特許第6435642号(P6435642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6435642スラストころ軸受用保持器及び該保持器を用いたスラストころ軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435642
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】スラストころ軸受用保持器及び該保持器を用いたスラストころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20181203BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20181203BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20181203BHJP
   F16C 33/54 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F16C19/30
   F16C33/46
   F16C33/54 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-107699(P2014-107699)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224646(P2015-224646A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089381
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】荒木 康宏
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113351(JP,A)
【文献】 特開2014−092238(JP,A)
【文献】 特開2012−246972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成され、周方向に複数個のころを放射状に保持するスラストころ軸受用保持器であって、
径方向に放射状で、かつ周方向に等間隔で設けられる複数個の独立したころ受部と、
径方向に放射状で、かつ周方向で隣り合う前記ころ受部間に設けられる複数個の連結部とで構成され、
前記ころ受部は、内径側の端部から外径側の端部にわたって形成されるとともに、自転軸が径方向となるようにころを収容するポケットを備えており、
前記連結部は、周方向で隣り合う前記ころ受部間において、それぞれの高さ方向平面から段差をもって凹状で、かつ相対向する外側面に沿って形成された径方向の溝部を備え、
前記径方向の溝部は、前記ころ受部の内径側の端部と同一径の内径側の端部を有するとともに、前記ころ受部の外径側の端部よりも小径の外径側端部を有して前記径方向の溝部と連通する軸方向の溝部が形成されていることを特徴とするスラストころ軸受用保持器。
【請求項2】
前記径方向の溝部及び前記軸方向の溝部は、連結部を挟んで保持器の高さ方向で上下に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスラストころ軸受用保持器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスラストころ軸受用保持器のそれぞれのころ受部のポケットにころを収容し、相対回転可能に配設した第一レースと第二レースとの間に組み込んでなることを特徴とするスラストころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油量を増加可能及び通油性を向上可能としたスラストころ軸受用保持器及びスラストころ軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用トランスミッションのプラネタリ部は総ころ型であり、保持器にて保持される形式のスラストころ軸受と比して焼付きが発生し易いため、潤滑油量を多く必要としている。
また、潤滑油の油路方向におけるプラネタリ部の手前にはスラストころ軸受(スラストニードル軸受)が組み込まれており、プラネタリ部の潤滑油量の増加や通油性を良くするためにはこのスラストころ軸受の通油性を良くする必要がある。
【0003】
昨今、自動車用トランスミッション(特にオートマチック式)のコンパクト化と高負荷化に対応していくため、スラストころ軸受は限られた寸法制約での設計を余儀なくされている。このような寸法制約は、潤滑油量の制約、通油性をも損ねてしまうという懸念があった。
【0004】
図4及び図5は、C&R(ケージ&ローラー レースなし)の一例を示し、図4は樹脂製保持器で、環状の円板形状の保持器本体100に、周方向に等間隔で複数個のポケット200を設け、それぞれのポケット200にころ300を組み込んでなり、図5は金属製保持器で、2枚あわせの保持器本体400に設けた複数個のポケット500にそれぞれころ600を組み込んでなるものである。
しかし、このような保持器において通油量を増やすには、保持器の高さ寸法(図中符号Hで示す寸法)を低くする(高さ方向の幅を狭くする)しか方法がなかったが、製造上の問題などからも制限を受けていた。
【0005】
そこで、保持器を備えたスラストころ軸受において、保持器の改良によって潤滑油量の増加・通油性の向上を図ろうとしている先行技術が提案されている(特許文献1参照。)
【0006】
特許文献1では、ころの本数を標準設計の場合の本数と比して半分程度に減らし、潤滑油量の増加・通油性の向上を図ろうとしているものである。
【0007】
具体的に説明すると、凹条部と凸条部を放射状にかつ周方向に交互に配して円環状の保持器本体を形成している。この凹条部と凸条部は、保持器本体の表面と裏面にそれぞれ互い違いに設けられている。表面と裏面とは、保持器本体の環状中心軸に直交する平面で表面と裏面と定義する。そして、一方の面(例えば表面)に存する凹条部にそれぞれころを組み込んで構成されている。
すなわち、このように構成することにより、周方向において、ころところとの間には凸条部が配され、この凸条部は保持器本体の内径側と外径側に連通する空洞部を全てに備えているものであるため、潤滑油の通路が確保されることとなり、潤滑油の通油性を向上させることができる。
【0008】
しかし、特許文献1に開示の先行技術にあっては、それぞれ径方向の流れに直交する軸方向の流れに寄与するものではなかったため、コンパクト化と高負荷化に応じた寸法制約下における要求に十分に応えられるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−241790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その課題とするところは、コンパクト化と高負荷化に応じた寸法制約下において潤滑油の増加及び通油性を向上させることを可能としたスラストころ軸受用保持器及びその保持器を使用したスラストころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明の第1の発明は、環状に形成され、周方向に複数個のころを放射状に保持するスラストころ軸受用保持器であって、
径方向に放射状で、かつ周方向に等間隔で設けられる複数個の独立したころ受部と、
径方向に放射状で、かつ周方向で隣り合う前記ころ受部間に設けられる複数個の連結部とで構成され、
前記ころ受部は、内径側の端部から外径側の端部にわたって形成されるとともに、自転軸が径方向となるようにころを収容するポケットを備えており、
前記連結部は、周方向で隣り合う前記ころ受部間において、それぞれの高さ方向平面から段差をもって凹状で、かつ相対向する外側面に沿って形成された径方向の溝部を備え、
前記径方向の溝部は、前記ころ受部の内径側の端部と同一径の内径側の端部を有するとともに、前記ころ受部の外径側の端部よりも小径の外径側端部を有して前記径方向の溝部と連通する軸方向の溝部が形成されていることを特徴とするスラストころ軸受用保持器としたことである。
【0012】
本発明によれば、周方向で隣り合うころ受部ところ受部との間には、保持器本体の内径側と外径側に連通する溝部が放射状に配され、この溝部により潤滑油の径方向の通路が確保されることとなり、潤滑油の通油性を向上させることができる。さらに、本発明では、溝部の外径側の端部が、ころ受部の外径側の端部よりも小径に形成されて保持器全体の外径が凹凸状に形成されている構成を採用しているため、保持器外径側におけるそれぞれの溝部外径位置には、ころ受部の外径側端部との落差によって溝部(軸方向の溝部)が形成されている。従って、径方向の溝部を径方向に通過してきた潤滑油は、前記軸方向の溝部に案内されて軸方向へも流通する。よって、潤滑油の組み込みスペースが広くなり潤滑油量の増加が期待でき、かつ潤滑油の通路も径方向のみならず軸方向にも形成されているため通油性の向上も図り得る。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記径方向の溝部及び前記軸方向の溝部は、連結部を挟んで保持器の高さ方向で上下に形成されていることを特徴とするスラストころ軸受用保持器としたことである。
【0014】
本発明によれば、溝部は、ころ受部の高さ方向平面より窪んだ凹状に形成されているため、この凹状の溝部によって潤滑油が確実に案内される。
【0015】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のスラストころ軸受用保持器のそれぞれのころ受部のポケットにころを収容し、相対回転可能に配設した第一レースと第二レースとの間に組み込んでなることを特徴とするスラストころ軸受としたことである。
【0016】
本発明によれば、溝部が保持器の高さ方向(軸方向)で上下に形成されるため、潤滑油の通油性を阻害することもなくスムーズな通油を達成し得る。
【0018】
本発明によれば、第一レースと第二レースのいずれか一方若しくは双方の間に潤滑油の径方向の通路が形成されることとなり、また、軸方向の潤滑油の通路も形成されることとなり、潤滑油の通路が確保され、通油性に優れたスラストころ軸受を提供することができる。これによれば、本発明のスラストころ軸受を通過した先の部位における潤滑油の油量・通油性を向上させるべく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明スラストころ軸受の一実施形態を示す概略縦断面図である。
図2】本発明スラストころ軸受用保持器の一実施形態を示す概略平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】従来の樹脂製のスラストころ軸受用保持器を示し、(a)は、概略平面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図を示す。
図5】従来の金属製のスラストころ軸受用保持器を示し、(a)は、概略平面図、(b)は(a)のV−V線断面図を示す
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明スラストころ軸受の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態であって、何等これらに限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0021】
図1は、本発明スラストころ軸受(スラストころ軸受用保持器)の一実施形態であるスラストニードル軸受1の概略断面図で、軸Sがスラストニードル軸受1によって回転自在に支持されている。
【0022】
本実施形態のスラストニードル軸受1は、中央に開口5を有する環状板状の第一レース(第一の軌道輪)2と、前記第一レース2と相対回転可能に同軸で配され、中央に開口7を有する環状板状の第二レース(第二の軌道輪)6と、前記第一レース2と第二レース6との間にて、それぞれ転動可能に組み込まれる複数のころ8と、前記ころ8を転動自在に保持した状態で前記第一レース2と第二レース6の間に備えられる保持器9とを少なくとも含んで構成されている(図1参照。)。本実施形態では、外径が100mm以下で、高さが1.5〜5mm程度のスラストニードル軸受に適用することを想定している。
【0023】
本実施形態において第一レース2は、環状板状のレース本体3の外径縁から軸Sと平行に軸方向に一体に突設した環状のフランジ4を備えており、第二レース6は第一レース2のレース本体3よりも小径に形成された環状板状に形成されている。なお、図示した本実施形態の第一レース2と第二レース6は一実施形態であって特に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0024】
保持器9は、図1乃至図3に示すように、軸Sの外径よりも大径な開口10を中央に有する環状板状に形成され、径方向に放射状で、かつ周方向に等間隔で設けられる複数個の独立したころ受部11と、径方向に放射状で、かつ周方向で隣り合うころ受部11間に凹状に設けられる複数個の溝部17とで構成されている。
このように周方向に隣り合うころ受部11ところ受部11の間に溝部17を形成することにより、ころ8の個数を標準設計の場合の個数と比して半分程度に減らしている。例えば、本実施形態ではころ受部11が14個で、14個のころ8が組み込まれている形態を想定している。
【0025】
保持器9は、例えば、合成樹脂材料で射出成形などにて一体成形されている。
本実施形態では、例えばPA46やPA66等のガラス繊維を含んだ合成樹脂材にて形成されている樹脂製保持器を想定している。
なお、保持器は、金属材料で形成されるものも本発明の範囲内である。
ころ9は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)からなり、熱処理(焼入れ焼き戻し)されて形成されたころ径がφ1.5〜5のものを想定している。
【0026】
ころ受部11は、内径側の端部12が外径側の端部13よりも幅が狭く形成され、高さ方向(軸方向L1)に所定の厚さを有し、自転軸(図中符号R1で示す)が径方向(図中符合L2で示す)となるようにころ8を収容・保持するポケット14を備えている。
【0027】
溝部17は、内径側の端部19と外径側の端部20が同一幅で形成され、周方向(図中符号R2で示す)で隣り合うころ受部11の相対向する外側面15間に、前記ころ受部11と比して保持器9の高さ方向(軸方向L1)で薄肉の平板状の連結部18が架け渡され、前記ころ受部11の高さ方向平面16と前記連結部18の高さ方向平面21との間で凹状に形成されている(図1乃至図3参照。)
【0028】
また、本実施形態では、溝部17は、連結部18を挟んで保持器9の高さ方向(軸方向L1)で上下に形成されている(図3参照)。
すなわち、連結部18は、ころ受部11の外側面15に対して軸方向L1で略中央位置に一体に連結して備えられており、連結部18がころ受部11の外側面15の軸方向L1幅よりも幅狭に形成されているため、連結部18の表面側と裏面側に所定深さで表面側の溝部17aと裏面側の溝部17bが形成されている。
【0029】
本実施形態の上下の溝部(表面側の溝部17aと裏面側の溝部17b)は、それぞれ保持器全高(保持器の軸方向高さ)の1/4程度となるように、連結部18の軸方向厚さを制限している。すなわち、連結部18の軸方向L1厚さ(幅)は、保持器全高の1/2程度である。
本実施形態によれば、強度を維持しつつも潤滑油の通油性を向上させることができる。
【0030】
なお、溝部17(表面側の溝部17aと裏面側の溝部17b)は、軸方向L1の上下いずれか一方にのみ形成されるものであっても良く本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0031】
本実施形態では、溝部17の外径側の端部20が、ころ受部11の外径側の端部13よりも小径に形成されて保持器全体の外径が凹凸状に形成されている(図1乃至図3参照。)。
このように構成することにより、保持器9の外径側におけるそれぞれの溝部17a,17bの外径位置には、ころ受部11の外径側の端部13との落差によって溝部(軸方向の溝部17c)が形成される。
【0032】
従って、本実施形態によれば、第一レース2と第二レース6の双方の間に潤滑油の径方向の通路となる溝部17a,17bが形成されることとなり、また、保持器9の外径側に軸方向の潤滑油の通路となる溝部17cも形成されることとなり、軸受内を通過する潤滑油の通路が十分に確保され、通油性に優れたスラストころ軸受を提供することができる。図1中の矢印は潤滑油の油路(流れ)を示す。
さらに、本実施形態によれば、第一レース2の外径側に突設した環状のフランジ4が、溝部17cの外径方向に位置している構成を採用したため、溝部17cに流れ込んだ潤滑油はフランジ4と溝部17cとによって、軸方向へと確実に案内することができる。
【0033】
これによれば、本実施形態のスラストころ軸受を通過した先の部位における潤滑油の油量・通油性を向上させるべく制御することができる。
例えば、潤滑油の油路方向におけるプラネタリ部の手前に組み込まれているスラストころ軸受(スラストニードル軸受)に本実施形態の通油性に優れたスラストニードル軸受を組み込めば、プラネタリ部への潤滑油量の増加や通油性を良くすることができる。
よって、プラネタリ部の焼付きを抑止することが出来る。
なお、潤滑油量制御は、本実施形態の保持器9の溝部17を構成する連結部18の幅・高さにより任意に調整可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
自動車のトランスミッションに使用されるものについて一例を挙げて説明したが、本発明の転がり軸受は、例えば一般機械等に使用されるスラストころ軸受用保持器及びその保持器を組み込んだスラストころ軸受などにも利用可能であり、本発明の範囲内において適宜設計変更可能である。スラストニードル軸受を含むスラストころ軸受全般に適用可能であり、また、レースを備えない形態のスラストころ軸受も対象であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 スラストころ軸受(スラストニードル軸受)
2 第一レース
6 第二レース
8 ころ
9 保持器
11 ころ受部
13 ころ受部の外径側の端部
14 ポケット
17(17a,17b,17c) 溝部
18 連結部
20 溝部の外径側の端部
図1
図2
図3
図4
図5