(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を用いて本発明のシンチレータパネルの製造方法により製造したシンチレータパネル及びそれを用いた放射線検出装置の好ましい構成について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0012】
図1は、本発明のシンチレータパネルの製造方法により製造したシンチレータパネルを含む放射線検出装置の構成を模式的に表した断面図である。
図2は、本発明のシンチレータパネルの製造方法により製造したシンチレータパネルの構成を模式的に表した斜視図である。放射線検出装置1は、シンチレータパネル2、出力基板3及び電源部12からなる。シンチレータパネル2は、蛍光体からなるシンチレータ層7を含み、X線等の入射された放射線のエネルギーを吸収して、波長が300〜800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光線を中心に、紫外光から赤外光にわたる範囲の電磁波(光)を放射する。
【0013】
シンチレータパネル2は、平板状の基板4と、その上に区画された空間すなわちセルを形成するための隔壁6と、隔壁6で形成された空間内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層7と、から構成される。また、基板4と隔壁6との間に、接着層5をさらに形成することで、隔壁6を基板4に安定的に固定すなわち固設することができる。また、隔壁6の表面に反射膜13が形成されていることが好ましい。また、隔壁6と基板4との間に非焼結層14、補強層15を有することが好ましい。
【0014】
出力基板3は、基板11上にフォトセンサとTFTとからなる画素が2次元状に形成された、光電変換層9及び出力層10を有する。シンチレータパネル2の出光面と出力基板3の光電変換層9とを、ポリイミド樹脂等からなる隔膜層8を介して、接着又は密着させることで、放射線検出装置1が得られる。シンチレータ層7で発光した光が光電変換層9に到達すると、光電変換層9で光電変換が行われ、出力層10を通じて電気信号が出力される。本発明の製造方法により製造したシンチレータパネルは各セルを隔壁が仕切っているので、光電変換素子の画素の大きさ及びピッチと、シンチレータパネルのセルの大きさ及びピッチを一致させることにより、光電変換素子の各画素と、シンチレータパネルの各セルを対応づけることができる。
【0015】
本発明の第一の態様における立体構造物の製造方法は、基材上に、ガラスパターンを形成した後、上記ガラスパターンを上記基材から剥離することを特徴とする。つまり、本発明の立体構造物の製造方法によれば、基材から剥離され独立した立体構造物が得られる。この立体構造物が細幅な隔壁であれば、任意の基板上に細幅の隔壁を大面積に高精度で載置できる。よって、耐熱性や強度の制限を受けることなく適切な基板を選定して、そこに細幅の隔壁を載置できる。すなわち、より高輝度かつ鮮明な撮影を実現可能なシンチレータパネルの製造方法並びにシンチレータパネルを提供することができる。基材上に形成されるガラスパターンは、ガラスを主成分とすることが好ましい。また、ガラスパターンはガラス粉末を焼結して得られる焼結体であることが好ましい。
【0016】
本発明の第二の態様における立体構造物の製造方法は、基材の表面に、ガラス粉末含有ペーストAを塗布して塗布膜Aを得る、塗布工程と、上記塗布膜Aを加工して、焼成前パターンを得る、パターン形成工程と、上記焼成前パターンを焼成して、焼成後パターンを得る、焼成工程と、上記焼成後パターンを上記基材から剥離して、立体構造物を得る、剥離工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明において、基材は、塗布工程、パターン形成工程及び焼成工程を通じて用いることが好ましい。これらの工程で一貫して同一の基材を用い、これらの工程間で塗布膜やパターンを基材から剥離しないことにより、塗布膜へのダメージや塗布膜の延伸による膜厚変化、パターンの歪み等が生じにくくなり、焼成後パターンの均一性や位置精度を広い面積にわたって確保しやすくなる。
【0018】
基材としては、アルミナ、窒化アルミ、ムライト、ステアタイト、チッ化珪素若しくは炭化珪素等のセラミックス板、セラミックス粉末とガラスの粉末とを混合して焼結したガラスセラミックス板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐若しくはガリウム窒素等の半導体からなる半導体板、アルミニウムシート、鉄シート若しくは銅シート等の金属シート、石英、ホウ珪酸ガラス若しくは化学的強化ガラス等のガラスからなるガラス板等を用いることができる。
【0019】
基材は高耐熱性であることが好ましい。ここで高耐熱性の基材とは、焼成工程において焼失せず、かつ焼成工程の前後で、室温における体積変化率が20%以下である基材をいう。高耐熱性の基材を用いることにより、焼成工程におけるピッチの変動等の影響を最小限にとどめることができる。基材の線膨張係数をαs(K
−1)、立体構造物の成分であるガラスの線膨張係数をαg(K
−1)とした場合、焼成工程における立体構造物や基材の反りを抑制するため、αsとαgの差の絶対値|αs−αg|は、200×10
−7(K
−1)以下であることが好ましく、50×10
−7(K
−1)以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明の製造方法により製造される立体構造物は、その強度や耐熱性を高めるため、実質的に無機物からなることが好ましい。ここで無機物とは、単純な一部の炭素化合物(グラファイト若しくはダイヤモンド等炭素の同素体、金属炭化物又は金属炭酸塩等)及び炭素以外の元素で構成される化合物をいう。なお、「実施的に無機物からなる」とは、厳密な意味で無機物以外の成分の存在を排除するものではなく、原料となる無機物自体が含有する不純物や、立体構造物の製造の過程において残留する不純物程度の無機物以外の成分の存在は、許容される。
【0021】
本発明の製造方法により製造される立体構造物は、ガラスを主成分とすることが好ましい。ガラスを主成分とする立体構造物は高強度であることから、剥離工程において基材から立体構造物を剥離しても、形状が変化しない。また、ガラスはセラミックス等に比べて相対的に低温で焼成可能であるため、立体構造物の製造が容易となる。本発明の第二の態様においてガラスを主成分とする立体構造物を製造するためには、塗布工程で用いるガラス粉末含有ペーストAが、ガラス粉末を無機成分中の主成分とする必要がある。なお、ガラスを主成分とするとは、立体構造物を構成する材料の50〜100体積%がガラスであることをいい、ガラス粉末を無機成分中の主成分とするとは、ガラス粉末含有ペーストAが含有する無機成分の50〜100体積%がガラス粉末であることをいう。ガラスが主成分でない場合には、立体構造物の強度が低くなる。
【0022】
ガラス粉末含有ペーストAが含有するガラス粉末は、焼成温度で軟化するガラスが好ましく、軟化温度が700℃以下である、低軟化点ガラスがより好ましい。低軟化点ガラスを用いることにより、焼成温度を低くでき、基材の選択の幅が広くなる。
【0023】
軟化温度は、示差熱分析装置(例えば、差動型示差熱天秤TG8120;株式会社リガク製)を用いて、サンプルを測定して得られるDTA曲線から、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求めることができる。より具体的には、まず、示差熱分析装置を用いて、アルミナ粉末を標準試料として、室温から20℃/分で昇温して、測定サンプルとなる無機粉末を測定し、DTA曲線を得る。そして得られたDTA曲線より、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求めた軟化点Tsを、軟化温度とすることができる。
【0024】
低軟化点ガラスを得るためには、ガラスを低軟化点化するために有効な化合物である、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛及びアルカリ金属の酸化物からなる群から選ばれる金属酸化物を用いることができるが、アルカリ金属の酸化物を用いて、ガラスの軟化温度を調整することが好ましい。ここでアルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる金属をいう。
【0025】
低軟化点ガラスに占めるアルカリ金属酸化物の割合は、2〜20質量%であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の割合が2質量%未満であると、軟化温度が高くなり、焼成工程を高温で行う必要が生じてしまい、立体構造物に欠陥が生じやすい。一方で、アルカリ金属酸化物の割合が20質量%を超えると、焼成工程においてガラスの粘度が過度に低下し、得られる焼成後パターンの形状に歪みが生じやすい。
【0026】
また低軟化点ガラスは、高温での粘度を至適なものとするために、酸化亜鉛を3〜10質量%含有することが好ましい。低軟化点ガラスに占める酸化亜鉛の割合が3質量%未満であると、高温での粘度が高くなる。一方で、酸化亜鉛の含有量が10質量%を超えると、低軟化点ガラスの製造コストが高くなる。
【0027】
さらに低軟化点ガラスは、安定性、結晶性、透明性、屈折率又は熱膨張特性の調整のため、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群から選ばれる金属酸化物を含有することが好ましい。ここでアルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群から選ばれる金属をいう。
【0028】
この他に低軟化点ガラスは、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化ビスマス等を含有しても構わない。一方で、環境汚染を引き起こす懸念があることから、酸化鉛を実質的に含有しないことが好ましい。
【0029】
好ましい低軟化点ガラスの組成範囲の一例を、以下に示す。
アルカリ金属酸化物 : 2〜20質量%
酸化亜鉛 : 3〜10質量%
酸化ケイ素 : 20〜40質量%
酸化ホウ素 : 25〜40質量%
酸化アルミニウム : 10〜30質量%
アルカリ土類金属酸化物 : 5〜15質量%
ガラス粉末を含む無機粉末の粒子径は、粒度分布測定装置(例えば、MT3300;日機装株式会社製)を用いて測定をすることができる。より具体的には、水を満たした粒度分布測定装置の試料室に無機粉末を投入し、300秒間超音波処理を行ってから測定をすることができる。
【0030】
低軟化点ガラス粉末の50%体積平均粒子径(以下、「D50」)は、1.0〜4.0μmであることが好ましい。D50が1.0μm未満であると、ガラス粉末が凝集し、均一な分散性が得られなくなって、ペーストの流動安定性が低下する。一方で、D50が4.0μmを超えると、焼成工程で得られる焼成後パターンの表面凹凸が大きくなり、事後的に立体構造物が破砕する原因となりやすい。
【0031】
ガラス粉末含有ペーストAは、焼成工程におけるパターンの収縮率の制御や、最終的に得られる立体構造物の形状保持のため、焼成温度で軟化するガラス以外に、焼成温度で軟化しないガラス、又は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン若しくは酸化ジルコニウム等のセラミックス粒子を、フィラーとして含有しても構わない。無機成分全体に占めるフィラーの割合は、焼成温度で軟化するガラス粉末の焼結が阻害されることによる立体構造物の強度低下を防ぐため、50体積%以下であることが好ましい。フィラーのD50は、低軟化点ガラス粉末と同様であることが好ましい。
【0032】
本発明の立体構造物の製造方法が備える塗布工程は、基材の表面に直接又は他の層を介して、ガラス粉末含有ペーストAを全面又は部分的に塗布して塗布膜を得る工程である。ガラス粉末含有ペーストAを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター又はブレードコーターが挙げられる。得られる塗布膜Aの厚みは、ペースト組成やプロセス条件により適宜調整することができる。
【0033】
塗布膜Aは、複数層からなっていても構わない。複数層の塗布膜Aは塗布工程を複数回繰り返すことにより得られる。複数層からなる塗布膜Aにおいて、各層の組成は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0034】
本発明の立体構造物の製造方法が備えるパターン形成工程は、塗布工程で得られた塗布膜を加工して、焼成前パターンを得る工程である。塗布膜の加工の方法としては、例えば、感光性ペースト法すなわちフォトリソグラフィ、サンドブラスト法、インプリント法又は機械加工法が挙げられるが、大面積に高歩留まりで焼成前パターンを製造できるため、感光性ペースト法が好ましい。
【0035】
本発明において、パターン形成工程において形成する焼成前パターンの構造がストライプ状、格子状又はハニカム状(六角形状)のいずれかの構造である場合、焼成後にそれぞれストライプ状、格子状又はハニカム状の対応する構造を有する立体構造物が得られる。このようなストライプ状、格子状又はハニカム状のいずれかの構造を有する立体構造物は、シンチレータパネルの構成要素である、隔壁として用いることができる。
【0036】
フォトリソグラフィによるパターン形成工程は、例えば、塗布工程で塗布膜Aを、所定の開口部を有するフォトマスクを介して露光する露光工程と、露光後の塗布膜Aにおける、現像液に可溶な部分を溶解除去する現像工程と、から構成することができる。
【0037】
露光工程は、露光により塗布膜Aの必要な部分を光硬化させて、又は、塗布膜Aの不要な部分を光分解させて、塗布膜Aの任意の部分を、現像液に可溶とする工程である。現像工程は、露光後の塗布膜Aにおける、現像液に可溶な部分を現像液で溶解除去して、必要な部分のみが残存した焼成前パターンが得られる。
【0038】
露光工程においてはフォトマスクを用いずに、レーザー光等で任意のパターンを直接描画しても構わない。露光装置としては、例えば、プロキシミティ露光機又はレーザー露光機が挙げられる。露光工程で照射する活性光線としては、例えば、近赤外線、可視光線又は紫外線が挙げられるが、紫外線が好ましい。またその光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ又は殺菌灯が挙げられるが、超高圧水銀灯が好ましい。露光条件は塗布厚みにより異なるが、1〜100mW/cm
2の出力の超高圧水銀灯を用いて、0.01〜30分間露光をすることが通常である。
【0039】
現像工程における現像の方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法又はブラシ法が挙げられる。現像液としては、露光後の塗布膜Aにおける不要な部分を溶解することが可能な溶媒を適宜選択すればよいが、水を主成分とする水溶液が好ましい。例えば、ガラス粉末含有ペーストAがカルボキシル基を有するポリマーを含有する場合には、現像液としてアルカリ水溶液を選択することができる。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は水酸化カルシウム等の無機アルカリ水溶液又はテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン若しくはジエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が挙げられるが、焼成工程における除去が容易であることから、有機アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。アルカリ濃度が過度に低いと、露光後の塗布膜Aにおける不要な部分が十分に除去されない。一方で、アルカリ濃度が過度に高いと、焼成前パターンの剥離又は腐食のおそれがある。現像温度は、工程管理を容易にするため、20〜50℃が好ましい。
【0040】
パターン形成工程における塗布膜Aの加工をフォトリソグラフィにより行うには、塗布工程で塗布するガラス粉末含有ペーストAが、感光性であることが必要である。すなわち、ガラス粉末含有ペーストAが、感光性有機成分を含有する必要がある。感光性のガラス粉末含有ペーストAに占める有機成分の割合は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。有機成分が30質量%未満であると、ペースト中の無機成分の分散性が低下し、焼成工程で欠陥が生じやすくなるばかりでなく、ペースト粘度が高くなって塗布性が低下し、さらにペーストの安定性も低下する。一方で、有機成分が80質量%を超えると、焼成工程におけるパターンの収縮率が大きくなって、欠陥が生じやすくなる。
【0041】
感光性のガラス粉末含有ペーストAが含有するガラス粉末は、焼成工程において有機成分をほぼ完全に除去し、最終的に得られる立体構造物の強度を確保するため、軟化温度が480℃以上であることが好ましい。軟化温度が480℃未満であると、焼成工程において有機成分が十分に除去される前にガラス粉末が軟化してしまい、焼結後のガラス中に焼け残った炭素成分(以下、「炭素残分」)が残存し、立体構造物の着色を誘発してしまうことから、立体構造物がシンチレータパネル用の隔壁である場合、シンチレータパネルの輝度を低下させる等の懸念がある。
【0042】
感光性のガラス粉末含有ペーストAにおいては、露光時の光散乱を抑制し、高精度のパターンを形成するため、ガラス粉末の屈折率n1と、有機成分の屈折率n2とが、−0.1 < n1−n2 < 0.1の関係を満たすことが好ましく、−0.01 ≦ n1−n2 ≦ 0.01の関係を満たすことがより好ましく、−0.005 ≦ n1−n2 ≦ 0.005の関係を満たすことがさらに好ましい。なお、ガラス粉末の屈折率は、ガラス粉末が含有する金属酸化物の組成によって、適宜調整することができる。
【0043】
ガラス粉末の屈折率は、ベッケ線検出法により測定することができる。また、有機成分の屈折率は、有機成分からなる塗膜をエリプソメトリーにより測定することで求めることができる。より具体的には、ガラス粉末又は有機成分の、25℃での波長436nm(g線)における屈折率(ng)を、それぞれn1又はn2とすることができる。
【0044】
感光性のガラス粉末含有ペーストAが含有する感光性有機成分としては、例えば、感光性モノマー、感光性オリゴマー又は感光性ポリマーが挙げられる。ここで感光性モノマー、感光性オリゴマー又は感光性ポリマーとは、活性光線の照射により、光架橋又は光重合等の反応を起こして化学構造が変化するモノマー、オリゴマー又はポリマーをいう。
【0045】
感光性モノマーとしては、活性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物が好ましい。そのような化合物としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はアクリルアミド基を有する化合物が挙げられるが、光架橋の密度を高め、高精度のパターンを形成するため、多官能アクリレート化合物又は多官能メタクリレート化合物が好ましい。
【0046】
感光性オリゴマー又は感光性ポリマーとしては、活性の炭素−炭素不飽和二重結合を有し、かつカルボキシル基を有するオリゴマー又はポリマーが好ましい。そのようなオリゴマー又はポリマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸若しくはこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマー、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル又は2−ヒドロキシアクリレートを共重合することにより得られる。活性の炭素−炭素不飽和二重結合をオリゴマー又はポリマーに導入する方法としては、例えば、オリゴマー又はポリマーが有するメルカプト基、アミノ基、水酸基又はカルボキシル基に対して、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド若しくはアリルクロライド、グリシジル基若しくはイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物又はマレイン酸等のカルボン酸を反応させる方法が挙げられる。
【0047】
ウレタン結合を有する感光性モノマー又は感光性オリゴマーを用いることにより、焼成工程の初期における応力を緩和することが可能な、焼成工程においてパターン欠損をしにくいガラス粉末含有ペーストAを得ることができる。
【0048】
感光性のガラス粉末含有ペーストAは、必要に応じて、光重合開始剤を含有しても構わない。ここで光重合開始剤とは、活性光線の照射により、ラジカルを発生する化合物をいう。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、過酸化ベンゾイン若しくはエオシン又はメチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸若しくはトリエタノールアミン等との還元剤の組合せが挙げられる。
【0049】
感光性のガラス粉末含有ペーストAが、感光性ポリマーとしてカルボキシル基を有するポリマーを含有することにより、現像時のアルカリ水溶液への溶解性が向上する。カルボキシル基を有するポリマーの酸価は、50〜150mgKOH/gが好ましい。酸価が150mgKOH/g以下であると、現像マージンが広くなる。一方で、酸価が50mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液への溶解性が低下せず、高精細のパターンを得ることができる。
【0050】
感光性のガラス粉末含有ペーストAは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラー又は混練機で均質に混合分散して得ることができる。
【0051】
感光性のガラス粉末含有ペーストAの粘度は、無機粉末、増粘剤、有機溶媒、重合禁止剤、可塑剤又は沈降防止剤等の添加割合によって適宜調整することができるが、その範囲は2〜200Pa・sが好ましい。例えば、感光性のガラス粉末含有ペーストAをスピンコート法で基材に塗布する場合には、2〜5Pa・sの粘度が好ましく、ブレードコーター法又はダイコーター法で基材に塗布する場合には、10〜50Pa・sの粘度が好ましい。感光性のガラス粉末含有ペーストAを1回のスクリーン印刷法で塗布して膜厚10〜20μmの塗布膜を得る場合には、50〜200Pa・sの粘度が好ましい。
【0052】
本発明の立体構造物の製造方法が備える焼成工程は、パターン形成工程で得られた焼成前パターンを焼成して、ガラス粉末含有ペーストAが含有する有機成分を分解除去し、ガラス粉末を軟化及び焼結させて、焼成後パターンを得る工程である。焼成条件はガラス粉末含有ペーストAの組成や基材の種類により異なるが、例えば、空気、窒素又は水素雰囲気の焼成炉で焼成することができる。焼成炉としては、例えば、バッチ式の焼成炉又はベルト式の連続型焼成炉が挙げられる。焼成温度(焼成プロファイルにおける最高温度)は、500〜1000℃が好ましく、500〜800℃がより好ましく、500〜700℃がさらに好ましい。焼成温度が500℃未満であると、有機成分の分解除去が不十分となることがある。一方で、焼成温度が1000℃を超えると、高耐熱性の基材として用いることが可能な基材がセラミック板等に限定される。焼成の時間は、10〜60分間が好ましい。
【0053】
本発明の立体構造物の製造方法が備える剥離工程は、焼成工程で得られた焼成後パターンを基材から剥離して、立体構造物を得る工程である。
【0054】
本発明の第三の態様における立体構造物の製造方法は、基材の表面に、非焼結ペーストを塗布して剥離補助層を得る、第1の塗布工程と、上記剥離補助層の表面に、ガラス粉末含有ペーストAを塗布して塗布膜Aを得る、第2の塗布工程と、上記塗布膜Aを加工して焼成前パターンを得る、パターン形成工程と、上記焼成前パターン及び上記剥離補助層を焼成して、焼成後パターン及び非焼結層を得る、焼成工程と、上記焼成後パターン及び上記非焼結層を上記基材から剥離して、立体構造物を得る、剥離工程と、を備えることを特徴とする。すなわち、この態様における本発明の立体構造物の製造方法は、本発明の第二の態様における立体構造物の製造方法に対して、基材の表面に、非焼結ペーストを塗布して剥離補助層を得る、第1の塗布工程が追加されていることを特徴とする。なお、上記第二の態様における塗布工程は、上記第三の態様における第2の塗布工程に相当するものである。
【0055】
本発明において、基材は、第1の塗布工程、第2の塗布工程、パターン形成工程及び焼成工程を通じて用いることが好ましい。
【0056】
第1の塗布工程において、基材の表面に剥離補助層を形成しておくことにより、後の剥離工程において基材から焼成後パターンを剥離することが容易となるため、基材を研磨して除去する方法等に比べてコストがかからず好ましい。
【0057】
剥離補助層は、非焼結ペーストを塗布することにより得られる。ここで非焼結ペーストとは、焼成工程において焼結しない無機粉末(以下、「非焼結無機粉末」)を、無機成分中の主成分として含有するペーストをいう。非焼結無機粉末を無機成分中の主成分とするとは、非焼結ペーストが含有する無機成分の50〜100体積%が、非焼結無機粉末であることをいう。非焼結ペーストが、非焼結無機粉末を無機成分中の主成分として含有することにより、剥離補助層が焼成工程におけるパターンと基材との融着を抑制でき、焼成後パターン及び非焼結層の剥離が容易となる。非焼結ペーストが含有する無機成分に占める非焼結無機粉末の割合は、70〜100体積%が好ましく、90〜100体積%がより好ましい。
【0058】
非焼結無機粉末としては、例えば、軟化温度が焼成温度よりも高い、ガラス粉末又はセラミック粉末が挙げられるが、焼成工程における基板との融着を防ぐため、軟化温度が焼成温度よりも50℃以上高いことが好ましい。より具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化コバルト若しくは酸化ニッケル等のセラミックス粒子又は高軟化点ガラス粉末が好ましい。
【0059】
非焼結無機粉末のD50は、0.01〜20μmであることが好ましく、0.05〜3.0μmであることがより好ましい。D50が0.01μm未満であると、焼成工程後に基材から立体構造物を剥離することが困難になりやすい。一方で、D50が20μmを超えると、過度に剥離しやすくなり、焼成中にパターンが部分的に剥がれてしまうことがある。
【0060】
非焼結無機粉末の形状としては、例えば、不定形状、球状、扁平状又は棒状が挙げられる。
【0061】
非焼結ペーストは、非焼結無機粉末を、全無機成分に対し50体積%以上含有することが必要であるが、剥離補助層の特性を損なわない範囲で、焼成温度で焼結するガラス粉末を含んでも構わない。そのようなガラス粉末を適量含有することで、焼成におけるパターン端部のめくれや反りを抑制できることがある。
【0062】
非焼結ペーストは、焼成工程後に残存する非焼結無機粉末を含む無機成分と、焼成工程時に熱分解される有機成分とで構成される。非焼結ペーストが含有する有機成分は、20〜80質量%であることが好ましい。有機成分が20質量%未満であると、ペースト中の無機成分の分散性が低下し、焼成工程で欠陥が生じやすくなる。一方で、有機成分が80質量%を超えると、焼成工程における収縮が大きくなり、ひび割れ等の欠陥が生じやすくなる。
【0063】
非焼結ペーストに含まれる有機成分としては、バインダー樹脂、硬化性モノマー、重合開始剤、分散剤又は有機溶媒が好ましい。
【0064】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリアクリルアミド又はアクリル樹脂が挙げられる。また、感光性のガラス粉末含有ペーストに用いる感光性オリゴマー又は感光性ポリマーも適宜用いることができる。なお、ポリメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーン樹脂を含有してもよいが、シリコーン樹脂は焼成後に炭素残分が多くなりやすいことから、その含有量はバインダー樹脂中の50質量%以下であることが好ましい。
【0065】
非焼結ペーストを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター又はブレードコーターが挙げられる。これらの方法により塗布した後、乾燥することにより、剥離補助層が得られる。
【0066】
剥離補助層は複数層からなっていても構わない。複数層の剥離補助層は第1の塗布工程を複数回繰り返すことにより得られる。複数層からなる剥離補助層において、各層の組成は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0067】
硬化性モノマーとしては、光や熱により架橋又は重合等の反応をさせるため、炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマー、又は、ヒドロキシル基若しくはイソシアネート基等を有するモノマーが好ましい。架橋又は重合等の反応をさせることで、剥離補助層の耐溶剤性や引掻き耐性が向上するため、剥離補助層の表面に他のペーストを塗布する際、剥離補助層の膨潤や剥がれが起こりにくくなる。
【0068】
剥離補助層の厚さは、0.1〜100μmであることが好ましく、0.2〜50μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらにより好ましい。剥離補助層の厚さが0.2μm未満であると、焼成工程後に立体構造物を基材から剥離しにくくなりやすい。一方で、厚さが50μmを超えると、過度に剥離しやすくなり、焼成工程中にパターンが部分的に剥がれてしまうことがある。
【0069】
剥離補助層を焼成することにより、非焼結層が得られる。非焼結層とは、非焼結無機粉末を無機成分中の主成分として含有する層をいう。焼成後の非焼結層は、通常、基材と立体構造物の両方に付着していることから、基材からの立体構造物の剥離に伴い、非焼結層は基材側と立体構造物側とに分離される。剥離後に立体構造物側に残留する非焼結層の厚さは、0.01〜50μmであることが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。0.01μmよりも薄くなるような条件では、基材からの立体構造物の剥離が困難になることがある。また、50μmよりも厚くなると、非焼結無機粉末が立体構造物から剥離しやすくなる。
【0070】
非焼結層の厚さは、断面を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」)により観察し、SEM画像の濃淡の差で非焼結無機粉末とその他の無機成分とを区別し、非焼結無機粉末を無機成分中の主成分として含有する層の厚みを測定することで決定できる。なお、剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストAを塗布して焼成した場合、焼成前に剥離補助層であった範囲にガラス粉末含有ペーストA中のガラスが浸透する場合があるため、同じ厚さの剥離補助層を単層で塗布し、焼成した場合に比べて非焼結層の厚さが薄くなる傾向がある。
【0071】
立体構造物側の非焼結層が厚い場合、超音波洗浄等により除去して厚さを調整することもできる。
【0072】
本発明の第四の態様における立体構造物の製造方法は、基材の表面に、非焼結ペーストを塗布して剥離補助層を得る、第1の塗布工程と、上記剥離補助層の表面に、ガラス粉末含有ペーストBを塗布して塗布膜Bを得る、第2の塗布工程と、上記塗布膜Bの表面に、ガラス粉末含有ペーストAを塗布して塗布膜Aを得る、第3の塗布工程と、上記塗布膜Aを加工して焼成前パターンを得る、パターン形成工程と、上記焼成前パターン、上記塗布膜B及び上記剥離補助層を焼成して、焼成後パターン、補強層及び非焼結層を得る、焼成工程と、上記焼成後パターン、上記補強層及び上記非焼結層を上記基材から剥離して、立体構造物を得る、剥離工程と、を備えることを特徴とする。すなわち、この態様における本発明の立体構造物の製造方法は、本発明の第三の態様における立体構造物の製造方法に対して、剥離補助層の表面に、ガラス粉末含有ペーストBを塗布して塗布膜Bを得る、第2の塗布工程が追加されていることを特徴とする。なお、上記第三の態様における第2の塗布工程は、上記第四の態様における第3の塗布工程に相当するものである。
【0073】
第2の塗布工程において形成した塗布膜Bを焼成し、補強層とすることにより、立体構造物の強度が向上し、剥離時に生じる割れ等の欠陥を抑制できる。
【0074】
本発明において、基材は、第1の塗布工程、第2の塗布工程、第3の塗布工程、パターン形成工程及び焼成工程を通じて用いることが好ましい。
【0075】
第2の塗布工程の後、第3の塗布工程の前にプレ焼成を行っても構わない。この場合、第3の塗布工程において、ガラス粉末含有ペーストAをプレ焼成後の塗布膜Bの表面に塗布することになる。この場合、プレ焼成後の塗布膜Bの表面の算術平均表面粗さRaは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。Raが0.01μm未満であると、例えばパターン形成工程における現像工程において、塗布膜Bとパターンとの密着性が低下し、パターン剥れが発生しやすくなる。一方で、Raが10μmを超えると、焼成工程においてパターンの亀裂が起こることがある。
【0076】
プレ焼成後の塗布膜B、及び、補強層の表面の算術平均表面粗さRaは、基材上にガラス粉末含有ペーストBを塗布し、焼成した後、焼成後の補強層表面をレーザー顕微鏡(例えば、VK−9500;キーエンス株式会社製)の20倍レンズで観察し、基材に対して垂直上方向から5点スキャンし、画像を解析して求めた各点のRaの平均値を算出して求めることができる。
【0077】
補強層の空隙率は、0〜30体積%であることが好ましく、0〜20体積%であることがより好ましい。空隙率が30体積%を超えると、補強層の強度が不足するため、立体構造物の強度向上効果が小さくなることがある。また、例えば立体構造物をシンチレータパネル用の隔壁として用いる場合、隔壁内に蛍光体を充填する工程において蛍光体ペーストに含まれる樹脂が非焼結層に浸透し、剥離性が悪化することがある。
【0078】
補強層の空隙率は、補強層の断面を精密研磨した後に、SEMで観察し、無機成分部分と空隙部分とを2階調に画像変換し、空隙部分の面積が補強層断面の面積に占める割合をして求めることができる。
【0079】
補強層は、ガラスを含有する。ガラスを含有する補強層は高強度であることから、立体構造物を効果的に補強できる。
【0080】
ガラス粉末含有ペーストBは、有機成分と、ガラス粉末を含む無機成分で構成される。ガラス粉末含有ペーストBに占めるガラス粉末の含有量は、10〜95質量%であることが好ましい。
【0081】
ガラス粉末含有ペーストBが含有するガラス粉末は、焼成温度で軟化するガラスが好ましく、軟化温度が700℃以下である、低軟化点ガラスがより好ましい。低軟化点ガラスを用いることにより、焼成温度を低くでき、基材の選択の幅が広くなる。
【0082】
ガラス粉末含有ペーストBは、ガラス粉末以外に無機成分として、補強層の特性を損なわない範囲で、高軟化点ガラス粉末、又は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム若しくはチタン酸バリウム等の白色セラミックス粉末を適宜含有させることができる。
【0083】
ガラス粉末含有ペーストBに含まれるガラス粉末やその他の無機粉末は、適切な軟化点、熱膨張係数、化学的安定性及び屈折率を有する無機粒子から適宜選択可能であり、例えば、ガラス粉末含有ペーストAと同様のガラス粉末を使用することができる。
【0084】
ガラス粉末含有ペーストBが含有する、焼成温度において焼結する無機粉末の体積平均粒子径(以下、「D50」)は、0.05〜50μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。D50が0.05μm未満であると、補強層のRaが小さくなり、現像時に立体構造物パターンが剥れやすくなる。一方で、D50が50μmを超えると、補強層中に空隙を含みやすく、強度向上効果が小さくなりやすい。
【0085】
補強層は、焼結する無機粉末とフィラーとの比率を適宜調整することで、空隙率、熱膨張係数、可視光反射率を調整できる。
【0086】
ガラス粉末含有ペーストBが含有する有機成分は、バインダー樹脂、硬化性モノマー、重合開始剤、分散剤又は有機溶媒が好ましい。
【0087】
ガラス粉末含有ペーストBを塗布し、加熱乾燥して塗布膜中の有機溶媒を除去することにより、塗布膜Bが得られる。塗布膜Bが含有する固形分に占める有機成分と無機成分との割合は、有機成分が30質量%未満であることが好ましい。固形分に占める有機成分が30質量%以上であると、補強層中に含まれる炭素残分濃度が上がるため、補強層が黒色化しやすくなる。また、焼成収縮が大きくなり、補強層の割れが発生しやすくなる。
【0088】
ガラス粉末含有ペーストBが含有するバインダー樹脂としては、非焼結ペーストが含有するバインダー樹脂と同様のものが挙げられるが、焼成工程における分解性が良好なポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリアクリルアミド又はアクリル樹脂が好ましい。また、感光性のガラス粉末含有ペーストに用いる感光性オリゴマー又は感光性ポリマーも好ましい。
【0089】
塗布膜Bの塗布後にプレ焼成を行う場合、剥離補助層の表面に、塗布膜Bを剥離補助層の塗布面積よりも広く形成した後、プレ焼成を行い、基材と塗布膜Bを一部結着させることが好ましい。これにより、続く第3の塗布工程やパターン形成工程等において、基材から塗布膜Bが剥離してしまうことを抑制できる。また、焼成工程後に、基材の立体構造物が形成された面の反対面から剥離補助層の内側をけがき、割断することにより、基材と立体構造物を基材から剥離できるため、剥離を任意のタイミングで実施できる。これにより、例えば、後述のシンチレータパネルの製造においては、基材から隔壁を剥離する前に蛍光体を充填することが可能となり、剥離後に蛍光体を充填する場合に比べて隔壁の欠けや割れが起こりにくくなるので好ましい。このような構成とする場合、剥離補助層の厚みに比べ、塗布膜Bの厚さを厚くすることが好ましい。
【0090】
補強層の厚みは、1〜500μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。補強層の厚みが1μm未満であると、立体構造物の強度向上効果が小さくなりやすい。一方で、補強層の厚みが500μmを超えると、使用する原材料費が高くなり、コストアップとなりやすい。また、立体構造物をシンチレータパネルに用いる場合、放射線が補強層で吸収されてしまい、発光輝度が低下しやすくなる。
【0091】
補強層は、複数層からなっていても構わない。複数層の補強層は第2の塗布工程を複数回繰り返すことにより得られる。複数層からなる剥離補助層において、各層の組成は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、剥離補助層上に、低空隙率な補強層と表面粗さの大きな補強層を順に積層し、プレ焼成した後に第3の塗布工程以降を実施することにより、得られる立体構造物の強度を十分に向上させるとともに、現像時におけるパターン部の密着性を向上させることが可能となる。
【0092】
本発明の製造方法により製造される隔壁は、フィラーとして白色顔料を0.1〜40質量%含有することが好ましい。白色顔料を0.1質量%以上含有すると、シンチレータパネルの発光輝度が向上する。一方で、白色顔料を40質量%を超えて含有すると、隔壁の強度が低くなる。
【0093】
白色顔料としては、より発光輝度を高めるため、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化チタンからなる群から選ばれる金属酸化物が好ましい。
【0094】
白色顔料は、隔壁中において、平均粒子径が0.005〜0.08μmの極微小の微粒子の凝集した、凝集粒子として存在することが好ましい。この白色顔料の凝集粒子の平均粒子径は、隔壁に高い反射率を付与するため、0.3〜2μmであることが好ましく、0.5〜1μmであることがより好ましい。ここで白色顔料の凝集粒子の平均粒子径とは、電子顕微鏡等による観察写真を画像処理し、見かけの面積と同面積の円に換算した際の直径をいう。より具体的には、イオンエッチング法で処理した試料を、透過型電子顕微鏡を用いて拡大して撮影し、50個の凝集粒子をサンプルとして選択して、それぞれの写真の画像処理から凝集粒子を球(画像上は円)に近似した際の、それぞれの直径の平均値をいう。
【0095】
また、本発明のシンチレータパネルの製造方法は、本発明の立体構造物の製造方法により製造した立体構造物、好ましくは隔壁を基板に載置する、載置工程を備えることを特徴とする。
【0096】
本発明における基板とは、剥離工程において基材から立体構造物を剥離した後に、該立体構造物を載置する対象となる、平板状の支持体をいう。
【0097】
基板とは別途に製造した立体構造物を、事後的に基板に載置することにより、耐熱性や強度の制限を受けることなく基板を自由に選択できるため、例えばシンチレータパネルの作製においては、放射線の吸収が小さく、かつ反射率の高い基板を選択することが可能となる。
【0098】
本発明のシンチレータパネルの製造方法では、基板上に載置された隔壁等の立体構造物は基板に固設されることが好ましく、樹脂又は粘着テープにより固設されることがより好ましい。樹脂での固設に用いられる接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂又はエチルセルロース樹脂等の有機樹脂に溶剤が混合された材料を用いることが好ましい。粘着テープとしては、例えば上記の接着剤を塗布したテープを用いることができるが、テープの両面に接着剤が塗布された両面テープを用いることが好ましい。
【0099】
基板上に固設される立体構造物は、非焼結層や補強層を有する隔壁であることが好ましい。この場合、非焼結層や補強層は、基板と隔壁との間に位置することが好ましい。すなわち、本発明のシンチレータパネルの一態様は、基板、ガラスを主成分とする隔壁、及び、非焼結層を備え、上記非焼結層が、上記基板と上記隔壁との間に位置している、シンチレータパネルである。
【0100】
ここで基板としては、放射線の透過性を有する、高分子、セラミックス、半導体、金属又はガラス等を材料とするものを用いることができる。そのような基板としては、例えば、ポリエステルフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム若しくは炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム、アルミナ、窒化アルミ、ムライト、ステアタイト、チッ化珪素若しくは炭化珪素等のセラミックス基板、セラミックス粉末とガラスの粉末とを混合して焼結したガラスセラミックス基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐若しくはガリウム窒素等の半導体からなる半導体基板、アルミニウムシート、鉄シート若しくは銅シート等の金属シート、石英、ホウ珪酸ガラス若しくは化学的強化ガラス等のガラスからなるガラス板、金属酸化物の被覆層を有する金属シート又はアモルファスカーボン基板が挙げられるが、高分子材料からなる高分子フィルムは、原子番号の小さな炭素原子や水素原子を主とする材料で構成されており、放射線透過率が高いことから、高分子フィルムが好ましい。
【0101】
基板の厚さは、基板による放射線吸収を抑制するため、1mm以下であることが好ましい。
【0102】
基板の反射率は、90%以上であることが好ましい。反射率が90%以上であると、シンチレータパネルの発光輝度が向上する。反射率が90%以上である基板としては、例えば、液晶ディスプレイにおいて反射板として用いられている白色PETフィルムが好ましく挙げられる。ここで反射率とは、分光測色計(例えば、CM−2600d;コニカミノルタ社製)を用いて測定された波長530nmのSCI反射率をいう。
【0103】
焼成工程で得られた焼成後パターンに対し、基材の反対側から、接着剤を塗布又は両面テープを貼り付けた基板を押し付けて接着させる、又は、焼成後パターンの表面に接着剤を塗布又は両面粘着テープを貼り付けて、基板を押し付けて接着させる、といったように、立体構造物の剥離と固設とを同時に行っても構わない。
【0104】
本発明の隔壁においては、隔壁からの光漏れを防止するために、その表面に反射膜が形成されていることが好ましい。反射膜の材質としては、例えば、放射線を透過し、かつ蛍光体が発光した300〜800nmの電磁波である光を反射する物質が挙げられるが、劣化の度合いが低いことから、Ag、Au、Al、Ni若しくはTi等の金属又はTiO
2、ZrO
2、Al
2O
3若しくはZnO等の金属酸化物が好ましい。
【0105】
補強層等により隔壁の開口が閉塞されていない、貫通型の隔壁を基板に載置した後に反射膜を形成する場合には、隔壁の各内側面、及び、基板上の隔壁が存在しない部分に、一括で同材質の反射膜を形成することができる。一方で、剥離された隔壁に反射膜を形成する場合には、隔壁の各内側面のみに反射膜を形成することができる。ここで基板の反射率が反射膜の反射率よりも高い場合は、基板の反射率を有効に活用するために、隔壁の各内側面のみに反射膜を形成し、基板上の隔壁が存在しない部分には、反射膜を形成しないことが好ましい。
【0106】
反射膜の形成方法としては、例えば、真空製膜法、メッキ法、ペースト塗布法又はスプレーによる噴射方法が挙げられる。
【0107】
基板に載置された隔壁により、蛍光体を充填する空間が区画される。この空間すなわちセルに、蛍光体を充填してシンチレータ層とすることで、シンチレータパネルが完成する。
【0108】
蛍光体としては、例えば、放射線から可視光への変換率が高い、CsI、Gd
2O
2S、Lu
2O
2S、Y
2O
2S、LaCl
3、LaBr
3、LaI
3、CeBr
3、CeI
3、LuSiO
5又はBa(Br、F)が挙げられる。
【0109】
発光効率を高めるために、蛍光体に賦活剤を添加しても構わない。賦活剤としては、例えば、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)、テルビニウム(Tb)、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)又はプラセオジム(Pr)が挙げられるが、化学的安定性が高く、かつ発光効率が高いため、Gd
2O
2SにTbを添加した蛍光体(以下、「GOS:Tb」)が好ましい。
【0110】
蛍光体の充填方法としては、例えば、結晶性CsIを真空蒸着する方法、水に分散させた蛍光体スラリーを塗布する方法以外にも、蛍光体粉末、エチルセルロース及びアクリル樹脂等をテルピネオール等の溶媒に混合した蛍光体ペーストを、スクリーン印刷又はディスペンサーで塗布する方法が挙げられる。
【0111】
図3は、本発明のシンチレータパネルの製造方法により製造したシンチレータパネルの構成を模式的に表した断面図である。
【0112】
隔壁6の高さL1は、100〜3000μmが好ましく、160〜500μmがより好ましい。L1が3000μmを超えると、隔壁を形成する際の加工性が低くなる。一方で、L1が100μm未満であると、充填可能な蛍光体の量が少なくなるため、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低下する。
【0113】
隣接する隔壁の間隔L2は、30〜1000μmが好ましい。L2が30μm未満であると、隔壁を形成する際の加工性が低くなる。一方で、L2が1000μmを超えると、得られるシンチレータパネルの画像の精度が低くなる。
【0114】
隔壁の底部幅L3は、10〜150μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。L3が10μm未満であると、焼成時に格子状のパターンの欠陥が生じやすくなる。一方で、L3が150μmを超えると、隔壁により区画された空間に充填可能な蛍光体の量が少なくなるため、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低下する。
【0115】
隔壁の頂部幅L4は、5〜80μmが好ましい。L4が5μm未満であると、隔壁の強度が低下する。一方で、L4が80μmを超えると、シンチレータ層の発光光を取り出せる領域が狭くなってしまう。
【0116】
底部幅L3に対する隔壁の高さL1のアスペクト比(L1/L3)は、1.0〜50.0であることが好ましい。このアスペクト比(L1/L3)が大きい隔壁ほど、隔壁により区画された1画素あたりの空間が広く、より多くの蛍光体を充填することができる。
【0117】
隔壁の間隔L2に対する隔壁の高さL1のアスペクト比(L1/L2)は、0.5〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.5であることがより好ましい。このアスペクト比(L1/L2)が高い隔壁ほど、高精細に区画された1画素となり、かつ、1画素あたりの空間により多くの蛍光体を充填することができる。
【0118】
隔壁の高さL1及び隣接する隔壁の間隔L2は、基板に対して垂直な隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(S2400;日立製作所製)で断面を観察し、測定することができる。ここで、隔壁と基板との接触部における隔壁の幅を、L3とする。隔壁と基板の間に隔壁補強層がある場合は、隔壁と隔壁補強層との接触部における隔壁の幅を、L3とする。また、隔壁の最頂部の幅を、L4とする。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
(ペーストの原料)
ペーストの作製に用いた原料は次のとおりである。
感光性モノマーM−1 : トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマーM−2 : テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー : メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000;酸価100)
バインダー樹脂 : 100cPエチルセルロース
光重合開始剤 : 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(IC369;BASF社製)
熱重合開始剤 : V−40
重合禁止剤 : 1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液 : スダンIV(東京応化工業株式会社製)のγ−ブチロラクトン0.3質量%溶液
粘度調整剤 : フローノンEC121(共栄社化学社製)
溶媒A : γ−ブチロラクトン
溶媒B : テルピネオール
低軟化点ガラス粉末A : SiO
2 27質量%、B
2O
3 31質量%、ZnO 6質量%、Li
2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al
2O
3 23質量%、屈折率(ng):1.56、ガラス軟化温度588℃、線膨張係数70×10
−7(K
−1)、平均粒子径2.3μm
低軟化点ガラス粉末B : 低軟化点ガラス粉末Aと同組成、平均粒子径0.5μm
低軟化点ガラス粉末C : 低軟化点ガラス粉末Aと同組成、平均粒子径1.1μm
低軟化点ガラス粉末D : 低軟化点ガラス粉末Aと同組成、平均粒子径40μm
低軟化点ガラス粉末E : PbO 60質量%、B
2O
3 15質量%、ZnO 9質量%、SiO
2 9質量%、Li
2O 7質量%、屈折率(ng):1.8、ガラス軟化温度470℃、線膨張係数108×10
−7(K
−1)、平均粒子径0.9μm
低軟化点ガラス粉末F : Bi
2O
3 70質量%、B
2O
3 15質量%、SiO
2 9質量%、ZnO 4質量%、MgO 2質量%、屈折率(ng):1.8、ガラス軟化温度520℃、線膨張係数92×10
−7(K
−1)、平均粒子径1.6μm
高軟化点ガラス粉末A : SiO
2 30質量%、B
2O
3 31質量%、ZnO 6質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al
2O
3 27質量%、屈折率(ng):1.55、軟化温度790℃、熱膨張係数32×10
−7(K
−1)、平均粒子径2.3μm
高軟化点ガラス粉末B : 高軟化点ガラス粉末Aと同組成、平均粒子径15μm
酸化ケイ素粉末 : アドマテックス社製SO−E1、平均粒子径0.25μm
酸化チタン粉末A : 石原産業社製ST−21、平均粒子径0.02μm
酸化チタン粉末B : テイカ社製MT−600SA、平均粒子径0.05μm。
【0121】
(ガラス粉末含有ペーストAの作製)
4質量部の感光性モノマーM−1、6質量部の感光性モノマーM−2、24質量部の感光性ポリマー、6質量部の光重合開始剤、0.2質量部の重合禁止剤及び12.8質量部の紫外線吸収剤溶液を、38質量部の溶媒Aに、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、9質量部の粘度調整剤を添加して、有機溶液1を作製した。得られた有機溶液1をガラス板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)は、1.555であった。
【0122】
60質量部の有機溶液1に、30質量部の低軟化点ガラス粉末A及び10質量部の高軟化点ガラス粉末Aを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストAを作製した。
【0123】
(非焼結ペースト1の作製)
60質量部の有機溶液1に、40質量部の高軟化点ガラス粉末を添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト1を作製した。
【0124】
(非焼結ペースト2の作製)
3質量部のバインダー樹脂、1.5質量部の感光性モノマーM−1、0.5質量部の感光性モノマーM−2、0.05質量部の熱重合開始剤を、55質量部の溶媒Bに、温度60℃で加熱溶解した。得られた有機溶液2を冷却した後、40質量部の酸化ケイ素粉末を添加し、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト2を作製した。
【0125】
(非焼結ペースト3の作製)
1質量部のバインダー樹脂、0.5質量部の感光性モノマーM−1、0.5質量部の感光性モノマーM−2、0.05質量部の熱重合開始剤を、78質量部の溶媒Bに、温度60℃で加熱溶解した。得られた有機溶液3を冷却した後、20質量部の酸化チタン粉末Aを添加し、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト3を作製した。
【0126】
(非焼結ペースト4の作製)
2質量部のバインダー樹脂、0.5質量部の感光性モノマーM−1、0.5質量部の感光性モノマーM−2、0.05質量部の熱重合開始剤を、67質量部の溶媒Bに、温度60℃で加熱溶解した。得られた有機溶液4を冷却した後、30質量部の酸化チタン粉末Bを添加し、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト4を作製した。
【0127】
(非焼結ペースト5の作製)
25質量部の有機溶液2に、75質量部の高軟化点ガラス粉末Aを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト5を作製した。
【0128】
(非焼結ペースト6の作製)
50質量部の有機溶液1に、50質量部の高軟化点ガラス粉末Bを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、非焼結ペースト6を作製した。
【0129】
(ガラス粉末含有ペーストB1の作製)
4質量部のバインダー樹脂を、50質量部の溶媒Bに、温度60℃で加熱溶解した。得られた有機溶液5を冷却した後、46質量部の低軟化点ガラス粉末Aを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB1を作製した。本ペーストを、スリットダイコーターによりガラス板(PD−200;旭硝子社製)に乾燥後厚さ30μmとなるように塗布した後、空気中585℃で15分間焼成して得られたベタ膜の表面粗さRaは0.2μm、空隙率は0.5%であった。
【0130】
(ガラス粉末含有ペーストB2の作製)
75質量部の有機溶液5に、25質量部の低軟化点ガラス粉末Bを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB2を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.1μm、空隙率は0.2%であった。
【0131】
(ガラス粉末含有ペーストB3の作製)
65質量部の有機溶液5に、35質量部の低軟化点ガラス粉末Cを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB3を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.2μm、空隙率は0.3%であった。
【0132】
(ガラス粉末含有ペーストB4の作製)
40質量部の有機溶液1に、60質量部の低軟化点ガラス粉末Aを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB4を作製した。本ペーストを、スリットダイコーターによりガラス板(PD−200;旭硝子社製)に厚さ500μmとなるように塗布した後、空気中585℃で15分間焼成して得られたベタ膜の表面粗さRaは0.2μm、空隙率は0.5%であった。
【0133】
(ガラス粉末含有ペーストB5の作製)
30質量部の有機溶液1に、70質量部の低軟化点ガラス粉末Dを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB5を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB4と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.4μm、空隙率は1.3%であった。
【0134】
(ガラス粉末含有ペーストB6の作製)
54質量部の有機溶液1に、42質量部の低軟化点ガラス粉末A及び4質量部の高軟化点ガラスAを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB6を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.5μm、空隙率は0.8%であった。
【0135】
(ガラス粉末含有ペーストB7の作製)
54質量部の有機溶液1に、38質量部の低軟化点ガラス粉末A及び8質量部の高軟化点ガラスAを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB7を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.8μm、空隙率は1.2%であった。
【0136】
(ガラス粉末含有ペーストB8の作製)
54質量部の有機溶液1に、28質量部の低軟化点ガラス粉末A及び18質量部の高軟化点ガラスAを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB8を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは2.6μm、空隙率は17.8%であった。
【0137】
(ガラス粉末含有ペーストB9の作製)
40質量部の有機溶液1に、60質量部の低軟化点ガラス粉末Eを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB9を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.2μm、空隙率は0.3%であった。
【0138】
(ガラス粉末含有ペーストB10の作製)
40質量部の有機溶液1に、60質量部の低軟化点ガラス粉末Fを添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、ガラス粉末含有ペーストB10を作製した。本ペーストを用いて、ガラス粉末含有ペーストB1と同様の方法で作製したベタ膜の表面粗さRaは0.4μm、空隙率は0.4%であった。
【0139】
(実施例1)
基材として、500mm×500mm×1.8mmのガラス板(PD−200;旭硝子社製、線膨張係数83×10
−7(K
−1))を用いた。基材の表面に、上記の非焼結ペースト1を乾燥厚さが50μmとなるようにダイコーターで塗布して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面に、ガラス粉末含有ペーストAを乾燥厚さが500μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Aを得た。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ125μm、線幅20μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、塗布膜Aを、超高圧水銀灯を用いて750mJ/cm
2の露光量で露光した。露光後の塗布膜Aは、0.5質量%のモノエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状の焼成前パターンを得た。得られた格子状の焼成前パターンを、空気中585℃で15分間焼成して、格子状の焼成後パターンを得た。
【0140】
500mm×500mm×0.18mmの白色PETフィルム(ルミラー(登録商標)E6SQ;東レ製;反射率97%)の表面に接着剤を塗布して、接着層を形成した。得られた接着層に、上記の格子状の焼成後パターンを(基材から剥離することなく)載置して圧着し、その後接着層を硬化させて、格子状の焼成後パターンを固設した。そして格子状の焼成後パターンを基材から剥離して、隔壁が固設された基板を得た。得られた格子状の焼成後パターンのL2は125μm、L4は30μm、L3は30μm、L1は340μmであり、全体の大きさは480mm×480mmであった。
【0141】
粒径5μmのGOS:Tb粉末をエチルセルロースのベンジルアルコール溶液と混合した蛍光体を、隔壁により区画されたセルに体積分率が65%になるように充填して120℃で乾燥し、シンチレータパネル1を完成した。
【0142】
得られたシンチレータパネル1を、FPD(PaxScan2520;Varian社製)にセットして放射線検出装置を作製した。放射線検出装置に対し、シンチレータパネル1の基板側から管電圧60kVpのX線を照射して、シンチレータ層からの発光量をFPDで検出し、輝度を評価した。また、画像鮮明性を矩形波チャートの撮影画像に基づき評価した。シンチレータパネル1の輝度及び画像鮮明性は、いずれも良好であった。
【0143】
(実施例2)
基板として500mm×500mm×0.3mmのアルミナ基板(反射率70%)を用いた以外は、実施例1と同様に検討を行った。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は80であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0144】
(実施例3)
基板として研磨により厚さ0.7mmとしたPD−200(反射率15%)を用いた以外は、実施例1と同様に検討を行った。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は50であり、比較的良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0145】
(実施例4)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB1を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。この際に塗布膜Bの塗布面積を剥離補助層よりも広く、かつ剥離補助層全体を覆うような配置とした。これを空気中585℃で15分間プレ焼成した。上記のように塗布膜Bを剥離補助層よりも広く形成することで、プレ焼成後に基材と塗布膜Bとが直接接触するエリアは融着し、塗布膜Bが剥離してしまうことは無かった。次にプレ焼成後の塗布膜Bの表面に、ガラス粉末含有ペーストAを乾燥厚さが500μmになるようにダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Aを得た。以降は実施例1と同様に露光、現像、焼成し格子状のパターンを得た後、格子状パターンに蛍光体を充填、乾燥した。次に基材の裏側からガラスカッターを用いて剥離補助層の内側4辺をけがき、割断した。これにより、補強層と基材の融着した部分が除かれ、剥離補助層を介して基材からパターンを容易に剥離できた。パターンは底部に補強層を有するため高い強度を有しており、ハンドリングによるパターンの損傷を防止できた。得られたパターンを、立体構造物の非焼結層側が白PETフィルム側になるように厚さ10μmの両面テープを介して貼り付け、シンチレータパネル4を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は97であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0146】
(実施例5)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト3を乾燥厚さが0.9μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB2を乾燥厚さが3μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル5を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は98であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0147】
(実施例6)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト4を乾燥厚さが2.2μmとなるようにダイコーターで塗布して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB3を乾燥厚さが13μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル6を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は97であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0148】
(実施例7)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト5を乾燥厚さが10μmとなるようにダイコーターで塗布して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB1を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル7を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は95であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
(実施例8)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト6を乾燥厚さが40μmとなるようにダイコーターで塗布して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB1を乾燥厚さが106μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル8を完成した。剥離層が厚いため、衝撃により剥離層を形成する非焼結無機粉末が剥離し、飛散しやすい傾向があったが、問題のないレベルであった。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は94であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0149】
(実施例9)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB4を乾燥厚さが440μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル9を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は78であった。補強層の厚さが厚いため、X線が吸収されて輝度が低くなったが、比較的良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0150】
(実施例10)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト6を乾燥厚さが50μmとなるようにダイコーターで塗布して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB5を乾燥厚さが220μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル10を完成した。非焼結層が厚いため、衝撃により非焼結層を形成する無機粉末が脱落し、飛散しやすい傾向があったが、問題のないレベルであった。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は88であった。補強層の厚さが厚いため、X線が吸収されて輝度が若干低くなったが、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0151】
(実施例11)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB6を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布、乾燥した後、空気中585℃で15分間プレ焼成し、塗布膜Bを形成した。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ125μm、線幅20μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、ガラス粉末含有ペーストAの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて700mJ/cm
2の露光量で露光し、実施例1と同様に現像、焼成し、格子状の焼成後パターンを得た。得られた格子状の焼成後パターンのL2は125μm、L4は28μm、L3は28μm、L1は340μmであり、全体の大きさは480mm×480mmであり、実施例4に比べ細幅の隔壁を形成しても、現像工程においてパターン剥れは発生しなかった。これは、ガラス粉末含有ペーストB6の焼成後ベタ膜の表面粗さが、ガラス粉末含有ペーストB1に比べて大きいために、現像工程においてパターン剥がれが抑制できたことに基づくと考えられる。その後、実施例4と同様に蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル11を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は105であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0152】
(実施例12)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB7を乾燥厚さが26μmとなるようダイコーターで塗布、乾燥した後、空気中585℃で15分間プレ焼成し、塗布膜Bを形成した。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ125μm、線幅20μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、ガラス粉末含有ペーストAの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて650mJ/cm
2の露光量で露光し、実施例1と同様に現像、焼成し、格子状の焼成後パターンを得た。得られた格子状の焼成後パターンのL2は125μm、L4は25μm、L3は25μm、L1は340μmであり、全体の大きさは480mm×480mmであり、実施例11に比べ細幅の隔壁を形成しても、現像工程においてパターン剥れは発生しなかった。その後、実施例11と同様に蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル12を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は111であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0153】
(実施例13)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB8を乾燥厚さが29μmとなるようダイコーターで塗布、乾燥した後、空気中585℃で15分間プレ焼成し、塗布膜Bを形成した。次に、所望のパターンに対応する開口部を有するフォトマスク(ピッチ125μm、線幅20μmの、格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、ガラス粉末含有ペーストAの塗布膜を、超高圧水銀灯を用いて600mJ/cm
2の露光量で露光し、実施例1と同様に現像、焼成し、格子状の焼成後パターンを得た。得られた格子状の焼成後パターンのL2は125μm、L4は20μm、L3は20μm、L1は340μmであり、全体の大きさは480mm×480mmであり、実施例12に比べ細幅の隔壁を形成しても、現像工程においてパターン剥れは発生しなかった。その後、実施例11と同様に蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル13を完成した。ここで、補強層の空隙が大きいため、蛍光体の充填工程において蛍光体ペーストに含まれるエチルセルロースが非焼結層に浸透し、剥離性が若干悪化したが、剥離可能であった。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は122であり、極めて良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0154】
(実施例14)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB9を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル14を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は90であり、鉛のX線吸収の影響及び軟化温度が低いために補強層中に炭素残分が多くなり黒色化したことによって若干低くなる傾向が見られたが、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0155】
(実施例15)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB10を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、塗布膜Bを形成した。その後、実施例4と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル15を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は96であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0156】
(実施例16)
実施例1と同一の基材の表面に、非焼結ペースト2を乾燥厚さが5μmとなるようにスクリーン印刷して乾燥し、剥離補助層を形成した。剥離補助層の表面にガラス粉末含有ペーストB1を乾燥厚さが24μmとなるようダイコーターで塗布して乾燥し、1層目の塗布膜Bを形成した。その後、1層目の塗布膜Bの表面に、ガラス粉末含有ペーストB8を乾燥厚さが29μmとなるようスクリーン印刷により塗布乾燥し、2層目の塗布膜Bを形成した。その後、実施例13と同様にプレ焼成した後、格子状のパターン及び蛍光体層を形成し、割断して基材とパターンを剥離し、白PETフィルムに貼り付け、シンチレータパネル16を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は119であり、極めて良好であった。また、実施例13と異なり、高空隙率の補強層の下に低空劇率の補強層が形成されているため、蛍光体の充填工程において蛍光体ペーストに含まれるエチルセルロースが非焼結層まで浸透することもなく、剥離性も良好であった。さらに、画像鮮明性も良好であった。
【0157】
(実施例17)
実施例4において、基材として500mm×500mm×0.7mmのガラス板(Eagle−XG;コーニング社製;線膨張係数32×10
−7(K
−1))を用いた以外は、実施例4と同様にしてシンチレータパネル17を完成した。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は97であり、良好であった。また、画像鮮明性も良好であった。
【0158】
(比較例1)
PD−200を基板とし、その表面に直接ガラス粉末含有ペーストAを塗布したこと以外は、実施例1と同様に格子状の焼成後パターンを形成して、隔壁が固設された基板を得た。実施例1と同様に蛍光体を、隔壁により区画されたセルに体積分率が65%になるように充填して120℃で乾燥し、シンチレータパネル2を完成した。得られたシンチレータパネル2を用いて放射線検出装置を作製し、実施例1と同様の評価をした。画像鮮明性は実施例1と同等であったが、実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は15と極めて低く、実用的なものではなかった。この輝度低下は、基板にX線が吸収されてしまうこと、及び、基板の反射率が低く、シンチレーションによる発光光が基板側に漏れ出してしてしまうことに基づくと考えられる。
【0159】
(比較例2)
基板としてE6SQを用いたこと以外は、比較例1と同様にして隔壁形成を試みたが、焼成工程において白色PETフィルムであるE6SQの焼き飛びに伴って焼成前パターンが崩壊し、評価不可であった。
【0160】
(比較例3)
E6SQを基板とし、その表面に粒径5μmの酸硫化ガドリニウム粉末をエチルセルロースのベンジルアルコール溶液と混合した蛍光体を塗布し、厚さ340μmの蛍光体層を形成して、隔壁を有しないシンチレータパネル3を完成した。得られたシンチレータパネル3を用いて放射線検出装置を作製し、実施例1と同様の評価をした。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は145であり良好であった。しかしながら、画像鮮明性は極めて低く、実用的なものではなかった。
【0161】
(比較例4)
蛍光体層の厚さを50μmとした以外は、比較例3と同様に検討を行った。実施例1の輝度を100とした場合の輝度の相対値は30と低く、画像鮮明性も不十分であって、実用的なものではなかった。
【0162】
以上の結果より、本発明の製造方法により製造した隔壁を備えるシンチレータパネルが、放射線検出装置における輝度及び画像鮮明性の顕著な向上に資することは明らかである。