(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長鎖アルキル基含有シリコーンオイルを含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料。
前記熱硬化剤が、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、及びブロックイソシアネート基からなる群より選択される1種の官能基を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。
前記熱硬化性樹脂が、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、凝集剤により、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、凝集剤により、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て粉体粒子を製造する工程を有する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<熱硬化性粉体塗料>
本実施形態に係る熱硬化性粉体塗料(以下、「粉体塗料」とも称する)は、表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料である。
【0021】
なお、本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子に着色剤を含まない透明粉体塗料(クリア塗料)、及び粉体粒子に着色剤を含む着色粉体塗料のいずれであってもよい。
【0022】
本実施形態に係る粉体塗料は、上記構成により、平滑性に優れた塗装膜を形成しうる。 この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
【0023】
粉体塗料による塗装では、平滑性に優れた塗装膜を形成することが要求されている。
そのためには、粉体塗料を構成する粉体粒子に表面調整剤を含有させる手法がある。
しかし、混練粉砕法により粉体粒子を作製する際には、固形であり、且つ、混練時に装置内ですべりを起こさない表面調整剤を用いる必要があることから、粉体粒子内での表面調整剤の形状を制御することは困難である。また、粉体粒子製造後に、後から表面調整剤を添加する場合も、粉体粒子内での表面調整剤の形状を制御することは困難となる。
粉体粒子内での表面調整剤の形状によっては、表面調整剤が粉体粒子表面に析出する現象(以下「ブリード」とも称する。なお、粉体粒子中の内包物(熱硬化剤、及び熱硬化剤以外に必要に応じて添加される着色剤、他の添加剤等)が粉体粒子の表面に析出する現象も同様に、「ブリード」と称する。)が生じ易くなる。また、粉体粒子内での表面調整剤の形状によっては、塗装膜を形成する際に平滑性に機能し難くなることもある。
そこで、表面調整剤が機能を発揮して、平滑性に優れた塗装膜を得るためには、更なる改良が望まれている。
【0024】
そこで、本実施形態に係る粉体塗料では、表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子を用いる。
つまり、この粉体粒子は、表面調整剤を海島構造の島部として芯部中に存在させ、その芯部の表面を樹脂被覆部にて被覆した構造を有する。この構造により、粉体塗料の保管時であっても、表面調整剤による島部の形態の変化が起き難い。また、表面調整剤が海島構造の島部として存在することで、塗装膜の形成時、つまり、塗装時及び焼き付け時に、表面調整剤が被塗装物の表面上に広がり、溶融している塗料の表面張力を極端に低下させることにより、平滑性に優れた塗装膜が得られる。
【0025】
特開2009−057487号公報及び特開2010−090355号公報においては、コア層中にワックスを含有させたコア・シェル構造の樹脂粒子の開示があるが、主樹脂との相溶性を制御しているとは言い難く、本実施形態における粉体粒子のような海島構造は有していない。
【0026】
以上から、本実施形態に係る粉体塗料は、平滑性に優れた塗装膜を形成しうると推測される。
【0027】
また、本実施形態に係る粉体塗料は、平滑性に優れた塗装膜を形成するため、得られる塗装膜の光沢性も高められる。
更に、本実施形態に係る粉体塗料は、芯材の内包物のブリードを抑制しうることから、保管性にも優れることになり、その結果、塗装後に、被塗装面に付着しなかった粉体塗料を再利用したときでも、同様に、平滑性に優れた塗装膜の形成が実現される。このため、本実施形態に係る粉体塗料は、高い耐久性も有する。
また、本実施形態に係る粉体塗料は、高い保管性を有することから、搬送効率及び塗装効率も高く、塗装作業性に優れる。
【0028】
以下、本実施形態に係る粉体塗料の詳細について説明する。
【0029】
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を有する。
粉体塗料は、必要に応じて、流動性を高める点から、粉体粒子の表面に付着する外部添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
〔粉体粒子〕
粉体粒子は、芯部と、芯部の表面に付着して樹脂被覆部と、を有する。つまり、粉体粒子は、所謂コア・シェル構造を有する粒子である。
【0031】
(芯部)
芯部は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含有して構成される。芯部は、必要に応じて、着色剤等のその他添加剤を含有してもよい。
まず、芯部を構成する成分について説明する。
【0032】
−表面調整剤−
表面調整剤は、粉体塗料にて使用する公知の表面調整剤が挙げられる。
表面調整剤として、具体的には、ポリシロキサン化合物、ワックス、アクリル系オリゴマー類等が挙げられる。
【0033】
特に、表面調整剤による塗装膜の平滑性の向上の点、表面張力低下性能の点から、表面調整剤としては、ポリシロキサン化合物及びワックスからなる群より選択される1種であるが好ましい。
更に、表面調整剤による塗装膜の平滑性の向上の点、被塗装物への濡れ性の点から、表面調整剤としては、常温(25℃)において液体であるものが好ましい。
【0034】
・ポリシロキサン化合物
本実施形態において、ポリシロキサン化合物とは、シロキサン結合を複数有する化合物であって、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
中でも、表面張力低下の性能と主樹脂である熱硬化性樹脂との相溶性の点から、シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルのいずれもが用いられるが、島部の形成性の点から、粉体粒子中で併存する熱硬化性樹脂等の樹脂成分と反応しない非反応性シリコーンオイルが好ましい。
【0035】
シリコーンオイルとして具体的には、例えば、ジメチルシリコーンオイル、アミノ基含有シリコーンオイル、エポキシ基含有シリコーンオイル、エーテル基含有シリコーンオイル、メタクリル基含有シリコーンオイル、メルカプト基含有シリコーンオイル、フェニル基含有シリコーンオイル、長鎖アルキル基含有シリコーンオイル、水素基含有シリコーンオイル等が挙げられる。中でも、塗装膜の平滑性の向上の点からは、長鎖アルキル基含有シリコーンオイルが好ましい。
これらのシリコーンオイルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
・ワックス
ワックスとしては、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性樹脂との相溶性の点から、炭化水素系ワックスが好ましい。
【0037】
・表面調整剤のSP値
表面調整剤は、前述のように、芯材中で、熱硬化性樹脂を含有する海部の中に島部を形成している状態である。
このような海島構造を形成し易くなるため、表面調整剤は熱硬化性樹脂との間に相分離が生じ易い組み合わせを選択することが好ましい。
例えば、熱硬化性樹脂のSP値に対し、表面調整剤のSP値は、3.0以上離れていることが好ましく、2.0以上2.5以下の範囲で異なることがより好ましい。
例えば、芯部の海部を形成する熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリエステル樹脂であって、SP値が10.0であれば、7.0以上13.0以下の範囲のSP値を有する表面調整剤を用いることが好ましい。
【0038】
ここで、SP値とは、Fedorの推算法にて求められたものである。
この方法は、凝集エネルギー密度が置換基の種類及び数に依存しているとの仮説に従い、置換基毎に定められた凝集エネルギー値をもとに、高分子のSP値をセグメント単位で計算する。そして、この方法で計算された凝集エネルギーを物質のモル容積で割り、平方根を取ったものがSP値とされる(参考文献:SP値 基礎・応用と計算方法、山本秀樹著、株式会社情報機構 2005年出版)。
この方法で求められたSP値は、慣行としてその単位がcal
1/2/cm
3/2とされ、且つ、無次元で表記される。これに加えて、本明細書においては、2つの化合物間におけるSP値の相対的な差が意義を持つため、本明細書においては、上記した慣行に従い求められた値を用い、無次元で表記することとしている。なお、参考までに、この方法で求めたSP値をSI単位(J
1/2/m
3/2)に換算する場合、この方法で求められたSP値に2046を乗ずればよい。
【0039】
本実施形態において、表面調整剤による島部の径は、表面調整剤の機能の発現し易さ、塗料溶融時の平滑性の発現、相溶性等による点から、0.001μm以上0.5μm以下が好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。
ここで、島部の径とは、表面調整剤による島部の長軸径の平均値を指す。
【0040】
島部の径の測定方法は、以下の通りである。
粉体粒子中の島部の径は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)による粉体粒子断面の画像を画像解析することにより行う。
具体的には、まず、測定対象となる粉体粒子をエポキシ樹脂に包埋した後、エポキシ樹脂を固化する。この固化物をミクロトームによって厚さ100nmに切片化する。切片の粉体粒子断面を四酸化ルテニウム0.5%水溶液によりルテニウム染色した後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により、粉体粒子断面のSTEM画像を得る。SETM画像中、白く見える部分が表面調整剤の島部(ドメイン)である。得られたSTEM画像を画像解析することにより、表面調整剤の島部の長軸径を計測する。具体的には、走査透過型電子顕微鏡(STEM)にて観察した画像を電子化し、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト(Wim ROOF)に取り込み、例えば次のような手順で表面調整剤の島部の長軸径を求める。
1個の粉体粒子断面領域を選択対象として選択後、「2値化処理」コマンドの「自動2値化−判別分析法」を用い、2値化処理を行ない、抽出された表面調整剤の島部1つ1つに対し、計測項目「絶対最大長」解析により、表面調整剤の島部の長軸径を計測する。
写真の撮影濃度やノイズなどにより、自動2値化が正常に行なえない場合は「フィルタ−メディアン」処理やエッジ抽出処理を行なうことにより画像を鮮明化したり、手動の2値化コマンドにおいて画像を確認しながら手動で敷位置を設定してから、表面調整剤の島部の長軸径を計測してもよい。
そして、表面調整剤の島部の長軸径の値は、粉体粒子100個の平均値を採用する。
【0041】
芯部における表面調整剤の含有量は、表面調整剤の機能の発現し易さ、塗料溶融時の相分離、レベリングの点から、粉体粒子全体に対して、0.01質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
【0042】
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂は、熱熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子で使用する様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
【0043】
熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0044】
・熱硬化性(メタ)アクリル樹脂
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
【0045】
ここで、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水基、(ブロック)イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、(メタ)アクリル樹脂の製造容易な点から、エポキシ基、カルボキシル基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、粉体塗料の貯蔵安定性および塗装膜外観に優れる点から、ことから、熱硬化反応性基の少なくとも1種はエポキシ基であることがより好ましい。
【0046】
硬化性反応性基としてエポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の鎖式エポキシ基含有単量体(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等)、各種の(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体(例えば(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル(メタ)アクリレート等)、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体(例えば3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等)などが挙げられる。
【0047】
硬化性反応性基としてカルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、各種のカルボキシル基含有単量体(例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、各種のα,β−不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのモノエステル類(例えばフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル等)、イタコン酸モノアルキルエステル(例えばイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ2−エチルヘキシル等)などが挙げられる。
【0048】
硬化性反応性基として水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、上記各種の水酸基含有(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有ビニルエーテル(例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等)、上記各種の水酸基含有ビニルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有アリルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル等)、上記各種の水酸基含有アリルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物などが挙げられる。
【0049】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル単量体以外にも、熱硬化反応性基を有さない他のビニル単量体が共重合されていてもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
【0050】
なお、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂において、熱硬化反応性基を有するビニル単量体として、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体を使用する場合、硬化性反応性基を有さないアクリル単量体を使用する。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
【0051】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、数平均分子量が1,000以上20,000以下(好ましくは1,500以上15,000以下)のアクリル樹脂が好ましい。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
【0052】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0053】
・熱硬化性ポリエステル樹脂
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
【0054】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これら酸の無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、これら酸の無水物;マレイン酸、イタコン酸、これら酸の無水物;フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、これら酸の無水物;シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0055】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビス−ヒドロキシエチルテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ジエチルプロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート等が挙げられる。
【0056】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多塩基酸及び多価アルコール以外の他の単量体が重縮合されていてもよい。
他の単量体としては、例えば、1分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸の等)等が挙げられる。
【0057】
熱硬化性ポリエステル樹脂の構造は、分岐構造のものでも、線状構造のものでもよい。
【0058】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、酸価と水酸基価との合計が10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、且つ数平均分子量が1000以上100,000以下のポリエステル樹脂が好ましい。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
【0059】
なお、熱硬化性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の測定は、JIS K−0070−1992に準ずる。また、熱硬化性ポリエステル樹脂の数平均分子量の測定は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量の測定と同様である。
【0060】
熱硬化性樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
熱硬化性樹脂の含有量は、粉体粒子全体に対して、20質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下が好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
【0062】
−熱硬化剤−
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
ここで、熱硬化剤とは、熱硬化性樹脂の末端基である熱硬化反応性基に対して、反応可能な官能基を有している化合物を意味する。
具体的には、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がエポキシ基の場合、熱硬化剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の酸;これら酸の無水物;これらの酸のウレタン変性物などが挙げられる。これらの中でも、熱硬化剤としては、塗装膜物性、及び貯蔵安定性の点から、脂肪族二塩基酸が好ましく、塗装膜物性の点から、ドデカン二酸が特に好ましい。
【0063】
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がカルボキシル基の場合、熱硬化剤としては、例えば、種々のエポキシ樹脂(例えばビスフェノールAのポリグリシジルエーテル等)、エポキシ基含有アクリル樹脂(例えばグリシジル基含有アクリル樹脂等)、種々の多価アルコール(例えば1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等)のポリグリシジルエーテル、種々の多価カルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)のポリグリシジルエステル、種々の脂環式エポキシ基含有化合物(例えばビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート等)、ヒドロキシアミド(例えばトリグリシジルイソシアヌレート、β−ヒドロキシアルキルアミド等)等が挙げられる。
【0064】
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基が水酸基の場合、熱硬化剤としては、例えば、ポリブロックイソシアネート、アミノプラスト等が挙げられる。ポリブロックポリイソシアネートとしては、例えば、各種の脂肪族ジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、各種の環状脂肪族ジイソシアネート(例えばキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等)、各種の芳香族ジイソシアネート(例えばトリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等)などの有機ジイソシアネート;これら有機ジイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂(例えばポリエステルポリオール)又は水等との付加物;これら有機ジイソシアネート同志の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む重合体);イソシアネート・ビウレット体等の各種のポリイソシアネート化合物を公知慣用のブロック化剤でブロック化したもの;ウレトジオン結合を構造単位として有するセルフ・ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0065】
熱硬化剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
熱硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下が好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
【0067】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
【0068】
着色剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
着色剤の含有量は、顔料の種類及び塗装膜に求められる色彩、明度、及び深度等に応じて選択する。例えば、着色剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下が好ましい。
【0070】
−その他の添加剤−
その他添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。具体的には、その他添加剤としては、例えば、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
【0071】
(樹脂被覆部)
樹脂被覆部は、樹脂を含む。
樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の添加剤(芯部を構成する成分として説明した熱硬化剤、その他の添加剤等)を含んでいてもよい。
但し、粉体粒子の内包物のブリードをより低減する点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が他の添加剤を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
【0072】
樹脂被覆部の樹脂は、非硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。但し、樹脂被覆部の樹脂は、塗装膜の硬化密度(架橋密度)向上の点から、熱硬化性樹脂であることがよい。樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、この熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられる。特に、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合も、熱硬化性樹脂は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。但し、樹脂被覆部の熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0073】
樹脂被覆部の被覆率は、ブリード抑制の点から、30%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下がより好ましい。
樹脂被覆部の被覆率は、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求められた値である。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
【0074】
樹脂被覆部の厚さは、ブリード抑制の点から、0.2μm以上4μm以下が好ましく、0.3μm以上3μm以下がより好ましい。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
【0075】
(粉体粒子の他の成分)
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、芯部の熱硬化性樹脂及び樹脂被覆部の樹脂として、ポリエステル樹脂を適用した場合、ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子のブリードが抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
【0076】
金属イオンとしては、例えば、2価以上4価以下の金属イオンが挙げられる。具体的には、金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、及びカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンが挙げられる。
【0077】
金属イオンの供給源(粉体粒子に添加剤として含ませる化合物)としては、例えば、金属塩、無機金属塩重合体、金属錯体等が挙げられる。この金属塩、及び無機金属塩重合体は、例えば、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として粉体粒子に添加する。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
【0078】
なお、これら金属イオンの供給源は、凝集剤用途ではなく、単なる添加剤として添加してもよい。
【0079】
金属イオンの価数は、高い程、網目状のイオン架橋を形成しやすくなり、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で好適である。このため、金属イオンとしては、Alイオンが好ましい。つまり、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。更に、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、金属イオンの供給源のうち、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、無機金属塩重合体が好ましい。このため、金属イオンの供給源としては、特に、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。
【0080】
金属イオンの含有量は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、前記粉体粒子全体に対して0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まるやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
【0081】
ここで、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として添加される金属イオンの供給源(金属塩、金属塩重合体)は、粉体粒子の粒度分布及び形状の制御に寄与する。
【0082】
具体的には、金属イオンの価数は高い程、狭い粒度分布を得る点で好適である。また、狭い粒度分布を得る点で、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、金属塩重合体が好適である。このため、これら点からも、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましく、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が特に好ましい。
【0083】
また、金属イオンの含有量が0.002質量%以上になるように、凝集剤を添加すると、水性媒体中における樹脂粒子の凝集が進行し、狭い粒度分布の実現に寄与する。また、芯部となる凝集粒子に対して、樹脂被覆部となる樹脂粒子の凝集が進行し、芯部表面全体に対する樹脂被覆部の形成の実現に寄与する。一方、金属イオンの含有量が0.2質量%以下になるように、凝集剤を添加すると、凝集粒子中のイオン架橋の過剰な生成を抑え、融合合一するときに、生成される粉体粒子の形状が球状に近づきやすくなる。このため、これら点からも、金属イオンの含有量は、0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
【0084】
金属イオンの含有量は、粉体粒子の蛍光X線強度を定量分析することにより測定される。具体的には、例えば、まず、樹脂と金属イオンの供給源との混合し、金属イオンの濃度が既知の樹脂混合物を得る。この樹脂混合物200mgを、直径13mmの錠剤成形器を用いて、ペレットサンプルを得る。このペレットサンプルの質量を精秤し、ペレットサンプルの蛍光X線強度測定を行って、ピーク強度を求める。同様に、金属イオンの供給源の添加量を変更したペレットサンプルについても測定を行い、これらの結果から検量線を作成する。そして、この検量線を用いて、測定対象となる粉体粒子中の金属イオンの含有量を定量分析する。
【0085】
金属イオンの含有量の調整方法としては、例えば、1)金属イオンの供給源の添加量を調整する方法、2)粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集工程において、金属イオンの供給源として凝集剤(例えば金属塩、又は金属塩重合体)を添加した後、凝集工程の最後にキレート剤(例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)等)を添加し、キレート剤により金属イオンと錯体を形成させ、その後の洗浄工程等で形成された錯塩を除去して、金属イオンの含有量を調整する方法等が挙げられる。
【0086】
(粉体粒子の好ましい特性)
−体積粒度分布指標GSDv−
本実施形態において、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは1.50以下であることが好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下が更に好ましい。
【0087】
−体積平均粒径D50v−
また、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が更に好ましい。
【0088】
−平均円形度−
更に、粉体粒子の平均円形度は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、0.96以上であることが好ましく、0.97以上がより好ましく、0.98以上が更に好ましい。
【0089】
ここで、粉体粒子の体積平均粒径D50v、及び体積粒度分布指標GSDvは、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2として算出される。
【0090】
また、粉体粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000(シスメックス社製)」を用いることにより測定される。具体的には、予め不純固形物を除去した水100ml以上150ml以下の中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml以上0.5ml以下加え、更に測定試料を0.1g以上0.5g以下加える。測定試料を分散した懸濁液は超音波分散器で1分以上3分以下分散処理を行ない、分散液濃度を3000個/μl以上1万個/μl以下とする。この分散液に対して、フロー式粒子像分析装置を用いて、粉体粒子の平均円形度を測定する。
【0091】
ここで、粉体粒子の平均円形度は、粉体粒子について測定されたn個の各粒子の円形度(Ci)を求め、次いで、下記式により算出される値である。但し、下記式中、Ciは、円形度(=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長)を示し、fiは、粉体粒子の頻度を示す。
【0093】
〔外部添加剤〕
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子の表面に外部添加剤を添加することで、粉体粒子間の凝集の発生が抑制され、少量で平滑性の高い塗装膜が形成される。
外部添加剤の具体例としては、例えば、無機粒子が挙げられる。
無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等の粒子が挙げられる。
【0094】
外部添加剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0095】
外部添加剤の外添量としては、例えば、粉体粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0096】
<粉体塗料の製造方法>
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、必要に応じて、粉体粒子に対して、外部添加剤を外添することで得られる。
【0097】
粉体粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。粉体粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0098】
これらの中でも、体積粒度分布指標GSDv、体積平均粒径D50v、及び平均円形度を上記の好ましい範囲に容易に制御できる点から、凝集合一法により、粉体粒子を得ることがよい。
【0099】
具体的には、
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
【0100】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
【0101】
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液を準備する。
具体的には、表面調整剤を乳化分散した表面調整剤分散液、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、表面調整剤分散液、第1樹脂粒子分散液、及び熱硬化剤分散液に代えて、芯部用の、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、粉体塗料の製造方法の各工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び複合粒子を、総じて「樹脂粒子」と称し、これらの樹脂粒子の分散液を「樹脂粒子分散液」と称して説明する。
【0102】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0103】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水性媒体が挙げられる。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0106】
樹脂粒子分散液の調製方法として、具体的には、以下の方法がある。
例えば、樹脂粒子分散液が、アクリル樹脂粒子が分散されたアクリル樹脂粒子分散液の場合、かかるアクリル樹脂粒子分散液は、原料単量体を水性媒体中に乳化し、水溶性開始剤、必要に応じて、分子量制御のために連鎖移動剤を加え加熱し、乳化重合することによって得られる。
また、樹脂粒子分散液が、ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液の場合、かかるポリエステル樹脂粒子分散液は、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合した後、得られた重縮合体を、溶剤(例えば酢酸エチル等)を加えて溶解し、更に、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって得られる。
【0107】
なお、樹脂粒子分散液が複合粒子分散液である場合、表面調整剤と熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを混合して、分散媒に分散(例えば転相乳化等の乳化)することで、当該複合粒子分散液を得る
【0108】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば、1μm以下がよく、0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmがさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0109】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0110】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、熱硬化剤分散液及び着色剤分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における樹脂粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤の粒子、硬化剤分散液中に分散する硬化剤の粒子についても同様である。
【0111】
また、表面調整剤を乳化分散した表面調整剤分散液も、樹脂粒子分散液と同様にして、界面活性剤等の乳化剤を用いて調製される。用いる界面活性剤としても、前述の樹脂粒子分散液で例示した界面活性剤を用いることができる。
【0112】
表面調整剤分散液中の乳化分散粒子の体積平均粒径は、例えば、0.5μm以下0.0001μm以上が好ましく、0.1μm以下0.01μm以上が更に好ましい。
この乳化分散粒子の体積平均粒径も、上記の樹脂粒子の体積平均粒径と同様にして、測定される。
【0113】
表面調整剤分散液に含まれる乳化分散粒子の含有量としては、例えば、1.0質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0114】
−第1凝集粒子形成工程−
次に、表面調整剤分散液と、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、表面調整剤分散液と第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ、目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、表面調整剤分散液と第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
【0115】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
【0116】
なお、第1凝集粒子形成工程においては、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子分散液と、着色剤分散液と、を混合し、混合分散液中で、複合粒子と着色剤とをヘテロ凝集させて、第1凝集粒子を形成してもよい。
【0117】
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0118】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、金属塩、金属塩重合体、金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
【0119】
ここで、凝集剤としての金属塩、金属塩重合体、金属錯体は、金属イオンの供給源として用いる。これらの例示について、既述の通りである。
【0120】
キレート剤としては、水溶性のキレート剤が挙げられる。キレート剤として、具体的には、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
【0121】
−第2凝集粒子形成工程−
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0122】
そして、第1凝集粒子、及び第2樹脂粒子が分散された混合分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子を付着するように凝集して、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着した第2凝集粒子を形成する。
【0123】
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、第2樹脂粒子分散液を混合し、この混合分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0124】
これにより、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0125】
−融合合一工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
【0126】
以上の工程を経て、粉体粒子が得られる。
【0127】
ここで、融合合一工程終了後は、分散液中に形成された粉体粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態の粉体粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0128】
そして、本実施形態に係る粉体塗料は、必要に応じて、例えば、得られた乾燥状態の粉体粒子に、外部添加剤を添加し、混合することにより製造される。
混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。
更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0129】
<塗装品/塗装品の製造方法>
本実施形態に係る塗装品は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品である。そして、本実施形態に係る塗装品の製造方法は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法である。
【0130】
具体的には、塗装品は、被塗装物の表面に、粉体塗料を塗装した後、加熱(焼付)して粉体塗料を熱硬化させて、塗装膜を形成することにより得られる。
【0131】
粉体塗料の塗装は、静電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装、流動浸漬等の周知の塗装方法を利用する。粉体塗料による塗装膜の厚みは、例えば、30μm以上50μm以下がよい。
加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)に応じて調節する。
なお、粉体塗料の塗装、及び加熱(焼付)は、一括して行ってもよい。
【0132】
粉体塗料を塗装する対象物品である被塗装物は、特に、制限はなく、各種の金属部品、セラミック部品、樹脂部品等が挙げられる。これら対象物品は、板状品、線状品等の各物品への成形前の未成形品であってもよいし、電子部品用、道路車両用、建築内外装資材用等に成形された成形品であってもよい。また、対象物品は、被塗装面に、予め、プライマー処理、めっき処理、電着塗装等の表面処理が施された物品であってもよい。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0134】
〔第1の樹脂粒子分散液(1)〕
・スチレン 320部
・n−ブチルアクリレート 80部
・アクリル酸 10部
・ドデカンチオール 10部
・非イオン性界面活性剤(三洋化成社製ノニポール400) 6部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 10部
・イオン交換水 550部
上記の材料をフラスコ中に入れて分散し乳化し、10分間ゆっくりと攪拌混合しながら、過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、第1の樹脂粒子分散液(1)を得た。
この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−700)で樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津製作所社製DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移温度を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製HLC−8020)を用いてテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33000であった。
【0135】
〔第2の樹脂粒子分散液(2)〕
・スチレン 80部
・n−ブチルアクリレート 20部
・アクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 2.5部
・非イオン性界面活性剤(三洋化成社製ノニポール400) 1.5部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 1.5部
・イオン交換水 150部
上記の材料をフラスコ中に入れて分散し乳化し、10分間ゆっくりと攪拌混合しながら、過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、第2の樹脂粒子分散液(2)を得た。
この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−700)で樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津製作所社製DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移温度を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製HLC−8020)を用いてTHFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ31000であった。
【0136】
〔着色剤分散液(K)〕
・カーボンブラック(テグサ社製Nipx35) 50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 5部
・イオン交換水 200部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製HJP30006)を用いて1時間分散処理を行い、着色剤分散液(K)を得た。着色剤分散液(K)は、着色剤粒子の平均粒径190nm、固形分量20%であった。
【0137】
[実施例1]
<粉体粒子(1)の作製>
・第1の樹脂粒子分散液(1) 260部
・熱硬化剤(ヒュルス社製ベスタゴンB1530) 20部
・シリコーンオイルエマルジョン(固形分53%) 25部
(信越化学工業社製X−52−8048:長鎖アルキル基含有シリコーンオイルのエマルジョン)
・着色剤分散液(K) 32.7部
・カチオン性界面活性剤(花王社製サニゾールB50) 1.5部
・ポリ塩化アルミニウム 0.36部
・イオン交換水 1000部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに収容して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて混合し分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、光学顕微鏡にて凝集粒子が形成されていることを確認した。
ここに第2の樹脂粒子分散液(2)を130部追加した。その後、濃度0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で液のpHを8.0に調整した後、フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、更に3時間保持した。
反応終了後、冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。固形分を30℃のイオン交換水1000部に再分散し、攪拌翼によって300rpmで15分間攪拌し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。この再分散と吸引濾過を繰り返し、濾液が電気伝導度10.0μS/cmt以下となったところで洗浄を終了した。
次いで真空乾燥機に仕込んで12時間継続して乾燥し、粉体粒子(1)を得た。
【0138】
粉体粒子(1)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.1μmであった。
また、粉体粒子(1)の体積平均粒径D50vは5.8μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25であり、平均円形度は0.97であった。
更に、粉体粒子(1)のアルミニウムイオンの含有量は、0.01質量%であった。
粉体粒子(1)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が被覆樹脂部で被覆されていることが確認された。
【0139】
<粉体塗料(1)の作製>
得られた粉体粒子(1)100質量部に対して0.5質量部の疎水性チタニア粒子(一次粒径50nm)を外部添加剤として混合して、粉体塗料(1)を得た。
【0140】
[実施例2]
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを、以下のようにして調製した「メタクリル基含有シリコーンオイル(信越化学工業社製X−22−2426)のエマルジョン」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(2)を得た。
【0141】
〔シリコーンオイルエマルジョンの調製〕
・メタクリル基含有シリコーンオイル 480部
(信越化学工業社製X−22−2426)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK) 50部
・イオン交換水 520部
以上の成分の混合液を30℃に調整して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理してシリコーンオイルエマルジョン(固形分48%)を調製した。
【0142】
得られた粉体粒子(2)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.005μmであった。
また、粉体粒子(2)の体積平均粒径D50vは5.6μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.21であり、平均円形度は0.98であった。
更に、粉体粒子(2)のアルミニウムイオンの含有量は、0.005質量%であった。
そして、この粉体粒子(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(2)を得た。
【0143】
[実施例3]
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを「メタクリル基含有シリコーンオイルのエマルジョン(固形分48%):信越化学工業社製X−52−8164A」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(3)を得た。
得られた粉体粒子(3)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.02μmであった。
また、粉体粒子(3)の体積平均粒径D50vは5.5μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.23であり、平均円形度は0.96であった。
更に、粉体粒子(3)のアルミニウムイオンの含有量は、0.02質量%であった。
そして、この粉体粒子(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(3)を得た。
【0144】
[実施例4]
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを「フェニル基含有シリコーンオイルのエマルジョン(固形分30%):信越化学工業社製KM−9739」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(4)を得た。
得られた粉体粒子(4)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.05μmであった。
また、粉体粒子(4)の体積平均粒径D50vは5.8μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.22であり、平均円形度は0.96であった。
更に、粉体粒子(4)のアルミニウムイオンの含有量は、0.007質量%であった。
そして、この粉体粒子(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(4)を得た。
【0145】
[実施例5]
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを、以下のようにして調製した「ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF-96-1000cs)のエマルジョン」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(5)を得た。
【0146】
〔シリコーンオイルエマルジョンの調製〕
・ジメチルシリコーンオイル 480部
(信越化学工業社製:KF-96-1000cs)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK) 50部
・イオン交換水 520部
以上の成分の混合液を30℃に調整して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理してシリコーンオイルエマルジョン(固形分48%)を調製した。
【0147】
得られた粉体粒子(5)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.01μmであった。
また、粉体粒子(5)の体積平均粒径D50vは5.7μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24であり、平均円形度は0.98であった。
更に、粉体粒子(5)のアルミニウムイオンの含有量は、0.01質量%であった。
そして、この粉体粒子(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(5)を得た。
【0148】
[比較例1]
比較例1として、特開2010−090355号公報の実施例1で得られたコア−シェル型の樹脂粒子(E1)を使用した。
この樹脂粒子(E1)では、ワックスなどの表面平滑剤によるドメイン構造(島部)は確認できず、着色剤のみが確認された。
この樹脂粒子(E1)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料を得た。
【0149】
<評価>
(粉体塗料の塗装膜試料の作製)
静電塗装法等により、各例で得られた粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板のテストパネルに塗装後、加熱温度180℃、加熱時間1時間で加熱(焼付け)を行って、厚みが30μmの塗装膜試料を得た。
【0150】
(塗装膜の平滑性の評価)
塗装膜試料の表面に対して、表面粗さ測定器(SURFCOM 1400A(株)東京精密)を用いて、中心線平均粗さ(以下、「Ra」と記す。単位:μm)を測定した。Raの数字が大きいほど表面平滑性が低いことを示す。
評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
G1(○):Raが0.4μm以下である
G2(△):Raが0.4μmを超え0.5μm以下である
NG(×):Raが0.5μmを超える
【0151】
(耐保管性の評価)
各例で得られた粉体塗料を、温度50℃、湿度50RH%に制御した恒温恒湿槽に17時間保管した後、振動篩を用いて篩い200メッシュ(目開き75ミクロン(μm))通過量を調べて、下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。
G1(○):通過量が90%以上
NG(×):通過量が90%未満
【0152】
【表1】
【0153】
表1に示すように、本実施例では、比較例に比べ、芯部に表面調整剤の島部を有する海島構造があることで平滑性に優れた塗装膜が得られていることがわかる。
また、本実施例の粉体塗料は、耐保管性にも優れることが分かる。