(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.駆動装置の構造:
図1は、本発明の一実施形態としての駆動装置1の概略構成を示す模式図である。駆動装置1は、例えば、事故や病気などによって指の曲げ伸ばしに支障が生じた人や、握力が低下した人、高齢のために力が弱くなった人等の手に装着されて指の動きを補助するために用いられる。本実施形態の駆動装置1は、特に、手の親指の動きを補助するために用いられる。以下では、駆動装置1が、被装着部としての手に装着された際に、親指の指先側を「先端側」または「前側」と呼び、親指の根元(第3関節付近)側を「後端側」または「後ろ側」と呼ぶ。また、本明細書において、手の「指」とは、指の種類にかかわらず、指先から第3関節までのことをいう。また、「手」には、「指」も含まれる。
【0014】
駆動装置1は、ベース部材10と第1部材20と第2部材30とを備える。ベース部材10は、手の甲側に配置される部材である。ベース部材10は、扁平なブロック状の外形形状を有しており、例えば、バンドやフックなどの任意の固定具によって手に装着される。第1部材20は、手の人差し指中手骨80に沿った第1回動軸51周りに回動可能にベース部材10に設けられている。第1部材20は、親指の背側の第3関節付近から第2関節付近にかけて配置される。第2部材30は、第1部材20に対して相対的に回動可能な部材である。第2部材30の先端部は、親指の背側の第1関節から第2関節までの間に固定される。後述するように、駆動装置1は、ベース部材10と第2部材30との間の距離が変更可能に構成されている。なお、第1部材20が回動する第1回動軸51は、手の人差し指が回動する軸とは異なる方向の軸である。
【0015】
図2は、駆動装置1の詳細な構成を示す図である。ベース部材10は、第1回動軸51と第1回動部12と制御部14とを備えている。第1回動軸51には、第1部材20が接続される。第1回動部12は、第1回動軸51を駆動することにより、第1部材20を第1回動軸51周りに相対的に回動させる。第1回動部12の詳しい構成については後述する。制御部14は、第1回動部12や、後述する第2回動部118、第3回動部122、第4回動部142を制御して親指の動きを補助するための回路を備えている。制御部14は、ベース部材10以外の部分に備えられていてもよい。
【0016】
第1部材20は、第1連結部110と第2連結部120とを備えている。第1連結部110は、第1副部材112と第2副部材114とを備えている。
【0017】
第1副部材112は、ベース部材10の第1回動軸51周りに回動可能な部材である。第1副部材112は、弾性部材116と、第2回動部118と、第2回動軸52と、を備えている。弾性部材116は、第1副部材112と手の甲との間に配置される。弾性部材116の材料としては、例えば、弾性ゴムやスポンジ、バネを用いることができる。なお、弾性部材116は省略してもよい。
【0018】
第2回動部118は、第1副部材112内に設けられており、第2回動軸52を駆動する。第2回動軸52は、駆動装置1が手に装着されたときに、親指の第3関節付近に配置される。第2回動軸52は、親指が第3関節を中心として人差し指に対して開閉する軸に沿っている。第2回動軸52には、第2回動軸52周りに回動可能に第2副部材114の後端部が接続されている。そのため、第2回動部118は、親指が人差し指に対して開閉する方向(第1回動方向)に第2副部材114を駆動することができる。なお、第2回動部118は、第1副部材112の外部に設けられていてもよい。
【0019】
第2副部材114は、略直方体状の形状を有している。第2副部材114は、その先端面に開口部115を備えている。開口部115には、第2連結部120の後端部が挿入されている。第2副部材114内には、第2連結部120を前後方向にスライド移動させるための第1スライド機構117が設けられている。本実施形態では、第2連結部120が、第1スライド機構117によって第2副部材114に対して摺動することにより、ベース部材10と第2部材30との間の距離が可変する。
【0020】
第2連結部120は、略直方体状の形状を有している。第2連結部120は、第3回動部122と第3回動軸53とを備えている。第3回動部122は、第2連結部120内に備えられており、第3回動軸53を駆動する。第3回動軸53は、駆動装置1が手に装着されたときに、親指の第2関節付近に配置される。第3回動軸53は、第1連結部110に設けられた第2回動軸52に平行である。第2部材30の後端部は、第3回動軸53周りに回動可能に第2連結部120に接続されている。そのため、第3回動部122は、親指が人差し指に対して開閉する方向(第1回動方向)に第2部材30を駆動することができる。
【0021】
第2部材30は、第3連結部130と第4連結部140と第5連結部150とを備えている。第2部材30の先端部には、固定部40が接続されている。
【0022】
第3連結部130は、第2連結部120や第4連結部140よりも前後方向の長さが短く構成されている。第3連結部130の後端部は、第3回動軸53周りに回動可能に第2連結部120に接続されている。第3連結部130の先端部には、第4回動軸54が設けられている。第4回動軸54は、第2回動軸52および第3回動軸53に対して垂直な軸である。
【0023】
第4連結部140は、略直方体状の形状を有している。第4連結部140の後端部は、第4回動軸54周りに回動可能に第3連結部130に接続されている。第4連結部140は、第4回動部142と第5回動軸55とを備えている。第4回動部142は、第3連結部130に設けられた第4回動軸54を駆動する。第4回動軸54は、第2回動軸52および第3回動軸53に垂直な軸であるため、第4回動部142は、親指が屈曲する方向(第2回動方向)に、第4連結部140を駆動することができる。第5回動軸55は、第4回動軸54に平行な軸であり、第4連結部140の先端部に設けられている。
【0024】
第5連結部150は、第5回動軸55周りに(つまり、第2回動方向に)回動可能に、第4連結部140の先端部に接続されている。また、第5連結部150は、固定部40の上面側に設けられた第2スライド機構44に接続されている。この第2スライド機構44は、第5連結部150を、親指の基節骨81に沿って相対的に摺動可能とする。つまり、第5連結部150は、第4連結部140に対して回動可能であり、かつ、固定部40に対して前後方向に摺動可能である。
【0025】
固定部40は、下面側に装着バンド42を備えている。この装着バンド42が、親指の第1関節と第2関節との間に巻かれることにより、固定部40が、親指に装着される。装着バンド42は、例えば、シリコーンゴム等のような各種ゴム材料によって構成することができる。
【0026】
以上で説明した通り、駆動装置1は、手の甲から親指の先端側に向けて、ベース部材10、第1連結部110(第1副部材112および第2副部材114)、第2連結部120、第3連結部130、第4連結部140、第5連結部150、固定部40、が順に接続されることにより構成されている。以下では、これらの部材のことを、「可動部材」ともいう。各可動部材は、例えば、ポリエチレン等のような各種樹脂材料や、アルミニウム等のような各種金属材料によって構成することができる。
【0027】
B.回動部の概略構成:
図3は、第1回動部12の概略構成を示す説明図である。第2回動部118、第3回動部122、第4回動部142は、第1回動部12と同様の構成であるため、これらの回動部の構成については説明を省略する。第1回動部12は、第1回動軸51と同心で連結された第1ローター61と、第1ローター61を回転させる第2ローター62と、第2ローター62を回転させる第3ローター63と、第3ローター63を回転させる圧電駆動装置64と有している。第1ローター61と第2ローター62と第3ローター63とは1組のギヤトレイン(被駆動部)として構成されている。圧電駆動装置64によって第3ローター63が回転すると、これに応じて第1ローター61が回転する。すると、第1ローター61の回転に応じて第1ローター61に連結された回動軸(第1回動軸51)が回転し、これに応じて第1連結部110がベース部材10に対して回動する。なお、ローターの数や各ローターのギア比は、駆動対象の軸の回転方向や要求されるトルク等に応じて任意に変更可能である。
【0028】
圧電駆動装置64は、圧電体(圧電素子)651が設けられた振動板66を備えている。より具体的には、振動板66の表面と裏面とに、5つの圧電体651を含む振動体65がそれぞれ張り合わされることにより圧電駆動装置64が構成されている。
【0029】
振動体65を構成する5つの圧電体651は、それぞれ、圧電体と、圧電体を挟持する第1電極及び第2電極とを有している(図示省略)。なお、第1電極と第2電極のどちらか一方の電極は共通電極としてもよい。これらの圧電体651は、
図2に示した制御部14に電気的に接続される。なお、振動体65に含まれる圧電体651は少なくとも1つあればよく、その数や配置は、これ以外の種々のものを採用可能である。また、振動体65は、振動板66の2つの面(表側の面及び裏側の面)のうちの一方の面だけに設けられていてもよい。
【0030】
圧電駆動装置64(振動板66)の端部には、突起部67が設けられている。突起部67は、セラミックス(例えばAl
2O
3)などの耐久性がある材料で形成されていることが好ましい。圧電駆動装置64の両側面には、圧電駆動装置64を支持するための複数の支持部68が、圧電駆動装置64の振動の節に対応する位置に設けられている。これらの支持部68は、振動板66と一体的に形成されている。なお、振動板66の同一の側面から突出している複数の支持部68同士は、連結板69を介して連結されていることが好ましい。
【0031】
図4は、圧電駆動装置64の動作原理について示す説明図である。圧電駆動装置64は、各圧電駆動装置64の圧電体651に一定周期で電圧を印加したときに、圧電駆動装置64の突起部67が伸縮又は楕円運動することによって動作する。すなわち、
図4(a)に示すように、互いに対角線の位置にある2つの圧電体651a,651dを1組として、特定の周波数の電圧を印加すると、圧電駆動装置64は、屈曲して蛇行形状(S字形状)に変形し、突起部67の先端が特定の方向に往復運動するか、又は、楕円運動する。この結果、突起部67に接する第3ローター63(
図3)が所定の方向に回転する。また、
図4(b)に示すように、他の1組の圧電体651b,651cに特定の周波数の電圧を印加すると、第3ローター63は逆方向に回転する。なお、圧電駆動装置64や振動体65のこのような動作については、例えば、特開2004−320979号公報、又は、対応する米国特許第7224102号に記載されており、その開示内容は参照により組み込まれる。
【0032】
C.関節機構の構造:
図5は、駆動装置1に備えられた関節機構90の構造を示す図である。
図5には、第1部材20と第2部材30とが第3回動軸53によって接続されることにより構成された関節機構90の構造を示している。駆動装置1のベース部材10から第4連結部140(または固定部40)までには、各回動部を制御部14に電気的に接続するためのフラット型配線部材70が内部に挿通されている。そのため、関節機構90内にもフラット型配線部材70が配置されている。フラット型配線部材70とは、形状が平状で、曲げることが可能な配線部材である。本実施形態のフラット型配線部材70は、フレキシブル基板によって構成されている。フラット型配線部材70は、形状が全体として平状であれば、表面は平坦であっても凹凸状であってもよい。フラット型配線部材70としては、フレキシブル基板以外にも、例えば、被覆線を複数本並べて融着したフラットケーブルや、平板型の導体を複数本並べて被覆したリボン状のフレキシブルフラットケーブルなどを採用することができる。
【0033】
図5(a)には、関節機構90の平面構造を模式的に示している。また、
図5(b)には、関節機構90内に配置されているフラット型配線部材70の状態を示している。また、
図5(c)には、
図5(a)のX−X断面を模式的に示している。
図5(c)では、第3回動軸53を回動させる第3回動部122の図示は省略している。
【0034】
図5(c)に示すように、第1部材20には、内部に第1空洞部21が設けられ、第2部材30には、内部に第2空洞部31が設けられている。フラット型配線部材70は、第1空洞部21および第2空洞部31を通り、第1部材20と第2部材30とに沿うように関節機構90内に設けられている。本実施形態では、フラット型配線部材70は、第3回動軸53上の上部の位置P1および下部の位置P2において、第1部材20および第2部材30に固定されている。なお、フラット型配線部材70は、第1部材20および第2部材30のいずれか一方に固定されていてもよい。
【0035】
フラット型配線部材70は、第3回動軸53付近において、第3回動軸53に平行な仮想線VLと3カ所で交わるように予め曲げられている。つまり、フラット型配線部材70は、関節機構90の第3回動軸53付近において、折り目がつかない程度に、Z折り状に予め曲げられている。このように、フラット型配線部材70が曲げられていれば、フラット型配線部材70を、その表面に垂直な軸(第3回動軸53)を中心として容易に曲げることができる。そのため、関節機構90を構成する第1部材20および第2部材30を、第3回動軸53周りにスムーズに回動させることができる。なお、
図5には、第3回動軸53を有する関節機構90内にフラット型配線部材70が配置されている様子を示しているが、第3回動軸53と平行な軸である第2回動軸52を有する関節機構(第1副部材112と第2副部材114とによって構成される関節機構)についても、その内部には、フラット型配線部材70が、
図5(c)に示すように予め曲げられて配置されている。
【0036】
図6は、関節機構90の回転可能角度を説明するための図である。関節機構90の回動可能角度は、フラット型配線部材70の回動可能角度に応じて決まる。そのため、以下では、関節機構90の回動可能角度が、フラット型配線部材70の回動可能角度であるものとして説明する。
図6(a)は、第1部材20と第2部材30とが回動していない場合のフラット型配線部材70の側面図を表し、
図6(b)には、第1部材20と第2部材30とが回動している場合のフラット型配線部材70の平面図を表している。
図6(a)には、フラット型配線部材70と仮想線VLとが交わる部分に黒丸を示している。フラット型配線部材70を第1部材20および第2部材30内に配置した場合、第2部材30が第1部材20に対して相対的に回動可能な角度は、以下のように規定することができる。
【0037】
フラット型配線部材70が、第3回動軸53に平行な仮想線VLと3カ所(
図6(a)参照)で交わる部分を有し、かつ、フラット型配線部材70が
図5(c)に示したように第1部材20および第2部材30に固定された場合において、
図6(b)に示すように、フラット型配線部材70の幅をWとし、
図6(a)に示すように、第1部材20と第2部材30とが回動していない場合に、第1部材20および第2部材30が延びる方向Xにおいて、仮想線VLがフラット型配線部材70に2カ所で交わる位置の間の距離をLとしたときに、
以下の式(1)を満たすθの4倍の角度(4θ)まで、第2部材30は第1部材20に相対的に回動可能である。
【0038】
2Lcos2θ/(cos2θ+1)−Wtanθ>0 ・・・(1)
【0039】
式(1)によって回動可能な角度が規定されるのは以下の理由による。まず、
図6(b)に示されている長さAと長さBとは、第1部材20の回動角度にかかわらず、以下の式(2)の関係を常に満たす。長さAとは、フラット型配線部材70が曲げられている領域の、フラット型配線部材70の長さ方向に沿った中心線の長さである。長さBとは、その中心線の端から第3回動軸53までの距離Bである。
A+2B=2L ・・・(2)
次に、長さAは、
図6(b)から以下の式(3)によって表すことができる。
A=2Bcos2θ ・・・(3)
この式(3)を式(2)に代入すると、
2Bcos2θ+2B=2L
となる。よって、式(2)の長さBは、以下のように表される。
B=L/(cos2θ+1)
この長さBを式(2)に代入すると、
A+2L/(cos2θ+1)=2L
となるため、
長さAは、以下の式(4)によって表すことが可能になる。
A=2Lcos2θ/(cos2θ+1) ・・・(4)
【0040】
次に、フラット型配線部材70が折り曲げられている領域の、フラット型配線部材70の最も短い長さCは、
図6(b)に示す角度θを用いると、次の式(5)のように表すことができる。
C=A−Wtanθ ・・・(5)
第1部材20が回動する際には、Cは0よりも大きい必要があるから、式(5)は、以下の式(6)のように表される。
A−Wtanθ>0 ・・・(6)
この式(6)に、上記式(4)によって表される長さAを代入すれば、以下のようになり、上記式(1)が導き出される。
2Lcos2θ/(cos2θ+1)−Wtanθ>0
【0041】
以上より、フラット型配線部材70の幅Wと、仮想線VLがフラット型配線部材70に2カ所で交わる2つの位置の間の距離Lとが定まれば、上記式(1)により、関節機構90の回動可能角度が定まる。
【0042】
なお、本実施形態では、フラット型配線部材70を、第1部材20および第2部材30に固定しているが、フラット型配線部材70は、第1部材20および第2部材30内に固定させないことも可能である。また、本実施形態では、関節機構90の内部にフラット型配線部材70が設けられているが、フラット型配線部材70は、関節機構90の外部に設けられていてもよい。また、
図5では、フラット型配線部材70が、第3回動軸53に平行な仮想線VLと3カ所で交わるように曲げられている例を示しているが、フラット型配線部材70は、仮想線VLと4カ所以上(好ましくは、4カ所以上、かつ、奇数箇所)で交わるように曲げられていてもよい。
【0043】
D.駆動装置の作用・効果:
図7は、
図2におけるA矢視図である。
図8は、
図7におけるB矢視図である。
図9は、
図8におけるC矢視図である。
図7に示されているように、駆動装置1を手に装着すると、ベース部材10が手の甲に配置され、第1回動軸51が人差し指中手骨80に沿って配置される。そのため、第1回動軸51に接続された第1副部材112は、親指の付け根の背側と平行を保つ。しかし、第1回動軸51が人差し指中手骨80に沿って配置されたとしても、これらの軸は同一の位置にはないため、第1回動軸51を中心に第1副部材112が回動すると、親指の第3関節83から第1副部材112までの高さγ(
図7,9参照)と、親指の第2関節84と第3関節83とを結ぶ親指中手骨82から第2回動軸52までの距離α(
図7,8参照)と、が親指の動きによって変化する。
【0044】
これに対して、本実施形態の駆動装置1は、親指の動きに応じて距離αが変動した場合であっても、
図8に示すように、第2副部材114が第2回動軸52周りに回動し、第3連結部130が第3回動軸53周りに回動し、第2連結部120が第1スライド機構117によって摺動することによって、その動きに適切に追従することができる。また、本実施形態の駆動装置1は、親指の動きに応じて高さγが変動した場合であっても、
図9に示すように、第4回動軸54周りに第4連結部140が回動し、第5回動軸55周りに固定部40が回動し、更に、固定部40と第5連結部150とが第2スライド機構44によって摺動することによって、その動きに適切に追従することができる。
【0045】
更に、本実施形態では、各可動部材が、上記のように動作する際に、第1回動部12が第1回動軸51を駆動し、第4回動部142が第4回動軸54を駆動することによって、親指の屈曲動作を補助することができる。また、第2回動部118が第2回動軸52を駆動し、第3回動部122が第3回動軸53を駆動することによって、親指の開閉動作を補助することができる。つまり、本実施形態の駆動装置1は、親指の動きに応じて高さγと距離αとが変動したとしても、その動きに各可動部材を追従させつつ、各回動部によって親指の動きを適切に補助することができる。そのため、親指の関節に負担をかけることなく、自由度の高い親指の動きを補助することができる。
そのほか、本実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0046】
本実施形態では、手の甲に配置されるベース部材10に対して、手の人差し指中手骨80に沿った第1回動軸51周りに回動可能に第1部材20が設けられている。そのため、親指の腹側が、手の平側に向く動きを第1部材20によって良好に補助することができる。
【0047】
また、本実施形態の駆動装置1は、第1部材20を第1回動軸51周りに回動させる第1回動部12を備えている。そのため、第1部材20を積極的に回動させることができ、その結果、親指の腹が手の平側に向く動きをより良好に補助することができる。
【0048】
また、本実施形態では、各回動部が、圧電体651や振動板66によって構成されているため、回動部を小さく構成することができる。そのため、駆動装置1を小型化することができる。また、本実施形態では、振動板が被駆動部(ギヤトレイン)に直接的に当たるのではなく、振動板66に設けられた突起部67が被駆動部に当たるため、回動部の耐久性を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態では、第1部材20と手との間に弾性部材116が備えられているので、第1部材20と手とが擦れることを抑制することができる。そのため、第1部材20を、第1回動軸51周りにスムーズに回動させることができる。
【0050】
また、本実施形態の駆動装置1は、第1部材20と第2部材30とが第3回動部122によって第1回動方向に回動され、しかも、ベース部材10と第2部材30との距離が可変される。そのため、第2部材30によって親指の動きを良好に補助することができる。また、本実施形態において、第1回動方向とは、手の親指が人差し指に対して開閉する方向であるため、親指の動きをより良好に補助することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1部材20に備えられた第1連結部110と第2連結部120とが、接近および離間することにより、ベース部材10と第2部材30との距離が可変する。そのため、簡易な構成でベース部材10と第2部材30との距離を可変させることができる。また、このような構成であれば、第1部材20を小型化することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1部材20を構成する第1連結部110が、相対的に回動可能な第1副部材112と第2副部材114とによって構成されている。そのため、第1連結部110の動きの自由度が高まり、親指の動きをより良好に補助することができる。
【0053】
また、本実施形態の駆動装置1は、第2副部材114を第1副部材112に対して相対的に回動させる第2回動部118を備えている。そのため、第2副部材114を第1副部材112に対して積極的に回動させることができ、その結果、親指の動きをより良好に補助することができる。
【0054】
また、本実施形態では、第2部材30が、第3連結部130と第4連結部140と第5連結部150と、を備えており、第4連結部140および第5連結部150が、第3連結部130に対して、第1回動方向とは異なる第2回動方向に回動可能である。そのため、駆動装置1の動きの自由度が高まり、親指の動きをより良好に補助することができる。
【0055】
また、本実施形態の駆動装置1は、第4連結部140を、第3連結部130に対して相対的に第2回動方向に回動させる第4回動部142を備えている。そのため、第4連結部140を第3連結部130に対して積極的に回動させることができ、その結果、親指の動きをより良好に補助することができる。また、本実施形態では、第2回動方向とは、親指が屈曲する方向であるため、親指の動きを、より良好に補助することができる。
【0056】
また、本実施形態では、親指に装着される固定部40が第2部材30に設けられており、この固定部40は、親指の基節骨81に沿って相対的に摺動可能である。よって、親指の動きをより良好に補助することができる。
【0057】
また、本実施形態の関節機構90には、第1部材20と第2部材30とに沿ってフラット型配線部材70が設けられており、フラット型配線部材70は、第3回動軸53に平行な仮想線VLと3カ所以上交わる部分を有するように曲げられている。そのため、第1部材20と第2部材30とが第3回動軸53周りに回動された場合であっても、フラット型配線部材70をその動きに追従させることができるので、フラット型配線部材70の存在によって、関節機構90の動きが制限されてしまうことを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、フラット型配線部材70は、第1部材20および第2部材30の少なくとも一方に固定されているため、関節機構90に対してぐらつくことを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、第1部材20は、第1空洞部21を有しており、第2部材30は、第2空洞部31を有している。そして、フラット型配線部材70は、これら第1空洞部21および第2空洞部31を通る。そのため、関節機構90を小型化することができる。
【0060】
また、本実施形態では、フラット型配線部材70は、フレキシブル基板によって構成されている。そのため、特別な材料によってフラット型配線部材を構成しなくてもよい。よって、関節機構90の製造コストを削減することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記式(1)によって、関節機構90の回動可能角度が規定される。そのため、関節機構90の設計を容易に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、フラット型配線部材70が設けられた第1部材20と第2部材30とが第3回動部122によって回動されるが、本実施形態では、フラット型配線部材70は上記のように予め曲げられているため、第3回動部122に負担がかかることを抑制することができる。
【0063】
E.変形例:
<第1,2変形例>
図10は、駆動装置の第1の変形例を示す図である。
図11は、駆動装置の第2の変形例を示す図である。上記実施形態の駆動装置1では、第1部材20に備えられた第1スライド機構117によって第2連結部120と第1連結部110とを伸縮させることにより、ベース部材10と第2部材30との間の距離を調整している。これに対して、第1部材20は、ベース部材10と第2部材30との間の距離を調整可能であれば、どのような構造であってもよい。例えば、
図10に示した駆動装置1aは、第1部材20aの一部が、蛇腹状の部材によって伸縮可能に構成されている。このような構成によっても、上記実施形態と同様に、ベース部材10と第2部材30との間の距離を調整することができる。また、
図11に示した駆動装置1bは、第1部材20bの一部が屈曲可能に構成されている。このような構成であっても、上記実施形態と同様に、ベース部材10と第2部材30との間の距離を調整可能である。
【0064】
<第3,4変形例>
図12は、駆動装置の第3の変形例を示す図である。
図13は、駆動装置の第4の変形例を示す図である。上記実施形態の駆動装置1は、第2回動軸52と第3回動軸53とを備えている。しかし、これらの軸は、いずれか一方(好ましくは、第2回動軸52の方)を省略してもよい。例えば、
図12に示した駆動装置1cは、第2回動軸52が省略されている。そのため、第2回動部118も省略されており、更に、第1副部材112と第2副部材114とが一体化され、1つの第1連結部110cが構成されている。また、
図13に示した駆動装置1dは、第3回動軸53が省略されている。そのため、第3回動部122も省略されており、更に、第2連結部と第3連結部とが一体化された連結部125として構成されている。これらの図に示したように、第2回動軸52と第3回動軸53とのどちらか一方が省略された場合であっても、各可動部材の遊びによって、省略された軸の可動範囲を吸収することができる。また、
図12や
図13に示したように、回動軸の数を削減すれば、それだけ、回動部の数を削減することができるため、駆動装置1の小型化や軽量化、省電力化を図ることができる。
【0065】
<第5変形例>
図14は、駆動装置の第5の変形例を示す図である。上記実施形態の駆動装置1は、第1部材20と第2部材30とを備えているが、
図14に示すように、第2部材30は省略してもよい。この場合、第1部材20eは、第2副部材114を備えていなくてもよい。このような構成によれば、親指が人差し指中手骨80に沿った軸周りに回動することを補助する単機能な駆動装置1eを提供することができる。
【0066】
<第6変形例>
上記実施形態では、第1回動軸51を駆動する第1回動部12が、ベース部材10に備えられているが、第1回動部12は、第1部材20に備えられていてもよい。また、上記実施形態では、第2回動軸52を駆動する第2回動部118が、第1副部材112に備えられているが、第2回動部118は第2副部材114に備えられていてもよい。また、上記実施形態では、第3回動軸53を駆動する第3回動部122が、第2連結部120に備えられているが、第3回動部122は、第3連結部130に備えられていてもよい。また、上記実施形態では、第4回動軸54を駆動する第4回動部142が、第4連結部140に備えられているが、第4回動部142は、第3連結部130に備えられていてもよい。
【0067】
<第7変形例>
上記実施形態では、
図2および
図3に示したように、圧電体651を用いた回動部によって各回動軸を駆動しているが、各回動軸は、各種アクチュエーターによって駆動してもよい。例えば、各回動軸を駆動するアクチュエーターとして、一般的な小型モーターや電磁アクチュエーター等を利用することが可能である。また、ワイヤーとワイヤーの張力を変化させるテンショナーとから構成されるアクチュエーターや、ホースとホース内の油圧や空気圧を変化させるポンプとから構成されるアクチュエーター等を利用することも可能である。
【0068】
<第8変形例>
上記実施形態におけるフラット型配線部材70は、駆動装置1に備えられた関節機構90に限らず、他の任意の関節機構に備えられてもよい。また、フラット型配線部材70が挿通された関節機構は、回動部等のアクチュエーターを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。また、駆動装置1は、フラット型配線部材70に限らず、他の形態の配線部材によって配線が行われていてもよい。例えば、一般的な被覆線や、複数の被覆線をシースによってまとめたケーブルなどによって配線が行われていてもよい。
【0069】
<第9変形例>
上記実施形態では、駆動装置1は、回動部として、第1回動部12と、第2回動部118と、第3回動部122と、第4回動部142とを備えているが、これらすべての回動部を備えていなくてもよい。例えば、動きを補助する必要のない関節を駆動するための回動部は省略することが可能である。
【0070】
<第10変形例>
上記実施形態では、駆動装置1は、人の手の親指に装着されることが想定されているが、駆動装置1は、人に限らず、動物などの生体の関節や、ロボットなど生体以外の関節の動きを補助する用途に用いてもよい。
【0071】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。