特許第6435710号(P6435710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435710
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】接着方法およびコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20181203BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20181203BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20181203BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C09J123/08
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J5/00
   B29C65/48
   B65G15/32
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-168786(P2014-168786)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44223(P2016-44223A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】鄒 徳慶
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−248003(JP,A)
【文献】 特開平10−219217(JP,A)
【文献】 特開昭53−080487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B29C 63/00− 63/48
B29C 65/00− 65/82
B65G 15/30− 15/58
B32B 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X1)とカーボンブラック(Y1)とを含有するゴム組成物からなる被着体ゴム同士を、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X2)とカーボンブラック(Y2)とを含有するゴム組成物からなる接着用ゴムを接着界面に使用して接着させる接着方法であって、
前記被着体ゴムの前記有機過酸化物(X1)の含有量が、前記被着体ゴムにおける前記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.011〜0.020モル当量であり、
前記接着用ゴムの前記有機過酸化物(X2)の含有量が、前記接着用ゴムにおける前記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.017〜0.022モル当量であり、
前記有機過酸化物(X1)および前記有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が、1.20〜2.00である、接着方法。
【請求項2】
前記被着体ゴムの前記カーボンブラック(Y1)の含有量が、前記被着体ゴムにおける前記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して40〜60質量部であり、
前記接着用ゴムの前記カーボンブラック(Y2)の含有量が、前記接着用ゴムにおける前記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して30〜50質量部であり、
前記カーボンブラック(Y1)および前記カーボンブラック(Y2)の含有量の差(Y1−Y2)が、0〜10質量部である、請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
コンベヤベルト同士の接合に用いる請求項1または2に記載の接着方法。
【請求項4】
請求項3に記載の接着方法により接着されてなるコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着方法およびコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルト、ゴムクローラ、ゴム製大型ガスケットのような大型ゴム製品の多くは、被着体である加硫ゴム部品同士の接着(接合)または加硫ゴム部品と未加硫ゴム部品との接着の際に、接着界面に未加硫の接着用ゴム(「タイゴム」とも呼ばれている。)を挟み込む手法が用いられている。
【0003】
例えば、本出願人は、特許文献1において、「ジエン系ゴムと有機含硫黄化合物とを含有するゴム組成物からなる被着体ゴム同士を、ジエン系ゴムと有機含硫黄化合物とを含有するゴム組成物からなる未加硫の接着用ゴムを接着界面に使用して接着させる接着方法であって、前記被着体ゴムの全硫黄量Xが、前記被着体ゴムにおける前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.16〜0.54質量部であり、前記接着用ゴムの全硫黄量Yが、前記接着用ゴムにおける前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.20〜1.00質量部であり、前記全硫黄量Yと前記全硫黄量Xとの比(Y/X)が、1.25〜2.50である接着方法。」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された接着方法は、「モルフォリンジスルフィド等の有機含硫黄化合物が配合されてなる耐熱性に優れるゴム製品同士を良好に接着することができる接着方法の提供」を課題としているため、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物を用いた加硫(架橋)系については考慮されておらず、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有するゴム組成物を用いてカバーゴムが形成された耐熱コンベヤベルトなどの接着には適用できないことが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が配合されてなる耐熱性に優れるゴム製品同士を良好に接着することができる接着方法およびこの接着方法を用いて製造されたコンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン・α‐オレフィン共重合体を含有する系においては、接着用ゴムの有機過酸化物の含有量を被着体ゴムの有機過酸化物の含有量よりも特定少量増量させることで、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が配合されてなる耐熱性に優れるゴム製品同士であっても良好に接着できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1] エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X1)とカーボンブラック(Y1)とを含有するゴム組成物からなる被着体ゴム同士を、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X2)とカーボンブラック(Y2)とを含有するゴム組成物からなる接着用ゴムを接着界面に使用して接着させる接着方法であって、
上記被着体ゴムの上記有機過酸化物(X1)の含有量が、上記被着体ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.011〜0.020モル当量であり、
上記接着用ゴムの上記有機過酸化物(X2)の含有量が、上記接着用ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.017〜0.022モル当量であり、
上記有機過酸化物(X1)および上記有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が、1.20〜2.00である、接着方法。
[2] 上記被着体ゴムの上記カーボンブラック(Y1)の含有量が、上記被着体ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して40〜60質量部であり、
上記接着用ゴムの上記カーボンブラック(Y2)の含有量が、上記接着用ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して30〜50質量部であり、
上記カーボンブラック(Y1)および上記カーボンブラック(Y2)の含有量の差(Y1−Y2)が、0〜10質量部である、[1]に記載の接着方法。
[3] コンベヤベルト同士の接合に用いる[1]または[2]に記載の接着方法。
[4] [3]に記載の接着方法により接着されてなるコンベヤベルト。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明するように、本発明によれば、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が配合されてなる耐熱性に優れるゴム製品同士を良好に接着することができる接着方法およびこの接着方法を用いて製造されたコンベヤベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の接着方法、および、本発明のコンベヤベルトについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[接着方法]
本発明の接着方法は、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X1)とカーボンブラック(Y1)とを含有するゴム組成物からなる被着体ゴム同士を、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X2)とカーボンブラック(Y2)とを含有するゴム組成物からなる接着用ゴムを接着界面に使用して接着させる接着方法であって、上記被着体ゴムの上記有機過酸化物(X1)の含有量が、上記被着体ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.011〜0.020モル当量であり、上記接着用ゴムの上記有機過酸化物(X2)の含有量が、上記接着用ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.017〜0.022モル当量であり、かつ、上記有機過酸化物(X1)および上記有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が、1.20〜2.00である、接着方法である。
ここで、量比(X2/X1)は、被着体ゴム中のエチレン・α−オレフィン共重合体に対する有機過酸化物(X1)のモル当量と、接着用ゴム中のエチレン・α−オレフィン共重合体に対する有機過酸化物(X2)のモル当量との比率である。
【0012】
本発明においては、被着体ゴムにおける有機過酸化物(X1)と接着用ゴムにおける有機過酸化物(X2)とが、各々上述した含有量および量比にあることにより、ゴム製品同士を良好に接着することができる。
これは、詳細には明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、接着界面において有機過酸化物により生成したラジカルの濃度が上昇し、かつ、その濃度が被着体ゴム自体におけるラジカル濃度と濃度勾配が生じることにより、被着体ゴムと接着用ゴムとの間で架橋反応が進行しやすくなったためであると考えられる。
【0013】
本発明においては、被着体ゴムの耐摩耗性を保持し、接着性がより良好となる理由から、上記被着体ゴムの上記カーボンブラック(Y1)の含有量が、上記被着体ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して40〜60質量部であり、上記接着用ゴムの上記カーボンブラック(Y2)の含有量が、上記接着用ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して30〜50質量部であり、かつ、上記カーボンブラック(Y1)および上記カーボンブラック(Y2)の含有量の差(Y1−Y2)が、0〜10質量部である、のが好ましい。
ここで、カーボンブラック(Y1)およびカーボンブラック(Y2)の含有量の差(Y1−Y2)は、被着体ゴム中のエチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対するカーボンブラック(Y1)の質量部と、接着用ゴム中のエチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対するカーボンブラック(Y1)の質量部との差である。
【0014】
次に、被着体ゴムおよび接着用ゴムならびにこれらを接着する具体的態様を説明する。
【0015】
〔被着体ゴム〕
本発明においては、被着体ゴムとは、後述するエチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X1)とカーボンブラック(Y1)とを含有するゴム組成物からなるものであれば特に限定されず、未加硫のもの(以下、「未加硫ゴム部品」ともいう。)であっても、加硫したもの(以下、「加硫ゴム部品」ともいう。)であってもよいが、未加硫ゴム部品であるのが好ましい。
また、被着体ゴム同士には、加硫ゴム部品同士や未加硫ゴム部品同士だけではなく、加硫ゴム部品と未加硫ゴム部品とを接着させる態様も含むものである。
【0016】
<エチレン・α−オレフィン共重合体>
被着体ゴムを形成するゴム組成物に含有するエチレン・α−オレフィン共重合体は特に限定されず、エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0017】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体としては、具体的には、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBM)、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
<有機過酸化物(X1)>
被着体ゴムを形成するゴム組成物に含有する有機過酸化物(X1)は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
有機過酸化物(X1)としては、具体的には、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、4,4´−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレリック酸n−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記有機過酸化物(X1)としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(商品名「パーカドックス14−40」、化薬アクゾ社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、上記有機過酸化物(X1)の含有量は、上記被着体ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.011〜0.020モル当量であり、0.013〜0.018モル当量であるのが好ましく、0.014〜0.017モル当量であるのがより好ましい。
なお、上記有機過酸化物(X1)の含有量は、上記モル当量の範囲内であり、かつ、上記有機過酸化物(X1)および後述する有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が1.20〜2.00となる範囲内であり、1.35〜1.70となる範囲内であるのが好ましい。
【0021】
<カーボンブラック(Y1)>
被着体ゴムを形成するゴム組成物に含有するカーボンブラック(Y1)は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
上記カーボンブラック(Y1)としては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記カーボンブラック(Y1)の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して40〜60質量部であるのが好ましく、45〜55質量部であるのがより好ましい。
なお、上記カーボンブラック(Y1)の含有量は、上記質量部の範囲内であり、かつ、上記カーボンブラック(Y1)および後述するカーボンブラック(Y1)の含有量の差(Y1−Y2)が0〜10質量部となる範囲内であり、5〜10質量部となる範囲内であるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、上記被着体ゴムを形成するゴム組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて、カーボンブラック以外の充填剤(例えば、シリカ等)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、軟化剤、難燃剤、加硫促進剤、ワックス、帯電防止剤、加工助剤等の配合剤を含有することができる。
【0024】
本発明においては、上記被着体ゴムを形成するゴム組成物の製造は、上述した各成分をバンバリーミキサー等で混練して行うことができる。
また、上記被着体ゴムとしての未加硫ゴム部品は、上記被着体ゴムを形成するゴム組成物そのものである。
また、上記被着体ゴムとしての加硫ゴム部品は、上記被着体ゴムを形成するゴム組成物を、例えば、温度140〜150℃程度、0.5時間の条件下、加硫することにより得ることができる。
【0025】
〔接着用ゴム〕
本発明においては、接着用ゴムとは、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物(X2)とカーボンブラック(Y2)とを含有するゴム組成物からなるものであれば特に限定されず、未加硫のゴム組成物であっても、加硫したゴム組成物であってもよいが、未加硫のゴム組成物であるのが好ましい。
【0026】
このような接着用ゴムを形成するゴム組成物に含有するエチレン・α−オレフィン共重合体、有機過酸化物(X2)およびカーボンブラック(Y2)の具体例としては、それぞれ、上述した被着体ゴムを形成するゴム組成物に含有するエチレン・α−オレフィン共重合体、有機過酸化物(X1)およびカーボンブラック(Y1)として例示したものが挙げられる。
【0027】
<有機過酸化物(X2)の含有量>
本発明においては、上記有機過酸化物(X2)の含有量は、上記接着用ゴムにおける上記エチレン・α−オレフィン共重合体に対して0.017〜0.022モル当量であり、0.018〜0.021モル当量であるのが好ましく、0.019〜0.020モル当量であるのがより好ましい。
【0028】
<カーボンブラック(Y2)の含有量>
本発明においては、上記カーボンブラック(Y2)の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して30〜50質量部であるのが好ましく、35〜45質量部であるのがより好ましい。
【0029】
本発明においては、上記接着用ゴムを形成するゴム組成物は、上述した被着体ゴムを形成するゴム組成物と同様、上述した成分以外に、必要に応じて、カーボンブラック以外の充填剤(例えば、シリカ等)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、軟化剤、難燃剤、加硫促進剤、ワックス、帯電防止剤、加工助剤等の配合剤を含有することができる。
【0030】
本発明においては、上記接着用ゴムを形成するゴム組成物の製造は、上述した被着体ゴムを形成するゴム組成物と同様、上述した各成分をバンバリーミキサー等で混練して行うことができる。
【0031】
〔接着態様〕
本発明の接着方法は、上述した被着体ゴム同士を、上述した接着用ゴムを接着界面に使用して接着させる接着方法である。
ここで、「接着界面に使用する」とは、被着体ゴムと被着体ゴムとの接着界面に接着用ゴムを挟み込むことをいう。
また、接着する方法は特に限定されないが、被着体ゴムと被着体ゴムとの接着界面に接着用ゴムを挟み込んだ状態で、これらを加熱プレスする方法が好適に例示される。なお、加熱プレスの条件は、エチレン・α−オレフィン共重合体の種類や有機過酸化物の種類によって異なるため特に限定されないが、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体としてエチレン・プロピレン共重合体(EPM)を使用し、有機過酸化物として1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを用いた場合は、140〜160℃の加熱条件下で30分〜2時間、1MPa程度加圧する条件であるのが好ましい。
【0032】
本発明の接着方法は、ゴム製品同士(特に、長い形状のもの)のエンドレス加工が容易にできるため、耐熱性に優れるゴム製品のうちでもコンベヤベルト同士の接合に用いるのが好ましい。
【0033】
本発明のコンベヤベルトは、上述した本発明の接着方法により接着されてなるコンベヤベルトである。具体的には、コンベヤベルトの一端と他のコンベヤベルトの一端とを重ねあわせ、その重ね合わせた界面に接着用ゴムを挟み、加熱プレスすることに得られるコンベヤベルトである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げ、本発明の接着方法について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0035】
<ゴム組成物1〜8の調製>
エチレン・プロピレン共重合体(EPM)および所望により配合するエチレン・1−ブテン共重合体(EBM)からなるゴム成分100質量部に対して、下記第1表に示す組成成分(質量部)〔有機過酸化物についてはモル当量〕で、各ゴム組成物を調製した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち架橋剤および有機過酸化物を除く成分をバンバリーミキサー(3.4リットル)で5分間混練し、160℃に達したときに放出し、マスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに架橋剤および有機過酸化物をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
第1表中、各成分の詳細は以下のとおりである。
・EPM:エチレン・プロピレン共重合体〔KEP−110、KUMHO POLYCHEM社製〕
・EBM:エチレン・1−ブテン共重合体〔Engage 7487、ダウケミカル社製〕
・カーボンブラック:ニテロン#300〔新日化カーボン社製〕
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種〔正同化学工業社製〕
・ステアリン酸:ステアリン酸50S〔千葉脂肪酸社製〕
・老化防止剤:ノクラックMMB〔大内新興化学工業社製〕
・架橋剤:マグネシウムジメタクリレート〔ハイクロスGT、精工化学社製〕
・可塑剤:ルーカント HC−3000X〔三井化学社製〕
・有機過酸化物:1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン〔パーカドックス14−40、化薬アクゾ社製〕
【0038】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
第1表に示す組成物1〜8を用いて、被着体ゴムと未加硫の接着用ゴムとの接着を行った。
具体的には、下記第2表に示すゴム組成物からなる被着体ゴム(厚さ5mm)と下記第2表に示すゴム組成物からなる接着用ゴム(厚さ5mm)とを貼り合わせた後に、150℃で60分間、加熱プレスすることにより行った。なお、サンプル形状は、JIS K6256−1:2006の「布とのはく離強さ」に準じて作製した。
ここで、被着体ゴムおよび接着用ゴムにおける有機過酸化物およびカーボンブラックの含有量ならびにこれらの比率などについても、下記第2表に示す。
【0039】
接着後、はく離力を以下に示す方法により測定し、接着性を評価した。その結果を下記第2表に示す。
【0040】
<はく離力>
室温(23℃)および150℃の条件で、はく離試験をJIS K6256−1:2006の「布とのはく離強さ」に準じて行い、はく離力(N/mm)を測定した。
【0041】
【表2】
【0042】
第2表に示す結果より、被着体ゴムの有機過酸化物(X1)の含有量が0.011〜0.020モル当量であり、かつ、接着用ゴムの有機過酸化物(X2)の含有量が0.017〜0.022モル当量であっても、有機過酸化物(X1)および有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が、1.20未満であると、室温または150℃におけるはく離力が小さくなり、ゴム製品同士の接着性が劣ることが分かった(比較例1〜5)。
これに対し、被着体ゴムの有機過酸化物(X1)の含有量が0.011〜0.020モル当量であり、接着用ゴムの有機過酸化物(X2)の含有量が0.017〜0.022モル当量であり、かつ、有機過酸化物(X1)および有機過酸化物(X2)の量比(X2/X1)が、1.20〜2.00であると、室温および150℃におけるはく離力が高くなり、ゴム製品同士の接着性が良好となることが分かった(実施例1〜5)。