチングなどによって掘り込むことで形成することができるため、第1の中心線P1に対し非対称な断面形状を含む溝部50,51,52,53を容易に形成することができる。このように容易に溝部50,51,52,53を形成できるためジャイロ素子40の加工歩留まりが向上する。また、第1面60の裏面である第2面61に圧電体層63を含む駆動部が設けられている。第2面61は、溝部50,51,52,53が設けられていない平面であり駆動部を容易に形成することができる。したがって、本構成によれば、一方面(第1面60)に溝部50,51,52,53が設けられ、裏面(第2面61)に駆動部が設けられている第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49を容易に形成することが可能となり、安定した斜め振動を継続可能なジャイロ素子40、即ちジャイロセンサー1aを安価に提供することが可能となる。
【0106】
図13を参照して、段差部の変形例を説明する。上述の実施形態では、段差部として、一方面(第1面10,60)から掘り込まれ、一方面(第1面10,60)に開口する溝部8a,8bおよび溝部50,51,52,53の構成で説明したが、斜め振動を生じさせる段差部の構成としては、図13に示すような構成であってもよい。図13は、段差部の変形例を示す断面図である。変形例の段差部としての段部8cは、駆動腕5の第1面10と調整腕7側の側面15aの両方に開口している有底の段部である。段部8cは、調整腕7の位置する方向に偏って駆動腕5に設けられている。また、段部8dは、駆動腕6の第1面10と調整腕7側の側面15bの両方に開口している有底の段部である。段部8dは、調整腕7の位置する方向に偏って駆動腕6に設けられている。
【0107】
このような段部を設けることにより、上述した実施形態の溝部と同様に、駆動腕5,6は、X軸方向の中心Qを通る第1の中心線とZ軸方向の中心Qを通る第2の中心線とに対し断面形状が非対称となる。そのため、後述するように、駆動腕5,6をX軸方向(面内方向)に振動させると、この振動によりZ軸方向(面外方向)の振動が新たに励起され、結果として、駆動腕5,6をX軸方向およびZ軸方向の両方向成分を有する方向、言い換えればX軸およびZ軸の両軸に対して傾斜した方向に、屈曲振動(以下、単に「斜め振動」とも言う。)させることができる。なお、第2実施形態の構成についても同様な変形例を適用することが可能である。
【0108】
また、第1実施形態では調整腕7が一つ設けられている例で説明したが、調整腕の数は問わず、調整腕は複数設けられていてもよい。また、駆動腕5,6についても、その数はいくつであってもよい。
【0109】
また、実施形態2では、第1、第2、第3、第4駆動振動腕46,47,48,49と、第1検出振動腕および第2検出振動腕43とが設けられている構成で説明したが、駆動振動腕および検出振動腕の数は問わず、いくつであってもよい。
【0110】
<電子機器>
次いで、本発明の一実施形態に係る振動デバイスとして、振動素子2を用いた振動子1、あるいはジャイロ素子40を用いたジャイロセンサー1aのいずれかを適用した電子機器について、図14図16に基づき、詳細に説明する。なお、説明では、ジャイロセンサー1aを適用した例を示している。
【0111】
図14は、本発明の一実施形態に係る電子デバイスとしてのジャイロセンサー1aを備える電子機器としてのモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成の概略を示す斜視図である。この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1101を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、角速度を検出する機能を有したジャイロセンサー1aが内蔵されている。
【0112】
図15は、本発明の一実施形態に係る電子デバイスとしてのジャイロセンサー1aを備える電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成の概略を示す斜視図である。この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部100が配置されている。このような携帯電話機1200には、角速度を検出する機能を有したジャイロセンサー1aが内蔵されている。
【0113】
図16は、本発明の一実施形態に係る電子デバイスとしてのジャイロセンサー1aを備える電子機器としてのデジタルスチールカメラの構成の概略を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。ここで、従来のフィルムカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチールカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0114】
デジタルスチールカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部100が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部100は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット1304が設けられている。
【0115】
撮影者が表示部100に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送、格納される。また、このデジタルスチールカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなデジタルスチールカメラ1300には、角速度を検出する機能を有したジャイロセンサー1aが内蔵されている。
【0116】
なお、本発明の一実施形態に係る電子デバイスとしてのジャイロセンサー1aは、図14のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、図15の携帯電話機、図16のデジタルスチールカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等の電子機器に適用することができる。
【0117】
<移動体>
図17は移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。自動車506には本発明に係る電子デバイスとしてのジャイロセンサー1aが搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車506には、ジャイロセンサー1aを内蔵してタイヤ509などを制御する電子制御ユニット508が車体507に搭載されている。また、ジャイロセンサー1aは、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1…振動デバイスとしての振動子、1a…振動デバイスとしてのジャイロセンサー、2…振動素子、3…素子基板、4…基部、5,6…駆動腕(振動腕)、7…調整腕(振動腕)、8a,8b…段差部としての溝部、8c,8d…段差部としての段部、9,9a…パッケージ、10…第1面、11…第2面、12…第1電極層、12a…第3電極、12b…第4電極、13…圧電体層、14…第2電極層、14a…第5電極、14b…第6電極、15a,15b…側面、16,17…溝部の一方端、18,19…溝部の他方端、20,21,22,23…駆動腕の側面、40…振動素子としてのジャイロ素子、41…中央基部、42…第1検出振動腕、43…第2検出振動腕、44…第1連結腕、45…第2連結腕、46…第1駆動振動腕、47…第2駆動振動腕、48…第3駆動振動腕、49…第4駆動振動腕、50,51,52,53…段差部としての溝部、50a,51a,52a,53a…溝部の一方端、50b,51b,52b,53b…溝部の他方端、55…幅広部(ハンマーヘッド)、58…基部、60…第1面、61…第2面、62…第1電極層、62a…第3電極、62b…第4電極、63…圧電体層、64a…第5電極、64b…第6電極、64…第2電極層、65a,65b…第1電極層、66…圧電体層、67a,67b…第2電極層、68…第2面、70…素子基板、71,72,73,74…駆動腕の側面、75…第1検出部、76…第2検出部、91,91a…ベース基板、92,92a…枠部材、93,93a…蓋部材、96,96a…固定材、100…表示部、506…移動体としての自動車、1100…電子機器としてのモバイル型のパーソナルコンピューター、1200…電子機器としての携帯電話機、1300…電子機器としてのデジタルスチールカメラ、P1…第1の中心線、P2…第2の中心線、S…内部空間、G…重心、Q…中心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17